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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W03
管理番号 1384505 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-05-26 
確定日 2022-04-21 
異議申立件数
事件の表示 登録第6360916号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6360916号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6360916号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、令和2年1月30日に登録出願、第3類「ニキビ防止用化粧品,保湿ボディローション,身体用スプレー化粧品,スキンローション,化粧水,化粧品」を指定商品として、同3年1月14日に登録査定され、同年3月9日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する国際登録第973064号商標(以下「引用商標」という。)は、「ZARA」の欧文字を横書きした構成からなり、2015年4月14日に国際商標登録出願(事後指定)され、「cosmetics」を含む第3類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成28年1月22日に設定登録されたものであり、現在有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 商標の類否判断基準について
商標の類否判断(甲3)でいう「取引の実情」には、引用商標の周知・著名性も含まれることは経験則によっても認められており、かかる周知・著名性は、具体的な取引状況の下では出所の混同のおそれを増幅させるものであることは、判決でも示されている(甲4)。したがって、本件商標と引用商標の類否判断にあたっては、引用商標の周知・著名性を含む、具体的な取引の実情をも勘案して判断すべきである。
イ 「ZARA」の周知・著名性について
申立人のファッションブランド「ZARA」は、1975年にスペインにて1号店がオープンして以来(甲5)、現在では世界で約2,040店舗が展開されており(甲5)、「ZARA」(「ZARA HOME」を含む)の2021年1月期の世界全体の売上高は、コロナ禍が響き苦戦したものの、141億2,900万ユーロ(約1兆7,943億8,300万円、1ユーロ=127円で換算)を維持している(甲6)。日本においても1997年に日本法人が設立され、翌年に1号店を渋谷に開店した後、現時点で国内に約100の店舗が存在する(甲7)。
このような「ZARA」の世界展開や商業的成功、及びそれに伴うブランド認知度の向上により、ブランド価値評価ランキングにおいて、直近の2020年度版で第35位に選出されており、世界で最も成功しているファッションブランドの一つとして認識されている(甲8)。
したがって、「ZARA」は、本件商標の出願時点には、ファッションの分野において我が国の需要者、取引者の間で広く認識されており、強い顧客吸引力を持つ周知又は著名な商標と言える(甲9、甲10)。
ウ 申立人の化粧品の取り扱いについて
申立人の取扱商品には、被服のほか、化粧品が含まれている。申立人のオンラインショップにおいて、香水、フェイスパレット、リップスティック、ネイルポリッシュなどの多くの化粧品の一覧が表示される(甲11)。申立人は、日本でこれらの商品を「ZARA」の商標の下で展開している(甲12〜甲15)。
このように、申立人は、化粧品についても日本で商品展開をしており、このことは広く我が国の需要者、取引者に知られているといえる。
エ 「被服」と「化粧品」の関連性について
本件商標に係る指定商品は、人の装いを整えたり、彩ったりする点で、ファッションに深く関係する商品である。申立人を含めた多くのファッションブランドでは、同一のブランドを用いて化粧品を展開することは一般的であり、現に、「アルマーニ」、「TOMFORD」、「グッチ」等の海外の有名ファッションブランドが、日本において化粧品を商品展開している事実がある(甲16〜甲19)。また、人気のブランド香水のランキング調査をみても、「ディオール」、「アバクロンビー&フィッチ」、「ラルフローレン」等、多数のファッションブランドが香水を商品展開している(甲20)。
したがって、ファッションの中心アイテムである「被服」と「化粧品」とは、需要者、取引者の層が共通し、互いに関連性が強いものというべきである。
そして、上述のとおり、「ZARA」も、世界で最も成功しているファッションブランドの一つとして知られるものであることから、「被服」に関する「ZARA」の周知・著名性は、「化粧品」にも及んでいることは明らかである。
オ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標の図形部分と文字部分とは視覚上明確に分離して看取されるものであり、「Zara」、「Sube」、「mist」の文字部分は、視覚上、両者を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいい難い。また、「Zara」の文字部分は、冒頭に顕著に表示されていることから、看者に対して強く支配的な印象を与えるものである。そうすると、本件商標に接する需要者、取引者は、「Zara」の文字部分を商標の要部として認識すると考えるのが自然である。
