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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0942
管理番号 1385407 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-18 
確定日 2022-05-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第6370191号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6370191号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6370191号商標(以下「本件商標」という。)は、「Maclogic」の欧文字を標準文字で表してなり、令和2年12月24日に登録出願、第9類「電子計算機用プログラム」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供,電子データの保存用記憶領域の貸与,電子計算機の貸与」を指定商品及び指定役務として、同3年3月8日に登録査定、同月29日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
(1)申立人について
米国カリフォルニア州に本社を置く申立人は、GAFAと称されるデジタル市場の巨大企業の4つのうちの一社であり、「MacBook」、「iMac」等のパーソナルコンピュータ「Mac」シリーズ、スマートフォン「iPhone」、タブレット型コンピュータ「iPad」、腕時計型コンピュータ「Apple Watch」等を製造販売し、音楽・映像配信サービス「Apple Music」等を提供する米国の法人である。同社は、「世界の最も価値あるブランドランキング」で首位を獲得するなど、高い知名度を誇り、当該ランキングにおいては、2011年から9年連続で首位の座を維持し、当時ブランド価値が2000億ドルを超えた唯一の企業と評価されている(甲2)。
(2)「Mac」の著名性について
ア Mac製品について
申立人は、コンピュータ機器の他、スマートフォン、スマートウォッチ、ソフトウェア、テレビ、音楽、ヘッドフォン等の分野において世界のリーディングカンパニーとなっており、パーソナルコンピュータの「Mac」シリーズ、スマートフォン「iPhone」、タブレットコンピュータ「iPad」等を製造・販売する会社として著名である(甲3)。
申立人の製品の中でも特に「Mac」シリーズ(甲4)は、申立人の代表製品の一つであって、ラップトップ型コンピュータ「MacBook Air」「MacBook Pro」、デスクトップ型コンピュータ「iMac」、コンピュータハードウェア「Mac Pro」「Mac mini」といった製品名で販売されており、これらは通称「Mac(マック)」と呼ばれ(甲5)、我が国においても広く知られていることは顕著な事実である。
上記のとおり、「Mac」の文字(以下「引用商標」という。)は、申立人のコンピュータシリーズとして用いられており(甲4〜甲7)、また、マイクロソフト社のオペレーティングシステム「Windows」に対する申立人のオペレーティングシステムの名称としても「Mac」が使用され(甲8)、申立人の「Mac(マック)」を題材とした書籍も多数販売されている(甲9)。
イ 「MAC」を含む商標登録について
申立人は「MAC」の語からなる商標について数多くの登録を有している。
ウ 特許庁の過去の判断について
「MAC」が周知・著名であることは、近年の特許庁の決定等においても認められている(甲10)。
エ 新聞記事情報、辞典、書籍、インターネット情報等から、「Mac」は、「Macintosh」シリーズの略称、または愛称として把握することができる。また、平成20年(ネ)第10014号商標権侵害差止請求控訴事件の判決で、米国アップル社が使用する「Macintosh」の商標は、コンピュータ関係の商品において著名であるとされ、Macの使用が多い現在においては、著名といえる。
以上のとおり、「Mac」は、本件商標の登録出願時及び査定時において、申立人のコンピュータないしオペレーティングシステムを示す商標として我が国において広く知られている。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性
ア 引用商標の周知性
引用商標は、「コンピュータ及びオペレーティングシステム」(以下「申立人商品」という。)の分野で著名であることは前記のとおりである。
イ 商標の類似性
本件商標は、「Maclogic」を標準文字で表した構成からなり、その構成中、看者の注目を最も集める語頭部分に著名な引用商標を含むものである。
また、本件商標は、「Mac」と「論理、論法」を意味する英単語「Logic」の語からなることが容易に理解でき、「Logic」(ロジック)は、日本人に馴染深い理解容易な英単語であるところ、同語はコンピュータソフトウェアの分野では「プログラムが体現する論理のこと」「プログラムにおける処理の内容、手順、方法」(甲11、甲12)の意味で用いられており、本件商標の指定商品・役務との関係において特別強い識別力を発揮する部分ではない。
そうすると、本件商標は、申立人の著名商標「Mac」と既成語「Logic」を組み合わせた構成からなるものであって、要部は「Mac」と解することができる。
また、上述のとおり「Mac」の語は申立人の商標として広く理解されている著名商標であることから、本件商標中の「Mac」の文字は、即座に申立人の著名商標「Mac」を想起させ、本件商標全体から「アップル社のMacコンピュータないしMacオペレーティングシステムに関するソフトウェアにおける処理、内容」という観念を容易に想起させる。
したがって、本件商標は、引用商標と相紛らわしい類似商標と解される。
ウ 指定商品・役務の共通性
上述のとおり引用商標は、申立人商品の商標として広く知られているところ、本件商標の指定商品・役務は申立人商品に類似する「電子計算機用プログラム」、「電子計算機用プログラムの提供」等を含むものである。
