• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 商4条1項11号一般他人の登録商標 登録しない W07
管理番号 1385285 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-31 
確定日 2022-05-16 
事件の表示 商願2019− 75183拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標及び手続の経緯
本願は、令和元年5月29日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 6月24日付け:拒絶理由通知書
令和2年 8月 3日 :意見書の提出
令和2年12月25日付け:拒絶査定
令和3年 3月31日 :審判請求書の提出
令和3年 6月14日 :上申書の提出
令和3年12月 9日 :上申書の提出
令和4年 1月24日 :面接
令和4年 2月 1日 :手続補正書・上申書の提出

2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第3類及び第7類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として登録出願されたものである。
本願の指定商品は、当審における上記1の手続補正書により、第7類「送風機,燃焼空気用送風機,高圧送風機,排ガス誘引送風機,熱風循環送風機,熱処理炉用送風機,冷凍装置用送風機,細断機能付き送風機,タービン(陸上の乗物用のものを除く。),原動機用ファン,機械エンジン用ファン,内燃機関用の排ガス処理装置,原動機用排気装置,冷却空気清浄用ろ過器(機関用のもの),圧縮空気式機械,機械又は機関の部品としてのろ過器,清掃用塵埃排出装置,穀物の圧縮用・吸引用及び搬送用の送風機,工業用の軸流ファン」に補正されたものである。

3 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定において、本願が商標法第4条第1項第11号に該当するものとして、本願の拒絶の理由に引用した登録商標は、以下のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続している。
(1)登録第4195200号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 「NISSHIN」の欧文字を横書きしてなるもの
登録出願日 昭和58年7月12日
設定登録日 平成10年10月9日
書換登録日 平成22年5月19日
指定商品 別掲2のとおりの商品を含む、第6類、第7類、第8類、第9類、第11類、第12類、第15類、第16類、第17類、第19類、第20類、第21類、第26類、第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(2)登録第4195201号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 「ニッシン」の文字を横書きしてなるもの
登録出願日 昭和58年7月12日
設定登録日 平成10年10月9日
書換登録日 平成22年5月19日
指定商品 別掲2のとおりの商品を含む、第6類、第7類、第8類、第9類、第11類、第12類、第15類、第16類、第17類、第19類、第20類、第21類、第26類、第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(3)登録第4647139号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 「日清」の文字を標準文字で表してなるもの
登録出願日 平成14年6月4日
設定登録日 平成15年2月21日
指定商品 第3類、第6類、第9類、第11類、第14類、第16類、第17類、第19類、第20類、第21類、第22類、第24類、第26類、第27類、第30類、第31類、第34類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(4)登録第5224367号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 別掲3のとおり、「NISSIN」の欧文字を有してなるもの
登録出願日 平成19年6月27日
設定登録日 平成21年4月17日
指定役務 第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務

