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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W08
管理番号 1383405 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-01-26 
確定日 2022-04-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第6317667号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6317667号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6317667号商標(以下「本件商標」という。)は、「Jeeper」の文字を標準文字で表してなり、令和2年1月27日に登録出願、第8類「チャコ削り器,パレットナイフ,手斧,ピザカッター(電気式のものを除く。),ピンセット,フォーク,ペディキュアセット,マニキュアセット,刃研磨用具,レーキ(手持工具に当たるものに限る。),革砥,缶切,大がま用砥石,靴製造用靴型(手持工具に当たるものに限る。),護身棒,鋼砥,手動工具,手動利器,鋤,砥石ホルダー,組ひも機(手持工具に当たるものに限る。),電気かみそり及び電気バリカン,電気アイロン,砥石,エメリーボード,ナイフ用鋼砥,かつお節削り器,回転砥石(手持工具),くわ,金剛砂製グラインダー,研磨用具(手持工具に当たるものに限る。),研磨用鉄砥,ひげそり用具入れ,まつ毛カール器,エッグスライサー(電気式のものを除く。),スプーン,手動式スキーエッジ用研ぎ具,チーズスライサー(電気式のものを除く。)」を指定商品として、同年11月9日に登録査定され、同月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は、次の(1)ないし(6)のとおりであり(以下、これらをまとめて「11号引用商標」という。)、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第2362279号(以下「引用商標1」という。)は、「JEEP」の欧文字を横書きしてなり、昭和63年2月27日に登録出願、第1類「化学品,薬剤,医療補助品」を指定商品として、平成3年12月25日に設定登録、その後、同15年2月5日に、指定商品を第1類ないし第5類、第8類ないし第10類、第16類、第19類、第21類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする書換登録がされ、さらに、同24年3月21日に、指定商品については、第10類「おしゃぶり,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック」を含む第1類、第4類、第9類及び第10類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする区分を減縮する商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(2)登録第1286579号(以下「引用商標2」という。)は、「Jeep」の欧文字を横書きしてなり、昭和48年11月12日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同52年7月25日に設定登録、その後、平成20年11月5日に、指定商品を第7類「繊維機械器具,農業用機械器具,靴製造機械」、第8類「組みひも機(手持ち工具に当たるものに限る。),くわ,鋤,レーキ(手持ち工具に当たるものに限る。),靴製造用靴型(手持ち工具に当たるものに限る。)」、第11類「飼料乾燥装置」及び第26類「魚網製作用杼,メリヤス機械用編針」を含む第6類ないし第9類、第11類、第12類、第15類ないし第17類、第19類ないし第21類、第26類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする書換登録がされたものである。
(3)登録第2362272号(以下「引用商標3」という。)は、「JEEP」の欧文字を横書きしてなり、昭和62年3月27日に登録出願、第11類「電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具,電気材料」を指定商品として、平成3年12月25日に設定登録、その後、同16年6月2日に、指定商品を第7類ないし第12類、第16類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする書換登録がされ、さらに、同24年3月21日に、指定商品については、第7類「家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー」、第8類「電気かみそり及び電気バリカン」、第9類「電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー」及び第11類「家庭用電熱用品類」を含む第7類ないし第12類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする区分を減縮する商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(4)登録第2416681号(以下「引用商標4」という。)