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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W35
管理番号 1381835 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-17 
確定日 2022-01-28 
異議申立件数
事件の表示 登録第6371533号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6371533号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6371533号商標(以下「本件商標」という。)は、「ふふふ」の平仮名を標準文字で表してなり、令和2年1月30日に登録出願、第35類に属する別記のとおりの役務を指定役務として、同3年2月4日に登録査定され、同年4月1日に設定登録されたものである。

2 引用商標等
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
ア 登録第2095385号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成 ふふふあん(縦書き)
指定商品 第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
登録出願日 昭和61年11月12日
設定登録日 昭和63年11月30日
イ 登録第4158268号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成 別掲1のとおり
指定役務 第42類「飲食物の提供」
登録出願日 平成8年2月2日
設定登録日 平成10年6月19日
ウ 登録第5459351号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成 ふふふのふ(標準文字)
指定商品 第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
登録出願日 平成23年6月22日
設定登録日 平成23年12月22日
エ 登録第6129299号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成 うふふふ(標準文字)
指定商品 第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
登録出願日 平成30年6月1日
設定登録日 平成31年3月15日
オ 登録第6130868号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成 別掲2のとおり
指定商品及び指定役務 第30類、第31類、第33類、第35類、第40類及び第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
登録出願日 平成30年2月20日
設定登録日 平成31年3月15日
カ 登録第6355757号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成 別掲2のとおり
指定商品 第32類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
登録出願日 令和2年1月10日
設定登録日 令和3年2月25日
(2)申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するとして引用する商標は、「ふふふあん」の平仮名からなり(以下「使用商標」という。)、株式会社半兵衛麩が「菓子類の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」などについて使用し、当該役務を表示するものとして需要者の間で周知であるとするものである。
(3)申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第14号に該当するとして引用する品種の名称は、「富富富」の漢字からなり(以下「引用品種名称」という。)、「稲種」について、2020年(令和2年)11月25日に種苗法第18条第1項の規定による品種登録を受けたものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第10号及び同項第14号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第21号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、「ふふふ」との標準文字商標である。
イ 引用商標
(ア)引用商標1は、「ふふふあん」との文字列からなる商標であり、「フフフアン」「フフフ」を呼称としている。
(イ)引用商標2は、中央部に毛筆で手書きしたような態様での、大きく横書きでの「ふふふ」との記載と、その1文字目と2文字目の中間くらいの位置に最後部が来るような縦書きかつ軽めのウェイトのゴシック体での「しゃぶ亭」との記載とが組み合わされた商標であり、「シャブテーフフフ」「フフフ」を呼称としている。
(ウ)引用商標3は、「ふふふのふ」からなる標準文字商標である。
(エ)引用商標4は、「うふふふ」との標準文字商標である。
(オ)引用商標5及び6は、中央部にそれぞれ異なる書体で大きく表示された3つの「富」という漢字を縦に並べ、その両脇に各3本の図案化された稲穂を配置し、最下部に小さめに平仮名で「ふふふ」と記載したものであり、「フフフ」及び「トミトミトミ」を呼称とするものである。
ウ 本件商標と引用商標の対比
(ア)本件商標と引用商標1
