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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W3043
管理番号 1381173 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-01-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-05-19 
確定日 2021-12-02 
異議申立件数
事件の表示 登録第6362185号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6362185号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6362185号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和元年12月12日に登録出願、第3類、第8類、第14類、第18類、第21類、第25類、第28類、第29類、第30類、第31類、第32類、第33類、第36類、第37類、第39類、第42類及び第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同3年2月4日に登録査定、同年3月11日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとして引用する商標は、以下のとおりであり、現に有効に存続しているものである。
登録第5543325号商標(以下「引用商標」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定商品及び指定役務 第30類及び第43類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成24年7月9日
設定登録日 平成24年12月14日

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標はその指定商品及び指定役務中、第30類「食品香料(精油のものを除く。),茶,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,みそ,ウースターソース,グレービーソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖(調味料),砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ(調味料),ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,うま味調味料,香辛料,穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ」及び第43類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,日本料理を主とする飲食物の提供,西洋料理を主とする飲食物の提供,中華料理その他の東洋料理を主とする飲食物の提供,アルコール飲料を主とする飲食物の提供,茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用調理台の貸与,業務用流し台の貸与,家庭用加熱器(電気式のものを除く。)の貸与,家庭用調理台の貸与,家庭用流し台の貸与,食器の貸与,おしぼりの貸与,タオルの貸与」については、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第39号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標及び引用商標について
本件商標は、3つの同一の正方形が同じ向きに三角形をなすように配置され、三角形の上の頂点に位置する正方形の左下の頂点と、三角形の左下の頂点に位置する正方形の右上の頂点とが接し、また、三角形の上の頂点に位置する正方形の右下の頂点と、三角形の右下の頂点に位置する正方形の左上の頂点とが接するように構成され、すべて黒色の図形である。本件商標は、後述するように家紋の一種を表したものであるが、当該家紋が一般によく知られているものとはいい難いことから、特定の事物及び事象を想起させるとはいえないため、特定の称呼及び観念を生じないといえる。
一方、引用商標は、3つの同一の若干縦長の長方形が同じ向きに三角形をなすように配置され、三角形の上の頂点に位置する長方形の左下の頂点と、三角形の左下の頂点に位置する長方形の右上の頂点とが接し、また、三角形の上の頂点に位置する長方形の右下の頂点と、三角形の右下の頂点に位置する長方形の左上の頂点とが接するように構成されるとともに、これらの長方形を取り囲むように円形が配置されて構成された、すべて萌黄色の図形である。引用商標は、後述するように家紋の一種を表したものであるが、当該家紋が一般によく知られているものとはいい難いことから、特定の事物及び事象を想起させるとはいえないため、特定の称呼及び観念を生じないといえる。
本件商標と引用商標を比較すれば、色及び円形の有無の違いはあるものの、本件商標の3つの正方形から構成される図形と、引用商標の円形を除いた3つの長方形から構成される図形とは、3つの矩形が同じ向きに三角形をなすように配置される基本的構成は同一であり、この部分において、色の有無以外の相違点は両者を対比観察して始めて認識し得る程度の微差にすぎない。また、両者においては円形の有無の違いはあるものの、看者に与える印象の骨格を決定付ける図形は、3つの矩形が同じ向きに三角形をなすように配置される基本的構成の部分であり、円形の有無によって格別異なる印象を与えるものとはいい難いから、両者は、図形全体として看者に極めて似通った印象を与えるものと認められる。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、3つの矩形が同じ向きに三角形をなすように配置される基本的構成が引用商標と共通しており、引用商標が有する当該基本的構成を囲む円形を有さない点で引用商標とは異なっているが、看者に与える印象の骨格を決定付ける図形である基本的構成が共通しているので、両者は外観上類似するといえる。
