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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 009
管理番号 1381715 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-02-08 
確定日 2021-11-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4145321号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4145321号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4145321号商標(以下「本件商標」という。)は、「ビーライト」の片仮名を横書きにしてなり、平成8年(1996年)10月17日に登録出願、第9類「測定機械器具,電気磁気測定器,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,電気計算機,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,家庭用テレビゲームおもちゃ」を指定商品として、同10年(1998年)5月15日に設定登録、同20年(2008年)4月8日及び同30年(2018年)5年22日に存続期間の更新登録がなされたものである。
そして、本件審判請求の登録は、平成31年(2019年)2月22日にされたものであり、この登録前3年以内の期間を、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び平成31年(2019年)4月26日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年6月5日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、審判請求書で甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品(以下「本件審判請求に係る指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 弁駁書による請求人の主張(反論)について
(1)書籍「はじめてみようBTRON」に添付された「CD−ROMに記録されたコンピュータソフトウェア」の商品性について
書籍「はじめてみようBTRON」(以下「本件書籍」という場合がある。)に添付された「CD−ROMに記録されたコンピュータソフトウェア」(以下「本件商品1」という。)は、本件書籍の付属品(乙1)であり、独立して取引される物品ではなく、取引性、流通性を備えているのは、あくまでも書籍にすぎない。
本件商品1が取引性又は流通性を備えないものである以上、そこに記録されたソフトウェアについても、少なくとも乙第1号証及び乙第2号証によっては、取引性を立証できていないといえる。
したがって、本件商品1は、商標法上の商品には該当しない。
(2)「パッケージソフトウェアに搭載されて(組み込まれて)販売される『コンピューターオペレーティングシステムソフトウェア』(以下「OS」という。)」の商品性について
商標法上の商品は、「取引性」と「流通性」の要件を備えるものをいうと解されている。被請求人が述べるとおり、パーソナルメディア株式会社(以下「パーソナルメディア社」又は「商標権者」という。)は、平成8年(1996年)頃には、「B−right」なるOSを販売していたかも知れないが、その後に販売しているのはソフトウェア「超漢字V」(以下「超漢字V」という。)であり、「B−right」は「超漢字V」のパッケージに含まれる一つのプログラムにすぎない。
「超漢字V」のカタログの写し(乙3)には、どこにも、「B−right/V」のみが単体として販売されていることを示す記載はなく、他にもかかる事実を示す証拠は何もない。つまり、今や、商品として「取引性」を有しているのは「超漢字V」であり、「B−right/V」なるプログラムは、もはや「取引性」を有していない。
したがって、「パッケージソフトウェアに搭載されて(組み込まれて)販売されるOS」(以下「本件商品2」という。)についても、商標法上の商品には該当しない。
(3)本件商標と「B−right/V」の同一性について
本件商標は「ビーライト」なる文字列であり、この取消を免れるためには、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることが求められる。
被請求人は、この点について、「B−right/V」は、「B−right」に「/V」を加えたものであり、「B−right」の部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであると主張する。
しかも、このように商標の一部を分離した上で、当該分離した「B−right」の部分についてのみ、本件商標「ビーライト」の表記を変更したものであると主張する。
しかし、「B−right/V」は、スラッシュで区切られているとはいえ、途中にスペースや改行が設けられている訳ではなく全体として外観上はまとまりを有するものである。
また、本件商標が「ビーライト」との称呼を生じるのに対し、使用されている商標は、「ビーライトブイ」というように一連の語として称呼されるのが自然である。
加えて、需要者が、「B−right」と「B−right/V」なる商標に接したとき、「B−right/V」は「B−right」と同一の商品を指すものではなく、これらの改良品、派生品を指すものと理解するのが通常であると考えられる。
特に、ソフトウェアの世界では、バージョンによって、「/V」などのような付記をすることで区別することが多い。
以上の事情を考慮すれば、「B−right/V」は本件商標と社会通念上同一の商標ということはできない。
乙第4号証及び乙第5号証において、「B−right」の右上に丸アールと思われる表示がなされていることは認めるが、かかる表示がなされているとしても、「B−right/V」は本件商標と社会通念上同一の商標ということはできない。
(4)商標の使用時期について
本件書籍が、Amazon.com(以下「アマゾン」という。)において平成31年(2019年)2月20日に販売された実績がある点は認めるが、このことはあくまでも書籍の販売実績にすぎず、本件商品1の販売実績には該当しない。
「超漢字V」のカタログの写し(乙3)について、「1512」なる表示があることは認めるが、これが平成27年(2015年)12月を意味することについては不知であり、これがかかる年月を示す証拠は提示されていない。
また、明細書の写し(乙9)に、「ckv_print_1512」を含む表記があることは認めるが、これが「超漢字V」のカタログを示すものである点については不知である。
被請求人の「1512」が平成27年(2015年)12月という日付を意味するという主張が正しいとすれば、同年同月の印刷物は「超漢字V」のカタログ(乙3)には限られないはずであるから「1512」には何ら意味がないことになる。
また、被請求人は、「ckv」が「超漢字V」を欧文字表記した略であると述べるが、このことを示す証拠も提示されていない。
「超漢字V」のカタログの写し(乙3)の1頁目の中央下付近には、「PM176・P03−04.1512」なる文字列が表示されており、これがまさに印刷会社において「超漢字V」のカタログを特定する表記であると推測されるところ、明細書の写し(乙9)の上記箇所には、かかる文字列が全く記載されていないのは不自然である。
よって、「超漢字V」のカタログ(乙3)については、その発行日は立証できていない。
さらに、「超漢字V」が現在も販売されていることは認めるが、それが、本件商品2が販売されているということにはならない。
加えて、「超漢字V」の起動時の表示画面については認めるが、本件商品2が商標法上の商品に該当しない以上、かかる表示がなされたからといって、それは商品についての使用であるとはいえない。
(5)まとめ
以上のとおり、被請求人が示した本件商品1及び本件商品2は、いずれも商標法上の商品には該当せず、また、そこに使用されている商標「B−right/V」は、本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない。
よって、本件商標が、要証期間に日本国内において指定商品に使用されているとはいえないから、本件商標は取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張の要点
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書、令和3年(2021年)1月29日付け上申書(以下「上申書」という。)にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、答弁書において、乙第1号証ないし乙第13号証を、上申書において乙第14号証ないし乙第49号証を提出した。
1 答弁書による主張の要旨
本件商標は、要証期間に日本国内において、商標権者が、本件審判請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する本件商品1及び本件商品2について使用している。
(1)本件商品について
ア 本件商品1について
乙第1号証は、本件書籍に付属されたCD−ROMを撮影した写真の写しであり、乙第2号証は、本件書籍の内容を記載した写真である。
乙第2号証の本件書籍には「ソフトウェア使用条件」の見出しの下に、「1.本ソフトウェアは、DOS/Vで動作するBTRON仕様OS『B−right/V』の体験版です。」と記載されており、当該CD−ROMにソフトウェアが記録されていることは明らかである。
