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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W29 |
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管理番号 | 1385410 |
総通号数 | 6 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2022-06-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-06-28 |
確定日 | 2022-05-20 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6375329号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6375329号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6375329号商標(以下「本件商標」という。)は、「至福のギリシャ」の文字を標準文字により表してなり、平成31年1月25日に登録出願、第29類「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」を指定商品として、令和3年3月29日に登録査定、同年4月9日に設定登録されたものである。 第2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第7号及び同項第16号に該当するものであるから、その登録は取り消されるものである旨申立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)を提出した(以下、証拠については、甲1、甲2のように表記する。)。 1 商標法第4条第1項第16号 (1)本件異議申立ての背景 本件商標は、「至福のギリシャ」の文字からなり、第29類の「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」を指定商品としている(甲1)。 「ギリシャ」とは、「ギリシャ共和国」の国家名の著名な略称であり、オリンピックの発祥の地として、また、古代ギリシャ文明の発祥の地として、日本人に非常に馴染みの深い国家名であるため、商品名中に「ギリシャ」とあれば、当該商品はギリシャを産地とするものであると需要者は想起するものであり、仮にヨーグルトそのものがギリシャで生産されていないとしても、ギリシャ産の乳原材料を使用していると誤解するものである。 してみると、本件商標を「ギリシャ産」以外の商品に用いれば、その品質について、およそ需要者が誤解するものである。 本件商標は、産地ではなく、「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」なる意味の曖昧な表記へと指定商品を補正することで登録査定となったが、以下述べるとおり、「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」を指定商品とする場合であっても、需要者に商品の品質に関する誤認が生じることに変わりはない。 ア 本件アンケートの実施 申立人は、需要者に商品及び品質に関して誤解が生じていることを確認し、端的に現状を事実として適示するべく、全国の男女2000名を対象に、ウェブアンケート(甲2。以下「本件アンケート」という。)を実施した。 (ア)結果概要 a 需要者は「いわゆるギリシャヨーグルト」と称される商品が具体的にいかなる態様のヨーグルトであるかを正確には認識しているとはいい難い状態であり、約30%は、ギリシャヨーグルトがいかなるヨーグルトであるか分かっておらず、特定のタイプのヨーグルトとして認知されているとはいえない実態が確認された。 b また、「いわゆるギリシャヨーグルト」と称される商品が水切り製法で製造されている特徴を具体的に選択できた者は10%を大きく下回っているのであって、ギリシャヨーグルトが品質として機能しているとはいえないことも分かった。 c また、「ギリシャヨーグルト」は、10.9%が「ギリシャで製造」若しくは「ギリシャ国産の乳原材料を使用している」と認識している。このようにギリシャ産という意味合いに関連付ける者が1割以上いることが明らかになった。 d 「至福のギリシャ」は、商品を食べたことがなく、かつヨーグルトを想起した607名中45名が「ギリシャで製造」と誤認しており、商品のヨーグルトを実際に食べたことがある79名中8名が「ギリシャで製造」と勘違いしている。商品パッケージ内の産地表示が十分には機能していない実情が明らかとなった。 (イ)本件商標(「至福のギリシャ」)に関する需要者の認識 本件商標(「至福のギリシャ」)を付した本件商標権者の商品(甲4、甲5)については、そもそも市場に多く流通しておらず、その喫食経験があるのは79人(約4%)にとどまり、残りの1921人(約96%)は喫食経験を有していない(甲2)。また、喫食経験を有しない者のうち「至福のギリシャ」との商品名からヨーグルト製品を想起した需要者は31.6%の607人である(甲2)。 これらの需要者の「至福のギリシャ」が「どのようなヨーグルト」であるかに関する認識は、喫食経験の有無を問わず、水切りタイプと回答した需要者の割合は、ギリシャで製造又は同国産乳原材料を使用したものであると回答した需要者の割合よりも少ない。 加えて、喫食経験のある需要者(ヨーグルトと推察したか否かを問わない)1921人のうち、「至福のギリシャ」の産地を<1>「ギリシャ」と答えた需要者は731人(38.1%)、<2>「日本」と答えた需要者は544人(28.3%)、<3>「わからない」と答えた需要者は666人(34.7%)、である(甲2)。 (ウ)ギリシャからのヨーグルトの輸入状況に関する需要者の認識 ギリシャからどのような乳製品が輸入されていると思うかとの質問に関して、「ヨーグルト」と回答した需要者は2000人中508人(25.4%)である(甲2)。 (2)本件商標の登録が商標法第4条第1項第16号に違反すること (ア)本件商標の「ギリシャ」は国家名を表すこと 第1に、本件商標の「ギリシャ」は国家名を表すものであって、特定の製法により製造されたヨーグルトを示すものではなく、本件商標を「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」を指定商品とすることにより品質誤認が生じないとするのは、「ギリシャ」を産地ではなく特定の製法により製造されたヨーグルトを意味すると解するものである。 しかし、この解釈は「ギリシャ」との表記を、「ギリシャヨーグルト」等の略称と捉えるものと思われるが、「至福のギリシャ」の「ギリシャ」は「ギリシャ」(国家名)であって、「ギリシャヨーグルト」等(商品)ではないから無理な解釈である。 現に、本件アンケートにおいては、「ギリシャヨーグルト」については、需要者の約3割がどのようなヨーグルトであるか認識しておらず、また、「ギリシャスタイルヨーグルト」から「ギリシャ由来の製法により製造されたヨーグルト」についても、4割弱の需要者がどのようなヨーグルトであるかを認識していないから、「ギリシャ」が「ギリシャヨーグルト」等の略称として需要者に定着していることはない。 そうすると、本件商標の「ギリシャ」は国家名を示すものに他ならないから、商品名中にギリシャとあれば、当該商品はギリシャを産地とするものであると需要者は想起するものである。 また、仮にヨーグルトそのものがギリシャで生産されていないとしても、ギリシャ産の乳原材料を使用していると誤解するものである。そのため、指定商品を、「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」としても、依然として需要者に商品の品質に関する誤認が生じることに変わりはない。 (イ)「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」の意味内容が不明であること 第2に「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」の意味内容が不明であり、指定商品が特定されていないから、品質に関する誤認が生じるおそれが現実にある。 そもそも、ギリシャ国におけるヨーグルトには、いわゆるプレーンタイプ(乳を乳酸菌で発酵させたヨーグルト)もあれば、水切りする製法で製造されるタイプの、濃厚なタンパク質を高濃度で含む発酵乳(高タンパク質含有の発酵乳)まで種々に存在しているのであるから、どのようなタイプのヨーグルトを製造する方法が、ここでいう「伝統的な製法」なのか自体が極めて不明確である。 また、伝統的という内容のない記載からは、単に水切り製法といっても、ザルで受けて自重で水切りするものであるのか、機械的に圧力等で水切りを促進する方法を含むものかも曖昧であるから、伝統製法なるものの中味自体が、需要者にとってそもそも理解することが困難といえる。 現に、本件アンケートにおいては、需要者の38.5%は「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」が如何なるヨーグルトであるか「わからない」と回答している(甲2)。 なお、本件商標権者は、その特許出願にかかる明細書において、「ギリシャヨーグルト」がいわゆる水切りタイプのヨーグルトであるとしている。日本国内で製造される「ギリシャヨーグルト」と称される商品は水切り製法によるヨーグルトと思しきところ、全ヨーグルト製品における水切り製法のヨーグルトのマーケットシェアは、僅か2.5%にも満たず(甲3)、そのため、需要者はその内容を認識していない。 