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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W12
管理番号 1386385 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-09-09 
確定日 2022-05-19 
異議申立件数
事件の表示 国際商標登録第1472674号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 国際商標登録第1472674号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1472674号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「eQart」の文字を横書きしてなり、2018年11月6日にEUIPOにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2019年(平成31年)4月23日に国際商標登録出願、第7類、第9類及び第12類に属する別掲2のとおりの商品を指定商品として、令和3年4月21日に登録査定され、同年7月2日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する登録商標は、次の2件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 国際登録第1328469号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲3のとおり、「EQ」の文字を横書きしてなり、2016年7月8日にUnited Kingdomにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2016年(平成28年)7月28日に国際商標登録出願、第12類「Motor vehicles.」を指定商品として、令和元年10月31日に商標法第3条第2項の要件を具備するものとして登録すべき旨の審決がなされ、同2年1月10日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
2 国際登録第1338969号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲4のとおりの構成よりなり、2016年9月26日にGermanyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2017年(平成29年)2月22日に国際商標登録出願、第12類「Motor vehicles and parts thereof (as far as included in class 12).」を指定商品として、平成29年9月29日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
以下、引用商標1及び引用商標2をまとめて「引用商標」ということがある。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標はその指定商品中、第12類「全指定商品」について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第42号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
本件商標は、「eQart」の英文字を普通の書体で横書きして構成されるものである。
「eQart」は、辞書に掲載されていない造語で、構成する五つの英文字のうち、「Q」のみが大文字で表され、その他の四文字は小文字で表された特異な構成態様となっている。
また、語頭の「eQ」は、申立人の商品を表す標識として需要者の間で広く認識された著名商標「EQ」と同一の文字で構成されている。これに対して、語尾の「art」は、「芸術、美術」を意味する英語で、その音訳表記「アート」と共に馴染み親しまれ、広く一般に使用されている。
このような構成態様からすると、本件商標は、構成文字のうち、「Q」のみが大文字で表されて看者の目を惹くことから、「eQ」及び「art」の二つの部分に分離して看取され、相対的に自他商品識別力が弱い「art」を捨象し、著名商標「EQ」と同一の文字で構成され、看者に注目される語頭に置かれた「eQ」が強く支配的な印象を与えて、この部分に着目して取引に供される場合も少なくない。
したがって、本件商標は、「eQart」の構成文字全体に照応する「イイキュウアート」の称呼に加えて、語頭に位置する「eQ」の文字に照応する「イイキュウ」の称呼が生じるものである。
(2)引用商標
引用商標1は、「EQ」の英文字を普通の書体で横書きしてなるものである。
また、引用商標2は、丸みを帯びた特徴的な書体で表された「EQ」の英文字で構成されるものである。
したがって、引用商標1及び引用商標2は、構成する「EQ」の英文字に照応して「イイキュウ」の称呼が生じるものである。
(3)以上を勘案すれば、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、称呼上、類似の商標とするのが相当である。
(4)指定商品(役務)の類否について
本件商標の指定商品中、第12類「automobiles; bicycles; motorcycles; carts being motorized land vehicles; remotely controlled land vehicle; unmanned land vehicles; land vehicles for industrial use.」は、引用商標1の指定商品である第12類「Motor vehicles.
