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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1381137 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-01-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-17 
確定日 2021-08-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第6255112号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6255112号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6255112号商標(以下「本件商標」という。)は、「RYZZO」の文字を標準文字で表してなり、令和元年7月26日に登録出願、第9類「計算機,コンピュータ周辺機器,ノートブック型コンピュータ,ラップトップ型コンピューター用保護ケース,タブレット型コンピュータ,コンピュータハードウエア,ナビゲーション装置,着用可能なアクティビティトラッカー,スピーカー用筐体,携帯型メディアプレーヤー,ビデオゲーム遊戯用仮想現実用ヘッドセット,セットトップボックス,カメラ(写真用のもの),スライド映写機,望遠鏡,事故防止用身体防護具,盗難防止用電気式設備,バッテリーチャージャー,電気自動車・電動機付き自転車などの電気車両用バッテリー充電装置,動物の訓練用電子式首輪」を指定商品として、同2年5月22日に登録査定され、同月28日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議申立ての理由に該当するとして引用する商標は次のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第5941057号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 RYZEN(標準文字)
指定商品 第9類「半導体デバイス,半導体チップ,半導体,コンピュータハードウェア,マイクロプロセッサモジュール,1つ以上のマイクロプロセッサ・中央演算処理装置(CPU)・CPUコア及びこれらを作動させるためのコンピュータソフトウェアからなるマイクロプロセッサ装置,コンピュータ,コンピュータグラフィック用コンピュータソフトウェア,コンピュータ用チップセット,高精細度グラフィックチップセット,集積回路,グラフィックプロセッサ,中央演算処理装置(CPU)とグラフィックプロセッサー(GPU)の機能を兼ね備えたコンピュータチップ,グラフィックカード,ビデオカード,ビデオゲーム用ソフトウェア,コンピュータソフトウェア,バーチャルリアリティ用ヘッドセット,コンピューターワークステーション(ハードウェア),コンピュータサーバー,半導体ドライブ,揮発性メモリ,ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ,電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」
登録出願日 平成28年10月25日
優先権主張日 2016年7月25日 アメリカ合衆国
設定登録日 平成29年4月14日
(2)登録第6303192号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲のとおり
指定商品 第9類「半導体デバイス,半導体チップ,半導体,コンピュータハードウェア,マイクロプロセッサモジュール,1つ以上のマイクロプロセッサ・中央演算処理装置(CPU)・CPUコア及びこれらを作動させるためのコンピュータソフトウェアからなるマイクロプロセッサ装置,コンピュータ,コンピュータグラフィック用コンピュータソフトウェア,コンピュータ用チップセット,高精細度グラフィックチップセット,中央演算処理装置(CPU)とグラフィックプロセッサ(GPU)の機能を兼ね備えたコンピュータチップ,集積回路,グラフィックプロセッサ(GPU),グラフィックカード,ビデオカード,ビデオゲーム用ソフトウェア,コンピュータソフトウェア,バーチャルリアリティ用ヘッドセット,コンピュータワークステーション(ハードウェア),コンピュータサーバー,半導体ドライブ,揮発性メモリ,ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM),電子応用機械器具及びその部品」
登録出願日 令和元年6月21日
設定登録日 令和2年10月13日
以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項15号、同項第19号又は同法第8条第1項に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項について
ア 商標の類似
(ア)本件商標は、「RYZZO」の文字を標準文字で表してなるものである。
他方、引用商標1は、「RYZEN」の文字を標準文字で表してなるものであり、引用商標2は、「RYZEN」の文字を横書きに表し、これに重なるように毛筆で表したかのような一部(下部)が開いた薄墨色の円図形を配してなるものである。
