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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W30
管理番号 1383301 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-01 
確定日 2022-03-10 
事件の表示 商願2019−102486拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は,「糀ジェラート」の文字を標準文字で表してなり,第30類,第35類及び第43類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,令和元年7月29日に登録出願されたものである。
本願は,令和2年8月19日付けで拒絶理由の通知がされ,同年10月5日付けで意見書が提出されたが,同年11月20日付けで拒絶査定がされ,これに対して同3年3月1日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり,指定商品及び指定役務については,審判請求と同時に提出された手続補正書により,第30類「シャーベット,アイスクリーム」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,要旨以下のとおり,認定,判断し,本願を拒絶したものである。
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
本願商標は,「糀ジェラート」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中の「ジェラート」は「イタリア風のアイスクリーム・シャーベット」を意味する語として親しまれており,糀を用いたジェラートが「糀ジェラート」や「塩こうじジェラート」のように称されて販売・提供されている実情があるから,本願商標は「糀を用いたイタリア風のアイスクリーム・シャーベット」ほどの意味合いを容易に理解させる。そうすると,本願商標をその指定商品又は指定役務(ただし,第35類の役務を除く。)に使用しても,これに接する需要者は,その商品が「糀を用いたイタリア風のアイスクリーム・シャーベット」であること,又は,その役務が「糀を用いたイタリア風のアイスクリーム・シャーベット」に関するものであることを認識するにとどまるから,本願商標は,単に商品の品質,役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示したにすぎない。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,上記の商品・役務以外の商品・役務に使用するときは,商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから,商標法第4条第1項第16号に該当する。
2 商標法第3条第1項第6号について
本願商標は,「糀ジェラート」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中の「ジェラート」は「イタリア風のアイスクリーム・シャーベット」を意味する語として親しまれており,糀を用いたジェラートが「糀ジェラート」や「塩こうじジェラート」のように称されて販売・提供されている実情があるから,本願商標は「糀を用いたイタリア風のアイスクリーム・シャーベット」ほどの意味合いを容易に理解させる。そうすると,本願商標をその指定役務中,第35類の役務に使用しても,これに接する需要者は,その役務に係る取扱商品が「糀を用いたイタリア風のアイスクリーム・シャーベット」であると認識するにとどまるから,本願商標は,単に小売又は卸売の取扱商品の品質を普通に用いられる方法で表示するにすぎず,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるから,商標法第3条第1項第6号に該当する。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号について
本願の指定商品及び指定役務は,前記第1のとおり補正された結果,原査定における拒絶の理由に係る指定役務は削除されたものと認められる。
したがって,本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定の拒絶の理由は,解消した。
2 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
(1)本願商標について
本願商標は,「糀ジェラート」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中の「糀」の文字は,「米・麦・豆・ふすま・ぬかなどを蒸して,これに麹菌を繁殖させたもの。」を,「ジェラート」の文字は,「イタリア風のアイスクリーム・シャーベット。」を,それぞれ意味する語(広辞苑第七版)であり,いずれも広く一般に知られた語であるといえるから,これらの語を結合した本願商標は,全体として,「糀のジェラート」ほどの意味合いを容易に理解させるものである。
(2)本願商標を構成する文字の使用状況について
補正後の指定商品をはじめとした食品を取り扱う業界において,本願商標を構成する文字の使用状況については,インターネット情報において以下アないしウの実情を確認することができる。
ア 塩糀,米糀,甘糀(甘酒)等を使用した食品について,その原材料である糀に着目し,単に「糀(麹,こうじ)」と称し,商品名に冠したり,商品の説明に用いたりする場合があることは,原審で示した拒絶査定の別掲(6)ないし(16)(別掲)に加え,以下の情報からも確認することができる。
