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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W35
管理番号 1381172 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-01-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-05-15 
確定日 2021-12-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第6356519号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6356519号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6356519号商標(以下「本件商標」という。)は、「スーパー戦隊アルプスエイト」の文字を標準文字で表してなり、令和元年10月25日に登録出願、別掲1のとおりの商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同3年2月17日に登録査定、同月26日に設定登録されたものである。

2 引用商標等
(1)引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第3216126号商標(決定注:甲第9号証によれば、登録第3216129号商標の誤記と認める。以下同じ。以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおり「スーパー戦隊」の文字を横書してなり、平成6年2月15日登録出願、第28類「遊戯用器具,ビリヤ―ド用具,囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲ―ム,チェス用具,チェッカ―用具,手品用具,ドミノ用具,マ―ジャン用具,おもちゃ,人形」を指定商品として、同8年10月31日に設定登録され、その後、同18年10月17日及び同28年10月4日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものであり、現に有効に存続しているものである。
(2)使用商標
申立人が、本件商標の登録出願日より前に申立人が制作した、特撮テレビドラマシリーズを指称する著名な商標であると主張する商標は、「スーパー戦隊」の文字(以下「使用商標」という場合がある。)からなるものである。

3 登録異議の申立ての理由(要旨)
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとともに、同法第3条第1項柱書の要件を具備しないものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標は、「スーパー戦隊アルプスエイト」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「スーパー戦隊」の文字は、本件商標の登録出願日より44年前の1975年から、東映株式会社(申立人)が制作し、テレビ朝日系列が全国に放映してきた、子供向け特撮ヒーロー番組シリーズ名である。
そして、この番組シリーズの視聴率が高水準を保っていること、長年にわたって堅調な売れ行きを見せているライセンス商品の販売においても自他商品識別標識、出所識別標識として使われてきたことからすると、その人気は高いものがある。
一方、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、自らが運営する複数のスーパーマーケットの広告において、申立人の「スーパー戦隊」と同じ文字列を含み、本件商標と同一の「スーパーセンタイアルプスエイト」との称呼を生じる「スーパー戦隊アルプス8」を、申立人の「スーパー戦隊」シリーズに登場するキャラクターである集団のヒーローの本質的特徴である、赤、青及び黄色等のヘルメット、コスチューム、文字や図柄が記載された大きなバックルを付したベルトと白い手袋とブーツを模倣し、パロディ調に寸胴に描いたキャラクターとともに使用している(甲2〜甲4)。
そうすると、本件商標権者が、本件商標を選択したことが偶然の一致とは認め難く、また、本件商標権者において一から創造した語とも認め難い。むしろ、これらの事実からすれば、本件商標権者は、申立人の「スーパー戦隊」が広く普及していることを知りながら、その需要者らも日常的に利用する小売市場等に関する役務について、その著名性を自ら経営するスーパーマーケットの顧客吸引に用いる目的で、申立人の「スーパー戦隊」に準拠し、これを剽窃して登録出願したといわざるを得ない。
このため、本件商標は、その指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するし、登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するので「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」に該当する。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性
本件商標の構成中「スーパー戦隊」の文字は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願日より44年前の1975年から、申立人が制作し、テレビ朝日系列が全国に放映してきた、特撮テレビドラマシリーズを指称する著名な商標である。
