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審決分類 審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効としない Y42
管理番号 1380074 
審判番号 取消2020-300816 
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-11-09 
確定日 2021-11-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4882830号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4882830号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成16年9月17日に登録出願、第16類、第35類、第36類、第38類、第39類、第41類、第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同17年7月29日に設定登録、その後、指定商品及び指定役務については、8件の商標登録の取消しの審判により、それぞれ一部の指定商品又は指定役務についての登録を取り消すべき旨の審決がされ、同29年8月25日及び同30年2月5日にその審決の確定の登録がされた結果、第42類「機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,機械器具に関する試験又は研究,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」(以下「本件指定役務」という。)のみとなり、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判は、請求人により、令和2年11月9日に請求されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第51条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標の著名性及び引用商標に係る商品について
「QRコード/QR Code」の文字からなる商標(以下「引用商標」という。)は、請求人の独自開発に係る縦横の2方向に情報を記録することによって、大容量でありながら他のコードより10倍以上のスピードで読み取ることができる2次元バーコードについて使用する商標として請求人自身により採択され、1994年に発表されたものである(甲2?甲5)。
請求人は、引用商標と同一の商標について、我が国を始め世界各国において登録出願を行い、既に30か国以上で権利化されている(甲7)。
1994年よりも前からバーコードは普及していたが、当時、バーコードの容量は最大20字しかなく情報容量に限界があった。そこで、請求人は、縦と横の2次元空間に情報を持たせる2次元バーコードの開発に踏み切り、多くの情報を格納するとともに高速にコードを読み取れるようにすべく四角い形をした切り出しシンボルを入れたラベル形状の2次元バーコード、すなわち引用商標に係る商品を開発し、我が国を始め米国や欧州等で数多くの特許権を獲得してきた(甲8)。
引用商標に係る商品を開発以降、請求人は、企業や団体へ「QRコード」を紹介して回り、その結果、自動車部品業界の情報伝達ツールに引用商標に係る商品が採用され、また、請求人独自で又は他の企業との提携により、食品業界、薬品業界、コンタクトレンズ業界等向けの商品管理等サービスを提供し(甲9)、さらに、2018年から複数の企業が「QRコード」を利用した決済サービスの提供を開始し、多くの取引者・需要者により活用されてきている。
請求人は、引用商標に係る商品である2次元バーコードについて、より多くの人に使用してもらうべく、請求人が定めた規格どおりに使用されている限りは、特許権を行使しない。これはすなわち、当該規格に定められた以外の模倣品や粗悪品である2次元バーコードに対しては特許権を行使するという方針であり、引用商標に係る商品の周辺のノウハウを秘密に保持していることとあいまって、引用商標に係る商品は、その品質を引用商標によって証明されている(甲8)。
上記方針の下で、請求人は、引用商標に係る商品について業界標準化、国内規格化(JIS規格)、国際規格化(ISO規格)を推進し(甲8)、平成12年に引用商標に係る商品を読み取ることが可能な携帯電話が出るやいなや引用商標に係る商品は爆発的に普及した(甲6)。
そして、平成26年6月17日には、請求人の引用商標に係る商品開発チームが、欧州発明家賞「人気賞(ポピュラープライズ)」を受賞するに至った(甲10)。
請求人が、引用商標に係る商品の普及活動に当たり、無償配布したマニュアル「2次元コード QRコード読本」(甲11)を始め、各種媒体において「QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です」というように、引用商標がその指定商品である2次元コード(符号記録済みバーコード用ラベル)の「登録商標」であることを常に強調しながら広告宣伝してきている。
また、請求人は、引用商標に係る商品の普及活動と並行して、他社が2次元コードについて引用商標を使用する際には、「『QRコード』は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。」という商標登録表示を付すよう依頼し(甲12)、実際、数多くの企業が、自社の商品・サービスについて宣伝・広告等を行う際に「『QRコード』は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。」という商標登録表示を付している(甲13の1?甲13の21)。
このような請求人の30年近くにわたる、かつ、絶え間ない宣伝広告活動の結果、引用商標は、今や国内・海外の各分野の企業活動に従事する取引者・需要者間において、著名な登録商標として認識されている。