本件商標は、引用商標1と「フフフ」との称呼において共通している。また、「あん」とは、料理店の屋号等に用いられる屋号「庵」を平仮名表記したものであるから引用商標1の要部は「ふふふ」である。すると、本件商標は、引用商標1と外観においても共通している。引用商標1は造語であって、特段の観念はない。したがって、本件商標と引用商標1は、呼称と外観において共通し、特段の観念を有していないから、類似するものということができる。
本件商標は、引用商標1の指定商品のうちの「菓子及びパン」並びに「穀物の加工品」についての、「小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便宜の提供」(以下「小売等役務」ということがある。)を指定役務とするものである。したがって、本件商標の指定役務は引用商標1の指定商品と類似するものである。
(イ)本件商標と引用商標2
引用商標2は、「ふふふ」の部分が中央に配置され、文字も大きく、また、毛筆で手書きされたかのような字体で表されており、かつ、「ふふふ」というのが飲食店の名称としては特異なものであることから、強い識別力を起こさせるものである。これに対し、「しゃぶ亭」の部分は、文字が小さく、かつ、フォントの軽いゴシック体で表現されており、かつ、「しゃぶ亭」というのは「しゃぶしゃぶを出す料理店」という営業形態を示す言葉であるから、弱い識別力しか起こせないものである。したがって、引用商標2は「ふふふ」の部分が要部であるといわざるを得ない。したがって、引用商標2の要部と本件商標とは外観及び称呼において共通又は類似している。
本件商標の指定役務は種々の飲食料品の小売等役務であり、飲食物の提供という引用商標2の指定役務と類似している。
(ウ)本件商標と引用商標3
引用商標3のうち「のふ」の部分は、「ふふふ」との部分について語調を整えるために接尾語的に用いられているものであって、識別力は弱い。そして、その指定商品と「ふふふ」との語は特段の関係性を有しないから、その識別カは強い。したがって、引用商標3は「ふふふ」の部分が要部である。すると、本件商標と引用商標3の要部とは、外観及び称呼において共通している(観念はない)から、両者は類似しているというべきである。
本件商標は、引用商標3の指定商品のうち、「穀物の加工品」「サンドイッチ」「すし」「ハンバーガー」「ピザ」「べんとう」「ホットドッグ」「ミートパイ」「酒かす」についての小売等役務を指定役務とするものである。また、本件商標は、「中華まんじゅう」についての小売等役務を指定役務とするものであるが、引用商標3の指定商品である「肉まんじゅう」は、「中華まんじゅう」の一種である。したがって、本件商標の指定役務は引用商標3の指定商品と類似するものである。
(エ)本件商標と引用商標4
引用商標4は、「うふふふ」とは笑いを示す擬音語の一つであり、笑いを示す擬音語である「ふふふ」との擬音語の前に軽く「う」という音を付するものである。したがって、本件商標と引用商標4とは観念において共通している。また、「うふふふ」という擬音語のアクセントは「ふふふ」の部分にあるから、外観、称呼とも、その要部は「ふふふ」の部分である。したがって、本件商標と引用商標4とは、外観及び称呼において類似しているから、類似の商標というべきである。
本件商標は、引用商標4の指定商品である「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」についての小売等役務を指定役務とするものである。したがって、本件商標の指定役務は引用商標4の指定商品と類似するものである。
(オ)本件商標と引用商標5及び6
本件商標の権利者は、引用商標5及び6と同一の標章と「ふふふ」との商標とが同一又は類似であるとして、無効審判請求をし(甲8)、さらに商標権侵害差止め請求訴訟を提起している(甲9)。したがって、本件商標と引用商標5及び6とが類似していないと主張することは信義則上許されない(禁反言)。
本件商標は、引用商標5の指定商品のうち「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」「穀物の加工品,すし,弁当,食用酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類」「あわ,きび,ごま,そば(穀物),とうもろこし(穀物),ひえ,麦,籾米,もろこし」「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,みりん,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」についての小売等役務を指定役務とするものである。また、本件商標は、引用商標5の指定役務のうち「酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」「米穀類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務とするものである。
また、本件商標は、引用商標6の指定商品のうち「ビール風味の麦芽発泡酒,黒ビール,合成ビール,スタウトビール,ラガービール,エールビール,ピルスナービール」「その他のビール,ビール風味の清涼飲料,ビール酵母を含有してなる清涼飲料」「その他の清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」についての小売等役務を指定役務とするものである。
したがって、本件商標の指定役務は引用商標5及び6の指定商品及び指定役務と類似するものである。
エ 小括
前記したとおり、本件商標は、当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標である引用商標に類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品及び指定役務に類似する役務について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 株式会社半兵衛麩は、京都市東山区に「ふふふあん 本店」を出店し、さらに、東京都中央区銀座の「GINZA SIX」という大型かつ著名なショッピングモール内に「ふふふあん 銀座店」を出店している(甲10)。「ふふふあん」においては、麩を用いた菓子類が販売されている。また、「ふふふあん 本店」の奥に設けられた喫茶処では、麩まんじゅうなどの菓子とともに、瓶ビールやスパークリングワイン等が提供されている(甲11)。
