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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W1626
管理番号 1385403 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-14 
確定日 2022-05-20 
異議申立件数
事件の表示 登録第6367415号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6367415号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6367415号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和2年6月29日に登録出願、第16類「シールおよびステッカー」及び第26類「ワッペン及び腕章」を指定商品として、同3年2月22日に登録査定され、同年3月23日に設定登録されたものである。

2 引用商標等
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、次のとおりである。
(1)登録第4744993号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定商品 第25類「カナダグースの羽毛を用いてなるコート・ジャケット・パーカ・ベスト・アノラック・セーター・シャツ」
登録出願日 平成14年6月26日
設定登録日 平成16年1月30日
(2)登録第6162024号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲3のとおり
指定商品 第18類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成30年2月2日
設定登録日 令和元年7月12日
(3)登録第6180518号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 別掲3のとおり
指定役務 第35類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成30年8月6日
設定登録日 令和元年9月13日
(4)別掲4のとおりの構成からなる商標(以下「使用商標」という。)
申立人が、同人の業務に係る商品(被服など)及び役務(被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供など)に使用し、世界的に周知・著名性を獲得しているとするものである。
なお、引用商標1ないし3に係る商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。また、引用商標1ないし3及び使用商標をまとめて、以下「引用商標等」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証を提出した。
(1)引用商標等の著名性
ア 「CANADA GOOSE」は、我が国でも人気の高級被服ブランドで、申立人が製造販売する製品である。引用商標等は、日本を含む全世界において、長年の使用により、申立人の製品を表すものとして需要者・取引者の間に広く浸透している。インターネットのGoogle検索で「CANADA GOOSE」と入力すると、約1億2,400万件の記事が挙がり、上位100件をみてもほぼ引用商標等に係る製品に関する記事である(甲6)。これらの記事をみれば、「CANADA GOOSE」がいかに我が国の需要者に浸透しているかがわかるので、その一部を提出する(甲7〜甲12)。
申立人は、1957年にカナダのトロントに、ウールのベスト、レインコート、スノーモービルウェアを専門とする洋品店を開いた。1970年代には大容量にも対応可能なダウン充填機を発明し、極寒の地での作業に耐え得るダウンジャケットを開発し、南極などで活動する人々に親しまれるようになった。2000年代には北極探検を支援し、犬ぞり競技者とスポンサー契約を結び優勝を後ろ盾するなど歴史的な世界記録も打ち立てた。その後は、世界中の寒冷地の映画撮影時の公式/非公式ジャケットとして採用され、引用商標等を付したダウンジャケットが数多くの大作映画のスクリーンにも登場した。そして、さらなる製品の革新を続け、様々な気象条件や激しい運動に適した軽量製品を次々と発表し、数々の賞も受賞した。2014年にはニューヨークとトロントの株式市場に上場し、その年の11月時点での時価総額(円換算後)は約6,850億円と直近の年商の10倍以上に達し、投資家達からも高い注目を集めた。製造能力を大幅に高めた自国のカナダでは、アパレル産業における労働市場の6%を雇用していると連邦政府から認定を受けている(甲13)。冬のオリンピック競技大会等においても現地の協会スタッフが引用商標等を付したダウンジャケットを着ている姿が映り込んでいるのは、日本のNHK放送などでも良く見られる光景である。
