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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y0941
管理番号 1380096 
審判番号 取消2020-300672 
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-09-25 
確定日 2021-11-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4985285号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4985285号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成18年2月7日に登録出願、第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ用のゲームプログラム,コンピュータ用ゲームプログラム」及び第41類「通信回線を利用して行うゲームの提供」を含む第9類及び第41類に属する商標登録原簿記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年8月23日に登録査定、同年9月8日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判の請求の登録は、令和2年10月15日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の平成29年10月15日から令和2年10月14日までを以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、「商標法第50条第1項の規定により、登録第4985285号の指定商品及び指定役務中、第9類『家庭用テレビゲームおもちゃ用のゲームプログラム,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラム,携帯電話機用ゲームプログラム,コンピュータ用ゲームプログラム,電子計算機,その他の電子応用機械器具及びその部品,業務用テレビゲーム機用のプログラム,業務用テレビゲーム機,スロットマシン,携帯電話機用ストラップ,その他の電気通信機械器具,電気磁気測定器,ダウンロード可能な画像・映像・文字,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオテープ・ビデオディスク及びその他の記録媒体,電子出版物,ダウンロード可能な音楽又は音声,録音済みのコンパクトディスク,その他のレコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,乗物運転技能訓練用シミュレーター,運動技能訓練用シミュレーター,理化学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械器具,計算尺』及び第41類『通信回線を利用して行うゲームの提供,娯楽施設の提供,通信回線を利用して行う画像・映像・音楽・音声の提供,映画の上映・制作又は配給,音楽の演奏,演芸の上演,演劇の演出又は上演,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,スポーツの興行の企画・運営又は開催,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,その他の娯楽の提供,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,電子出版物の貸与,写真の撮影』(以下「請求に係る指定商品及び指定役務」という。)についての登録を取り消す。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、請求に係る指定商品及び指定役務について、継続して3年以上日本国内において本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないことから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、要証期間における、第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ用のゲームプログラム,コンピュータ用ゲームプログラム」(以下「使用商品」という。)及び第41類「通信回線を利用して行うゲームの提供」(以下「使用役務」という。)についての本件商標の使用の事実を立証するため、乙第1号証ないし乙第10号証を提出しているが、以下のとおり、実質的な使用証拠と思われる乙第6号証ないし乙第10号証は、本件商標の使用事実を裏付けるものではない。