(ア)「T.SWEETS.LABO.」のウェブサイトにおいて,「配送専用 米とこうじのロールケーキ」の見出しの下,「白砂糖不使用。保存料、添加物一切なし。/生クリ−ム(安定剤・乳化剤不使用)全卵 粗糖(種子島産)米粉(新潟県産)米(富山県産)米麹(富山県産)塩(わじま産)」の記載がある(https://www.t-sweetslabo.jp/items/7858061)。
(イ)「haconiwa」のウェブサイトにおいて,「創業300年を超える酒蔵・仁井田本家が手がける、チョコレートのような甘さと口どけの新しい福島土産『こうじチョコ』」の見出しの下,「糀の甘みや素材の美味しさを活かしたものばかりなので、罪悪感がない、いわゆるギルトフリーなスイーツなんです!」,「『こうじチョコ』は、糀のあまざけの水分をとばし、成分を結晶化させたお米のチョコレート。」の記載がある(https://www.haconiwa-mag.com/life/2018/11/kojichoco/)。
(ウ)「Amazon」のウェブサイトにおいて,「銭福屋 いろどり糀まんじゅう詰合せ」の見出しの下,「原材料・成分/【能登牛まん】小麦粉(国内加工)、能登牛(石川県産)、米糀、(略)【栗きんまん】小麦粉(国内加工)、さつまいも(石川県産)、米糀、(略)【辛レーまん】小麦粉(国内加工)、(略)、米糀」の記載がある(https://www.amazon.co.jp/%E9%8A%AD%E7%A6%8F%E5%B1%8B-%E3%81%84%E3%82%8D%E3%81%A9%E3%82%8A%E7%B3%80%E3%81%BE%E3%82%93%E3%81%98%E3%82%85%E3%81%86%E8%A9%B0%E5%90%88%E3%81%9B/dp/B08CRMXHG4)。
(エ)「糀屋」のウェブサイトにおいて,「糀ぷりん」の見出しの下,「糀の力で味わい深く!/伊勢外宮前から、老舗醸造元がお届けする糀ぷりん!/隠し味のたまり醤油と甘こうじが生きた、/深い甘さと優しい糀の香り。」,「一度は食べていただきたい。/糀スウィーツ!/糀香る! 発酵食スウィーツで腸美人」,「開発までの物語(略)こうして砂糖の使用を極限まで控え、甘糀加えたことで、素朴な甘さと懐かしいぷりんが完成しました。」の記載がある(http://www.koujiya-ise.com/shohin/pudding/)。
(オ)「YUKIZURI.com」のウェブサイトにおいて,「糀らんぐどしゃ」の見出しの下,「米の発酵によって生まれた自然な甘みとさらりとしたあと味が特長の糀甘酒を口どけがよいラング・ド・シャにくわえ優しい甘みとコクを表現しました。」の記載がある(https://yukizuri.com/langue/146/)。
(カ)「Jersey Brown」のウェブサイトにおいて,「麹プレミアムヨーグルトスイーツ200g」の見出しの下,「【商品内容】麹プレミアムヨーグルト(略)【原材料名】ジャージー牛乳/ホルスタイン生乳/米麹/蜂蜜/グラニュー糖/生クリーム」の記載がある(https://www.jerseybrown.jp/products/detail/7)。
(キ)「房蔵總本舗」のウェブサイトにおいて,「麹の甘酒ジェラート」の見出しの下,「山梨県養老酒造の酒粕を使用。麹の香りをほどよく感じられる甘酒の珍しいジェラートです。」の記載がある(https://www.fusazo.jp/products/detail/203)。
(ク)「いなほんぽ」のウェブサイトにおいて,「トマト+糀=スイーツトマト!?/夏の朝に毎日飲みたい、元気になれる糀ドリンクです。」の見出しの下,「<古町糀の糀ドリンク> /新潟上古町商店街の『古町糀製造所』さんのノンアルコール甘酒です。」,「<お楽しみ方>/ノンアルコールの糀ドリンク(糀の甘酒)です。」,「<古町糀製造所とは> /2009年から新潟の上古町商店街に出店している日本の伝統食『糀(こうじ)』を使ったドリンク・アイスの専門店です。」の記載がある(https://niigata-rice.com/itemdetail/99992087.php)。
イ 「ジェラート」に関し,使用する主要な原材料名を冠して「〇〇ジェラート」と称する場合がある。
(ア)「ふるなび」のウェブサイトにおいて,「いちごジェラート詰め合わせ(12個入り)」の見出しの下,「福岡県久留米市、自然に恵まれた筑後平野で、(栽培期間中)できるだけ農薬使用と化学肥料使用を減らし、8種類のいちごを栽培。そのいちごで生産者がそれぞれの品種の特性を活かして作った3種類のこだわりのジェラート。」の記載がある(https://furunavi.jp/product_detail.aspx?pid=325054)。
(イ)「Le Soleil」のウェブサイトにおいて,「さしまの ほうじ茶ジェラート」の見出しの下,「『さしまのほうじ茶ジェラート』は、きつね色になるまでじっくり焙じ、香ばしさを引き出したさしま茶を使用。」の記載がある(https://le-soleil.com/shop/products/detail/4)。
(ウ)「domille」のウェブサイトにおいて,「【バニラジェラート】芳醇なバニラの風味が魅力のオーソドックスなジェラート」の見出しの下,「ミルクの甘さとなめらかな食感、バニラビーンズ入りで芳醇さを一度に楽しめるバニラジェラートです。」の記載がある(https://www.domille-gelato.com/items/3562383)。