また、ヨーグルトは、高い関税によって価格競争力が抑えられてしまっているものの、海外からも輸入されており、日本国内においては、ギリシャの「GRECO社」にギリシャヨーグルトの受注生産を委託し、これを日本に空輸している事業者が存在する(甲4)。そして、本件アンケートによれば、需要者の約4人に1人が、ギリシャからヨーグルトが輸入されていると思うと回答しており(甲2)、需要者においても、ギリシャ産・ギリシャ産の乳原材料を用いたヨーグルトの存在を認知している。 このように、ギリシャ産・同国産の乳原材料を用いたヨーグルトを現実に購入可能であり、かつ、需要者としてもそのような認識を有している状況において、「ギリシャ」を商品名に含む製品に接した需要者は、これをギリシャ産又は同国産の乳原材料を用いたヨーグルトと信じて購入することはより一層明らかである。 したがって、以上の状況において、ギリシャ産でないにもかかわらず、「ギリシャ」との表記を用いることは、まさに、需要者に産地や原材料の産地を誤認させるものに他ならない。 (ウ)「至福のギリシャ」の品質に関する誤解が生じていること 第3に、需要者において、本件商標が付された商品(「至福のギリシャ」)がギリシャ産又は同国産の乳原材料を用いた商品であるとの誤解が現に生じている。 すなわち、本件商標権者が販売するヨーグルト製品「至福のギリシャ」は日本国内である「日本酪農協同株式会社滋賀工場」で製造され、かつ、「北海道産水切り原材料を使用したなめらかな口当たりのギリシャスタイルヨーグルト」(甲5)又は「北海道産の水切り乳原料を使用。乳のおいしさが凝縮されたクリーミーで濃厚な味わい」の「ギリシャスタイルヨーグルト」(甲6の1)である。 しかし、「至福のギリシャ」との標章に接した需要者のうち、喫食経験がある者(79人)の24.1%(19人)がこれをギリシャで製造したか、ギリシャ産の乳原材料を使用したと認識している(甲2)。また、喫食経験がない者(1921人)のうち「至福のギリシャ」の産地をギリシャと推察した者は38.1%(731人)であり(甲2)、産地に関する誤解が現に生じていることは明らかである。 (エ)小括 以上のとおり、本件商標は、ギリシャ産・同国産の乳原材料を用いる商品以外の商品に対して利用される場合には需要者をして、その産地や原材料の産地がギリシャであるとの品質に関する誤認を生じさせるものであるから、商標法第4条第1項第16号により、商標登録を受けることができない。 2 商標法第3条第1項柱書又は第4条第1項第7号 本件商標権者は、自身のヨーグルト製品に「至福のギリシャ」を付して使用しているが、「ギリシャヨーグルト」ではなく、「ギリシャスタイルヨーグルト」と自認しており、本件商標権者の具体的製造工程をうかがわせる特許公開公報の記載によれば、「ギリシャスタイルヨーグルト」とは、いわゆる伝統的な製法とは異なるとの記載が明示されている(甲7)。 本件の指定商品は、出願中に「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」へと補正された経緯があり、本件商標権者の採用する製法に鑑みれば使用実態と相違する指定商品に限定して登録に及んでいるものである。本件商標を使用すれば虚偽表示的な使用となることを認識しつつ、商標登録を受けたものと指摘せざるを得ず、およそ社会公共の利益に反し、公序良俗を害するおそれのある登録である。 上記特許公開公報の記載からは、本件商標権者が、「生乳等を含む乳原料であるヨーグルトミックスを発酵させて得られたヨーグルトを、綿のガーゼやギリシャ伝統のモスリンでできた袋等を用いて、余計な水分や乳清(ホエー)等の水性画分を除去することによって得られる濃厚ヨーグルト」を「ギリシャで伝統的に作られているギリシャヨーグルト」と捉えていること、本件商標権者が、「脱脂粉乳や乳蛋白質を添加して得られたヨーグルトミックスを発酵させて得られるヨーグルト」を「ギリシャスタイルヨーグルト」として捉えていることの2点が分かる。 「ギリシャで伝統的に作られているギリシャヨーグルト」とは、本件商標における「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」に相当するものと推察されるところ、少なくとも、本件商標権者の説明によれば、「ギリシャスタイルヨーグルト」とは全く別個のものあることが明らかである(そもそも「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」は意味不明な概念であり、およそ指定商品が特定されていない。)。 そのため、本件商標の指定商品である「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」には上記「ギリシャスタイルヨーグルト」は含まれない。 しかし、上述したとおり、本件商標権者は「至福のギリシャ」を「北海道産水切り原材料を使用したなめらかな口当たりのギリシャスタイルヨーグルト」(甲4)として販売している。