イ ところで、カナダグースといえば、通称「アークティックディスク」といわれる赤く縁取られた丸い円に紺色と白色の刺繍で中央に地形が描かれたワッペンが馴染みであるが、これが引用商標等である。このことは、「カナダグース」又は「CANADA GOOSE」の文字をインターネットで画像検索しても、引用商標等を付した製品ばかりが検出されることからも明らかである(甲14、甲15)。
ウ かかる引用商標等に関する製品の全世界での売上高は、2018年5.91億カナダドル(約516億円)、2019年8.31億カナダドル(約725億円)、2020年9.58億カナダドル(約836億円)と右肩上がりに推移している(甲16)。新型コロナまん延後の2021年2月の米株式市場でも申立人の株が急騰し、前日比22.0%高の42.90ドル(約4,730円)で通常取引を終えている。一時は45.60ドル(約5,030円)と過去1年(52週)の高値を付けており、売上高は前年同期比5%増の4億7,400万カナダドル(約413億4,700万円)で、世界のネット販売の売上高が39%増と好調である(甲17)。
エ 日本でも、近年、まだ11月の初旬にもかかわらず、どの取扱店でも入荷済みの定番商品はほぼ完売し、極端な品薄状態が続いているほどの人気がある。本国からの製品供給量に制約があるため、取扱店への納入数を増やせない事情があって供給が追いつかず、争奪戦になっている一方で、店頭消化率は97%と驚くべき数字をたたき出している(甲18)。インターネットのダウンジャケット人気ランキングでも、引用商標等にかかる商品は常に上位に順位付けされている(甲19、甲20)。
一方で、引用商標等にかかる商品は、その人気ゆえに偽物が頻繁に流出しており、インターネット上でも、引用商標等にかかる商品の真贋を見分けるサイトが多くアップされている(甲21〜甲23)。申立人は我が国の税関に2017年5月に輸入差止申立て申請を行ったところ、2017年に655件、2018年は661件、2019年は295件、2020年は125件の認定手続開始通知書を受けている。この事実は、偽造品が出回るほどに、引用商標等が需要者の間に認知されていることのなによりの証左である。
オ このように、日本及び外国において引用商標等が申立人の業務に係る商品・役務に継続して使用され、その結果、本件商標の登録出願時には既に、申立人の商標として、需要者・取引者の間で極めて広く知られていることは明らかである。またその状態は、本件商標の登録査定時においても継続していたものである。
(2)本件商標と引用商標等の類似性
ア 本件商標について
本件商標は、外の円と内の円からなり、外の円と内の円の間には、上部に「KITAKYU GOODS」の欧文字と、下部に「NORTH NINE PROGRAM」の欧文字が配され、それら両欧文字の間を埋めるように楓に似た図形が左右に5個ずつ配されている。また、内の円の内部にはどこかの地形と思しき白い図形と、その中心点を意味する図形、及びその中心点を軸に広がる放射状の線が12本描かれている。そして、外の円と内の円、両欧文字、楓に似た図形、中心点、放射状の線が赤で着色されている。一方、内の円の内部は紺で着色されており、真ん中の地形図は白で着色されている。
イ 引用商標等について
引用商標等は、外の円と内の円からなり、外の円と内の円の間には、上部に「CANADA GOOSE」の欧文字と、下部に「ARCTIC PROGRAM」の欧文字が配され、それら両欧文字の間を埋めるように楓の図形が左右に5個ずつ配されている。また、内の円の内部には北極を模した白い図形と、その中心点を意味する図形、及びその中心点を軸に広がる放射状の線が12本描かれている。そして、使用商標は、外の円と内の円、両欧文字、楓の図形、中心点、放射状の線が赤で着色されている。一方、内の円の内部は紺で着色されており、真ん中の地形図は白で着色されている。
ウ 本件商標と引用商標等の比較
(ア)共通点について
両商標ともに、外の円と内の円からなり、外の円と内の円の間には、上部と下部に欧文字が配され、それら両欧文字の間を埋めるように楓の図形が左右に5個ずつ配されている。また、内の円の内部にはどこかの地形を模した図形と、その中心点を意味する図形、及びその中心点を軸に広がる放射状の線が12本描かれている。そして、実際に申立人が使用する使用商標との共通点として、外の円と内の円、両欧文字、楓の図形、中心点、放射状の線が赤で着色されている。一方、内の円の内部は紺で着色されており、真ん中の地形図は白で着色されている。
(イ)差異点について
a 欧文字
本件商標は、外の円と内の円の間に、「KITAKYU GOODS」の欧文字と「NORTH NINE PROGRAM」の欧文字が配されている。一方、引用商標等は、「CANADA GOOSE」の欧文字と下部に「ARCTIC PROGRAM」の欧文字が配されている。なお、「GOO」「S」及び「PROGRAM」の文字は共通する。
b 楓の図形
本件商標の楓の図形は、5つの凹凸からなる楓の葉に似た図形と見ることが出来る。一方、引用商標等の楓の図形は、5つの葉と1つの茎からなる。
c 地形図