さらに、本件商標と引用商標の各指定商品及び指定役務は、共にほぼ日常の食品や食用の加工品及び日常的に受けるサービスであり、当該商品役務の性質上、一般消費者であるその需要者は、多くの場合、これに付された商標の一見した印象によって商品役務の出所を識別することが多いことは経験則上容易に推認し得るものである。係ることを併せ考慮すれば、円形の有無の違いはあるとしても、本件商標と引用商標をいずれも時と場所を異にして離隔的に観察した場合、需要者が両者を区別することは困難であると認められるから、本件商標と引用商標は、外観において類似するものというべきである。
加えて、取引の実情について検討する。
甲第3号証は、申立人のホームページに掲載されている店舗で提供するメニューであり、寿司や飲み物を主体とした飲食物の提供を行っている。また、甲第4号証及び甲第5号証は、申立人及びこれに関連するホームページに掲載されている店舗の持ち帰りメニュー及び売店における寿司や弁当等である。本件商標の第30類の指定商品「すし,弁当」、第43類の指定役務「飲食物の提供,日本料理を主とする飲食物の提供,アルコール飲料を主とする飲食物の提供」は、まさに申立人の主力商品役務と共通していることから、本件商標は、引用商標の周知・著名性とも相まって、本件商標が使用された寿司等、飲食物の提供をあたかも申立人の商品役務であるかのように出所において誤認混同を生じるおそれが大きい。
また、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務とは同一又は類似である。
したがって、本件商標は、引用商標と商標が類似し、商品及び役務が同一又は類似の商標であって、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 申立人の著名性について
(ア)申立人(以下「美登利寿司」という場合がある。)の歴史について説明する。美登利寿司は、飲食店の経営や食料品の販売を主としこれらに付帯関連する業務を遂行する企業である(甲6、甲7の1)。沿革としては、昭和52年に有限会社つちやを設立し寿司屋を開店し、同59年に店舗の屋号を「梅丘寿司の美登利」とした現新館を開店させた(甲7の1、甲8)。有限会社つちやは、その屋号について、平成4年に商標登録出願を行い、平成6年に商標登録第3033107号を受けている(甲9、甲10)。平成10年に「有限会社つちや」から「株式会社梅丘寿司の美登利総本店」に社名を変更(甲7の1、甲8)しつつ、この時期(平成9年〜同24年)順調に店舗数を増やしていった(甲7の1、甲7の2)。
そして、平成24年に、新会社として現在の株式会社梅丘寿司の美登利総本店が設立されている(甲6、甲7の1)。その後も、梅丘に持ち帰り専門の売店(甲5)、名古屋店、日本橋店、香港で3店、台湾で1店を開店させ(甲7の1、甲8)、現在では、合計18店舗を展開している(甲11)。
なお、美登利寿司は、寿司、刺身、飲み物を中心とした飲食物を提供する(甲3)と共に、飲食店でのテイクアウト(甲4)、テイクアウト専門の売店での弁当・惣菜を含めた飲食物等の販売(甲5)を行っている。
美登利寿司の売上は、平成27年ないし同29年(2015年〜2017年)にわたり、約48億円である(甲7の1、甲12)。これは、すし店を対象とした調査(甲13)によると、2017年1店当たり売上高22.9百万円から得られる18店舗の売上高412.2百万円、すなわち約4.1億円の12倍弱の売上高に相当する。また、同調査(甲13)によると、売上高で日本7位の位置にある(なお、同調査は、テイクアウト店は含まないので売上高は実際とは異なっている)。これは、非常に多くのすし店を経営する企業がある中で、美登利寿司は、最も成功している企業であるといっても差し支えないといえる。
(イ)美登利寿司は、多くの雑誌に取り上げられている(甲14、甲15)。
また、「すしの雑誌」(第13集2014年3月)では、その代表的なメニューやリニューアルされた銀座店が紹介され(甲16)、同誌(第14集2015年3月)では、美登利寿司の梅澤社長が語る繁盛店の店づくりについて紹介されている(甲17)。同じく、「すしの雑誌」(第20集2021年2月)では、美登利寿司の高い商品力について紹介されている(甲18)。
さらに、インターネットの記事では、美登利寿司は、外国人にも人気の日本のレストランとして6位に紹介されている(甲19)。
(ウ)美登利寿司は、現在においても非常に多くの需要者から支持をうけている。美登利寿司のホームページでは、店舗毎に入店までにどれくらいの待ちがあるのかを確認できる(甲11)。この店舗毎に示される組数は、2021年4月16日午後6時過ぎの待ち状況を示しており、まん延防止等重点措置期間中にも拘わらず、どの店舗でも事実上行列ができている状況を示している。
(エ)このように、美登利寿司は、飲食店において著名であるといえる。
イ 申立人の商標及びその周知・著名性について