2 被請求人が、故意に、指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であって、請求人の引用商標に係る業務との関係において、商品の品質若しくは役務の質の誤認又は商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたことについて
(1)被請求人ウェブサイトにおける使用商標1の使用(甲15)
ア 故意について
当該ウェブサイトの先頭に大きく目立つよう表示されているように、被請求人が開発した「文字と2次元コードを組み合わせ誰が見てもリンク先の内容が分かりやすい2次元コード」(以下「使用商品」という。)の商標として、別掲2のとおり、「文字QRコード」(「QR」の文字の上部に「キューアール」の振り仮名が付されている。)の文字からなる商標(以下「使用商標1」という。)が使用されている。
また、当該ウェブサイトにおいては、「規格化されているので安価にご提供できます。」のタイトルの下、「『文字QRコード』は、ピクトグラムのような利用法のため、より多くのお客様にご使用いただけるよう同一デザインを中身のコードだけ変更してご提供いたします。」と記載されている。ここでわざわざ「文字QRコード」と「」(かぎ括弧)で強調されているのは、被請求人が2次元コードの出所標識として「文字QRコード」を使用している、すなわち実質的に商標として「文字QRコード」を使用しているとみるのが客観的に妥当である。
「文字QRコード」の語頭の「文字」が、使用商品との関係において識別力に欠ける部分であることは明らかである。そうとすると、「文字QRコード」は引用商標と類似する関係にあると考えるのが相当であるから、被請求人は引用商標と類似する使用商標1を、引用商標に係る商品と同一の関係にある商品について使用しているとみることができる。加えて、2015年5月27日付け被請求人プレスリリースで「※1 QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。」と自ら記載していたにもかかわらず(甲16)、わざわざ当該ウェブサイトでは当該注記が見受けられないことは、当該注記による出所混同防止を意図的に阻害しようとしているとみることができる。
したがって、この使用態様からも被請求人の本件商標の不正使用に対する積極的「故意」が客観的に推認される。
イ 商標の使用について
上記のとおり、「文字QRコード」の語頭の「文字」が使用商品との関係において識別力に欠ける部分であることは明らかであるから、使用商標1は本件商標と類似する関係にあると考えるのが相当である。
また、使用商標1が使用されている使用商品の「2次元コード」は第9類の「電子計算機用プログラム,符号記録済みバーコード用ラベル」に含まれ、本件指定役務中の第42類「電子計算機用プログラムの提供」とその内容・用途や取引者・需要者等を共通とするのは明らかであるから、両者は極めて類似する関係にあると考えるのが相当である。
ウ 出所の混同について
使用商標1が引用商標に係る商品と同一の関係にある使用商品に使用された結果、引用商標に係る商品と出所混同を生ずるおそれがあることは明白である。
被請求人が使用商標1を使用した結果、その使用対象である使用商品「2次元コード」が、あたかも、請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認、混同するおそれがある行為をしたとみることが客観的に妥当である。
エ 被請求人の強い故意性について
請求人が所有する登録第4075066号商標「QRコード/QRCode」(第9類)に対しては、被請求人により不使用取消審判が請求され(取消2015-300818)、当該取消審判の審決に対しては、被請求人により審決取消訴訟が提起された(平成30年(行ケ)第10059号)。
上記取消審判の平成30年3月27日付け審決(甲17)及び上記審決取消訴訟の平成31年1月29日付け判決(甲18)では、「QR Code」又は「QRコード」は自他商品等の識別標識としての機能を喪失しているとはいえず自他商品等の識別機能を発揮する態様で使用されることがあり得ると判断され、当該判決は確定した。
被請求人は、自己の請求に係る不使用取消審判及び審決取消訴訟において、「QR Code」又は「QRコード」が自他商品等の識別機能を発揮する態様で使用され得ると認められた後でも、引用商標に係る商品と誤認混同を生じさせるおそれがある態様で、使用商品について使用商標1の使用を継続しているわけであるから、このような使用態様からは、被請求人の本件商標の不正使用に対する強い故意性が推認され得るといわざるを得ない。
(2)被請求人ウェブサイトにおける使用商標2の使用(甲19)
ア 商標の使用について
被請求人は、2015年5月27日より、「利用者自らがオンライン上の(クラウド上の)プログラムを使用し、利用者オリジナルの画像やイラストを含んだフルカラー2次元コードを制作することを可能とするサービス」(以下「使用役務」という。)の提供を開始した。
被請求人は、使用役務の提供開始に関するプレスリリースを、2015年5月27日付けで被請求人のウェブサイト上に公開した(甲16)。使用役務は、ソフトバンクコマース&サービス株式会社が提供するクラウド型サービスのフォーマットを利用することから、その具体的内容は当該プレスリリースにもリンクが張られたウェブサイトから確認することが可能である(甲19)。
当該ウェブサイトにおいては、別掲3のとおり、本件商標の上部と下部とがスラッシュ記号を挟んで横一列に記載され、「QRコード」の文字が本件商標の実際の構成要素よりも大きく、上部とほぼ同じ大きさで記載された構成からなる商標(以下「使用商標2」という。)が使用されている。
以上のような、使用商標2における使用態様は、外観構成上本件商標と同一とは到底いえず、本件商標と「キューアールコード」の称呼を共通とする本件商標に類似する商標の使用であるということができる。
特に、使用商標2がスラッシュ記号「/」によって分離して認知される結果、その右側に、一際大きくかつ太文字で書された「QRコード」の文字のみが看者の目をひきつけ、当該「QRコード」部分のみが独立して出所表示機能を発揮するような表示態様となっている。これにより、使用商標2に接する取引者・需要者は、使用商標2全体ではなく、あたかも「QRコード」の文字部分のみが被請求人により所有される登録商標であるかのように把握・認識し得るとみるのが客観的に極めて妥当である。