(エ)「夢農人とよた」のウェブサイトにおいて,「mama’s農園のお米ジェラート」の見出しの下,「もちもち、お米のツブツブの食感が楽しい和風ジェラートです。コシヒカリとミルキークイーンの米粉が入っており、トルコアイスの様に練って食べていただくと絶品です。」の記載がある(http://yume-note.com/farmer/mamas/csv-647.html)。
(オ)「JAタウン」のウェブサイトにおいて,「のとそだちミルクジェラート(ミルク・中島菜・アールスメロン) 12個セット」の見出しの下,「奥能登の6戸の酪農家限定の安心・安全『のとそだち』牛乳を使ったオリジナルミルクジェラート」の記載がある(https://www.ja-town.com/shop/g/g4101-410141012202/)。
(カ)「木村ミルクプラント」のウェブサイトにおいて,「命の雫 ジェラートセット(12個セット)」の見出しの下,「その牛乳で作ったジェラート商品をセットにしました。」,「<内容>/・木村ミルクジェラート 120ml×4個/・木村ミルク苺ジェラート 120ml×2個/・木村ミルク抹茶ジェラート 120ml×2個/・木村ミルク酒粕ジェラート 120ml×2個/・木村ミルクチョコジェラート 120ml×2個」の記載がある(https://kimura-milk.co.jp/?pid=134718329)。
ウ 塩糀,米糀,甘糀(甘酒)等を原材料として使用したジェラートがあり,それらの中には,原審で示した拒絶理由通知書の別掲(1)の事例(別掲)に加え,「糀ジェラート」と称するものもある。
(ア)「Rakuten」のウェブサイトにおいて,「神田酪農/みるぱす ジェラート 選べる6個入」の見出しの下,「【ジェラート一覧】(略)塩糀ミルク」,「3.塩糀ミルク/ミルクの甘さに程よい塩糀の塩加減とコクがプラスされたジェラートです。」の記載がある(https://item.rakuten.co.jp/niigata-shop/0180-001-01/)。
(イ)「かど万米店」のウェブサイトにおいて,「ジェラート」の見出しの下,「味噌、黒豆味噌、塩糀の3種類がオリジナルジェラートになりました。」,「夏でも糀や味噌に親しんで頂きたい!」の記載がある(https://kadoman-kometen.jp/products/jera-to/)。
(ウ)「笑顔でごはん」のウェブサイトにおいて,「禾 米糀の甘酒ジェラート 6個入 【直送送料込】」の見出しの下,「栄養価の高さから飲む点滴と言われる甘酒をふんだんに使ったジェラートの詰合せ/香川県産米を100%使用した甘酒は、香川県さぬき市・松原商店さんの昔ながらの麹室で製造した白米甘酒をふんだんに使用しています。夏の風物詩の米と米糀で作られたノンアルコールの甘酒は、その栄養価の高さから飲む点滴と言われ、江戸時代には夏の食欲が落ちる時の栄養補助食だったそうです。」の記載がある(https://egaodegohan.com/products/detail.php?product_id=656)。
(エ)「カラダニーズ」のウェブサイトにおいて,「菌活ジェラート 2種の甘酒シリーズ(6個セット)」の見出しの下,「冷房のない江戸時代には、暑さを乗り切るために愛飲された甘酒。体に染み渡る二種の甘酒ジェラートです(略)2(※審決注:「2」は丸付き数字)米麹甘酒/出来立ての生麹から作られた濃厚な甘酒をミルクジェラートと合わせました。お米本来から生まれた優しい甘味、麹の香りをお楽しみください。」の記載がある(https://karadaneeds.com/?pid=160307207)。
(オ)「畑名味噌」のウェブサイトにおいて,「商品紹介」の見出しの下,「甘酒ジェラート」「塩糀ジェラート」等が紹介されている(https://hatana.jp/group/sweets/)。
(カ)「@Press」のウェブサイトにおいて,「無添加ジェラート『YASASHIKU』がオンライン限定で発売! 創業220年の醤油メーカーがつくる自然にもカラダにも農家にもやさしいジェラート」の見出しの下,「日本丸天醤油株式会社(略)は、米糀を発酵させることで生まれる自然な甘みを生かし、着色料・乳化剤を一切使用しない、自然・カラダ・農家にもやさしいジェラートを2020年2月14日(金)に公式オンラインショップにて発売しました。」の記載がある(https://www.atpress.ne.jp/news/204877)。
(キ)「レストランこまがね」のウェブサイトにおいて,「日テレ『嵐にしやがれ』で甘糀の濃厚ジェラートが紹介されました!」の見出しの下,「番組では、高速道路別のランキングで様々な名物グルメが紹介されていましたが、/中央自動車道編の『第1位』に駒ヶ岳SA下り線を選んでいただきました!!ありがとうございます!!/甘糀と生クリームのみを使用して作った濃厚なジェラートで、/砂糖を使用しない自然の甘みですが、それを感じさせない濃厚な甘みが美味しさのポイントです」の記載がある(https://www.chuo-alps.com/sa/2016/03/%E5%B5%90%E3%81%AB%E3%81%97%E3%82%84%E3%81%8C%E3%82%8C%E3%81%A7%E7%B4%B9%E4%BB%8B%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F/)。
(ク)「楽天市場」のウェブサイトにおいて,「生乳みるく&/糀ジェラート 6個セット」の見出しの下,「【塩糀みるく】/定番人気商品のミルクジェラートに、山崎糀屋さんの塩糀を合わせた、ご褒美デザート。」,「【糀クリスタル】/やすだ愛情牛乳100%と、山崎糀屋さんの生黄糀で作った生甘酒のみで作られた贅沢なジェラートです。」の記載があると共に,商品写真に写っているパッケージ蓋部分に「糀」の文字がある(https://item.rakuten.co.jp/sawaya/kouji-gelato6/)。