加えて、「至福のギリシャ」のパッケージの右側面写真(甲5)には、その成分表示に原材料として「乳製品(国内製造)、乳、乳たんぱく」との記載がある。これは特許明細書(甲7)の「ギリシャスタイルヨーグルト」、すなわち「乳蛋白質を添加して得られたヨーグルトミックスを発酵させて得られるヨーグルト」に他ならず、この観点からも、本件商標権者は「至福のギリシャ」が、特許明細書(甲7)における「ギリシャで伝統的に作られているギリシャヨーグルト」ではないことを確定的に認識していた。 このように、本件商標は、本件商標権者が販売する「ギリシャスタイルヨーグルト」に用いられるものであって、指定商品である「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」に用いられるものではないから、「自己の業務に係る商品・・・について使用をする商標」(商標法第3条第1項柱書)に該当せず、商標登録を受けることができない。 また、本件商標権者は、自らが販売する「至福のギリシャ」が、その実態は乳たんぱく質を付加した「ギリシャスタイルヨーグルト」(甲7)であることを確定的に認識しながら、本件商標の指定商品について、これとは全く異なる「ギリシャヨーグルト」(甲7)を示唆する「伝統製法」といった用語を自ら選択して補正に及んでいる(甲6の2より、「至福のギリシャ」は補正日より前の2016年3月20日より販売されていたことは明らかであって、本件商標権者がかかる認識を有していたことに疑いはない。)。このような経緯に鑑みても、本件商標は、本件商標権者により、実情と合致せず、伝統製法を用いて製造していると需要者に誤認させることを想定して出願・補正されているものであって、かかる商標の登録は公序良俗に反するものである(商標法第4条第1項第7号)。 第3 当審の判断 1 商標法第4条第1項第16号該当性について (1)商標法第4条第1項第16号の趣旨 商標法第4条第1項第16号は、「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」は登録することはできない旨規定しているところ、「商品の品質の誤認を生ずるかどうかは、その商標の外観、称呼、観念等から判断して、その指定商品について、その商品が現実に有する品質と異なるものであるかのように需要者をして誤認されるおそれがあるかどうかに照らして判断するべきである。」 と判示されているところである(知財高裁平成17年(行ケ)第10783号 平成18年2月15日判決参照)。 (2)本件商標 本件商標は、上記第1のとおり「至福のギリシャ」の文字よりなるところ、その構成中の「ギリシャ」の文字が「バルカン半島の南端部とクレタ島などを領土とする共和国。」を意味する語(「三省堂国語辞典 第八版」株式会社三省堂)であるとしても、同じくその構成中の「この上もない幸福」の意味を有する「至福」の語(前掲書)と助詞「の」を介して一体に表されていることから、全体として「この上もない幸せの(バルカン半島の南端部の)国ギリシャ」程の一つのまとまりのある意味を理解させるものであって、本件商標の構成中の「ギリシャ」の文字は、産地表示として認識され、把握されるとはいい難いものである。 (3)本件商標の指定商品 ア 本件商標の指定商品は、第29類「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」であるところ、「ヨーグルト」の分野における「ギリシャヨーグルト」に関する実情について、職権による調査を行った結果、以下の事実が認められる。 (ア)「東洋経済 ONLINE」のウェブページには、2015年12月31日付けで「『ギリシャヨーグルト』を知っていますか アメリカでは健康食品として定番」の見出しの下、「ギリシャヨーグルトとは、ギリシャでは伝統的な製法となっている『水切り製法』をつかったヨーグルトのこと。」及び「日本では、森永乳業やダノンがギリシャヨーグルトの製造・販売を手掛けている。」の記載がある。 https://toyokeizai.net/articles/-/98433 (イ)「ダノンジャパン株式会社」の2016年9月6日付けプレスリリースには、「100kcal未満・脂肪ゼロ・満足感のギリシャヨーグルト/“小腹を黙らせるヨーグルト”『ダノンオイコス』/季節限定フレーバー パンプキン&さつまいも発売/2016年9月6日より出荷開始」の見出しの下、「ギリシャヨーグルトは、乳脂肪、または増粘剤などの食品添加物を加えること無く、ヨーグルトから一部のホエー成分を取り除く、水切り製法により作られています。」の記載がある。 https://www.atpress.ne.jp/news/111319 (ウ)「ギリシャヨーグルト パルテノ」のウェブサイトには、「ギリシャヨーグルトは、カラダを想う健康食品です」の見出しの下、「ギリシャヨーグルトの特徴は、何といっても濃厚でクリーミーな食感。