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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W0912
管理番号 1383427 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-09 
確定日 2022-04-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第6377747号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6377747号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6377747号商標(以下「本件商標」という。)は、「PILOTPRO」の文字を標準文字により表してなり、平成31年4月9日に登録出願され、第9類「航海用計器・計測及び通信装置,電気制御用機械器具及び電子制御装置,信号処理装置,信号伝送装置,検査用機械器具,教育用映像周波機械器具,教育用音声周波機械器具,教育用電子応用機械器具,音響・テキスト又は映像の記録用・送信用及び再生用の装置,ICチップ,データ処理装置,コンピュータ,コンピュータ用メモリー,コンピュータソフトウェア(記憶されたもの),コンピュータプログラム(記憶されたもの),電気通信機械器具,コンピュータ周辺装置,電気式検査用機械器具,障害者のための電気通信機械器具,遠隔制御装置,車椅子用の速度検査装置,コンピュータ用ジョイスティック,マイクロホン,電子計算機,プリンター,電気通信用送信機,コンピュータ用キーボード,モニタリング用コンピュータプログラム,送信用コンピュータプログラム」及び第12類「自動車,自動車の部品及び附属品,乗物用シート」を含む第9類、第10類及び第12類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、令和3年3月18日に登録査定、同年4月15日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとして、引用する商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。)。
1 登録第5893100号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:「ProPilot」(標準文字)
登録出願日:平成28年3月2日
設定登録日:平成28年11月4日
指定商品:第9類「測定機械器具,自動車用ナビゲーション装置,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータ,コンピュータソフトウェア,コンピュータプログラム,アプリケーションソフトウェア」及び第12類「自動車,自動車の部品およびその付属品,自動運転車」
2 登録第6060935号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:「PROPILOT ASSIST」(標準文字)
登録出願日:平成29年7月26日
設定登録日:平成30年7月13日
指定商品:第9類「測定機械器具,自動車用ナビゲーション装置,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータ,コンピュータソフトウェア,コンピュータプログラム,アプリケーションソフトウェア」及び第12類「陸上の乗物用の動力機械器具(その部品を除く。),陸上の乗物用のエンジン,陸上の乗物用の機械要素,軸(陸上の乗物用の機械要素),軸受(陸上の乗物用の機械要素),軸継ぎ手(陸上の乗物用の機械要素),動力伝導装置(陸上の乗物用の機械要素),緩衝器(陸上の乗物用の機械要素),ばね(陸上の乗物用の機械要素),制動装置(陸上の乗物用の機械要素),自動車用ブレーキパッド,陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),自動車並びにその部品及び附属品,電気自動車並びにその部品及び附属品,燃料電池自動車並びにその部品及び附属品,ハイブリッド電気自動車並びにその部品及び附属品,自動運転車,ドライバー支援型自動運転装置搭載車,ワゴン型自動車,トラック,自動車(バンタイプ),スポーツユーティリティービークル,バス,レクリエーション用自動車,スポーツカー,レーシングカー,貨物自動車,フォークリフトカー,トラクター,バンパー,エアバッグ(自動車用安全装置),自動車用泥よけ」
3 登録第6060936号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様:「ProPILOT Assist」(標準文字)
登録出願日:平成29年7月26日
設定登録日:平成30年7月13日