」及び引用商標2の指定商品である第12類「Motor vehicles and parts thereof(as far as included in class 12).」に類似する。
(5)結論
以上のとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、称呼上、互いに相紛れるおそれのある類似の商標であって、また、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、指定商品の一部について互いに類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人について
申立人は、世界的に著名なドイツの自動車メーカーで、「メルセデス・ベンツ」ブランドの乗用車その他の各種乗用車、商用車及び内燃機関(エンジン)のメーカーとして世界200以上の国と地域で事業を展開しており、同社の製品は我が国を含む世界各国の需要者に広く知られている(甲5、甲6)。
(2)申立人の商標「EQ」について
申立人は、上述した「メルセデス・ベンツ」ブランドのうち、電気自動車モデルのブランドとして2016年に「EQ」(以下、「申立人商標」という。)を採択した。「EQ」は、「Electric lntelligence(エレクトリック・インテリジェンス)」を意味する言葉で、申立人自らの創作に係る造語である(甲7)。
申立人は、2016年9月に開催されたパリモーターショー2016において、「EQ」ブランドのコンセプトカー「Generation EQ」を公開した(甲8、甲9)。パリモーターショー2016では、100万人を超える来場者があり、公式ビデオ、公式ウェブサイト、公式アプリによるモーターショー開催の告知やSNSを含むインターネットにおける情報露出効果も相まって、申立人商標は世界中で注目を浴びた(甲10)。そして、日本でも、パリモーターショー2016における申立人商標「EQ」の発表は、申立人のウェブサイト及びインターネット・雑誌の記事で取り上げられ、申立人商標は需要者の間で広く知られていった(甲8〜甲17)。
申立人商標に係る電気自動車は、パリモーターショー2016に続く、フランクフルトモーターショー2017(2017年9月に開催)、東京モーターショー2017(2017年10月に開催)、パリモーターショー2018(2018年9月に開催)でも出展され、インターネット・雑誌の記事で取り上げられたことによって申立人商標「EQ」の認知度はさらに高まった(甲18〜甲28)。
その一方で、申立人は、申立人商標に係る電気自動車の広告を新聞に掲載し、自社(日本法人)のウェブサイト、カタログ、顧客向けの定期機関誌に掲載して商品に関する情報を消費者、需要者、顧客に向けて積極的に発信し続け、申立人商標は多くの者に知られることとなった(甲29〜甲35)。
そして、申立人は、「EQ」ブランドのラインアップのひとつとして、「EQ Power」の名称で2017年に電気自動車の販売を開始し、同年10月には、日本各地の販売店で販促フェアが一斉に開催され、「EQ」ブランドの宣伝告知が行われた(甲36)。その後、2018年以降も、「EQ」ブランドの電気自動車が掲載されたカタログが顧客、需要者に頒布されて、「EQ」ブランドの認知度がさらに高まり、電気自動車の販売及びその販促活動を通じて、多くの顧客、需要者に申立人商標が周知されていった(甲37〜甲41)。
このようにして、申立人商標は、2016年の「EQ」ブランドの発足以降、製品の製造、販売に先立って行われた、国際モーターショーでの発表や、新聞広告、ウェブサイト、機関誌、カタログ、雑誌等での広告や記事の掲載による大規模な広告宣伝活動を通じて、電気自動車について大々的に使用された実績があり、その結果、申立人の商品を表す商標として需要者、取引者の間で広く知られ、著名な商標となった(甲7〜甲41)。
申立人商標が著名商標であることは、引用商標1に係る国際登録第1328469号の審決取消訴訟事件(平成31年(行ケ)第10004号)において、商標「EQ」は商標法第3条第1項第5号の、極めて簡単で、かつ、ありふれた商標に該当するものの、使用の結果、需要者が申立人の業務に係る商品であることを認識することができる商標に該当し、商標法第3条第2項の要件を具備するとして登録が認められたことからも明白である(甲42)。
以上のとおり、申立人商標は、本件商標の出願日(国際登録日)の前に、申立人の商品を表す標識として商品の需要者及び取引者の間で広く認識された著名商標となっていたものである。
(3)本件商標及び申立人商標の類似性について
本件商標は、上記1(1)で詳述した通り、申立人の商品を表す標識として著名な商標「EQ」と同一の文字で構成された「eQ」の英文字及び既存語の「art」の英文字を結合させてなるもので、識別力が強い「eQ」の文字部分に照応する「イイキュウ」の称呼が生じるものである。
これに対して、引用商標1及び引用商標2を含む申立人商標は、構成する「EQ」の英文字に照応する「イイキュウ」の称呼が生じるものである。
