ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W41 審判 全部申立て 登録を維持 W41 審判 全部申立て 登録を維持 W41 審判 全部申立て 登録を維持 W41 |
---|---|
管理番号 | 1380129 |
異議申立番号 | 異議2020-900345 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-12-24 |
確定日 | 2021-11-03 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6300836号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6300836号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6300836号商標(以下「本件商標」という。)は、「カープールカラオケ」の片仮名及び「Carpool Karaoke」の欧文字を上下二段に横書きした構成からなり、令和2年3月30日に登録出願され、第41類「セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,写真の撮影」を指定役務として、同年9月17日に登録査定、同年10月6日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において引用する商標(以下「引用商標1」という。)は、「Carpool Karaoke」の欧文字を横書きした構成からなるものであり、本件商標の出願前から「テレビ・ブロードバンド・ワイヤレス及びオンラインサービスによって配信されるコメディ及び音楽の演奏を特徴とするテレビ番組・オーディオビジュアル及びマルチメディア連続番組による娯楽の提供,ビデオオンデマンドによるコメディ及び音楽の演奏を特徴とするダウンロードできない娯楽番組の提供,インターネット・持ち運び可能な無線装置経由による娯楽に関する情報の提供,放送番組の制作,放送番組の制作における演出」及びこれらに関連する役務について使用されているというものである。 2 同じく、申立人が引用する商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおりの構成からなるものであり、本件商標の出願前から「テレビ・ブロードバンド・ワイヤレス及びオンラインサービスによって配信されるコメディ及び音楽の演奏を特徴とするテレビ番組・オーディオビジュアル及びマルチメディア連続番組による娯楽の提供,ビデオオンデマンドによるコメディ及び音楽の演奏を特徴とするダウンロードできない娯楽番組の提供,インターネット・持ち運び可能な無線装置経由による娯楽に関する情報の提供,放送番組の制作,放送番組の制作における演出」のPR活動に使用されているというものである。 3 同じく、申立人が引用する登録第6203135号商標(以下「引用商標3」という。)は、「CARPOOL KARAOKE」の欧文字を標準文字により表してなり、平成31年1月11日に登録出願、第9類「携帯電話機・スマートフォン・携帯型メディアプレーヤー及び手持ち式コンピュータ用コンピュータゲームアプリケーションの性質を有するダウンロード可能なコンピュータソフトウェア,ワイヤレスヘッドホン,携帯電話機の部品及び附属品,スマートフォン・タブレット型コンピュータ・携帯型コンピュータ・携帯情報端末用のケース及びカバー,スマートフォン・タブレット型コンピュータ・携帯型コンピュータ・携帯情報端末の附属品,携帯電話機用のダウンロード可能な着信音,永久磁石,録画済みDVD,サングラス,コメディ・音楽及びエンターテインメントを録音した記憶媒体,ダウンロード可能な音響及び映像記録物,コンピュータゲームソフトウェア,マイクロホン,自動車の車内で使用されるカラオケ用マイクロホン及びカラオケ装置並びにそれらの部品及び附属品,カラオケ装置,ダウンロード可能なポッドキャスト,ビデオレコーダー,録音装置,カメラ,コメディ・音楽及びエンターテインメントを内容とする携帯電話機・スマートフォン・携帯型メディアプレーヤー用アプリケーションソフトウェアの性質を有するダウンロード可能なコンピュータソフトウェア,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」及び第28類「スロットマシン」を指定商品として、令和元年11月29日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。 以下、上記の引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは、「引用商標」という。