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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1384507 |
総通号数 | 5 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2022-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-06-07 |
確定日 | 2022-04-15 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6363285号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6363285号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6363285号商標(以下「本件商標」という。)は、「CUPSHE」の文字を標準文字で表してなり、令和2年7月7日に登録出願、第25類「被服,ズボン,コート,スカート,ティーシャツ,ボディス(下着),下着,ベスト,パジャマ,ズボン下,粘着性ブラジャー,新生児用被服,水泳着,靴及び運動用特殊靴,帽子,メリヤス下着,メリヤス靴下,手袋(被服),ネクタイ,スカーフ,ベルト(衣類用)」を指定商品として、同3年2月26日に登録査定、同年3月15日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は、申立人が「水着、ビーチタオルを含むビーチグッズ」に使用して周知著名であると主張する「CUPSHE」の文字よりなる標章(以下「引用商標」という。)である。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。 (1)「CUPSHE」について 「CUPSHE」は、申立人が2015年に米国で立ち上げたアパレルブランドであり、CUPSHEブランドは、主に、水着、ビーチタオルを含むビーチグッズを扱っている(甲2〜甲4)。 申立人は、CUPSHEブランドの商品を日本で販売してはいないが、CUPSHEブランドの商品は、インターネットショッピングサイトBUYMAを中心に購入することが可能であり、日本でも高い人気を博している。 なお、BUYMAは、海外在住のユーザーが出品するファッションアイテムを販売し、800万人もの会員が登録する、有名ショッピングサイトであり、コロナ禍で外国への行き来が制限される昨今、日本と世界各国をつなぐマーケットプレイスとして存在感を高めている。 (2)「CUPSHE」の著名性 CUPSHEブランドは2015年に誕生してから現在に至るまで、その歴史が長いとまではいえないにもかかわらず、非常に高い注目を浴びるブランドとして急成長を遂げている。その結果、「CUPSHE」は水着、ビーチタオルを含むビーチグッズの有名ブランドとして、国内外で広く認識されるに至った。 ア 「CUPSHE」に関するランキングについて 「CUPSHE」ブランドを冠する水着は、様々なランキングにおいて高いランキングを誇っている(甲5〜甲7)。 イ SNS、動画配信における注目度の高さについて 「CUPSHE」は、SNS上で102万という多くのフォロワーを獲得し、「CUPSHE」に関連する動画配信は、約70万回や約30万回に上る大量の再生回数を獲得している(甲8〜甲11)。このことは、「CUPSHE」ブランドの人気の高さを十分に示しているといえる。 ウ 有名雑誌、インターネットにおける紹介について 「CUPSHE」ブランドは、有名雑誌や有名人が運営するインターネットウェブサイトで大きく取り上げられている(甲12〜甲14)から、あまたの人々に知られる有名ブランドであることは明らかであるといえる。 エ 小括 以上より、「CUPSHE」ブランドが、水着の人気ランキングで上位を占めていること、SNS上のフォロワー数や動画配信の視聴回数が非常に多いこと、有名雑誌等で度々取り上げられていることは明らかであり、これらの事実から、「CUPSHE」は、水着を含むビーチグッズのブランドの名称として、国内外でその名を広く知られていることは明白であるといえる。 (3)本件商標と引用商標の類似性について 本件商標は、欧文字「CUPSHE」から構成されている。引用商標も、欧文字「CUPSHE」から構成されている。本件商標と引用商標は、その構成文字が同一であり、外観、称呼において一致する。したがって、両商標は、同一又は類似の関係にある。 次に、本件商標の指定商品「水泳着」等と、引用商標が使用される商品「水着」は、同一商品である。 以上より、本件商標と引用商標は、商標において同一又は類似の関係にあり、かつ、同一の商品に対して使用されるため、同一又は類似関係にあることは明らかである。 (4)商標法第4条第1項第10号の該当性 ア 引用商標が広く認識されていること 引用商標が、水着、ビーチタオルを含むビーチグッズを扱うブランド「CUPSHE」のブランド名称として、国内外に広くその名を知られている事実は、上記(2)より明らかである。よって、引用商標は広く認識されているといえる。 イ 本件商標と引用商標の類似性 本件商標と引用商標が、商標及び商品において同一又は類似の関係にあることは明らかである。 ウ 小括 以上より、引用商標は、申立人が立ち上げた、水着、ビーチタオルを含むビーチグッズを扱うブランド「CUPSHE」のブランド名称として広く認識され、本件商標と引用商標は、商標、商品において同一又は類似関係にあることは明らかであり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第15号の該当性 ア 本件商標と引用商標の類似性の程度 本件商標と引用商標は、商標、商品において同一又は類似の関係にある。したがって、類似性の程度が非常に高いことは明らかである。 イ 引用商標の周知性の程度 引用商標が、水着、ビーチタオルを含むビーチグッズを扱うブランド「CUPSHE」のブランド名称として広く認識され、周知性を備えていることは明らかである。 