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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1384526 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-18 
確定日 2022-05-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第6423377号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6423377号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6423377号商標(以下「本件商標」という。)は、「MAIパスポート」の文字を標準文字で表してなり、令和3年2月24日に登録出願、第9類「電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、同年7月21日に登録査定、同月30日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件商標に係る登録異議の申立てにおいて引用する国際登録第964755号商標(以下「引用商標」という。)は、「MY PASSPORT」の欧文字を横書きしてなり、2007年12月11日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2008年(平成20年)5月28日に国際商標登録出願、第9類「Computer products, namely, disk drives, computer storage units and computer peripherals.」を指定商品として、平成22年3月5日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 申立理由の要点
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標及び引用商標は、実質的には、本件商標の構成文字8文字中2文字しか異ならず、称呼が同一であるから、近似した印象を与える。
したがって、本件商標と引用商標とは類似し、指定商品も互いに類似する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、申立人の商標として、広く一般に知られている(甲3〜甲6)から、これと類似する本件商標がその指定商品に使用された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
2 具体的理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 商標の類似
商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであり、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察する必要があり、しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。また、商標の外観、観念又は称呼の一点において類似するものでも、他の二点において著しく相違すること、その他取引の実情等によって、何ら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認め難いものについては、類似商標と解すべきではない(最判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁)。
これを本件についてみるに、本件商標は、「MAIパスポート」の文字を標準文字で表してなるものであり、引用商標は、「MY PASSPORT」の文字を書してなるものであって、それぞれの構成文字に相応してともに「マイパスポート」の称呼が生じる。
したがって、両商標の称呼は同一である。
次に、観念について比較すると、本件商標は、欧文字の「MAI」と片仮名の「パスポート」を組み合わせたものと看取されるところ、欧文字の「MAI」は特定の意味を有しない一種の造語と解される一方、片仮名の「パスポート」からは、「パスポート」の意味合いが生じる。引用商標は、「私の」の意味を有する語として親しまれた「MY」と、「パスポート」の意味を有する語として親しまれた「PASSPORT」からなり、引用商標からは、「私のパスポート」という意味合いが生じる。
したがって、本件商標からは、「パスポート」の意味合いが生じ、引用商標からは、「私のパスポート」の意味合いが生じるところ、いずれも「パスポート」という意味合いを含むものであり、観念が著しく相違するとはいい得ない。
また、本件商標及び引用商標の外観についてみると、本件商標における「パスポート」部分と引用商標における「PASSPORT」部分はいずれも我が国において広く親しまれている同一の一般名詞を指すものであり、それを片仮名で表すか、ローマ字で表すかの違いがあるにすぎない。「パスポート/PASSPORT」が同じ一般名詞を指すことが需要者にとっても明らかであり、しかも、ローマ字を片仮名で表記することは通常であることから、「パスポート」と「PASSPORT」は、外観上、大差がないと評価できる。
そうすると、実質的にみて、本件商標「MAIパスポート」の構成文字中2文字(「AI」部分)しか引用商標とは異ならず、一文字目が大文字の「M」から始まる点で一致しているため、両商標は、外観上近似した印象を与えるものであり、両商標の外観上の差異が顕著などとは到底いえない。
また、取引の実情として、称呼よりも、観念や外観が特に重視されるという事情は存しない。
以上からすれば、本件商標と引用商標とは、称呼が同一であり、観念及び外観が著しく相違するとはいえず、取引の実情を踏まえてみても、両商標が、同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがある。