(ア)申立人が引用する商標は、申立人の美登利寿司が有する商標登録(商標登録出願を含む。)に共通して含まれる図形商標である。美登利寿司は、引用商標以外に、商標登録第6017585号(甲20)、商標登録第6017587号(甲21)、商願2021−012038(甲22)を有しており、これらすべての商標には、引用商標の図形が含まれている。このように、引用商標の図形は、「美登利」などの識別力を有する文字と組み合わせて使用され、後述するように長年にわたり店舗や販売のあらゆる場面で使用されることで、自他商品又は自他役務の識別標識としての機能を有するものである。
(イ)引用商標を構成する当該図形は、創業家の家紋から由来している。
したがって、引用商標は、申立人にとっては、他者の図形商標を模倣するようなものではなく、自らの出自を表す重要な図形であるとの認識を持っている。
(ウ)「おとなの週末」(No.71 2008年9月)では、紹介された渋谷店の外観の写真から、引用商標は、店舗の看板やのれんに使用されていることが認識できる(甲14)。
したがって、引用商標は、平成24年(2012年)の出願であるが、申立人は少なくとも平成20年(2008年)から店舗ののれんなどに使用していたことがわかる。
現在においては、引用商標は、すべての店舗の外観に表れるのれんや看板に使用されている(甲11、甲25)。また、店舗内でも、のれんや壁面に使用されている(甲16)。さらに、店舗で飲食物とともに提供されるはし袋、おしぼり袋、マスクケースにも使用されている(甲26の1)。加えて、店舗でサービスする店員のユニフォーム、帽子、名札にも使用されている(甲26の2)。
(エ)このように、当該図形の引用商標は、10年以上にわたり店舗や販売のあらゆる場面で使用されており、行列ができるほどの著名な美登利寿司の商標として広く認知されている商標であることが理解される。
ウ 出所混同の可能性について
上記(1)のとおり、本件商標と引用商標の一部は、3つの矩形が同じ向きに三角形をなすように配置される基本的構成は同一であり、円形の有無の違いがあることを考慮しても、需要者に与える基本的な印象において相違があるものではない。
そして、本件商標が飲食物や飲食物の提供に使用される場合、引用商標が飲食物や飲食物の提供に使用される態様と同じ態様で使用することが想定される。
本件商標の商標権者は、元来、書店経営を主として事業を営んできていると認められ、日本では、「誠品生活日本橋」として店舗(東京都中央区)を有している(甲27)。当該店舗では、ビルの2階の1フロアすべての領域に本件商標の商標権者と飲食物販売及び飲食物提供を行う関連業者が一体的に事業を展開している(甲28、甲29)。
上記のような状況に鑑みると、上記した現在の商標の使用状況はそれぞれの個別事情にすぎず、当該指定商品及び指定役務の分野における一般的、恒常的な取引の実情を考慮すると、本件商標の権利者が本件商標を飲食物や飲食物の提供に使用したり、またはこれらに類似する指定商品又は指定役務に使用した場合、需要者が著名な申立人の引用商標を想起し、申立人と経済的・経営的な関連性のある企業が行っているものと誤認・混同を生じる可能性が高いといえる。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。
(ア)申立人は、昭和52年創業の寿司屋であり、昭和59年に店舗の屋号を「梅丘寿司の美登利」とし、都内を中心に店舗(テイクアウト店も含む。)を増やしていき、平成24年に株式会社梅丘寿司の美登利総本店が設立され、その後、都内店舗の他には、平成29年に名古屋店、同30年ないし令和元年に香港店(3店)及び令和2年に台湾に開店し、現在18店舗を展開している(甲3〜甲11)。
(イ)申立人の売上は、平成27年ないし同29年(2015年〜2017年)に、約48億円超の年商があった(甲7の1、甲12)。
また、「外食産業マーケティング便覧2018 No.2」(2018年8月27日 株式会社富士経済発行)によれば、「すし」(「定義・範ちゅう」は、「客単価:1,500円以上、メニュー:すしをメインに販売、対象外:回転ずし,テイクアウトずし,宅配ずし」)の「5.市場占有状況」の項目において、申立人のシェアは、2017年は0.3%(売上高26億円)、2018年(見込)も0.3%(売上高26.5億円)である(甲13)。
(ウ)すし店を特集した、雑誌「おとなの週末」(2008年9月)において、都内人気スポットのすし店の10位に「梅丘寿司の美登利渋谷マークシティ店」が選ばれ、同誌の「有名16大チェーン」の特集において、「梅丘寿司の美登利総本店」の銀座店及び二子玉川店が覆面取材されて総合1位となり(甲14)、同「おとなの週末」(2010年9月)においては、「人気15大寿司チェーン覆面食べ比べ採点表」で「梅丘寿司の美登利総本店」の銀座店及び赤坂店が覆面取材されて5位となった(甲15)。
また、「すしの雑誌」(2014年3月、2015年3月、2021年2月)において、申立人の店舗及び申立人代表者のインタビューが掲載されている(甲16〜甲18)。
そして、2014年10月7日付けインターネット記事において、「口コミで選ばれた『日本のレストラン トップ10』」において、「梅丘寿司の美登利総本店 渋谷店」が6位に選ばれている(甲19)。
(エ)引用商標は、申立人の店舗の看板、のれん、従業員の制服、店舗メニュー、箸袋等に表示されている(甲3〜甲5、甲25、甲26)。
イ 上記アによれば、申立人は、商品「すし」の販売及び役務「すしを主とする飲食物の提供」を業務とする企業であって、申立人のウェブサイトから、申立人の店舗の看板、のれん等で引用商標が使用されていることはうかがえるものの、これがいつから使用され、一般需要者にどの程度認識されているかは確認できない。
申立人は、平成27年ないし同29年の売上高は約48億円であり、日本7位の位置にあると主張し、また、民間調査による外食産業マーケティングの調査(甲13)をあげているが、引用商標を使用した商品「すし」の売上高や「すしを主とする飲食物の提供」についての提供実績を示す主張はなく、その証左は見いだせない。