したがって、本件商標と申立人商標とは称呼上類似するものであって、本件商標がその指定商品について使用されたときには、申立人の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあるとみるのが相当である。
(4)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との類似性及び関連性について
本件商標の指定商品のうち、第12類「automobiles; bicycles; motorcycles, carts being motorized land vehicles; remotely controlled land vehicle; unmanned land vehicles; land vehicles for industrial use.」は、引用商標1及び引用商標2の指定商品に類似するものである。また、申立人が取り扱う商品が、乗用車その他の各種乗用車、商用車や内燃機関(エンジン)であることからすると、本件商標の第12類の指定商品のうち、「Aircraft; rolling stock for railways; ships; automatic guided vehicles, carts and driverless trucks for material handling; electric carts and driverless trucks; motorized handling carts; transport carriages (railways); motorized driverless pallet trucks; unmanned and remotely controlled driverless pallet trucks.」は、業種(輸送・貨物用車両の製造)、商品の生産部門(輸送・貨物用車両の生産部門)、商品の原材料(金属、鉄鋼、ガラス等)、商品の用途(人・貨物の輸送)、需要者の範囲(人・貨物を輸送するサービスの提供者及びその取引先)といった多くの点で共通性を有しており、極めて関連性、親近性が強いものである。
以上のとおり、本件商標に係る第12類の指定商品は、引用商標1及び引用商標2の指定商品に類似する、又は、申立人商標に係る商品との関連性、親近性が強い商品であることは明らかである。
(5)商品の出所の誤認混同が生じるおそれについて
上述したとおり、申立人の商品を表す標識として著名な商標「EQ」と同一の文字で構成された「eQ」の英文字を看者に注目される語頭に置き、これに、既存語の「art」の英文字を結合させてなる本件商標は、強い識別力を有する「eQ」の英文字に照応して「イイキュウ」の称呼が生じ、申立人商標とは称呼上類似の商標である。そして、本件商標の第12類の指定商品は、引用商標1及び引用商標2の指定商品に類似するか、又は、申立人商標に係る商品との関連性が強い商品である。
このような状況において、申立人商標が申立人の商品の出所を表す標識として強い識別力を有することに鑑みれば、本件商標が第12類の指定商品について使用されたときには、本件商標に接する商品の取引者及び需要者は、申立人を想起し、申立人の業務に係る商品若しくは申立人と経済的もしくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのような印象を受ける蓋然性は高く、結果として、商品の出所について誤認混同が生じるおそれが高いと考えられるものである。
(6)結論
以上のとおり、本件商標は、申立人商標の業務に係る商品と出所の混同を生じるおそれがあるため、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 当審の判断
1 申立人使用商標の周知性について
(1)申立人は、ドイツの自動車メーカーであり、「メルセデス・ベンツ」ブランドの乗用車その他の各種乗用車、商用車及び内燃機関(エンジン)のメーカーとして世界200以上の国と地域で事業を展開している(甲5、甲6)。
(2)申立人は、「メルセデス・ベンツ」ブランドのうち、電気自動車モデルのブランドとして2016年に、「EQ」の文字からなる商標(以下「申立人使用商標」という。)を採択した(甲8)。
(3)申立人は、2016年9月のパリモーターショー2016において、「EQ」ブランドのコンセプトカーを発表した。その様子は、ウェブサイト、カタログ、自動車専門誌において取引者、需要者に紹介された(甲8、甲9、甲11〜甲17)。
(4)その後も、フランクフルトモーターショー2017(2017年開催)、東京モーターショー2017(2017年開催)、パリモーターショー2018(2018年開催)において「EQ」ブランドのコンセプトカーが発表され、ウェブサイトや自動車専門誌等において紹介された(甲18〜甲28)。
(5)申立人は、2017年から2018年にかけて、新聞、顧客向け定期機関誌、ウェブサイト、カタログ等において、申立人使用商標を使用して、「EQ」ブランドのコンセプトカーについての宣伝を行った(甲30〜甲37、甲41)。
(6)他方、申立人使用商標の2019年以降の使用状況を明らかに示す証拠は見あたらない。
