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審決分類 審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W12
管理番号 1386245 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-09-30 
確定日 2022-01-04 
事件の表示 上記当事者間の国際登録第1364167号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 国際登録第1364167号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1364167号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、2016年11月14日にFinlandにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2017年(平成29年)2月2日に国際商標登録出願、第12類「Automobile wheel rins, vehicle wheel rimsi whecl rims lor automobiles。」を指定商品として、平成30年3月8日に登録査定、同年5月25日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が、引用する登録商標は、以下のとおりであって、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第1771421号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:BBS
登録出願日:1981年(昭和56年)5月30日
設定登録日:1985年(昭和60年)5月30日
書換登録日:2005年(平成17年)11月9日
指定商品:第12類「船舶並びにその部品及び附属品夕航空機並びにその部品及び附属品,鉄道車両並びにその部品及び附属品,自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車。自転車並びにそれらの部品及び附属品,乳母車,入力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー,タイヤ又はチュープの修繕用ゴムはり付け片」
2 登録第5776061号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:2015年(平成27年)1月14日
設定登録日:2015年(平成27年)7月3日
指定商品:第12類「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」並びに第14類,第16類,第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
3 登録第5800203号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:2015年(平成27年)5月27日
設定登録日:2015年(平成27年)10月16日
指定商品:第12類「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車。自転車並びにそれらの部品及び附属品」
4 登録第5800204号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:BBS(標準文字)
登録出願日:2015年(平成27年)5月27日
設定登録日:2015年(平成27年)10月16日
指定商品:第12類「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」
5 登録第6067902号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:2017年(平成29年)9月20日
設定登録日:2018年(平成30年)8月3日
指定商品:第12類「ホイール,ホイールキャップ,航空機。自動車・二輪自動車。自転車用タイヤのバルブ軸用キャップ,自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車。自転草並びにそれらの部品及び附属品」並びに第16類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
なお、以下、引用商標1ないし引用商標5をまとめていう場合は、「引用商標」と、引用商標1ないし引用商標4をまとめていう場合は、「11号引用商標」という。
第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第46号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきものである。
2 請求人及び引用商標の著名性について
(1)BBS社及びBBSジャパン株式会社について
BBS社の発祥は、1970年、2人のドイツ人技師が、シュバルツバルト地方の小さな町シルタッハで自動車部品の製造販売会社を設立したことによる。BBS社が最初に開発したのは、強化プラスチック製エアロパーツであり、当時ヨーロッパで盛んになりつつあったツーリングカーチャンピオンシップ(ETC)のレーシングカーに採用されるようになり、以来、「BBS」は、モータースポーツと深く関わりながらレーシングカー用ホイールの開発、製造にも力を入れ、1972年「スリーピースレーシングホイール」の製造を開始した。
その後、1983年にBBS社と共同出資による日本BBS株式会社を設立、翌1984年に乗用車のアルミ鍛造ホイールを出荷開始した。
1985年にBBS鍛造ワンピースホイールが米SENA−AIAショー技術革新大賞を受賞、初のメーカーOEM供給を開始し、日産スカイラインにオプション設定を行い、1992年にマグネシウム鍛造FTM用レーシングホイールをフェラーリに独占供給を開始した。