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同法第4条第1項第15号及び同法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の2第1号の規定に該当し、商標法第43条の3の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第34号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 具体的理由 (1)商標法第4条第1項第10号について ア 本件商標について 本件商標は、「カープールカラオケ」及び「Carpool Karaoke」の文字を上下二段に横書きしてなるものであり、令和2年3月30日に登録出願、第41類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務とし、令和2年10月6日設定登録されたものである(甲1)。 イ 引用商標について 申立人が証拠として引用する引用商標1(甲2)は、「Carpool Karaoke」の欧文字からなり、本件商標の出願前から「テレビ・ブロードバンド・ワイヤレス及びオンラインサービスによって配信されるコメディ及び音楽の演奏を特徴とするテレビ番組・オーディオビジュアル及びマルチメディア連続番組による娯楽の提供,ビデオオンデマンドによるコメディ及び音楽の演奏を特徴とするダウンロードできない娯楽番組の提供,インターネット・持ち運び可能な無線装置経由による娯楽に関する情報の提供,放送番組の制作,放送番組の制作における演出」及びこれらに関連する役務について使用されている。 また、申立人が証拠として引用する引用商標2(甲3)は、略長方形の枠で囲まれた「KARAOKE」の欧文字と、その上部に筆記体の「Carpool」の欧文字を横書きしてなるものであり、本件商標の出願前から「テレビ・ブロードバンド・ワイヤレス及びオンラインサービスによって配信されるコメディ及び音楽の演奏を特徴とするテレビ番組・オーディオビジュアル及びマルチメディア連続番組による娯楽の提供,ビデオオンデマンドによるコメディ及び音楽の演奏を特徴とするダウンロードできない娯楽番組の提供,インターネット・持ち運び可能な無線装置経由による娯楽に関する情報の提供,放送番組の制作,放送番組の制作における演出」のPR活動に使用されている。 ウ 本件商標と引用商標1及び引用商標2との対比 本件商標の下段は、「Carpool Karaoke」の欧文字を書してなるものであり、その構成文字は引用商標1と同一である。 本件商標の欧文字部分と引用商標2においては、大文字と小文字の差異のみしかない。 本件商標は、上段の片仮名部分によって「カープールカラオケ」の称呼が生じる。 本件商標の欧文字部分及び引用商標1及び引用商標2の構成中、「Carpool」の文字は「近隣の人々が相乗りのグループを作り、毎日交替で運転手を務めて、通勤・通学に利用する取り決め。また、これに加わる人たち」及び「(子供たちなどを)相乗りで送る」ことを意味する語であり(甲5の2)、平易な英語である「Car」と「pool」の組み合わせから「カープール」の称呼も自然に生じる。いわゆる「カラオケ」が英語になった「Karaoke」の文字とあわせて(甲5の3)、両商標からは「カープールカラオケ」の称呼及び「自動車の相乗りカラオケ」の観念が生じる。 してみれば、本件商標の欧文字部分と引用商標1及び引用商標2の構成文字は同じであることから、両商標から生じる称呼及び観念が共通することは明らかである。 したがって、本件商標は引用商標1及び引用商標2と類似するものである。 エ 本件商標の指定役務と引用商標1及び引用商標2の使用役務との対比 引用商標1は、申立人が制作、配信するテレビ番組内のコーナーの名称として使用されている。また、申立人は、申立人のウェブサイトやソーシャルメディアを含む様々な手段で、引用商標1及び引用商標2を付した動画シリーズを配信している(甲2、甲3の1)。また、申立人は使用権者によって配信されるスタンドアローンシリーズのために引用商標1をアップル・ミュージックにライセンスを与えている。 本件商標に係る指定役務中「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出」は、申立人の引用商標1及び引用商標2の使用に係る役務「テレビ・ブロードバンド・ワイヤレス及びオンラインサービスによって配信されるコメディ及び音楽の演奏を特徴とするテレビ番組・オーディオビジュアル及びマルチメディア連続番組による娯楽の提供,ビデオオンデマンドによるコメディ及び音楽の演奏を特徴とするダウンロードできない娯楽番組の提供,インターネット・持ち運び可能な無線装置経由による娯楽に関する情報の提供,放送番組の制作,放送番組の制作における演出」と同一又は類似するものである。 オ 引用商標の背景について 申立人は、アメリカ合衆国ニューヨーク州の法律に基づき、設立及び組織された法人である。