ウ 商品の関連性の程度 本件商標の指定商品と引用商標が使用される商品が、同一関係にある。 エ 引用商標の独創性の程度 「CUPSHE」は、辞書等に掲載される成語ではなく、申立人自らによる造語である。したがって、引用商標は高い独創性を備えている。 オ 小括 以上より、本件商標は、国内外でその名を広く知られる水着を含むビーチグッズのブランド「CUPSHE」のブランド名称である引用商標と、商標及び関連する商品において、同一又は類似の関係にあり、「CUPSHE」の独創性の高さも総合して考慮すると、本件商標を指定商品に使用した場合、消費者は、本件商標を使用した商品が、申立人又は、申立人と関係がある者による商品である等の混同を生ずるおそれがあることは明らかである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (6)商標法第4条第1項第19号の該当性 ア 引用商標が広く認識されていること 引用商標が国内外において広く認識されていることは明らかである。 イ 商標の類似性 本件商標と引用商標は、商標、商品において同一又は類似の関係にあることは明らかである。 ウ 不正の目的について 引用商標が、水着、ビーチタオルを含むビーチグッズを扱うブランド「CUPSHE」の名称として広く認識されている事実、「CUPSHE」が高い独創性を備えている事実を考慮すると、本件商標の権利者が、引用商標と同一の商標を偶然にも選択し、更に、引用商標が使用されている商品を含めて本件商標を出願したことは、不自然であるといわざるを得ない。 また、申立人は、米国、欧州、中国等で引用商標の登録を所有しているが、本件商標の権利者は2020年頃から、同じく米国、欧州、中国で、申立人が登録を所有していない区分に対して「CUPSHE」を出願している(甲15、甲16)。この事実から、本件商標の権利者は、「CUPSHE」を明らかに意識し、「CUPSHE」が登録されていない区分を意図的に選び、各国で「CUPSHE」を出願していることが明らかであるといえる。なお、米国において、本件商標の権利者が「CUPSHE」を第14類のアクセサリー類に対して出願したところ、審査において申立人の米国商標登録「CUPSHE」が引用され、混同を引き起こす可能性があるとの理由で出願が拒絶されている(甲17)。 したがって、本件商様の権利者は、「CUPSHE」の存在を十分に知ったうえで、あえて「CUPSHE」と同一の商標を、先行商標が存在していない区分を選んで各国で出願しており、この事実から、本件商標は、引用商標が広く知られていることにフリーライドする意図で出願されていることは明白である。 したがって、本件商標の使用に不正の目的があることは明らかである。 エ 小括 以上より、本件商標は、国内外で広く認識されるブランド「CUPSHE」のブランド名称である引用商標と同一又は類似の関係にあり、不正の目的をもって使用されたことは明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 (7)商標法第4条第1項第7号の該当性 本件商標は、水着、ビーチタオルを含むビーチグッズを扱うブランドとして、国内外で広くその名を知られるブランド「CUPSHE」のブランド名称である引用商標と同一又は類似の関係にある。本件商標の権利者は、「CUPSHE」を十分に知ったうえで、申立人が「CUPSHE」を権利化していない区分をあえて選択し、引用商標の名声にフリーライドする意図をもって、各国で出願を繰り返している。したがって、本件商標の出願の経緯は社会的相当性を欠くものであり、この様な出願を認めることは、公正な市場の秩序を乱すことに他ならない。 したがって、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当することは明らかである。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人の提出に係る証拠及び主張によれば、以下のとおりである。 (ア)引用商標は、申立人が2015年に米国で立ち上げたアパレルブランドであるとされる(申立人の主張)。そして、外国語で表された「CUPSHE」のウェブサイトによれば、引用商標に係る商品、例えば水着、ビーチタオル等のビーチグッズが販売されていることがうかがえる(甲2)。 また、当該ブランドの商品は日本で販売してはいないとされるが(申立人の主張)、日本語で表された「BUYMA」と称するウェブサイトにおいて、「CUPSHE」の表示の下で水着及びビーチタオルが価格表示と共に掲載されており、日本の需要者も上記商品を購入可能であることがうかがえる(甲3、甲4)。 しかしながら、上記ウェブサイトは、いずれもその掲載時期(掲載期間)を確認することができない。なお、甲第3号証及び甲第4号証については、「9.30(木)まで」との記載があることなどから、令和3年(2021年)に掲載されたものと推認される。 (イ)日本語で表された「BUYMA」と称するウェブサイトにおいて、2021年に買うべき水着の人気ブランドランキングの項目で「1.CUPSHE カップシー」と紹介され(甲5)、「STYLE HAUS」と称するウェブサイトにおいて、2019年夏に売れている水着ブランドとして、「1位:CUPSHE(カップシー)」と紹介されている(甲6)。また、外国語で表された「Family Vacation Critic」のウェブサイトにおいて、2020年の女性向け水着ベスト7の一つとして、「7.Cupshe」などとされている(甲7)。 しかしながら、上記ウェブサイトにおけるランキング等については、どのように選定されたものであるのかといった、客観的な根拠を確認することができない。なお、上記の甲第7号証について、翻訳文の提出はない。 (ウ)「Instagram」や「YouTube」に、「CUPSHE」の表示の下で水着が掲載されており、上記の「Instagram」のフォロワーが約102万人であることや、「YouTube」の動画視聴回数が累計約70万回や約30万回であることはうかがえる(甲8、甲10、甲11)。 