は、「JEEP」の欧文字を横書きしてなり、昭和63年2月27日に登録出願、第13類「手動利器,手動工具,金具」を指定商品として、平成4年5月29日に設定登録、その後、同15年7月2日に、指定商品を第3類、第6類、第8類、第11類、第14類、第16類ないし第18類、第20類、第21類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする書換登録がなされ、さらに、同24年8月28日に、指定商品については、第8類「手動利器(「刀剣」を除く。),刀剣,手動工具(「すみつぼ類・皮砥・鋼砥・砥石」を除く。),すみつぼ類,皮砥,鋼砥,砥石」を含む第8類、第14類、第18類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする区分を減縮する商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(5)登録第2362281号(以下「引用商標5」という。)は、「JEEP」の欧文字を横書きしてなり、昭和63年2月27日に登録出願、第19類「台所用品,日用品」を指定商品として、平成3年12月25日に設定登録、その後、同15年3月5日に、指定商品を第4類ないし第6類、第8類、第10類、第11類、第14類、第16類、第18類ないし第21類、第24類及び第26類ないし第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする書換登録がされ、さらに、同24年3月21日に、指定商品については、第14類「貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製針箱」、第20類「ストロー,盆(金属製のものを除く。),ししゅう用枠」、第21類「アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),アイロン台,霧吹き,こて台,へら台」及び第24類「織物製テーブルナプキン」を含む第4類、第6類、第11類、第14類、第18類、第20類、第21類、第24類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする区分を減縮する商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(6)登録第2281689号(以下「引用商標6」という。)は、「JEEP」の欧文字を横書きしてなり、昭和62年11月12日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成2年11月30日に設定登録、その後、同15年3月5日に、指定商品を第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,マニキュアセット」、第14類「貴金属製コンパクト」、第18類「携帯用化粧道具入れ」、第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」及び第26類「つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」を含む第6類、第8類、第14類、第18類、第21類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする書換登録がされたものである。
2 申立人が、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に該当するとして引用する商標は、次の(1)及び(2)のとおりである。
(1)登録第2434659号商標(以下「使用商標1」という。)は、「JEEP」の欧文字を横書きしてなり、昭和49年6月7日に登録出願、第12類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年7月31日に設定登録、その後、同18年1月11日に、指定商品を第12類「全輪駆動小型自動車」とする書換登録がされたものである。
(2)登録第2511982号商標(以下「使用商標2」という。)は、「ジープ」の片仮名を横書きしてなり、昭和59年5月29日に登録出願、第12類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成5年3月31日に設定登録、その後、同16年12月15日に、指定商品を第6類、第9類、第12類、第13類及び第20類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がされたものである。
3 申立人が、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するとして引用する商標は、「JEEP」の欧文字を横書きしてなる商標(甲4:以下「使用商標3」という。)であり、申立人が申立人の取り扱いに係る商品「四輪駆動車(全輪駆動小型車)」(以下「申立人商品」という場合がある。)に使用して、需要者の間に広く知られていると主張するものである。
以下、使用商標1ないし使用商標3をまとめていう場合は、「使用商標」といい、11号引用商標と使用商標をまとめていう場合は、「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第77号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)使用商標1及び使用商標2の周知著名性について
ア 歴史