(2)乙第6号証は、「侍道4plus PlayStation3 the Best」のゲームソフトのパッケージに本件商標が付されていることを示しているようにも思われることから、ゲームが記憶された記録媒体(ディスク)自体の販売において本件商標の使用を立証することを目的とすると共に、ゲームソフトの使用商品及び使用役務の広告として本件商標の使用を立証することを目的としているようにも思われる。
しかしながら、乙第6号証では、そもそも被請求人が矢印で示そうとする図案があまりにも小さく不鮮明であるため、何らかの図案があるようにはみえても本件商標との同一性は確認することができない。
また、ゲームが記憶された記録媒体自体の販売についても、その販売された時期に関しては、乙第6号証では、ゲームが記憶された記録媒体の発売日は記載されているものの、それが継続して販売されていたことについては確認することができない。
更に、ゲームソフトの使用商品及び使用役務の広告に関して、本件商標が付されたゲームソフトのパッケージが使用されていたとしても、ゲームソフトのパッケージの画像は、単に「侍道4plus PlayStation3 the Best」なるゲームが記録媒体に記憶されたゲームソフトとしてリリースされた際のパッケージラベルのビジュアルを参考としてウェブサイトに掲載したという程度のものであり、それに加え、仮にパッケージの画像に本件商標が含まれていたとしても、パッケージの右下付近に極小さく付されているのみであり、それがゲームソフトの使用商品及び使用役務との関係において自他商品・役務識別機能を発揮する態様で使用されているとはいい難く、上記のような状況を鑑みると、使用商品及び使用役務の広告として使用されているということはできない。また、たとえそれが使用に該当し得る可能性があったとしても、使用についての時期については証明されておらず、日付らしきものは、左上のヘッダー部分の「2021/1/6」の表示のみである。これは、被請求人が当該ウェブサイトを刷り出した日であるように見受けられるが、2021年1月6日の時点でこれらの情報がインターネット上に存在したであろうことは推測できるとしても、これをもって、ゲームが記憶された記録媒体の発売日及びそのゲームに係る配信サービスの開始日以降2021年1月6日まで、このような情報が掲載されていることは確認することができない。なお、乙第6号証は、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下「ソニー社」という。)のウェブサイトであり、商標権者等における使用商品及び使用役務に関する広告に係る使用であることについても立証されていない。
(3)被請求人は、乙第7号証によって、要証期間内である2019年7月16日の時点で、本件商標が使用されていると主張するゲームソフト「侍道4plus」が配信されていたことにより、本件商標が要証期間内に使用されていたことを立証する目的のようである。
しかしながら、乙第7号証にあっては、その情報が2019年7月16日に掲載されたことを示す記載は認められないことに加え、本件商標も一切表示されておらず、要証期間内に本件商標が使用されていることは確認することはできない。
(4)「2019年7月16日」の表示から乙第8号証に示された情報はこの日にインターネット上に掲載されたであろうことが推測される。
また、当該ウェブサイトにおいては、「その他PS Nowタイトルの一部をご紹介」という記載の下に「侍道4plus PlayStation3 the Best」なるゲームの紹介がされている。
しかしながら、乙第8号証においては、乙第6号証にも見られる2012年1月26日発売の記録媒体に記憶されたゲームソフトのパッケージと思われる画像が掲載されており、その画像の右下には本件商標らしき図案が見受けられるものの、商標の態様の細部が不明確であることに加え、本件商標らしき図案が商標的態様で使用されているというより単なるデザインとして表されているようにも思われる。また、仮に、本件商標らしき図案が商標の構成要素として認識されることがあったとしても、その左横に付されている「ACQUIRE」なる文字と共に色彩の統一感をもって表されていることからすると、「ACQUIRE」の文字と共に一体的な商標として使用されているとも認識することができる。
また、乙第8号証にあっては、記録媒体に記憶されたゲームソフトの販売等の情報が掲載されているわけではなく、ソニー社が運営するクラウド型ゲーム提供サービス「PlayStation Now」に関する情報を確認することができるのみである。したがって、乙第8号証に示されているゲームソフトのパッケージの画像は、単に「侍道4plus PlayStation3 the Best」なるゲームが記録媒体に記憶されたゲームソフトとしてリリースされた際のパッケージラベルのビジュアルを参考としてウェブサイトに掲載したという程度のものであって、仮に、パッケージの画像に本件商標が含まれていたとしても、それが使用役務との関係において識別機能を発揮する態様で使用されているとはいい難く、使用役務の広告として使用されているということはできない。なお乙第8号証は、ソニー社のサイトであり、商標権者等における使用商品及び使用役務に関する広告に係る使用であることについても立証されていない。