4 当審の判断
(1)引用商標3及び引用商標4について
本願の指定商品は、上記1のとおり補正された結果、引用商標3の指定商品及び引用商標4の指定役務と類似しない商品となった。
したがって、本願商標が、引用商標3及び引用商標4と類似するとして、商標法第4条第1項第11号に該当するとした拒絶の理由は、解消した。
(2)商標の類否判断について
商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、当該商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、そのためには、両商標の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、当該商品に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号参照)。
この点に関し、図形や文字等の複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合には、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、原則として許されないが、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるものと解される(最高裁昭和37年(オ)第953号、最高裁平成3年(行ツ)第103号、最高裁平成19年(行ヒ)第223号参照)。
上記の観点から、本願商標と引用商標1及び引用商標2との類否について判断する。
(3)本願商標について
本願商標は、別掲1のとおり、毛筆で描かれたと思しき、上部に二つの頂点を有する図形(赤色及び青色のグラデーションが施されている。)と、その右側に、赤色の下線が配された「NISSIN」の欧文字(青色のグラデーションが施されている。)より構成された図形と文字との結合商標である。
そして、図形部分と文字部分とは、いずれも重なること無く間隔を空けて配されていることから、両部分は視覚上明確に分離されており、構成上からは、図形部分と文字部分とが、それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合されているような事情は見いだせない。
また、本願商標の構成中、図形部分は、直ちに特定の事物を想起させるものとは認められないから、当該部分からは特定の称呼及び観念が生じないものである。
さらに、本願商標の構成中、文字部分からは、その構成文字に相応して、「ニッシン」の称呼が生じ、また、当該文字は、一般的な英語の辞書等に掲載されている語ではないことから、文字部分からは、特定の観念を生じないものである。なお、文字部分においては、欧文字の下部に赤色の直線が描かれているが、当該直線は、欧文字を強調するために施されている付記的な飾りと看取されるものであって、格別の印象を与えるものではない。
そうすると、両部分からは、称呼及び観念的に密接な関連を見いだせないから、本願商標は、その構成中、文字部分と図形部分とがそれぞれ独立して取引者、需要者に対し商品の出所識別標識としての機能を果たし得るものといえる。
してみれば、本願商標は、その構成中「NISSIN」の文字部分を要部として抽出し、他人の商標(引用商標1及び引用商標2。)と比較して、商標の類否を判断することができるものである。
したがって、本願商標は、その要部の一である「NISSIN」の文字部分に相応して、「ニッシン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(4)引用商標について
ア 引用商標1
引用商標1は、「NISSHIN」の欧文字を横書きしてなるところ、引用商標1は、その構成文字に相応して、「ニッシン」の称呼を生じる。また、その構成文字は、一般的な英語の辞書等に掲載されている語ではないことから、引用商標1は、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標2
引用商標2は、「ニッシン」の文字を横書きしてなるところ、引用商標2は、その構成文字に相応して、「ニッシン」の称呼を生じる。また、その構成文字は、「日清」、「日進」、「日新」などの漢字の読みとして国語辞典に掲載があるものの、「ニッシン」の称呼を生じる当該複数の語句があることから、直ちに特定の意味合いを想起させる語とはいいがたいから、引用商標2は、特定の観念を生じないものである。
(5)本願商標と引用商標との類否について
ア 引用商標1
本願商標と引用商標1の類否について検討するに、外観においては、その全体構成において差異を有するものであるが、本願商標の要部の一である文字部分と引用商標1は、語頭の「N」「I」「S」「S」及び語尾の「I」「N」の文字を同じくし、中間における「H」の文字の有無のみを異にするところ、当該文字は中間に位置することに加え、本願商標の文字部分と引用商標1とは、いずれも特殊とはいえない書体をもって表されており、その綴りは明確に記憶されるとはいい難いことから、両者を、時と処を異にして離隔的に観察した場合には、外観上近似した印象を生じるというのが相当である。また、称呼においては、本願商標と引用商標1とは、「ニッシン」の称呼を同一にする。そして、観念については、本願商標と引用商標1はいずれも特定の観念を生じないものであるから、観念については、比較することができない。
してみれば、本願商標と引用商標1とは、観念において比較できないとしても、称呼を同一にし、外観においては近似した印象を与えるものであり、これらを総合して全体的に考察すれば、本願商標と引用商標1とは、互いに紛れるおそれのある類似する商標というべきである。
イ 引用商標2
本願商標と引用商標2の類否について検討するに、外観においては、その全体構成において差異を有するものであるが、本願商標の要部の一である文字部分と引用商標2は、文字の種類が欧文字と片仮名とで相違するものの、いずれも特殊とはいえない書体をもって表されており、商標の構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記したり、デザイン化したりすることは一般的に行われている。そうすると、本願商標の文字部分と引用商標2における文字種の相違が、取引者、需要者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえない。 また、称呼においては、本願商標と引用商標2とは、「ニッシン」の称呼を同一にする。そして、観念については、本願商標と引用商標2はいずれも特定の観念を生じないものであるから、観念については、比較することができない。