したがって、本件商品1は、「電子計算機用プログラム」に該当するものであって、「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品である。
イ 本件商品2について
乙第3号証は、「超漢字V」のカタログの写しであり、当該カタログの裏表紙には、「超漢字V」の搭載ソフトウェアとして「BRTON3仕様準拠OS『B−right/V』」(審決注:「BRTON3」は、「BTRON3」の誤記と認める。)と記載されており、また、「超漢字VとWindowsとの関係」の欄には「BTRON仕様OS B−right/V」と記載されている。
なお、乙第3号証の「超漢字V」のカタログは、パーソナルメディア社のウェブサイトから閲覧、ダウンロードできるようになっている。
パーソナルメディア社は、平成8年(1996年)に携帯機器用BTRON仕様OS「B−right」を販売し、その後機能を向上させ、「B−right」の機能を含むOS製品を開発・販売した。それが、「超漢字V」である。
この「超漢字V」は、複数のアプリケーションソフトウェアが搭載されたパッケージソフトウェアであり、そのアプリケーションソフトウェアを動作させるのが「B−right/V」というOSである。
したがって、本件商品2は、「パッケージソフトウェアに搭載されて(組み込まれて)販売されるOS」であり、「電子計算機用プログラム」に該当するものであって、「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうの商品である。
(2)使用商標について
乙第1号証のCD−ROMには、デザイン化された「B」と思しき文字に重なるように、「B−right/V」と記載されており、また、乙第2号証の本件書籍には、「DOS/Vで動作するBTRON仕様OS『B−right/V』」と記載されている。さらに、乙第3号証の「超漢字V」のカタログには、「BTRON3仕様準拠OS『B−right/VR4.5』」及び「BTRON仕様OS B−right/V」と記載されている。
これらの記載から「B−right/V」の文字(以下「使用商標1」という。)が商標として使用されているのが理解できる。
使用商標1は、「B−right」の文字の横に「/(スラッシュ)」を挟んで「V」の文字が表示されているところ、この「V」は「DOS/V規格」のパソコンで動作させるソフトウェアであることを表すために、「DOS/V」の「/V」を「B−right」に加えたものである。
また、使用商標1は、「B−right」と「V」の文字が「/」で区切るように表示されていることから、「B−right」と「V」に分離して看取されるものであり、「V」は欧文字1字であって識別力がない。
そうすると、使用商標1は、「B−right」の部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものである。
そして、本件商標「ビーライト」と使用商標1の「B−right」とは外観が異なるものの、称呼を同一とするものであり、使用商標1と本件商標とは社会通念上同一の商標である。
乙第4号証は、本件商品1を起動させたときの画面を撮影した写真の写しである。また、乙第5号証は、本件商品2が搭載された「超漢字V」を起動させたときの画面のキャプチャー画像の写しである。
乙第4号証及び乙第5号証には、「B−right」の文字の右上に登録商標であることを示す「丸アール」(「R」を○で囲んだもの)が表示され、その横に「/(スラッシュ)」を挟み「V」の文字(以下「使用商標2」という。)が表示されている。
使用商標2は、「B−right」の文字の右上に表示された「丸アール」により、「B−right」の表示が登録商標であると認識されるものである。
そして、本件商標「ビーライト」と使用商標2「B−rightR/V」(以下「B−rightR」と標記する場合の「R」は、丸付き文字である。)中の「B−right」とは外観が異なるものの、称呼を同一とするものであり、使用商標2と本件商標とは社会通念上同一の商標である。
以上より、使用商標1及び使用商標2は、本件商標と社会通念上同一の商標である。
(3)商標の使用について
ア 本件書籍の販売及び広告について
乙第6号証は、本件書籍がアマゾンで販売されていることを示すウェブページの写しである。また、乙第7号証は、アマゾンで実際に販売されたことを示す出荷記録の写しである。
乙第7号証の出荷記録は、大村紙業のOS−Webシステム(画面名:実績管理一発注実績紹介)からCSV形式でダウンロードできるようになっており、それをExcelにまとめたものである。なお、大村紙業は、パーソナルメディア社が契約している倉庫業者であり、そこから出荷してアマゾンに納品している。
出荷記録の黄色で示す部分を見ると、当該黄色部分のISBNの欄に「489362170」と表示されており、このISBNの番号は、乙第6号証のウェブページで表示されたISBN−10と同一であることから、当該黄色で示す部分の記録が本件書籍のものであることが理解できる。
また、出荷記録の「発注日」及び「納品日」の日付は、いずれも要証期間である。
そして、本件書籍には、本件商品1が付属されており、当該CD−ROMには使用商標1が表示されている。
そうすると、使用商標1について、要証期間に商標法第2条第3項第1号の使用行為が行われていたことが把握できる。
また、要証期間に使用商標1を表示した本件商品1が頒布されていることから、使用商標1について、要証期間に商標法第2条第3項第2号の使用行為が行われていたことが把握できる。
さらに、乙第8号証は、パーソナルメディア社が運営するECサイトのウェブページの写しであるところ、当該ウェブページの内容紹介の欄には、「本書には、1998年12月にリリースされました『B−right/V Rl.1』の体験版CD−ROMが付属しています。」と記載されている。
そうすると、使用商標1について、要証期間に商標法第2条第3項第8号の使用行為が行われていたことが把握できる。
イ 「超漢字V」のカタログの頒布について
乙第3号証の「超漢字V」のカタログには、裏表紙の右下に記号と数字が表示されているところ、このうち「1512」は平成27年(2015年)12月を意味する。
また、乙第9号証は、印刷センター成徳がパーソナルメディア社に対して発行した明細書の写しである。明細書右上の注文番号271781におけるタイトル「No.12 ckv_print_1512.pdf」、同注文番号287832におけるタイトル「No.8 ckv_print_1512_A3」は乙第2号証(審決注:乙第2号証は、乙第3号証の誤記と認める。)の「超漢字V」のカタログを指すものである。
なお、「ckv」は、「超漢字V」を欧文字表記した略である。
パーソナルメディア社は、印刷センター成徳にカタログの印刷を依頼し、納品されたカタログを毎年12月に開催されるTRONSHOWという展示会で配布し、製品パッケージの中へ同梱している。
さらに、明細書の上方には明細書の発行日が記載されており、注文番号271781の明細書には「2017年12月5日」、注文番号287832の明細書には「2018年12月3日」と記載されており、これらはいずれも要証期間である。
そして、乙第3号証の「超漢字V」のカタログには、本件商標1が表示されている。
そうすると、商標権者が要証期間に本件商標1(審決注:本件商標1は、使用商標1の誤記と認める。)が表示されたカタログを頒布していることが理解でき、使用商標1について、要証期間に商標法第2条第3項第8号の使用行為が行われていたことが把握できる。
ウ 「超漢字V」の販売について
乙第10号証は、パーソナルメディア社が運営するECサイトのウェブページの写しである。乙第11号証は、ヨドバシ.com(以下「ヨドバシ」という。)のウェブページの写し、乙第12号証は、ビックカメラ.com(以下「ビックカメラ」という。)のウェブページの写し、乙第13号証は、アマゾンのウェブページの写しである。乙第10号証ないし乙第13号証より、「超漢字V」が現在も販売されていることが理解できる。
また、乙第11号証では、販売開始日に平成30年(2018年)3月12日の日付が記載されており、この日付は要証期間である。
そして、「超漢字V」には、使用商標1である「B−right/V」を商標とする本件商品2が搭載されている。
そうすると、要証期間に本件商品2が搭載された「超漢字V」が販売されていることが理解でき、使用商標1について、要証期間に商標法第2条第3項第2号の使用行為が行われていたことが把握できる。
エ 画面上の表示について
乙第4号証及び乙第5号証に示されているように、本件商品1や本件商品2が搭載された「超漢字V」を起動させると画面上に使用商標2が表示される。
すなわち、本件商品1及び本件商品2には、プログラムを起動させると使用商標2が画面上に表示されるよう、使用商標2のデータがプログラムに組み込まれており、この電磁的記録を組み込む行為は商標法第2条第3項第1号の使用行為に該当する。
そして、本件商品1や本件商品2が搭載された「超漢字V」は、要証期間に頒布されている。
そうすると、使用商標2について、要証期間に商標法第2条第3項第1号の使用行為が行われていたことが把握できる。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、要証期間に日本国内において、商標権者により、本件審判請求に係る指定商品中、「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する「CD−ROMに記録されたコンピューターソフトウェア」及び「OS」について使用している。
2 上申書による主張の要旨
(1)当審における審尋
審判長は、被請求人に対し、令和2年(2020年)11月11日付けで、合議体の暫定的見解を示し、被請求人が答弁書で提出した乙各号証によっては、要証期間に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件審判請求に係る指定商品について本件商標を使用していることを証明しているものとはいえない旨の審尋を送付し、期間を指定して、これに対する意見を求めた。