更に、当該ウェブサイトにおいては、「PlayStation Now」のサービスを通じ、クラウドサーバーに格納されたPlayStation4、PlayStation3タイトル(ゲームソフト)をゲーム機やPCからネットワーク経由で利用するのみならず、対象のタイトルについてはゲーム機にダウンロードすることを可能とする旨の紹介がなされる一方、ゲームソフト「侍道4plus PlayStation3 the Best」についてのダウンロード可否については一切明示されていない。したがって、乙第8号証によっては、本件商標が第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ用のゲームプログラム,コンピュータ用ゲームプログラム」との関係において使用の立証はされていない。
(5)乙第9号証は、ゲームソフト(ディスク)の本体ではなく、データを複製した単なるCD-ROMであることから、それが実際にゲームソフト又は配信されたゲームソフトの起動画面であるのか否かを確認することはできない。
仮にそれがゲームソフト又は配信されたゲームソフトの起動画面であったとしても、需要者がゲームソフトを店頭やオンラインで購入する際は、ゲームソフトのパッケージやウェブサイト上の購入申込みの画面における表示をみて購入をするのであり、また、需要者がゲームソフトの配信の申込みをする場合であっても、その配信申込みの取引画面の表示をみて購入をするのである。そうすると、ゲームに係る取引に当たっては、記録媒体に記憶されたゲームソフトのパッケージに掲載された表示や配信申込みの為の取引画面等に掲載された表示をもって需要者は商品等の購入を決めるのであり、ゲームソフトを起動させた後の画面の中の一場面の表示を確認した上で商品等の購入を決めるとは到底考えられず、故に、当該画面に示される表示をもって取引が行われるようなことはない。
したがって、乙第9号証をもって、商標権者等による要証期間内の本件商標の使用は証明されていない。
(6)乙第10号証はソニー社の発行に係る2018年10月期の被請求人宛の仕入代金支払通知及びこれに係る支払明細書の写しと見受けられるものであるが、「侍道3plus PLAYSTATION」及び「侍道4plus PlayStation3」についての取引が行われたようであることを示すのみに止まり、本件商標は一切示されていない。
(7)仮に、本件商標が要証期間内に請求に係る指定商品及び指定役務との関係で何らかの使用行為があったと認められ、形式的には商標法第2条第3項各号に定められた「使用」に該当すると判断された場合であっても、被請求人の主張する使用事実は「被請求人による」実質的な商標の使用として認められるべきものでない。
本件商標は、乙第2号証においても確認できるように、後に被請求人に吸収合併されることとなる、コンピュータゲーム開発等を手掛ける株式会社スパイク(以下「スパイク社」という。)が自身の名義で2006年2月7日付にて出願され、当初スパイク社を指称する標章として使用されていたものである。
スパイク社は、2012年4月に当時株式会社チュンソフトと称していた被請求人(以下「被請求人会社」という。)に吸収され、それに伴い被請求人会社はその商号を現行の株式会社スパイク・チュンソフトに変更した(甲1の1ないし3)。被請求人会社はまた、その翌月の2012年5月31日付にて本件商標登録につき一般承継による移転登録申請を行う(乙2)一方で、その6日後の2012年6月6日に「SPIKE CHUNSOFT」の文字を含み被請求人会社の名称の略称ともいうべき「スパイクチュンソフト」の称呼が生ずる商標「図+SPIKE CHUNSOFT」について商標登録出願をしている。当該商標については、2012年12月7日に第5542082号の番号が付され登録となり(甲2の1ないし2)、また、被請求人会社にあっては、合併吸収後にリリースされたゲームソフトについては、早い段階から本件商標ではなく第5542082号に係る商標若しくはこれと社会通念上同一と解される商標を使用しているものと見受けられ(甲3の1ないし8)、本件商標について被請求人会社の識別標識として使用を継続しようとする意思はみられず、また、被請求人が運営するウェブサイト中でゲームソフト「侍道」シリーズの特集を行っている「侍道総合サイト」(乙4)をみても、スパイク社との合併後において本件商標を積極的に使用している事実は確認することはできず、本件商標を被請求人会社の「図+SPIKE CHUNSOFT」のブランドと別個のブランドとして位置づけ、その使用を継続しようとする意思があるとみることはできない。
