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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W3544
管理番号 1385421 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-07 
確定日 2022-06-03 
異議申立件数
事件の表示 登録第6418297号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6418297号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6418297号商標(以下「本件商標」という。)は,「Hello Medica」の欧文字を標準文字で表してなり,令和2年10月19日に登録出願,第35類及び第44類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として,同3年7月6日に登録査定,同月19日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標に係る登録異議の申立の理由において引用する登録商標は次のとおりであり(以下,これらをまとめて「引用商標」という。),いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4085231号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成6年12月20日
設定登録日:平成9年11月21日
指定役務:第35類「商品又は役務の販売促進のための展示会の企画・運営又は開催」
(2)登録第4185481号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:MEDICA
登録出願日:平成8年5月29日(優先権主張:1995年(平成7年)12月21日 ドイツ連邦共和国)
設定登録日:平成10年9月4日
指定役務:第35類「商品の販売及び役務の提供のための見本市及び展示会の企画・運営又は開催」
(3)国際登録第748164号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:Medica
登録出願日:2000年(平成12年)9月20日
設定登録日:平成13年8月31日
指定商品・役務:第16類,第35類,第38類,第41類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載の商品及び役務

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第10号,同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第29号証を提出した。
(1)申立人名義の商標について
ドイツをはじめ世界各国において,機械・機器・プラント等に関するメッセ(見本市)の開発・企画・運営に従事している申立人(甲2)が手掛けてきた医療機器展「MEDICA」は,世界最大の国際医療機器展である(甲3)。
1969年より現在まで,ドイツ・デュッセルドルフで毎年11月に開催されている国際医療機器展「MEDICA」は,50年以上の歴史を有し,コロナ禍以前の2019年には,出展者5500社,来場者12万1千名(そのうちの2/3は,ドイツ以外の約170の国からの来場者)という極めて大きな規模の見本市となった。日本からも,毎年多くの企業が出展し,2019年には,同時に行われた国際医療機器部品展「COMPAMED」の参加企業を含めて合計197社が出展した。
また,申立人は,国際医療機器展「MEDICA」に関連するイベントを日本でも開催しているから(甲3),申立人が企画・運営する国際医療機器展「MEDICA」は,申立人の本国ドイツをはじめ日本を含む世界各国において,当該業界の取引者・需要者により広く知られている。
さらに,申立人は,我が国において,引用商標の登録により商標的な保護を図ってきた。
(2)世界各国において周知著名であること