(2)上申書による主張について
ア 審尋に対する回答の概要
(ア)本件書籍の付録のCD−ROMに本件商標を付して本件書籍を販売しても、商品「ソフトウェア」に商標を付して譲渡した(商標法第2条第3項第2号の使用)とは認められないとの見解に対する反論
本件書籍は、ソフトウェア「B−right/V」の販売を促進するために、ソフトウェアの解説とともに体験版のCD−ROMをつけているものであるから、ソフトウェアの広告に該当する。
したがって、本件書籍における「B−right」の記載(本文中でのソフトウェアの紹介、付録CD−ROM表面の記載、及び体験版CD−ROM内に記録されているデータにおける記載)はソフトウェア「B−right/V」を広告するものであり、本件書籍にこれらを記載し販売する行為は、商品に関する広告に商標を付して頒布する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
(イ)本件商品2のみの単独での取引が必要との見解に対する反論
商標法第50条所定の「使用」は、当該商標がその指定商品について何らかの態様で使用されていれば足り、出所表示機能を果たす態様に限定されるものではないし、また「超漢字V」にOSの「B−right」が含まれていることは、「超漢字V」の重要な特徴であり、「超漢字V」の搭載ソフトウェアである「B−right」も商標法上の商品に該当する。
(ウ)使用商標の使用の事実が認められないとの見解に対する反論
これについては、下記の(オ)のとおり、主張を補充する。
(エ)本件商標と使用商標1及び使用商標2は社会通念上同一と認められないとの見解に対する反論
これは、本件商標との同一性を判断するための「使用商標」の認定を誤るものである。「/」が文字列を区切る記号としで慣用されていること、コンピューターソフトウェアの業界では、シリーズ名称に「/」をつけてバージョンや対応システムの一部を記載するという表示方法も一般的といえること、「/」も「V」も単なる記号・アルファベットであり識別力が低いこと、パーソナルメディア社も「B−right」がパーソナルメディア社の登録商標であることを積極的に周囲に知らしめており、当業界の実態としても、この表示は、「B−right/V」の名称だけではなく、パーソナルメディア社が制作し販売しているBTRON仕様OSである「B−right」であることも認識されるものといえることから、使用商標1及び使用商標2を見た取引者、需要者は、「B−right」シリーズの1つであると認識する。
したがって、使用商標1及び使用商標2を「B−right」と認定して、本件商標「ビーライト」との同一性を判断すべきである
(オ)「超漢字V」のカタログの頒布の事実がないとの見解に対する反論
「超漢字V」のカタログの頒布の事実が認められない旨の指摘については証拠を補充する。
(カ)「超漢字V」に本件商標が付されていた事実が認められないとの見解に対する反論
「超漢字V」の説明書及びインストールガイドに記載されている「B―right」はOS「B−right」が使用されていることを示す標章であり、商品に商標が付されていると認められる。これらについて、証拠を補充する。
(キ)その他
起動画面に表示される「B−right」について、要証期間に頒布され、販売していたソフトウェアの起動画面にこれが表示されていたことが認定できないこと、及び商標法第2条第3項第1号の使用が認められない旨の指摘については、主張を補充する。
イ 弁駁書に対する反論
(ア)請求人は、書籍の付録であるCD−ROMが商品に該当しない旨を指摘するが、本件書籍は、ソフトウェア「B−right」の広告としての性質も有するものであり、本件書籍の販売は商標法第2条第3項第8号の使用に該当する。
(イ)請求人は、「超漢字V」に含まれるOS「B−right」は商品に該当しない旨を指摘するが、「超漢字V」にOS「B−right」が含まれていることは、「超漢字V」の重要な特徴であり、「超漢字V」搭載ソフトウェアとして「B−right」も含めて取引の対象となっているのであるから、商品であることは否定されない。
請求人が挙げる「取消2000−30929」は、コンソール、CRT画面というものの性質から「これのみで機能し、及び独立して商取引されるものではない」と認定し、かつ被請求人においてこれら「そのものを製造、販売している事実を示す証拠の提出はない」として、商標法第2条第3項第2号の使用を認めなかった事案であるが、一方で本件の「B−right」は、過去にこれのみで取引の対象となっていた実績もあり(乙14、乙28)、また今後もBTRON準拠OSとして「超漢字」シリーズその他のソフトウェアに搭載されて販売されるものであるから、「取消2000−30929」と本件は事案を異にする。
(ウ)請求人は、「B−right/V」を使用商標として本件商標との同一性を判断すべき旨を主張するが、商標登録における類否判断とは異なり、不使用取消審判における使用商標は、商標が様々な態様で使用されることが取引の実情であることに鑑みて、商標がそれと認識できる態様で使用されていれば足り、表示の全てを一体として観察しなければならない理由はない。
したがって、「外観上のまとまり」や「一連の語として呼称される」というのは使用商標の認定においては、分裂しているものと一体といえるか、という観点ならまだしも、本件のような「B−right/V」という表示がある場合に使用商標を「B−right」と認定することができるか、という検討においては役立たない。
ウ 使用商標の認定について
(ア)「/」の意味
「/」は、文章においては、行を区切るのに、改行の代わりに用いたり、文字列を区切るのに使用されたりする記号である。また、コンピュータープログラムの記述においても、区切りとして使用されていることは顕著な事実である。
(イ)ソフトウェア業界における慣用
コンピューターソフトウェアの名称においては、シリーズ名称に「/」をつけて、その後にソフトのバージョンや対応システムを示す記号をつけるものがよくあり、顕著な事実である。
(ウ)B−rightの沿革
パーソナルメディア社の制作・販売するOS「B−right」は、「BTRON(ビートロン、Business TRON)」に準拠したOSとして製品化されたものである。
パーソナルメディア社は、平成8年(1996年)11月に携帯機器用BTRON準拠OS「B−right」の発売を開始し、同10年(1998年)7月に「B−right/V R1.1」を発売した。その後、BTRON準拠の多漢字パソコン用OSとして、平成11年(1999年)11月発売の「超漢字」、同12年(2000年)7月発売の「超漢字2」、同13年(2001年)2月発売の「超漢字3」、同年12月発売の「超漢字4」に、OS「B−right/V」を搭載した(乙14、乙15)。
現在はパーソナルメディア社が販売する「超漢字V」に搭載されている。
パーソナルメディア社は、商品の販売に際して、自社ホームページや「超漢字」のインストールガイドなどに「B−right/V」を記載し、かつ、「『B−right』はパーソナルメディア株式会社の登録商標です。」との記載もして、「B−right」シリーズのOSがパーソナルメディア社の製品であることを告知してきた。
また、要証期間である平成30年(2018年)10月30日時点のウィキペディア「BTRON」のページ(乙15)においても、「現在、BTRON3の実装として、パーソナルメディア(株)のB−right/Vがあり、それを含んだソフトウェア製品の『超漢字』が発売されている。」、「3Bおよび、超漢字などに使われている『B−right』の仕様が『BTRON3』である(現在、マイクロカーネルはI−rightとなっている)。B−right/Vが準拠している仕様が、BTRON3仕様として公開されている。」と記載されているように、「B−right」がパーソナルメディア社の商品であり、「B−right/V」がそのうちの1つであることがソフトウェア業界においては認知されていたものといえる。
(エ)「B−right」、「B−rightR」及び「ビーライト」の表示
パーソナルメディア社は、「B−right」及び「ビーライト」の語を使用し、取引者、需要者に対し「B−right」及び「ビーライト」のみの語も、広く知らせている。
これらは、パーソナルメディア社が広く知らしめていた事実を推認させる事情であるから、要証期間に関係なく、挙げている。
a パーソナルメディア社の自社ホームページの「会社情報」の会社からの企業理念の発信である「パーソナルなメディアを求めて」の「1990年代には日本発のオリジナル技術であるBTRON仕様OS『B−right』を…」の記載がある(乙16)。
b 本件書籍の付録4頁に「B−rightR/V」及び「ビーライト」の記載がある(乙17)。
c ソフトウェアダウンロード後のファイル名(乙17、68頁、71頁、73頁)。(審決注:乙第17号証に68頁、71頁及び73頁は存在しない。)。
d ソフトウェアの起動画面に「B−rightR/V」の記載がある(乙5)。
e パーソナルメディア社は、書籍「はじめてみよう 体験版で超漢字」(2003年12月発行)中の表紙裏に、「B−rightはパーソナルメディアの登録商標です」と記載している(乙18)。
f パーソナルメディア社は、超漢字Vインストールガイドの2頁に「B−rightはパーソナルメディアの登録商標です」と記載している(乙19)。
g パーソナルメディア社は、同社の超漢字販売サイトで、「B−rightはパーソナルメディアの登録商標です」と記載している(乙20)。
h パーソナルメディア社は、同社の超漢字ないし超漢字4までの製品パンフレットに、「B−rightはパーソナルメディアの登録商標です」と記載している(乙21〜乙24)。
i パーソナルメディア社は、同社のプレスリリースの末尾に、「B−rightはパーソナルメディアの登録商標です」と記載し(乙25、乙26)、その他いくつかのプレスリリースの末尾にも記載している。
