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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W1825 審判 全部申立て 登録を維持 W1825 審判 全部申立て 登録を維持 W1825 審判 全部申立て 登録を維持 W1825 |
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管理番号 | 1380136 |
異議申立番号 | 異議2021-900080 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-03-05 |
確定日 | 2021-11-05 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6327233号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6327233号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6327233号商標(以下「本件商標」という。)は、「ecca」(「a」の文字にはウムラウトが付されている。以下同じ。)の欧文字を別掲1のとおりの態様で表してなり、令和2年1月6日に登録出願、第18類「かばん類,袋物,傘」及び第25類「洋服,スカーフ,帽子,履物,靴類」を指定商品として、同年10月26日に登録査定され、同年12月10日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第3035409号商標(決定注:登録異議申立書に記載の登録番号は誤記と認める。)(以下「引用商標」という。)は、「ecco」の欧文字を別掲2のとおりの態様で表してなり、平成4年7月27日に登録出願、第25類「履物(但し,げたを除く。)」を指定商品として、同7年3月31日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第32号証を提出した。 (1)引用商標の使用状況について ア 申立人は1963年にデンマークで創業した靴の製造・販売会社である。申立人は創業以来一貫して「履きやすい靴」をテーマに商品開発を重ね、世界唯一「牛の皮革から消費者へ届ける靴まで」の生産工程全体を一元管理している。1982年にデンマークで直営店をオープンし、今では全世界に3,800以上の店舗を構えるまでに成長し、デンマークを代表するシューズメーカーとしてデンマーク王室御用達の栄誉を受けるなど、世界的に著名な靴メーカーとなった(甲3)。 我が国でも2016年には旗艦店として銀座に直営店を開設するほか、日本を代表する有名百貨店に多数出店しており(甲4?甲11)、日本全国に80店を超える店舗を構えている(甲12)。各店舗では、それぞれキャンペーン告知のはがきを送付したり、宣伝広告用のポスターを掲示したりしている(甲13)。また、地下遊歩道や地下鉄駅構内にも定期的な巨大広告を掲示している(甲14)。 イ 申立人の製造、販売に係る「靴」(以下「申立人商品」という。)は、そのデザイン性の高さと履き心地の良さから高い評判を得ており、ファッション情報誌や業界紙に頻繁に紹介記事が掲載されている。申立人が把握しているものだけでも2015年以降で100回を超える記事が掲載されており(甲15)、申立人商品が掲載されている雑誌は、靴専門誌はもとより、男性向けファッション誌、女性向けファッション誌、スポーツ誌等、その分野も多岐にわたっている。 当然ながら、申立人商品はインターネットでも膨大な数の記事において紹介されており(甲16?甲29。一部である。)、申立人商品は市場において高い評価を得ている。申立人商品は、婦人靴の分野においても人気があり(甲23?甲26)、近年では、履き心地を極めるため3Dプリンターを使った完全オーダーメイドの靴を開発し、話題を集めている(甲26?甲29)。 ウ 申立人商品が我が国で販売されている事実を示す証拠として、申立人商品を扱う販売事業者向けの請求書の一部(甲30)及び直営店を運営する申立人の日本法人向けの請求書の一部(甲31)を提出する。特に後者は、準備可能であった2015年からのものであるが、継続して相当数の商品が出荷されている事実が確認できる。なお、申立人の独自集計であるが、申立人商品は直営店向けに毎年20万足から30万足出荷されており、概算で2015年に32億円、2016年に38億円、2017年に46億円、2018年に49億円、2019年に54億円程度の売り上げを記録している。 エ 引用商標は、申立人のハウスマークであり、申立人店舗には必ず引用商標が掲示され、かつ、その商品そのものにも引用商標が表されている(上記各号証)。 オ このように、引用商標は、本件商標の出願時点で既に靴において、我が国で周知・著名なものとなっており、その周知・著名性は現在も継続しているものである。 なお、引用商標の著名性は、2011年の段階で既に特許庁において顕著な事実として認定されている(甲32)。 (2)商標法第4条第1項第11号について 本件商標と引用商標は、称呼(決定注:「外観」の誤記と思われる。)において類似する商標であり、指定商品においても、本件商標の指定商品中第25類「履物,靴類」と引用商標の指定商品は抵触するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 ア 商品の抵触について 本件商標の指定商品は、第25類「履物,靴類」を含み、これが引用商標の指定商品と抵触することは明らかである。 