1993年にマグネシウム鍛造DTM及びINDY500用レーシングホイールを各チームに供給開始し、1994年にル・マン24時間耐久レース供給ホイール「LM」の量産を開始した。
2002年にフェラーリ革新大賞を受賞し、2011年に世界初超超ジュラルミン鍛造ホイールの量産を開始した。
2013年に「BBSジャパン株式会社」(請求人)に商号変更し、2015年にマグネシウム鍛造ホイールの量産を開始した(甲7)。
以上のとおり、BBS社及び請求人はてフェラーリやル・マン24時間耐久レースに供給する「自動車用鍛造ホイール」の製造メーカーとして、モータースポーツに興味を有する取引者、需要者のみならず自動車の一般需要者間においても広く知られている。
(2)引用商標及びBBS商標(使用商標)の著名性について
請求人は、1991年より現在に至るまで引用商標2、引用商標3、引用商標4、引用商標5及びこれらと社会通念上同一といえる赤や金色で表されたBBS商標(使用商標)を請求人の製造に係る「マグネシウム鍛造ホイール」すなわち「自動車用ホイール」に継続して使用している。
そして、請求人は、モータースポーツや自動車関連の雑誌に、本件商標の登録出願時より以前から継続して引用商標を使用して「マグネシウム鍛造ホイール」の広告宣伝を行っている。
また、請求人の商品カタログ及び請求人ホームページにおいても、「自動車用ホイール」について、引用商標を長年継続使用している。
したがって、引用商標及びBBS商標は、商品「ホイール」について、本件商標の登録出願以前から現在に至るまで我が国のみならず世界的に著名な商標といえる。
このことは以下の証拠から明らかである。
ア 雑誌記事情報
(ア)「MotorMagazine」(モーターマガジン社発行)(甲8〜甲17)
a 2017年(平成29年)2月1日発行の「Motor Magazine 2 2017 No.739」の145頁には「NewGoods&Presents」及び「NewGoods[新商品情報]」欄の下、右側上段に、金色で「BBS」と表示された商品「ホイール」の画像が表示され、「定番ホイールが限定色でイメチェン」のタイトルのもと、「『BBS−LM』に限定色『ネイビーブルー シルバーダイヤカット』、『ホワイトブルエパール シルバーダイヤカット』が登場。価格は9万2340円〜21万6000円で、4月末までの限定販売となる。・・・BBSジャパン」との記事が掲載されている(甲8)。
b 2018年(平成30年)2月1日発行の「Motor Magazine 2 2018 No.751」の114頁には「The Wheel Climax」欄に、中央に金色で「BBS」と表示された「ホイール」、「RE−X」及び「LE&LM−R2018Limited edition」の画像等が表示され、「BBS 2018年のスターダム」のタイトルの横に「鍛造ホイールを知り尽くしたBBSがまたもや衝撃作を発表。都会派SUVに似合う強い個性が目を惹く。」との記事、「2018年に展開予定のBBSのニューフェイスの中にも、個性際立つ顔立ちを持った『SUV&クロスオーバー用』鍛造1ピースホイールが新たに加わる。デザインコンセプトは2016年の東京オートサロンで公開されていたが、ついに市販化されるワケだ。」との記事、及び「驚きだ。BBSの『職人技』は,果たしてどこまで進化するのだろうか。」との記事が掲載されている(甲9)
c 2018年(平成30年)4月1日発行の「Motor Magazine 4 2018 No.753」の4及び5頁(2葉目)には、赤地円中に金色で「BBS」と表示された商品「ホイール」の画像と「FI−R」、「RI−S」及び「LM」のアルミ鍛造ホイールの画像等が表示され、「J泌まで走らせる。」のキャッチコピーとともに、「BBS。それは、新しい価値観の創造。」との記事が掲載され、「BBSジャパン株式会社」及びその右横に「BBS」(赤色で縁取りされた白抜きの文字)が表示されている。
また、当該雑誌の114頁(3葉日)には「The Wheel Climax」欄に、中央に金色で「BBS」と表示された「BBS RI−A」のホイールをはいた車の画像が表示され、「プロがこだわるホイール選びの醍醐味とは?」との記事、「日本刀の製作工程にも採用されている『鍛造』。その『鍛造』技術をアルミホイールの世界で一躍メジャーにしたのが、BBSだった。」との記事、及び「BBSホイールの価値は、実際に履いてみなければわからない。」との記事が掲載されている(甲10)。
d 2018年(平成30年)6月1日発行の「Motor Magazine 6 2018 No.755」の128頁には「The Wheel Climax」欄に、「2018年もBBSで勝ちに行く!」のタイトルのもと、「タイヤのグリップカやトラクションの立ち上がりなどを左右する、と言われるレース用ホイール。・・・2018年は新たに1チームが、BBSを選んだ。」との記事、及び「2017年第4戦SUGOでは,上位4台をBBSユーザーが独占。」との記事が掲載されている(甲11)。
e 2018年(平成30年)8月1日発行の「Motor Magazine 8 2018 No.757」の128買及び129頁には「The Wheel Climax」欄に、「なぜBBSホイールが愛されるのかを、『こよなく愛する人々』に尋ねてみた。」との記事、及び「『小学生の時にモーターマガジン誌の背表紙を飾っていたBBSの広告に感銘を受けて、それ以来いつかは自分もBBSのホイールを履こう1つて決心したんです』ある意味、小学生の人生を左右した名キャッチコピーはこれ。『他から羨ましがられることはあっても、他が羨ましくないホイール』その後、BBSの製造方法や品質へのこだわりを知るにつれて、憧れはますます強まっていった。」との記事、及び「職人たちのワザを目のあたりにすれば、BBSをもっと好きになっていく。」との記事が掲載されている(甲12)。