申立人は、1927年1月27日、「ユナイテッド インディペンデント ブロードキャスターズ インコーポレイテッド」の名称においてラジオ放送事業者として創立され(甲6)、現在最もアメリカで見られているテレビ局である。 申立人は、アメリカ合衆国において、有名な深夜トーク番組「レイトレイトショー(以下「レイト×2ショー」という。)を制作、配信しており、ジェームズ・コーデンが2015年より4代目の司会を務め、現在も放送されている(甲2、甲7)。 引用商標1の「Carpool Karaoke」は、この「レイト×2ショー」で最も人気のあるコーナーのうちの一つの名称である(甲8)。 ジェームズ・コーデンの下で「レイト×2ショー」はアメリカで最も有名で成功した深夜番組となった。例えば、「レイト×2ショー」のYouTubeチャンネルはジェームズ・コーデンがホストになった第1週目の放送中に登録者が330%増加した(甲9)。 「レイト×2ショー」はジェームズ・コーデンが司会に就任した2015年以来、数々の賞にノミネートされ、受賞している。例えば、2016年プライムタイム・エミー賞のインタラクティブ番組賞、同年放送映画批評家協会賞のトーク番組賞、2018年テリーアワードのコメディ賞及びユーモア賞、2020年放送映画批評家協会賞のトーク番組賞などを受賞している(甲7、甲10)。 申立人は、日本を含む世界中の視聴者が利用可能である自身のウェブサイトやSNSのみならず、放送や印刷広告を通じて、「レイト×2ショー」を宣伝している。2021年2月26日現在、「レイト×2ショー」のインスタグラムのフォロワー数が325万人以上、ツイッターのフォロワー数が155万人以上、フェイスブックのフォロワー数が759万人以上、YouTubeは約2,600万人の登録者数がおり、その人気の高さは明らかである(甲11?甲14)。 日本においては、「レイト×2ショー」は2015年6月28日よりAXN JAPANにおいて放送が開始された(甲15)。トム・ハンクスやメリル・ストリープ等の有名人が出演していることから、我が国においても当時から注目を集めている(甲16、甲17)。そして、当時からこの番組には「Carpool Karaoke」のコーナーが含まれている。 カ 引用商標1及び引用商標2の周知性について 「Carpool Karaoke」は、ジェームズ・コーデンが運転しながら、車の中でゲストの有名人と話したり、冗談を言ったり、歌ってゲストにインタビューをする、「レイト×2ショー」で最も人気のあるコーナーの一つである。 「Carpool Karaoke」の初回は2015年3月25日に放送され、ゲストに有名人であるマライア・キャリーが出演した。この回は、放送後話題となり、翌日の2015年3月26日には多くのメディアで取り上げられた(甲18)。これは、たちまち全世界に広まり、最初の1週間でYouTubeでの視聴が何百万回にも達した。 初回以降、「Carpool Karaoke」は約60回の放送があり、世界的に有名なゲスト、例えばブルーノ・マース、マドンナ、レディ・ガガ、ブリトニー・スピアーズ、セレーナ・ゴメス、デミ・ロヴァート、ニック・ジョナス、スティービー・ワンダーなどの有名アーティストが出演し、世界中の注目を集めている。実際のところ、有名な歌手であるアデルが2016年に出演した回は、5日以内でYouTubeの視聴者が4,200万人に達した。この動画は、2016年に最多視聴回数記録を破り(甲19)、YouTubeで最も話題を集めた動画となった(甲20)。さらにこの回は、本件商標の出願日直前である2020年2月時点での視聴回数が1億9,500万回以上となり、2013年以来、深夜番組を起源とする最も人気のある動画となった(甲21)。現在でも2億3,000万回以上の視聴がされ続けている(甲22)。 アデルの出演回の他、「Carpool Karaoke」の動画のうち、ワン・ダイレクション、ジャスティン・ビーバー、シーア、ブルーノ・マース、セレーナ・ゴメスが出演した少なくとも5回が、本件商標の出願日である2020年3月30日よりかなり以前に、日本を含む世界中で、1億回以上視聴されている(甲22、甲23)。さらに、ミュージシャン以外が出演した中で最も視聴回数が多かったのは、当時のファーストレディであるミッシェル・オバマが出演した回で、8,000万回以上に達した(甲24)。 「Carpool Karaoke」は、その制作及び最初の公開からわずか1年で非常に人気が高くなり、レイト×2ショーはYouTubeで世界中から約10億回以上視聴されている。 この「Carpool Karaoke」シリーズは数々の批評家から賞賛され、多くの賞を受賞した。例えば、2018年にはPGAアワード短編プログラム部門を、2018年から2020年にはプライムタイム・エミー賞バラエティ・シリーズ短編部門を3年連続受賞した(甲25)。 