(イ)本件商標及び引用商標は、上記態様からなるものであり、その文字要素は、外観上、語頭の3文字「RYZ」を共通にする。また、本件商標の第4文字目の「Z」と引用商標の第4文字目の「E」は、文字の上下に2本の横線を配する点で共通するし、また、これらの2本線に挟まれる斜線(「/」)と縦線及び横線の組合せ(「├」)は、一見して必ずしも容易には判別できない。殊に、商標(を構成する文字)が必ずしも大きく表示されるとは限らないことを勘案すると、上記差異により「Z」と「E」を外観上瞬時に判別できないと考えても不自然ではない。
してみれば、本件商標と引用商標(の文字要素)とは、いずれも5つの欧文字からなるところ、そのうち「RYZ」の3文字が共通し、他の1文字「Z」と「E」が相紛れる可能性も否定できず、そのため、語尾に位置する「O」と「Z」の差異があるとしても、本件商標と引用商標とを、外観上、容易に峻別することができない場合もあると考えるのが相当である。
(ウ)各商標の称呼を比較すると、語頭が「ry(Ry)」から始まる英単語は、「Ryan(ライアン;人名)」「Ryle(ライル;人名)」「rye(ライ;ライムギ)」のように「ライ」と称呼されることが一般的であるから、本件商標からは、その構成文字に相応し「ライッゾ」との称呼が、引用商標(の文字要素)からは「ライゼン」との称呼が、それぞれ生じる。
なお、「Ryzen(ライゼン)」は、申立人が製造販売するマイクロプロセッサシリーズのブランドであり(甲4、甲5)、2016年12月に使用開始(2017年3月に該製品の販売開始)がされている。
本件商標及び引用商標から生ずる称呼を比較すると、両称呼は、商標の識別上最も重要な要素を占める語頭の2音「ライ」が共通する。また、これに続く「ッゾ」と「ゼ」についても、促音「ッ」が強く響く「ゾ」に吸収され必ずしも明瞭には聴取されないこと、「ゾ」と「ゼ」が同行に属する音であるのみならず、それらの母音「o」と「e」がともに舌面位置を中位とする半開き母音という近似音であること、さらには引用商標の語尾音「ン」が明瞭に発音・聴取されないことを勘案した場合、本件商標及び引用商標を一連に称呼した場合、全体の語感、語調は近似したものとして聴取される。
いずれの商標においても、語頭の「ラ」及びザ行に属する「ゾ」又は「ゼ」が、他の要素(他の文字から生ずる音)に比して、より明瞭に発音(聴取)されることに疑いの余地はないから、本件商標と引用商標とは、称呼においても、相紛らわしい類似商標というのが相当である。
(エ)本件商標「RYZZO」と引用商標(の文字要素)「RYZEN」は、いずれも辞書等に掲載されている既存の単語ではない。
よって、いずれの商標の文字要素からも特定の観念は生じない。
すなわち、本件商標及び引用商標との間には、これらの商標を峻別可能とする程に顕著な観念上の相違は認められない。
してみれば、本件商標から「アドバンスト マイクロ デバイシズ インコーポレーテッドのブランド」といった観念が生じないとしても、これをもって外観及び称呼における近似性が減殺されることにはならず、総合的に観察すると、本件商標と引用商標とが極めて似通った印象を与え、誤認混同を生じ得ることに疑いの余地はない。
イ 商品の類似
商品間の類似性を検討するに、本件商標に係る指定商品のうち、「コンピュータ周辺機器,ノートブック型コンピュータ,ラップトップ型コンピューター用保護ケース,タブレット型コンピュータ,コンピュータハードウエア,ビデオゲーム遊戯用仮想現実用ヘッドセット」は、生産・販売部門、用途、需要者の範囲が一致し、また、完成品と部品との関係が認められる商品も存在する。
よって、本件商標に係る指定商品と、引用商標に係る指定商品は、互いに類似するものである。
ウ 先後願
本件商標は、引用商標の後願に当たる。
エ 小括
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同法第8条第1項に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号について
ア 本件商標と引用商標とが、外観及び称呼上極めて近似し、これらが使用された商品の出所について混同のおそれが存することは、上記(1)のとおりである。
イ 引用商標(の文字要素)「RYZEN」は、上記のとおり、申立人が製造販売するマイクロプロセッサシリーズのブランドとして2016年(平成28年)12月に発表され、2017年(平成29年)3月に同ブランドを冠した製品の販売が開始された(甲5)。
申立人は、1969年(昭和44年)に設立された半導体製造販売に従事する米国法人であり、当初は、競業者であるインテル社のセカンドソースメーカとして事業を行っていたが、その後、互換プロセッサの開発へと路線変更をした。
コンピュータが一般に普及した後、しばらくの間は、インテル社の一人勝ちであったが、インテル社プロセッサの独占状態を打破したのが、申立人の製造販売に係るプロセッサ「RYZEN」である。現在では、「RYZEN」を冠したプロセッサは、単体での販売数はインテル社製品を超え、また当該プロセッサを搭載したコンピュータの販売数も、独占状態であったインテルの牙城を崩している。このことは、各書証(甲6〜甲20)に、例えば、次のように記載されていることが示すところである。