j 雑誌「TRONWARE」の裏表紙に「B−rightはパーソナルメディアの登録商標です」と記載されている(乙27)。
(オ)その他「B−right」がパーソナルメディア社の商品として著名であったことを示す事実
a セイコー電子工業株式会社の製品「BrainPad TiPO」にパーソナルメディア社のOS「B−right」が搭載されていたことが要証期間にウィキペディアの「BrainPad TiPO」のページに記載されている(乙28)。
b 情報携帯端末(PDA)用OSとしての「B−right」について平成8年(1996年)12月4日ないし7日に東京で開催された学術シンポジウム「13thTRON Project International Symposium/TEPS’96」で紹介され、その論文集に掲載されている(乙29)。
(カ)まとめ
本件において、乙第3号証などに記載されている「B−right/V」は、OS「B−right」シリーズの1つであることがわかるよう、「B−right/V」の表示をしたものである。ソフトウェア業界において、商標に続けて「/」をつけて、その後に記号等を記載する使用方法は一般的であり、「B−right」と「/V」を常に一体として見なければならない事情はないし、「/V」が「B−right」の有する独自の識別性に影響を与えているとも認められない。また、パーソナルメディア社がOS「B−right」を制作し販売していたことは、当業界において知られており、同社も「B−right」が同社の登録商標であることを積極的に周囲に知らしめていた。
当業界の実態として、この表示は、「B−right/V」の名称だけではなく、パーソナルメディア社が制作し販売しているBTRON仕様OSである「B−right」であることも認識されていたものといえる。
以上より、乙第3号証、乙第5号証、乙第19号証、乙第31号証、乙第39号証、乙第45号証及び乙第46号証などから認定すべき使用商標は、「B−right/V」だけでなく「B−right」も使用商標というべきである。
そして、使用商標「B−right」と本件商標「ビーライト」は、証拠(審決注:「証拠」は「称呼」の誤記と認める。)が同一であり、観念は生じない点で共通し、片仮名及び欧文字の表示を相互に変更するものであるから、社会通念上同一と認められる。
エ OS「B−right」の商品該当性について
(ア)超漢字VとOS「B−right」の関係
「超漢字V」は、平成11年(1999年)11月12日に発売の「超漢字」から「超漢字2」、「超漢字3」、「超漢字4」とバージョンアップされてきたソフトウェアであり、パーソナルメディア社のホームページ及びアマゾン等の通販サイトで販売されている。
「超漢字」シリーズはいずれもOS「B−right/V」を使用しており、「超漢字V」のパッケージにもかなり目立つ態様で「Windowsの上で動く、TRON」と記載されていることからわかるとおり、BTRONに準拠したOS「B−right」を使うことは「超漢字V」の特徴である。「超漢字V」のカタログ(乙3)にもOSとして「B−right/V」が使用されていることが記載されており、また、「超漢字V」の販売サイト内の「製品仕様」の「搭載ソフトウェア」のページには「超漢字Vの搭載ソフトウェア」の「オペレーティングシステム本体」に「BTRON3 仕様 OS 『B−right/V R4.5』(VMware Player 上で動作)」と記載されている(乙30、乙31)。これらは、沿革(乙14)もあり、既にBTRON準拠OSとして「B−right」自体が一定の知名度を有していることを示すとともに、OS「B−right」を使っていることが「超漢字V」の重要な特徴であることも示している。
(イ)OS「B−right」の商品該当性
OS「B−right」は要証期間に単独では取引対象となっていないが、過去にOS「B−right」のみで取引され、要証期間にも一定の知名度も有しており(乙15、乙28)、かつ、要証期間にパーソナルメディア社が販売していた商品である「超漢字V」の重要な特徴として広告宣伝され、「超漢字V」に搭載され販売されていた。
本件のようにそれ自体が一定の知名度があり、商品の重要な特徴として広告宣伝され、商品に搭載されて販売されていたソフトウェアについて、交換価値は否定できず、商品該当性は認められる。
(ウ)まとめ
そもそも「B−right」が独立して取引の対象となっている必要はなく、商品「超漢字V」の搭載ソフトウェアとして広告物に掲載されていることをもって、そこに付された「B−right」の表示は商標の使用と認められるべきである。
さらに、OS「B−right」は商品該当性が認められるから、「超漢字V」の商品又は広告に付された「B−right」の表示は商標の使用に該当する。
オ 使用の事実についての主張立証の補充
(ア)広告における使用(商標法第2条第3項第8号)での使用
a パンフレットの配布
(a)2017 TRON Symposiumでの配布
パーソナルメディア社は、平成29年(2017年)12月13日から15日の3日間にわたり東京ミッドタウンで開催された「2017 TRON Symposium−TRONSHOW−」に参加した(乙32、乙33)。そこで、パーソナルメディア社は、「超漢字」を使ったサービスを紹介するコーナーを作り、そのテーブルの下の棚に「超漢字V」のパンフレット(乙3)を置く方法により、来場者に配布した。乙第33号証に掲載されている写真のうち11枚目の写真(乙34)のパソコンが設置してあるテーブルの下にパンフレットが4種類置いてあり、そのうち右から2つ目が「超漢字V」のパンフレット(乙3)である。
ここでの配布に合わせて、パーソナルメディア社は、平成29年(2017年)12月5日に、印刷センター成徳にパンフレット40部の印刷を注文した(乙9)。
(b)2018 TRON Symposiumでの配布
パーソナルメディア社は、平成30年(2018年)12月12日から14日の3日間にわたり東京ミッドタウンで開催された「2018 TRON Symposium−TRONSHOW−」にも参加し(乙35、乙36)、ここでも前年同様に「超漢字」を使ったサービスを紹介するコーナーを作り、そのテーブルの下の棚に「超漢字V」のパンフレット(乙3)を置く方法により、来場者に配布した。
ここでの配布に合わせて、パーソナルメディア社は、平成30年(2018年)12月3日に、印刷コピーの成徳(上記「印刷センター成徳」と屋号が変わったが同一の事業者である。)にパンフレット40部の印刷を注文した(乙9)。
(c)乙第9号証の評価について
(i)乙第9号証の1枚目がデラックスカラーコピーの注文の明細書であることの認定
乙第9号証の1枚目は、平成29年(2017年)12月5日付け明細書である。そして、紙面の上部に「2017年12月5日(水) 14時42分 宛先:○○○○○○○○○○(○は10桁の数字) 発信:成徳」との印字があり、「FAX送信のお知らせ」との記載がある。
また、紙面には「2017年12月5日」、「パーソナルメディア株式会社 御担当者□□□様(□□□は人名である。)」、「FAX ○○−○○○○−○○○○(○○−○○○○−○○○○はFAX番号。)」の記載があり、紙面上部の印字がFAX送信に際して印字されたものとして紙面の内容と整合している。
そして、「明細書」の表記の下の表の「タイトル」の列には、いずれも英数字の組み合わせからなる文字列の末尾に「.pdf」が記載されており、PDFファイル名と推認される。「商品名」の列には「デラックスカラーコピー」と紙のサイズ、紙の種類が記載されている。「数量」の列には頁数と部数が記載されている。表の下には、5行にわたり代金支払いと領収書発行についての注意事項が記載され、その下に「またのご注文をお待ちしております。」、「送信者:○○(○○は氏の記載)」、「印刷センター成徳」と港区芝大門の住所、電話番号が記載されている。
以上の記載内容から、乙第9号証の1枚目は、「印刷センター成徳」が、パーソナルメディア社から表に記載された内容でデラックスカラーコピー作成の注文を受け、その内容を「印刷センター成徳」からパーソナルメディア社へFAXで送った「明細書」と認められる。
(ii)乙第9号証の2枚目がデラックスカラーコピーの注文の明細書であることの認定
乙第9号証の2枚目は、乙第9号証の1枚目とほぼ同様の書式であり、異なるのは、日付が平成30年(2018年)12月3日であること、注文番号、表の内容、送信者の名前及び「印刷コピーの成徳」の表示である。乙第9号証の1枚目の「印刷センター成徳」と2枚目の「印刷コピーの成徳」は異なる名称であるが、住所、電話番号、ホームページアドレスは同一であり、「成徳」という特徴ある名称が共通していることもあり、同一の印刷会社が屋号を変えたものと推認できる。
そして、乙第9号証の2枚目の表の内容について、「タイトル」の列には、英数字の組み合わせからなる文字列が記載され、「.pdf」の記載はなく、「_1812」や「_A3」が記載されているものが散見される。1枚目の表の「タイトル」列の記載と2枚目の表の「タイトル」列の記載を比べると、表の1行目は1枚目「PMCsolution2017.pdf」と2枚目「PMCsolution_1812_A3」であり、1枚目、2枚目がそれぞれ平成29年(2017年)12月と同30年(2018年)12月の注文であること及びデラックスカラーコピーの注文であることを考慮すると、いずれも「PMCsolution」の同29年(2017年)版と同30年(2018年)12月版の印刷物であることがうかがわれる。表の2行目「IoTsolution2017.pdf」と「IoTsolution_1812_A3」についても同様で、いずれも「IoTsolution」の平成29年(2017年)版と同30年(2018年)12月版の印刷物であることがうかがわれる。
以上から、乙第9号証の2枚目の表の「タイトル」の列はデラックスカラーコピーの対象となる印刷物のタイトル(PDF ファイル名そのままではない)を記載して、「印刷センター成徳」が屋号を変えた「印刷コピーの成徳」が、パーソナルメディア社から表に記載された内容でデラックスカラーコピー作成の注文を受け、その内容をパーソナルメディア社へFAXで送った「明細書」と認められる。