また、使用商標2に係る使用役務は、常にインターネットを通じて所定のサーバーに接続し、オンライン上で実行・機能するものであるから、当該役務の提供行為は第42類に属する「電子計算機用プログラムの提供」に該当する。
イ 故意について
商標法第51条第1項に規定される「故意に」とは、「誤認・混同が生ずることの認識があったときに」と解することができる(甲21)。
この点、2015年5月27日付け被請求人プレスリリース「ロゴ・イラスト入りQRコード『ロゴQ』を作成できるクラウド型サービスをソフトバンク コマース&サービスの『Marketing Bank』から提供開始」(甲16)においては、「これを、QRコード(※1)に応用させたのが商標名『ロゴQ』です。」、「※1 QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。」との記載があるから、この時点において、「QRコード」が請求人に係る登録商標であるとの認識が被請求人にあることは明らかである。
少なくとも、2016年1月13日付けの被請求人によるプレスリリース(甲22)以降は、「QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。」との記載はプレスリリースを含む被請求人のウェブサイト中に一切見当たらない。すなわち、被請求人は、「QRコード」が請求人の登録商標であることを知りながら、あえてその旨の注意書きを省略したことが容易に推認される。そして、引用商標に係る商品に極めて類似する使用役務について、「QRコード」の文字部分のみが被請求人により所有される登録商標であるかのように把握・認識され得る使用商標2を使用しているわけである。
したがって、被請求人には、請求人の引用商標に係る業務との関係において、混同を生ずるものをしたことについて認識がありながら使用商標2を使用していた、すなわち「故意に」使用商標2を使用していたと考えるのが相当である。
ウ 出所の混同について
引用商標は、今や国内・海外の各分野の企業活動に従事する取引者・需要者間において、著名な登録商標として認識されていることに鑑みれば、使用商標2が引用商標に係る商品に極めて類似する使用役務に使用された場合には、使用商標2に接する取引者・需要者に対し、請求人の引用商標に係る業務との関係において、商品又は役務と混同を生じさせるものをしたと考えるのが相当である。
(3)被請求人ウェブサイトにおける使用商標3の使用(甲23)
ア 故意について
被請求人は、被請求人の開発に係る2次元コードの紹介を内容とするウェブページのタイトル中に別掲4のとおりの構成からなる商標(以下「使用商標3」という。)を使用している。そして、当該タイトルをクリックしてリンクする画面(甲23)右下の枠の中で「8区分野では『QRコード』の名称を使用することは、当社の商標と同一又は類似の商品(役務)の使用となります。8区分野に於いて『QRコード』の名称を使用したい場合は、事前に弊社までいつでもご相談下さいませ。」と記述している。
ここで「『QRコード』の名称」と婉曲的な言い回しにしているものの、文脈やその上に記載された商品・役務との関係を考えると、これらの出所標識として「QRコード」を使用していることから、本来「商標」と表現すべきところを、あえて「名称」といい換えたにすぎず、実質的に商標として「QRコード」の文字からなる商標(以下「使用商標4」という。)を使用しているとみるのが客観的に妥当である。そうとすると、あたかも被請求人が本件商標と類似する使用商標3及び4を、引用商標に係る商品と同一又は極めて類似する2次元コード等について使用しているとみることができる。加えて、2015年5月27日付け被請求人プレスリリースで「※1 QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。」と自ら記載していたにもかかわらず(甲16)、わざわざ当該ウェブページや記事では当該商標注記が見受けられないことは、当該注記による出所混同防止を意図的に阻害しようとしているとみることができる。
したがって、この使用態様からも被請求人の本件商標の不正使用に対する積極的「故意」が客観的に推認される。
イ 商標の使用について
使用商標3及び4が本件商標と類似することは明らかであり、これが本件指定役務と同一又は類似の商品・役務について使用されていることは上述のとおりである。
ウ 出所の混同について
使用商標3及び4が引用商標に係る商品と同一又は極めて類似する2次元コード等について使用されている結果、引用商標に係る商品と混同を生じるおそれがあることは明白である。
さらに、当該ウェブページのタイトルをクリックすることによりアクセス可能な画面のタイトルとして「A・Tコミュニケーションズが所有するQRコードシリーズの商標類の概要」という表示が見受けられる。
この「A・Tコミュニケーションズが所有するQRコードシリーズの商標類の概要」という表示の下に並べられている5つの各コードの左端に、さりげなく請求人の保有する引用商標までもが含まれている。このような使用態様は、あたかも引用商標までもが被請求人の所有に係るものであるかのような誤解を招来するおそれがあるものといえる。
また、引用商標が被請求人の保有に係る本件商標と「=(イコール)」でつながれているところも、あたかも引用商標が本件商標の一連のシリーズのように錯覚され出所についても混同を生ぜしめるような使用といえる。
したがって、本件商標の不正な使用により、引用商標が付された商品と被請求人の開発に係る2次元コード等が事業的に密接な関係を有しているかのような誤認を生じるおそれがある。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
1 被請求人ウェブサイトにおける使用商標1の使用(甲15)について
(1)故意について
ア 請求人が使用商品と主張する「2次元コード」が商標法上の「商品」ではない点について
商標法上の「商品」は、「商取引の目的たり得るべき物、特に動産をいう。」(乙1)とされるところ、「2次元コード」は、「コード」の語から明らかなように、記号・符号の一種にすぎず、それ自体が「商取引の目的」とされることはなく、また「動産」でもないので、商標法上の「商品」ではない。