世界大百科事典(甲11)、日本大百科全書(甲12)、ウィキペディアのジープの欄(甲13)及びJEEP STYLE BOOK(2016年夏版)(甲14)には、「Jeep/ジープ」は第2次世界大戦中にアメリカ陸軍が採用した四輪駆動小型自動車につけられた愛称であって、戦後は各国において軍関係でなく、民間でもレジャー用を含めあらゆる分野で広く使用されていることや「ジープ」の名称の由来などが紹介されている。
すなわち、「Jeep」は多目的車を意味するgeneral purpose carの頭文字GPを、漫画映画ポパイに出てくる犬のような動物のJeeeeepという鳴き声にひっかけて出来た等の諸説が挙げられている。
誕生から80年を迎え、伝統的なJEEPブランドとなっている7本縦型スロットグリルのフロントマスクや貝殻のようなエンジンフード、頑丈なバンパー丸型へッドライトを備え、今や、JEEPは、申立人の伝統的な独特のデザインを有する四輪駆動車(全輪駆動小型車)として日本及び世界において広く知られている。
イ 著名商標としての認定等
「JEEP」(大文字4文字)(称呼「ジープ」)は、特許情報プラットフォーム「日本国周知・著名商標」に申立人「エフシーエー ユーエス エルエルシー」の登録商標として掲載されている(甲15)。
また、「JEEP」(大文字4文字)の名称は、昭和47年9月5日付の「商標研究会」発行の「新版日本有名商標録」において、「ジープ・インターナショナル・コーポレーション」の登録商標として掲載されている(甲16)。
なお、商標登録原簿上では、社名は平成27年2月4日付にて、現在、上記の「エフシーエー ユーエス エルエルシー」(通称FCA、フィアットとクライスラーが統合されたもの)に変更されている。
広辞苑(第5版)によれば、「四輪駆動の小型自動車。アメリカで軍用に開発。商標名。」と紹介されており、「商標名」という記載もされている(17)。
ウ 専門雑誌、カタログ等による宣伝広告
「Jeep/ジープ」は、申立人の四輪駆動車として、今まで多くの雑誌、新聞に紹介されている。
(ア)雑誌による紹介
甲第18号証の株式会社グラフィス「ジープスタイルブック2016」(平成27年12月28日発行)は、「JEEP」の愛用者向けの専門誌であり、JEEPの細かい専門的情報が掲載されている。
また、株式会社ライトハウスメディア「オーシャンズ6月号」(平成28年6月1日発行)の128頁ないし133頁(甲19)、株式会社光文社発行「VERY6月号」(平成28年5月7日発行)の36頁及び316頁並びに317頁(甲20)、株式会社マガジンハウス「Tarzan」(平成27年7月9日発行)の60頁ないし62頁(甲21)、株式会社マガジンハウス「Tarzan」(平成27年8月13日発行)の56頁ないし58頁(甲22)、株式会社マガジンハウス「Tarzan」(平成27年9月10日発行)の54頁ないし56頁(甲23)にはそれぞれ「Jeep」の宣伝広告がなされている。
(イ)カタログによる紹介
平成26年以降の自社(申立人)発行の日本向け「カタログ」(抜粋)にも「JEEP」(「Jeep」の表記もあり)について詳しく紹介されている(甲24〜甲32)。
例えば、甲第24号証及び甲第25号証のカタログは、35,000部発行されている(裏表紙に記載)。
(ウ)メディア業界による宣伝・広告
平成27年以降に大手新聞各社の全国版や広告各社により掲載された宣伝(抜粋)(甲33〜甲46)に示されているように、「Jeep」の広告が行われている。
(エ)テレビでのコマーシャルを含むインターネット上の動画情報
インターネット上の動画情報の抜粋写真を甲第47号証として提出する。 なお、これらの動画は、インターネット上で現在も見ることが出来る。
エ 日本における国内ジープ正規ディーラー数
申立人の日本における国内ジープ正規ディーラー数は、2020年3月20日の段階で全80店舗に及ぶ(甲48)。
また、例えば、店舗写真(柏及び石川)に示されているように、店舗正面側には黒塗りの壁に「Jeep」が表示され、インターネットによる各店舗紹介ページの一部にも、「Jeep」及び「ジープ」の文字が表示されている(甲49、甲50)。
オ 近年の宣伝広告の費用
日本における「Jeep/ジープ」の近年の宣伝広告費用は、2012年が6億3千万円、2013年が6億9千万円、2014年が12億9千万円、2015年が9億7千万円、2016年が11億6千万円、2017年が14億2千万円で、これ以降の年次の宣伝広告費も上昇傾向にある。
カ 販売台数
日本国における販売台数は、2011年は3,184台、2012年が5,055台、2013年は5,097台、2014年が8,843台、2015年は7,130台、2016年は9,382台、2017年は9,884台である。特に近年、販売台数が伸びていることが理解される。2020年には、過去最高の13,588台を記録した(甲51)。日本経済新聞のインターネット記事によると、若者の車離れが進み、他メーカーが若年層の開拓に腐心する一方、ジープの顧客は若年層が増えている。その理由として、ジープは高級車というイメージが薄く、SNSに車の写真を投稿しやすいといったことが挙げられている(甲52)。写真を投稿するSNSとして普及しているInstagramでは、「#ジープ」というハッシュタグを付けた写真の投稿が、111,695件にも上っている(2019年12月12日時点)(甲53)。
キ 新規登録台数による他社との比較