(a)「ライド/アプライドダイレクトオンラインブログ」(甲6)
「AMD社よりRyzenシリーズの販売開始以降、AMD社のシェアはIntel社に迫る勢いでうなぎ上りになっております。BCNの記事によると2019年(令和元年)7月第2週には、国内週次販売数シェアで67.6%を記録し、Intel社を逆転しました」と記載されている。
(b)「日本ヒューレットパッカード社個人向けオンラインサイト」(甲7)
「『Ryzen』とは、皆様ご存じのインテル社と並び、世界的なCPUメーカーAMD社の作る高性能なCPUブランドの名称です。」「2017年3月、初代のRyzenが発表されます。初代Ryzenは、『インテルCore i7を凌ぐ』という前評判がささやかれるほど、世間的にも注目を浴びました。」と記載されている。
(c)「ウェブサイト『BCNランキング』2019年9月3日付記事」(甲19)
「全国の主要家電量販店・ネットショップのPOSデータを集計した『BCNランキング』によると、単体CPUの販売数量シェアでAMDが7割近くに再浮上し、Ryzen旋風が吹き荒れている。」と、「3年前の17年6月26日週は、インテルのシェアが83.9%で、AMDが16.1%に過ぎなかったが、2年かけてインテルを追い込み、19年7月に一気に形成が逆転した。その後も19年9月〜20年4月にかけて、インテルのCoreとがっぷり四つでシェア攻防を繰り広げながら、最近の5月18日週は、Ryzenが67.4%、Coreが32.6%と、再び7割近くまで浮上している。」と、「単体CPUだけでなく、ノートPC搭載CPUでも、Ryzenを採用するPCベンダーが増えている。19年2月にNECがノートPCの春モデルでRyzenを採用するなど、この分野でも構成比が上昇。BCNランキングの19年11月25日週では、Ryzen搭載ノートPCが25.4%、Core搭載ノートPCが74.4%を記録。実に、ノートPCの4台に1台、Ryzenが搭載されているという衝撃的な結果が大きな話題となった。」と記載されている。
上記各書証が示す申立人の業務に係る「RYZEN」製品の躍進の結果、現在、「RYZEN」シリーズの多くの製品が、人気ランキング、売れ筋ランキングの上位を占めるに至っている(甲21、甲22)。
インテル社の一人勝ちであったといっても過言ではないプロセッサ業界において、申立人が「RYSEN」製品の発表、製造販売を開始して以降、同製品が市場シェアを徐々に占めていき、2019年(平成31年及び令和元年)にはプロセッサ単体の販売数及び売上はインテル社のそれを上回り、同プロセッサ搭載コンピュータのシェアも、インテル社がほぼ独占し、僅か数パーセントにすぎなかったものが市場の約1/4を占めるに至っている。この結果、プロセッサやそれを用いるコンピュータないし電子応用機械器具及びその他の製品の分野において、本件商標が登録出願された令和元年7月26日には、本件商標(決定注:「引用商標」の誤記と認める。)は、我が国及び世界中の需要者の間で広く知られるに至っており、その周知・著名性は、本件商標の査定時である同2年5月26日には、より一層高まっていたことは、容易に理解することができる。
ウ ウェブサイト「ASCII.jp」に係る記事「5nmのZen4を 2022年までに投入 AMDCPUロードマップによると、申立人の直近5年分の売上と粗利益、営業利益、純利益は下記のとおりである。
年度 売上($) 粗利益($) 営業利益($) 純利益($)
2015 約39.9億 約10.8億 約−4.8億 約−6.6億
2016 約43.2億 約10.0億 約−3.7億 約−5.0億
2017 約52.5億 約17.9億 約1.3億 約−0.3億
2018 約64.8億 約24.5億 約4.5億 約3.4億
2019 約67.3億 約28.7億 約6.3億 約3.4億
上記より明らかなとおり、2018年以降は純利益がプラスに転じている。売上等の増大は、2017年(「RYZEN」製品の販売開始時)以降から認められるものであり、当該製品が申立人の主力製品であり、プロセッサやそれを用いるコンピュータないし電子応用機械器具の分野において、世界各国で「RYZEN」製品が使用され、当該ブランドが需要者等の間で広く知られていた事実を容易に理解することができる。
エ 特許庁商標審査基準によると、本号に係る要件の一つである「不正の目的」については、a)一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであり、b)その周知な商標が造語よりなるものであるか、又は、構成上顕著な特徴を有するものである場合には、「不正の目的をもって使用するものと推認する」とされている。
上記のとおり、引用商標が、プロセッサやそれを用いるコンピュータないし電子応用機械器具の分野において、我が国のみならず、世界の主要な国において、本件商標の登録出願時及び査定時において周知であることに疑いの余地はない。
また、引用商標が辞書等に掲載されている既成語でないことも、すでに述べたとおりである。
してみれば、引用商標が上記a)及びb)に該当することは明らかであって、ゆえに本件商標が「不正の目的」をもって使用されるものであると推認されてしかるべきである。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