f 2018年(平成30年)9月1日発行の「Motor Magazine 9 2018 No.758」の128頁には「The Wheel Climax」欄に、「セールスの現場が語る『BBSが売れる理由』」との記事、及び「BBSホイールのリピート率が非常に高いそうだ。・・・店長が考えるBBSホイールの一貫してユーザーに勧められる魅力のポイントは、『変わらないデザインと、飛び抜けて高い耐久性と精度』だという。・・・BBSホイールにとっては、精度にこだわる“人”が繋ぐ信頼性と安心感もまた重要な『商品力』のひとつ、と言えるかもしれない。」との記事が掲載されている(甲13)。
g 2018年(平成30年)10月1日発行の「Motor Magazine 10 2018 No.759」の128頁には「The Wheel Climax」欄に、「BBSジャパン高岡工場見聞録」との記事及び「BBSホイールは商品として、かなり『特別な存在』だという。ユーザー以上に厳しい選択眼が認めた高い信頼と品質は、ある意味それ以上に厳しい『眼』によって支えられている。」との記事が掲載されている(甲14)。
h 2018年(平成30年)11月1日発行の「Motor Magazine l1 2018 No. 760」の 「The Wheel Climax」欄には、ホイールの中央に黒地に金色で「BBS」と表した画像とともに、赤字で「BBS」その後ろに「RE−X」と表示され、「5ブロックで構成されるスポークアレンジに注目」との記事が掲載されている(甲15)。
i 2018年(平成30年)12月1日発行の「Motor Magazine 12 2018 No.761」の128頁には「The Wheel Climax」欄に、「戦うホイールの理想とは元Flドライバーふたりが熱く語る!!」との記事、「小林:ぼくにとってBBSは名門フェラーリとFlをやっていたイメージがすごく強い。」との記事、及び「レースを離れたBBSホイールの印象を、可夢偉は『大人が似合う高級ブランド』にたとえてくれた。」との記事が掲載されている(甲16)。
j 2019年(平成31年)1月1日発行の「Motor Magazine 1 2019 No.762」の129頁には「The Wheel Climax」欄に、「BBS好きが大集合。気軽で楽しい『お茶会』in軽井沢にようこそ!」とのタイトルのもと、「来店して記念撮影に参加した車の台数は、なんと55台。すべてBBS装着車。」、「11月3日(土)/4日(日)、紅葉まっただ中の軽井沢でBBSが『BBSカフェ』を開催した。・・・日曜日はトークショーを開催。・・・お話の中心はもちろん、BBSホイールの魅力。・・・大阪や愛知、千葉からBBSカフェを目指してはるばるやってきた人も多かったようだ。」との記事が掲載されている(甲17)。
k 上記eないし1(甲12〜 甲16)において、中央に赤地円中に金色で「BBS」と表示された商品「ホイール」と「FI−R」、「RI−S」及び「LM」のアルミ鍛造ホイールの画像等が表示され、「心まで走らせる。」のキャッチコピーとともに、「・・・BBs。それは、新しい価値観の創造。・・・BBSジャパン株式会社 BBS(引用商標3を赤で表したもの)」の広告が継続掲載されている。
(イ)雑誌「af imp.」(交通タイムズ社発行)(甲18〜甲26)
a 2015年(平成27年)3月10日発行の「af imp. 2015 4」の50頁には「黒を纏う」のタイトルのもと、「黒の新定番ホイール、BBS CH 8.5JX20インチにブレンボの赤が前後で映えるポイント」との記載とともに、黒地に自で「BBS」の文字が表示されたホイールの画像が掲載されている(甲18)。
b 2015年(平成27年)10月10日発行の「af imp. 2015 11」に「SUPER GT 2015 series #SUZUKA」において、「BMW Sport Trophy T e arn Studie」が第4回「ZFアワード」を受賞した記事が掲載されている(甲19)。
c 2016年(平成28年)2月10日発行の「af imp. 2016 3」イこ「BMW3351 機能美をまとった違いのわかる熟年フォルム」のタイトルのもと、「BBS」を付したホイールを装着したBMW3351が掲載されている(甲20)。
d 2016年(平成28年)8月10日発行の「af imp. 2016 9」に「次世代BBSデザインをスマートに履きこなす」のタイトルのもと、「dort BMW Xl × BBS RS−N」との記事が掲載され、また、ホイール「BBS・LM」を装着した「AUDI S3」の写真が掲載されている(甲21)。
e 2017年(平成29年)2月10日発行の「af imp. 2017 3」には、「BBSジャパン株式会社」の広告が掲載され「BBS」のロゴと自動車ホイールに「BBS」と表示されており、また、当該雑誌の109頁の「Style up Car Contest 2017」欄に、「BBS」を付したホイールを装着した愛車とオーナーの画像が掲載されている(甲22)。
f 2017年(平成29年)7月10日発行の「af imp. 2017 8」には、「BBSジャパン株式会社」の広告が掲載され「BBS」のロゴと自動車ホイールに「BBS」と表示されており、当該雑誌の174頁に、「WHEEL COLLECTION」のタイトルのもと、「リアジレ・エアクラフト・クオリティのアルミ最軽量モデル」として「BBS FI−R」の説明と画像が掲載されている(甲23)。
g 2018年(平成30年)5月10日発行の「af imp. 2018 6」の80頁に、「BBS RE一X SUVのために生み出した先進の造形美スクエアーとクロススポークとの意外な共演」のタイトルのもと、「センターキャップを見ないと、はじめはBBSだと気づかないかもしれない」と記載されており「BBS」のセンターキャップによりホイールの製造元が確認されていることが分かる(甲24)。
h 2018年(平成30年)10月10日発行の「af imp. 2018 11」には、「BBSジャパン株式会社」の広告が掲載され、「BBS」のロゴと自動車ホイールに「BBS」と表示されており、当該雑誌の56頁に、「BBS 足元から差をつけたいAMG C43オーナーヘの贈り物」のタイトルのもと、「見たところ、CクラスクーペにBBSを組み合ゎせたごくオーソドックなコーディネイトに思えるが、見る人によっては、まさかのセットアップだということはすぐにわかる。」と記載され、ホイールのセンターキャップに金字で「BBS」と表示されたベンツの画像が掲載されている(甲25)。