すなわち、1975年4月5日に、申立人が制作した子供向け特撮テレビドラマ「秘密戦隊ゴレンジャー」がテレビ朝日系列で全国放送されて人気を博し、このコンセプトを引き継いだ集団のヒーローから構成される番組がシリーズものの特撮テレビドラマシリーズがほぼ毎年放映され、シリーズを継続していく中で、「○○戦隊」という呼称やヒーローの変身にアイテムを使用するスタイルが確立して、「スーパー戦隊」シリーズとして毎年間断なく放映されるようになり、現在放送中の「機界戦隊ゼンカイジャー」を含め全45作品が、放映されている(甲5)。
この「スーパー戦隊」シリーズは、メインターゲットである未就学男児を持つ家庭において非常に高い人気を誇っており、直近3年間で放送された「騎士竜戦隊リュウソウジャー」、「魔進戦隊キラメイジャー」及び「機界戦隊ゼンカイジャー」の未就学男児平均視聴率がいずれも10%を超えている。少子化やテレビ離れが叫ばれる昨今においても依然として高水準を保っていること(甲6)、毎年間断なく放映されてきたことから、「スーパー戦隊」が著名な商標であることは疑いようがない。
また、「スーパー戦隊」は、特撮テレビドラマシリーズの放映の他、例えば申立人から許諾を受けた株式会社バンダイ(以下「バンダイ社」という。)が「スーパー戦隊」に登場するキャラクターが着用する武器やベルト等のアイテムを子供向け玩具として販売する際にも「スーパー戦隊」を自他商品識別、出所識別の標識として商品に使用しながら販売し続けてきた(甲7)事実からすると、「スーパー戦隊」は申立人が制作しテレビ朝日系列で放映されているテレビ番組のみを指称するのではなく、申立人から許諾を受けたバンダイ社のような申立人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務を指称するものとして広く認識され著名性を獲得していることは明らかである。
本件商標は、このように広く認識され著名な「スーパー戦隊」と文字列「アルプスエイト」を結合した商標であるので、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認されるし、特段、反証となる事実も見当たらないので、商品又は役務の出所の混同のおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性
本件商標の構成中「スーパー戦隊」の文字は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願日より44年前の1975年から、申立人が制作し、テレビ朝日系列が全国に放映してきた、特撮テレビドラマシリーズを指称する著名な商標である。
この「スーパー戦隊」に周知性があることは、「スーパー戦隊」シリーズと「秘密戦隊ゴレンジャー」については、需要者の間で広く認識されていることは、審決が「その人気は高いものである」などとしてこれを認めている(甲8)ことからも明らである。
そして、本件商標は、需要者の間で広く認識されている「スーパー戦隊」に「アルプスエイト」を結合させたものであるから、「スーパー戦隊」に類似することは明らかである。
また、本件商標の指定役務のうち、少なくとも「紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び「おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供」に関しては、申立人は「スーパー戦隊」を食玩や文具にライセンスしている(甲6)。このため、これらの商品と上記指定役務との間では、商品と役務の用途の一致、販売場所と役務提供場所の一致、需要者の範囲の一致が見られ、類似する。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性
本件商標は、申立人やバンダイ社の商品又は役務を表示するものとして少なくとも日本国内の需要者に広く認識されている商標「スーパー戦隊」と類似の商標である上、「スーパー戦隊」と「スーパー戦隊アルプスエイト」とは、著名であり人目をひく「スーパー戦隊」の部分において外観及び称呼を全く同じくするものであるから、互いに極めて類似するものといえる。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第11号該当性
本件商標は引用商標と外観「スーパー戦隊」及び称呼「スーパーセンタイ」を共通にし、類似する。
また、指定商品及び指定役務も、少なくとも本件商標の「おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、引用商標の指定商品との間で商品又は役務の用途の一致、販売・役務の提供場所の一致、需要者の一致等が見られ類似するので、互いに抵触し類似する。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(6)商標法第3条第1項柱書について(使用意思なし)
ア 本件商標権者は、本件商標で指定する役務につき商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないとの拒絶理由通知書(令和2年10月19日)に対して、令和2年12月23日に意見書と「商標の使用を開始する意思」(甲10)と「事業計画書」(甲11)を提出して、「出願人は、本件商標について、指定した小売等役務の全てについて、『近い将来使用をする』意思と計画を有しております。」との、本件商標の使用意思があると主張する。
イ しかしながら、本件商標権者が提出した甲第10号証及び甲第11号証からは、本件商標権者が広範にわたって指定したそれぞれの小売等役務についての具体的な使用の意思と使用の予定をうかがわせる記載がなされているとはいい難く、使用の意思が証明されたと認めることはできない。
本件商標権者は、この点につき、「本件商標の指定役務が広範である点は、出願人も認めるに吝かではありません。しかしながら、それはいわゆるスーパーマーケットを業とする出願人の扱い商品が広範にわたること、及び本件商標が特定の商品商標として使用されるものではなく、出願人の営業を広く表象する目的で、マスコットの図形とともに(その名称として)使用されること、の帰結にすぎません」と主張する。