上述の実情を考慮するに、被請求人提出の乙第6号証、乙第8号証及び乙第9号証について、使用商品及び使用役務との関係で何らかの本件商標の使用行為はあったと判断された場合であっても、それは、要証期間前に発売された記録媒体に記憶されたゲームソフトのパッケージデザインやゲーム起動時の画面においてデザイン全体を変更することがコスト的に見合わない等の理由により被吸収企業である消滅会社を指称する商標の表示が残っている程度のものと解すべきであって、被請求人にあっては、本件商標に係る商標権を一般承継したものの、自己を指称する商標として本件商標の使用を継続する意思はないと解するのが至極自然である。つまり、要証期間前に本件商標が指称するところの企業は消滅し、またこれを出所識別標識として使用する意思を有するものも存在しない状況にあったものである。この点、ゲームソフト「侍道4plus PlayStation3 the Best」のパッケージの裏面には、「スパイク株式会社」なる表示が掲載されたままであるようであることからも、被請求人会社を指称する商標として使用する意思がないものと理解することができる。
そこで、この様な商標の消極的な使用について、はたして商標法第50条2項の「登録商標の使用」に該当するのか否かについて検討すると、ここにいう「登録商標の使用」は、法の趣旨に照らせば、他者の商品・役務と自己の商品・役務とを識別する態様での使用と解するべきであると考えられ、すなわち、本件でいえば被請求人会社に係る製品であることが識別できるような使用でなければ「登録商標の使用」には該当しないものと考える。上述のように、既に消滅した会社を指称する商標としてのみ機能している場合に、それが「登録商標の使用」として商標権が維持されるとするならば、その商標権の存在により第三者の商標の選択の余地を不当に狭めることとなり、法の趣旨の反することは明らかである。したがって、上述の観点からしても、本件商標について、請求に係る指定商品及び指定役務との関係で要証期間内に商標権者によって法が定めるところの使用がなされたということは認められるべきではない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。
1 被請求人である株式会社スパイク・チュンソフトは、1984年4月9日に設立されたものであって、ゲームコンテンツの企画・開発・販売・運営、ぱちんこ・パチスロの企画・開発を主たる事業とするものであるところ(乙3)、2012年に同社に合併されたスパイク社は、明治時代に残された最後の侍を体験できるアクションアドベンチャーゲームソフト「侍」の製造販売を2002年に開始した。当該ゲームソフトは好評を博し、その後、「侍道2」(2003年)、「サムライウエスタン」(2005年)、「侍道3」(2008年)、「侍道4」(2011年)へとシリーズ化しているものである(乙4、乙5)。本件商標は、「侍道4plus」のバージョンにおいて、同ゲームソフトの商標として、2012年1月26日以来、現在に至るまで継続して使用されているものである(乙6)。
2 本商標に係るゲームソフトは、ソニー社が発売している家庭用ゲーム機である「PlayStation3」に対応しているもので、2012年1月26日から、ゲームソフトを記憶した記録媒体の形態で販売をされている他、2015年9月16日からは、ソニー社が提供している「PlayStationNow」を通して、オンラインで配信される形態でも販売されているものである(乙6?乙10)。
なお、乙第7号証として提出するウェブサイトは、2019年7月16日にアップされたものである。
3 以上のとおり、被請求人である株式会社スパイク・チュンソフトは、本件商標を、本件審判請求の予告登録日(2020年10月15日)前3年以内に、第9類の指定商品中「家庭用テレビゲームおもちゃ用のゲームプログラム,コンピュータ用ゲームプログラム」及び第41類の指定役務中「通信回線を利用して行うゲームの提供」について使用していたことは明白であるから、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消されるべきものではない。

第4 当審の判断
1 事実認定
当事者の提出した証拠及び被請求人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)被請求人は、株式会社チュンソフトとして1984年4月9日に設立されたものであり、ゲームコンテンツの企画・開発・販売・運営等を主たる事業とするものであるところ、2012年4月にスパイク社を同社に吸収合併し、商号を株式会社スパイク・チュンソフトに変更したものである。同社に合併されたスパイク社は、アクションアドベンチャーゲームソフト「侍」の製造販売を2002年に開始し、当該ゲームソフトは、その後、「侍道2」(2003年)、「サムライウエスタン」(2005年)、「侍道3」(2008年)、「侍道4」(2011年)へとシリーズ化している。そして、「侍道4」に追加要素を収録した廉価版、「侍道4plus」が2012年1月26日に発売された(甲1の1?3、乙3?乙5)。なお、本件商標は、設定登録時の権利者は、スパイク社であったが、2012年(平成24年)5月31日に、一般承継により被請求人に権利が移転している(乙2)。
(2)ソニー社が発売している家庭用ゲーム機「プレイステーション」のオフィシャルサイトのソフトウェアカタログによれば、「侍道4plus」は、「プレイステーション3」に対応し、2012年1月26日からディスクの形態で販売されているほか、2015年9月16日からは、同社が提供している「PlayStationNow」を通じて、オンラインで配信される形態(1ヶ月又は3ヶ月の定額制サービス)でも販売されている。また、同ソフトウェアカタログには、「侍道4plus」のパッケージの画像も表示されている(乙6)。