(7)申立人の所有する、申立人使用商標と同一のつづりからなる引用商標1は、商品「Motor vehicles.」について、令和2年に商標法第3条第2項の適用を受けて商標登録されている(甲42)。
(8)以上によれば、申立人使用商標は、2016年から、申立人の業務に係る電気自動車(以下「使用商品」という。)について使用され、申立人使用商標を付した使用商品は、世界各地で開催されたモーターショーへ出展、各種ウェブサイトや雑誌、新聞等により紹介されたものであり、かつ、申立人使用商標とつづりを同じくする引用商標1が、近年、商標法第3条第2項の適用を受けて登録された経緯があることからすれば、申立人使用商標の直近の使用状況が明らかでないとしても、申立人使用商標は、当該商品の分野において、現在においてもある程度広く知られていると推認できるものである。
したがって、申立人使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、一定程度の周知性を有するものというのが相当である。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「eQart」の文字を横書きしてなるところ、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさ及び等間隔をもって表され、視覚上、まとまりのある一体的なものとして認識されるというのが相当である。そして、当該「eQart」の文字は、辞書等に載録されている語ではなく、特定の意味合いをもって認識されているような実情も見いだせないことから、特定の観念を有しない一種の造語として認識、把握されるものである。そして、特定の語義を有しない造語にあっては、これを称呼する場合には、我が国において親しまれているローマ字読み又は英語の読みに倣って称呼するのが自然である。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「イーカート」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
なお、申立人は、本件商標の構成中「eQ」は、申立人の商品を表す標識として著名な商標「EQ」と同一の文字からなり、「art」は「芸術、美術」を意味し、広く一般に使用されている語であるとした上で、本件商標は、構成文字中の「Q」のみが大文字で表されて看者の目を惹くことから「eQ」と「art」に分離して看取されるものであり、相対的に自他商品識別力が弱い「art」を捨象し、看者に注目される語頭の「eQ」が強く支配的な印象を与え、この部分に着目して取引に供される場合も少なくないから、本件商標は、「eQ」の文字に照応する「イイキュウ」の称呼が生じる旨主張している。
しかしながら、上記1のとおり申立人使用商標「EQ」が一定程度の周知性を有し、「art」が一般に知られている語であるとしても、本件商標は上記のとおり、まとまりよく一体的に認識されるものというのが自然であり、かつ、本件商標の構成中の「eQ」と「EQ」とは大文字と小文字の差異を有し、異なる印象を与えるものであること、さらに、「art」の文字部分が本件商標の指定商品に照らし、とりわけ自他商品識別力が弱いなどともいえないことも考慮すれば、本件商標から殊更「eQ」の文字部分を抽出し、この文字部分のみを他の商標と比較して商標の類否を判断すべき事情は見いだせない。
したがって、申立人の上記の主張は採用できない。
(2)引用商標1
引用商標1は、別掲3のとおり、「EQ」の文字を横書きしてなるところ、これは、申立人使用商標である「EQ」とつづりを同じくするものである。そして、申立人使用商標は、上記1のとおり、その指定商品について、取引者、需要者の間で相当程度広く知られているものといえることからすれば、これと同一の文字からなる引用商標1は、「申立人の周知な商標であるEQ」程の観念を生じるものというのが相当である。
したがって、引用商標1は、その構成文字に相応して「イーキュー」の称呼を生じ、「申立人の周知な商標であるEQ」の観念を生じるものである。
(3)引用商標2
引用商標2は、別掲4のとおりの構成よりなるところ、これは、欧文字の「E」と「Q」をモチーフにデザイン化して表した一種の図形と看取されるものというべきであって、特定の称呼及び観念は生じないとみるのが相当である。
(4)本件商標と引用商標の類否
ア 本件商標と引用商標1の類否
本件商標と引用商標1とを比較すると、両商標はそれぞれ上記のとおりの構成からなるところ、その文字数は5文字と2文字と異なることに加え、その構成文字も、看者の注意をひきやすい語頭において、小文字「e」と大文字「E」の差異を有する上、2文字目の「Q」に続く「art」の3文字の有無において明らかに相違するから、両者は外観において大きく印象が異なり、外観上判然と区別し得る。
また、本件商標から生じる「イーカート」の称呼と、引用商標1から生じる「イーキュー」の称呼を比較すると、両者は音数及び音構成において明らかに相違し、明確に聴別できる。