よって、両商標は類似する。
イ 商品の類似
本件商標と引用商標の指定商品は、通常同一の営業主により製造又は販売されているものであり、それらの商品に同一又は類似する商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがある。
したがって、両商標の指定商品は、同一又は類似する。
ウ よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品に使用したときに、当該商品が他人の商品に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれ(以下「広義の混同を生ずるおそれ」という。)がある商標も含まれる。そして、「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断される(最判平成12年7月11日民集54巻6号1848頁)。
これを本件についてみるに、本件商標と引用商標は、相互に類似する。
次に、引用商標の周知性に関し、申立人は、2008年から、ポータブルHDD(ハードディスクドライブ)について、「My Passport」商標を広く使用して今日に至っている(甲3)。甲第3号証には、申立人の世界におけるシェアに関し、デスクトップ向けHDDでは2位、モバイル向けHDDでも2位との記載があり、日本への「My Passport」関連商品の展開に関し、申立人の関連会社であるウエスタンデジタルジャパン株式会社の代表が、「我々のWebサイトにあるMy Passportへのアクセスを分析したところ、大半が日本ユーザーであることがわかった。日本のユーザーの要望に応えるため、製品の投入を決意した」との記載もある。これらの各事情からすれば、「My Passport」関連商品は、投入前から、日本の需要者の注目を集めていた。
甲第4号証にあるように、引用商標は商品パッケージにも付されており、甲第5号証の2に記載のとおり、2021年1月28日に発行された甲第5号証の1でも、「My Passport」関連商品の広告記事が掲載されている。
申立人は、2020年のHDD世界出荷台数第2位(37%)であり(甲6)、「My Passport」関連商品は申立人の主力商品の一つである。
したがって、申立人のHDD商品は、日本を含む世界中で大きなシェアを占めており、このシェアは、2008年以降、本件商標の登録出願時、登録査定時まで継続的に維持されていたものであって、こうした高いシェアを誇るHDD商品に関するブランドである引用商標は、日本の需要者の間で周知となっており、その周知性の程度は高いものである。
引用商標には、十分な独創性が認められるほか、本件商標の指定商品「電子応用機械器具及びその部品」が、幅広い商品を含むものであり、その中には、HDD商品も含まれることから、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品とは、その性質、用途及び目的において共通し、しかも、商品の取引者及び需要者も共通する。
以上を踏まえ、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準としてみると、本件商標がその指定商品について使用された場合には、少なくとも広義の混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、「MAIパスポート」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「パスポート」の文字は、「旅券」の意味を有する語(広辞苑第7版)として広く知られているものの、「MAI」の文字は、辞書等に載録されておらず、特定の意味合いをもって認識されているような事情も見いだせないものであるから、これらを合わせた「MAIパスポート」の文字は、特定の意味合いを有しない造語として理解されるというのが自然である。
そして、かかる構成においては、いずれかの文字部分が取引者、需要者に対して、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの、又は、いずれかの文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないというような事情は見いだせないものであるから、その構成全体を持って認識し、把握されるというのが相当であり、その構成文字に相応して生じる「マイパスポート」及び「エムエーアイパスポート」の称呼もさほど冗長というわけではなく、無理なく一連に称呼し得るものである。
そうすると、本件商標は、「マイパスポート」及び「エムエーアイパスポート」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、「MY PASSPORT」の欧文字を横書きしてなるところ、「MY」が「私の」、「PASSPORT」が「旅券、パスポート」の意味を有する(いずれも「ジーニアス英和辞典」)平易な英語であることから、その構成全体からは、「私のパスポート」程の意味合いが容易に理解されるものである。
そして、その構成文字に相応して生じる「マイパスポート」の称呼もさほど冗長というわけではなく、無理なく一連に称呼し得るものである。
そうすると、引用商標は、「マイパスポート」の称呼を生じ、「私のパスポート」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
ア 外観について
本件商標と引用商標の外観を比較すると、両者の構成はそれぞれ上記(1)及び(2)のとおりであるところ、本件商標が欧文字と片仮名の組み合わせよりなり、引用商標が欧文字のみからなることに加え、語頭の「MAI」と「MY」のつづりが明らかに異なるものであるから、判然と区別し得るものである。
イ 称呼について