指定商品:第9類「測定機械器具,自動車用ナビゲーション装置,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータ,コンピュータソフトウェア,コンピュータプログラム,アプリケーションソフトウェア」及び第12類「陸上の乗物用の動力機械器具(その部品を除く。),陸上の乗物用のエンジン,陸上の乗物用の機械要素,軸(陸上の乗物用の機械要素),軸受(陸上の乗物用の機械要素),軸継ぎ手(陸上の乗物用の機械要素),動力伝導装置(陸上の乗物用の機械要素),緩衝器(陸上の乗物用の機械要素),ばね(陸上の乗物用の機械要素),制動装置(陸上の乗物用の機械要素),自動車用ブレーキパッド,陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),自動車並びにその部品及び附属品,電気自動車並びにその部品及び附属品,燃料電池自動車並びにその部品及び附属品,ハイブリッド電気自動車並びにその部品及び附属品,自動運転車,ドライバー支援型自動運転装置搭載車,ワゴン型自動車,トラック,自動車(バンタイプ),スポーツユーティリティービークル,バス,レクリエーション用自動車,スポーツカー,レーシングカー,貨物自動車,フォークリフトカー,トラクター,バンパー,エアバッグ(自動車用安全装置),自動車用泥よけ」

第3 登録異議の申立ての理由(要旨)
申立人は、本件商標は、その指定商品中、第9類「航海用計器・計測及び通信装置,電気制御用機械器具及び電子制御装置,信号処理装置,信号伝送装置,検査用機械器具,教育用映像周波機械器具,教育用音声周波機械器具,教育用電子応用機械器具,音響・テキスト又は映像の記録用・送信用及び再生用の装置,ICチップ,データ処理装置,コンピュータ,コンピュータ用メモリー,コンピュータソフトウェア(記憶されたもの),コンピュータプログラム(記憶されたもの),電気通信機械器具,コンピュータ周辺装置,電気式検査用機械器具,障害者のための電気通信機械器具,遠隔制御装置,車椅子用の速度検査装置,コンピュータ用ジョイスティック,マイクロホン,電子計算機,プリンター,電気通信用送信機,コンピュータ用キーボード,モニタリング用コンピュータプログラム,送信用コンピュータプログラム」及び第12類「自動車,自動車の部品及び附属品,乗物用シート」(以下「申立商品」という。)について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号の規定により、その登録が取り消されるべきである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第75号証を提出した。
1 商標第4条第1項第11号について
(1)商標の類否
本件商標は、「PILOTPRO」の欧文字を書してなるものであるから、「パイロットプロ」の称呼を生じる。
引用商標1は、「ProPilot」の欧文字を書してなるものであるから、「プロパイロット」の称呼を生ずる。
引用商標2及び3は、「ProPilot」及び「PROPILOT」以外にも「Assist」の語を有するが、当該語は他の語の後に結合して「〜を助ける、支える」という記述的な意味を持つ語であるから、「ProPilot」及び「PROPILOT」部分が独立して出所識別標識として機能し得る。
「PILOT」及び「パイロット」の語は、「操縦士」を意味する語として一般に知られており、「PRO」の語は、「専門家、ベテラン」を意味する「Professional」の略語としてよく使われているが、「PILOT」と「PRO」の語は、どちらの語順においても一連の熟語的な意味合いをもって一般に親しまれているとは言い難いから、本件商標及び引用商標はいずれも、「パイロット」及び「専門家、ベテラン」の観念を生ずる文字の組み合わせからなる商標として印象付けられる。
そして、我が国では「PRO」の語は、機械やソフトウェアを搭載した製品に使用される場合、他の名称と結合して使用され、製品がプロ(専門家)やビジネス仕様であるとか、製品のスペックが優れていることを示す語として多用されているが、「PRO」の語は他の名称と結合する場合、その名称の前と後ろのどちらにも結合して使用されており、平均的に見てどちらか一方の使用態様が多いという実情はない(甲5〜甲11)。
このような実情を踏まえて本件商標と引用商標の構成中の「ProPilot」又は「PROPILOT」との類否を検討すると、本件商標は「パイロットプロ」と称呼され、引用商標は「プロパイロット」と称呼されるところ、その差異は「プロ」と「パイロット」の音節が入れ替わっているにすぎないものである。
そして、本件商標と引用商標が、第9類の機械器具及びソフトウェア等や、第12類の自動車等に使用される場合、それぞれの観念はともに、「PRO」と「PILOT」の組み合わせから全体の観念が認識されるものであり、いずれの商標からも「パイロットのプロ仕様」や「パイロットの優れた仕様」程度の意味合いが把握される。
さらに、「Pro」及び「Pilot」の語はいずれも、我が国では一般に親しまれているところ、「ProPilot」又は「PILOTPRO」が一連の熟語的意味合いを有する語としては一般に親しまれていないため、本件商標と引用商標に接する取引者、需要者が、時と処を異にしてこれらの商標に接するときは、「PILOT」と「PRO」のどちらが前節であるか後節であったかを判別することが困難であるから、称呼及び観念上互いに紛れるおそれがある類似のものと判断されるべきである。
(2)商品の類否