(iii)1枚目の表12行目と2枚目の表8行目が「超漢字V」のパンフレット(乙3) であると推認できること
乙第9号証の1枚目の表の12行目はタイトルが「ckv_print_1512.pdf」、商品名「デラックスカラーコピー A3両面 白上質 70kg 左右開き スタック」、数量「2頁 40部 40」となっている。
乙第9号証の2枚目の表の8行目はタイトルが「ckv_print_1512_A3」、商品名「デラックスカラーコヒー A3両面 白上質 70kg 左右開き スタック」、数量「2頁 40部 40」となっている。
乙第3号証は、厚手の上質紙でA3サイズのものに、両面カラーで印刷されたものを、二つ折りにしたものであり、表紙裏の右下に「PM176−P03−04.1512」との記載がある。
パーソナルメディア社のホームページの「超漢字V」の紹介サイトには「カタログ」のページに「超漢字V製品のカタログ」と題して「超漢字V」の文字から乙第3号証と同じ内容のPDFファイルヘのリンクが貼られている。
このことから、パーソナルメディア社では、「超漢字V」に関する電子ファイルの名称に、「超漢字V(ChouKanjiV)」を短縮した「ckv」を使っていたこと、乙第3号証のデータファイルに「超漢字V(ChouKanjiV)」を短縮した「ckv」と、乙第3号証の版を示す「1512」をつけていたことが推認できる。
以上より、乙第9号証の1枚目の12行目と2枚目の8行目の注文は、その納品物が乙第3号証であることと整合しており、TRON Symposiumの開催日が乙第9号証の注文日と近接しており、乙第9号証の注文に「超漢字V」のパンフレットが含まれていることも自然である。
乙第9号証の1枚目の12行目と2枚目の8行目の「タイトル」に異なる部分はあるが、それも他の「タイトル」の記載から1枚目はPDFファイル名、2枚目はPDFファイル名とは異なる名称を記載していることが認められ、これらが異なることは不自然ではない。
よって、1枚目の表12行目と2枚目の表8行目が「超漢字V」のパンフレット(乙3)であると認められる。
(d)「超漢字V」のパンフレットに「B−right」を記載し配布することが、広告における使用(商標法第2条第3項第8号)に該当すること
「超漢字V」の広告に付された「B−right」の表示が商標の使用に該当する。OS「B−right」は商品「超漢字V」の重要な特徴として、「超漢字V」のパンフレット(乙3)により広告宣伝されている。
乙第3号証の「BTRON仕様OS B−right/V」の記載から使用商標を「B−right」と認定すべきであること及び使用商標「B−right」と本件商標「ビーライト」が社会通念上同一と認められることは、上記のとおりである。
よって、パーソナルメディア社は、平成29年(2017年)12月13日から15日に、「2017 TRON Symposium −TRONSHOW−」の来場者に対し、使用商標「B―right」を付した広告を頒布し、同30年(2018年)12月12日から14日に、「2018 TRON Symposium −TRONSHOW−」の来場者に対し、使用商標「B−right」を付した広告を頒布した。
使用商標「B−right」と本件商標「ビーライト」は社会通念上同一と認められる。
したがって、これらの行為は、商品に関する広告に本件商標と社会通念上同一の標章を付して頒布する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
b インターネット上での広告データの提供
(a)「超漢字V」のパンフレット(乙3)のデータを掲載しているページ
パーソナルメディア社の「超漢字V」の販売サイト中の「超漢字V製品のカタログ」と題するページ(乙37)で「超漢字V」の文字から、乙第3号証と同じ内容のPDFファイルが開けるようになっており、同ファイルに「BTRON 仕様 OS B−right/V」の記載がある。
乙第38号証の「カタログ掲載ページタイムスタンプ.png」は、パーソナルメディア社の「超漢字」の販売サイトの各ページの最終更新日付を示す画面のスクリーンショット画像であり、「超漢字V製品のカタログ」の最終更新日は平成28年(2016年)11月29日であることが読み取れる。
したがって、当該ページは要証期間に現在のように更新されて以降、同内容で提供されていたものと認められる。
(b)「B−right/V」の記載があるページ
(i)パーソナルメディア社作成の「超漢字V」の販売サイト「特長」ページ(乙30)の下部「搭載ソフトウェア」からリンクする「超漢字Vの搭載ソフトウェア」と題するページ(乙31)に「オペレーティングシステム本体」、「BTRON3 仕様 OS 『B−right/VR4.5』(VMware Player上で動作)」の記載がある。
(ii)パーソナルメディア社作成の「超漢字V」の販売サイト「特長」ページ(乙30)の下部「超漢字VとWindowsとの関係」からリンクする「超漢字VとWindowsとの関係」と題するページ(乙39)の図中に「BTRON 仕様 OS B−right/V」の記載がある。
(iii)乙第38号証「カタログ掲載ページタイムスタンプ」で、「超漢字V」の販売サイトの最終更新日付は、平成26年(2014年)3月12日であることが読み取れる。
したがって、要証期間より前から現在に至るまで、同内容で提供されていたことが認められる。
(c)商品に関する広告に付す行為に該当すること
上記(a)及び(b)は、いずれも、「超漢字V」の販売サイトに掲載されているものであり、「超漢字V」の広告を内容とする情報である。
「超漢字V」の広告に付された「B−right」の表示が商標の使用に該当することは、「BTRON 仕様 OS B−right/V」、「BTRON Specification OS−B−right/V」の記載から使用商標を「B−right」と認定すべきである。使用商標「B−right」と本件商標「ビーライト」が社会通念上同一と認められることは上記のとおりである。
よって、これらの行為は、広告を内容とする情報に本件商標と社会通念上同一の標章を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
c 書籍の販売(広告のための体験版の配布)
パーソナルメディア社は、平成11年(1999年)8月10日にOS「B−right」を紹介する本件書籍「はじめてみようBTRON」を発行し、OS「B−right」の販売を促進する目的で、30日間のみOS「B−right/V」を使用できる、体験版のCD−ROMをつけた(乙1、乙2、乙17)。
OS「B−right」は要証期間に単独では取引対象となっていないが、要証期間にパーソナルメディア社が販売していた商品である「超漢字V」の重要な特徴として広告宣伝されており、かつ、「超漢字V」に搭載され販売されていたものであり、本件書籍は「超漢字V」搭載ソフトウェアである「B−right/V」を広告していたのであるから、要証期間においても、商品の広告と認められる。
本件書籍には、「B−right」、「ビーライト」及び「B−right/V」の記載が随所にある。
使用商標「B−right」及び「ビーライト」と本件商標「ビーライト」は社会通念上同一と認められる。
そして、パーソナルメディア社は要証期間に本件書籍を販売しており(乙6、乙7)、このパーソナルメディア社の本件書籍の販売は、商品に関する広告に本件商標と社会通念上同一の標章を付して頒布する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
(イ)商品に付したものを譲渡(商標法第2条第3項第2号)の使用
a 「超漢字V」の譲渡
パーソナルメディア社は、平成18年(2006年)10月より現在に至るまで、「超漢字V」を、パーソナルメディア社作成の販売サイト(乙10) や、販売開始日として「2018/03/12」の記載がある通販サイト(乙11)、ビックカメラ(乙12)、アマゾン(乙13) で販売している。
例えば、乙第40号証及び乙第41号証より、要証期間である平成31年(2019年)1月17日に、SB C&S株式会社(以下「SB C&S社」という。)からパーソナルメディア社に対し、「超漢字V SPI 簡易包装版」2本を、合計27,000円で購入する注文があり(乙40)、パーソナルメディア社は同日、SB C&S社へ宛てて、「超漢字V SPI 簡易包装版」2本を出荷した(乙41)ことが認められる。
b 「超漢字V」に使用商標「B―right」が付されていること
「超漢字V」は、「超漢字V 梱包リスト」(乙42)、取扱説明書「超漢字Vインストールガイド(概要)」(乙43)及び「超漢字Vの新機能・変更点」(乙44)、CD―ROM「超漢字VインストールCD」(乙45)及び「超漢字VシステムCD(リカバリ用)」(乙46)、「ユーザー登録番号のご案内」並びに「超漢字V」のパンフレットが同梱されて納品される(乙47〜乙49)。
「超漢字V」のパンフレットは、乙第3号証と同じ内容を、乙第3号証よりも薄い紙に印刷したものである(乙49)。CD−ROMは、いずれも表面に「BTRON Specification OS−B−right/V」の記載がある(乙45、乙46)。
そしてCD−ROM「超漢字VインストールCD」にはファイル名「install.pdf」文書名「超漢字Vインストールガイド」の文書(乙19)が記録されている。
この「超漢字Vインストールガイド」は、1頁目に「BTRON Specification OS B−right」、2頁目に「B−rightは、パーソナルメディア株式会社の登録商標です。」の記載がある。
「超漢字Vインストールガイド」は、パーソナルメディア社の「超漢字V」販売サイトにも掲載している。
さらに、「超漢字V」の購入者がCD−ROM「超漢字VインストールCD」を使って「超漢字V」のソフトウェアを自己のパソコンにインストールし、これを立ち上げる際には、「B−right/V」が表示される(乙5)。