イ 商標の抵触について 本件商標は、欧文字の小文字で「ecca」と書してなり、一方、引用商標も欧文字の小文字で「ecco」と書してなるものである。 両商標の外観を対比すると、本件商標は特徴のないゴシック体で書されているのに対して、引用商標は丸みを帯びたゴシック体で書されている点と、第4文字目に相違がある。 しかしながら、引用商標も取引者、需要者に強く印象を残すほど斬新な書体(デザイン)とはいい難く、かつ、第4文字目も本件商標が「a」であるのに対して引用商標のそれが「o」であって、共に丸みが強く印象に残る文字である。 そして、本件商標と引用商標は、最も強く印象に残る語頭から3文字目までのスペル「e」「c」「c」が完全に一致するのみならず、それらの外観も共に丸みが強く印象に残る外観を有するものである。 そうすると、本件商標及び引用商標に接する取引者、需要者は、具体的なデザインの相違や第4文字目の相違に着目するというよりは、先頭から3文字目までが共通である上に、全体として丸みを帯びた文字が連なっているという印象の共通性から、外観的に両者を取り違えるおそれがあるというべきである。 よって、本件商標と引用商標は、外観的に相紛らわしい類似商標とするのが相当である。 ウ 小括 以上のとおり、本件商標は、第25類「履物,靴類」について商標法第4条第1項第11号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第15号について ア 引用商標の周知・著名性 前記のとおり、申立人は、引用商標を靴について永年にわたり使用している。そして、申立人商品は、その履き心地の良さや機能性の高さ、また、デンマーク王室御用達という信頼性が評価され、我が国を含む全世界で好評を博している。 我が国においても、インターネットを始め各種媒体で申立人商品の特集が組まれており、そこに使用されている引用商標は、相当程度の周知・著名性を獲得しているであろうことが容易に想像できる。 このように、引用商標は、我が国において周知・著名性を有している。 イ 「ecco」の造語性、独創性 「ecco」は、特段意味のない造語であり、辞書に記載のない語であるから、その造語性、独創性は極めて高い。 ウ 本件商標と引用商標の類似性 上記のとおり、本件商標と引用商標は、その外観において共通の印象を看取せしめるものであって、その類似性は極めて高いものである。 エ 商品の関連性 申立人が引用商標を使用する商品は「靴」全般であり、これは本件商標の指定商品である第18類「かばん類,袋物,傘」及び第25類「洋服,スカーフ,帽子」と、いずれの商品もファッション関連の商品であって、同じ店舗内・売場において陳列され、販売されることが一般的であることから、取引者、需要者を共通にする。 よって、商品の関連性も極めて高い。 オ 混同のおそれ 引用商標の著名性、申立人が引用商標を使用し周知・著名となっている商品と本件商標の第25類の指定商品が重複し、その他の商品についても取引者、需要者が一致すること等、その商品の提供者や取引者、需要者層の個別・具体的な関連性や共通性の実情等を総合的に考察すれば、本件商標がその指定商品に使用された場合には、それがあたかも申立人の著名ブランドである「ecco」ブランドに係る申立人の提供する商品であるかのごとく誤認され、そうでなくとも、何らかの密接な営業上の関連性を想起させ、あたかも申立人のグループ会社か、あるいは許諾を受けた者に係る商品であるかのごとく誤認させ、商品又は営業上の出所混同を生じるおそれが極めて高いといわねばならない。 カ 引用商標の著名性を認めた審決の存在 申立人の主張の妥当性は、上記のとおり、2011年時点において引用商標が著名であることを認めた特許庁の審決よりも明らかである(甲32)。そして、引用商標の著名性は、当時に比して益々高まっているのであるから、引用商標が、本件商標の登録出願時点において著名であったことは明らかである。 キ 小括 以上のとおり、本件商標がその指定商品について使用された場合は、申立人の著名商標に係る商品と出所の混同を生ずるおそれが高いものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知・著名性について ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、申立人は、1963年にデンマークで創業した靴の製造・販売会社であり(甲8)、我が国において2016年に旗艦店として銀座に直営店を開設したこと(甲4)、伊勢丹、大丸、PARCO、松坂屋、三越等の百貨店など全国に80以上の店舗を有していること(甲4?甲12)、2015年から申立人商品に係る広告、記事が各種の新聞、雑誌、インターネットにおいて相当数掲載されていること(甲15?甲29)、申立人商品は2014年10月頃から2020年9月頃まで我が国に出荷されていること(甲30、甲31)及び現在においても販売されていること(職権調査)が認められる。 また、申立人は、申立人商品に係るキャンペーン告知のはがきの送付、宣伝広告用のポスターの掲示(甲13)、地下遊歩道や地下鉄駅構内での広告の掲示(甲14)を行ったことがうかがえる。 しかしながら、申立人商品の我が国における販売数、売上高、シェアなど販売実績を示す証左は見いだせない。 