(ケ)「古町糀製造所」のウェブサイトにおいて,「糀ジェラート」の見出しの下,「驚きの、ほとんどお米でできたジェラート。牛乳を除いてほしいというご要望から生まれた、豆乳仕立てです。」,「※店頭で販売している糀アイスもなか のアイスは、牛乳を使用しています。」の記載がある(http://www.furumachi-kouji.com/item_gelato.html)。また,「いなほんぽ」のウェブサイトにおいて,「トマト+糀=スイーツトマト!?/夏の朝に毎日飲みたい、元気になれる糀ドリンクです。」の見出しの下,「<古町糀製造所とは> /2009年から新潟の上古町商店街に出店している日本の伝統食『糀(こうじ)』を使ったドリンク・アイスの専門店です。」の記載がある(https://niigata-rice.com/itemdetail/99992087.php)。
(コ)「熊谷市」のウェブサイトにおいて,「『暑さ対策』暑さと乾杯!熊之糀」の見出しの下,「糀甘酒とは/酒粕から作った甘酒とは違い、アルコール分が含まれていないため、お子さんでも安心して召し上がれます。(略)様々なテイストの糀甘酒をお試しあれ!」,「植竹製菓(略)糀ジェラート各330円 糀ラテ(ノーマル)400円」の記載がある(https://www.city.kumagaya.lg.jp/smph/atsusataisaku/all/taisakupro/kumanokouji.html)。
エ 小括
上記アのとおり,塩糀,米糀,甘糀(甘酒)等を使用した食品について,その原材料である糀に着目し,単に「糀(麹,こうじ)」と称し,商品名に冠したり,商品の説明に用いたり(「糀の甘み」,「糀の力」,「麹の香り」等)する場合がある。また,上記イのとおり,ジェラートについて,使用する主要な原材料名(「いちご」,「ほうじ茶」等)を冠して「〇〇ジェラート」のように称する場合がある。さらに,上記ウのとおり,塩糀,米糀,甘糀(甘酒)等を原材料として使用したジェラートがあり,それらの中には,上記イの「〇〇ジェラート」と同様に,「糀ジェラート」と称するものもある。
以上の実情に照らせば,本願商標「糀ジェラート」は,主要な原材料である「糀」を「ジェラート」に冠して表わしたもの,すなわち「糀を用いたジェラート」であることを理解させるものというべきである。
(3)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
上記(1)のとおり,本願商標は,その構成文字より,全体として「糀のジェラート」ほどの意味合いを容易に理解させるものである。また,上記(2)のとおり,本願商標を構成する文字の使用状況に照らせば,本願商標は,その商品の主要な原材料である「糀」の文字を「ジェラート」の文字に冠し,「糀を用いたジェラート」であることを表したものと理解させるものである。
そうすると,本願商標を,補正後の指定商品について使用をしても,これに接する取引者,需要者は,これを「糀を用いたジェラート」,すなわち商品の品質を表したものと理解するにとどまるというべきである。
したがって,本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し,上記商品以外の「シャーベット,アイスクリーム」に使用をするときは,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるため,同法第4条第1項第16号に該当する。
(4)請求人の主張について
ア 請求人は,「糀」自体には甘みはなく,発酵することで甘みが生じ,そのように発酵してできたものが「甘酒」,「塩糀」,「醤油糀」,「味噌」等の発酵食品であり,糀をそのまま食べることは一般的でない,また,糀カビ菌の繁殖の適温との関係においても糀とジェラートの組み合わせは適当ではないから,糀を用いてジェラートを製造することは一般的ではないため,本願商標中「糀」の語が,需要者等において,商品の特徴等を表示するものと認識されない旨主張する。
しかしながら,塩糀,米糀,甘糀(甘酒)等,糀を一度加工したものを原材料とした商品であっても,その基礎たる原材料の「糀」の文字を商品名や商品の説明に使用することがあることは,上記(2)のとおりである。
また,本願の補正後の指定商品は「シャーベット,アイスクリーム」であって,その需要者は広く一般の消費者であり,必ずしも糀に精通し,糀の加工の専門的知識を持ち合わせた者とは限らないから,需要者が,糀の使用条件や発酵における技術的特性等を考慮して「糀」をジェラートの原材料とは認識しないなどと考えることはできない。
イ 請求人は,過去の審決例や登録例を挙げて本願商標も登録すべき旨主張する。
しかしながら,登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号又は同法第4条第1項第16号に該当するものであるか否かの判断は,当該商標の構成態様や指定商品の取引の実情等に基づいて,個別具体的に判断されるべきものであるところ,本願商標の構成態様や,指定商品における本願商標を構成する文字の使用状況を踏まえた判断は,上記(1)ないし(3)のとおりであって,構成態様の異なる過去の事例によって上記判断が左右されるべきものではない。
ウ したがって,請求人の主張は,いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当するとした原査定の拒絶理由は解消したものの,同項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