また、特許情報プラットフォームにおいて、「バーコード」又は「次元コード」を含む商品・役務名を検索したところ、「バーコードスキャナー」や「符号記録済みバーコード用ラベル」等はヒットするが、「バーコード」それ自体や「2次元コード」それ自体はヒットしない(乙2)。
さらに、請求人自身も「2次元コード」が商標法上の「商品」ではないことを自覚しているのか、引用商標を始めとする、「QRコード」を含む商標登録出願(乙7等)のいずれにおいても、指定商品に「2次元コード」を記載したことは未だかつてない。
そして、商標法上の「商標」とは、商標法上の「商品」等について使用される標章をいうところ(商標法第2条第1項)、「2次元コード」が商標法上の「商品」ではない以上、「2次元コード」に使用される名称は、商標法上の「商標」ではない。
そうすると、たとえ「文字と2次元コードを組み合わせ誰が見てもリンク先の内容が分かりやすい2次元コード」の名称として、「文字QRコード」が使用されていたとしても、それは商標法上の「商標」ではない(商標法第2条第1項)。
すなわち、「『・・・2次元コード』(使用商品)の商標として『文字QR(キューアール)コード』が使用されている」ことなどは、法理上あり得ない。
イ かぎ括弧について
請求人は、「ここでわざわざ『文字QRコード』と『』(かぎ括弧)で強調されているのは、被請求人が2次元コードの出所標識として『文字QRコード』を使用している、すなわち実質的に商標として『文字QRコード』を使用しているとみるのが客観的に妥当」と主張するが、高々かぎ括弧を付けた程度で、なぜ商標として使用しているといえるのか、論理の飛躍がありすぎて意味不明である。
ウ 使用商標1が引用商標と類似の関係にない点について
請求人は、「『文字QRコード』の語頭の『文字』が、使用商品との関係において識別力に欠ける部分であることは明らか」と主張するが、なぜ「文字」の部分が「2次元コード」との関係において識別力に欠けるのか、全く理由が記載されておらず、意味不明である。
一方で、「QRコード」の部分は、特許庁の最新の判断によれば(乙3)、識別力に欠けている。
そうすると、請求人が使用商標1と主張する「文字QRコード」の要部は、「文字」であるから、使用商標1が引用商標と類似の関係にないことは明らかである。
エ 注記について
請求人は、「2015年5月27日付け被請求人プレスリリースで「※1 QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。」と自ら記載していたにもかかわらず(甲16)、わざわざ当該ウェブサイトでは当該注記が見受けられないことは、当該注記による出所混同防止を意図的に阻害しようとしているとみることができる」と主張するが、当該主張がされるまで、被請求人自身、当該ウェブサイトに注記が記載されていないことを意識すらしたことがない。
また、特に記載する必要のない注記を記載していないことを理由に、「当該注記による出所混同防止を意図的に阻害しようとしているとみることができる」というのは論理の飛躍がありすぎて意味不明である。
(2)商標の使用について
ア 「2次元コード」が第9類の「電子計算機用プログラム,符号記録済みバーコード用ラベル」に含まれない点について
「2次元コード」はそもそも商標法上の「商品」ではなく、第9類の「電子計算機用プログラム,符号記録済みバーコード用ラベル」等の商標法上の「商品」に含まれることなどない。
なお、「符号記録済みバーコード用ラベル」は、引用商標の指定商品に記載されておらず、「電子応用機械器具及びその部品」に含まれるものでもない。
イ 使用商品が本件指定役務と類似の関係にない点について
請求人が使用商品と主張する「2次元コード」は、第9類の「電子計算機用プログラム,符号記録済みバーコード用ラベル」等の商標法上の「商品」に含まれることなどなく、ましてや本件指定役務中の第42類「電子計算機用プログラムの提供」を含むいずれとも類似の関係にはない。
ウ 使用商標1が本件商標と類似の関係にない点について
請求人が使用商標1と主張する「文字QRコード」の要部は、「文字」である一方で、本件商標の要部は、上部であることから、使用商標1が本件商標と類似の関係にないことは明らかである。
(3)出所の混同について
請求人は、単に結論を述べるのみで、「商品の品質若しくは役務の質の誤認又は商品若しくは役務と混同」が生じていることを客観的に示す証拠は何一つないばかりか、その理由付けすら一切ない。
(4)被請求人の強い故意性について
ア 「QRコード」が自他商品等の識別標識としての機能を喪失している点について
審決取消訴訟の平成31年1月29日付け判決の後の令和元年7月18日付け拒絶理由通知書において、「QRコード」は、識別力に欠けていると判断されている(乙3)。
そうすると、平成31年1月29日から令和元年7月18日までの間に、「QRコード」は自他商品等の識別標識としての機能を喪失したと考えるのが妥当である。
イ 引用商標に係る商品と誤認混同を生じることはない点について
被請求人は、「2次元コード」の商標として「文字QRコード」を使用していないのであるから、引用商標に係る商品と誤認混同を生じることはない。
ウ 本件商標の不正使用になることはない点について
商標法第2条第3項第1、2及び8号に規定する「使用」は、商標法上の「商品」の存在を前提とするところ、仮に「文字QRコード」が商標法上の「商品」ではない「2次元コード」の名称として使用されたとしても、同法第2条第3項第1、2及び8号に規定の「使用」、ひいては本件商標の不正使用(同法第51条第1項)になることはない。
2 被請求人ウェブサイトにおける使用商標2の使用(甲19)について
(1)商標の使用について
ア 使用商標2の記載が商標法第51条第1項に規定の「商標の使用」に該当しない点について
