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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z25 |
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管理番号 | 1385378 |
総通号数 | 6 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2022-06-24 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2021-03-10 |
確定日 | 2022-01-26 |
事件の表示 | 上記当事者間の国際登録第763916号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件国際登録第763916号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、2001年(平成13年)7月24日に国際商標登録出願、第25類「Clothing,Footwear,Headgear.」を指定商品として、平成14年4月18日に登録査定、同年5月2日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 なお、本件審判の請求の登録は、令和3年3月24日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の平成30年3月24日から令和3年3月23日までを以下「要証期間」という。 第2 請求人の主張 請求人は、「商標法第50条第1項の規定により、国際登録第763916号商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品(以下「請求に係る指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないことから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)一般論として輸入行為をもって商標の使用とすることはそのとおりであると考える。 (2)しかし、答弁書においてはイタリアからの輸出行為に終始し、日本への輸入についてはなんら触れていない。 被請求人は、東京高裁平成15年7月14日判決(平成14年(行ケ)346号)に言及しているが、同事件においては少なくとも次のことが立証されている。 ア 権利者が日本の販売業者からファクシミリによって注文を受けたこと。 イ 日本の販売業者が商品を日本国内に輸入し、輸送業者から通関料,配達料,関税,輸入消費税,航空運賃等の請求を受けたこと。 ウ 権利者が日本の販売業者から商品代金を受け取ったこと。 よって、答弁書においては輸入に関する使用が立証されていない。 エ 乙第4号証は作成者名義及び作成日付が不明で証拠力を有しない。 オ 乙第8号証は作成者名義及び作成日付が不明、さらにURLの開示が不十分で証拠力を有しない。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。 1 本件商標の使用事実の要点 本件商標の通常使用権者である「LOM FASHION SRL」は、要証期間内に我が国において請求に係る指定商品中「Clothing.」について、本件商標を使用している。 2 本件商標の使用の事実 (1)商標の使用者 本件商標権者は、乙第2号証に記載のとおり、本件商標「YOON」の使用について、当該「LOM FASHION SRL」とライセンス契約を結んでいる。そして、当該「LOM FASHION SRL」は、本件商標が付された商品「Clothing.」を、日本国内に流通させる目的で、イタリアの輸出業者「ANACORETA SRL」を通して日本に輸出しており、日本(大阪)の輸入業者「SENZA SOSTA CO LTD」に輸入商品「Clothing.」が届く形態をとっていることから、当該輸出行為により、本件商標が付された商品「Clothing.」が当該「LOM FASHION SRL」から日本国内に流通させる目的で輸入されるものとなる。 ここで、「『日本国内』において使用されなければならないところ,権利者が在外者であって,当該輸入行為をもって,当該権利者による行為とみなされる(取消2004−30009他。東京高裁平成15年7月14日判決(平成14年(行ケ)第346号)を引用。)」との判断を勘案すると、本件商標の使用者は「LOM FASHION SRL」であり、当該輸入行為をもって、「LOM FASHION SRL」が、本件商標が付された商品「Clothing.」を日本で使用するものとなる。 (2)使用に係る商品 乙第3号証は、本件商標の使用者「LOM FASHION SRL」が、イタリアの輸出業者「ANACORETA SRL」に発行した請求書であり、当該請求書における請求書番号21には、ニットウェア商品「Model 1407 ARTICLE 2212」が示されている。 