• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W093842
管理番号 1382545 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-03-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-09 
確定日 2022-02-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第6377998号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6377998号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6377998号商標(以下「本件商標」という。)は、「zoomrooms」の欧文字を別掲1のとおりの態様で表してなり、令和2年5月18日に登録出願、第9類、第38類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同3年4月8日に登録査定され、同月15日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第2445969号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 ZOOM
指定商品 第9類及び第15類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成元年7月19日
設定登録日 平成4年8月31日
書換登録日 平成15年8月20日
(2)登録第4144156号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定役務 第42類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成4年9月30日
設定登録日 平成10年5月15日
(3)登録第4363622号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 ZOOM
指定商品 第9類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成元年10月19日
設定登録日 平成12年2月25日
書換登録日 平成22年7月28日
(4)登録第4940899号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 別掲3のとおり
指定商品 第9類及び第15類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成17年8月8日
設定登録日 平成18年3月31日
(5)登録第6255174号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 別掲4のとおり
指定商品 第9類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成29年10月30日
設定登録日 令和2年5月29日

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第7号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として登録異議申立書において甲第1号証を、手続補正書において甲第1号証ないし甲第14号証を提出している(異議決定注:甲第1号証は重複し、異なる証左を提出している。また、甲第4号証は欠号である。なお、以下の号証番号は、手続補正書の号証番号をいうものとする。)
(1)商標法第4条第1項第11号に該当する具体的理由
ア 本件商標について
本件商標は、英単語の「zoom」を太く書した部分とごく細い書体で「rooms」と書した部分を組み合わせてなる商標である。本件商標全体より「ズームルームス」「ズーム」「ルームス」の称呼が生じると考えられる。これら3つの称呼の中で最も自然に生じる称呼は、太字で書された「zoom」より生じる「ズーム」である。
商標の類否は特段の事情がないかぎり、全体観察を原則とするものの、本件商標については、要部観察すべき特段の事情がある。「zoom」と「rooms」が分離把握されるよう外観上に工夫がなされていることがその理由の一つである。一連一体で書して、看者をして一体的に把握されることを意図するならば「zoom」と「rooms」は同書体にて書されているはずである。にもかかわらず、「zoom」と「rooms」の各単語は、文字の書体(太さ)を変えている。これは、本件商標が「zoom」と「rooms」の部分から成り立つことを強調するためであり、太く黒々と顕著に表された「zoom」部分に看者の注意をひきつけるための手段にほかならない。また、本件商標の権利者(以下、「本件権利者」という。)は、「zoom」を自社の事業に使用していることを考慮すれば、本件商標についても需要者にまず「zoom」の部分が認識されるよう、意図的に分離把握させる態様としていることが明らかである。よって、本件商標より最も自然に生じる称呼は「ズーム」である。
なお、本件権利者は、本件商標を構成する「zoom」と「rooms」について、審査における意見書において、本願商標は視覚的に一体的なインパクトをもたらす特徴的な外観を呈している旨述べているが、「zoom」と「rooms」は構成する文字数においても、称呼上の音数においても相違し、外観上、左側の「zoom」と右側の「rooms」は非対称でバランスに欠けるうえ、一連に称呼した場合においても「ズーム(3音)ルームス(4音)」とバランスが悪く、リズムは生じない。
イ 引用商標について
引用商標は、いずれも「ZOOM」の文字からなり、「ズーム」の称呼と「急上昇」の観念を生じる。
ウ 本件商標と引用商標の類似性
本件商標と引用商標は、ともに「ズーム」の称呼、「急上昇」の観念を生じる点において同一であり、「ZOOM」の文字を構成の主要素としている点において共通し、外観において類似する。
エ 本件商標と引用商標の指定商品・役務の対比
本件商標の指定商品中第9類の商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似である。また、本件商標は第42類「電子計算機用プログラムの提供,クラウドコンピューティング,コンピュータソフトウェアの貸与」を含んでいるが、当該役務は、引用商標2ないし5の指定商品の一つである第9類「電子計算機用プログラム」と類似する。
オ 小括
上述のとおり、本件商標は、引用商標とその態様において類似し、かつ、その指定商品又は役務について引用商標の商品と同一又は類似である。ゆえに、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第7号に該当する具体的理由
本件商標は、その出願の経緯に社会的相当性を欠くものであり、その登録を認めることは商標法の予定する秩序に反するものである。
引用商標1及び4の権利者である申立人は、マルチエフェクター、ビデオレコーダー、オーディオレコーダーを中心とする機器の製造・販売業者である。会社設立時より「株式会社ズーム」を名乗り、一貫して、「ZOOM」を自社製品に継続的に使用してきた。創業期こそ、音楽・楽器関連商品を中心に事業展開していたが、ハンディオーディオレコーダーを中心に、家電量販店などをも対象とする一般的なコンシューマーエレクトロニクス市場へ進出し、現在に至る。申立人のハンディビデオレコーダーは、動画投稿サイトやSNS、ウェブカメラとして使用される等、音響機器あるいは楽器という枠をすでに超え、電気通信機器として一般需要者層を顧客に持つに至る。
他方、本件権利者はビデオ会議に関する事業を運営する企業であるが、2019年7月頃から、日本国内において、本件権利者の日本法人である「ZVC Japan株式会社」を通じて本格的に事業を展開している。本件権利者が標章「zoom」を自社の標章として、ビデオ会議事業に関する告知を行い、事業を開始したことで、本件商標に接した日本の需要者らが引用商標権者とその出所について混同した結果、本件権利者の事業に関する問合せを申立人の元によせたり、本件商標は引用商標権者の商標と紛らわしいとの不服・不満・混乱・困惑を示すメッセージがSNS上で発せられる事態が生じている(甲1〜甲11)。