i 2018年(平成30年)12月10日発行の「af imp. 2019 1」には、「BBSジャパン株式会社」の広告が掲載され、「BBS」のロゴと自動車ホイールに「BBS」と表示されており、当該雑誌の92頁に、「BBS JAPAN SHOWROOM × FEAST 老舗ショップ、フィーストがBBSショールームをオープン!」のタイトルのもと、「本当に価値のあるモノを多くの人に知ってもらいたい いまや世界には無数といえるホイールブランドが存在するが、世代を問わず文句なしのメジャーブランドといえるのがBBSだ。」と記載され、「BBS」のホイールが展示されたショールームの画像が掲載されている(甲26)。
(ウ)雑誌「auto sport」(株式会社三栄書房)(甲27〜甲30)
a 2018年(平成30年)3月30日発売の「auto sport2018 4/13号」の60頁に、「ZENT CERUMO LC500 LEXUS TEAM ZENT CERUMO」の記事が紹介され、ヘッドライトの下部分に「BBS」のロゴが付されたレーシングカエの画像が掲載されている。同じく、「DENSO KOBELCO SARDLC500 LEXUS TEAM SARD」の記事が紹介され、ヘッドライトの下部分に「BBS」のロゴが付されたレーシングカーの画像が掲載されている(甲27)。
b 2018年(平成30年)5月11日発売の「auto sport2018 5/25号」の17頁に、「逃げられない関口と近づけない石浦」の記事が紹介され、ヘッドライトの下部分に「BBS」のロゴが付されたレーシングカーの画像が掲載されている(甲28)。
c 2018年(平成30年)5月25日発売の「auto Sport2018 6/8号」の53頁に、「NISSAN GT−R NISMO GT500」の記事が紹介され、ヘッドライトの下部分に「BBS」のロゴが付されたレーシングカーの画像が掲載されている(甲29)。
d 2018年(平成30年)6月8日発売の「auto sport2018 6/22号」に、「CERUMO meets BBS」のタイトルのもと、「5年ぶりのスーパーGT GT500タイトル奪還に向け、LEXUS TEAM ZENT CERUMOが大きな決断を下した。それは、ホイールをBBSにスイッチしたことだ。・・・BBSのホイールは必要な剛性は確保しつつ、コーナリングを始めてから出口までのグリップの安定性がある。グリップ変動が少ない。だから、すごく乗りやすい。・・・BBSという新たな武器とともに、王者へ返り咲く。」との記事が掲載され、車体の側面及びタイヤに「BBS」のロゴが付されたレーシングカーの画像が掲載されている(甲30)。
(工)雑誌「モーターファン別冊 モーターヘッド ホイールブック・IV」(株式会社三栄書房)(甲31)
2017年(平成29年)4月23日発売の「モーターファン別冊 モーターヘッド ホイールブック・IV」に、黒地の円図形内に金色で「BBS」の表示がある商標、「孤高の紋章」及びリム部分に黒地の円図形内に金色で「BBS」の表示がされたホイールを履いた車の画像と「FZ−MG」、「RI−D」及び「LM」のアルミ鍛造ホイールの画像等が表示され、「つよく しなやかに 生きる」のキャッチコピーとともに、「その人生に、BBSホイールを。」、「BBSジャパン株式会社」の記載の右横にBBS(赤色で縁取りされた白抜きの文字)の広告が掲載されている。
また、株式会社橋本コーポレーションが「BBS MOTORSPORT」及び「時代を選ばないレーシングホイール」のタイトルのもと、「長きに渡リモータースポーツシーンに君臨するBBS Motorsport。」と広告を掲載している。
さらに、当該雑誌には、「ホイールと足まわりの密な関係。」とのタイトルのもと、「BBS CI−R × BILSTEIN B16」として、「BBSのような高性能アフターホイールにとって、鬼に金棒のような存在である。」との記事が掲載されている。
加えて、当該雑誌には、「Wheel lndex 2017話題の新作ホイール204」のタイトルのもと、「株式会社阿部商会」の項目には、「BBS ビービーエス」の記事、「自動車産業やアフター市場へ軽合金アルミホイールを供給するリーディングマニュファクチャラーとして知られるBBS。スポーティで軽快なアルミホイールは、モータースポーツにおける幾多の成功も含めて、革新的な技術に裏付けられた卓越したデザインと高品位の生産がトレードマークになっている。」との記事とともに「BBS」のロゴがリム部分に表示されたホイールが表示されており、「BBSジャパン株式会社」の項目には、「BBS JAPAN ビービーエスジャパン」、「量産ホイールの製造において『鍛造』でのみつくり続ける独創のメーカー。・・・常に軽さと強靱さを極める姿勢と世界最高レベルの品質は揺るがない。」との記事とともに「BBS」のロゴがリム部分に表示されたホイールが表示されている。
(オ)雑誌「GT−R Magazine」(株式会社交通タイムス社)(甲32)
平成21年7月1日発行の「GT−R Magazine 087 2009/July」に、「限定1,000台に惹かれて購入を決意!」のタイトルのもと、スカイラインGT−Rの画像及びホイール部分の画像があり、使用商標が確認できる。
(力)雑誌「BMW CONPLETE LEVOLANT 特別編集 WATCH NAVI」(甲33)
「BMW COMPLETE LEVOLANT 特別編集WATCH NAVI 6月号 別冊 2013 vol.56」には、引用商標3及び引用商標4と社会通念上同一といえる態様の「BBS」標章が表示され、ホイール画像内には赤と黒からなる「使用商標」が表示されており、また、「BBSゴールドリムステッカー」、「*ご希望によりレッドエンブレムをご指定いただけます。」及び「日本BBS株式会社」(BBSの部分は引用商標3の赤バージョン)との記載がある。
また、当該雑誌には、「Catch up! New Product」のタイトルのもと、「BBS伝統のクロススポークに期間限定の特別バージョン現る・・・古今東西、BMWの足もとを飾るホイールで不動のナンバーワン人気を誇るBBSブランド。・・・ゴールドの『BBS』リムステッカーや・・・も特別付属品になっている。」との記事が掲載されている。