日本自動車輸入組合の統計情報(甲54)によれば、例えば2011年から2020年度までの「JEEP」の車名別輸入車新規登録台数の比較は、2011年度(3,721台)60車中12位、2012年度(4,956台)64車中12位、2013年度(5,596台)65車中12位、2014年度(6,802台)64車中9位、2015年度(7,279台)62車中9位、2016年度(9,745台)59車中9位、2017年度(10,446台)59車中9位、2018年度(11,098台)61車中10位、2019年度(14,186台)62車中8位、2020年度(14,255台)62車中9位であり、これらから明らかなように、「Jeep/ジープ」の新規登録台数は、この10年間、常に全体の上位を保っており、特に近年、甲第54号証に示すように、他の著名ブランドの自動車とともにベストテンに入っている。
ク イベント情報
ポートメッセなごや(愛知県名古屋市)にて開催された「第20回名古屋モーターショー」(2017年11月23日から26日開催)に出展した(甲55)。
また、プロサッカーチームのユベントスFCの公式スポンサーでもある(甲56)。
さらに、2015年より、世界最高峰のプロサーフィン・ツアーとパートナーシップをスタートした。これにより、世界中の有名なサーフスポットを舞台に年間10戦以上ものコンテストが組まれるワールドサーフリーグ、通称WSLのワールドチャンピオン争いにおいて「Jeep(R)リーダーズ・ツアー・ランキング」(「(R)」は、丸付き文字である。)のネーミングライツを得ている(甲57)。
このほか、2019年から協賛を始めた「世界の野球グローブ支援プロジェクト」(甲58)、2019年11月に開催された「名古屋モーターショー」(甲59、甲60)、同年12月に開催された「福岡モーターショー」(甲61、甲62)、2020年1月に開催された「札幌モーターショー」(甲63、甲64)などにも参加しており、そしてCSV活動としての植樹活動「Present Tree × Realの森for WRANGLER」(甲65)なども実施している。
ケ 日本及び世界での商標登録の状況
甲第66号証は、日本国における商標登録の情報を示しており、日本で「JEEP」、「Jeep」及び「ジープ」を含む商標は、28件が登録されている。
また、世界各国でもそれぞれ多くの商標登録が行われている(甲67)。
コ ホームページ情報
申立人はインターネットを活用し、認知度を高めている。
会社の組織に関する情報に関する公式サイト(甲68)や、JEEPブランドの自動車製品やサービスを発信する公式サイト(甲69)を開設している。
さらに、JEEP JAPANのインスタグラム(甲70)やFACEBOOK(甲71)なども開設している。
(2)周知著名性についてのまとめ
以上の事実からも、商標「JEEP」、「Jeep」及び「ジープ」は、本件商標の登録出願時前及び登録査定時において、既に米国その他の国はもとより、日本国内においても特別な四輪駆動車(全輪駆動小型車)についての商標として、一般に広く知られ、現在に至るまで周知、著名なものとなっていると確信する。
(3)出所の混同について
ア 本件商標の分離性について
本件商標は計6文字の欧文字からなるところ、本件商標に含まれる「Jeep」の4文字は、「四輪駆動の小型自動車。アメリカで軍用に開発。商標名。」と「広辞苑」にも掲載されているとおり、世界的にも周知・著名な「四輪駆動小型車」の一つである「JEEP」と称呼及び観念が一致する。そして、語尾の2文字「er」は、英語の接尾辞の一つであり、手前に来る文字と結合することにより、「何らかの職業に従事する人」や、「何らかの物事を愛好する人」といった意味を構成するため、本件商標からは、「Jeep」に関連した「職業に従事する人」や、「Jeep」を「愛好する人」といった意味合いが生じる。本件商標は、その構成文字からは「ジーパー」との称呼が生じるが、本件のように一部に周知・著名な商標を含む場合には、その部分が出所表示機能を発揮することは否定できず、取引者及び需要者は本件商標に接するにあたり、常に全体を一連として捉えるのではなく、「Jeep」の部分のみを分離してとらえる可能性があるものと考える。
上述のように、本件商標の一部である「Jeep」の文字は、日本国内において広く認識されている「JEEP」及び「ジープ」を、欧文字「Jeep」にして表したものであり、たとえ語尾に「er」が付されていたとしても、接尾辞の「〜er」自体は取引者や需要者に対して、商品の出所識別標識として強い機能を有するものではなく、むしろ、商品等の出所識別標識として強く支配的な印象を与えているのは、「Jeep」の部分であると考える。
したがって、本件商標は「Jeep」の部分を要部として判断されるべきものである。
イ 出所の混同のおそれについて
本件商標「Jeeper」は、その一部に申立人に係る周知・著名な商標としての「Jeep」を含んでいることから、該部分を要部とし、分離して観察及び称呼されるものである。称呼においては、使用商標1は欧文字「JEEP」より、使用商標2は片仮名「ジープ」より、それぞれ「ジープ」という称呼が生じ、本件商標の要部と同一の称呼を有している。観念においては、「JEEP」からは「四輪駆動小型車」の一つという意味が生じ、社会通念上、「JEEP」の日本語表記「ジープ」からも同様の観念が生じるものである。
したがって、本件商標と使用商標1の「JEEP」及び使用商標2の「ジープ」の部分には、「四輪駆動小型車」という観念が生じる。
以上のことから、本件商標と使用商標1及び使用商標2とは、称呼及び観念を共通とする類似商標である。ここで、本件商標の指定商品が、申立人の周知・著名となっている使用商標1及び使用商標2の指定商品と、たとえ非類似の関係にあるとしても、本件商標がその指定商品に使用された場合、「Jeep」の部分は、使用商標1及び使用商標2の「JEEP」や「ジープ」を想起させるものである。