申立商品と、引用商標の指定商品とは同一又は類似である。
(3)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標と称呼及び観念上類似するものであり、申立商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知著名性について
申立人は、我が国を代表する自動車メーカーであって、創業以来、新しい技術の開発と実用化に挑むことに取り組んでおり、近年は自動運転技術の開発にも力を入れている。「ProPilot」は、自動車の走行をサポートする自動運転の先進技術として2016年の発表当初から、その技術の高さが大きな話題となった。
そして、世界的な自動車の自動運転技術への関心の高まりも背景に、新聞・雑誌では、多数の「ProPilot」の特集や、申立人の自動運転技術への取り組みの特集が組まれた(甲22〜甲39)。
また、申立人は当初より、「ProPilot」の宣伝広告活動を精力的に行っており(甲40〜甲63)、「ProPilot」は、自動運転の優れた技術として、数々の賞も受賞している(甲64〜甲72)。
さらに、申立人は公式ウェブサイトにおいて、「NISSAN ProPILOT」の専用ページを設け、その技術内容を詳細に紹介している(甲73)。テレビCMにおいても「ProPILOT」を宣伝している(甲74)。
以上から、「ProPilot」は申立人の自動運転技術の名称として、初めて公開された2016年より、申立人の多大なる販売、宣伝広告活動の結果広く知られるようになり、本件商標の出願時にはすでに周知著名な商標であり、本件商標の登録査定時には、さらに周知著名となった。
(2)出所の混同を生ずるおそれについて
本件商標「PILOTPRO」と引用商標の「PROPILOT」は、「PRO」と「PILOT」の語から構成される点が共通し、差異点は語順が入れ替わった点のみであり、称呼、観念上共通する。
そして、上述のとおり、自動車及びその技術分野において、申立人の技術名称「ProPilot」は周知著名であることに加え、申立人の幅広い人口層への精力的な販売、宣伝広告活動や、「ProPilot」の話題性の高さから各種新聞、雑誌で取り上げられた結果、申立人の「ProPilot」は、分野を問わず広く周知著名である。
また、申立商品は、申立人の自動車及び自動運転技術と同一又は類似するものであり、取引者及び需要者は共通し、関連性の程度は高く、インターネット検索エンジンでは、本件商標を片仮名で表した「パイロットプロ」を検索すると、上位に上がってくるのは申立人の「プロパイロット」の記事である(甲75)。
そうすると、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標を申立商品に使用した場合、これに接する需要者が、周知著名な商標である引用商標を連想、想起して、これらの商品が申立人、あるいは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認するおそれがあることは明らかである。
(3)小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、「PILOTPRO」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔でまとまりよく一体に表されており、その構成文字全体に相応して生じる「パイロットプロ」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、「PILOTPRO」の文字は、辞書等に載録されている語ではないから、その構成中の「PILOT」の文字が「操縦士、パイロット」等の意味を有し、「PRO」の文字が「プロ、職業選手」の意味を有する語(いずれも「プログレッシブ英和中辞典」小学館)であるとしても、かかる構成及び称呼においては、その構成全体をもって特定の語義を有さない一体不可分な造語であると認識されるというのが相当である。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「パイロットプロ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
ア 引用商標1
引用商標1は、上記第2の1のとおり、「ProPilot」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、まとまりよく一体に表されているものの、その構成中、語頭及び4文字目の「P」の文字が大文字で表されることにより「Pro」の文字と「Pilot」の文字とを結合した構成であることを容易に認識されるものである。そして、その構成文字全体に相応して生じる「プロパイロット」の称呼は、よどみなく一連に称呼し得るものである。
ところで、「Pro」の文字は、上記(1)のとおり、「プロ、職業選手」の意味を有する語であるところ、例えば、スポーツの職業選手を「プロゴルファー」や「プロ野球選手」と称したり、タクシーやトラックなどの職業運転手を「プロドライバー」と称するなど、動作者を表す語の前に「Pro(プロ)」の文字が付されたときは、文字全体として、当該動作を職業とする者を表している。そして、「Pilot」の文字は、上記(1)のとおり、「操縦士、パイロット」ほどの動作者を表す文字である。
そうすると、当該「Pro」と「Pilot」の文字とは、観念的にも密接な関連があり、これらを結合した「ProPilot」の文字からは、「プロのパイロット」ほどの一連の意味合いを認識させるものである。
したがって、引用商標1からは、「プロパイロット」の称呼を生じ、「プロのパイロット」の観念を生ずるものである。
イ 引用商標2
引用商標2は、上記第2の2のとおり、「PROPILOT ASSIST」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、「PROPILOT」と「ASSIST」の文字の間に1文字程度の間隔を有するとしても、同じ書体、同じ大きさでまとまりよく一体に表されており、その構成文字全体に相応して生じる「プロパイロットアシスト」の称呼も、やや冗長であるとしても、無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、その構成中の「PROPILOT」の文字は、すべて大文字で表されているものの、引用商標1と欧文字のつづりを同じくするものであるから「PRO」の文字と「PILOT」の文字を結合したものと容易に認識されるものであって、上記アのとおり、「プロのパイロット」ほどの意味合いを認識させるものである。
また、「ASSIST」の文字は、「援助する、助ける」の意味を有する語(前掲書)であるから、構成文字全体としては、「プロのパイロットを補助する」ほどの漠然とした意味合いを想起させるものといえる。
そうすると、引用商標2は、その構成文字に相応して、「プロパイロットアシスト」の称呼を生じ、「プロのパイロットを補助する」ほどの漠然とした意味合いを想起させるものである。
ウ 引用商標3
引用商標3は、上記第2の3のとおり、「ProPILOT Assist」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「ProPILOT」の文字は、「Pro」の文字と「PILOT」の文字を結合したものと容易に認識できるものであり、また、一部において大文字と小文字の差異はあるものの、引用商標2と欧文字のつづりを同じくするものである。
そうすると、引用商標3は、上記の引用商標2と同様に、その構成文字に相応して、「プロパイロットアシスト」の称呼を生じ、「プロのパイロットを補助する」ほどの漠然とした意味合いを想起させるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
ア 外観
本件商標と引用商標1の外観を比較すると、両者の全体の構成はそれぞれ上記(1)及び(2)アのとおりであり、ともに8文字から構成され、第1文字目における「P」の文字を同じくするとしても、2文字目以降の構成文字が相違するものである。
次に、本件商標と引用商標2及び引用商標3の外観を比較すると、両引用商標の全体の構成は上記(2)イ及びウのとおりであり、本件商標とは、第1文字目における「P」の文字を同じくするとしても、2文字目以降の文字が異なり、文字数も本件商標が8文字であるのに対して両引用商標は14文字であるから、明らかに相違するものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観上、相紛れるおそれはないものである。
イ 称呼
本件商標から生ずる「パイロットプロ」の称呼と引用商標1から生ずる「プロパイロット」の称呼とは、ともに6音から構成されるとしても、その音構成が相違するものである。
次に、本件商標から生ずる「パイロットプロ」と引用商標2及び引用商標3から生ずる「プロパイロットアシスト」の称呼とは、構成音が本件商標の6音に対して両引用商標は10音からなるから、明らかに相違するものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは聞き誤るおそれはなく、称呼上、相紛れるおそれはないものである。
ウ 観念
本件商標からは、特定の観念が生じないのに対し、引用商標1からは「プロのパイロット」の観念を生じ、引用商標2及び引用商標3からは「プロのパイロットを補助する」ほどの漠然とした意味合いを想起させるものであるから、本件商標と引用商標とは、観念上、相紛れるおそれのないものである。
エ そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
オ 申立人の主張
申立人は、本件商標と引用商標に接する取引者、需要者が、時と処を異にしてこれに接するときは、称呼及び観念において、「PRO」及び「PILOT」の文字の先後を判別することが困難であるから、両者は互いに紛れるおそれのある類似の商標である旨主張する。
しかしながら、上記(1)及び(2)のとおり、本件商標及び引用商標は、その構成全体がまとまりよく一体に表されているものであって、「PRO」及び「PILOT」の文字部分が分離して、前後逆に看取されることはないものである。そして、上記(3)のとおり、両者は、称呼及び観念においても相紛れるおそれはないものである。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。
カ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、いずれも相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、申立商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
ア 申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、自動車の自動運転技術である「プロパイロット」を2016年に発表し(甲23、甲24)、2019年には、高速道路上の走行を支援する機能を備えた「プロパイロット2.0」を発表した(甲51、甲52)(以下、申立人の自動車の自動運転技術を単に「プロパイロット」という場合がある。)。
申立人は、2016年よりプロパイロットを搭載した自動車(以下、プロパイロットを搭載した自動車を「申立人商品」という場合がある。)の発売を開始し(甲25〜甲27)、2018年には、申立人商品を2022年までに20車種に増やすとした(甲49)。
しかしながら、それらを裏付ける証拠においては、「プロパイロット」の文字は見受けられるものの、引用商標は確認することができない。
(イ)申立人は、2016年5月の「G7伊勢志摩サミット」での次世代自動車による走行デモに参加し、プロパイロットを披露した(甲40)。また、自社ギャラリーでの展示イベントや国内外の各種展示会において、プロパイロット及び申立人商品の展示を行ったことがうかがえる(甲40〜甲47、甲52、甲54、甲55、甲63)。
しかしながら、それら各種イベント等の実施を裏付ける証拠において「プロパイロット」の文字は見受けられるものの、引用商標は確認することができず、また、それら各種イベント等において、引用商標が使用されたかについても確認できない。
(ウ)プロパイロットは、自動運転の優れた技術として、「2017年次RJCカーオブザイヤー」を受賞し(甲65)、また、申立人商品も数々の賞を受賞している(甲64〜甲67、甲69〜甲72)。
しかしながら、各種賞の受賞を裏付ける証拠において「プロパイロット」の文字は見受けられるものの、引用商標は確認することできないから、各種賞の受賞による引用商標の知名度の高さを推し量ることはできない。
(エ)申立人は、同人ウェブサイトにおける自動運転技術の内容を紹介する専用ページにおいて「ProPILOT」、「ProPILOT2.0」及び「プロパイロット」の文字を(甲73)、テレビCMにおいて「ProPILOT」の文字を表示している(甲74)。
(オ)新聞及び雑誌においては、自動車の自動運転技術を紹介する記事中に申立人に係る自動運転技術として「プロパイロット」の文字が使用されている(甲26〜甲33、甲37、甲39)ところ、当該記事において引用商標の使用は確認できない。
イ 判断
上記アからすれば、申立人は、「プロパイロット」と称する自動車の自動運転技術を2016年に公表し、それ以降、現在に至るまで申立人商品を販売している。そして、同人のウェブサイト及びテレビCMにおいて、「ProPILOT」、「ProPILOT2.0」の文字を表示している。
しかしながら、「プロパイロット」を搭載した自動車(申立人商品)に引用商標が表示されているのか否か、表示されている場合、当該商品の販売数等の実績が定かではない。また、上記ウェブサイトの専用ページの視聴者数やテレビCMにおける宣伝広告の放映回数、放映期間、放映地域を示す主張、証拠は見いだせない。
そうすると、申立人の提出に係る証拠によっては、引用商標が、我が国において、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)混同を生じるおそれについて
上記(1)イのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国において、引用商標が、申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして需要者に広く認識されていたものとは認められず、また、上記1(3)のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であって、別異のものである。
そうすると、本件商標は、これを申立商品に使用しても、これに接する需要者は引用商標を想起、連想させることはないというべきであるから、当該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-03-31 
出願番号 2019049834 
審決分類 T 1 652・ 261- Y (W0912)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 淳
特許庁審判官 大森 友子
水落 洋
登録日 2021-04-15 
登録番号 6377747 
権利者 パーモービル エービー
商標の称呼 パイロットプロ、パイロット、プロ、ピイアアルオオ 
代理人 山田 薫 
代理人 窪田 英一郎 
代理人 武田 太郎 
代理人 塚田 美佳子 

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