さらに、本件商標は特定の観念を有しないが、引用商標1は「申立人の周知な商標であるEQ」の観念を生じることから、両者は観念において相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのないものであるから、これらを総合すれば、両者は非類似の商標というのが相当である。
イ 本件商標と引用商標2の類否
本件商標と引用商標2とを比較すると、両商標はそれぞれ上記のとおりの構成からなるところ、本件商標は5文字の欧文字からなるのに対し、引用商標2は一種の図形を表したものとみるのが相当であるから、両者は外観において相紛れるおそれはない。
また、本件商標からは「イーカート」の称呼が生じるのに対し、引用商標2は特定の称呼を生じないものであるから、称呼においても相紛れるおそれはない。
さらに、本件商標と引用商標2は、いずれも特定の観念を生じないことから、観念においては比較できない。
そうすると、本件商標と引用商標2とは、観念において比較できないものの、称呼及び外観において明らかに相違し、相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は非類似の商標というのが相当である。
(5)指定商品の類否について
本件商標の指定商品中、第12類「automobiles; bicycles; motorcycles; remotely controlled land vehicle; unmanned land vehicles; land vehicles for industrial use.」は、引用商標1の指定商品、第12類「Motor vehicles.」及び引用商標2の指定商品、第12類「Motor vehicles and parts thereof(as far as included in class 12).」と同一又は類似するものである。
(6)小括
上記(4)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、上記(5)のとおり、本件商標の指定商品中、第12類の指定商品の一部が引用商標の指定商品と同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人使用商標の周知性
申立人使用商標は、上記1のとおり、取引者、需要者の間において一定程度知られていることがうかがえるものである。
(2)本件商標と申立人使用商標の類似性の程度
申立人使用商標は、引用商標1とつづりを同じくするものであるところ、上記2のとおり、本件商標と引用商標1は、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標と申立人使用商標についても、非類似の商標であって別異の商標というべきものである。よって、両者の類似性の程度が高いとはいえない。
(3)商品の関連性及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品には、申立人使用商標の使用商品と同一又は類似するものが含まれるから、両者は商品の関連性を有し、需要者を共通にする場合がある。
(4)申立人使用商標の独創性について
申立人使用商標は、ありふれた欧文字2文字の組み合わせである「EQ」の構成よりなるものであるから、独創性が高いとはいえないものである。
(5)申立人使用商標が申立人のハウスマークであるかについて
申立人使用商標は、申立人のハウスマークではない。
(6)小括
上記(1)ないし(5)を総合的に判断すれば、申立人使用商標が一定程度広く知られているものであることがうかがわれ、本件商標の指定商品中に、申立人使用商標に係る使用商品と関連性を有する商品が含まれているとしても、本件商標と申立人使用商標の類似性の程度は高いものとはいえず、さらに、申立人使用商標は独創性の高いものでもなく、申立人のハウスマークでもない。
そうすると、本件商標権者が、本件商標をその指定商品について使用しても、取引者・需要者が、申立人もしくは申立人使用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、第12類「全指定商品」について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 本件商標(国際登録第1472674号商標)

別掲2 本件商標の指定商品

別掲3 引用商標1(国際登録第1328469号商標)

別掲4 引用商標2(国際登録第1338969号商標)

異議決定日 2022-05-11 
審決分類 T 1 652・ 261- Y (W12)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 鈴木 雅也
小林 裕子
登録日 2019-04-23 
権利者 FQ IP AB
商標の称呼 イイカート、イイクアート、イイカルト、カート、クアート、カルト  
代理人 園田・小林特許業務法人 
代理人 中村 行孝 
代理人 柏 延之 
代理人 砂山 麗 
代理人 高田 泰彦 
代理人 本宮 照久 
代理人 宮嶋 学 
代理人 今岡 智紀 

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