申立人は、自己の事業に差し障りがあるため、本件権利者に対し、日本法人を経由し、商標「zoom」の使用を差し控えるようにと要望した(甲12)。これに対し、本件権利者は、回答の猶予を求める一方で、即刻、本件商標の出願手続に至ったものである(甲12〜甲14)。
本件商標は、紳士的解決を試みようとする申立人の善意を踏みにじり、事前に伝えることも、正式な回答を行うことなく、本件権利者によって出願されたものである。本件権利者は、本件商標が申立人と需要者をして出所混同が生じている実態があることを知りつつ出願手続をしたことは明らかである。
本件出願が第38類の役務に加え、第9類「電子計算機用プログラム」や第42類「電子計算機用プログラムの提供」をも指定商品・役務としていることは、第9類、第42類の商品・役務について、自社の事業が「ダウンロード可能なソフトウェア」及び「電子計算機用プログラムの提供」であり、申立人の商標と類似するとの自覚があったこと、第38類の役務について、申立人の商品との間において事実上、出所混同が生じていることを知ったうえで出願がなされたものであることを示すものである。
本件の出願経緯及び目的に鑑みれば,本件商標の登録出願は,適正な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠く行為というべきであり、さらに、国際信義にも違反していると考えられる。これに商標登録を認めることは、公正な取引秩序の維持の観点及び公益的観点のいずれにおいても不相当であって、商標法の目的(商標法第1条)に反するというべきである。いうまでもないが、申立人の引用商標は本件商標より以前に出願・登録されたものであり、申立人は引用商標を長年にわたり継続使用し顧客吸引力を獲得した。その商品は、楽器店のみならず、家電量販店でも容易に手に取ることができるものであり、一部の人のみならず、音楽に関心がなくとも、インターネットを介した通信を行う一般需要者をも対象とする。ウェブ会議が今ほどもてはやされる以前から、申立人の商品は、通信によるコミュニケーションの手段として需要者等に使用されてきた。
申立人は、本件商標が急速に日本の市場に浸透しつつあることについて認めるものの、先願主義の下で先に登録され、商標法の目的に沿って、地道に使用を継続してきた権利者の権利は尊重されるべきと考える。仮に、本件商標が周知性を獲得したとしても、先行する権利と重複し、当該権利と出所混同が生じる事態を創出しながら築かれた周知性は、登録において参酌されるべきではない。本件商標は、出願時に悪意(申立人と出所混同が生じることを事実として認識しながらなされたものである)をもってなされた出願である故、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、「zoomrooms」の欧文字を別掲1のとおりの態様で表してなり、その構成文字に相応し「ズームルームズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標
引用商標1及び3は、上記2(1)及び(3)のとおり、いずれも「ZOOM」の欧文字からなり、該文字に相応し「ズーム」の称呼、「(画角を連続的に変えることの意である)ズーム」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
引用商標2、4及び5は、別掲2ないし4のとおり「ZOOM」又は「zoom」の欧文字をデザイン化してなり、いずれもそれら構成文字に相応し「ズーム」の称呼、「(画角を連続的に変えることの意である)ズーム」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標の類否を検討すると、外観においては、両者の上記のとおりの外観は、構成態様、構成文字数が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。
次に、本件商標から生じる「ズームルームズ」と引用商標から生じる「ズーム」の称呼を比較すると、両者は後半部に「ルームズ」の音の有無という明らかな差異を有するから、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は「(画角を連続的に変えることの意である)ズーム」の観念を生じるものであるから、相紛れるおそれのないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから、非類似の商標というべきものである。
エ 申立人の主張について
申立人は、本件商標は「zoom」と「rooms」の文字の書体(太さ)を変え、太く黒々と顕著に表された「zoom」部分に看者の注意をひきつけるように表されている、本件権利者は標章「zoom」を自社の事業に使用しているなどとして、本件商標と引用商標は、「ズーム」の称呼及び「急上昇」の観念を同一にし、外観において「ZOOM」の文字を構成の主要素としている点において共通にする類似の商標である旨主張している。
しかしながら、本件商標の構成文字「zoomrooms」は、「zoom」の文字が「rooms」の文字よりやや太く表されているものの、全体が同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で表され、該文字から生じる「ズームルームズ」の称呼は無理なく一連に称呼し得るものであるから、かかる構成及び称呼からすれば、本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、その構成文字全体が一体不可分のものとして認識、把握させるものであって、上記アのとおり「ズームルームズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
また、本件商標は、その構成中「zoom」の文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討すべきとする事情は見いだせず、さらに、他に本件商標と引用商標が類似するというべき事情も見いだせない。
したがって、申立人の係る主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似であるとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第7号について
上記(1)のとおり本件商標は、引用商標と外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであるから、これに接する取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることのないものと判断するのが相当である。
また、申立人が、本件商標が本号に該当するとして提出した証拠(甲1〜甲14)は、いずれも本件商標以外の商標に係るものであるし、他に、本件商標が、その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠く、国際信義に反するなど公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第11号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標2)


別掲3(引用商標4)


別掲4(引用商標5)




(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-02-01 
出願番号 2020061573 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W093842)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 岩崎 安子
馬場 秀敏
登録日 2021-04-15 
登録番号 6377998 
権利者 ズーム ビデオ コミュニケーションズ インコーポレイテッド
商標の称呼 ズームルームズ、ズーム、ルームズ 
代理人 豊崎 玲子 
代理人 和田 信博 
代理人 秋山 朋子 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