「ふふふあん」については、平成30年1月11日付朝日新聞、平成29年5月30日付毎日新聞、平成29年3月3日付京都新聞、平成29年6月13日付毎日新聞で報じられた(甲12〜甲15)。また、東海旅客鉄道株式会社の運営に係る「そうだ京都へ行こう」と題するウェブ上の観光ガイド、TBSが平成29年4月30日に放送した情報番組「ふるさとの夢」、情報誌「Hanako」の2019年3月号、株式会社カカクコムが運営する観光ガイド「Icotto」、ネットオウル株式会社が運営するウェブ上の観光ガイド「Playlife」で取り上げられたりしており(甲16〜甲20)、「ふふふあん」は、上記のような飲食物を提供する店舗の需要者の中で周知である。
イ 上記「ふふふあん」のうち「あん」は、料理店の屋号等に用いられる屋号「庵」を平仮名表記したものであるから、その要部は「ふふふ」である。すると、本件商標は、「ふふふあん」の要部と、外観においても称呼においても、共通している。「ふふふあん」は造語であって、特段の観念はない。したがって、本件商標と上記「ふふふあん」とは、呼称と外観において共通し、特段の観念を有していないから、類似するものということができる。
ウ そして、本件商標のうち、菓子、泡盛・合成清酒・焼酎・白酒・清酒・直し・洋酒・果実酒・酎ハイ・中国酒・薬味酒・みりんの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ビール風味の麦芽発泡酒・黒ビール・合成ビール・スタウトビール・ラガービール・エールビール・ピルスナービール・その他のビール・ビール風味の清涼飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供という指定役務は、菓子の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供並びに菓子、ワイン(果実酒)及びビールの提供という上記商標が用いられている役務と同一又は類似である。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第14号について
富山県は、「稲種」について、「富富富」(よみ:フフフ)で令和2年11月25日に、種苗法第18条第1項の規定による品種登録がなされた(登録番号28233号。甲21)。
本件商標は、上記品種の登録名称と称呼において共通しており、本件商標の権利者は前記訴訟にて、「富富富」と「ふふふ」は同一又は類似である旨主張している。したがって、本件商標の権利者は、本件商標が種苗法第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であることを信義則上否定できない。
本件商標のうち、米穀類、米、籾米の小売等役務については、「稲種」という上記登録品種の種苗に類似する役務について使用するものである。
よって、本件商標は、種苗法第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であって、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするものにあたるから、商標法第4条第1項第14号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項について
上記2(1)カの引用商標6は本件商標の登録査定の日後に設定登録されたものであるから、引用商標6との関係における商標法第4条第1項第11号に係る申立人の主張は、同法第8条第1項に係る主張と認め、以下検討する。
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり「ふふふ」の平仮名を標準文字で表してなり、その構成文字に相応し「フフフ」の称呼を生じ、「かすかな笑い声、含み笑いをする声」など特定の態様の「笑い」という観念を生じるものと判断するのが相当である。
そして、本件商標は、第35類に属する別記のとおりの役務を指定役務とするものである。
イ 引用商標
(ア)引用商標1、3及び4は、上記2(1)ア、ウ及びエのとおり、それぞれ「ふふふあん」「ふふふのふ」及び「うふふふ」の平仮名からなり、それらの文字に相応し「フフフアン」「フフフノフ」及び「ウフフフ」の称呼を生じ、いずれも特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(イ)引用商標2は、別掲1のとおりの構成からなり、その構成中の文字「しゃぶ亭」及び「ふふふ」に相応し「シャブテイフフフ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
また、引用商標2は、中央に大きく表された「ふふふ」の文字に相応し「フフフ」の称呼を生じるものといえる。
そして、引用商標2は、上記2(1)イのとおり第42類「飲食物の提供」を指定役務とするものである。
(ウ)引用商標5及び6は、いずれも別掲2のとおりの構成からなるところ、その構成中の「ふふふ」の文字は「富富富」の文字の読みを特定したものと認められるから、「フフフ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項の該当性
(ア)本件商標と引用商標1、3及び4