ここで、当該請求書に記載の商品代金の支払いに関しては、日本(大阪)の輸入業者「SENZA SOSTA CO LTD」がイタリアの輸出業者「ANACORETA SRL」に対して支払義務を負うものであり、更に、当該「ANACORETA SRL」は、当該取引の当事者ではなく、本件商標の使用者「LOM FASHION SRL」の手足のような単なる輸出代行業者であるため(乙4)、当該取引の当事者である本件商標の使用者「LOM FASHION SRL」に対して支払義務を負うものとなる。なお、当該請求書番号21の末尾には、運搬会社「D.B.GROUP S.P.A.」によって、当該請求書に記載の商品が、イタリアの空港から関西空港に届けられる旨が記載されている。 乙第5号証は、当該請求書番号21に示されている商品を日本に輸出する際に必要となった通関書類であり、当該通関書類には、当該請求書番号21に対応する「N.21」が示されている。 乙第6号証は、本件商標の使用者「LOM FASHION SRL」が発行したカタログであり、当該カタログの12頁目には、当該ニットウェア商品「Model 1407 ARTICLE 2212」が掲載されている。 乙第7号証は、本件商標の使用者「LOM FASHION SRL」が、ファッション、デザイン、アートの世界有数のオンラインストアであって2000年に設立されオンラインストアである「YOOX」を運営する「YOOX NET−A−PORTERグループ」に発行した請求書であり、当該請求書には、ジャケット(GIACCA)・ドレス(ABITO)・ズボン(PANTALONE)・コート(CAPPOTO)等の商品が示されている。 更に、乙第8号証は、当該「YOOX NET−A−PORTERグループ」が、日本の需要者向けに運営するオンラインストア「YOOX」のスクリーンショットの一部であるが、当該スクリーンショットには、本件商標「YOON」ブランドの衣料品が多数示されており、当該「YOOX NET−A−PORTERグループ」が、当該請求書に記載の衣料品を、日本に出荷していることは明らかである。 (3)使用に係る商標 乙第6号証におけるニットウェア商品「Model 1407 ARTICLE 2212」の首元のタグには、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「YOON」が記載されている。 乙第8号証における衣料品の首元のタグには、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「YOON」が記載されている。 (4)使用時期 乙第3号証における請求書番号21には、「2020年1月31日」と記載されている。 乙第5号証における本件商標の使用者「LOM FASHION」の名称が記載されている欄には、「2020年2月5日」と記載されている。 乙第6号証のカタログの1頁目には「FALL WINTER 2020−2021 (秋冬2020−2021)」と記載されている。 これらの使用時期は、要証期間内である。 更に、乙第7号証における請求書は9つ存在するが、これらの請求書のうち要証期間内の請求書が3つ(「2018年7月24日」と「2019年4月30日」、「2020年4月30日」)存在することから、本件商標の使用者「LOM FASHION SRL」が、日本向けのオンラインストア「YOOX」で、要証期間に、実際に、首元のタグに本件商標と社会通念上同一と認められる商標「YOON」を付した衣料品を販売していたことは明らかである。 なお、乙第3号証におけるその他の請求書番号(請求書番号21以外の請求書)に記載された商品と、その他の通関書類の対応関係についても、同様の方法(通関書類には請求書の番号が記載されている)で明らかになるものであり、そして、その他のカタログにおける衣料品の首元のタグには、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「YOON」が記載されていることも明らかである。 例えば、「2021年2月3日」との日付が記載されている請求書番号3には、ニットウェア商品「Model 1412 ARTICLE 5000」が示されているところ、当該請求書番号3に対応する通関書類は乙第9号証の1頁目であり、本件商標の使用者「LOM FASHION」の名称が記載されている欄には、「2021年2月3日」と記載されている。そして、当該ニットウェア商品は、乙第10号証のその他のカタログ「MENSWEAR COLLECTION FALL−WINTER 21−22」の7頁目に掲載されており、首元のタグには、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「YOON」が記載されていることから、当該ニットウェア商品「Model 1412 ARTICLE 5000」についても、要証期間内の使用であることは明らかである。