イ インターネット検索情報(甲34〜甲39)
(ア)タイヤ&ホイールの専門店「e−Craft」(甲34)
タイヤ&ホイールの専門店「e−Craft」のウェブサイトにおける、「おすすめブランド特集」のタイトルのもと、「BBS」が付されたホイールを装着した自動車の画像が表示されている。
(イ)タイヤ&ホイール専門店「小西タイヤ」(甲35)
タイヤ&ホイール専門店「小西タイヤ」のウェブサイトにおいて、「BBS」のホイールが掲載されている。
(ウ)「emerging media Response」(甲36、甲37、甲39)
a 「emerging media Response」のウェブサイト(甲36)において、「鈴鹿10時間耐久、公式予選タイトルスポンサーは『BBS』に決定」の記載がある。
b 「emerging media Response」のウェブサイト(甲37)において、「『BBS』と見間違える『885』ホイール、販売停止処分賠償金支払いへ」の記載、及び「ドイツの高級アルミホイールメーカーBBSは、海賊版製品を販売していたフィンランド・Vannetukku社との法廷闘争に勝利したと発表した。」との記載がある。
c 「emerging media Response」のウェブサイト(甲39)において、「鍛造ホイールの製作過程を公開、BBS...東京オートサロン2019 11枚目の写真(全12枚)」との記載がある。
(工)BBSジャパン株式会社(甲38)
BBSジャパン株式会社のウェブサイトにおける「CRAFTSMANSHIP」のタイトルのもと、「1991年、『F1TM(TMは、1の数字の右上に小さく書されている。以下同じ。)用のマグネシウム鍛造ホイールを開発してほしい』というフェラーリ社からの打診をきっかけに、BBSは本格的にF1TMの世界へ進出。当時はマグネシウムホイールといえば鋳造しかなく、また、マグネシウムはアルミと比べ、軽くて強いものの化学反応により腐食しやすいなどの性質を持っため、鍛造化が不可能とされていました。その中でBBSは独自の技術を駆使し、F1TM用のマグネシウム鍛造ホイールを世界で初めて実現。抜きん出た軽さと強靭さを兼ね備えたBBSを手に入れたフェラーリ社は、1992年から2011年までの間でコンストラクターズタイトル8回、ドライバーズタイトル6回という快挙を成し遂げました。そしてF1TMの世界で鍛えた鍛造技術を活かし、今ではニュル ブルクリンク24時間耐久レース、ル・マン24時間耐久レース、SUPER GT、SUPER FORMULAなど、国内外のメジャーレースに鍛造レーシングホイールを供給。頂点に挑む数々のチームがBBSを採用しています。」の記載がある。
ウ 商品カタログ(甲40〜甲46)
「BBS JAPAN CATALOG 2013 JAN.−JUL.」(甲40)、「BBS 」APAN CATALOG 2013 Aug.― Dec.」(甲41)、「BBS JAPAN FORGED WHEEL CATALOG 2013 DEC.−2014 MAR.」(甲42)、「BBS JAPAN FORGED WHEEL CATALOG 2015 JAN.−2015 JUN.」(甲43)、「BBS JAPAN FORGED WHEEL CATALOG 2016 JAN.−2016 JUN.」(甲44)、「BBS JAPAN FORGED WHEEL CATALOG 2017」(甲45)、及び「BBS JAPAN FORGED WHEEL CATALOG 2018」(甲46)の商品「ホイール」のカタログには、引用商標1、引用商標3と同一又は社会通念上同一といえる赤または金色の「BBS」が表示されている。
工 宣伝広告の状況
請求人は、商品「ホイール」について、雑誌広告掲載及びモーターショーヘの出典、力タログの作成、頒布、インターネット上のホームページの作成などを行っている。
また、2014年から2018年の広告宣伝の費用は、2014年が109,199,853円、2015年が164,234,618円、2016年が158,645,291円、2017年が118,897,905円、2018年が145,506,953円である。
(3)まとめ
以上の各証拠を総合してみれば、請求人及び「BBS」からなる引用商標は、モータースポーツに興味を有する取引者、需要者のみならず自動車の一般需要者間においても、広く知られる著名な商標といえる。
また、請求人の製造に係る「ホイール」は、世界的なレーシングスポーツカーのオフィシャルホイールとしても採用されていることから、その名声は世界的なものといえる。
3 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標について
本件商標は、赤塗り円図形内中央部分に多少斜めの黄色の太文字で「885」を密接して表したものである。
一方、引用商標1は、太文字で「BBS」の欧文字を表したものである。また、引用商標2及び引用商標4は、「BBS」の欧文字を多少斜めの影文字を密接して表したものである。
さらに、引用商標3及び引用商標5は、白又は黒塗り円図形内中央部分に赤又は金色で「BBS」の欧文字を多少斜めの影文字を密接して表したものである。
(2)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標について比較すると、本件商標を構成する「885」は数字であり、これよりは「ハチハチゴ」又は「ハッピャクハチジュウゴ」の称呼を生じ、引用商標は、引用商標を構成する「BBS」の部分よりは「ビービーエス」の称呼を生じ、これよりは特定の観念を有しないものといえる。
次に、本件商標と引用商標の外観について比較する。
本件商標は、やや斜めに表した「885」の数字を密着させた構成よりなるところ、これを注意深く観察したときには容易に数字と認識できるとしても、やや離れた場所や瞬間的に目にしたときには、「885」とは容易に認識できない。特に、本件商標の指定商品との関係では、自動車のホイールの中心に位置する円状の部分が「リム」であり、自動車の車体全体から見ると非常に小さい部分といえる。