これらはいずれも、「超漢字V」に付されたものといえる。
c 乙第5号証の認定について
乙第5号証は画像上部の「超漢字V−VMware Workstation 14 Player」の記載から、「超漢字V」をパソコン上で実行した際の表示であることが分かり、要証期間と近接した時期である平成31年(2019年)4月23日の時点で、「超漢字V」にこのような画面が表示されるものが実在していたことが認められる。
要証期間後から2か月余りの間にわざわざこのような「超漢字V」の画面を作成したとは考えにくく、この画面は要証期間の「超漢字V」の起動においても表示されていたと推認すべきである。
d 「超漢字V」に使用商標を付すことが商品に付して譲渡する行為(商標法第2条第3項第2号)に該当すること
「超漢字V」に付された「B−right」の表示が商標の使用に該当することは上記のとおりである。
OS「B−right」は「超漢字V」の搭載ソフトウェアとして取引の対象となっており、商品該当性が認められる。
「BTRON Specification OS B−right/V」の記載から使用商標を「B−right」と認定すべきであること及び使用商標「B−right」と本件商標「ビーライト」が社会通念上同一と認められることは上記のとおりである。
よって、パーソナルメディア社が「超漢字V」のCD−ROM及び「超漢字インストールガイド」に「BTRON Specification OS−B−right/V」と記載し、この「超漢字V」を譲渡した行為は、商品に本件商標と社会通念上同一である標章を付して譲渡する行為(商標法第2条第3項第2号)に該当する。
カ まとめ
以上より、パーソナルメディア社は、要証期間に、販売していた商品である「超漢字V」の重要な特徴である搭載ソフトウェア「B−right/V」について、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標「B−right」を付し、その他、「超漢字V」の広告物、パーソナルメディア社の会社広告物、パーソナルメディア社が「B−right/V」及び「超漢字」の広告のために発行している書籍などにも本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標「B−right」を付して、頒布または提供した。
これらの個々の事実が商標法第2条第3項第2号又は同項第8号の「使用」に該当するだけでなく、このように多くの箇所に「B−right」を記載していた事実から、パーソナルメディア社がソフトウェアの取引者、需要者に対して「B−right」がパーソナルメディア社の制作、販売するBTRON準拠のOSであることを広く知らしめていたことも認められる。
そして、本件事案全体を見たとき、パーソナルメディア社が本件商標を使用していなかったとして商標登録が取り消されることは、パーソナルメディア社による「B−right」の標章の使用の実態にそぐわず、パーソナルメディア社は今後これらを使用できなくなり得るという、著しく不当な結果を招く。
本件商標は取り消すべきではない。

第4 当審の判断
1 被請求人の立証責任
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、ア 要証期間に、イ 日本国内において、ウ 商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、エ 本件請求に係る商品のいずれかについての、オ 本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることをすべて証明する必要がある。
2 被請求人の主張及び同人の提出した乙各号証は以下のとおりである。
(1)本件書籍に関する証拠について(乙1、乙2、乙4、乙6〜乙8、乙17)
乙第1号証は、本件書籍に付属されたCD−ROMを撮影した写真の写しであり、CD−ROMの表面に、やや不鮮明ではあるが「B−right/V体験版」の記載、「パーソナルメディア」の記載がある。
なお、被請求人は、「当該CD―ROMにソフトウェアが記録されていることは明らかである」と主張するが、CD―ROMに収録された内容は確認することができない。
また、本件書籍は、「BTRON」の解説本であって、「はじめてみようBTRON」をタイトルとする書籍として取引されるものである。
さらに、本件書籍の写真の撮影日とされる平成31年(2019年)4月23日は、要証期間外である。
乙第2号証は、本件書籍の写真の写しであり、本件書籍の表紙には「はじめてみようBTRON」の記載があり、本件書籍の帯紙に不鮮明であるものの「パーソナルメディア」の記載がある。
また、本号証の2葉目の「巻末裏」とする用紙の「ソフトウェア使用条件」の下に「1.本ソフトウェアは、DOS/Vパソコンで動作するBTRON3仕様OS『B−right/V』の体験版です。」の記載がある。
なお、本件書籍及び本件書籍の付属品は、「はじめてみようBTRON」をタイトルとする書籍として取り扱われる商品である。
また、本件書籍の発行日は本号証からは確認できない。
乙第4号証は、被請求人が、本件書籍に付属されたCD−ROMを起動させた際の画像の写しと述べるものであり、モニターの画面に「・・・B−rightR/V へようこそ・・・」の文字が映つしだされている。
なお、当該モニターの画面の撮影日である平成31年(2019年)4月23日は、要証期間外である。
乙第6号証は、本件書籍がアマゾンで販売されていることを示すウェブページの写しであり、本号証には、「はじめてみようBTRON 単行本(ソフトカバー) 1999/8/11」の記載がある。
なお、これらの情報の掲載日は明らかではない。
乙第7号証は、被請求人が、アマゾンにおいて本件書籍が販売されていることを示す出荷記録の写しと主張するものであり、本号証の1葉目の表の「No」の欄の「2」の項目の「発注日」の欄に「2016/3/29」の記載、「書名」の欄に「はじめてみようBTRON」の記載、「注文数」の欄に「1」の記載がある。
乙第8号証は、パーソナルメディア社が運営するECサイトにおいて、本件書籍が紹介されたことを示すウェブページの写しであるところ、本号証の1葉目の左上には、上下二段に書された「PERSONAL MEDIA」及び「CORP.」の記載、その下に「書籍」の記載があり、また、中央に「はじめてみようBTRON」の記載、「本書は、1998年12月にリリースされました『B−right/VR1.1』の体験版CD―ROMが付属した解説書となっております。」の記載がある。
また、本号証の2葉目に「C2007―2014 Personal Medeia Corp.」(最初の「C」は、丸付き文字である。)の記載がある。
なお、これらの情報の掲載日は確認することができない。
乙第17号証は、「はじめてみようBTRON」のタイトルの書籍の一部抜粋記事の写しと思しきものであり、本号証の2葉目の「はじめに」のタイトルの下に、「本書は、純国産技術であるトロンプロジェクトから生まれたBTRON仕様オペレーティングシステム(OS)の入門書です。BTRON仕様OSの利用は近年着実に広まっており、DOS/Vパソコン用最新32ビット版のB−right/V(「B−right/V」には、ビーライトブイのルビがふられている。)、B−right/Vの前身となったコンパクト16ビット版の1B/V3(「1B/V3」には、イチビーブイスリーのルビがふられている。)シリーズが発売されています。」の記載がある。
また、本号証の6葉目の「製品版との違い」の項目に「本書に付属している『B−rightR/V体験版』(『B−rightR/V』には、ビーライトブイのルビがふされている。)は、製品版の『B−right/V』(R1.100)に対して、以下の制限を加えたものです。」の記載があり、本号証の11葉目に「1999年8月10日 初版1刷発行」の記載及び「発行」の項目に「パーソナルメディア株式会社」の記載がある。
なお、本号証の書籍と本件書籍(乙1)とは、「はじめてみようBTRON」のタイトルは同じであるが、これらの表紙が異なるため、本号証の書籍と本件書籍が同一のものであるのかは確認することができない。
(2)漢字用ソフトウェアに関する証拠について(乙3、乙5、乙9〜乙13、乙30、乙31、乙37〜乙49)
乙第3号証は、漢字用ソフトウェア「超漢字V」のカタログの写しであり、本号証の1頁目の当該カタログの表紙に、「Windows上で動くTRON−『超漢字V(『V』には、「ブイ」のルビがふされている。)』の記載、「パーソナルメディア」の記載があり、本号証の4葉目の当該カタログの裏表紙の「超漢字Vの搭載ソフトウェア」の項目に「BTRON3仕様準拠OS『B−right/V R4.5』」の記載、「標準価格」の項目に「『超漢字V』 18,000円」の記載、「パーソナルメディア株式会社」の記載及び「PM176−P03−04.1512」の記載があるが、当該カタログの作成日や頒布先は明らかではない。
また、被請求人が、OS「B−right」を使っていることが漢字用ソフトウェア「超漢字V」の重要な特徴であると述べるとおり、乙第3号証の4葉目の「超漢字Vの搭載ソフトウェア」の項目に記載された「BTRON3仕様準拠OS『B−right/V R4.5』」の表示は、漢字用ソフトウェア「超漢字V」に搭載されているOSを表示しているにすぎず、漢字用ソフトウェア「超漢字V」の機能や特徴を表示したものと判断できるものである。
乙第5号証は、被請求人が、漢字用ソフトウェア「超漢字V」を起動したときの画像の写しと述べるものであり、モニターの画面の上部には、「超漢字V―VMware Workstation 14 Player(非営利目的の使用のみ)」の文字及び画面中央に「B−rightR/V R4.5」との文字が映っているが、当該画像の撮影日とされる平成31年(2019年)4月23日は、要証期間外である。