すなわち、本件商標の使用者は、周知・著名な商標の名声に便乗して、商品の販売等を行うことになり、それは、使用商標1及び使用商標2の出所表示機能を希釈化することに他ならない。
ウ 使用商標1及び使用商標2の独創性及び周知著名性
「JEEP」の名称は、多目的車を意味するgeneral purpose carの頭文字GPを、漫画映画ポパイに出てくる犬のJeeeeePという鳴き声にひっかけて出来たといわれている(甲11、甲12)など諸説あるが、いわゆる造語であることは発祥国の米国でも明らかである。
また、「JEEP」、「Jeep」及び「ジープ」が周知・著名な商標であることについては、上述したとおりである。
エ 具体的な出所の混同について
本件商標「Jeeper」は、「Jeep」に関連した「職業に従事する人」や、「Jeep」を「愛好する人」といった意味合いを生じさるが、当該文字は、申立人に係る商品の取引者や需要者の間で、特に後者の意味合いで普通に用いられている(甲75、甲76)。
したがって、申立人との間で、出所の混同を考慮すべき余地が十分にあるものである。
(4)まとめ
以上のように、本件商標には全輪駆動小型車の一つとして著名な申立人の商標である欧文字「JEEP」(使用商標1) 及び片仮名「ジープ」(使用商標2) と称呼及び観念が共通する「Jeep」の文字を含んでおり、当該部分が分離して看取される可能性は極めて高く、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接する需要者及び取引者は、その商品が申立人又は同人と何らかの関係を有する者若しくは申立人の承諾を受けた者の業務に係る商品であるかのように感受すると考える。
したがって、本件商標の本件指定商品への使用は、その商品の出所について混同を生ずるおそれが高く、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 商標法第4条第1項第19号について
「JEEP」(「Jeep」及び「ジープ」)は我が国において、全輪駆動小型車の一つを表示する商標として需要者の間に広く認識されている。
したがって、本号については、我が国における周知性の証明によっても適用されるものと思料する。
さらに、「JEEP」の本場である米国においても当然、周知著名性は高いものである。
(1)米国での「Jeep」の周知著名性
ア 歴史とブランドとしての定着度について
甲第4号証の使用商標3は、米国におけるJeepの販売開始後に登録されたが、米国及び世界において永年継続して使用されている。2021年には、Jeepが誕生から80周年を迎えたことが紹介された(甲77)。
このように、米国における「Jeep」の歴史は、非常に長い年月にわたるものである(甲11〜甲14)。
イ 販売台数及び代理店数
米国の販売台数は群を抜いている。
例えば、2016年における売上は、92万6千台で、日本の同年の販売台数の約93倍に相当する。日本(約1億2千万人)と米国(約3億1千万人)の人口比からしても、米国における四輪駆動車「Jeep」の浸透度は高いものである。米国においては、四輪駆動車の代名詞的な存在といっても過言ではない。
これに相応して、米国国内における代理店の数は、2017年においては、2,361であり、これは当時の日本における件数の30倍以上に相当する。これら状況によって、米国においてJeepのブランドがその長い歴史(80年)の中で、四輪駆動車の一つを表示する商標として需要者に親しまれている(広く認識されている)ことが理解されるものである。
(2)両商標の類似性
本件商標は、欧文字「Jeeper」を標準文字で表してなる。そして、この商標に接した需要者においては、「Jeep」の部分を要部として分離して認識されるものである。
すなわち、本件商標が、米国において全輪駆動車を表示する商標として著名な商標である「JEEP」(「Jeep」)の表記を含んでいること、さらに分離して認識される形で含んでいることは明らかである。申立人の商標は「Jeep」、「JEEP」及び「ジープ」も周知・著名であるが、両者の関係は社会通念上でも同一のものであると考えられる。
(3)不正の目的について
本件商標は、米国で周知・著名な申立人の商標と類似の商標であり、出所の混同を生ぜしめ、あるいは、申立人の周知・著名な商標についての出所表示機能を希釈化させる可能性があるものである。
さらに、申立人の商標は永年にわたって世界で使用され、そして、申立人の商標は造語である。
この様な状況から、本件商標は不正の目的をもって登録出願されたことが推認されるものである。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
3 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標の類否について
ア 称呼について
本件商標は欧文字の「Jeeper」からなり、全体として「ジーパー」という長音を含め4音の称呼が生じるが、「Jeep」の部分を要部として「ジープ」の称呼が生じ、当該部分に着目して、類否判断をする必要がある。
一方、11号引用商標は、欧文字の「JEEP」又は「Jeep」からなり、「ジープ」の称呼が生じる。
このように、本件商標と11号引用商標は、同一の称呼「ジープ」を含み、実際の取引において、その称呼の共通性から誤認・混同を生ずるおそれがあり、本件商標とは、互いに類似する商標である。
イ 観念について
本件商標「Jeeper」は、「Jeep」と接尾辞の「er」の結合からなるが、「Jeep」の意味は、「四輪駆動の小型自動車。アメリカで軍用に開発。商標名。」と「広辞苑」に記載されている(甲17)。