そして、自動車のホイールの取引においては、「ホイールのセンターキャップ部分」いわゆるリム部分に商標を付すことが普通に行われている実情が見られる。そうとすると、本件商標は、これが「自動車用のホイール」に使用された場合には、円図形内「885」がやや斜めの太線で互いに密接した数字又は文字が表されたものと認識されるから、本件商標と引用商標とは外観において構成の軌を―にするものといえる。
さらに、引用商標は、請求人が長年「自動車用鍛造ホイール」に使用して我が国のみならず世界的にも広く知られている事実を考慮すれば、本件商標の「885」部分は、これに接した取引者、需要者をして著名な引用商標「BBS」が表示されているかのように誤認させるほど酷似しているというべきである。
そうすると、両者は、外観上相紛らわしい類似の商標というのが相当である。
(3)小括
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼において区別できる場合があるとしても、「自動車用ホイール」の取引の実情及び引用商標が著名であることを総合すれば、商標権者がこれをその指定商品について使用するときには、取引者、需要者をして、著名な引用商標の請求人の業務に係る商品であるかのように出所について混同を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号について
「BBS」は、1991年F1用のマグネシウム鍛造ホイールを世界で初めて実用化に成功して以来、1992年からフェラーリ社へ納入、現在はニュルブルクリンク24時間耐久レース、ル・マン24時間耐久レース、SUPER GT、SUPERFORMULAなど、国内外のメジャーレースの頂点に挑む数々のチームがBBSを採用しており、モータースポーツに興味を有する取引者、需要者及び自動車を所有する一般消費者にも広く認識され ていることが著名性を証明する証拠(甲7〜 甲42)からも明らかである。
請求人は、自動車の重要保安部品であるホイールの常識を完全に打ち破り、一貫して鍛造ホイールを製造、その技術を徹底的に磨き上げてきた結果、我が国における高級車種及び世界の名車に「BBS」商標を付したホイールが装着されている。
そして、請求人の製造、販売する「ホイール」には引用商標及びこれと社会通念上同一といい得るBBS商標が使用されている。
以上の著名性の証拠及び説明のとおり、引用商標は我が国及び世界のモータースポーツの愛好家のみならず、自動車の一般需要者間においても「自動車用鍛造ホイール」の製造メーカー及びその標章として本件商標の登録出願時ないし登録査定時において広く知られていることは明らかである。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品に使用するときには、これに接する取引者、需要者をして、請求人及び請求人と営業上又は組織上密接な関係を有する者の業務に係る商品であるかのように出所について混同を生じさせるおそれがある商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国に行ける需要者の間に広く認識される商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的を持って使用をするものといえる。
請求人の製造、販売に係る商品「ホイール」は、模倣品が出回り、請求人が製造する鍛造ホイールが高品質が売りであるのに対し、偽物はあくまで見た目が似ているだけで機能的な部分が無視されているといった記事が見られる。請求人はこのような「BBS」の偽ブランド商品のその対応に追われているのが実情である。
また、2017年1月27日、フィンランドの裁判所は、「Vannetukku社が使用している885ロゴ商標は消費者を混乱させるものであり,国際的に登録されているBBSの商標を侵害するものである。それに気づきつつも、BBS社の登録商標に類似したロゴを使用してきたことは少なからず過失責任があるといえる。」旨の判決を下し、今後の885ロゴ商標の使用を禁じた上で、BBS社に対する賠償金を支払うことをVannetukku社へ命じている。
このような事情を鑑みれば、本件商標は、請求人が優れた鍛造技術と永年の企業努力によって培ってきた商品「自動車用ホイール」について使用する著名な引用商標に、フリーライドする目的をもって登録出願し、登録を得たものであり、本件商標を使用した商品が市場で流通したときには、我が国の取引者、需要者を欺くことになり、ひいては、請求人の商品「自動車用ホイール」についての信用を失墜させ、希釈化させることは明らかである。
このような行為は、不正の目的を持って我が国の一般消費者を混乱させるものであり、商道徳に反するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当し、その登録は、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対し何ら答弁していない。
第5 当審の判断
本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標及びBBS商標の周知性について
請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、BBS社及び請求人は、モータースポーツに参戦する自動車メーカー等に商品「自動車用鍛造ホイール」を供給する商品「自動車用ホイール」の製造メーカー(甲7)であり、BBSジャパン株式会社(請求人)の前身の日本BBS株式会社は、昭和58年(1983年)に設立された。
その後、平成3年(1991年)以降、商品「自動車用ホイール」に引用商標及びBBS商標を使用していること、引用商標又はBBS商標が使用された商品「自動車用ホイール」は、自動車専門の雑誌(甲8〜甲33)、各種ウェブサイト(甲34〜甲39)や請求人が作成した商品カタログ(甲40〜甲46)により、同21年(2008年)頃から、同30年(2013年)頃まで、継続して宣伝広告されていることがうかがえる。