本件商標の内の円の内部に描かれた地形は、引用商標等のそれとは形状が異なる。なお、海岸沿いに独特の複雑に入り込んだ形状を表している点は、両商標において共通する。
エ 商標の類似性のまとめ
以上のとおり、本件商標と引用商標等では、細部において異なる箇所があるとしても、欧文字について、「GOO」「S」と「PROGRAM」が共通しており、赤、白、紺という色彩のコントラストが共通しており、図形部分と文字部分の配置も同じで、商標の特徴的部分である構成要素は軌を一にしているので、看る者に同様の印象を与える。また、観念については、欧文字部分において「PROGRAM」が共通しており、その他、楓図形、地形等の構成要素から想起される観念が共通している。よって、本件商標と引用商標等は、その共通する構成要素や構図からして、外観上も観念上も酷似する、互いに混同するおそれのある類似の商標というべきである。
(3)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標3は、上述のとおり、互いに混同するおそれのある類似の商標である。また、指定商品も類似群コード「21A02」において抵触している。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(4)商標法第4条第1項第15号について
上述のとおり、本件商標と引用商標等は類似の商標であるところ、仮に、細部において異なる部分があるとしても、需要者に対し出所識別標識として強く支配的な印象を与える商標構成が軌を一にしているため、それら細部が強く印象の強いものとはいえない。また、引用商標等がすでに広く周知性を獲得している点を考慮すれば、むしろ、需要者は、本件商標から申立人の業務を表すものとして広く知られている周知な出所表示標識を認識し、申立人の商品・役務を想起して混同が生じることを危惧する。
このように、引用商標等は、指定商品・役務の分野において十分周知となっているところ、本件商標は、申立人の周知商標と構成上軌を一にし、引用商標等とは関連付けて認識される可能性があるもので、両商標の類似性の程度は決して低いとはいえない。そして、このような商標の登録を認めることは、申立人が永年多大な努力を払って築きあげてきた引用商標等に化体した業務上の信用へのただ乗り行為(フリーライド)を許すことになり、商標法の精神に反するといわざるを得ない。
すると、引用商標等と類似する本件商標がその指定商品に使用された場合、需要者が申立人の業務に係る商品・役務と混同するおそれがあることは想像に難くない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(5)商標法第4条第1項第19号について
上述のとおり、申立人は1957年から被服の製造販売を生業とし、引用商標等は本件商標の出願日より前から申立人にかかる商標として世界的に周知・著名性を獲得しているといえる。そのような状況下、本件商標が引用商標等の特徴をことごとく備えたものでありながら、楓図形と地形図のみをわずかに変更し、欧文字に至っては構成文字中の「GOO」「S」と「PROGRAM」をわざわざ共通させたことが偶然の一致によるものとは考えにくく、需要者が引用商標等を想起させることを予定した商標であると考えるのが自然である。
商標審査基準においては、a)一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであること、b)その周知な商標が造語よりなるものであるか、若しくは、構成上顕著な特徴を有するものであることの要件を満たすような商標登録出願に係る商標については、他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認して取り扱うものとするとされており、本件商標は、上記a)及びb)の要件を満たすものである。
以上のとおり、引用商標等は、本件商標の出願時及び査定時において申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているといえる。また、引用商標等と類似し、しかも構成上顕著な特徴を有する申立人案出にかかる図形を用いて、互いに相紛らわしい商標を採択・出願した本件商標の権利者には引用商標等の有する周知・著名性へのフリーライドの意図、出所表示機能の稀釈化の意図という不正の意図があったと考えざるを得ない。そして、近年のインターネット等の通信網の普及及び申立人の販促活動などを通じて、本件商標の商標権者も引用商標等の周知性は十分認識しうる立場にあったことは容易に推測できる。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものと思料する。
(6)商標法第4条第1項第7号について
上述のとおり、本件商標は、引用商標等と酷似しており、図形部分と文字部分の配置は同一で、赤、白、紺という色彩のコントラストも共通しており、多少の差異はあるものの、引用商標等の特徴をことごとく備えたものであって、本件商標が引用商標等の構成と偶然に一致する標章を任意に採択したものとはいい難く、むしろ、商標権者の業務と同一分野において使用される引用商標等に依拠し、剽窃的に採択使用するものとみることができ、かつ、本件商標に係る出願をするに際し、商標権者より承諾を受けていたと認める事実もない。してみれば、本件商標に係る商標権者の出願に及ぶ行為は、引用商標等の顧客吸引力に便乗し、不当な利益を得る等の目的の下に出願し、権利を取得したものと推認させるものであり、不正の目的をもって使用する商標といわざるを得ない。