本件商標の要部「Zara」と、引用商標は、いずれも辞書等に掲載されていないものであり、一種の造語として認識されることから、我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語読みに倣って、それぞれ同一の「ザラ」の称呼が生じる。また、両者は、外観上も相紛らわしく、本件商標と引用商標は、称呼及び外観において類似する。
特に、引用商標は独創性の高い商標であり、このような造語より構成される創造商標については一般に強い識別性が認められ、他人がその商標と類似するような商標を使用した場合には、既成語から構成される商標よりも需要者に対する印象、連想作用等から出所の混同が生ずる幅は広いというべきである(甲10)。
さらに、「ZARA」は「被服」の分野で周知・著名であって、その周知・著名性は関連する「化粧品」の分野にも及ぶことから、本件商標が指定商品に使用された場合には、周知・著名なブランド「ZARA」を想起、連想させるため、観念上の類似性も認められる。
そして、本件商標の指定商品と、引用商標の指定商品とは、同一又は類似の関係にある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
上述のとおり、引用商標は、申立人の基幹ブランドとして知られ、申立人のハウスマークと同等に位置づけられるべきものである。それ自体は辞書に採録のない造語であるが、特に被服の分野においては周知・著名性を獲得しており、本件商標と外観、称呼及び観念において類似する。
また、上述のとおり、「被服」と「化粧品」とは、密接な関連性を有すると共に、需要者、取引者の層が共通する。
そうすると、「被服」と「化粧品」の商品の関連性が高く、その需要者等を共通とするので、本件商標が指定商品に使用された場合は、これに接した需要者、取引者は、申立人と経済的又は組織的関係を有する者の業務に係る商品であると誤信することで、商品の出所について混同を生じるおそれが高い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
引用商標が、外国及び我が国の需要者、取引者の間で周知・著名な商標であること、さらに、本件商標が引用商標と類似することは、上述のとおりである。
申立人とは無関係の他人である本件商標の権利者が、周知・著名な商標と類似する本件商標を採択することは、自らの営業努力によって得るべき業務上の信用を、著名商標に化体した信用にただ乗りフリーライド)することによって得ようとするものであり、不正の目的が認められる。
また、本件商標の使用は、引用商標に化体した出所表示機能の希釈化を招くものであり、またその名声を棄損させるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の主張及びその提出した証拠によれば、以下のとおりである。
申立人は、スペインのアパレルメーカーであり、1975年に同国においてファッションブランド「ZARA」の1号店を開店し、その後、ヨーロッパ、アメリカ、アジアと世界各国に進出している。そして、「ZARA」ブランド単独で、2013年4月末時点で87か国に1,991店舗、2021年7月時点では、2,270店舗を展開し、「被服」を販売するこれらの店舗には、「ZARA」の文字が表示されている(甲5)。また、1997年には、日本法人である株式会社ザラ・ジャパンが設立され、1998年に第1号店舗として渋谷店が開店(甲5)、2021年8月時点において、日本における「ZARA」ブランドの店舗は、各地に100店舗が存在する(甲7)。加えて、「ZARA」ブランドでは、被服のほか、香水、フェイスパレット、リップスティック、ネイルポリッシュなどの化粧品も取り扱っている(甲11〜甲15)。
そして、「ZARA HOME」を含む「ZARA」ブランドの2021年1月期の世界全体の売上高は141億2,900万ユーロ(約1兆7,943億8,300万円)であり(甲6)、米Interbrand社が公表するブランド価値評価ランキング(2020年度版)において、「ZARA」は35位にランクされている(甲8)。
しかしながら、「ZARA」ブランドに係る化粧品の売上高、販売数、市場シェア等の販売実績や、宣伝広告の規模などの、周知性を数量的に判断し得る客観的かつ具体的な証拠は見いだせない。
イ 以上からすれば、「ZARA」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国において申立人の業務に係る商品「被服」を表すものとして、相当程度知られていたといえる。
一方、「ZARA」の文字を付した化粧品に関し、我が国における販売実績や宣伝広告の規模については明らかではなく、申立人が提出した証拠をもってしては、「ZARA」の文字が、申立人の業務に係る「香水、フェイスパレット、リップスティック、ネイルポリッシュなどの化粧品」を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲のとおり、「Z」及び「S」と思しき文字を円で囲みモノグラム様に表した部分(以下「モノグラム部分」という。)とその下部に、「ZaraSube」及び「mist」の欧文字(以下「文字部分」という。)を2段に書した構成からなるところ、モノグラム部分と文字部分とは、互いに接することなく、その態様も異なることから、視覚上分離して看取され、それぞれが自他商品の識別標識としての機能を有するものというべきである。
そこで、本件商標の文字部分についてみるに、「ZaraSube」及び「mist」の文字は、中心をそろえて左右バランスよく配置されているほか、それぞれが、同じ書体及び大きさをもって表され、視覚上、まとまりある一体的なものとして看取される。そして、上段に大きく表された「ZaraSube」の文字は、辞書類に載録された既成の語ではなく、特定の意味合いを有する語として知られているものでもないから、一種の造語として認識される。一方、下段に小さく表された「mist」の文字は、「霧」の意味を有する一般によく知られた語であるから、本件商標の指定商品中、「ミスト状の化粧品」に使用された場合には、自他商品の識別標識としての機能が極めて弱いか、又はその機能を果たさないものである。