仮に、本件商標と引用商標とが類似しないと仮定した場合でも、本件商標は、商品の出所について誤認を生ずるおそれがある商標といわざるを得ない。
上記(2)のとおり、申立人は、2017年以降、引用商標を冠した製品を世界各地で供給(販売)しており、その結果引用商標は、世界各地でプロセッサやそれを用いるコンピュータないし電子応用機械器具の分野において広く知られるに至っている。
本件商標及び引用商標(の文字要素)は、その外観及び称呼において極めて近似しており、殊に、商標の識別上、需要者が最も注意を払うであろう語頭において「RYZ」の文字が共通している。
日本語や、我が国において最も普及している外国語である英語において、「RYZ」を接頭辞とする言葉は存在しない(甲23、甲24)。すなわち、我が国において、「RYZ」を接頭辞とする名称が採択、使用される可能性は、極めて稀であるということができる。
してみれば、本件商標「RYZZO」が、引用商標が広く知られるに至っているプロセッサやそれを用いるコンピュータないし電子応用機械器具に属する製品等に使用された場合、当該製品分野の需要者等は、本件商標が使用された製品について、申立人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがあるといわざるを得ない。
以上より、本件商標が引用商標と類似しないと仮定したとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
申立人の主張及び同人提出の甲各号証によれば、申立人は、我が国において引用商標(色彩の異なるもの、書体の異なるものを含む。)を使用した商品「CPU」(以下「使用商品」という。)を2017年(平成29年)3月に販売開始したこと(甲5、甲9)、全国の主要家電量販店・ネットショップのPOSデータを集計した「BCNランキング」によるCPU販売数量シェア(週次)によれば、申立人の製造販売する商品「CPU」(使用商品を含む。以下「申立人商品」という。)の同年6月26日週のシェアは16.1%、2019年(令和元年)7月8日週は68.6%であったこと(甲19)、及び2018年(平成30年)9月以降、シェアは、30%を突破、2019年(平成31年)1月に40%であったこと(甲10)が認められ、さらに、使用商品については2020年(令和2年)5月18日週のシェアが67.4%であったこと(甲19)が認められる。
そうすると、使用商品は2017年(平成29年)3月に販売が開始されたものであって、同年6月ないし2019年(令和元年)7月の間において、使用商品を含む申立人商品のシェアが16.1%から68.6%まで年々上昇したこと、使用商品のみでも2020年(令和2年)5月頃には67.4%のシェアであったことなどをあわせみれば、使用商品に使用される引用商標は、本件商標の登録出願日(令和元年7月26日)及び査定時(令和2年5月22日)において、申立人の業務に係る商品(CPU)を表示するものとしてパソコンメーカー等の需要者の間においては、相当程度認識されているものである。
(2)商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項該当性について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「RYZZO」の文字を標準文字で表してなり、該文字に相応し「ライッゾ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
(ア)引用商標1
引用商標1は、上記2(1)のとおり、「RYZEN」の文字を標準文字で表してなり、該文字に相応し「ライゼン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標2
引用商標2は、別掲のとおり、「RYZEN」の欧文字を横書きし、該欧文字に重なるように筆書き風の円図形の構成からなる結合商標であるところ、その構成中の欧文字部分に相応し、「ライゼン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
また、図形部分からは、特定の称呼及び観念は生じないものである。
そうすると、引用商標2は、「ライゼン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
(ア)本件商標と引用商標1との類否について
本件商標と引用商標1は、上記ア及びイ(ア)とおりの構成からなるところ、両者は、外観において、語頭の「RYZ」の文字を共通にするものの、語尾における「ZO」と「EN」の文字の差異を有するから、この差異が、いずれも5文字という比較的短い文字構成からなる両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。
次に、称呼において、本件商標から生じる「ライッゾ」と引用商標1から生じる「ライゼン」の称呼を比較すると、両者は語頭の「ライ」を共通にするものの、語尾における「(イの促音)ッゾ」と「ゼン」の差異を有するものであるから、この差異が促音を含む4音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念において、両商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、観念において比較できないものであるとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれがないことからすると、両者の外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標1が類似するというべき事情は見いだせない。