別掲(原審で示した事実)
(1)「大丸松坂屋オンラインショッピング」のウェブサイト
商品「糀ジェラート」の紹介として,「室町時代から続く糀屋が作った、身体に優しい砂糖を極力使わず自然な甘みを生かしたジェラートです。ふわっと香る糀の風味と優しい甘さに注目です。」との記載がある。
https://www.daimaru-matsuzakaya.jp/ITEM/19A200963

(略)

(6)「CHIFFON D’OR.」のウェブサイト
「糀専菓 糀アイス6個入」の商品説明として,「濃厚リッチな糀アイス」,「米糀 × アイス」,「シフォンドールでは糀を使ったお菓子ブランド『糀専菓』の第一弾としてバニラアイスを開発しました。」,「糀アイスの糀は米糀を使用しており、米糀と米を合わせて甘酒にします。」,「甘みと糀の味をしっかりと感じていただけます。」との記載がある。
https://chiffondor.com/SHOP/koji-ice06.html

(7)「兵庫県・西播磨ツーリズム・観光ガイド|西播磨遊記」のウェブサイト「そうめん処 霞亭」という飲食店の紹介において,「他にも特産の醤油を使った醤油アイス、糀を使った糀アイス、梅を使った梅アイスをはじめ、梅ジュース、甘酒などもご用意。」との記載がある。
https://www.nishiharima.jp/spot/744

(8)「糀カフェ ビオトポス」のウェブサイト
「DESSERT」の見出しの下,メニュー名として「糀アイス」の記載があり,「全てのアイスに甘酒を使っています。」との記載がある。
http://www.cafe-biotopos.com/2-menus_c_desert.html