乙第9号証は、「FAX送信のお知らせ」のタイトルの書面の写しであり、本号証の1葉目は、平成29年(2017年)12月5日に、印刷センター成徳がパーソナルメディア社に対し、明細書の写しをFAX送信したものであり、明細書の写しの「タイトル」の欄の上から12列目に「ckv_print_1512.pdf」の記載、「数量」の欄の上から12列目に「2頁」及び「40部」の記載があり、本号証の2葉目は、同30年(2018年)12月3日に、印刷コピーの成徳がパーソナルメディア社に対し、明細書の写しをFAX送信したものであり、明細書の写しの「タイトル」の欄の上から8列目に「ckv_print_1512_A3」の記載、「数量」の欄の上から8列目に「2頁」及び「40部」の記載がある。
乙第10号証は、パーソナルメディア社が運営するECサイトにおいて、漢字用ソフトウェア「超漢字V」が紹介されたことを示すウェブページの写し、乙第11号証は、ヨドバシのウェブページの写し、乙第12号証は、ビックカメラのウェブページの写し、及び乙第13号証は、アマゾンのウェブページの写しであり、乙第30号証及び乙第31号証並びに乙第39号証は、パーソナルメディア社が運営するECサイトにおける漢字用ソフトウェア「超漢字V」の特長を紹介するウェブページの写し、乙第37号証は、「超漢字V製品のカタログ」を紹介するウェブページの写し、乙第38号証は、漢字用ソフトウェア「超漢字V」の販売サイトの更新日付が平成28年(2016年)11月29日であること等を主張するものであり、これらのうち乙第39号証においては、「B−right/V」の記載があるものの、その他の証拠において、本件商標の記載はない。
乙第40号証は、平成31年(2019年)1月17日に、SB C&S社が、パーソナルメディア社に、漢字用ソフトウェア「超漢字V SP1 簡易包装版」を発注したことを示す注文書(控)であり、左上の「注文先」の項目に「パーソナルメディア(株)」の記載、右上に「2019/1/17」の記載、その下に「SB C&S株式会社」の記載、本号証の表中「商品名 メーカー型番 機種/メディア」の欄に「超漢字V SP1 簡易包装版 WIN/CD−ROM」の記載、数量の欄に「2」の記載、本号証の「納品先」の項目に「SBフレームワークス株式会社」の記載がある。
乙第41号証は、パーソナルメディア社が発行したと思しき発送指示書の写しであり、「出荷日」の欄に「2019/01/17」の記載、「発送先」の欄に「SBフレームワークス株式会社」の記載、「伝票宛名」の欄に「SB C&S株式会社」の記載、「品番・品名」の欄に「(PC10186030)超漢字V SP1 簡易包装版」の記載がある。
乙第42号証は、「超漢字V 梱包リスト」と記載された書類であり、乙第43号証は、「超漢字Vインストールガイド(概要)」と記載された書類であり、乙第44号証は、「超漢字Vの新機能・変更点」と記載された書類であるが、これらの証拠において、本件商標の記載はない。
乙第45号証は、「超漢字VインストールCD」の表面を撮影した写真、
乙第46号証は、「超漢字VシステムCD(リカバリ用)」の表面を撮影した写真、乙第47号証は、「超漢字V SP1 簡易包装版」の包装態様を撮影した写真、乙第48号証及び乙第49号証は、「超漢字V」の梱包内容を撮影した写真と被請求人が主張するものであるが、これらの写真の撮影日とする令和2年(2020年)12月23日は、要証期間外である。
(3)その他の証拠について(乙14〜乙16、乙18〜乙29、乙32、〜乙36)
乙第14号証は、パーソナルメディア社の「沿革」を表示するウェブページの写しであり、本号証の6頁の「1999年11月」の項目に「BTRON仕様の多漢字パソコン用OS『超漢字』発売」の記載、「1996年11月」の項目に「携帯機器用BTRON仕様OS『B−right』発売」の記載がある。
乙第15号証は、フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」における「BTRON」に関する掲載記事であり、「本来特定の製品ではなく、あくまでも仕様を指すが、実際には実装を指して『BTRON』と呼ぶことも多い。現在、BTRON3の実装として、パーソナルメディア(株)のB−right/Vがあり、それを含んだソフトウェア製品の『超漢字』が発売されている。」の記載がある。
乙第16号証は、パーソナルメディア社の「パーソナルなメディアを求めて」をタイトルとするウェブページの掲載記事の写しであり、「1980年代には日本初のPC用カード型データベースソフト『アイリス』を、1990年代には日本発のオリジナル技術であるBTRON仕様OS『B−right』を、2000年代には文字文化のプラットフォーム『超漢字』など他社にはないユニークな製品を世に送り出してまいりました。」の記載がある。
乙第18号証は、「はじめてみよう体験版で超漢字」のタイトルの書籍の抜粋記事であり、本号証の1葉目には、上下二段に「はじめてみよう」及び「体験版で超漢字」の記載、「パーソナルメディア」の記載があり、本号証の2葉目に「B−right(『B−right』には、ビーライトのルビがふられている。)はパーソナルメデイア株式会社の登録商標です。」の記載があり、本号証の6葉目に「B−rightはパーソナルメデイア株式会社の登録商標です。」の記載がある。
乙第19号証は、パーソナルメディア社発行の「超漢字Vインストールガイド」であり、1頁に「B−rightはパーソナルメデイア株式会社の登録商標です。」の記載があり、奥付には、「超漢字Vインストールガイド」の記載、「2014年3月3版1刷発行」の記載及び「発行:パーソナルメディア株式会社」の記載がある。
乙第20号証は、パーソナルメディア社が運営するECサイトにおいて、「超漢字ソリューション for Oracle」が紹介されたことを示すウェブページの写しであり、本号証の1葉目に「超漢字ソリューション for Oracle」の記載があり、本号証の6葉目に「B−rightはパーソナルメデイア株式会社の登録商標です。」の記載がある。
乙第21号証は、漢字用ソフトウェア「超漢字」のパンフレット、乙第22号証は、漢字用ソフトウェア「超漢字2」のパンフレット、乙第23号証は、漢字用ソフトウェア「超漢字3」のパンフレット、乙第24号証は、漢字用ソフトウェア「超漢字4」のパンフレットであり、これらの証拠の最終頁の下部に「B−rightはパーソナルメデイア株式会社の登録商標です。」の記載がある。
乙第25号証は、パーソナルメディア社の平成21年(2009年)7月24日付け「『超漢字V英語対応キット』の無償提供を開始」をタイトルとするプレスリリースの掲載記事の写しであるが、平成21年(2009年)7月24日は、要証期間外である。
乙第26号証は、パーソナルメディア社の平成18年(2006年)9月20日付け「18万漠字を扱える『超漢字』のWindows版を新発売」をタイトルとするプレスリリースの掲載記事の写しであるが、平成18年(2006年)9月20日は、要証期間外である。
乙第27号証は、パーソナルメディア社が平成30年(2018年)12月20日に発行した「TRONWARE 174 2018.12」をタイトルとする雑誌の抜粋記事であり、本号証の2葉目に、「・・・B−rightは・・・パーソナルメデイア株式会社の登録商標です。」の記載がある。
乙第28号証は、フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」における「BrainPad TiPO」に関する掲載記事であり、「BrainPad TiPO(ブレインパッド・ティポ)は、セイコー電子工業(SII)が開発した携帯情報端末(PDA)である。パーソナルメディア(株)から、BTRON仕様OS『B−right』を搭載し、『電房具TiPO(でんぼうぐティポ)』の名で一般向けに販売された。」の記載がある。
乙第29号証は、被請求人が、平成8年(1996年)に開催された「13th TRON Project International Symposium」の論文と述べるものである。
乙第32号証は、「2017 TRON Symposium TRONシンポジウム −TRONSHOW−」をタイトルとする「PROGRAM & EXHIBITS GUIDE」の抜粋記事、乙第33号証は、パーソナルメディア社の平成29年(2017年)12月15日付け「2017 TRON Sympoisum(TRONSHOW)に出展」をタイトルとするニュースの掲載記事、乙第34号証は、乙第33号証のニュースの掲載記事中の写真を拡大したものであるが、乙第34号証の写真は不鮮明であるため、その詳細を把握することはできない。
乙第35号証は、「2018 TRON Symposium TRONシンポジウム −TRONSHOW−」をタイトルする「PROGRAM & EXHIBITS GUIDE」の抜粋記事であり、乙第36号証は、パーソナルメディア社の平成30年(2018年)12月14日付け「2018 TRON Sympoisum(TRONSHOW)に出展」をタイトルとするニュースの掲載記事の写しであるが、乙第36号証の写真は不鮮明であるため、その詳細を把握することはできない。
3 上記2によれば、当審の判断は、以下のとおりである。
(1)使用者について
本件商標の使用者は、商標権者であるパーソナルメディア社と認められる。
(2)使用商品について
ア 本件書籍について
パーソナルメディア社は、CD−ROMが付属された「はじめてみよBTORON」のタイトルの本件書籍を取り扱っていることは認められるが、書籍は、本件審判請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品ではない。
なお、被請求人は、本件書籍の付属品のCD−ROMには、コンピュータソフトウェアが記録されていることから、本件書籍の附属品のCD−ROMは、本件審判請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品である旨を述べているが、本件書籍は「BTRON」の解説書と推測できるものであって、本件書籍の付属品のCD−ROMは、体験版として、BTRON仕様のOSが記録されているにすぎないものである。