以上より、本件商標は、引用商標と類似する商標であって、申立人商品と類似する商品及び役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 引用商標の周知性は、前記(2)のとおりである。
イ 前記(3)アのとおり、本件商標は、注目を最もひく語頭部分に「Mac」を有し、引用商標とは相紛らわしい類似商標と解される。
また、申立人は、申立人の「Mac」コンピュータ用ソフトウェア「Logic Pro」を提供しており、同名称について商標登録も有している。
すなわち、本件商標を構成する「Mac」「Logic」は、いずれも申立人と強い結びつきを有し、申立人の商品・役務を想起させ、この点からも本件商標は、申立人の商品・役務と混同を生ずるおそれがある類似商標と解される。
ウ 引用商標の独創性について
引用商標は、申立人による独創的な商標である。
なお、辞書に掲載がある言葉が独創性がないと解すべきではないことは明らかである。「独創」とは「模倣によらず、自分ひとりの考えで独特のものを作りだすこと。」を意味し(広辞苑第七版)、独特のものかどうかを考えるに当たっては、商品・サービスとの関係を考慮すべきであり、「コンピュータ」に「Apple」と表示することは、それまで誰も考えたことがなく、「コンピュータ」に果物の名前を付すという点において独創性が認められる。
そうすると、辞書に「MAC」という単語が掲載されているとしても、その表示をコンピュータに使用したのは申立人が初めてであり、十分に独創性が認められるべきである。
そして、上述のとおり、我が国においては「Mac」は、申立人の製品・サービス名を表す名称として著名であって、英和辞典で「Mac」を引くと「米国Apple社のパソコンMacintoshの愛称」と掲載されているものもあることを考慮すると(甲13)、申立人は、既存の言葉として存在する「MAC」とは別の意味、すなわち申立人のコンピュータの商標としての「Mac」の意味を確立しているといえる。
エ 本件商標の指定商品と申立人商品の関連性、需要者の共通性
本件商標の指定商品・役務は、申立人の「Mac」商標が特に知られているコンピュータないしオペレーティングシステムとは非常に関連深い類似商品・役務であって、商品・役務間の関連性があることは、十分に認められる。
したがって、その需要者の範囲や販売部門等も一致し、混同が生ずる可能性が極めて高いといえる。
事実、申立人の「Mac」コンピュータは様々なアプリケーションソフトウェアを備えており、また、申立人の「Mac」コンピュータにインストール可能なソフトウェアも数多く販売されている(甲14、甲15)。
以上を総合勘案すると、本件商標をその指定商品・役務に使用すると、申立人の「Mac」コンピュータに関する商品・役務を想起させ、申立人と何らかの関係があるかのように誤認・混同させるおそれが高い。
さらに、(a)引用商標は、申立人のハウスマークではないが、申立人の主力商品にかかる商標であり、(b)企業における多角経営の可能性については、申立人は、コンピュータの分野以外にも様々な事業分野で商品・役務展開し、例えば、音楽配信サービス「Apple Music」(甲16)、映像のストリーミングサービス「Apple TV」(甲17)等も行っており、多角経営の可能性は十分に認められる。
審査基準記載の判断基準からも、本件商標が使用されると、出所の混同が生じるおそれや、申立人から公認を受けているとの誤認あるいは、申立人の周知な引用商標にかかる「Mac」商標の希釈化汚染化が生じるおそれがあることは明らかである。
オ まとめ
以上のとおり、本件商標がその指定商品・役務に使用されると、かかる指定商品・役務分野における需要者は、それらの商品・役務が申立人の業務に係る商品・役務ないし申立人と何等かの関係がある者の業務にかかる商品・役務であると誤認し、出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 当審の判断
(1)引用商標「Mac」の周知性について
ア 申立人の主張及び提出した証拠及び職権調査によれば、次の事実が認められる。
申立人は、1976年に設立された米国の企業であって、GAFAと称されるデジタル市場の巨大企業のうちの1社である(甲2、甲3)。
申立人の「Mac」は、申立人が1984年に発売したパーソナルコンピュータの名称「Macintosh(マッキントッシュ)」の通称であったところ、2010年以降は正式な名称となったこと(甲6)、申立人の製品のうちの「パーソナルコンピュータ」には、「MacBook Air」、「iMac」、「Mac Pro」というように、いずれも「Mac」の文字を製品名に使用しており、これらを「Mac」と総称していること(甲4〜甲7)、申立人のオペレーティングシステムの名称としても「Mac」が使用されていること(甲8)、また、申立人の「Mac」用のマニュアル、ガイドブックなどが2019年ないし2021年に数種類販売されていること(甲9)が認められる。
なお、職権調査によれば、2021年2月5日付け日経産業新聞には、「中古『Mac』、異例の急な下落、独自CPU搭載の新型に人気(価格は語る)」において、「米調査会社IDCによると20年10〜12月のMacの出荷台数は前年同期に比べて5割増と急増した。ただパソコン市場全体でみるとMacの割合は8%にとどまり市場規模は小さい。」の記載があり、また、IDCJapan株式会社による2020年及び2021年通年の国内トラディショナルPC市場実績値によれば、2020年のカンパニー別出荷台数シェアは、レノボ/NEC/富士通グループが41.7%(1位)、申立人は5.5%(5位)(http://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ47486921)、2021年の同シェアは、レノボ/NEC/富士通グループが39.8%(1位)、申立人は6.8%(5位)(http://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ48960922)といった記事がある。
