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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W08 |
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管理番号 | 1381834 |
総通号数 | 2 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2022-02-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-06-01 |
確定日 | 2022-01-20 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6366034号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6366034号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6366034号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和2年3月5日に登録出願、第8類「へら(手持工具)の表面に貼付けて用いるへら専用織物製保護パット,へら(手持工具)の表面に貼付けて用いるパット,スクレイパー(手持工具)の表面に貼付けて用いるパット」を指定商品として、同3年3月8日に登録査定、同月19日に設定登録されたものである。 その後、令和3年11月12日(受付日)に放棄による本商標権の登録の抹消がされたものである。 第2 申立人商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第10号に該当するとして本件登録異議申立てに引用する商標は、別掲2のとおりの構成からなる商標(以下「申立人商標」という。)であり、本件商標の指定商品とその用途を同じくする商品(以下「申立人商品」という。)に使用し、需要者の間に広く知られていると主張するものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同項第10号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 申立人商品及び申立人商標について 申立人は、平成10年11月に設立された特例有限会社であって、同16年12月頃から、「ピタッとくん」の名称で、申立人商標を使用した申立人商品を販売している。 申立人商標については、「ピタッとくん」の表示がされるもので、「ピタッ」までが片仮名、「とくん」が平仮名で「くん」の表記の大きさが「ピタッと」の表記と比べやや小さいフォントで横書き表記してなるとともに、「ピ」の上部に斜線が3本記載されてなるものである(甲1)から、申立人商標と本件商標は、実質的に完全に同一である。 申立人商品の商標デザインの作成日付は、平成14年2月22日であって(甲2)、申立人は、同16年12月頃から現在に至るまで、申立人商標を使用した申立人商品を全国に販売している(甲3〜甲5)。 現時点で、申立人商品は全部で38種類存在している(甲6)。 申立人商品は、申立人が卸業者や小売業者に販売し、さらに転売や小売されることによって取引され、申立人商品の販売先は、個人、法人を問わず全国に多数存在し(甲7)、インターネットを通じて全国に及んでいる(甲8)。 申立人商品の販売開始時から現在までの総売上高は、申立人の会計記録によれば、2億6,210万4,413円である(甲5)。 申立人商品の最大の特徴は、申立人商品を使用すると壁紙やフィルムにキズがつかず、壁や窓に貼ったフィルムの耐久年数が維持できることと、さらに、キズがつくことを心配することなく力を加えてスピーディに作業をすることができるため、作業効率が上がることにある。このような特徴を備えている競合商品はほぼ存在せず、申立人商品の市場でのシェアは少なくとも90%を占めている。 なお、申立人は、平成16年2月27日に、申立人商標を申立人商品に指定して登録を受けた商標(以下「旧申立人商標」という。)が存在していたが、更新手続きを失念したため、商標権が権利満了となっている(甲9)。 2 本件商標権者と申立人の関係について (1)取引関係について 本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、申立人の取引関係先の100%親会社である(甲11)。 本件商標権者の子会社であるリンテックサインシステム株式会社(以下「リンテックサインシステム社」という。)は、平成17年1月から現在に至るまで申立人商品を株式会社村田塗料店(以下「村田塗料店」という。)から仕入れて、転売している。リンテックサインシステム社が、申立人商品を村田塗料店から仕入れる際の取引の基本的な流れは、リンテックサインシステム社が村田塗料店にFAXを送信し注文内容を伝え、村田塗料店が申立人にFAXを転送し(甲12)、申立人がリンテックサインシステム社に対して、注文商品の発送日、納品予定日時、納品予定場所をFAXで通知し(甲13)、その通知内容どおりに申立人商品を所定の納品場所に発送するというものであり、確認できるもっとも古い取引である平成23年2月17日の取引(甲12の1、甲13の1)からこの流れは変わっていない。 上記取引の流れからも分かるとおり、リンテックサインシステム社や本件商標権者は、申立人商品の製造者が申立人であるということを認識し、申立人が申立人商標を申立人商品に使用していることを知っていたことは明らかである。 (2)リンテックサインシステム社に対する申立人商品の販売実績について 申立人による申立人商品の販売先は、リンテックサインシステム社のみに限られていない(甲14)。申立人商品の売上全体における対リンテックサインシステム社への売上の占める割合は直近3年だと20%以下と少ない。リンテックサインシステム社以外への売上高の方が圧倒的に多く(甲14)、リンテックサインシステム社以外を経由して、日本全国に販売されている。 なお、令和3年2月以降、リンテックサインシステム社は、村田塗料店を通じて申立人商品を購入していない。 (3)需要者の申立人商品に対する認識について 申立人は、リンテックサインシステム社が村田塗料店を通じて購入する申立人商品について、従前からリンテックサインシステム社に求められ、申立人商品を梱包する透明のフィルムの中に、通常であれば製造元が申立人であることを示す紙(以下「製造元表示紙」という。)を入れている(甲15)のを、リンテックサインシステム社が村田塗料店を通じて購入する申立人商品については、製造元表示紙を入れない代わりに、リンテックサインシステム社の事業所と連絡先を印字した紙を入れて販売している(甲16)。 しかし、このことから、申立人商標と、全く同一の商標を登録する権利が、リンテックサインシステム社や本件商標権者に生じるものではない。 3 商標法第4条第1項第7号該当性 本件商標権者は、リンテックサインシステム社の100%親会社であり、リンテックサインシステム社と実質的に同一体である。リンテックサインシステム社は、平成17年頃から令和3年2月に至るまでの15年以上もの長期間にわたり、申立人商品を購入・転売しているものであり、その関係性は深く、旧申立人商標の商標権の更新が未了になっている事実について認識していたことも考えられる。 