本件商標と引用商標1、3及び4の類否を検討すると、外観においては、前者の構成文字「ふふふ」と後者の構成文字「ふふふあん」「ふふふのふ」及び「うふふふ」とは、語尾における「あん」「のふ」及び語頭における「う」の文字の有無という差異を有し、この差異が3文字ないし5文字という少ない文字構成からなる両者の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は少なくなく、両者を離隔的に観察しても、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
次に、本件商標から生じる「フフフ」の称呼と引用商標1、3及び4から生じる「フフフアン」「フフフノフ」及び「ウフフフ」の称呼を比較すると、両者は語尾における「アン」「ノフ」の音及び語頭における「ウ」の音の有無という差異を有し、この差異が3音ないし5音という短い音構成からなる両者の称呼全体の語調語感に及ぼす影響は少なくなく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、本件商標が上記アのとおりの「笑い」の観念を生じるのに対し、引用商標1、3及び4は上記イ(ア)のとおり特定の観念を生じないものであるから、相紛れるおそれのないものである。
そうすると、本件商標と引用商標1、3及び4とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
(イ)本件商標と引用商標2
本件商標の指定役務は第35類に属する別記のとおりの役務であり、引用商標2の指定役務は上記2(1)イのとおり第42類「飲食物の提供」である。
そこで、両商標の指定役務の類否を検討すると、両指定役務に係る一般的、恒常的な取引の実情において、両者は、提供の手段、目的又は場所、業種、業務や事業者を規制する法律及び提供する事業者を異にするものである。
そして、両者が類似することについての具体的な主張及び証左の提出はなく、他に両者が類似するというべき事情は見いだせない。
そうすると、本件商標の指定役務と引用商標2の指定役務は、両者に同一又は類似の商標を使用しても、それら役務が同一営業主の提供に係る役務と誤認混同するおそれのない非類似の役務といわざるを得ない。
(ウ)本件商標と引用商標5及び6
本件商標と引用商標5及び6の類否を検討すると、両者の上記のとおりの外観は構成態様が明らかに異なり、両者を離隔的に観察しても、相紛れるおそれのないものである。
次に、称呼においては、本件商標と引用商標5及び6とは、「フフフ」の称呼を共通にするものである。
さらに、観念においては、本件商標が上記アのとおりの「笑い」の観念を生じるのに対し、引用商標5及び6は上記イ(ウ)のとおり特定の観念を生じないものであるから、相紛れるおそれのないものである。
そうすると、本件商標と引用商標5及び6とは、称呼を共通にするものの、外観及び観念において相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
エ 申立人の主張について
申立人は、引用商標1、3及び4の要部は「ふふふ」の文字部分である、本件商標と引用商標2の指定役務は類似する、及び本件商標の権利者は本件商標と引用商標5及び6とが類似していないと主張することは信義則上許されないなどとして、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項に該当する旨主張している。
しかしながら、引用商標1、3及び4の構成文字「ふふふあん」「ふふふのふ」及び「うふふふ」は、いずれも同書同大等間隔で一体的に表され、それらから生じる「フフフアン」「フフフノフ」及び「ウフフフ」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものであるから、かかる構成及び称呼からすれば、引用商標1、3及び4は、これらに接する取引者、需要者をして、いずれもそれらの構成文字が一体不可分のものとして認識、把握させるものと判断するのが相当である。
さらに、引用商標1、3及び4は、いずれもそれらの構成中「ふふふ」の文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討すべきとする事情は見いだせない。
そして、本件商標と引用商標2の指定役務が類似することについての具体的な主張及び証左の提出はなく、また、本件商標と引用商標5及び6が類似することについて具体的な主張もない。
したがって、申立人のかかる主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1及び3ないし6は非類似の商標であるから、両商標の指定役務及び指定商品の類否に拘わらず、本件商標は、引用商標1及び3ないし5との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえず、また、引用商標6との関係において、同法第8条第1項に違反して登録されたものといえない。
さらに、本件商標と引用商標2の指定役務は非類似の役務であるから、両商標の類否に拘わらず、本件商標は引用商標2との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
したがって、本件商標は、引用商標のいずれとの関係においても、商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項に違反して登録されたものといえない。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 使用商標「ふふふあん」の周知性
申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、株式会社半兵衛麩(京都市東山区在)は、2014年に「ふふふあん 嵐山店」及び「ふふふあん 本店」を、2017年4月に東京・銀座に「ふふふあん 銀座店」を出店したこと(甲10〜甲20)及びそれら店舗において、菓子の販売のほか、スイーツや飲み物など飲食物の提供を行っていること(甲10、甲11、甲18、ほか)が認められる。