また、本件商標は分離観察を要し、「Jeep」の部分を要部として検討する必要がある。
そして、「Jeep」からはその周知・著名な「四輪駆動小型車」という観念が生じる。
一方、語尾の2文字「er」は、手前に来る文字と結合することにより、「何らかの職業に従事する人」や、「何らかの物事をする人」といった意味を構成する英語の接尾辞の一つであり、そのため、「Jeep」に関連した「職業に従事する人」や、「Jeep」を「愛好する人」といった意味合いを生じさせるが、「〜er」自体は取引者や需要者に対して、商品の出所識別標識として強い機能を有するものではなく、むしろ、商品等の出所識別標識として強く支配的な印象を与えているのは、「Jeep」の部分であることは否定できない。
したがって、本件商標は「Jeep」の部分を要部として判断されるべきものであり、本件商標と11号引用商標とは、「Jeep」すなわち「四輪駆動小型車」の観念を共通に有するものとして、類似商標である。
ウ 外観について
本件商標と11号引用商標は、全体観察をしたときに、欧文字4文字と6文字の差異を有しているが、本件商標の構成中「Jeep」の部分は、周知著名性の高い単語であり、看者の注意をひくことは自然であると考え、分離観察の必要性がある。
そのため、外観においても、本件商標の「Jeep」の部分と11号引用商標の「JEEP」又は「Jeep」については同一又は類似である。
エ 商標の類似性についてのまとめ
本件商標と11号引用商標とは、全体として親察したときに構成において異なるところはあるものの、時と場所を異にする取引場面においては、要部における称呼及び観念の共通性から商品の出所を混同するおそれがあり、外観については、要部における称呼及び観念の共通性を覆すほどの特徴はない。
したがって、本件商標と11号引用商標とは全体として、相紛れるおそれがあり、類似するものである。
(2)まとめ
以上のとおり、本件商標と11号引用商標は、称呼及び観念を共通にする類似商標であり、本件商標の指定商品は、11号引用商標の指定商品と同一又は類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 商標法第4条第1項第7号について
使用商標1の「JEEP」は、米国のみならず我が国及び他の自動車文化が長期的に存在する地域では周知・著名な商標である。また、使用商標2は、使用商標1の片仮名表記「ジープ」であり、我が国においては「JEEP」の表記と混在して使用されており、自動車について知識を有する取引者や需要者には何れも馴染みの深い商標である。
そして、このような周知著名性のある「JEEP」や「ジープ」の標章が商標の中の他と区別できる一部の存在として、商標的使用態様で使用される場合、仮に、出所の混同が生じない様な使用状況であったとしても、使用者は当該商標(「JEEP」や「ジープ」)の名声に便乗することになるものと考える。この「JEEP」や「ジープ」の商標が有する名声によって、取引者、需要者に対する注意喚起がなされ、さらには顧客吸引力が発揮される。
これは、使用商標1及び使用商標2の所有者である申立人の長年にわたる使用努力の結果、当該商標に化体した価値をその意に沿わない形で無断利用するものに他ならない。
このような周知・著名な商標を一部に含めて使用する行為は、いわゆる使用商標1及び使用商標2の顧客吸引力にただ乗りする商標の使用行為であり、この行為を合法的に行うための本件商標の登録は、公の秩序、善良な風俗に反し、使用商標1及び使用商標2の商標としての価値を希釈化するものと考える。
本件商標は、「JEEP」や「ジープ」から想起される商品を誹謗、中傷するものではなく、むしろ、その商品価値を賞賛する意味を背景に有しているとも考えられる。
しかし、本件商標の「ジープ」に関する表現や本件商標の権利者による本件商標の使用の仕方は、必ずしも使用商標1及び使用商標2の所有者である申立人における有名四輪駆動車のコンセプトと完全に一致するものではない。
したがって、本件商標が使用されることによって、「JEEP」や「ジープ」の商標としての価値は、出所の混同が生じるか否かにかかわらず、着実に希釈化されていくものである。
以上のように、商標としての使用を前提とする本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反するものである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人(エフシーエー ユーエス エルエルシー)は、フィアットとクライスラーが統合された法人である(申立人の主張)。
イ 「Jeep/ジープ」は第2次世界大戦中にアメリカ陸軍が採用した四輪駆動小型自動車につけられた愛称であって、戦後は各国において軍関係でなく、民間でもレジャー用を含めあらゆる分野で広く使用されていることや「ジープ」の名称の由来などが紹介されている(甲11〜甲14)。
また、広辞苑第5版(発行:株式会社岩波書店)に、「ジープ(jeep)の語は、「(general purpose carの頭文字GPの転。一説に、ポパイの漫画の架空の小動物の奇声による)四輪駆動の小型自動車。アメリカで軍用に開発。商標名。」を意味する語であると記載されている(甲17)。
ウ 「Jeep/ジープ」は、申立人の四輪駆動車として、2015年及び2016年に発行された「VERY6月号」(発行:株式会社光文社)及び「Tarzan」(発行:株式会社マガジンハウス)等の雑誌(甲18〜甲23)、2007年、2008年、2014年、2015年及び2019年に発行されたカタログ(甲24〜甲32)、新聞を媒体とした宣伝・広告、インターネット上の動画情報により、紹介されている(甲33〜甲47)。