そして、BBS社及び請求人は、平成3年(1991年)F1用のマグネシウム鍛造ホイールを世界で初めて実用化に成功して以来、同4年(1992年)からフェラーリ社へ納入、現在はニュルブルクリンク24時間耐久レース、ル・マン24時間耐久レース、SUPER GT、SUPERFORMULAなど、国内外のメジャーレースの頂点に挑む数々のチームがBBS社の自動車用ホイールを採用していることも併せ考慮すると、引用商標及びBBS商標は、請求人の製造、販売に係る商品「自動車用ホイール」を表示するものとして、モータースポーツに興味を有する需要者に広く認識されていたといえる。
そうすると、請求人の主張及び請求人が提出した甲各号証によって、引用商標及びBBS商標は、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、請求人の業務に係る商品「自動車用ホイール」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと判断するのが相当である。
(2)本件商標と引用商標及びBBS商標の類似性の程度について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、赤塗りの円図形内中心部に黄色で着色され、多少斜めに書された「885」の数字(以下「本件数字部分」という。)を表してなるものである。
また、赤塗りの円図形は、本件数字部分の後面に配され、赤塗りの円図形の構成全体が把握することができないことから、本件数字部分の背景図形であると認識し得るものである。
そして、本件数字部分は、商品の出所識別標識としての特定の観念が生じるものとは認められないものであり、また、本件数字部分の背景図形と認められる赤塗りの円図形は、我が国において、需要者の間に広く知られている等の事情は確認することができないことから、当該図形は、特定の観念を生じるものとは認められないものであり、本件数字部分のみ又は赤塗りの円図形のみを本件商標の要部と認識するとはいい難く、その構成全体を一体とし て看取されるものである。
そうすると、本件商標は、外観上、構成全体を一体として看取されるものであり、その構成中の本件数字部分から、「ハチハチゴ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標及びBBS商標について
引用商標及びBBS商標は、いずれも「BBS」の欧文字からなる、又は、その構成中に「BBS」の欧文字を含むものであり、引用商標の指定商品及びBBS商標を使用する商品である「自動車用ホイール」との関係で、「BBS」の欧文字が、商品の品質等を表示するものとは認められないものである。
なお、引用商標及びBBS商標は、上記(1)のとおり、請求人の業務に係る商品「自動車用ホイール」を表示するものとして需要者の間で広く知られているものである。
そうすると、引用商標及びBBS商標は、「BBS」の欧文字に相応し「ビイビイエス」の称呼を生じ、「(ブランドとしての)BBS」との観念を生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標及びBBS商標の類似性の程度について
本件商標は、上記アのとおり、赤塗りの円図形内中心部に黄色で着色され、多少斜めに書された本件数字部分を表してなるものであり、「ハチハチゴ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
他方、引用商標及びBBS商標は、上記イのとおり、「ビイビイエス」の称呼を生じ、「(ブランドとしての)BBS」の観念を生じるものである。
そうすると、本件商標と引用商標及びBBS商標とは、称呼及び観念は相違するものである。
しかしながら、本件数字部分の「885」と請求人の業務に係る商品を表す商標「BBS」とは、いずれも、3つの数字又は欧文字3文字を近接して横に並べた態様であり、その字体は太く、かつ、やや右よりに傾斜しており、その角度もほぼ同一であるという特徴が共通していることから、本件商標と引用商標とは、外観上、極めて紛れやすいというべきであるから、類似性の程度は高いといえる。
(3)引用商標及びBBS商標の独創性について
引用商標及びBBS商標に共通する「BBS」の欧文字は、略語等として使用されることが多い欧文字3文字の組み合わせであることから、独創性は高いとはいえない。
(4)商品の関連性、並びに、取引者及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、上記第1のとおり、第12類「Automobile wheelrims;vehicle wheel rims;wheel rims for automobiles.」であり、自動車用又は乗物用のホイールリムであるのに対し、引用商標の指定商品は、いずれも第12類「自動車の部品及び附属品」を含むものである。
また、BBS商標の使用商品は「自動車用ホイール」である。
したがって、本件商標の指定商品と引用商標及びBBS商標の使用商品とは、同一又は類似する商品であり、両商品の関連性の程度は非常に高いものであり、また、これらは、ともに「自動車用の商品」であつて、その取引者、需要者を共通にする商品といえる。
(5)出所の混同のおそれについて
引用商標及びBBS商標は、上記(1)のとおり、本件商標の出願時ないし登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者に広く認識されていたものと認められる。
また、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標及びBBS商標とは外観上、極めて紛れやすいというべきであるから、類似性の程度は高いといえる。
さらに、引用商標の独創性は高いとはいえないものの、本件商標の指定商品と引用商標及びBBS商標の指定商品との関連性が非常に高く、その取引者、需要者を共通にする商品である。
そうすると、本件商標権者が、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者が、引用商標及びBBS商標を想起又は連想するというべきであり、当該商品が、請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について、混同を生じさせるおそれがあるというべきものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)引用商標5について
