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審決分類 |
審判 査定不服 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 登録しない W43 |
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管理番号 | 1381026 |
総通号数 | 1 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2022-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-11-04 |
確定日 | 2021-12-13 |
事件の表示 | 商願2020−2143拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和2年1月8日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年3月4日付け:拒絶理由通知書 令和2年4月13日付け:意見書 令和2年7月31日付け:拒絶査定 令和2年11月4日付け:審判請求書 令和3年7月29日付け:証拠調べ通知書 令和3年9月3日付け:意見書 第2 本願商標 本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第43類「すしを主とする飲食物の提供」を指定役務として登録出願されたものである。 第3 原査定の拒絶の理由の要点 原査定は、「本願商標は、左側に縦書きで『小松』の文字を表し、その右側に横書きで大きく『弥助』の文字を表してなるところ、インターネット記事によれば、『小松弥助』と称する他人(審決注:別掲として名前『小松弥助』とその者の住所を複数記載しているが、その記載は省略する。)が存在し、かつ、それらの者の承諾を得ているものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 第4 当審における証拠調べ通知 当審において、本願商標が商標法第4条第1項第8号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、令和3年7月29日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。 第5 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要旨 請求人は、上記第4の証拠調べ通知に対して、以下のとおり意見を述べた。 1 本願商標の外観について 本願商標を構成する「小松」及び「弥助」の各文字が、その構成と文字の配置に相応して、それぞれ視覚上分離して看取されるものであって、氏名の表示態様とはいい難いものであり、また、本願商標は、請求人に係る金沢の鮨屋を表すものとして全国的にも著名であるから、本願商標は、氏名であると特定されるような特段の事情は見いだせない。 2 ハローページの掲載について 証拠調べ通知にて提示された「小松弥助」との氏名の者のハローページにおける記載は、2020年6月又は2017年12月現在とそれぞれ古い情報であり、ハローページに記載があることをもって同姓同名の氏名の者が現存するという証明にはならない。 3 まとめ したがって、本願商標は、人物の氏名からなるものではないといえ、同姓同名の人物が現存するとはいえないことから、商標法第4条1項第8号に該当しない。 第6 当審の判断 1 商標法第4条第1項第8号の趣旨について 商標法第4条第1項第8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護すること、すなわち、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがないという利益を保護することにあると解される(最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日第三小法廷判決、最高裁平成16年(行ヒ)第343号同17年7月22日第二小法廷判決)。 そうすると、ある氏名を有する他人にとって、その氏名を同人の承諾なく商標登録されることは、同人の人格的利益を害されることとなると考えられる(知財高裁平成28年(行ケ)第10065号同28年8月10日判決)。 2 商標法第4条第1項第8号の該当性について 本願商標は、別掲1のとおり、左側に縦書きで「小松」の文字を、その右側に横書きで大きく「弥助」の文字を、それぞれ筆文字で表してなるものである。 そして、我が国における氏名表記の実情に照らし、本願商標を構成する文字は、「小松」の文字部分が氏を、「弥助」の文字部分が名を表したものとみるのが自然であるから、本願商標は、その全体が「小松弥助」なる氏名を表したものとして容易に認識されるものである。 また、別掲2のとおり、和歌山県有田郡有田川町に住所を有する者として、2020年9月版(掲載情報は2020年6月4日現在)の「ハローページ(和歌山県海南・有田地方版)」に、茨城県日立市に住所を有する者として、2018年3月版(掲載情報は2017年12月4日現在)の「ハローページ(茨城県日立・常陸太田市版)」に、「小松弥助」という氏名の者がそれぞれ掲載されていると認められるところ、かかる事実によれば、これらの「小松弥助」という氏名の者は、本願商標の登録出願時から現在まで現存している者であると推認できる。 加えて、請求人と上記「小松弥助」とは他人であると認められ、本願商標は、「他人の氏名」を含む商標であって、かつ、請求人は、上記他人の承諾を得ているものとは認められない。 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。 3 請求人の主張について (1)請求人は、本願商標を構成する「小松」及び「弥助」の各文字が、その構成と文字の配置に相応して、それぞれ視覚上分離して看取されるものであって、氏名の表示態様とはいい難いものであり、また、本願商標は、請求人に係る金沢の鮨屋を表すものとして全国的にも著名であるから、本願商標は、氏名であると特定されるような特段の事情は見いだせない旨主張する。 しかしながら、本願商標を構成する「小松」及び「弥助」の各文字の向きや大きさが異なることを踏まえたとしても、上記2のとおり、我が国における氏名表記の実情に照らせば、本願商標は、「小松」という氏と、「弥助」という名が結合された「小松弥助」なる氏名を表したものと容易に認識されるものであり、加えて、このように表記することにより、氏名とは認識させないといった特別な事情も見いだせない。 また、商標法第4条第1項第8号の趣旨やその規定ぶりからすると、同号の「他人の氏名」が、著名性・希少性を有するものに限られるとは解し難く、「他人の氏名」を含む商標である以上、仮に、本願商標が、請求人に係る金沢の鮨屋を表すものとして一定の周知性を有しているとしても、それを考慮する必要はないというべきである。 (2)請求人は、証拠調べ通知にて提示された「小松弥助」との氏名の者の「ハローページ」における記載は、2020年6月又は2017年12月現在とそれぞれ古い情報であり、その記載があることをもって同姓同名の氏名の者が現存するという証明にはならない旨主張する。 しかしながら、上記2のとおり、2020年6月又は2017年12月の「ハローページ」において、「小松弥助」なる氏名の者がそれぞれ存在していたことが確認できるところ、それらの日付が近年のものであることからすると、本願商標の登録出願時から現在まで、「小松弥助」を氏名とする者が複数現存していると推認されるものである。 そして、本願商標は、その登録について、上記他人の承諾を得ているものとは認められないものであり、これら同姓同名の氏名の者の承諾を得ていないにもかかわらず、「小松弥助」の氏名を含む商標が登録されることにより、それらの者の人格的利益を侵害するおそれが存在しないとまでいうことはできない。 (3)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。 4 まとめ 以上のとおり、本願商標は、他人の氏名を含む商標であり、かつ、その他人の承諾を得ているものとは認められないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当し、登録することができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1 本願商標 別掲2 証拠調べ通知において開示した事実 「小松弥助」との氏名の者が、本願商標の登録出願時から現在まで現存している者であると推認できること。 1 和歌山県有田郡有田川町に住所を有する者として「小松弥助」氏が、2020年9月版(掲載情報は2020年6月4日現在)の「ハローページ(和歌山県海南・有田地方版)」に掲載されている。 2 茨城県日立市に住所を有する者として「小松弥助」氏が、2018年3月版(掲載情報は2017年12月4日現在)の「ハローページ(茨城県日立・常陸太田市版)」に掲載されている。 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
審理終結日 | 2021-10-14 |
結審通知日 | 2021-10-15 |
審決日 | 2021-10-28 |
出願番号 | 2020002143 |
審決分類 |
T
1
8・
23-
Z
(W43)
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最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
齋藤 貴博 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 山根 まり子 |
商標の称呼 | コマツヤスケ、ヤスケ |
代理人 | 横井 敏弘 |