「Carpool Karaoke」シリーズは、世界中でアクセス可能なソーシャルメディアを利用している。インターネットでの「Carpoo1 Karaoke」の人気は、App1e Musicによって配信される単独シリーズの制作にもつながった(甲26)。このシリーズは2017年8月9日に開始し、現在シーズン3である。「Carpool Karaoke」シリーズに関連するインスタグラムは2021年2月25日現在で45万人以上(甲27)、ツイッターは2021年2月26日現在で7万3千人のフォロワー数を有する(甲28)。 本願商標の出願日よりかなり以前から、「Carpool Karaoke」は相当数の報道がなされている。日本においても、前述のとおり、2015年6月28日にAXN JAPANにおいて放送が開始され、注目されている。2016年2月5日には日本テレビ放送網の人気情報番組「ZIP!」において紹介され話題になり(甲29)、その後もメディアで取り上げられている(甲30)。 さらに、2020年2月26日に、日本でも絶大な人気を誇るBTS(防弾少年団)が「Carpool Karaoke」に出演した回が放送され(甲31)、その知名度はさらに上がることとなった。 したがって、引用商標1及び引用商標2は、本件商標の商標登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、日本及び外国において周知なものであった。 キ 結論 前記のとおり、本件商標は、引用商標1及び引用商標2と称呼及び観念において同一であって、外観においても類似するものである。本件商標は、引用商標1及び引用商標2と実質的に類似するため、出所混同のおそれがある。また、引用商標1及び引用商標2は、本願商標の商標登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されたものである。 そして、本件商標の指定役務と引用商標1及び引用商標2に係る使用役務は同一又は類似のものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。 (2)商標法第4条第1項第15号について ア 引用商標について 申立人が証拠として引用する引用商標1は、前記「(1)商標法第4条第1項第10号について」のイで述べたとおりの構成であり、本件商標の出願前から「コメディ及び音楽の演奏に関する番組を特徴とする娯楽の提供」等の役務について使用されている。 申立人が証拠として引用する引用商標2は、前記「(1)商標法第4条第1項第10号について」のイで述べたとおりの構成であり、本件商標の出願前から「スマートフォン用ケース,かばん,マグカップ,タンブラー,水筒,ブランケット,ティーシャツ,フード付きスウェットシャツ,マイクロホン,切り抜き」等の商品について使用され(甲3の2)、「テレビ・ブロードバンド・ワイヤレス及びオンラインサービスによって配信されるコメディ及び音楽の演奏を特徴とするテレビ番組・オーディオビジュアル及びマルチメディア連続番組による娯楽の提供,ビデオオンデマンドによるコメディ及び音楽の演奏を特徴とするダウンロードできない娯楽番組の提供,インターネット・持ち運び可能な無線装置経由による娯楽に関する情報の提供,放送番組の制作,放送番組の制作における演出」等の役務に係るPR活動に使用されている(甲3の1、甲27、甲32)。 また、申立人が証拠として引用する引用商標3は、「CARPOOL KARAOKE」の欧文字からなり、平成31年1月11日に登録出願、第9類、第28類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品とし、令和1年11月29日に設定登録され、商標権は現に有効に存続している(甲4)。 イ 本件商標と引用商標との対比 引用商標1及び引用商標2については、前記「(1)商標法第4条第1項第10号について」のウで述べたとおりである。 引用商標3については、その構成から自然に「カープールカラオケ」の称呼が生じる。 本件商標の欧文字部分は、引用商標3を構成する欧文字と、大文字と小文字の差異のみしかなく、生じる称呼及び観念は同一である。 したがって、本件商標は引用商標とは相紛らわしく、類似のものである。 ウ 引用商標の周知及び著名性について 申立人は引用商標及びこれらに類似する商標を5年以上使用しており、日本を含む世界26カ国及び欧州連合に商標登録出願中のものも含め、多数の登録商標を所有している(甲33)。 申立人は、「Carpool Karaoke」シリーズに加え、引用商標を甲3の2に示すような様々な商品について使用し、それらは申立人の商品を表すものとして、広く認識されている。 また、「Carpool Karaoke」シリーズは、引用商標2を使用して、例えば2017年には、カリフォルニア州ロサンゼルスに設置された人目につく看板(甲34)などで、大きく宣伝されている。 