エ 我が国における国内ジープ正規ディーラー数は、2020年3月20日時点で全80店舗である(甲48)。
オ 我が国における「Jeep/ジープ」の宣伝広告費用は、申立人の主張によれば、2012年が6億3千万円、2015年が9億7千万円、2017年が14億2千万円と上昇している(申立人の主張)。
カ 我が国における申立人商品の販売台数は、2011年には3千台をこえるほどであったが、2017年は約1万台近くまで伸び、2020年には、過去最高の13,588台であった(甲51)。
キ 日本自動車輸入組合による「車名別輸入車新規登録台数(乗用車、貨物、バス合計)」によれば、「Jeep」は、2011年度3,721台であり、シェア1.26%、2015年度7,279台であり、シェア2.23%、2020年度14,255台であり、シェア4.24%である(甲54)。
ク 「Jeep」を付した申立人商品は、2017年及び2019年開催の「名古屋モーターショー」、2019年開催の「福岡モーターショー」及び2020年開催の「札幌モーターショー」等に輸入車として出展された(甲55、甲59〜甲64)。
また、申立人は、イタリアのプロサッカーチームの公式スポンサーであり、さらに、2015年からプロサーフィン・ツアーとパートナーシップを締結した(甲56、甲57)。
ケ 申立人は、申立人のJEEPブランドの自動車製品やサービスを発信する公式ウェブサイト、JEEP JAPANのインスタグラムやFACEBOOKなどを開設している(甲68〜甲71)。
(2)上記(1)の事実によれば、引用商標が使用された申立人商品は、申立人の作成したカタログや公式ウェブサイト等をはじめ、各種メディア等で紹介され、我が国において80店舗の正規ディラーにより、2011年度から継続して申立人商品が販売されていることなどを認めることができる。
しかしながら、「車名別輸入車新規登録台数(乗用車、貨物、バス合計)」からすると、引用商標が使用された申立人商品の我が国における新規登録台数は、輸入車全体の1%から4%程度のシェアにとどまり、自動車業界全体からみるとその市場シェアは決して高いとはいえないし、また、申立人は申立人商品の広告宣伝費や販売台数を主張しているものの、それらの実績等を数量的確認できる客観的な資料は提出されていない。
そうすると、引用商標は、申立人の取り扱いに係る商品「四輪駆動車(全輪駆動小型車)」を表示するものとして、自動車の需要者の間で相当程度知られているといい得るとしても、本件商標の指定商品である手動工具類等の需要者の間で広く認識されているとまでは認めることはできない。
したがって、引用商標は、申立人又は申立人商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知著名性を獲得していたとは認められない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、「Jeeper」の文字を標準文字で表してなり、その構成文字に相応して「ジーパー」の称呼を生じるものである。
そして、「Jeeper」の文字は、辞書等に載録がないものであって、かつ、当該文字が、我が国において、特定の意味合いを有する語として親しまれている等の特段の事情は存在しない。
したがって、本件商標は、「ジーパー」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
なお、申立人は、本件商標は、申立人に係る周知・著名な商標としての「Jeep」と接尾辞の「〜er」を結合してなるものであり、接尾辞の「〜er」自体は取引者や需要者に対して、商品の出所識別標識として強い機能を有するものではなく、むしろ、商品等の出所識別標識として強く支配的な印象を与えているのは、「Jeep」の部分である旨主張する。
しかしながら、本件商標は、同じ書体、同じ大きさで構成上まとまりよく一体的に表されていることからすると、本件商標は、「Jeep」と「er」の文字とを分離して捉える特別な事情はなく、本件商標が、その構成中の「Jeep」の文字のみを抽出し、「ジープ」の称呼等が生じるものと判断することはできない。
(2)11号引用商標について
上記第2の1のとおり、引用商標1、引用商標3ないし引用商標6は、「JEEP」の欧文字を横書きにしてなり、引用商標2は、「Jeep」の欧文字を横書きにしてなるものであるから、これらの構成文字に相応して「ジープ」の称呼を生じ、「四輪駆動の小型自動車のブランド名」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と11号引用商標との比較
ア 外観について
本件商標は、上記第1のとおりの構成よりなり、11号引用商標は、上記第2の1のとおりの構成よりなるところ、本件商標と11号引用商標とは、「er」の文字の有無という、明らかに相違する点が存在することから、外観上、相紛れるおそれはないものである。
イ 称呼について
本件商標から生じる「ジーパー」の称呼と11号引用商標から生じる「ジープ」の称呼とは、「ジー」の音が共通しているとしても、本件商標の「パー」の音と11号引用商標の「プ」の音が明らかに相違することから、いずれも短い構成音数からなる両商標において、「パー」と「プ」の音の相違が、これらの称呼全体に与える影響は決して小さいとはいえず、これらを一連に称呼した場合は、その語調語感が相違し、称呼上、互いに紛れるおそれはないものである。
ウ 観念について