また、権利者は、申立人及び引用商標等の存在を熟知していたものというべきであり、引用商標等に類似する本件商標を申立人に無断で登録出願することは商道徳的にも許されることではなく、国際信義上も好ましくない。
上述の事実を総合勘案すると、本件商標は、申立人に係る商品を表示する商標として需要者・取引者の間に広く認識されている引用商標等と類似するものであり、商標権者は、申立人及び引用商標等の存在を熟知していたものであって、申立人に無断で、引用商標等に化体した信用、顧客吸引力等にただ乗りし、引用商標等と同一の構成からなり引用商標等の使用に係る商品を指定商品とする本件商標を剽窃的に出願し、登録を受けたものというべきである。
そうすると、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることは商品の取引場裏において無用の混乱を生じさせ、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)引用商標等の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、使用商標は、我が国において、遅くとも2015年頃から「ダウンジャケット」について使用されていること(甲21)、使用商標を付したダウンジャケット(以下「使用商品」という。)は人気ランキングで2021年には第4位であったこと(甲20)、使用商品を紹介等するウェブページがあること(甲7〜甲12)、使用商品の偽物が2015年頃から流出していること(甲21〜甲23)、及び、申立人の関連会社と思われるカナダの会社における全世界での売上高は2018年5.91億カナダドル、2019年8.31億カナダドル、2020年9.58億カナダドルであったこと(甲16)が認められる。
しかしながら、我が国における使用商品の売上額、販売数など販売実績及び具体的な広告の実績に係る主張はなく、その証左は見いだせない。
また、使用商品のカナダなど外国における販売実績及び具体的な広告の実績を示す証左も見いだせない。なお、上記売上高は使用商品のみの売上高であることが確認できない。
イ 上記アのとおり、我が国において、使用商品は人気ランキングで2021年には第4位であり、使用商品の偽物が2015年頃から流出していることなどからすれば、使用商品は、我が国の需要者の間である程度知られていることがうかがえるものの、使用商品の我が国における販売実績及び具体的な広告の実績を示す証左は見いだせないから、需要者の間で広く認識されているものと認めるに足りない。
そうすると、仮に使用商品を製造・販売する者が申立人であるとしても、使用商品に使用されている使用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品(ダウンジャケット)を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、使用商品のカナダなど外国における販売実績及び具体的な広告の実績を示す証左は見いだせないから、使用商品に使用されている使用商標は、上記と同様に、申立人の業務に係る商品を表示するものとしてカナダなど外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることもできない。
さらに、引用商標1ないし3が申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又はカナダなど外国における需要者の間に広く認識されているものと認めるに足りる証左は見いだせないから、引用商標等は、いずれも申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国又はカナダなど外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、赤色の二重円の内部に、赤色の12本の放射線状の線が描かれた青色の円内に地形と思われる図形(以下「本件地図状図形」という。)を白抜きで表し、そのほぼ中央に16本の突起を有する赤色の円を表し、二重円の間に、赤色で上部に「KITAKYU GOODS」の文字、下部に「NORTH NINE PROGRAM」の文字、左右にそれぞれ5個の花と思われる図形を配してなるものであり、その構成中の文字に相応し「キタキューグッズノースナインプログラム」「キタキューグッズ」「ノースナインプログラム」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標3