(3)2019年7月16日のソニー社の「PlayStation.Blog」において、ネットワーク経由で遊ぶことができる「PlayStationNow」のゲームソフトとして「侍道4plus PlayStation3 the Best」が紹介されており、発売元はスパイク・チュンソフトと表示されている。また、「侍道4plus」のパッケージの画像も表示されており、当該画像中の右下に「spike」(「p」の文字のみが赤字)の欧文字を、手書き風の横長楕円形で囲み、当該楕円形の上部に2本の待針状の図形を触覚が生えているかのように描き、当該待針状の図形の間に、やや崩して手書き風に描かれた凸状の図形を表してなるもの(以下「使用商標」という。)が表示されていることが確認できる(乙8)。
(4)使用商標は、ゲームソフト「侍道4plus」のパッケージ(右下)に表示されているところ、当該パッケージの画像が、当該ゲームソフトを紹介する際の広告(以下「本件広告」という。)において使用されているものである(乙8)。
2 判断
上記1で認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標
本件商標は、別掲のとおり、「spike」(「p」の文字のみが赤字)の欧文字を、手書き風の横長楕円形で囲み、当該楕円形の上部に2本の待針状の図形を触覚が生えているかのように描き、当該待針状の図形の間に、やや崩して手書き風に描かれた凸状の図形を表し、右側の待針状の図形の右下の付記的部分に、ごく小さく「R」(審決注:「R」は、○の中にRの文字。以下同じ。)の記号を表示してなるものである。
一方、上記1(3)のとおり、乙第8号証には、使用商標が表示されているところ、やや不鮮明ではあるものの、本件商標と同様に、「spike」(「p」の文字のみが赤字)の欧文字を、手書き風の横長楕円形で囲み、当該楕円形の上部に2本の待針状の図形を触覚が生えているかのように描き、当該待針状の図形の間に、やや崩して手書き風に描かれた凸状の図形を表してなるものであることは、十分に確認できるところである。
そして、唯一、不鮮明なために確認できないのは、右側の待針状の図形の右下の付記的部分に、ごく小さく表示された「R」の記号であるが、当該記号は、登録商標を示す記号として一般に親しまれているものであって、自他商品・役務の識別機能を有しないものであるのに対し、乙第8号証の使用商標は、自他商品・役務の識別機能を有するものであって、本件商標と社会通念上同一と認められる商標であるといえる。
(2)使用役務
本件商標の使用に係る役務は、オンラインで配信されるゲームの提供(乙6、乙8)であるところ、当該役務は、請求に係る指定商品及び指定役務中、第41類「通信回線を利用して行うゲームの提供」である。
(3)使用時期
本件広告(乙8)の日付は「2019年(令和元年)7月16日」であり、要証期間内である。
(4)使用者
「侍道4plus PlayStation3 the Best」の紹介(乙8)には「発売元:スパイク・チュンソフト」の表示があり、これは、本件商標権者「株式会社スパイク・チュンソフト」と認められる。
(5)使用行為
使用商標が付された本件広告(乙8)は、「PlayStation.Blog」を通じてインターネット上で提供されたことから、「広告を内容とする情報の電磁的方法による提供」(商標法第2条第3項第8号)が行われたものと認められる。
(6)小括
上記(1)ないし(5)で判断したとおり、本件商標の商標権者である株式会社スパイク・チュンソフトは、要証期間に日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務中、第41類「通信回線を利用して行うゲームの提供」に関する広告を内容とする情報に本件商標と社会通念上同一の商標を付して、ソニー社の「PlayStation.Blog」を通じて電磁的方法により提供していたこと(商標法第2条第3項第8号該当)が認められる。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、乙第8号証においては、ゲームソフトのパッケージと思われる画像の右下に本件商標らしき図案が見受けられるものの、商標の態様の細部が不明確であることに加え、本件商標らしき図案が商標的態様で使用されているというより単なるデザインとして表されているようにも思われ、また、仮に、本件商標らしき図案が商標の構成要素として認識されることがあったとしても、その左横に付されている「ACQUIRE」の文字と共に色彩の統一感をもって表されていることからすると、「ACQUIRE」の文字と共に一体的な商標として使用されているとも認識することができる旨主張している。