(イ)本件商標と引用商標2との類否について
本件商標と引用商標2は、上記ア及びイ(イ)のとおりの構成からなるところ、本件商標と引用商標2の構成全体の外観の類否においては、図形部分の有無に顕著な差を有しているから、外観上、相紛れるおそれはない。
また、本件商標と引用商標2の文字部分の類否については、引用商標2の文字部分が引用商標1の構成文字と同じであるから、上記(ア)のとおり、本件商標と引用商標1との類否と同様に、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標2とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標ということができる。
その他、本件商標と引用商標2が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否について
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、互いに同一又は類似する商品を含むものである。
オ 申立人の主張について
申立人は、本件商標及び引用商標の構成中の文字「Z」と「E」について、両文字を構成する線の共通点などを挙げ、両文字は外観上瞬時に判別できないなどとして、本件商標と引用商標は外観上類似する旨、また、両商標の称呼「ライッゾ」と「ライゼン」は語頭の2音を共通にし、差異音である「ゾ」と「ゼ」の音も近似音であるなどとして、両商標は称呼においても類似する旨、さらに、両商標は観念上の相違は認められない旨述べ、本件商標と引用商標は極めて似通った印象を与え、誤認混同を生じ得ることに疑いの余地はない旨主張している。
しかしながら、本件商標と引用商標は、観念上の相違は認められないとしても、上記ウのとおり、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであって、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。そうすると、本件商標と引用商標は誤認混同を生じるおそれのないものといえる。
したがって、申立人のかかる主張は採用できない。
カ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項に違反して登録されたものといえない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品(CPU)を表示するものとしてパソコンメーカー等の需要者の間においては、相当程度認識されていると認められるものの、上記(2)のとおり、本件商標は、引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといえない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品(CPU)を表示するものとしてパソコンメーカー等の需要者の間においては相当程度認識されていると認められるものの、本件商標は、上記(2)のとおり、引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であり、本件商標は、上記(3)のとおり、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
また、申立人が提出した証拠からは、本件商標が、引用商標の顧客吸引力や信頼にただ乗りし、不正の利益を得ることや他人に損害を与えること等、不正の目的をもって使用をするものであると認めるに足りる具体的な証左は見いだせない。
そうすると、本件商標は、引用商標の顧客吸引力にただ乗りする、引用商標の名声を毀損するなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものといえない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同法第8条第1項のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲(引用商標2)


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異議決定日 2021-08-04 
出願番号 2019101669 
審決分類 T 1 651・ 4- Y (W09)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 豊田 純一
小俣 克巳
登録日 2020-05-28 
登録番号 6255112 
権利者 深▲せん▼市宝華中科技有限公司
商標の称呼 リッゾ、リッツォ、リゾ、リツォ 
代理人 岩瀬 吉和 
代理人 永岡 愛 
代理人 城山 康文 
代理人 横川 聡子 
代理人 北口 貴大 

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