しかしながら、例えば、指定役務中「写真機械器具及び写真材料の小売又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、スーパーマーケットの小売等役務とはいい難いものであり、本件商標権者提出の甲第10号証及び甲第11号証からも、このことに言及がないなど、本件商標権者の主張には合理的な根拠が見出しがたい。
してみれば、本件商標権者が指定する広範な小売等役務については、本件商標権者の使用の意思を認めることができない。
したがって、本件商標は商標法第3条第1項柱書の要件を具備していない。

4 当審の判断
(1)商標法第3条第1項柱書該当性について
商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用している商標、あるいは、将来、自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(知的財産高等裁判所平成24年(行ケ)第10019号、平成24年5月31日判決言渡)。
そうすると、本件商標権者が、本件商標の登録査定時において、本件商標を自己の業務に係る指定役務について現に使用していなくとも、将来においてその使用をする意思があれば、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するといえるところ、申立人が提出する全証拠によっては、本件商標の登録査定時において、将来、自己の業務に係る指定役務に本件商標を使用する意思を有していたことを否定するに足りる事実は見いだせない。
申立人は、本件商標権者が審査において提出した甲第10号証及び甲第11号証からは、本件商標権者が広範にわたって指定したそれぞれの小売等役務についての具体的な使用の意思と使用の予定をうかがわせる記載がなされているとはいい難く、使用の意思が証明されたと認めることはできない旨主張している。
しかしながら、本件商標権者が、本件商標の登録査定時において、将来、自己の業務に係る指定役務に本件商標を使用する意思を有していたことを否定するに足りる事実は見いだせないものであり、また、そのような証拠の提出も見当たらない。仮に、スーパーマーケットの小売業とはいい難い役務が含まれているとしても、当該事実をもって本件商標権者が将来にわたり、本件商標を自己の業務に係る指定役務に使用する意思がないということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。
(2)引用商標及び使用商標の周知性について
ア 申立人の提出に係る証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)フリー百科事典ウィキペディア(甲5)によれば、「スーパー戦隊シリーズ」と題して、「スーパー戦隊シリーズは、日本の特撮テレビドラマシリーズ。ウルトラシリーズ・仮面ライダーシリーズとともに、およそ46年にわたって放映されている長寿シリーズである。数名がチームを組み色分けされたマスクとスーツで武装したヒーローに変身し、主に赤色のヒーローを中心として怪人と戦うストーリーがドラマの基本コンセプトとなっている。世界80か国で放映。」の記載がある。
(イ)申立人のテレビ商品化権営業部が作成した令和3年5月13日付けの陳述書(甲6)によれば、「スーパー戦隊シリーズ」は、1975年から申立人が製作し、テレビ朝日系列で全国放映し、主に子供向けの特撮テレビドラマシリーズであること、現在の放映で45作品(45年間)が放映されていること、視聴率も直近3年間で平均10%を超えていること、バンダイ社からスーパー戦隊シリーズの玩具が販売されていることなどが陳述されている。
(ウ)バンダイ社のメディア部が作成した令和3年5月12日付陳述書(甲7)によれば、スーパー戦隊シリーズは申立人が製作する特撮テレビドラマシリーズであること、バンダイ社がスーパー戦隊シリーズの玩具を販売していることなどが陳述されている。
イ 上記アの事実によれば、「スーパー戦隊シリーズ」は、申立人が製作する特撮テレビドラマシリーズであり、1975年から45年間にわたり45作品がテレビにおいて放映され、当該シリーズの玩具がバンダイ社から販売されていることはうかがい知れるものの、提出された証拠からは申立人及びバンダイ社が、スーパー戦隊シリーズにおけるテレビ放送の直近3年間の視聴率やバンダイ社に係る販売商品について、陳述書(甲6、甲7)において述べるにとどまり、申立人の業務に係る商品及び役務(以下「申立人商品等」という。)の販売実績、売上高、市場シェア、宣伝広告の規模(宣伝広告の金額、期間、時期、回数、地域)等の詳細は明らかにしていない。
また、提出された証拠を見ると、スーパー戦隊シリーズは、一作目の「秘密戦隊ゴレンジャー」を始め「電子戦隊デンジマン」、「太陽戦隊サンバルカン」及び「機界戦隊センカイジャー」等の名称を使用しており、「スーパー戦隊」は、これらの戦隊もののシリーズの総称として使用されているものであり、引用商標及び使用商標をもって、需要者の間に広く認識されている状態にあると判断することができない。
その他、引用商標及び使用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間において広く認識されていたことを示す具体的な証拠はない。
そうすると、「秘密戦隊ゴレンジャー」、「電子戦隊デンジマン」、「太陽戦隊サンバルカン」及び「機界戦隊センカイジャー」等が、申立人の製作する特撮テレビドラマとして、また、バンダイ社が商品「玩具」に使用するものとして、我が国の未就学男児を持つ家庭において知られているとしても、引用商標及び使用商標は、これらの戦隊もののシリーズの総称として使用されているものであり、引用商標及び使用商標をもって、需要者の間に広く認識されている状態にあると判断することができず、我が国及び外国における販売実績、売上高、市場シェア、宣伝広告宣伝の規模等を裏付ける証左は見いだせないから、申立人の提出に係る甲各号証を総合して考察してみても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標及び使用商標が、申立人商品等を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
