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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0305
管理番号 1385419 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-09-10 
確定日 2022-05-21 
異議申立件数
事件の表示 登録第6406292号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6406292号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6406292号商標(以下「本件商標」という。)は,「テトリスケア」の片仮名を標準文字で表してなり,令和2年1月8日に登録出願,第3類及び第5類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として,同3年5月28日に登録査定され,同年6月23日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は次の(1)のとおりであり,同項第15号,同項第19号及び同項第7号に該当するとして引用する商標は次の(1)ないし(11)のとおりである(以下,これらをまとめて「引用商標」という。)。なお,引用商標に係る商標権はいずれも現に有効に存続している。
(1)登録第6238193号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 TETRIS(標準文字)
指定商品 第3類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成31年2月5日
設定登録日 令和2年3月23日
(2)登録第2437078号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 TETRIS
指定商品 第16類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成2年3月28日
設定登録日 平成4年7月31日
書換登録日 平成14年7月17日
(3)登録第2448218号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 TETRIS
指定商品 第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成2年3月28日
設定登録日 平成4年8月31日
書換登録日 平成14年7月24日
(4)登録第2618711号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 TETRIS
指定商品 第28類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成元年3月28日
設定登録日 平成6年1月31日
書換登録日 平成15年9月10日
(5)登録第5014801号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 TETRIS(標準文字)
指定役務 第35類,第38類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成18年2月14日
設定登録日 平成19年1月5日
(6)登録第5225727号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の態様 TETRIS(標準文字)
指定商品 第14類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成20年8月26日
設定登録日 平成21年4月24日
(7)登録第5781077号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の態様 TETRIS(標準文字)
指定商品 第30類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成27年4月2日
設定登録日 平成27年7月24日
(8)登録第6408691号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の態様 TETRIS(標準文字)
指定商品 第9類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成31年2月18日
設定登録日 令和3年6月29日
(9)国際登録第881009号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の態様 別掲のとおり
指定商品 第9類,第25類及び第28類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
国際商標登録出願日 2006年(平成18年)2月6日
設定登録日 平成19年9月28日
(10)国際登録第1133174号商標(以下「引用商標10」という。)
商標の態様 TETRIS
指定商品 第28類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
国際商標登録出願日 2012年(平成24年)7月26日
設定登録日 平成25年9月13日