「(1)商標法第4条第10号について」のカで述べたとおり、引用商標1及び引用商標2は、本願商標の商標登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表すものとして著名なものである。そして、それに関連し、申立人の業務に係る商品を表すものとして、引用商標2及び引用商標3についても本願商標の商標登録出願時及び登録査定時において、需要者に広く認識されている。 エ 出所の混同 「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある」とは、その他人の業務に係る商品又は役務(以下「商品等」という。)であると誤認し、その商品等の需要者が商品等の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品等であると誤認し、その商品等の需要者が商品等の出所について混同するおそれがある場合をもいう。 申立人は、アメリカの3大テレビ局の一つである。そして、申立人は「Carpool Karaoke」シリーズに関連し、様々な商品及び役務について,引用商標及びこれらに類似する商標を使用している。 本件商標に係る指定役務中「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出」は、申立人の業務に係る役務と同一又は類似するものである。商標「Carpool Karaoke」は識別力があり、申立人と関連付けられている。引用商標を使用した場合は、これに接する取引者及び需要者は、申立人の業務に係る役務であると誤認し、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるばかりでなく、著名である引用商標を連想・想起し、関連会社等、申立人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、役務の出所について混同を生じることは明らかである。 オ 結論 前記により、本件商標が本件指定役務に使用された場合に、取引者又は需要者は、申立人の業務に係る商品・役務と誤認し、商品等の出所について混同を生じるおそれがあることが明らかであるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第19号について ア 引用商標の周知及び著名性について 前記「(1)商標法第4条第1項第10号について」カ及び「(2)商標法第4条第1項第15号について」ウで述べたとおり、引用商標は、申立人による引用商標の使用及び宣伝活動の結果、本件商標の登録出願日前より、日本を含む世界中で高い信用及び評判を確立し、日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標である。 イ 本件商標と引用商標との類似性について 前記「(1)商標法第4条第1項第10号について」(ウ)及び「(2)商標法第4条第1項第15号について」イで述べたとおり、本件商標と引用商標とは類似する商標である。 ウ 不正の目的について 前記のとおり、引用商標は我が国及び外国において、本件商標の登録出願時において周知及び著名であって、本件商標は引用商標と実質的に同一といえるものである。引用商標は造語よりなるものであり、日本人にとっても馴染み深い「Karaoke」の文字から構成されることから、我が国の需要者の印象に強く残るものである。 申立人が、引用商標を使用し続けた結果、その使用商標に係る役務に対する評価は高い。 被申立人が本件商標を使用した場合、引用商標に化体した信用、名声を毀損させるおそれがあり、本件商標は、引用商標の持つ顧客吸引力、名声ヘのただ乗りによって不正の利益を得る目的、ないし引用商標の有する強い識別力、顧客吸引力を希釈化することによって申立人の権利に損害を加える目的をもって使用されるものと推認される。 ましてや、日本でも著名なBTS(防弾少年団)が「Carpool Karaoke」に出演したことで、引用商標への注目度がさらに高まった直後に本件商標が出願されたことに鑑みると、不正の目的をもって出願されたものと考えられる。 以上より、本件商標は、他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認される。 以上を示すものとして、申立人による宣誓書を添付する(甲6)。 エ 結論 前記により、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知性について 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。 (1)引用商標の背景について ア 申立人は、アメリカ合衆国ニューヨーク州の法律に基づき、設立及び組織された法人であり、1927年1月27日、「ユナイテッド インディペンデント ブロードキャスティング インコーポレイテッド」の名称においてラジオ放送事業者として創立された、アメリカのテレビ局である(甲6)。 