引用商標5は、2017年(平成29年)9月20日に登録出願されたものであり、本件商標の国際商標登録出願日(2017年(平成29年)2月2日)(優先日:2016年(平成28年)11月14日)の後に出願されたものであるから、引用商標5は、商標法第4条第1項第11号に規定する「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標」に該当しない。
したがって、本件商標は、引用商標5との関係においては、商標法第4条第1項第11号に違反して登録がされたものではない。
(2)本件商標について
上記1(2)アのとおり、本件商標は、外観上、構成全体を一体として看取されるものであり、その構成中の本件数字部分から、「ハチハチゴ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(3)11号引用商標について
11号引用商標は、いずれも「BBS」の欧文字からなる、又は、その構成中に「BBS」の欧文字を含むものであり、11号引用商標の指定商品との関係で、「BBS」の欧文字が、商品の品質等を表示するものとは認められないものである。
なお、11号引用商標は、請求人の業務に係る商品「自動車用ホイール」を表示するものとして需要者の間で広く知られているものである。
そうすると、11号引用商標は、「BBS」の欧文字に相応し「ビイビイエス」の称呼を生じ、「(ブランドとしての)BBS」の観念を生じるものである。
(4)本件商標と11号引用商標との類否及び指定商品の類否について
ア 本件商標と11号引用商標との類否について
本件商標は、赤塗りの円図形内中心部に黄色で着色され、多少斜めに書された本件数字部分を表してなるものであり、11号引用商標は、欧文字「BBS」からなる、又は、欧文字「BBS」を含む構成態様であるところ、本件数字部分の「885」と11号引用商標を構成する又は引用商標の構成中の「BBS」とは、いずれも、3つの数字又は欧文字3文字を近接して横に並べた態様であり、その字体は太く、かつ、やや右よりに傾斜しており、そ の角度もほぼ同一であるという特徴が共通していることから、本件商標と11号引用商標とは、外観上、極めて紛れやすいというべきである。
次に、本件商標と11号引用商標の称呼を比較すると、本件商標は、「ハチハチゴ」の称呼を生じるのに対し、11号引用商標は、「ビイビイエス」の称呼を生じるものであり、その構成音数及び音構成が明らかに異なることから、両商標は、称呼上、相紛れるおそれはないものである。
さらに、本件商標は、特定の観念を生じないものであり、11号引用商標は、「(ブランドとしての)BBS」との観念を生じるため、観念において相紛れるおそれはないものである。
そうすると、本件商標と11号引用商標は、外観上極めて紛れやすいものであるものの、両商標は、称呼及び観念において、相紛れるおそれはないものであり、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本件商標と11号引用商標は互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
イ 本件商標の指定商品と11号引用商標の指定商品の類否について
本件商標の指定商品と11号引用商標の指定商品とは、上記1(4)のとおり、同一又は類似の商品である。
(5)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標5との関係においては、商標法第4条第1項第11号に該当しないものであり、本件商標と11号引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品が11号引用商標の指定商品と同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標及びBBS商標は、請求人の業務に係る商品であることを表示するものとして我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものであるとしても、本件商標と引用商標及びBBS商標は、非類似の商標である。
また、本件商標権者は、フィンランドの裁判所により、ドイツBBS社に対し賠償金を支払うことを命じられたVannetukku社とは異なる法人であり、Vannetukku社との何らかの関係を有する者であると認めるに足る証拠は見いだせない。
さらに、請求人の提出した証拠からは、本件商標権者が、日本国内で、請求人の製造、販売に係る商品「ホイール」の模倣品を製造し、販売した事実について、確認することができない。
そうすると、本件商標権者は、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他不正の目的をもって本件商標を登録出願し、登録を受けたと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項19号に該当しないとしても、同項第15号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)(色彩は、原本を参照されたい。)

別掲2(引用商標2)(色彩は、原本を参照されたい。)

別掲3(引用商標3)

別掲4(引用商標5)(色彩は、原本を参照されたい。)

審理終結日 2020-09-30 
結審通知日 2020-10-07 
審決日 2021-07-27 
審決分類 T 1 11・ 261- Z (W12)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 小俣 克巳
豊田 純一
登録日 2017-02-02 
商標の称呼 ハッピャクハチジューゴ、ハチハチゴ 
代理人 特許業務法人 英知国際特許事務所 

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