(11)国際登録第1212154号商標(以下「引用商標11」という。)
商標の態様 TETRIS
指定商品 第9類及び第11類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
国際商標登録出願日 2014年(平成26年)7月2日
設定登録日 平成27年5月1日

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号,同項第15号,同項第19号及び同項第7号に該当するものであるから,その登録は,同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第52号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標1の概要
本件商標は,「テトリスケア」の片仮名(標準文字)からなり,第3類及び第5類の商品を指定するものである。
一方,引用商標1は,「TETRIS」の欧文字(標準文字)からなり,第3類の商品を指定するものである。
イ 本件商標と引用商標1の指定商品の類似性について
本件商標及び引用商標は,共に「化粧品,香料,薫料」を指定している点で商品が共通する。
また,「類似商品・役務審査基準」によれば,本件商標に係る第3類の指定商品中「口臭用消臭剤,動物用防臭剤」及び「歯磨き」と引用商標1の指定商品「身体の衛生用口臭消臭剤」及び「練り歯磨き」はそれぞれ同一の商品群に分類されており,互いの商品は類似と推定される商品である。
更に,特許情報プラットフォーム(J−PlatPat)の「商品・役務名検索」によれば,本件商標に係る第3類の指定商品中「せっけん類」と引用商標1の指定商品「顔用せっけん」は同一の類似群コードが付与されていることから,互いの商品は類似する。
よって,本件商標に係る第3類の指定商品全てと引用商標1の指定商品とは,商品において同一又は類似するものである。
ウ 本件商標の分離観察の可否について
本件商標は,上記のとおり標準文字からなる商標であるが,本件商標の構成中その語頭に配された「テトリス」の文字及びその称呼からは,申立人の所有する著名なゲーム名かつ登録商標「TETRIS」が容易に導き出される(甲13)。また,ゲーム名「TETRIS」は造語であって,「テトリス」と表記される場合があることも周知のとおりである。
したがって,本件商標中「テトリス」の語は,極めて識別力が高く,取引者・需要者に対して強く支配的な印象を与えるものである。
一方,「ケア」の語は,「手入れ」を意味する英語「Care」を日本語に取り入れた外来語であって,普通一般に広く使用されている(甲14の1)。
また,化粧品やせっけん等を取り扱う業界において,口腔や肌や頭髪の手入れはそれぞれ「口腔ケア」「スキンケア」「ヘアケア」と称され,それらの手入れに使用される商品である「口腔ケア商品」「スキンケア商品」「ヘアケア商品」も多数製造販売されていることから(甲14の2),第3類の指定商品との関係において「ケア」の語は,効能・用途を普通に用いられる方法で表示するものであって,当該部分は識別力を有しないか識別力の極めて弱い文字といえる。
してみれば,本件商標は識別力の高い「テトリス」の文字と識別力を有しない「ケア」の文字を単に繋げただけに過ぎず,本件商標の「テトリス」の文字部分と「ケア」の文字部分とが,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められず,本件商標から「テトリス」の文字部分が要部として認識されるものである。
エ 本件商標と引用商標1の対比
本件商標から要部である「テトリス」の文字部分を抽出した場合,同部分からは「テトリス」の称呼が生じ,引用商標1と共通する。
次に,観念についてみると,引用商標1等の「TETRIS」の語源は「Tetromino(テトロミノ)」と「テニス(Tennis)」を掛け合わせた造語であるとされているところ(甲15),申立人の所有する著名なゲーム名「TETRIS」並びにそのプレイ画面を意味する造語「TETRIS(テトリス)」が想起されるため(甲13),本件商標に接した取引者・需要者は「テトリス」部分を申立人の著名なゲーム名「TETRIS(テトリス)」と同義であると自然に理解するのが通常である。
また,両者の外観は片仮名と欧文字の相違があるものの,片仮名とローマ字の文字の表示を相互に変更することは普通に行われているところであって,当該ゲーム名は,片仮名の「テトリス」と表記した場合であっても十分にゲームの名称であると理解・認識されている(甲16,甲17)。
なお,審査基準に記載のように「識別力を有しない文字を構成中に有する結合商標は,原則として,それが付加結合されていない商標と類似する」から,「テトリス」と「ケア」の結合商標である本件商標は,識別力を有しない文字「ケア」が付加されていない「TETRIS(テトリス)」商標と類似する。
オ 小括
上記アないしエより,本件商標と引用商標1は,第3類において商品が同一・類似であって,称呼及び観念において類似する。
したがって,本件商標のうち第3類に係る登録は,商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標について
引用商標2ないし4及び引用商標10及び引用商標11については,「TETRIS」の欧文字で表してなり,称呼及び観念については,引用商標1と同様である。
引用商標5ないし引用商標8については,引用商標1と同様の構成となっているから,3点観察においては引用商標1と同一である。