イ 申立人は、アメリカ合衆国において、深夜トーク番組「レイト×2ショー」を制作、配信しており、ジェームズ・コーデンが2015年より4代目の司会を務め、現在も放送されている(甲2、甲7)。 ウ 「Carpool Karaoke」は、上記「レイト×2ショー」のコーナーのうちの一つの名称である(甲8)。 エ 「レイト×2ショー」のYouTubeチャンネルは、ジェームズ・コーデンがホストになった第1週目の放送中に登録者が330%増加した(甲9)。 オ 「レイト×2ショー」は、ジェームズ・コーデンが司会に就任した2015年以来、数々の賞にノミネートされ、2016年プライムタイム・エミー賞のインタラクティブ番組賞、同年放送映画批評家協会賞のトーク番組賞、2018年テリーアワードのコメディ賞及びユーモア賞、2020年放送映画批評家協会賞のトーク番組賞などを受賞している(甲7、甲10)。 カ 2021年2月26日現在、「レイト×2ショー」のインスタグラムのフォロワー数が325万人以上、ツイッターのフォロワー数が155万人以上、フェイスブックのフォロワー数が759万人以上、YouTubeは約2,600万人のチャンネル登録者数がいる(甲11?甲14)。 キ 日本においては、「レイト×2ショー」は、2015年6月28日よりAXN JAPANにおいて放送が開始され、当時からこの番組には、「Carpool Karaoke」のコーナーが含まれている(甲6、甲15)。 (2)引用商標1及び引用商標2の周知性について ア 「Carpool Karaoke」は、ジェームズ・コーデンが運転しながら、車の中でゲストの有名人と話したり、冗談を言ったり、歌ってゲストにインタビューをする、「レイト×2ショー」のコーナーの一つであり、「Carpool Karaoke」の初回は、2015年3月25日に放送され、ゲストに有名人であるマライア・キャリーが出演した(甲6、甲18)。 イ 「Carpool Karaoke」は、2015年3月25日放送の初回以降、これまでに約60回の放送があり、ブルーノ・マース、マドンナ、レディ・ガガ、ブリトニー・スピアーズ、セレーナ・ゴメス、デミ・ロヴァート、ニック・ジョナス、スティービー・ワンダーなどの有名アーティストが出演している(甲6、甲8)。 ウ 有名な歌手のアデルが2016年に出演した回は、5日以内でYouTubeの視聴者が4,200万人に達し、この動画は、2016年に最多視聴回数記録を破り、YouTubeで最も話題を集めた動画となった。さらにこの回は、本件商標の出願日前である2019年3月時点での視聴回数が1億9,500万回以上となり、2013年以来、深夜番組を起源とする最も人気のある動画となった。現在でも2億3,000万回以上の視聴がされ続けている(甲6、甲19?甲22)。 エ アデルの出演回の他、「Carpool Karaoke」の動画のうち、ワン・ダイレクション、ジャスティン・ビーバー、シーア、ブルーノ・マース、セレーナ・ゴメスが出演した少なくとも5回が、本件商標の出願日である2020年3月30日より以前に、日本を含む世界中で、1億回以上視聴されている。さらに、ミュージシャン以外が出演した中で最も視聴回数が多かったのは、当時のファーストレディであるミッシェル・オバマが出演した回で、8,000万回以上に達した(甲22?甲24)。 オ 「Carpool Karaoke」シリーズは、2018年にはPGAアワード短編プログラム部門を、2018年から2020年にはプライムタイム・エミー賞バラエティ・シリーズ短編部門を3年連続受賞した(甲25)。 カ 「Carpool Karaoke」シリーズは、世界中でアクセス可能なソーシャルメディアを利用している。インターネットでの「Carpool Karaoke」の人気は、App1e Musicによって配信される単独シリーズの制作にもつながり、このシリーズは2017年8月9日に開始し、現在シーズン3である(甲6、甲26)。 キ 「Carpool Karaoke」シリーズに関連するインスタグラムは2021年2月25日現在で45万人以上、ツイッターは2021年2月26日現在で7万3千人のフォロワー数を有する(甲27、甲28)。 ク 「Carpool Karaoke」は、日本においても、2015年6月28日にAXN JAPANにおいて放送が開始されている。2016年2月5日には日本テレビ放送網の人気情報番組「ZIP!」において紹介され、その後もメディアで取り上げられている(甲29、甲30)。 ケ 以上によれば、「レイト×2ショー」は、申立人が制作、配信する深夜テレビ番組であり、該番組は、インスタグラム、ツイッター、フェイスブック、YouTubeのフォロワー数や登録者数などを考慮すれば、ある程度知られているということもできるが、そのフォロワー数や登録者数の多寡について、比較すべき客観的な証拠も見いだせないため、これらから需要者の認知度を把握することができず、その放送がされている地域、視聴者数、視聴率なども明らかではない。 