イ 上記アによれば、申立人商品は、我が国において遅くとも2014年(平成26年)頃から現在まで継続して、また、伊勢丹、大丸、松坂屋、三越などにおける全国の80以上の店舗で販売されていると認められ、加えて遅くとも2015年(平成27年)頃から新聞、雑誌、インターネットに相当数掲載されていることなどを併せみれば、申立人商品は、需要者の間で相当程度知られているということができるものの、同商品の販売実績を示す証左は見いだせないから、需要者の間で広く認識されているものということはできない。 そうすると、申立人商品に使用されている引用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものということはできない。 ウ なお、申立人は、申立人商品は直営店向けに毎年20万足から30万足出荷され、2015年ないし2019年に概算で毎年32億円ないし54億円程度の売上げを記録している旨主張しているが、直営店を運営する申立人の日本法人向け請求書(甲31)で確認できる出荷数と上記出荷数とは大きく異なるから、かかる出荷数、売上額を直ちに採用することはできない。 また、申立人は、引用商標の周知・著名性を証するものとして過去の異議決定(甲32)を提出しているが、引用商標の周知・著名性については、本件商標の登録出願時及び査定時又は審決時における実情に基づいて判断すべきものであるから、それをもって上記判断が左右されるものではない。 (2)商標法第4条第1項第11号について ア 本件商標 本件商標は、別掲1のとおり、「ecca」の欧文字をゴシック体で表してなり、その構成文字に相応し「エッカ」の称呼を生じ、当該文字は、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものである。 イ 引用商標 引用商標は、別掲2のとおり、円形を基調とし、ややデザイン化した「ecco」の欧文字よりなるところ、その構成文字に相応し「エッコ」の称呼を生じ、当該文字は、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものである。 また、引用商標は、申立人提出の証拠によれば、「エコー」の称呼が生じる場合もあるといい得るものである。 ウ 本件商標と引用商標の類否 本件商標と引用商標の類否を検討すると、両者は、上記ア及びイのとおりの構成からなり、語尾における「a」(ウムラウトが付されている。)と「o」という文字の差異に加え、デザイン化の有無の点に差異を有するものである。そして、上記差異が、共に4文字という短い文字構成において、外観全体から生じる視覚的印象に与える影響は決して小さいものとはいえない。 そうすると、両商標は、外観上、判然と区別できるものである。 また、本件商標の称呼「エッカ」と引用商標の称呼「エッコ」「エコー」とを比較すると、両者は語尾において、「カ」と「コ(ー)」という音の差異を有し、当該差異が共に促音又は長音を含む3音構成という短い音構成である両称呼全体に与える影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、明瞭に聴別し得るものである。 さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。 そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較できないものの、外観及び称呼において相紛れるおそれがないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。 エ 申立人の主張について 申立人は、本件商標と引用商標は、最も印象に残る語頭から3文字が共通し、全体として丸みを帯びた文字が連なっているという印象の共通性から、外観的に取り違えるおそれがある旨主張しているが、上記ウのとおり、両商標は外観において相紛れるおそれのないものである上、両商標の外観、観念、称呼等を総合してみても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 したがって、申立人のかかる主張は採用できない。 オ 小括 以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第15号について 上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(2)のとおり、本件商標は、引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、その類似性の程度は低いものである。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標)![]() 別掲2(引用商標) ![]() |
異議決定日 | 2021-10-27 |
出願番号 | 商願2020-6044(T2020-6044) |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W1825)
T 1 651・ 263- Y (W1825) T 1 651・ 262- Y (W1825) T 1 651・ 271- Y (W1825) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 内田 直樹 |
特許庁審判長 |
冨澤 美加 |
特許庁審判官 |
中束 としえ 馬場 秀敏 |
登録日 | 2020-12-10 |
登録番号 | 商標登録第6327233号(T6327233) |
権利者 | 山口 絵里加 |
商標の称呼 | エッカ、イイシイシイエイ |
代理人 | 齋藤 宗也 |
代理人 | 外川 奈美 |
代理人 | 青木 篤 |