また、本件書籍の付属品のみが、単独で商取引の対象とはならないことからすると、本件書籍にOSが記録されたCD―ROMが付属されているとしても、これが、本件審判請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品とは認められない。
イ 漢字用ソフトウェアについて
パーソナルメディア社は、「超漢字V」のタイトルを付した漢字用ソフトウェアの製造、販売を行っていることが認められ、「コンピュータソフトウェア」は、本件審判請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品であると認められる。
(3)使用標章について
ア 本件書籍の使用標章について
本件書籍又は本件書籍の包装に使用された標章は、本件書籍の写真(乙2)によると、本件書籍のタイトル名である「はじめてみようBTRON」の標章(以下「使用標章1」という。)及び本件書籍の製造者であるパーソナルメディア社の略称と認められる「パーソナルメディア」の標章(以下「使用標章2」という。)であることが確認できる。
そして、本件商標「ビーライト」と使用標章1は、これらの構成文字や称呼が明らかに相違するものであるから、本件商標と使用標章1は、社会通念上同一とはいえない。
また、本件商標「ビーライト」と使用標章2についても、これらの構成文字や称呼が明らかに相違するものであるから、本件商標と使用標章2は、社会通念上同一とはいえない
なお、被請求人は、本件書籍の付属品であるCD−ROMにデザイン化された「B」と思しき文字に重なるように、「B―right/V」と記載されていることから、「B−right/V」の文字が商標として使用されているのが理解できる旨を述べているが、上記(2)アのとおり、本件書籍の付属品であるCD−ROMは、単独で商取引の対象の商品とは認められないことから、本件書籍の付属品のCD−ROMに「B−right/V」の文字が記載されているとしても、これを本件書籍の識別標識としての標章とは認めることはできない。
イ 漢字用ソフトウェアの使用標章について
漢字用ソフトウェア又は漢字用ソフトウェアの包装に使用された標章は、漢字用ソフトウェア「超漢字V」のカタログ(乙3)からすると、漢字用ソフトウェアの名称である「超漢字V」の標章(以下「使用標章3」という。)及び当該ソフトウェアの製造者であるパーソナルメディア社の略称と認められる使用標章2であることが確認できる。
そして、本件商標「ビーライト」と使用標章2とが、社会通念上同一とは認められないことは、上記アのとおりである。
また、本件商標「ビーライト」と使用標章3は、これらの構成文字や称呼が明らかに相違することから、本件商標と使用標章3は、社会通念上同一とはいえない。
(4)使用商品の取引について
ア 本件書籍の取引について
本件書籍は、アマゾンにおいて販売されており、要証期間である平成28年(2016年)3月29日に、当該商品に関する発注があったことが認められる。
イ 漢字用ソフトウェアの取引について
パーソナルメディア社が製造した漢字用ソフトウェア「超漢字V SP1 簡易包装版」は、要証期間である平成31年(2019年)1月17日に、SB C&S社から同社あてに注文されたことが認められる。
(5)使用商品の宣伝広告について
ア 本件書籍の宣伝広告について
上記(4)アのとおり、本件書籍を販売するアマゾンにおいて、要証期間に発注があったことが認められることから、当該商品は、要証期間に、当該商品の販売を目的とする宣伝広告が行われたことは推認できる。
イ 漢字用ソフトウェアの宣伝広告について
上記(4)イのとおり、漢字用ソフトウェア「超漢字V SP1 簡易包装版」は、要証期間に、SB C&S社からパーソナルメディア社あてに注文されたことが認められることから、当該商品は、要証期間に、当該商品の販売を目的とする宣伝広告が行われたことは推認できる。
(6)小括
以上からすると、商標権者であるパーソナルメディア社は、同社の取り扱い係る商品である本件書籍について、販売を目的とした宣伝広告を行い、要証期間である平成28年(2016年)3月29日に販売(譲渡)したことが確認できるものである。
しかしながら、本件書籍は、本件審判請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品ではなく、また、当該商品に使用された使用標章1及び使用標章2は、本件商標「ビーライト」と社会通念上同一の商標とは認められないものである。
また、パーソナルメディア社は、同社の取り扱いに係る漢字用ソフトウェアについて、販売を目的とした宣伝広告を行い、要証期間である平成31年(2019年)1月17日に販売(譲渡)されたことが確認でき、かつ、コンピュータソフトウェアは、本件審判請求に係る指定商品中の「電子応用機器器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品と認められる。
しかしながら、漢字用ソフトウェアに使用された使用標章3及び使用標章2は、本件商標「ビーライト」と社会通念上同一の商標とは認められないものである。
その他、被請求人が提出した証拠を総合してみても、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、要証期間に、本件審判請求に係る指定商品について、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることを証明するものは見いだすことができない。
4 被請求人の主張について
(1)被請求人は、本件書籍は、ソフトウェア「B−right/V」の販売を促進するために、ソフトウェアの解説とともに体験版のCD−ROMをつけているものであるから、ソフトウェアの広告に該当する旨主張する。
しかしながら、本件書籍は、あくまでも「はじめてみようBTRON」をタイトルとする書籍として、取引されるものであり、その内容も、「BTRON」の解説書であることが推測できるものである。
また、本件書籍に付属されるCD−ROMは、OS「B−right/V」の体験版にすぎず、かつ、本件書籍の附属品のみを取引の対象とはしていない。
そして、被請求人が、「OS『B−right』は要証期間に単独では取引対象となっていない」と述べるとおり、パーソナルメディア社は、OS「B−right」について、要証期間にこれを商品として取引していないことからすると、本件書籍が、OS「B−right」の宣伝広告を目的としているとはいい難いものである。
(2)被請求人は漢字用ソフトウェアの広告物、パーソナルメディア社の会社広告物、パーソナルメディア社が「B―right/V」及び漢字用ソフトウェアの広告のために発行している書籍などにおいて、「B−rightはパーソナルメデイア株式会社の登録商標です。」等の記載内容により、本件商標と社会通念上同一と認められる「B−right」の商標を使用した旨を主張する。
しかしながら、パーソナルメディア社は、OS「B−right」について、要証期間にこれを商品として取引していないことからすると、漢字用ソフトウェアの広告物等に「B−rightはパーソナルメデイア株式会社の登録商標です。」との記載があるとしても、OS「B−right」を販売するために行われる宣伝広告とは認められないものである。
(3)被請求人は、「使用商標『B−right』と本件商標『ビーライト』は、称呼が同一であり、観念は生じない点で共通し、片仮名及び欧文字の表示を相互に変更するものであるから、社会通念上同一と認められる。」旨を主張する。
しかしながら、本件書籍に使用されると認められる標章は、「はじめてみようBTRON」及び「パーソナルメディア」であり、漢字用ソフトウェアに使用されると認められる標章は、「超漢字V」及び「パーソナルメディア」であって、「B−right」は、これらの商品に使用される商標とは認められないものである。
また、本件商標「ビーライト」は、特定の意味合いを有する語ではないため、これを欧文字で表記する場合、「B―right」の欧文字で表記される他、「B−light」の文字や「Be right」の文字で表記されることも考えられることから、仮に、被請求人が主張する「B−right」を本件書籍及び「超漢字V」の使用標章と認められるとしても、本願商標「ビーライト」と「B−right」は、「ビーライト」の称呼を共通にしたとしても、これらの外観は明らかに相違し、これらの観念が、共通するものではないため、本件商標「ビーライト」と「B−right」は、社会通念上同一の商標とはいえない。
よって、被請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
5 結論
以上のとおり、被請求人が提出した全証拠によっては、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、本件審判請求に係る指定商品のいずれかについて、商標法第2条第3号各号に規定する使用行為を行ったことを証明していない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。

(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2021-05-26 
結審通知日 2021-05-31 
審決日 2021-10-18 
出願番号 1996117554 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (009)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 小俣 克巳
豊田 純一
登録日 1998-05-15 
登録番号 4145321 
商標の称呼 ビーライト 
代理人 大塚 明博 
代理人 加藤 光宏 

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