(9)「eoグルメ」のウェブサイト
「日本糀協会 コージーカフェ」という飲食店の紹介において,「アットホームな雰囲気の店内で、糀を使った料理がいただけるカフェ。・・・老舗のお味噌屋さんから質のいい糀を仕入れ、様々な料理に加えています。・・・他にも、砂糖を控え、甘酒を加えたアイスクリームや、ケーキなどを使ったパフェ、糀や自家製ブレンドのスパイスを入れた手作りのコーラなど、様々なカフェメニューにも糀を使用。」との記載がある。
https://eonet.jp/gourmet/data/_4101237.html

(10)2019/08/20 北國新聞 朝刊 22ページ
「◎園児に『糀に親しんで』 鹿西高家庭部、歌や踊りで」の見出しの下,「糀(こうじ)や甘酒の研究に取り組む鹿西高家庭部の1、2年生計7人は19日、中能登町たんぽぽ保育園を訪れ、年少、年中の園児18人にペープサート(紙人形劇)やダンスを通して糀を紹介した。糀に親しんでもらう活動として初めて実施し、今後も地元の他園を訪問する。・・・園児は部員が造った糀を使ったアイスクリームを味わい、まろやかな甘みに笑顔を見せた。」の記載がある。

(11)2016/10/19 日本食糧新聞 2ページ
「この人に聞く:新潟編<中>和僑商店・葉葺正幸代表取締役 発酵を世界に発信」の見出しの下,「2009年に古町2番町に開店した『古町糀製造所』は和僑商店が展開していく糀の店の第1店舗。おむすびの素材選から糀を知り、それを事業化。糀甘酒ブームをつくった店だ。抹茶や豆乳、オレンジジュースや黒酢ソーダに糀を加えたドリンク、糀を加えたアイスクリームなどを販売する。」の記載がある。

(12)2013/10/23 毎日新聞 地方版 24ページ
「こだわり・旬の逸品:inとくしまマルシェ/13 畑名みそ /徳島」の見出しの下,「昔ながらの手法によるこだわりの味噌(みそ)を造るのは、1882(明治15)年創業の老舗、畑名味噌糀(こうじ)店(勝浦町)だ。・・・昨年末には香川県の業者と共同で味噌や糀を使った手作りジェラート(アイスクリーム)も開発した。」の記載がある。

(13)2012/02/29 日本経済新聞 地方経済面 長野 3ページ
「健康・手作り志向で脚光、麹、糀屋本藤が拡販、首都圏拡充、アイスも投入。」の見出しの下,「味噌製造の糀屋本藤醸造舗(・・・)は米麹(こうじ)商品の販売を強化する。・・・商品のラインアップも拡充する。米麹の甘みを生かし、砂糖を使わずに仕上げた『こうじアイスクリーム』(120ミリリットル入り、280円)の販売を本格化するほか、『みそアイスクリーム』の新商品を6月メドに発売する。」の記載がある。

(14)「PR TIMES」のウェブサイト
「歌舞伎座OPEN記念『KABUKI糀アイスset』4月2日より販売開始」の見出しの下,「『KABUKI糀アイスset』は、歌舞伎の定式幕の『黒、柿、萌黄』の三色を、『黒ごま、かぼちゃ、抹茶』で表現した糀アイスクリームとケークサレ、ドリンクのセットメニューです。『糀アイス』は、厳選したオーガニック素材を原材料に用い、アルコール不使用の『糀(甘酒)』を甘味に使用した、砂糖不使用の心と体に優しいスイーツです。」との記載がある。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000005312.html

(15)「やまんば庵」のウェブサイト
「天然酵母パン」の見出しの下,「自前麹での甘酒天然酵母パンとスープ、サラダと麹料理は全て自然の体に優しいものばかり。もちろん甘酒や麹アイスなどスイーツもございます。」との記載がある。
http://yamanbaan.com/bread.html

(16)「和歌山県 湯浅町観光(公式ホームページ)」のウェブサイト
「湯浅おもちゃ博物館」の見出しの下,「おすすめなど」の項において,「麹アイス他、自然から生まれたジェラート各種」との記載がある。
http://www.yuasa-kankokyokai.com/yuasa-play-004.html



(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2021-12-22 
結審通知日 2022-01-05 
審決日 2022-01-20 
出願番号 2019102486 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W30)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 板谷 玲子
茂木 祐輔
商標の称呼 コージジェラート、ジェラート 
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 

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