しかしながら、乙第8号証には、やや不鮮明ではあるものの、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標が識別標識として表示されていることは上記のとおりである。また、使用商標の左横に表示されている「ACQUIRE」の文字については、一定の間隔があるため視覚上明確に分離して看取されるとともに、造語と認められる「ACQUIRE」の文字と「野球や陸上競技などで、滑り止めのため、靴底に打ちつける釘などの突起物。」の意味を有する「spike」の文字(「デジタル大辞泉」小学館)との間に何らの関連性も想起し得ないことから、「ACQUIRE」の文字と使用商標とが常に一体的な商標として認識されるということはできない。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
(2)また、請求人は、乙第8号証に示されているゲームソフトのパッケージの画像は、単に「侍道4plus PlayStation3 the Best」なるゲームが記録媒体に記憶されたゲームソフトとしてリリースされた際のパッケージラベルのビジュアルを参考としてウェブサイトに掲載したという程度のものであって、当該パッケージの画像に本件商標が含まれていたとしても、それが使用役務との関係において、識別機能を発揮する態様で使用されているとはいい難く、当該役務の広告として使用されているということはできないし、同号証は、ソニー社のサイトであって、商標権者等における当該役務に関する広告に係る使用であることについても立証されていない旨主張している。
しかしながら、オンラインで配信されるゲームソフトを紹介する広告で、当該ゲームソフトのパッケージの画像が使用されるのは何ら不自然なことではないし、これに接する需要者が当該パッケージの画像中の商標を配信サービスの対象たるゲームソフトの商標として認識し得ることも極めて自然なことである。また、「侍道4plus PlayStation3 the Best」の紹介(乙8)には、「発売元:スパイク・チュンソフト」の表示があることからすれば、本件商標権者である「株式会社スパイク・チュンソフト」が、ソニー社の「PlayStation.Blog」を通じて、「侍道4plus PlayStation3 the Best」の広告を行っていたものとみるのが相当である。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
(3)さらに、請求人は、被請求人が、合併吸収後にリリースされたゲームソフトについては、本件商標ではなく「SPIKE CHUNSOFT」の文字を有する登録第5542082号商標を使用しているものと見受けられること(甲3の1?8)等を踏まえると、本件商標について被請求人は自らの識別標識として使用を継続しようとする意思がみられないから、乙第6号証、乙第8号証及び乙第9号証について、本件商標の使用行為があったとしても、それは、被吸収企業である消滅会社を指称する商標の表示が残っている程度のものと解すべきであって、商標法第50条第2項の「登録商標の使用」には該当しない旨主張する。
しかしながら、本件商標の商標権者は、要証期間に日本国内において、「通信回線を利用して行うゲームの提供」に関する広告を内容とする情報に本件商標と社会通念上同一の商標を付して電磁的方法により提供していたと認められること、上記のとおりであって、請求人の主張は、独自の解釈に基づくものであるから、これを採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件商標の商標権者が、要証期間に日本国内において、請求に係る指定商品及び指定役務に含まれる役務について、本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていたことを証明したと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべき限りではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

別掲(本件商標)(色彩は原本参照。)




審理終結日 2021-06-10 
結審通知日 2021-06-15 
審決日 2021-07-01 
出願番号 商願2006-9638(T2006-9638) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y0941)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 秀敏 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 板谷 玲子
森山 啓
登録日 2006-09-08 
登録番号 商標登録第4985285号(T4985285) 
商標の称呼 スパイク 
代理人 小出 俊實 
代理人 高見 香織 
代理人 橋本 良樹 
代理人 木下 恵理子 
代理人 幡 茂良 
代理人 岡部 讓 
代理人 蔵田 昌俊 

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