本件商標から生じる「マイパスポート」及び「エムエーアイパスポート」の称呼のうち、「マイパスポート」の称呼は引用商標から生じる称呼と同一である。
ウ 観念について
引用商標は「私のパスポート」の観念を生じるものの、本件商標は特定の観念を生じないものであるから、両者は観念において紛れるおそれはない。
エ そうすると、本件商標から生じる称呼の一が引用商標から生じる称呼と同一であるとしても、本件商標と引用商標は、外観及び観念において相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者・需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というのが相当である。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
(4)小括
本件商標と引用商標とは、上記(3)のとおり、非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人は、「HDD(ハードディスクドライブ)」の米国のメーカーであり、2008年6月に、我が国において、「My Book」の商標を使用した「据え置き型HDD」及び引用商標(「My Passport」と表記されているものを含む。以下同じ。)を使用した「ポータブルHDD」(以下「申立人商品」という。)の販売を開始したことがうかがえる(甲3)。
イ 申立人商品の包装に引用商標が付されていることが確認できるものの(甲4)、当該証拠がいつの時点のものかは定かではない。
ウ 2021年1月28日に発売されたと思われる書籍の広告記事において、申立人商品の広告に引用商標が付されていることがうかがえる(甲5)。
エ 申立人は、引用商標に係る申立人商品は申立人の主力商品であり、HDD分野で高いシェアを占めているとして証拠を提出しているところ(甲3、甲6)、これらには、「同社のシェアは、国内バルク市場では・・・2位(27.86%、2008年4月統計)。」(甲3)、「20年のHDD世界出荷台数シェアは、1位が米シーゲイト・テクノロジー(42.7%)、2位が米ウエスタン・デジタル(WD、37%)、3位は東芝(20.3%)だった。」(甲6)の記載は確認できるが、一方で、「参入メーカーが・・・5社のみとなった」(甲3)、「HDDメーカーは・・・3社に集約された」(甲6)のような記載も確認できる。なお、これらの記事におけるシェアは、申立人のシェアと思われ、引用商標に係る申立人商品に限定されたシェアとは認め難い。
オ 上記アないしエによれば、申立人は、HDDメーカーの一であり、2008年6月から、申立人商品を我が国において販売していることがうかがえるものであって、3社ないし5社に集約されているとされるHDDメーカーにおいて、申立人自身は一定程度の周知性を有すると推認し得るものである。
一方で、申立人は、引用商標に係る申立人商品は申立人の主力商品であって、HDD分野で高いシェアを占めていると主張しているが、引用商標に係る申立人商品の具体的な取引状況等を示す客観的な証拠の提出はなく、他に、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の使用事実を示す客観的な証拠は見いだせない。
そうすると、具体的な使用事実に基づいて、引用商標の使用状況を把握し、その周知性の程度を客観的に推し量ることができないから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、取引者・需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
本件商標と引用商標は、上記1(3)のとおり、非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、類似性の程度は低いものである。
(3)商品の関連性及び需要者の共通性について
申立人商品は、本件商標の指定商品と同一又は類似するものといえるから、商品の関連性を有し、需要者を共通にするものである。
(4)引用商標の独創性について
引用商標は、上記1(2)のとおり、平易な英語を組み合わせた「MY PASSPORT」の文字よりなるものであるから、独創性が高いとはいえないものである。
(5)引用商標が申立人のハウスマークであるかについて
引用商標は、申立人のハウスマークではない。
(6)小括
上記(1)ないし(5)を総合的に判断すれば、本件商標の指定商品と引用商標に係る商品が関連性を有し、需要者を共通にするものであるとしても、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、取引者・需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものであって、本件商標と引用商標の類似性の程度も低いものであり、さらに、引用商標は、申立人のハウスマークでもなく、独創性が高いともいえないものである。
そうすると、本件商標権者が、本件商標をその指定商品について使用しても、取引者・需要者が、申立人若しくは引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-04-27 
出願番号 2021021264 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W09)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 小林 裕子
冨澤 美加
登録日 2021-07-30 
登録番号 6423377 
権利者 興和株式会社
商標の称呼 マイパスポート、マイ、エムエイアイ、パスポート 
代理人 山本 健策 
復代理人 本田 輝人 
代理人 井▲高▼ 将斗 

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