また、「Carpool Karaoke」は、上記番組のコーナーの一つの名称であり、初回(2015年3月25日)から、これまで約60回の放送がされているとしても、平均月1回にも満たないものであって、決して多いものではない。 そして、引用商標に係る宣伝広告の費用、内容等を具体的に示す証左は見いだせない。 さらに、申立人が、引用商標及びこれらに類似する商標を、我が国を含む世界26カ国及び欧州連合に商標登録出願又は商標登録をしているとしても、該事実は、引用商標の周知性を直接的に裏付けるものではない。 以上を踏まえると、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国及び外国における需要者に広く認識されているものとは認めることができない。 2 商標法第4条第1項第10号該当性について 引用商標1及び引用商標2は、前記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務であることを表示するものとして、日本国内の需要者の間に広く認識されているものということはできないものである。 そうすると、本件商標と引用商標1及び引用商標2が同一又は類似の商標であり、また、本件商標に係る指定役務と引用商標1及び引用商標2の使用に係る役務とが同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標とはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について 引用商標は、前記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人)の業務に係る商品及び役務であることを表示するものとして、日本国内の需要者の間に広く認識されているものということはできないものである。 そうすると、本件商標と引用商標の類似性の程度、両商標に係る役務並びに取引者及び需要者の関連性の程度などを考慮しても、本件商標は、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想又は想起することはないものと判断するのが相当である。 してみれば、本件商標権者が本件商標をその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が、他人(申立人)の業務と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標と引用商標とが取引者、需要者において出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第19号該当性について 商標法は、法第4条第1項第19号「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用するもの」に該当する商標について、商標登録を受けることができないと規定している。 しかし、引用商標は、上記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人)の業務に係る商品又は役務を表すものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていたものとはいえないものである。 また、申立人は、商標権者が不正の目的をもって本件商標を使用していることについての具体的な主張や証拠を提出していない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 5 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 引用商標2(色彩は原本参照) ![]() |
異議決定日 | 2021-10-07 |
出願番号 | 商願2020-34514(T2020-34514) |
審決分類 |
T
1
651・
255-
Y
(W41)
T 1 651・ 25- Y (W41) T 1 651・ 271- Y (W41) T 1 651・ 222- Y (W41) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 蛭川 一治 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
森山 啓 小田 昌子 |
登録日 | 2020-10-06 |
登録番号 | 商標登録第6300836号(T6300836) |
権利者 | ファーストプロモート株式会社 |
商標の称呼 | カープールカラオケ、カープール |
代理人 | 特許業務法人きさ特許商標事務所 |