さらに、雑誌に掲載された内容を見ても、申立人の店舗に関する記事であって、この記事から引用商標の使用状況を把握することができず、引用商標の周知性の程度を推し量ることができない。
加えて、申立人は、引用商標の他に引用商標の図形が含まれている2件の登録商標と出願中の商標を有していると主張するが、それらが直ちに我が国における引用商標の周知性に結びつくものとはいえない。
したがって、提出された証拠によっては、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、黒色の同一の正方形三個を凸形状のように配置し、中央に位置する正方形の左下の頂点と左下に位置する正方形の右上の頂点とが接し、また、中央に位置する正方形の右下の頂点と右下に位置する正方形の左上の頂点とが接するように、一体的に組み合わせた図形よりなるものである。
そして、本件商標は、上記の特徴的な構成による組合せがバランスよく結合しており、その構成全体がまとまりのある一体のものとして、需要者に強く印象付けられるものであって、同一の正方形をモチーフとした特異性のある図形を表したものと認識させるものである。
また、上記図形からなる本件商標は、特定の事物等を表すものとして認識されるというべき事情は見いだせないから、これより特定の称呼及び観念は生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、緑色の太線で描いた円の中に緑色の同一の縦長四角形三個を凸形状のように配置し、中央に位置する縦長四角形の左下の頂点と左下に位置する縦長四角形の右上の頂点とが接し、また、中央に位置する縦長四角形の右下の頂点と右下に位置する縦長四角形の左上の頂点とが接するように一体的に組み合わせた図形からなるものである。
そして、引用商標は、上記の特徴的な構成による組合せがバランスよく結合しており、その構成全体がまとまりのある一体のものとして、需要者に強く印象付けられるものであって、円形と同一の縦長四角形をモチーフとした特異性のある図形を表したものと認識させるものである。
また、上記図形からなる引用商標は、特定の事物等や特定の紋章(家紋)を表すものとして認識されるというべき事情は見いだせないから、これより特定の称呼及び観念は生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標を比較するに、本件商標は、黒色の色彩を含め、その構成全体をもって、同一の正方形をモチーフとした図形であって、引用商標は、緑色の色彩を含め、円と同一の縦長四角形をモチーフとした図形として看取されるものであるから、両者は、商標全体としての構成態様において明らかに相違するものであり、かつ、構成全体のそれぞれから受ける印象が大きく異なり、両商標を対比観察した場合はもとより、時と処を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上、十分に区別し得るものであり、相紛れるおそれはないというべきである。
また、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから、称呼及び観念においては比較できないものである。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼及び観念において比較できないものの、外観において顕著に相違するものであるから、両商標を全体的に考察すれば、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標の指定商品及び指定役務が引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似するものであるとしても、商標法第4条第1項第11号に該当するものとはいえない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
そして、本件商標は、上記(2)ウのとおり、引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であり、類似性の程度は高いとはいえないものであるから、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想又は想起することはないものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品又は役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、登録異議の申立てに係る指定商品及び指定役務について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものとはいえず、他に同法43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

別掲1 本件商標





別掲2 引用商標(色彩は原本参照)





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異議決定日 2021-11-24 
出願番号 2019166022 
審決分類 T 1 652・ 261- Y (W3043)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 小松 里美
小俣 克巳
登録日 2021-03-11 
登録番号 6362185 
権利者 誠品股▲ふん▼有限公司
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 
代理人 鈴木 康裕 

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