(3)商標法第4条第1項第11号該当性について、
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「スーパー戦隊アルプスエイト」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成は、同じ大きさ、同じ書体、等しい間隔をもって、まとまりよく一体的に表されているものである。
また、構成全体から生じる「スーパーセンタイアルプスエイト」の称呼も、やや冗長といえるとしても、よどみなく一気一連に称呼できるものである。
そうすると、本件商標は、まとまりよく一体的な構成であって、「アルプスエイト」の文字部分を省略し、「スーパー戦隊」の文字部分のみをもって取引に資されるとはいい難いこと及びその構成文字のいずれかが強く支配的な印象を有するとすべき特段の事情も見いだせないことから、一連一体の一種の造語として認識し把握されるとみるのが自然である。
その他、本件商標の構成中の「スーパー戦隊」の文字部分のみが強く支配的にみるべき特段の事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「スーパーセンタイアルプスエイト」の称呼のみを生じるものといわなければならず、観念については、その構成全体をもって特定の意味を有しない造語を表したものとして認識、把握されるというべきであり、これより特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は、上記2のとおり、「スーパー戦隊」の文字からなるところ、その構成文字に相応して、「スーパーセンタイ」の称呼を生じ、観念については、一種の造語とみるのが相当であるから、その構成全体をもって特定の意味を有しない造語を表したものとして認識、把握されるというべきであり、これより特定の観念は生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、外観については、両者とも「スーパー戦隊」の文字を共通にするが、後半の「アルプスエイト」の文字の有無の差異が生じるものであるから、外観上、明確に区別し得るものである。
次に、称呼については、本件商標から生じる「スーパーセンタイアルプスエイト」の称呼と引用商標から生じる「スーパーセンタイ」の称呼は、「スーパーセンタイ」の音を共通にしているとしても、後半において「アルプスエイト」の音の有無に顕著な差異があるため、構成音及び構成音数の差異により、称呼上、明確に区別し得るものである。
さらに、観念については、本件商標及び引用商標は、共に特定の観念を有しない造語であるから、観念において比較することができない。
してみると、本件商標は、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれがなく、両者の外観、観念、称呼によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標である。
その他、本件商標と引用商標とが類似するというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品とが類似するものであるとしても、本件商標と引用商標は、非類似の商標であるから商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第10号該当性について
上記(2)のとおり、使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人)の業務に係る商品等を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。
また、上記(3)のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、引用商標と構成文字を同じくする使用商標とも非類似の商標である。
そうすると、本件商標は、他人(申立人)の業務に係る商品等を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標とはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(2)のとおり、使用商標は、他人(申立人)の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
また、上記(4)のとおり、本件商標と使用商標とは非類似の商標である。
そうすると、本件商標に接する取引者、需要者が、使用商標を想起又は連想することはないというべきであるから、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定役務について使用しても、その役務が他人(申立人)又はこれと組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと認めることはできない。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(6)商標法第4条第1項第19号該当性について
上記(2)のとおり、使用商標は、本件商標の登録出願日及び登録査定日において、申立人商品等を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、上記(4)のとおり、本件商標と使用商標とは非類似の商標である。