本件商標に対する審決取消請求事件(平成29年(行ケ)第10017号、乙4)において、知的財産高等裁判所は、「・・・使用商標・・・は、・・・そのような組合せがされていない2次元コードを意味するものとして用いられているものと見られる。・・・上記使用商標は、いずれも、原告が提供するサービスの内容を説明する中で、2次元コード(ロゴやイラストとQRコードを組み合わせる前のもの)を指すものとして記述的に示されているにとどまるものであり、原告が提供するサービスを表示する標識としては機能していないと把握するのが適当である・・・。・・・本件ウェブサイトにおける使用商標は、本件審判請求に係る本件商標の指定役務のうち役務『広告』ないしこれに含まれる『広告宣伝物の企画及び制作』について使用するものということはできない。」(乙4)と判示した。
そればかりか、請求人自身も、かつては不使用取消審判事件(取消2015-300591)において、「・・・本件商標はあくまでも2次元コードの名称を示すために記述的に使用されていると考えるのが妥当ですから、・・・本件商標が当該サービスの自他役務識別標識として使用されていると客観的に認識され得ると考えることは到底できません。」(乙5)と主張していたが、本件審判において、突如真逆のことを主張し始めたのである。
このように、使用商標2の記載は、記述的に示されたものであるから、商標法第51条第1項に規定の「商標の使用」には該当しない。
イ 使用商標2の記載が本件商標と同一である点について
請求人は、「使用商標2に接する取引者・需要者は、使用商標2全体ではなく、あたかも『QRコード』の文字部分のみが被請求人により所有される登録商標であるかのように把握・認識し得るとみるのが客観的に極めて妥当」と主張するが、使用商標2は、全体として把握・認識され、「QRコード」の文字部分のみが独立して把握・認識されることはない。
そして、本件商標の上部及び下部を横に一連に表記した使用商標2は、本件商標と実質的に同一とみるのが相当である。
そうすると、使用商標2の記載は、本件商標と同一であり、「指定役務についての登録商標の使用」となるから、「指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用」には該当しない。
(2)故意について
ア 使用商標2の記載が「商標の使用」に該当しないと判示されている点について
上記判例(乙4)において、使用商標2の記載が「商標の使用」に該当しないと判示されていることからすれば、そもそも被請求人が当該記載を「商標の使用」に当たると認識することはなく、ましてやその「商標の使用」により「誤認・混同が生ずることの認識」を持ち、「故意」を持つことなどあり得ない。
イ 注意書きについて
引用商標は、「QRコード」と「QR Code」とを2段併記したものであって、引用商標上段の「QRコード」の文字が商標登録されたのは、2019年9月20日である(乙7)。
してみれば、2019年9月20日以前に「QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。」との記載がないのは、むしろ自然であるし、同日以降であっても、被請求人に特に記載する義務はないのであるから、当該記載がなかったとしても何ら不自然なことはない。
そもそも、当該主張がされるまで、被請求人自身、注意書きがないことを意識すらしたことがない。
すなわち、請求人の「被請求人は、『QRコード』が請求人の登録商標であることを知りながら、あえてその旨の注意書きを省略した」との推認は、事実とは全く異なる。
ウ 「QRコード」の文字部分のみを引用商標であるかのように把握・認識され得る態様で使用したものではない点について
使用商標2の記載は、記述的に示されたものにすぎず、「QRコード」の文字部分のみを引用商標であるかのように把握・認識され得る態様で使用したものではない。
(3)出所の混同について
使用商標2の記載は、記述的に示されたものにすぎず、「使用商標2が引用商標に係る商品に極めて類似する使用役務に使用された場合」には該当しないため、「使用商標2に接する取引者・需要者に対し、請求人の引用商標に係る業務との関係において、商品の品質若しくは役務の質の誤認又は商品若しくは役務と混同を生じさせる」ことはない。
3 被請求人ウェブサイトにおける使用商標3の使用(甲23)について
(1)故意について
除斥期間が既に経過している点について
被請求人ウェブページ「A・Tコミュニケーションが所有するQRコードシリーズの商標権の概要」(甲23の5枚目)は、「JUN/24/2015」との記載から明らかなように、本件審判請求日(2020年11月9日)から5年以上前の2015年6月24日付けのものであり、その後削除され、現在は存在していない。
また、本件審判請求日は2020年11月9日であるのに対し、被請求人ウェブページ(甲23の1?4枚目)の日付は2015年11月10日であって、除斥期間経過の僅か1日前のものである。
しかも、当該ウェブページは、その後削除され、現在は存在していない。
イ 使用商標3の記載が商標法第51条第1項に規定の「商標の使用」に該当しない点について
本件商標に対する審決取消請求事件(平成29年(行ケ)第10017号)において、知的財産高等裁判所は、「・・・使用商標・・・は、・・・原告が権利を有するQRコードであるロゴQコードを指すものとして記述的に示されていると理解され、原告が提供するサービスを表示する標識としては機能していないというべきである。・・・使用商標・・・は、・・・原告が権利を有するQRコードであるロゴQコードを指すものとして記述的に示されていると理解され、原告が提供するサービスを表示する標識としては機能していないというべきである。・・・使用商標は、本件審判請求に係る本件商標の指定役務のうち役務『広告』に含まれる『広告宣伝物の企画及び制作』について使用するものということはできない。」(乙4)と判示した。
このように、使用商標3の記載は、記述的に示されたものであるから、商標法第51条第1項に規定の「商標の使用」には該当しない。
そして、「商標の使用」に該当しないと判示されていることからすれば、そもそも被請求人が当該記載を「商標の使用」に当たると認識することはなく、ましてやその「商標の使用」により誤認・混同が生ずることの認識を持ち、「故意」を持つことなどあり得ない。
ウ 使用商標4の記載が商標法第51条第1項に規定の「商標の使用」に該当しない点について