引用商標9については,青い「T」字の図形と,その「T」字の横棒の中に,図形化した「TETRIS」の欧文字を入れ込んだ構成となっており,「T」字の横棒部分に文字が収まっていることから,外観上の一体性は強くなっている。また,「TETRIS」部分から「テトリス」の称呼が生じ,著名なゲーム名「TETRIS」並びにそのプレイ画面を意味する造語「TETRIS(テトリス)」が観念される。
なお,本件商標と引用商標2ないし引用商標11とは,商品・役務が異なる。
イ 引用商標の周知性
申立人の商標「TETRIS」は,ソビエト連邦(現・ロシア)の科学者アレクセイ・パジトノフらにより1984年に考案されたコンピュータゲームであり,1985年にパーソナル・コンピュータに搭載された(甲15,甲16)。
1980年代末から1990年代初めにかけて世界各国で大流行し,我が国においては,1988年にセガ・エンタープライゼス(現・株式会社セガ。以下「セガ」という。)から発売されたアーケード版(セガ・システム16版)の人気により浸透した(甲18)。
また,1988年12月に発売されたファミリーコンピュータ(ファミコン)版においても,国内出荷本数約181万本(歴代95位),世界累計出荷本数558万本(歴代82位)の売上を記録し,国内においては品薄状態が続いた(甲19〜甲21,甲23)。
1989年に任天堂から発売されたゲームボーイ版も大人気となり(甲21〜甲23),ゲームボーイ版「テトリス」は,国内出荷本数約424万本で歴代第14位,世界累計出荷本数3026万本で歴代6位の売上を記録している(甲23)。
また,2006年に任天堂から発売されたニンテンドーDS版も,国内出荷本数約138万本で歴代第157位,世界累計出荷本数274万本で歴代195位の売上を記録している(甲23)。
その後もNintendo SwitchやWii(共に任天堂),PlayStation(ソニー・コンピュータエンタテインメント),Xbox(マイクロソフト)などにおいてプレイされ続けており,ゲーム人気は未だ衰えを知らない(甲24〜甲27)。
更には,同じく落ち物パズルゲームであるセガの「ぷよぷよ」とのコラボレーションとして,「ぷよぷよテトリス」が2014年に発売され,テレビCMは2014年1月25日より全国でオンエア(甲28,甲29の1),全世界で出荷本数140万本を突破し(甲29の2),第2弾「ぷよぷよテトリス2」は2020年12月に発売され,テレビCMは同年12月3日より全国でオンエアされた(甲29の2〜甲34)。
他には,ディー・エヌ・エー「モバゲータウン」のテレビCM(甲28,甲35),KDDIのブランド「AU」のテレビCM(甲28),サントリー「伊右衛門 特茶(飲料)」のテレビCM(甲36),関西テレビ放送の「R1 ぐらんぷり 2015」(甲28),テレビ朝日の「くりぃむクイズ ミラクル9」(甲37,甲38)において,「TETRIS」のゲーム画面が登場等している。
また,2017年12月1日ないし2018年2月28日には「あべのハルカス(近鉄不動産)」3周年イベント(第8弾)として,展望台「ハルカス300」の壁面にTETRISのゲーム画面を投影してプロジエクションマッピングを体験するイベントが開催された(甲39,甲40)。
ごく最近においては,UHA味覚糖株式会社の積んで遊べるブロック形状のグミ「つむグミ」とコラボレーションした菓子が販売され(甲41),2021年4月12日からの先行発売に伴いフジテレビの生活情報番組「ノンストップ!」において紹介された(甲42)。
その他にも,菓子・Tシャツ・お弁当箱・団扇など様々な商品・モチーフにTETRISの文字やゲーム画面・ゲーム中に出てくるブロック(テトロミノ)が採用されており(甲43〜甲47),世界中で様々な形で移植・アレンジされ続けていることが分かる。
更に,「テトリス」の持つ数学性,動的性,知名度,並びに実装の平易性から,ゲームプログラミングの練習題材としても「テトリス」が用いられている(甲48)。
なお,「TETRIS(テトリス)」の著作権及び商標権は,現在,申立人が一元管理しており,上記各ゲーム及びそれらの宣伝広告等において,同社からザ・テトリス・カンパニー(The Tetris Company,LLC)を介し,各メーカーにライセンスする形を取っている(甲49)。
そのライセンス数は,国内26社,海外59社にも達しており,国内メディアには138件登場している(甲50,甲51)。なお,メディア等に「TETRIS(テトリス)」が登場する際には,公式ライセンスの証として,例えば「Tetris[R]&[C]1985〜2017 and Tetris trade dress owned by Tetris holding.」(異議決定注:「[R]」は○の中に「R」の記号,「[C]」は○の中に「C」の記号である。)などの表示がなされる(甲37)。
このように,「TETRIS(テトリス)」は,本件商標の出願日以前から現在に至るまで,日本のみならず世界中で人気のゲームとしてプレイされ続けている。
これらの事実に加えて,特許情報プラットフォーム「J−PlatPat」における「日本国周知・著名商標検索」において引用商標2が掲載されている事実からも(甲52),申立人の商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品・役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されているというのが相当である。
ウ 出所の混同について
上述のとおり,a)本件商標と引用商標は類似しており,b)引用商標2は本件商標の登録出願時及び登録査定時において我が国において周知・著名であって,その著名性は現在においても継続しているものと認められる。更に,c)「TETRIS」は造語よりなるものであって,d)本件商標に係る商品は,申立人の登録商標に係る指定商品・指定役務のほとんど非類似の商品である。e)本件商標の指定商品は日常的に消費される性質の商品である一方,ゲームは老若男女問わずプレイできるものであって,その需要者は特別の専門的知識を有する者ではない点で共通し,商品を購入するに際して払われる注意力はさほど高いものではない。とすれば,本件商標の指定商品とゲームの需要者はともに一般消費者と考えられ,「TETRIS」等の表示の著名性は,本件商標の指定商品の需要者にも及んでいると認められる。
これらの事由を考慮すると,商標権者が本件商標を指定商品について使用するときは,これに接した取引者,需要者は,申立人やザ・テトリス・カンパニーと経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務等であると誤認し,その商品等の需要者が商品等の出所について混同するおそれがあるといわざるを得ない。
更に,商標審査基準によれば,「他人の著名な商標と他の文字と結合した商標は,商品等の出所の混同を生ずる恐れがあるものと推認して取り扱う」ところ,引用商標2は著名商標であるから,商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとみるのが相当である。
エ 小括
したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
上述したように,引用商標(特に引用商標11)が,我が国及び外国において,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品の出所を表示するものとして需要者の間に広く知られていたことは明らかである。また,周知の引用商標は造語よりなるものであって,その使用に伴って蓄積された固有かつ強力な識別力を有する。更に,申立人からライセンスを受けた各メーカーによって,我が国においてそれらの指定商品が長年にわたり販売されている。一方,本件商標は,申立人からライセンスを受けない者によって採択,使用される商標であり,周知商標の称呼である「テトリス」の文字を配置したものである。
このように,本件商標は,既に我が国における需要者の間に広く認識されている引用商標を利用するものであり,それらが有している顧客吸引力へのただ乗り又は希釈化を意識した,不正の目的をもって出願されたものといわざるを得ない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第19号に違反してなされたものである。
(4)商標法第4条第1項第7号について
先に述べたように,「TETRIS(テトリス)」の語は,開発者の創作による造語であるから,本件商標は他人の創作に係る商標を剽窃するものであり,著名・周知商標の人気や名声・顧客吸引力に便乗するものであることは明らかである。
また,本件商標がその指定商品に使用された場合,当該商品があたかも申立人又は申立人からライセンスを受けた商品であるかのごとく取引者,需要者に認識され,商取引の秩序を混乱させるおそれがある。
更に,申立人・ライセンシー等の長年の企業努力にただ乗りするものであり,社会公共の利益に反し,公の秩序を乱すおそれがあり,ひいては国際信義に反するものといわざるを得ない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号に違反してなされたものである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証,同人の主張及び職権調査(インターネット情報,新聞記事情報など)によれば,「TETRIS」(大文字と小文字の異なるものを含む。)及び「テトリス」はコンピュータゲームの名称であり,当該ゲーム(以下「引用ゲーム」という。)に係るコンピュータプログラム(以下「申立人商品」という。)は1980年代半ばにパソコンゲームとして発売された後,我が国においては1988年から販売されていることが認められ(甲15〜甲24,ほか),申立人商品は任天堂など申立人のライセンシーが製造,販売していることが推認できる(甲15,甲25,甲45の1,甲49)。
また,申立人商品は,2018年末における累計出荷本数において,1989年に発売されたゲームボーイ版が国内累計では約424万本で歴代第14位,世界累計では3026万本で歴代6位であり,1988年に発売されたファミリーコンピュータ版が国内累計では約181万本で歴代95位,世界累計では558万本で歴代82位であったこと(甲23),引用ゲーム,引用ゲームの画面及び「TETRIS」「テトリス」の文字は,他社とのコラボレーションにより,コンピュータゲーム,菓子,Tシャツなどの商品,イベントなどに用いられていること(甲28〜甲44),及び特許情報プラットフォーム「J−PlatPat」の「日本国周知・著名商標検索」で引用商標2がヒットすること(甲52)が認められる。
しかしながら,上述のとおり,申立人商品の累計出荷数などは確認できるものの,近年の我が国又は外国における出荷本数など販売実績を示す主張はなく,それを示す証拠も見いだせない。