しかしながら、それら店舗における売上高、来店者数など営業実績を示す主張はなく、それを示す証左は見いだせないから、「ふふふあん」の文字からなる使用商標は、上記店舗の名称と認め得るとしても、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、株式会社半兵衛麩の業務に係る役務(菓子の小売、飲食物の提供)及び商品(菓子)を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
イ 本件商標と使用商標の類否
本件商標は、上記(1)アのとおり「ふふふ」の平仮名からなり、「フフフ」の称呼を生じ、「かすかな笑い声、含み笑いをする声」など特定の態様の「笑い」という観念を生じるものである。
一方、使用商標は、「ふふふあん」の文字からなるものであるから、上記(1)イ(ア)の引用商標1と同様に、「フフフアン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものというのが相当である。
そこで、本件商標と使用商標の類否を検討すると、両商標は上記(1)ウ(ア)の本件商標と引用商標1の類否と同様に、相紛れるおそれのない非類似の商標というのが合理的である。
ウ 小括
上記アのとおり使用商標は、株式会社半兵衛麩の業務に係る役務及び商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記イのとおり本件商標は、使用商標と非類似の商標である。
そうすると、本件商標は、その指定役務と使用商標が使用されている役務及び商品との類否に拘わらず、商標法第4条第1項第10号に該当するものといえない。
(3)商標法第4条第1項第14号について
ア 本件商標
本件商標は、上記(1)アのとおり「ふふふ」の平仮名からなり、「フフフ」の称呼を生じ、「かすかな笑い声、含み笑いをする声」など特定の態様の「笑い」という観念を生じるものである。
イ 引用品種名称
引用品種名称は、上記2(3)のとおり「富富富」の漢字からなるものであって、その読みを「フフフ」としていること(甲21)から、「フフフ」の称呼を生じるものというべきである。
そして、引用品種名称は「富」の文字を三つ並べたものであり、「富」の文字は「物が満ちたりすること、豊かにすること、とむこと、とみ」などを意味する平易な漢字であるから、引用品種名称は「三つのとみ(富)」などの意味合いを想起させるものといえる。
ウ 本件商標と引用品種名称の類否
本件商標と引用品種名称の類否を検討すると、本件商標の構成文字「ふふふ」と引用品種名称の構成文字「富富富」とは、外観において著しく異なるものである。
次に、称呼においては、両者は「フフフ」の称呼を共通にするものである。
さらに、観念においては、本件商標が上記アのとおりの「笑い」の観念を生じるのに対し、引用品種名称は「三つのとみ(富)」などの意味合いを想起させるものであるから、相紛れるおそれのないものである。
そうすると、本件商標と引用品種名称とは、称呼を共通にするものの、外観及び観念において相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、相紛れるおそれのない非類似のものというべきものである。
その他、本件商標と引用品種名称が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 小括
上記のとおり本件商標と引用品種名称は非類似のものであるから、本件商標は、その指定役務と品種登録を受けた品種の種苗(稲種)との類否に拘わらず、商標法第4条第1項第14号に該当するものといえない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第14号及び同法第8条第1項のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

別記(本件商標の指定役務)
第35類「泡盛・合成清酒・焼酎・白酒・清酒・直し・洋酒・果実酒・酎ハイ・中国酒・薬味酒・みりんの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ビール風味の麦芽発泡酒・黒ビール・合成ビール・スタウトビール・ラガービール・エールビール・ピルスナービール・その他のビール・ビール風味の清涼飲料・ビール酵母を含有してなる清涼飲料・その他の清涼飲料・果実飲料・飲食用野菜ジュース・ビール製造用ホップエキス・乳清飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,菓子・パン・サンドイッチ・中華まんじゅう・ハンバーガー・ピザ・ホットドック・ミートパイ・穀物の加工品・食用酒かす・すし・弁当の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,米穀類の小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,豆・米・脱穀済みのえん麦・脱穀済みの大麦・あわ・きび・ごま・そば(穀物)・とうもろこし(穀物)・ひえ・麦・籾米・もろこし・食用粉類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」

別掲1(引用商標2)


別掲2(引用商標5及び6)

(色彩は原本参照。)


(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-01-20 
出願番号 2020015736 
審決分類 T 1 651・ 21- Y (W35)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 板谷 玲子
森山 啓
登録日 2021-04-01 
登録番号 6371533 
権利者 韮澤 拓
商標の称呼 フフフ 

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