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、要証期間に日本国内において通常使用権者により請求に係る指定商品中「Clothing.」について使用していることが明らかである。 第4 当審の判断 1 事実認定 被請求人の提出した証拠及び当事者の主張によれば、以下の事実を認めることができる。 (1)ライセンス契約書(乙2)によれば、本件商標権者「MANCINI Giuseppe」は、商標「YOON」の使用について、「LOM FASHION SRL」と2012年(平成24年)1月18日にライセンス契約を結んでいる。契約の内容は、商標「YOON」の使用について、8年間の無償貸与を開始し、8年経過後に自動的に有償貸与に同意する、等というものである。 (2)請求書(乙3)には、最上部中央に「YOON」(右上の付記的部分に、ごく小さく「R」(審決注:「R」は、○の中にRの文字。以下同じ。)の記号が付されている。)の文字が大きく表示され、その直下には「LOM FASHION SRL」の文字が住所、eメールアドレス、電話番号、FAX番号とともに表示されている。また、請求先(「Billing Address」)として「ANACORETA S.r.l」の文字がイタリアのミラノの住所とともに表示され、商品の発送先(「・・・AND FOR GOODS TO BE SHIPPED TO:」)として「SENZA SOSTA CO.,LTD」の文字が日本の大阪府の住所と電話番号とともに表示されている。 そして、同請求書(乙3)の請求書番号21(「INVOICE Nr.21」)には、2020年1月31日(「31/01/2020」)の日付が表示され、ニットウェア商品(「knitwear」)として「Model 1407 ARTICLE 2212」の記載がある。 (3)請求書番号21に示されている商品を日本に輸出する際に必要となったとされる通関書類(乙5)には、出荷国(「Paese di spedizione」)としてイタリア(「ITALIA」)、仕向国(「Paese di destinazione」)として日本(「GIAPPONE」)が表示され、イタリアの「ANACORETA S.R.L」と日本の「SENZA SOSTA CO.,LTD」の表示が住所とともに記載されており、また「LOM FASHION」の名称が記載されている欄には、当該請求書番号21に対応する「N.21」及び2020年2月5日(「05/02/2020」)の日付が表示されている。 (4)カタログ(乙6)には、表紙の中央に「YOON」(右上の付記的部分に、ごく小さく「R」の記号が付されている。)の文字が大きく表示され、その直下には「MADE IN ITALY」の文字が小さく表示されている。さらに同表紙の下部に「秋 冬」を意味する英語「FALL WINTER」の文字と「2020−2021」の数字が青色で二段に表示されている。 また、同カタログの最終頁には、「LOM Fashion s.r.l.」の文字が住所、電話番号、FAX番号とともに表示されている。 同カタログの12頁目(表紙を含む。)には、最上部の左側に「BICOLOR ROUND NECK KNITWEAR」の文字、同右側に「YOON」の文字が表示され、下部に「MOD:1407」「ART:2212」の文字が表示されている。そして、中央には当該ニットウェア商品の写真が大きく表示されており、その首元のタグには、「YOON」の文字が表示されている。 (5)上記(1)ないし(4)を勘案すると、本件商標権者「MANCINI Giuseppe」と商標「YOON」の使用についてライセンス契約を結んだ「LOM FASHION SRL」は、「ANACORETA S.r.l」を通して、2020年2月5日頃に、首元のタグに「YOON」の文字が表示されたニットウェア商品(「Model:1407、ARTICLE:2212」)をイタリアから日本へ輸出し、日本の「SENZA SOSTA CO.,LTD」が当該商品を輸入したものと認められる。 2 判断 上記1で認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。 (1)使用商標 カタログ(乙6)中、ニットウェア商品(「Model:1407、ARTICLE:2212」)の首元のタグに表示された「YOON」の欧文字からなる商標(以下「使用商標」という。)と本件商標とは、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標であり、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。 (2)使用商品 本件商標の使用に係る商品は、「ニットウェア商品」(乙3、乙5、乙6)であるところ、当該商品は、請求に係る指定商品中、第25類「Clothing.」の範ちゅうに含まれるものである。 (3)使用時期 請求書(乙3)には、商品の発送先として日本の「SENZA SOSTA CO.,LTD」が表示され、請求書番号21には、2020年1月31日の日付とニットウェア商品(「Model 1407 ARTICLE 2212」)の記載があること、日本を仕向国とする通関書類(乙5)には、「LOM FASHION」の名称が記載されている欄に、請求書番号21に対応する「N.21」及び2020年2月5日(「05/02/2020」)の日付が表示されていることから、ニットウェア商品は要証期間内(2020年2月5日頃)に日本に輸入されたものと推認される。 (4)使用者 ライセンス契約書(乙2)によれば、本件商標権者は、商標「YOON」の使用について、「LOM FASHION SRL」と2012年(平成24年)1月18日にライセンス契約(8年間の無償貸与を開始し、8年経過後に自動的に有償貸与に同意する、等というもの)を結んでいるものと認められる。また、請求書(乙3)によれば、要証期間内に「LOM FASHION SRL」は、使用商標(「YOON」)が付されたニットウェア商品等について、日本の企業との間で取引を行っているものと認められる。そうすると、本件商標権者と「LOM FASHION SRL」とは、商標「YOON」の使用について緊密な関係にあり、また、「LOM FASHION SRL」による本件商標の使用について本件商標権者(被請求人)が異議を述べていないこと等を総合判断すれば、本件商標権者は、「LOM FASHION SRL」が本件商標を我が国で使用することについて黙示の許諾を与えているものと推認できる。 したがって、「LOM FASHION SRL」は、本件商標の通常使用権者と認められる。 (5)使用行為 ライセンス契約書(乙2)、請求書(乙3)、カタログ(乙6)及び同カタログ中のニットウェア商品における商標「YOON」(使用商標)の使用態様等によれば、ニットウェア商品の首元のタグによって、使用商標が、「LOM FASHION SRL」を出所として識別する標章として使用されていたものというべきである。 そして、「外国法人が商標を付した商品が・・・いったん日本に輸入された場合には,当該輸入行為をとらえ,当該外国法人による同法2条3項2号にいう『商品に標章を付したものを輸入する行為』に当たる『使用』行為として,同法上の『使用』としての法的効果を認めるのが相当である」(平成14年(行ケ)第346号)。 そうすると、「LOM FASHION SRL」が商標「YOON」(使用商標)を付したニットウェア商品を、日本の「SENZA SOSTA CO.,LTD」が輸入した行為は、「LOM FASHION SRL」によって「商品に標章を付したものを輸入する行為」(商標法第2条第3項第2号)が行われたものと認めるのが相当である。 (6)小括 上記(1)ないし(5)で判断したとおり、本件商標の通常使用権者である「LOM FASHION SRL」は、要証期間に日本国内において、請求に係る指定商品中「Clothing.」の範ちゅうに含まれる「ニットウェア商品」に本件商標と社会通念上同一の商標を付したものを輸入する行為(商標法第2条第3項第2号)をしていたことが認められる。 3 請求人の主張について 請求人は、被請求人の主張はイタリアからの輸出行為に終始し、日本への輸入に関する使用が立証されていない旨主張している。 しかしながら、上記2で判断したとおり、請求書(乙3)、通関書類(乙5)、カタログ(乙6)等によれば、商標「YOON」(使用商標)が付されたニットウェア商品は要証期間内(2020年2月5日頃)に日本に輸入されたものと推認されるというのが相当である。 したがって、請求人の主張は採用することができない。 4 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件商標の通常使用権者が、要証期間に日本国内において、請求に係る指定商品中「Clothing.」について、本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていたことを証明したと認められる。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべき限りではない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(本件商標) |
審理終結日 | 2021-12-02 |
結審通知日 | 2021-12-07 |
審決日 | 2021-12-22 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(Z25)
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最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
板谷 玲子 森山 啓 |
登録日 | 2001-07-24 |
商標の称呼 | ユーン、ヨーン |
代理人 | ▲吉▼川 俊雄 |