ウェブページ(甲23の5枚目)の「8区分野では『QRコード』の名称を使用することは、当社の商標と同一又は類似の商品(役務)の使用となります。」における「QRコード」の記載は、2次元コードを指すものとして記述的に示されているにとどまるものであり、被請求人が提供するサービスを表示する標識としては機能していないと把握するのが適当である。
そればかりか、請求人自身も、かつては不使用取消審判事件(取消2015-300591)において、「乙第3号証(甲23の5枚目)の内容は、主に被請求人が所有する本件商標並びに商標『ロゴQ』及び『LogoQ』の概要を説明するものにすぎません。・・・本件商標は『デザイン化されていない白黒コード』のイメージの下に記載されていますが、この記載からでは、本件商標が被請求人の提供に係るいかなる役務についてどのような態様で使用されているかについて具体的に把握・理解することは困難です。・・・本件商標の使用が商標法第2条第3項第8号で規定される『役務に関する広告に標章を付して展示・頒布する行為』に該当するということは到底できませんし、また、本件商標が本件取消審判の対象となる指定役務のいずれかについて自他役務識別標識として使用されていると客観的に認識され得ると考えることも到底できません。」(乙5)と主張していたが、本件審判において、突如真逆のことを主張し始めたのである。
このように、当該ウェブページにおける「QRコード」の記載は、記述的に示されたものであるから、商標法第51条第1項に規定の「商標の使用」には該当しない。
そして、当該ウェブページにおける「QRコード」の記載が「商標の使用」に該当しないことが明らかであることからすれば、そもそも被請求人が当該記載を「商標の使用」に当たると認識することはなく、ましてやその「商標の使用」により「誤認・混同が生ずることの認識」を持ち、「故意」を持つことなどあり得ない。
エ 引用商標に係る商品並びに請求人が使用商標3及び4を使用していると主張する役務が不明である点について
請求人は、「被請求人が本件商標と類似する使用商標3及び4を、引用商標に係る商品と同一又は極めて類似する2次元コード等について使用しているとみることができる。」と主張するが、引用商標に係る商品が、具体的にいかなる商品であるのか全くもって不明である。
また、請求人が使用商標3及び4を使用していると主張する役務が、具体的にいかなる役務であるのかも全くもって不明である。
オ 注記について
請求人は、「2015年5月27日付け被請求人プレスリリースで『※1 QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。』と自ら記載していたにもかかわらず(甲16)、わざわざ当該ウェブページや記事では当該商標注記が見受けられないことは、当該注記による出所混同防止を意図的に阻害しようとしているとみることができる。」と主張するが、当該主張がされるまで、被請求人自身、当該ウェブページに注記が記載されていないことを意識すらしたことがない。
(2)商標の使用について
ア 使用商標3の記載が本件商標と同一である点について
本件商標の上部及び下部を横に一連に表記した使用商標3は、本件商標と実質的に同一とみるのが相当である。
そうすると、使用商標3の記載は、本件商標と同一である。
イ 請求人が使用商標3及び4を使用していると主張する商品・役務が不明である点について
請求人は、使用商標3及び4が「本件指定役務と同一又は類似の商品・役務について使用されている」と主張するが、使用商標3及び4が、具体的にいかなる商品・役務について使用されていると主張しているのか全くもって不明である。
ウ 使用商標3及び4の記載が商標法第51条第1項に規定の「商標の使用」に該当しない点について
そもそも、上記判例(乙4)の判示のとおり、使用商標3及び4の記載は、記述的に示されたものであるから、商標法第51条第1項に規定の「商標の使用」には該当しない。
(3)出所の混同について
ア 引用商標に係る商品と混同を生じるおそれがない点について
請求人は、「使用商標3及び4が引用商標に係る商品と同一又は極めて類似する2次元コード等について使用されている結果、引用商標に係る商品と混同を生じるおそれがあることは明白」と主張するが、引用商標に係る商品が、具体的にいかなる商品であるのか全くもって不明である。
また、請求人が使用商標3及び4を使用していると主張する役務が、具体的いかなる役務であるのかも全くもって不明である。
上記判例(乙4)の判示のとおり、使用商標3及び4の記載は、記述的に示されたものであるから、商標法第51条第1項に規定の「商標の使用」には該当せず、引用商標に係る商品と混同を生じるおそれもない。
イ 引用商標が被請求人の所有に係るものであるかのような誤解を招来するおそれがない点について
「A・Tコミュニケーションズが所有するQRコードシリーズの商標類の概要」(甲23の5枚目)では、左端のコードの下に「QRコード/(1区分(9類のみ)、日本/デンソーウェーブ所有」と記載され、引用商標が請求人の所有に係るものであることが明記されている。
このため、「引用商標までもが被請求人の所有に係るものであるかのような誤解を招来するおそれ」はない。
ウ 出所について混同が生ずるおそれがない点について
請求人は、「引用商標が被請求人の保有に係る本件商標と「=(イコール)」でつながれているところも、あたかも引用商標が本件商標の一連のシリーズのように錯覚され出所についても混同を生ぜしめるような使用といえる。」と主張するが、「=(イコール)」でつながれているのは、コード同士であって、引用商標と本件商標とではない。
しかも、「=(イコール)」は、その上の「情報内容」との記載から明らかなように、コード同士の「情報内容」が等しいことを意味するものであって、引用商標が本件商標の一連のシリーズであることを意味するものではない。

第4 当審の判断
1 請求人商標の周知著名性について
(1)請求人の提出に係る証拠(以下、単に「証拠」という。)によれば、次の事実が認められる。
ア 請求人は、1994年(平成6年)に請求人が開発した2次元コード(以下「本件2次元コード」という。)に、「QRコード」の文字からなる商標(以下「請求人商標」という。)を使用している(甲2?甲5)。