「MEDICA」に関する,統計資料(甲7〜甲10),見本市等に関する認証機関FKMによる認証写し(甲11),「MEDICA」2018への日本からの出展者数(80社以上)(甲12),「MEDICA」の日本向けカタログ写し(甲13〜甲21),「MEDICA」の日本向け概要説明,基本情報説明(甲22,甲23),「MEDICA」の日本向けカタログ作成に関するインボイス(甲24),「日経メディカル」及び「新医療」に掲載された「MEDICA」の広告抜粋(甲25〜甲28)により,国際医療機器展「MEDICA」は,我が国を含む世界各国において周知著名である。
(3)商標法第4条第1項第10号,同項第11号及び同項第15号該当性について
ア 本件商標の指定役務のうち,類似群コード「35A01」,「35B01」及び「42P02」に属する第35類「広告業,医療経営に関するコンサルティング及びこれに関する情報の提供,福利厚生事業に関するコンサルティング及びこれに関する情報の提供,経営の診断又は経営に関する助言,事業の管理,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,コンピュータデータベースへの情報編集」は,引用商標に関する指定役務と相互に同一又は類似の関係にある。
また,引用商標が世界最大の国際医療機器展の名称であることから,その役務の内容や対象となる取引者・需要者の共通性等を考慮すれば,上記以外の第35類「広告用具の貸与,診療報酬請求事務・医療事務・経理事務・労務事務及びその他の一般事務の受託,消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供,介護用を含む医療機器の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」や第44類「介護,人材派遣による介護,介護に関する情報の提供及びコンサルティング,介護施設の紹介又は取次ぎ,介護用を含む医療機器の貸与,介護用歩行器の貸与,介護用リフト又は介護用移動リフトの貸与,床ずれ防止マットの貸与,医療用機械器具の貸与,医療情報の提供,健康診断,栄養の指導」等については,引用商標が実際に使用される商品・役務と関連性が高いと考えるのが妥当である。
イ 本件商標と引用商標との類否
本件商標の構成中の前半部分「Hello」は,「やあ」のような意味合いで挨拶や呼び掛けとして使用されたり,「もしもし」のような意味合いで電話での呼び掛けや応答として用いられる言葉として,その音訳表記である片仮名の「ハロー」とともに,我が国でもごく日常的に使用されるありふれた言葉である(甲29)。
そうすると,本件商標の要部は,造語と考えられる後半部分の「Medica」にあると考えるのが相当であるから,本件商標と引用商標は,共通の構成要素である欧文字から生じる称呼「メディカ」を共通とする相互に類似の商標と考えるのが妥当である。
また,本件商標全体から生じる「やあ,Medica」や「もしもし,Medica」という観念は,ある種引用商標に呼び掛けているようにもみえるから,本件商標は,構成要素全体として観念上引用商標に近接し,取引者・需要者により,引用商標の一種のシリーズ商標のように把握・認識されるおそれがあることを否定できない。
そうとすると,「医療や介護に関する機械器具に関するサービス」との関係における引用商標の国際的な周知著名性も考慮すると,本件商標がその指定役務に使用された場合には,引用商標との関係において,我が国の取引者・需要者に対して役務の出所について混同を生じさせるおそれが高いと考えるのが妥当である。
ウ 仮に両商標が相互に類似する関係にあるとはいえない場合であっても,a)本件商標の指定役務が引用商標の指定役務と同一又は類似するか,又は内容や需要者・取引者層等の共通性に基づき高い関連性を有すること,b)本件商標と引用商標が相互に類似するか又は極めて近似すること,c)引用商標が本件商標の登録出願時のはるか前から現在に至るまで我が国を含む世界各国で周知著名の状態にあったこと等を考慮すれば,本件商標に接する取引者・需要者は,あたかも申立人が企画・運営する国際医療機器展,あるいは申立人と一定の関係性を有する役務かのごとく役務の出所について混同するおそれがある。
そして,役務の出所について混同を生じる本件商標の登録を認めることは,商標の使用する者の業務上の信用を維持し,需要者の利益を保護することを目的とする商標法の趣旨に反する。
エ まとめ
上記アないしウを考慮すると,本件商標は,引用商標との関係において商標法第4条第1項第10号,同項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものである。