してみれば、本願商標と引用商標2とは、観念において比較できないとしても、称呼を同一にし、外観において、称呼上の類似性を凌駕するほどの顕著な差異があるとはいえないものであるから、これらを総合して全体的に考察すれば、本願商標と引用商標2とは互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
(6)本願の指定商品と引用商標の指定商品の類否
少なくとも、本願の指定商品中「送風機」は、引用商標1及び引用商標2の指定商品中の「風水力機械器具」(液体又は気体を噴出させたり、高所へ押し上げたり、高圧のタンクへ押し込んだりするために、液体又は気体に圧力を加える機械器具(商品及び役務の区分解説[国際分類第10版版対応]特許庁商標課編 発明推進協会発行))に含まれるものである。そうすると、これらの商品は互いに生産・販売・流通経路を共通にする可能性があり、本願商標と引用商標1及び引用商標2とをこれらの商品に使用するときは、同一営業主に係る商品と誤認混同するおそれがあると認められる関係にあるから、互いに類似する。
よって、本願の指定商品は、引用商標1及び引用商標2の指定商品と同一又は類似のものである。
(7)小括
以上からすれば、本願商標は、引用商標1及び引用商標2と類似の商標であり、本願の指定商品も引用商標1及び引用商標2に係る指定商品と同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(8)請求人の主張について
ア 請求人は、本願の指定商品における取引の実情として、第7類における送風機等は、その用途に応じて仕様が特殊であって、相応の技術力を有する企業でなければ製造・販売することができず、新規参入が非常に困難であることから、我が国において製造・販売する企業は限られており、それ故に、送風機等の取引における、取引者・需要者の通常有する注意力は高く、本願商標は引用商標1及び引用商標2と誤認混同する程度に類似するものではない旨主張する。
しかしながら、商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは、その指定商品全般についての一般的・恒常的なそれを指すものであつて、単に該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的・限定的なそれを指すものでない(最高裁昭和47年(行ツ)第33号)、と解すべきものである。
これを本件についてみると、請求人が主張するような、「特殊な仕様」の送風機が取引されている実情があるとしても、比較的安価で汎用性のある送風機がインターネットショッピングサイト等で取引されている実情もあることを勘案すると、請求人の主張する上記実情は、商標を実際に使用している具体的な商品についての実情であるから、特殊的、限定的な取引の実情といわざるを得ないものであり、商標の類否判断に当たり考慮すべき一般的、恒常的な取引の実情ということはできない。
イ 請求人は過去の登録例(甲6〜甲23)、称呼を共通にするも互いに非類似であると判断された審決例(甲24〜甲42)及び「ニッシン」と称呼される商標の登録例(甲46〜甲61)を列挙し、本願商標と引用商標1及び引用商標2は非類似と判断されるべき旨主張している。
しかしながら、そもそも商標法第4条第1項第11号に該当するか否かは、査定時又は審決時における個別具体的な事情に基づき判断されるものであるから、請求人の挙げた例があるからといって、本願商標も登録すべきであるということにはならない。
ウ 請求人は、令和4年2月1日付上申書において、「依然として本願商標と引用商標1および2とが類似するとの心証を持たれる場合には、その旨を通知されたい。」旨を主張している。
しかしながら、本件の審理に当たり、合議体は請求人の求めに応じて面接を実施し、請求人は面接の前後に上申書を提出しており、合議体は、請求人に意見及び反論の機会を与え、審理を十分に尽くしてきたものであるから、これ以上の手続は不要と判断し、本件に係る更なる通知は行わないこととした。
エ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用できない。
(9)まとめ
以上のとおり、本願商標は引用商標1及び引用商標2と類似する商標であり、かつ、本願の指定商品は、引用商標1及び引用商標2の指定商品と同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するため、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。


別掲

【別掲1】本願商標(色彩は原本参照。)


【別掲2】引用商標1及び引用商標2の指定商品に含まれる商品
第7類 化学機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,農業用機械器具,動力機械器具(陸上の乗物用のものを除く。),陸上の乗物用の動力機械の部品,風水力機械器具
第9類 オゾン発生器,電解槽
第11類 乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器,牛乳殺菌機,ボイラー,蒸気暖房装置,温水暖房装置,温気暖房装置,放熱器,温気炉,窓掛け式空気調和装置,中央式空気調和装置,単位誘引式空気調和装置,路面暖房装置
第12類 陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。)
第17類 乗物のラジエーター用連結ホース

【別掲3】引用商標4(色彩は原本参照。)



(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-03-14 
結審通知日 2022-03-15 
審決日 2022-03-31 
出願番号 2019075183 
審決分類 T 1 8・ 26- Z (W07)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 鯉沼 里果
大森 友子
商標の称呼 エヌニッシン、ニッシン、エヌ 
代理人 宮▲崎▼ 浩充 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