本件商標は、特定の観念が生じないのに対し、11号引用商標は、「四輪駆動の小型自動車のブランド名」の観念を生じるから、観念上、紛れるおそれがないものである。
エ 小括
以上から、本件商標と11号引用商標とは、その外観、称呼及び観念において、いずれも相違し、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであって、別異の商標というべきである。
その他、本件商標と11号引用商標とが類似するというべき特段の事情は見いだせない。
(4)まとめ
したがって、本件商標と11号引用商標とは、非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、たとえ、本件商標の指定商品と11号引用商標の指定商品が同一又は類似する商品であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
上記1のとおり、引用商標は、申立人又は申立人商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知著名性を獲得していたとは認められないものである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
上記2のとおり、本件商標と11号引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、類似性の程度は低いものである。
また、本件商標と「JEEP」の欧文字を横書きにしてなる使用商標1及び「ジープ」の片仮名を横書きにしてなる使用商標2並びに「JEEP」の欧文字を横書きにしてなる使用商標3とは、本件商標と11号引用商標と同様に、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、類似性の程度は低いものである。
(3)本件商標の指定商品と申立人商品の関連性、需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、手動利器や手動工具に該当する商品であり、申立人商品は、「四輪駆動車(全輪駆動小型車)」であるから、これらの製造者や需要者は必ずしも一致するとはいえず、部品と製品との関係にあるともいえないことから、これらは、密接な関連性を有しているとはいえず、需要者の共通性もない。
(4)出所の混同のおそれについて
上記(1)ないし(3)のとおり、引用商標は、申立人又は申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国において、需要者の間に広く認識されているとはいえないものであり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、類似性の程度は低いものであり、本件商標の指定商品と申立人商品とは、密接な関連性を有しているとはいえず、需要者の共通性もない。
そうすると、本件商標は、本件商標の権利者が、これをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないと判断するのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号及び同項第7号該当性について
(1)上記1のとおり、引用商標は、申立人又は申立人商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知著名性を獲得していたとは認められないものであり、上記3(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であり、上記3(4)のとおり、本件商標は、引用商標を連想又は想起させることのないものである。
そうすると、本件商標は、引用商標の知名度や名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
さらに、本件商標が、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
(2)申立人は、本件商標は申立人の周知・著名な引用商標を一部に含めた商標であり、これを使用する行為は、いわゆる引用商標の顧客吸引力にただ乗りする商標の使用行為であり、この行為を合法的に行うための本件商標の登録は、公の秩序、善良な風俗に反するものであり、引用商標は造語であることからすると、本件商標は不正の目的をもって登録出願されたことが推認される旨を主張する。
しかしながら、引用商標は、申立人又は申立人商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されたものとはいえないものであり、また、本件商標は、引用商標と類似しない商標である。
また、申立人は、本件商標が不正の目的をもって登録出願された旨を主張するのみであり、これを証明するための証拠は提出していない。
したがって、申立人の上記主張は採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-03-30 
出願番号 2020008907 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W08)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 小俣 克巳
豊田 純一
登録日 2020-11-17 
登録番号 6317667 
権利者 福井 太一
商標の称呼 ジーパー 
代理人 江藤 聡明 

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