本件商標は、旧申立人商標の商標権が更新未了となっていることを奇貨としてなされた剽窃的な登録であることは明らかで、一般的道徳観念に反し、また、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ず、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当する。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 4 商標法第4条第1項第10号該当性 以上のとおり、申立人商標は、申立人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている。 また、本件商標の指定商品は、申立人商品と用途を同じくするものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 第4 当審の判断 1 申立人商標の周知性について (1)申立人の主張及び申立人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。 ア 申立人商品の商標デザインの作成日付は、平成14年2月22日である(甲2)。 イ 申立人は、平成18年から令和3年までの申立人商品の総売上高が2億6,210万4,413円とする総括表(甲5)及び商品台帳一覧とする表(甲6)を提出しているが、これらは表のみでその裏付けとなる資料がない。 ウ 得意先一覧(甲7)は、申立人の得意先が全国に存在しているとしても、作成日が確認できないものである。また、申立人の販売先には、インターネットを通じて全国販売している(甲8)とするが、令和3年5月24日出力のものであるから、本件商標の登録出願時及び登録査定時の状況については確認できない。 (2)上記(1)からすれば、申立人商品の商標デザインの作成日付は、平成14年2月22日であり、申立人は、同16年頃から、へら保護用パット「ピタッとくん」を販売しており、また、申立人商品には、申立人商標の表示、製造販売元として申立人の表示の他、取扱店として村田塗料店の表示がされている(甲1の1)としても、申立人商品に関する市場シェアも不明であり、我が国における市場シェア、広告宣伝の規模等の事実を裏付ける具体的な証拠の提出はない。 そうすると、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商標が申立人又は申立人商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第10号該当性について (1)本件商標と申立人商標の類否について 本件商標は、別掲1のとおりの構成態様からなるものである。 他方、申立人商標は、別掲2のとおりの構成態様からなるものである。 そこで、本件商標と申立人商標を比較すると、色彩は異なるとしても、ともに「ピタッとくん」の文字及び語頭の「ピ」の上部に斜線が3本記載されてなるものであるから、観念については比較することはできないとしても、外観は同一又は類似するものであり、構成文字より生じる「ピタットクン」の称呼を共通にするものであるから、両商標は、類似する商標といえるものである。 (2)本件商標の指定商品と申立人商品の類否について 本件商標の指定商品と申立人商品は、同一又は類似する商品であると認められる。 (3)申立人商標の周知性について 申立人商標は、上記1(2)のとおり、申立人又は申立人商品を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 (4)小括 以上(1)ないし(3)からすると、本件商標と申立人商標は、類似するものであり、本件商標の指定商品と申立人商品は、同一又は類似するものであるとしても、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は申立人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないことから、商標法第4条第1項第10号の要件を欠くものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものではなこと明らかであり、さらに、社会の一般道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証左も見あたらない。 そして、本件商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではない。 (2)申立人は、リンテックサインシステム社が長期間にわたり、申立人商品を購入・転売しているものであり、その関係性は深く、申立人の商標権の更新が未了となっていることを奇貨としてなされた剽窃的な登録であることは明らかで、一般的道徳観念に反し、また、商標法の予定する秩序に反する旨主張している。 しかしながら、本件商標権者の子会社であるリンテックサインシステム社は、申立人商品について取扱店である村田塗料店を通じて購入し販売している取引関係(甲12、甲13)があり、また、上記1のとおり、申立人商標の周知性は認めることができない。 また、申立人が提出した甲各号証を総合してみても、本件商標が不正の利益を得る目的をもって剽窃的に登録出願したものと認めるに足りる具体的事実を見いだすことができない。 そのうえ、申立人は、旧申立人商標について、平成26年2月27日の商標権の存続期間満了日以後、本件商標の登録出願日である令和2年3月5日までの間、自ら登録出願をしていない。 また、申立人が提出した甲各号証を総合してみても、自己の業務に係る商標について登録出願することが十分可能であったにもかかわらず、登録出願を怠っていたといわなければならない。 してみると、申立人の主張は、申立人と本件商標権者との間の商標権の帰属等をめぐる問題というべきであり、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきものであって、「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合に該当するということはできない。 (3)小括 上記(1)及び(2)のとおり、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するとまではいえないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第10号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標 別掲2 申立人商標(甲1の1 色彩は原本を参照。) (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
異議決定日 | 2022-01-12 |
出願番号 | 2020024005 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W08)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
榎本 政実 |
特許庁審判官 |
小俣 克巳 豊田 純一 |
登録日 | 2021-03-19 |
登録番号 | 6366034 |
権利者 | リンテック株式会社 |
商標の称呼 | ピタットクン、ピタット、ピタッ |
代理人 | 木下 雄高 |
代理人 | 洪 勝吉 |