イ 請求人は、本件2次元コードに関して、取得した特許権の権利行使を行わず、ユーザに使いやすい環境を確立するとともに、本件2次元コードの模倣品や粗悪品に対しては、権利行使を行っている(甲8)。
ウ 請求人は、本件2次元コードに関して、業界標準化、国内標準化(JIS規格)及び国際標準化(ISO規格)を推進した(甲8)。
エ 2006年(平成18年)8月22日付け中日新聞において、請求人商標が使用をされた本件2次元コードは、2000年(平成12年)に国際標準化機構(ISO)から国際規格として認められ、対応する携帯電話が出ると爆発的に普及した旨の記事が掲載されている(甲6)。
オ 2014年(平成26年)には、請求人の本件2次元コードの開発チームが、欧州特許庁が主催する欧州発明家賞「ポピュラープライズ」を日本人として初めて受賞した(甲10、甲14)。
カ 請求人を始め、官公庁、地方公共団体及び企業といった多数の者が、それぞれが作成する印刷物等において「QRコード」の文字(語)を使用する際には、その印刷物等に「『QRコード』は株式会社デンソーウェーブの登録商標」である旨を記載している(甲11、甲13)。
(2)前記(1)によれば、請求人は、平成6年に本件2次元コードを開発し、本件2次元コードに関して、取得した特許権の権利行使を行わず、その実施を解放するとともに、業界標準化、国内標準化及び国際標準化を推進し、また、2006年(平成18年)8月22日付け中日新聞において、平成12年に国際標準化機構(ISO)から国際規格として認められ対応する携帯電話が出ると爆発的に普及した旨の記事が掲載され、さらに、本件2次元コードの開発チームが、欧州特許庁が主催する欧州発明家賞「ポピュラープライズ」を日本人として初めて受賞したことが認められる。
そして、このような本件2次元コードについて、請求人は、請求人商標の使用をし、また、請求人を始め、官公庁、地方公共団体及び企業といった多数の者が、それぞれが作成する印刷物等において「QRコード」の文字(語)を使用する際には、その印刷物等に「『QRコード』は株式会社デンソーウェーブの登録商標」である旨を記載していることが認められる。
そうすると、「QRコード」の文字からなる請求人商標は、請求人の業務に係る「2次元コード」を表示するものとして、遅くとも、本件2次元コードが国際規格として認められ対応する携帯電話が出ると爆発的に普及した旨の記事が掲載された平成18年頃には、需要者の間に広く認識されていたものであり、その周知著名性の程度は相当に高く、現在においても継続しているものと判断するのが相当である。
2 商標権者が本件指定役務についての本件商標に類似する商標の使用又は本件指定役務に類似する商品若しくは役務についての本件商標若しくはこれに類似する商標の使用について
(1)本件ウェブサイト1(甲15)における使用商標1の使用について
ア 使用商標1の使用について
(ア)証拠によれば、2020年(令和2年)9月24日における本件商標に係る商標権者(以下、単に「商標権者」という。)のウェブサイト(以下「本件ウェブサイト1」という。)には、使用商標1の見出しの下、「文字と2次元コードを組み合わせ、誰が見てもリンク先の内容がわかりやすいコードです。」との記載があり、その下に、文字を組み合わせた2次元コードの一例の掲載とともに「規格化されているので安価にご提供できます。」との記載があることが認められる(甲15)。
(イ)判断
前記(ア)によれば、商標権者は、本件ウェブサイト1において、「文字と2次元コードを組み合わせ、誰が見てもリンク先の内容が分かりやすいコード」、すなわち「文字を組み合わせた2次元コード」(以下「本件使用商品」という。)について使用商標1の使用をしていることが認められる。
(ウ)被請求人の主張について
被請求人は、「2次元コード」は、記号・符号の一種にすぎず、それ自体が「商取引の目的」とされることはなく、「動産」でもないので、商標法上の商品ではない旨、また、商標法上の商標とは、商標法上の商品等について使用される標章をいうから(商標法第2条第1項)、「2次元コード」が商標法上の商品ではない以上、「2次元コード」に使用される名称は、商標法上の商標ではない旨主張している。
ところで、商標法上の商品とは、「商取引の対象であって、出所表示機能を保護する必要のあるもの」と解される(知的財産高等裁判所 平成19年(行ケ)第10008号判決)。
前記(ア)のとおり、本件ウェブサイト1には、文字を組み合わせた2次元コードの一例の掲載とともに「規格化されているので安価にご提供できます。」との記載がある。
そうすると、本件ウェブサイト1において、「2次元コード」が商取引の対象となっているとみるのが相当である。
また、商標法上の商品を動産に限らなければならないというべき事情は見いだせない。
してみると、「2次元コード」は、商標法上の商品というべきである。
したがって、「2次元コード」が商標法上の商品である以上、本件使用商品(文字を組み合わせた2次元コード)に使用をされている使用商標1は、商標法上の商標というべきである。
イ 本件商標と使用商標1との類否について
(ア)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、上段に「QR」の文字を図案化したものと「コード」の文字とを横一連に並べたものを表し、下段に「QRコード」の文字を表した構成からなるものである。
そして、本件商標の構成中、下段部分の「QRコード」の文字は、前記1(2)のとおり、請求人の業務に係る「2次元コード」を表示するものとして、需要者の間に広く認識され、その周知著名性の程度は相当に高い請求人商標と同一の構成文字からなるものであるから、当該文字部分は、取引者、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
そうすると、本件商標は、その構成中、下段の「QRコード」の文字部分を抽出し、この部分だけを他の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。
してみると、本件商標は、その構成中、下段の「QRコード」の文字部分から、「キューアールコード」の称呼を生じ、「請求人の業務に係る『2次元コード』を表示する商標」としての観念を生じるものである。