それは、ギリシャ伝統の「水切り製法」を用いてつくり、(略)」の記載がある。 https://partheno-gy.jp/about/history/ (エ)2018年12月7日付け「日本食糧新聞」の9ページには、「『濃密ギリシャヨーグルト パルテノ カシスソース付』発売(森永乳業)」のタイトルのもと、商品特徴として「ギリシャ伝統の水切り製法で作られた濃密食感のヨーグルト。」の記載がある。 (オ)「やまでら くみこ のレシピ」のウェブサイトには、「ギリシャヨーグルトの作り方とおすすめレシピ!市販品の味の違いも解説。」の見出しの下、「ギリシャヨーグルトとは、ギリシャで伝統的に食べられているヨーグルトのこと。ヨーグルトを水切りして(水分を取り除いて)作るので、クリーミーで濃厚な味わいが特徴です。」の記載がある(投稿日:2019年4月29日 更新日:2022年3月20日)。 https://kumiko-jp.com/archives/266654.html (カ)料理のレシピを紹介する「cookpad」ウェブページには、水切り製法による「ギリシャヨーグルト」のレシピが紹介されている。 a 「自家製ギリシャヨーグルト」のレシピ(公開日及び更新日は2015年5月5日。) https://cookpad.com/recipe/3120112 b 「市販より美味しい手作りギリシャヨーグルト」のレシピ(公開日及び更新日は2015年8月26日。) https://cookpad.com/recipe/3365304 c 「手作りギリシャヨーグルトと蜂蜜レモン」のレシピ(公開日及び更新日は2021年8月20日。) https://cookpad.com/recipe/6910920 d 「ヨーグルト水切り方!ギリシャヨーグルト」のレシピ(公開日及び更新日は2019年4月1日。) https://cookpad.com/recipe/5581752 e 「0円!)ペットボトルでギリシャヨーグルト」のレシピ(公開日及び更新日は2018年4月1日。) https://cookpad.com/recipe/5409418 イ 上記(ア)ないし(オ)によれば、本件商標の登録査定の日前から、複数のメーカーが「ギリシャ伝統の水切り製法」で作られたヨーグルトを「ギリシャヨーグルト」と称して製造、販売を行っていること、また、料理のレシピに「水切り製法」で作られる「ギリシャヨーグルト」の語が相当数用いられていることからすれば、本件商標の指定商品「ギリシャ伝統の水切り製法により作られたヨーグルト」は、本件商標の登録査定時に実際に存在し、需要者にそのようなヨーグルトとして認識されていたものといえる。 (4)上記(1)ないし(3)を踏まえて判断するに、本件商標については、その構成文字が直ちに、産地表示として認識され、把握されるとはいい難いものであり、また、その指定商品については、「ギリシャ伝統の水切り製法により作られたヨーグルト」が、本件商標の登録査定時において実際に存在し、需要者にそのようなヨーグルトとして認識されていたものといえるから、本件商標をその指定商品について使用しても、その商品が現実に有する品質と異なるものであるかのように需要者をして誤認されるおそれはないものと判断するのが相当である。 したがって、第29類「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」を指定商品とする本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。 (5)申立人の主張について 申立人は、需要者に商品及び品質について誤解が生じているとして、アンケート結果(甲2)を提出するとともに、本件商標の「ギリシャ」は国家名を示すものに他ならないから、商品名中にギリシャとあれば、当該商品はギリシャを産地とするものであると需要者は想起し、また、仮にヨーグルトそのものがギリシャで生産されていないとしても、ギリシャ産の乳原材料を使用していると誤解する旨主張している。 しかしながら、本件商標の構成中、「ギリシャ」の文字が「ギリシャの国名」を意味する語であるとしても、上記1(2)のとおり、当該文字は、助詞「の」を介して「この上もない幸福」の意味を有する「至福」の文字と一体に表されているものであって、全体として「この上もない幸せの(バルカン半島の南端部の)国ギリシャ」程の一つのまとまりのある意味を理解させることから、本件商標の構成中の「ギリシャ」の文字は、産地表示として認識され、把握されるとはいい難いものである。 したがって、申立人の上記主張は採用することができない。 2 商標法第3条第1項柱書違反該当性について 商標法第3条第1項柱書にいう「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする」とは、現に行っている業務に係る商品又は役務について、現に使用している場合に限らず、将来行う意思がある業務に係る商品又は役務について将来使用する意思を有する場合も含むと解するのが相当である。 