そうすると、本件商標をその指定商品について使用するときは、その構成中の「ZaraSube」の文字が、取引者、需要者に対し、強く支配的な印象を与え、自他商品の識別標識として機能し得るものであるから、全体の構成文字に相応して、「ザラスベミスト」の称呼を生じるほか、「ZaraSube」の文字から「ザラスベ」の称呼をも生じるものである。そして、「ZaraSube」の文字は、その外観及び称呼の点からみても、また、上記(1)イのとおり、「ZARA」の文字は申立人の業務に係る「化粧品」等を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められない点からも、構成中の「Zara」の文字のみが独立して把握、認識されるものではないから、これを「Zara」の文字と「Sube」の文字とに分離して、「Zara」の文字のみを抽出して観察すべきではない。
そうすると、本件商標は、「ザラスベミスト」又は「ザラスベ」の称呼を生じ、いずれの場合においても、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は、前記2のとおり、「ZARA」の欧文字を表してなるところ、構成文字に相応して「ザラ」の称呼を生じ、また、当該文字は、辞書類に載録された既成の語ではなく、特定の意味合いを有する語として知られているものでもないから、一種の造語として認識し、把握され、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標との類否を検討すると、両者は、それぞれ上記ア及びイのとおりの構成からなるところ、本件商標のモノグラム部分を含めた商標全体で見ても、該モノグラム部分を除いた文字部分で見ても、さらに、文字部分中の「ZaraSube」の文字と引用商標「ZARA」の文字とを見ても、モノグラム部分の有無、構成文字の差異など構成態様が異なり、外観が相違することは明らかである。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「ザラスベミスト」又は「ザラスベ」の称呼と引用商標から生じる「ザラ」の称呼とは、語頭において「ザラ」の音を共通にするとしても、その構成音数、各音構成の相違及び音調の差異等により、それぞれを一連に称呼した場合においても、称呼上、明確に聴別し得るものである。
さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
以上によると、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないものの、外観及び称呼において相紛れるおそれはないから、両商標の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「香水、フェイスパレット、リップスティック、ネイルポリッシュなどの化粧品」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められないものである。
そして、上記(2)ウのとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、化粧品の分野における取引者、需要者において共通性があるものの、本件商標は、これを本件商標権者がその指定商品に使用しても、取引者、需要者が引用商標を想起して、その商品が申立人又は同人と親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると、その商品の出所について混同を生じるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標と引用商標とは、上記(2)ウのとおり、非類似の商標であり、また、上記(1)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「香水、フェイスパレット、リップスティック、ネイルポリッシュなどの化粧品」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められないものであることから、引用商標が需要者の間に広く認識されていた商標であることを前提に、本件商標は不正の目的をもって使用するものであるとする申立人の主張は、その前提を欠くものである。
また、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足る具体的事実を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲 本件商標


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異議決定日 2022-04-12 
出願番号 2020010202 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W03)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 鈴木 雅也
石塚 利恵
登録日 2021-03-09 
登録番号 6360916 
権利者 株式会社アイ・ビー・アイ
商標の称呼 ザラスベミスト、ゼットエス、ザラスベ 
代理人 小暮 君平 
代理人 特許業務法人BORDERS IP 
代理人 福井 孝雄 

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