イ 上記アのとおり,引用ゲームに係るプログラムは,1980年代半ばにパソコンゲームとして発売された後,我が国においては1988年から販売されるなど,世界各国で販売されており,2018年末における累計出荷本数において,ゲームボーイ版が国内累計約424万本で歴代第14位,世界累計3026万本で歴代6位であり,ファミリーコンピュータ版が国内累計約181万本で歴代95位,世界累計558万本で歴代82位であったことなどからすれば,引用ゲームは我が国及び外国における需要者の間である程度知られているということができる。
しかしながら,近年,我が国において申立人商品が販売され,引用ゲームに係るイベントが開催されていることは認め得るものの(甲24の5,6,甲26,甲29の2,甲30,甲32〜甲34),近年における申立人商品の我が国又は外国における周知性の度合いを客観的に判断するための資料,すなわち,申立人商品の売上高,市場シェア並びに広告宣伝の方法及び回数など取引状況を具体的に示す証拠は見いだすことはできず,我が国又は外国における客観的な使用事実に基づいて,引用ゲームの名称である「TETRIS」及び「テトリス」の文字,並びに「TETRIS」の文字からなる又は当該文字を幅広のT字状の図形内に表してなる引用商標の使用状況を把握することができないから,本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の周知性の程度を推し量ることはできない。そのほか,「TETRIS」及び「テトリス」の文字,並びに引用商標が,申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認める得る事情は見いだせない。
したがって,申立人から提出された証拠によっては,「TETRIS」及び「テトリス」の文字,並びに引用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,いずれも申立人の業務に係る商品を表示するものとして,我が国又は外国における需要者の間に広く認識され,周知性を獲得していたとは認めることはできないものである。
(2)本件商標と引用商標について
ア 本件商標
本件商標は,上記1のとおり「テトリスケア」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成文字は,同じ書体,同じ大きさ,等間隔で,外観上まとまりよく一体的にバランスよく構成されているものであって,また当該文字は,辞書等に掲載のないものであって,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものである。
また,本件商標全体から生じる「テトリスケア」の称呼も格別冗長ではなく,無理なく一連に称呼し得るものである。
さらに,上記(1)イのとおり,「テトリス」の文字は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり,他に本件商標の構成中「テトリス」の文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りるべき事情も見いだせない。また「ケア」の文字が「手当て」の意味を有する外来語であるとしても,本件商標の上記構成及び称呼からすれば,本件商標の構成全体をもって,特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識し,把握するというのが自然であり,これに接する取引者,需要者は,殊更に「テトリス」の文字部分に着目することはない。
そうすると,本件商標は,その構成文字全体に相応して「テトリスケア」の称呼のみを生じ,特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
(ア)引用商標1ないし引用商標8,引用商標10及び引用商標11
引用商標1ないし引用商標8,引用商標10及び引用商標11は,上記2(1)ないし(8),(10)及び(11)のとおり,いずれも「TETRIS」の欧文字からなるところ,当該文字は一般的な辞書等に掲載のないものであって,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものである。
そして,特定の語義を有しない欧文字からなる商標については,我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語風の発音をもって称呼されるのが一般的といえるから,引用商標1ないし引用商標8,引用商標10及び引用商標11はその構成文字に相応して「テトリス」の称呼を生じるものである。
したがって,引用商標1ないし引用商標8,引用商標10及び引用商標11は,「テトリス」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
(イ)引用商標9
引用商標9は,別掲のとおり,「TETRIS」の欧文字を幅広のT字状の図形(以下「T字図形」という。)内に表してなるところ,当該文字はT字図形の内部にぴったりはまるように配されており,引用商標9は全体として,外観上まとまりよく一体的に看取されるものである。
そして,引用商標9の構成中「TETRIS」の欧文字は,上記(ア)と同様に,一般的な辞書等に掲載のないものであって,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものである。また,幅広のT字状の図形は,特定の事物を表したもの,又は意味合いを表すものとして認識され,親しまれているというべき事情は認められないことから,当該図形は,特定の称呼及び観念は生じないものである。