イ 上記アによれば、引用商標「Mac」は、申立人が開発・販売するパーソナルコンピュータの通称であって、遅くとも2010年より前から継続して使用するものであり、現在も「Mac」の文字を含むパーソナルコンピュータやオペレーティングシステムが販売されていることが認められるから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時においては、申立人の業務に係る商品「パーソナルコンピュータ、オペレーティングシステム」を表示する商標として、我が国の「パーソナルコンピュータ、オペレーティングシステム」の取引者、需要者の間では、相当程度認識されているものといえる。
しかしながら、申立人が我が国において引用商標を使用した時期及び期間、地域、宣伝広告の事実について具体的な主張及びそれを裏付ける証拠等の提出はなく、また、我が国における引用商標を使用した商品の販売数量、売上高等の量的規模を示す証拠など、客観的な使用事実に基づいて引用商標の使用状況を把握する証左は見いだせないから、引用商標の周知性の程度を推し量ることができない。さらに、職権調査によれば、近年(2020年及び2021年)、「パーソナルコンピュータ」に関する「Mac」又は申立人の我が国の市場シェアはさほど大きいものとはいえないこともうかがえる。
そうすると、申立人が提出した証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、引用商標が申立人の業務に係る商品「パーソナルコンピュータ、オペレーティングシステム」を表すものとして、我が国の一般的な需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、上記1のとおり、「Maclogic」の欧文字を、同書、同大、同間隔で、かつ、語頭の「M」を大文字にし、それに続く文字を小文字で表していることから、外観上まとまりよく一体的に構成されており、その構成文字に相応して生じる「マックロジック」の称呼も、格別冗長でなく、無理なく称呼し得るものである。
また、本件商標の構成文字は、辞書等に掲載が認められないから、特定の観念は生じない。
他方、引用商標は、「Mac」の欧文字を書してなるから、その構成文字に相応して「マック」の称呼を生じ、直ちに特定の観念を生じるものとはいえない。
そこで、本件商標と引用商標とを比較するに、語頭における「Mac」の文字を共通にするとしても、その後に続く「logic」の文字の有無に差異を有するものであるから、構成文字及び文字数を異にし、外観において区別できるものである。
次に、本件商標から生じる「マックロジック」の称呼と、引用商標から生じる「マック」の称呼を比較すると、「ロジック」の音の有無に差異を有し、全体の音数も相違することから、これらを一連に称呼したときは、聞き誤るおそれはなく、明瞭に聴別できるというべきである。
そして、本件商標と引用商標は、共に特定の観念が生じないから、観念において比較することできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないものであるとしても、外観及び称呼において、相紛れるおそれのないことが明らかなものであるから、両商標が需要者に与える印象、記憶等を総合してみれば、両商標は、非類似の商標であって、別異のものというのが相当である。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品を表すものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものであり、上記(2)のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であって、別異のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知・著名性について
引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
イ 本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標と引用商標とは、上記(2)のとおり、非類似の商標であって、別異のものであるから、類似性の程度は低いというべきである。
ウ 本件商標の指定商品及び指定役務と申立人商品の関連性、需要者の共通性について
本件商標の指定商品及び指定役務は、申立人の業務に係る商品「パーソナルコンピュータ、オペレーティングシステム」と商品及び役務の用途や取引者、需要者を共通にする類似の商品及び役務といい得るものである。
エ 出所の混同のおそれについて
上記アないしウのとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表すものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものであり、また、本件商標は、引用商標との類似性の程度も低いことからすれば、たとえ、本件商標の指定商品及び指定役務と申立人の業務に係る商品が類似し、その需要者の範囲を共通にする場合があるとしても、本件商標に接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起するものということはできない。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
オ 小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-05-06 
出願番号 2020159526 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W0942)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 小林 裕子
小松 里美
登録日 2021-03-29 
登録番号 6370191 
権利者 株式会社Maclogic
商標の称呼 マクロジック、マックロジック 
代理人 弁理士法人大島・西村・宮永商標特許事務所 

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