3 当審の判断
(1)引用商標の周知性
ア 申立人の提出に係る証拠及び主張によれば,以下の事実が認められる。
(ア)申立人は,1947年以来,メッセを開発・企画・運営をしてきたドイツの法人(甲2)であって,デュッセルドルフにおいて,国際医療機器展「MEDICA」(以下「申立人医療機器展」という場合がある。)を毎年開催している(甲3)。
(イ)申立人医療機器展は,ドイツ・デュッセルドルフにおいて開催され,日本からは2016年(11月14日〜17日)は113社,2017年(11月13日〜16日)は108社,2018年(11月12日〜15日)は90社,2019年(11月18日〜21日)は112社が日本から参加している(甲3)。
(ウ)2011年から2019年までの申立人医療機器展の日本向けカタログの表紙には,赤と青で着色された引用商標1と同一の構成からなる標章が付されており,本文中にも色彩は異なるものの引用商標1と同一の構成からなる標章が表示されている(甲13〜甲21)。
また,平成28年(2016年)には,当該カタログが日本国内で538件発送されていることがうかがえる(甲24)。
(エ)2018年9月及び2019年9月発行の「日経メディカル」及び「新医療」において,申立人医療機器展は,ドイツ・デュッセルドルフ開催の世界最大の医療機器展又は世界最大の医療展示会として,その広告が掲載されているところ,当該広告には,赤と青で着色された引用商標1と同一の構成からなる標章が付されている(甲25〜甲28)。
(オ)申立人医療機器展の2021年及び2022年の開催日は,本件商標の登録査定後のものである(甲22,甲23)。
イ 以上の事実によれば,申立人は,引用商標1と同一の構成からなる標章をカタログ及び広告に使用した国際医療機器展「MEDICA」(申立人医療機器展)を毎年1回開催しており,日本から企業が出店していることがうかがえる。
しかしながら,申立人医療機器展は,年に1度4日間ドイツ・デュッセルドルフにおいて開催されているものであって,医療機器関連業者向けの専門性の高いものである。また,日本企業についての出店は,最多で2016年の113社(甲3)であるが,それほど多いとはいえない。さらに,我が国向けカタログは,2016年に538件発送されたことがうかがえるものの,その数はさほど多いものとはいえないし,他の年における頒布部数及び頒布地域が不明である。そして,雑誌広告も「日経メディカル」及び「新医療」のわずか2誌である。その他,当該医療機器展に関する事業規模,営業利益,市場占有率等の実績並びに引用商標に係る広告宣伝の費用など,その周知性を客観的に判断し得る具体的な証拠は提出されていない。
そうすると,提出された証拠をもってしては,引用商標の周知性を認めるには不十分といわざるを得ないものであり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間に,引用商標が申立人の業務に係る「国際医療機器展」を表示するものとして,我が国又は外国の需要者に広く認識されていると認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は,上記1のとおり,「Hello Medica」の欧文字を標準文字で表してなり,構成中の「Medica」の文字が看者の注意を引くような態様とはいえない。また,その構成文字全体から生じる「ハローメディカ」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。そして,「Hello」の文字が挨拶に使用する語であるとしても,かかる構成からこれを省略する特段の事情は見いだせない。
そうすると,本件商標は,同書同大にまとまりよく表された全体の文字に相応して,「ハローメディカ」の称呼を生じ,当該文字は,辞書等に載録が認められないから,特定の観念を生じないものである。
他方,引用商標1は,別掲のとおり,図形と「MEDICA」の欧文字との組み合わせからなり,該文字に相応して,「メディカ」の称呼を生じ,当該欧文字は,辞書等に載録が認められないから,特定の観念を生じないものである。
また,引用商標2は,「MEDICA」の欧文字,引用商標3は,「Medica」の欧文字を書してなるから,該文字に相応して,「メディカ」の称呼を生じ,当該欧文字は,辞書等に載録が認められないから,特定の観念を生じないものである。
そこで,本件商標と引用商標とを比較するに,両商標は,「Hello」の文字の有無に差異を有するから,外観上相違し,また,称呼において,本件商標から生ずると認められる「ハローメディカ」の称呼と,引用商標から生じる「メディカ」の称呼とは,「ハロー」の音の有無において差異を有し,6音と3音という構成音数が相違し,短い音構成において十分に聴別し得るものである。
また,観念においては,両商標ともに特定の観念が生じないから,これを比較することができないものである。
してみれば,本件商標と引用商標は,外観,称呼において相紛れるおそれがなく,観念において比較できないものであるから,両者の外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
したがって,本件商標と引用商標は非類似の商標であるから,両商標の指定役務が類似するとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものとはいえない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
商標法第4条第1項第10号は,「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって,その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」と規定されている。
引用商標は,上記(1)のとおり,申立人の業務に係る「国際医療機器展」を表すものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
また,本件商標と引用商標とは,上記(2)のとおり,非類似の商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものであるから,同号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知・著名性について
引用商標は,上記(1)のとおり,申立人の業務に係る「国際医療機器展」を表すものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の又は外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
イ 本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標と引用商標は,上記(2)のとおり,相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものであるから,両者の類似性の程度は低いものというべきである。
ウ 出所の混同のおそれについて
以上のことから判断するに,引用商標は,上記アのとおり,申立人の取扱いに係る役務を表示するものとして,我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているとは認めることはできないものであり,また,上記イのとおり,本件商標は,引用商標との類似性の程度も低いことからすれば,本件商標の指定役務中の一部に申立人の取扱いに関連する役務があるとしても,本件商標に接する取引者,需要者が,申立人に係る引用商標を連想又は想起するものということはできない。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定役務について使用しても,取引者,需要者が,引用商標を連想又は想起することはなく,その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
エ 小括
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第10号,同項第11号及び同項第15号に該当するとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲

別掲 引用商標1




(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-05-26 
出願番号 2020129017 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W3544)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大森 友子
特許庁審判官 馬場 秀敏
清川 恵子
登録日 2021-07-19 
登録番号 6418297 
権利者 株式会社Hello Medica
商標の称呼 ハローメディカ 
代理人 大橋 啓輔 
代理人 外川 奈美 
代理人 青木 篤 

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