したがって,引用商標9は,その構成文字に相応して,「テトリス」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標と引用商標1ないし引用商標8,引用商標10及び引用商標11について
本件商標と引用商標1ないし引用商標8,引用商標10及び引用商標11の類否を検討すると,本件商標の構成文字「テトリスケア」と引用商標1ないし引用商標8,引用商標10及び引用商標11の構成文字「TETRIS」は,文字の種類が片仮名と欧文字とで異なることから,外観上判然と区別し得るものである。
次に,本件商標から生じる「テトリスケア」の称呼と引用商標1ないし引用商標8,引用商標10及び引用商標11から生じる「テトリス」の称呼とを比較すると,両者は語尾において「ケア」の音の有無という差異を有し,この差異が6音又は4音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きいから,両者をそれぞれ一連に称呼するときは,明瞭に聴別し得るものである。
さらに,観念においては,両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると,本件商標と引用商標1ないし引用商標8,引用商標10及び引用商標11とは,観念において比較することができないとしても,外観において判然と区別し得るものであって,称呼において明瞭に聴別し得るものであるから,両者の外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
(イ)本件商標と引用商標9について
本件商標と引用商標9を比較すると,T字図形の有無,文字の種類が片仮名と欧文字とで異なることから,外観上判然と区別し得るものである。
次に,本件商標から生じる「テトリスケア」の称呼と引用商標9から生じる「テトリス」の称呼とを比較すると,上記(ア)と同様に,両者は語尾において「ケア」の音の有無という差異を有し,この差異が6音又は4音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きいから,両者をそれぞれ一連に称呼するときは,明瞭に聴別し得るものである。
さらに,観念においては,両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると,本件商標と引用商標9は,観念において比較することができないとしても,外観において判然と区別し得るものであって,称呼において明瞭に聴別し得るものであるから,両者の外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
(3)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標1は,上記(2)ウ(ア)のとおり,非類似の商標であるから,両商標の指定商品が同一又は類似するものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)イのとおり引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,また,上記(2)ウのとおり,本件商標と引用商標とは非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく,その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第19号及び同項第7号について
上記(1)イのとおり引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,上記(2)ウのとおり,本件商標と引用商標は相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標であり,また,本件商標は引用商標を連想又は想起させるものでもない。そうすると,本件商標は,引用商標が有する顧客吸引力へのただ乗り又は希釈化など不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
さらに,本件商標が,その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど,公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当するものといえない。
(6)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲

別掲 引用商標9 (色彩は原本参照。)


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異議決定日 2022-05-13 
出願番号 2020002185 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W0305)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 須田 亮一
大森 友子
登録日 2021-06-23 
登録番号 6406292 
権利者 炭プラスラボ株式会社
商標の称呼 テトリスケア 
代理人 柴田 雅仁 

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