そこで検討するに、本件商標権者は、ヨーグルト製品の製造者であり(甲5、甲6)、「濃厚ヨーグルト、及び濃厚ヨーグルトの製造方法」に関する特許の出願人でもある(甲7)ことからすれば、本件商標をその指定商品である「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」について、現に使用している、あるいは、将来使用する意思を有するとみるの相当であって、現に行っている業務に係る商標あるいは将来自己の業務に係る商標として使用する意思が全くないとみることはできない。 したがって、本件商標が商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないということはできない。 3 商標法第4条第1項第7号該当性について 商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する商標について、商標登録を受けることができないと規定しているところ、これに該当する商標は、「(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。」と判示されているところである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決参照)。 しかしながら、本件商標は、「至福のギリシャ」の文字からなるものであり、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様ではないことは明らかである。 また、本件商標をその指定商品「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできず、他の法律によってその使用が禁止されているものでもない。 さらに、申立人が提出した証拠及び主張を検討しても、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合に当たるということもできない。 加えて、申立人は、「本件商標権者は、自らが販売する『至福のギリシャ』が、その実態は乳たんぱく質を付加した『ギリシャスタイルヨーグルト』(甲7)であることを確定的に認識しながら、本件商標の指定商品について、これとは全く異なる『ギリシャヨーグルト』(甲7)を示唆する『伝統製法』といった用語を自ら選択して補正に及んでいる。このような経緯に鑑みても、本件商標は、本件商標権者により、実情と合致せず、伝統製法を用いて製造していると需要者に誤認させることを想定して出願・補正されているものであって、かかる商標の登録は公序良俗に反するものである。」旨主張する しかしながら、本件商標権者が販売する「至福のギリシャ」とされるヨーグルト製品(甲5)のパッケージ及び本件商標権者ウェブサイトとされるウェブサイト(甲6)の「商品案内/至福のギリシャ」の記事中には、それぞれ「北海道産水切り乳製品を使用した・・・ギリシャスタイルヨーグルトです。」、「近年ブームの続くギリシャスタイルヨーグルト/北海道産水切り乳製品を使用。」の表示があることにより、当該商品は、ギリシャ国の伝統製法である水切り製法を利用した材料を用いたヨーグルトであることがうかがわれるから、本件商標の指定商品とは全く異なる商品であるとはいえず、本件商標権者が、実情と合致せず、伝統製法を用いて製造していると需要者に誤認させることを想定して指定商品を補正し商標登録を受けたものということはできない。 そして、他に、本件商標の登録出願の経緯が、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たるという事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 4 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第7号及び同第16号に違反してされたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきでものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2022-05-11 |
出願番号 | 2019016617 |
審決分類 |
T
1
651・
18-
Y
(W29)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
佐藤 松江 |
特許庁審判官 |
鈴木 雅也 佐藤 淳 |
登録日 | 2021-04-09 |
登録番号 | 6375329 |
権利者 | 日本酪農協同株式会社 |
商標の称呼 | シフクノギリシャ、シフクノ、シフク |
代理人 | 横井 知理 |
代理人 | 松下 外 |