そして、申立人が提出した証拠からは、本件商標は、使用商標の信用、名声に便乗するものといえないし、かつ、使用商標の顧客吸引力を希釈化させ、その信用、名声を毀損するなど不正の目的をもって使用をするものというべき証左は見いだせないから、本件商標は、不正の目的をもって使用するものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(7)商標法第4条第1項第7号該当性について
商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き、その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には、その商標は商標法第4条第1項第7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし、同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として、商標自体の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること、及び、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(東高裁平成14年(行ケ)第616号、平成15年5月8日判決)。
本件において、本件商標権者は、申立人の「スーパー戦隊」が広く普及していることを知りながら、その需要者らも日常的に利用する小売市場等に関する役務につき、その著名性を自ら経営するスーパーマーケットの顧客吸引に用いる目的で、申立人の「スーパー戦隊」に準拠し、これを剽窃して商標登録出願した旨主張している。
しかしながら、上記(2)のとおり、使用商標は、申立人商品等を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、上記(6)のとおり、本件商標は、使用商標の信用、名声に便乗するものといえず、かつ、使用商標の顧客吸引力を希釈化させ、その信用、名声を毀損するなど不正の目的をもって使用をするものというべき証左は見いだせない。
そして、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないこと明らかであり、本件商標をその指定役務に使用しても社会の一般的道徳観念に反するとはいえず、また、本件商標が、他の法律によって使用が禁止されているとかいった事実も見当たらず、さらに、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事実も見いだせない。
そうすると、申立人の主張するところをすべて考慮しても、本件商標の登録出願から商標権取得に至る行為を不当ということはできないし、かつ、本件商標の登録出願が不正の目的でなされたということもできないから、本件商標を登録出願し商標権を取得した行為が著しく社会的妥当性を欠き、その登録を容認することが商標法の目的に反するということはできず、本件全証拠によっても本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(8)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書並びに同法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲1(本件商標の指定役務)
第35類「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おむつの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食肉の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食用水産物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,米穀類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,牛乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,手動利器・手動工具及び金具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,花及び木の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,燃料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,写真機械器具及び写真材料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,たばこ及び喫煙用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ペットフードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」

別掲2(引用商標)


(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2021-11-30 
出願番号 2019137221 
審決分類 T 1 651・ 18- Y (W35)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 豊田 純一
榎本 政実
登録日 2021-02-26 
登録番号 6356519 
権利者 株式会社スーパーアルプス
商標の称呼 スーパーセンタイアルプスエイト、スーパーセンタイ、アルプスエイト 
代理人 鳥海 哲郎 
代理人 小林 彰治 
代理人 村下 憲司 
代理人 福田 純一 
代理人 田中 克郎 

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