しかしながら、上記「Instagram」に係る証拠(甲8)は、2021年(令和3年)9月に印刷されたものとみられ、本件商標の登録出願及び登録査定の日より後のものである。また、上記「YouTube」の視聴回数については、掲載開始以降どの程度の掲載期間におけるものかを確認することができないなど、その視聴回数の多寡を推し量ることができない。 (エ)ファッション雑誌の電子版等とされる記事には、「CUPSHE」(「Cupshe」)の記載や水着の掲載がみられるが、いずれも2021年(令和3年)4月又は5月の記事とみられ、本件商標の登録出願及び登録査定の日より後のものである(甲12〜甲14)。なお、上記記事は全て外国語で表されたものであり、翻訳文の提出もないものである。 イ 以上によれば、引用商標が、水着、ビーチタオルを含むビーチグッズ(以下「申立人商品」という。)に使用され、我が国においても申立人商品の購入が可能であることはうかがえるところである。 しかしながら、申立人商品の我が国又は米国など外国における販売期間、売上高や販売数などの販売実績、宣伝広告の回数や宣伝広告の額などの広告実績等、その周知性を判断し得る具体的な証拠は提出されていない。 また、ウェブサイトにおけるランキング等については、どのように選定されたものであるのかといった、客観的な根拠を確認することができない。 さらに、ウェブサイトにおける記事や動画配信等についても、本件商標の登録出願及び登録査定の日より後のものであるか、当該両日以前の状況(動画視聴回数等)が確認できないものである。 その他、引用商標の周知性を認めるに足る事実は見いだすことができない。 そうすると、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、引用商標が、申立人の業務にかかる商品を表示するものとして、我が国又は外国において、需要者の間に広く認識されているものと認めることができない。 (2)商標法第4条第1項第10号及び同項第19号該当性について 引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願の時及び登録査定時に、我が国又は外国において、需要者の間に広く認識されているものと認めることができないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ないから、同号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について 引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとは認められないものであり、周知性を備えていないものであるから、本件商標に接する取引者、需要者が、一般的に申立人の業務に係る引用商標を連想又は想起するものということはできない。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者が、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標について、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第7号該当性について 同号の規定は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録をすることができないとしているところ、同号は、商標自体の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること、及び商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(平成14年(行ケ)第616号)。 申立人は、引用商標の周知性等を主張すると共に、本件商標の権利者は、「CUPSHE」を十分に知ったうえで、申立人が「CUPSHE」を権利化していない区分をあえて選択し、引用商標の名声にフリーライドする意図をもって、各国で出願を繰り返している旨主張している。 しかし、上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されていると認められないものであり、本件商標が、引用商標の信用、顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)するなどの不正の目的をもって使用するものであると認めるに足る事実は見いだせない。 そして、申立人が提出した証拠からは、本件商標の出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く等の事実は見あたらず、その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足る事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものとはいえない。 (5)まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2022-04-07 |
出願番号 | 2020084145 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W25)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
森山 啓 |
特許庁審判官 |
板谷 玲子 馬場 秀敏 |
登録日 | 2021-03-15 |
登録番号 | 6363285 |
権利者 | 深▲せん▼市温▲ら▼爾商務諮詢管理有限公司 |
商標の称呼 | カップシェ、カップシー |
代理人 | 右馬埜 大地 |
代理人 | 両部 奈穂子 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 坪内 康治 |
代理人 | 石田 昌彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |