• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0942
管理番号 1383423 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-18 
確定日 2022-04-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第6371589号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6371589号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6371589号商標(以下「本件商標」という。)は、「3D OS DRAM」の欧文字を標準文字で表してなり、令和元年7月26日に登録出願、第9類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同3年3月17日に登録査定され、同年4月1日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第3条第1項第3号、同項第6号、同法第4条第1項第16号及び同法第3条第1項柱書に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の3第2項(決定注:「同法第43条の2各号」の誤記と認める。)の規定により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
(1)本件商標の特定
本件商標は、欧文字「3D OS DRAM」を標準文字で横書きした構成からなり、第9類「電子応用機械器具及びその部品」等、及び第42類「金属酸化物・半導体・電子応用機械器具・電気通信機械器具に関する試験及び研究並びに開発」等を指定商品及び指定役務とするものである(甲1)。
本件商標は、構成する「3D」「OS」「DRAM」が第9類及び第42類に関する需要者・取引者に普通に用いられている欧文字からなる用語であることから、その文字構成より「スリーディーオーエスディーラム」の称呼が自然に生じると考えられる。また、本件商標を構成する用語の中で「3D」は「立体的であること。三次元。」を意味し、「OS」は、「Oxide Semiconductor」の略であって「酸化物半導体」の意味を有する用語であって上記需要者・取引者にとっては周知な用語であり、「DRAM」は、「ランダムアクセスが可能な読出しと書込みができる記憶装置」の意味を有する用語である。これより、本件商標からは、「3次元の構成からなる酸化物半導体を用いたランダムアクセスメモリ」のような特定の観念が生じ、これに接する需要者・取引者は、メモリの構成を表示する用語と認識することになると考えられる。
(2)「3D OS DRAM」の自他商品・役務識別力について
ア 「3D OS DRAM」の辞書的意味合いについて
本件商標を構成する「3D OS DRAM」の用語は、その構成から「3D」と「OS」と「DRAM」に分離されて認識されることになると考えられる。
このうち、「3D」は「立体的であること。3次元。」の意味を有するよう語として認識され極めて親しまれた用語である。また、「OS」は、「コンピュータで、利用者とハードウェアの間にあって、利用者がコンピューターシステムをできるだけ容易に使うことができるようにするための基本的なソフトウェア」の意味を有する「オペレーティングシステム」の略語として認識されることがあるが、本件商標の指定商品や指定役務を取り扱う需要者・取引者は、「Oxide Semiconductor」の略として認識した上で、「酸化物半導体」の意味合いを看取することになると考えられる。これは、例えば、メモリの基礎となる「半導体」の構造を表す用語として、トランジスタの一種である「MOS−FET」で用いられる「MOS」(Metal−0xide−Semiconductor)が「金属酸化物半導体」を表すことからも明らかと考えられる。また、本件商標の権利者も「OS」は「酸化物半導体」であることを、自らのホームページにて紹介している(甲2)。これらのことを総合的に考察すると、本件商標の需要者・取引者は、「OS」の用語をオペレーティングシステムではなく、「酸化物半導体」として認識することになると考えられる。すなわち「3D OS DRAM」は、中間の「OS」をオペレーションシステムと理解することにより単語の相関性が極めて雑駁となるが、「OS」を「酸化物半導体」と理解することにより、各文字が結合してより明確な内容を表示する用語と評価される。
さらに、「DRAM」は、「ランダムアクセスが可能な読出しと書込みができる記憶装置」(広辞苑第7版)の意味を有する「RAM(Random ACCESS MEMORY)」の一種であり、「Dynamic−RAM」とも呼ばれ、ルミナス英和辞典などの辞書にも掲載される極めて親しまれた用語である。この用語は、本件商標の指定商品・指定役務を直接的かつ具体的に表示する用語であり、自他商品・役務識別力を有しない用語と評価されるものと考えられる。
これら各用語は、すべて本件商標の指定商品及び指定役務の需要者・取引者において普通に用いられる用語であり、何れも、本件商標の指定商品及び指定役務との関係では、自他商品・役務識別標識としての機能を果たし得ない用語である。これらの各用語が結合した本件商標からは、「3次元の構成からなる酸化物半導体を用いたランダムアクセスメモリ」のような特定の観念が生じることになると考えられ、これに接する需要者・取引者は、ある特定のメモリの構成を表示する用語と認識することになると考えられる。
すなわち、本件商標は、指定商品の品質や指定役務の質を表すにすぎない用語と評価されるため、自他商品・役務識別標識としての機能を発揮しない独占不適応な商標であると思料する。
イ 用語「3D」「OS」の商標としての評価
本件商標を構成する用語のうち、「3D」は数値と欧文字の組合せの2字からなり、「OS」は欧文字2文字からなり、このような用語は、商標中に使用されても、これに接する需要者・取引者は、それらを記号・符号と認識することになると考えられる。また、前述のとおり「DRAM」が指定商品・役務との関係で識別力を有しない用語と評価できるため、これらの点からも何れの用語も自他商品・役務識別標識としての機能を発揮し得ない用語と評価できると考えられる。
ちなみに、商標審査基準の商標法第3条第1項第3号の「のみからなる」についての説明には、「商品又は役務の特徴等を表示する2以上の標章からなる商標については、原則として、本号に該当すると判断する」旨が記載されている。すなわち、指定商品や指定役務との関係において自他識別標識としての機能を果たさない用語を組み合わせたにすぎない商標は、商標登録をするにあたり不適当であると評価されるものとすると注釈が加えられている。本件商標を構成する各用語は、上述のとおり、何れも指定商品及び指定役務との関係において識別力を有しない用語であるため、例えこれらを組み合わせたとしても、指定商品及び指定役務との関係において、品質や質(内容)を表示する用語を寄せ集めたにすぎない商標と需要者・取引者に認識されることになると考えられる。また、市場にこの組合せが用語として使用されている実績がなかったとしても、組み合わせる用語そのものに半導体の構造を示す意味合いが包含されるため、組み合わせたり語順を変更したとしても、特異な観念が生じることはなく、特定の語義が新たに発生するというような事情は全く存在しないというのが実情である。
すなわち、本件商標は、指定商品及び指定役務との関係において自他識別力を有しない独占不適応な用語を結合したにすぎない商標と評価すべきである。
ウ 小括
以上より、本件商標は、指定商品及び指定役務との関係において自他識別力を有しない独占不適応な用語を結合したにすぎない商標と評価すべきであるため、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものである。
また、本件商標は、このような指定商品及び指定役務との関係において品質(内容)を表示する用語を寄せ集めた構成からなることから、極めて顕著性が低く、需要者が何人かの業務に係る商品や役務であることを認識することができない商標に該当すると考えられる。すなわち、本件商標は同法第3条第1項第6号に違反して登録されたものである。
(3)商品の品質誤認の可能性について
本件商標には「DRAM」の用語が含まれている。このことから、ダイナミックRAMに係る商品・役務以外の商品・役務に本件商標を使用すると、品質・質を誤認することになると考えられる。
また、「3D」「OS」は、半導体の構造を表す用語と認識される可能性がある事から、このような構造を持たないメモリやこのようなメモリに係るサービスに本件商標を使用すると、同じく品質・質を誤認することになると考えられる。
すなわち、本件商標は、その使用において品質誤認を生じる可能性を包含する登録であり、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。
(4)審決例
取引の実情を踏まえると商標を構成する用語が取引者・需要者の間で広く知られているため、商標全体として識別力を有しないと判断した審決例(不服2011−22476、商標「Smart 3D Plasma」)と同様に、本件も「3D」「OS」「DRAM」は、本件商標の需要者・取引者において周知な用語であって、商標全体として「3次元の構成からなる酸化物半導体を用いたランダムアクセスメモリ」のような特定の観念が生じ、これに接する需要者・取引者は、メモリの構成を表示する用語と認識することになると考えられる。すなわち、本件商標は、自他商品・役務識別標識としての機能を発揮しないと評価可能であり、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものである。
(5)拒絶査定例について
本件商標の権利者は、本件の他に、商標「3D DRAM」(商願2018−162915)及び商標「3D RAM」(商願2018−162917)を商標登録出願している。これらの出願は、何れも商標法第3条第1項各号及び同法第4条第1項第16号により拒絶査定されている。
これらは、何れも「3D」「DRAM」「RAM」の用語の組合せからなり、各用語は何れも自他商品・役務識別機能が極めて低いとともに、指定商品・指定役務によっては品質・質の誤認を生じるものであることから、拒絶査定とされたものと思料する。この判断は、前述の商標審査基準に沿った妥当な判断であると評価されるものである。
本件商標も同様な判断基準で審査を行うと、商標法第3条第1項各号及び同法第4条第1項第16号に該当することとなると考えられる。すなわち、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。
(6)本件商標の権利者の他の出願について
本件商標の権利者は、本件商標と同じ区分において、以下のように、近似するような商標登録出願を行って登録査定を受けている。
・「OS DRAM」(登録第6371588号)
・「OS Flash」(登録第6321255号)
・「OS 3D NAND」(登録第6323700号)
これら以外にも、本件商標の権利者は、これに類するような多数の商標登録出願を行っている。拒絶査定となったものも存在しているが、このような、自他商品・役務識別機能が極めて低い用語を組み合わせた標章が万一登録されることとなると、普通に使用することが可能な商標であっても、需要者・取引者は使用することを躊躇することとなり、登録査定とすることが妥当な判断とは考えられない。
また、権利者が多数出願している上記のような商標は、その多くについて、商標としての使用の形跡が見受けられない。本件商標についても、インターネットで検索しても検索結果は全く存在せず、使用の形跡がない。このように使用する意思がない可能性が極めて高いと考えられる普通名称の組合せからなる商標を多数出願することは、それらが登録されることとなった場合に、他の需要者・取引者の商標選択の余地を狭めるとともに、国民一般の利益を不当に害する結果に直結する蓋然性が極めて高いものと思料する。
すなわち、本件商標は、商標法第3条第1項柱書にも反する可能性が極めて高いため、独占不適応で拒絶されるべき商標登録出願と考えられる。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同項第6号について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報)によれば、「3D」の文字が「立体的であること。3次元。」の意味を有すること(職権調査 出典「広辞苑第七版」)、「OS」の文字が、商標権者のウェブページに「・・・次世代の半導体材料として酸化物半導体(Oxide Semiconductor)に着目し・・・」と記載されていること(甲2)、「オペレーティングシステム」の略語として用いられていること(職権調査 出典「日経パソコン用語事典2009年版」日経BP社発行)及び「DRAM」の文字が半導体記録素子の一種であること(職権調査 同出典)が認められる。
しかしながら、「OS」が「酸化物半導体」の意味を有することの証左、及び「3D OS DRAM」の意味を示す証左は見いだせない。
イ 本件商標は、上記1のとおり「3D OS DRAM」の欧文字からなり、その構成文字は同書同大でまとまりよく一体的に表され、これから生じる「スリーディオーエスディーラム」の称呼は無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、その構成中「3D」、「OS」及び「DRAM」の文字が上記アのとおりの意味を有するものの、本件商標の上記構成及び称呼からすれば、看者をして、「3D」、「OS」及び「DRAM」の文字それぞれの意味や申立人のいう「ある特定のメモリの構成を表示する用語」と認識させることなく、むしろ「3D OS DRAM」の構成文字全体が一体不可分のものであって、特定の意味合いを想起させることないものとして認識させるものと判断するのが相当である。
さらに、「3D OS DRAM」の文字が、本件商標の指定商品及び指定役務の品質及び質などを表示するものとして使用されている実情は発見できず、また、同指定商品及び指定役務の品質及び質などを表示するものと認識されるというべき事情並びに同指定商品及び指定役務について自他商品役務識別標識としての機能を果たし得ないというべき事情も発見できなかった。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品及び指定役務に使用しても、商品及び役務の品質及び質などを表示するものでなく、自他商品役務識別標識としての機能を果たし得るものといわなければならない。
なお、申立人は過去の審決例、審査例を挙げているが、それらは本件と事案を異にするものであるから、上述の判断に影響を及ぼすものではない。
したがって、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同項第6号に該当するものといえない。
(2)商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、上記(1)のとおり、その指定商品及び指定役務の品質及び質を表示するものではないから、これをその指定商品及び指定役務に使用しても商品及び役務の品質及び質の誤認を生ずるおそれのないものというのが合理的である。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当するものといえない。
(3)商標法第3条第1項柱書について
商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標又は将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される。
そして、本件商標の登録査定時に、本件商標権者が本件商標をその指定商品及び指定役務について、現に使用をしているか又は使用する意思があるかについて、格別に合理的疑義があったものとは認められず、他にこれを認めるに足りる事情は見いだせない。
したがって、本件商標は商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書、同項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-03-30 
出願番号 2019101980 
審決分類 T 1 651・ 13- Y (W0942)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 馬場 秀敏
岩崎 安子
登録日 2021-04-01 
登録番号 6371589 
権利者 株式会社半導体エネルギー研究所
商標の称呼 スリーデイオオエスドラム、サンデイオオエスドラム、スリーディーオオエスドラム、オオエスドラム、ドラム 
代理人 広瀬 文彦 
代理人 末岡 秀文 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