申立人が、本件商標が本号に該当するとして引用する引用商標3は、別掲3のとおり、二重円の内部に、灰色の12本の放射線状の線が描かれた黒色の円内に地形と思われる図形(以下「引用地図状図形」という。)を白抜きで表し、そのほぼ中央に16本の突起を有する円を表し、二重円の間に、上部に「CANADA GOOSE」の文字、下部に「ARCTIC PROGRAM」の文字、左右にそれぞれ5個の楓の葉と思われる図形を配してなるものであり、その構成中の文字に相応し「カナダグースアークティックプログラム」「カナダグース」「アークティックプログラム」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標3の類否
本件商標と引用商標3の類否を検討すると、外観において両商標は、中央に表された「本件地図状図形」と「引用地図状図形」の形状、及び二重円の間に表された文字と図形に差異を有し、その差異が両商標の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は少なくなく、両者を離隔的に観察しても、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
次に、本件商標から生じる「キタキューグッズノースナインプログラム」「キタキューグッズ」「ノースナインプログラム」と引用商標3から生じる「カナダグースアークティックプログラム」「カナダグース」「アークティックプログラム」の称呼を比較すると、両者の語調語感は明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標3は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
その他、両商標が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標3は非類似の商標であるから、両商標の指定商品と指定役務が類似するとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標等の類似性の程度
上記(2)のとおり本件商標と引用商標3は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
そして、引用商標3と引用商標1、2及び使用商標は、別掲2ないし4のとおり、色彩が異なるものがあるが、いずれも外観上同一視し得るものといえる。
そうすると、本件商標と引用商標1、2及び使用商標は、上記(2)と同様に相紛れるおそれのない非類似の商標であるというのが合理的である。
してみれば、本件商標は、引用商標等のいずれとも相紛れるおそれのない非類似の商標である。
イ 引用商標等の周知性の程度
上記(1)のとおり引用商標等は、いずれも申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
ウ 混同のおそれ
上記アのとおり、本件商標と引用商標等は相紛れるおそれのない非類似の商標であり、上記イのとおり、引用商標等は申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標等を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(4)商標法第4条第1項第19号及び同項第7号について
上記(1)のとおり、引用商標等は申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(3)のとおり、本件商標と引用商標等は相紛れるおそれのない非類似の商標であり、かつ、本件商標は引用商標等を連想又は想起させるものでもない。
そうすると、本件商標は、引用商標等の信用、顧客吸引力にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
さらに、本件商標が、その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当するものといえない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(本件商標)

(色彩は原本参照。)

別掲2(引用商標1)


別掲3(引用商標2及び3)


別掲4(使用商標)

(色彩は原本参照。)


(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-05-11 
出願番号 2020079602 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W1626)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 齋藤 貴博
板谷 玲子
登録日 2021-03-23 
登録番号 6367415 
権利者 えがお合同会社
商標の称呼 キタキューグッズノースナインプログラム、キタキューグッズ、キタキュー、ノースナインプログラム、ノースナイン、ナインプログラム、ノース、プログラム 
代理人 山尾 憲人 
代理人 佐々木 美紀 
代理人 勝見 元博 
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