また、本件商標の構成中、上段部分は、「QR」の文字を図案化したものと「コード」の文字とを横一連に並べたものであるから、下段部分の文字ともあいまって、上段部分についても、「QRコード」の文字を認識させ得るものといえる。
したがって、本件商標は、「QRコード」の文字及びそれを図案化したものを上下2段に表したものと認識されるから、その構成全体からも、「キューアールコード」の称呼を生じ、「請求人の業務に係る『2次元コード』を表示する商標」としての観念を生じるものである。
(イ)使用商標1について
使用商標1は、別掲2のとおり、「文字QRコード」(「Q」の文字の上には「キュー」の、「R」の文字の上には「アール」の振り仮名がそれぞれ付されている。以下、使用商標1に関する記載において同じ。)の文字からなるものである(使用商標1の構成中、右上に小さく表された「TM」の文字は、「商標」であることを付記的に表したものと認められ、出所識別標識としての機能を果たさない部分であると認められる。)。
そして、使用商標1は、その構成文字及び意味合いからして、「文字」、「QR」及び「コード」の文字を結合させたものと容易に理解されるものであり、全体として一般に親しまれた意味合いを生じるものではない。
また、前記1(2)のとおり、「QRコード」の文字からなる請求人商標は、請求人の業務に係る「2次元コード」を表示するものとして、需要者の間に広く認識され、その周知著名性の程度は相当に高いものである。
そうすると、使用商標1は、その構成中「QRコード」の文字部分が、取引者、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
してみると、使用商標1は、その構成中、「QRコード」の文字部分を抽出し、この部分だけを他の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。
したがって、使用商標1は、その構成中「QRコード」の文字部分から、「キューアールコード」の称呼を生じ、「請求人の業務に係る『2次元コード』を表示する商標」としての観念を生じるものである。
(ウ)本件商標と使用商標1との比較
本件商標と使用商標1とを比較すると、両者は、いずれも出所識別標識として強く支配的な印象を与える「QRコード」の文字部分において、その構成文字を共通にし、また、称呼及び観念においては、「キューアールコード」の称呼及び「請求人の業務に係る『2次元コード』を表示する商標」としての観念を共通にする。
そうすると、本件商標と使用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛らわしい類似の商標というべきである。
したがって、使用商標1は、本件商標に類似する商標であるといえる。
(エ)被請求人の主張について
被請求人は、使用商標1の構成中「QRコード」の文字部分は、特許庁の最新の判断によれば、自他商品の識別力に欠けており、平成31年1月29日から令和元年7月18日までの間に当該文字は自他商品等の識別標識としての機能を喪失したから、使用商標1の要部は「文字」の部分であり、使用商標1は、本件商標と類似の関係にない旨主張している。
甲第18号証及び乙第3号証によれば、平成31年1月29日に平成30年(行ケ)第10059号判決において、「QRコード」の文字が自他商品等の識別機能を発揮する態様で使用されることがあり得る旨判示されていることが認められ、また、商願2019-44306における令和元年7月18日付け拒絶理由通知書において、「QRコード」の文字からなる商標は、何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものである旨判断されていることが認められる。
しかしながら、当該拒絶理由通知書による判断は、審査の過程における暫定的な判断であり、当該商標登録出願が最終的に当該理由により拒絶査定となるかは不明である。
したがって、当該拒絶理由通知書をもって、「QRコード」の文字が自他商品の識別力に欠けるというのが、特許庁の最新の判断ということはできない。
むしろ、前記1(2)のとおり、「QRコード」の文字からなる請求人商標は、請求人の業務に係る「2次元コード」を表示するものとして、需要者の間に広く認識され、その周知著名性の程度は相当に高いものである。
また、請求人商標の周知著名性が減少ないし喪失したことを示す具体的な証拠の提出はない。
そうすると、「QRコード」の文字が自他商品の識別力に欠けるということはできず、また、当該文字が自他商品等の識別標識としての機能を喪失したということもできない。
してみると、使用商標1については、前記(イ)のとおり判断するのが相当であるから、使用商標1の構成中「文字」の部分が要部であるということはできない。
したがって、使用商標1は、本件商標に類似する商標であるというべきである。
ウ 本件指定役務と本件使用商品との類否について
(ア)本件指定役務は、前記第1のとおりであり、本件使用商品は、前記ア(イ)のとおり、「文字を組み合わせた2次元コード」であるから、両者が同一でないこと明らかである。
(イ)請求人は、「2次元コード」は、本件指定役務中「電子計算機用プログラムの提供」に類似する旨主張している。
(ウ)商品と役務の類否については、両者に同一又は類似の商標を使用したときに、需要者において、商品又は役務について出所の混同を招くおそれがあるかどうかを基準にして判断するのが相当である。そして、この判断にあたっては、取引の実情において、商品の製造販売と役務の提供が同一事業者によって行われるのが一般的か、商品と役務の用途、商品の販売場所と役務の提供場所、需要者の範囲等が一致するかなどの事情を、総合的に考慮すべきである(大阪地方裁判所 平成22年(ワ)第4461号判決)。
(エ)本件指定役務中「電子計算機用プログラムの提供」は、電気通信回線を通じて、電子計算機用プログラムを利用させるサービスであるといえる。
そして、本件使用商品は、「文字を組み合わせた2次元コード」であることころ、本件使用商品の製造販売と「電子計算機用プログラムの提供」が同一の事業者によって行われるのが一般的であるということを認めるに足る証拠の提出はなく、また、両者の用途、販売場所と提供場所又は需要者の範囲が一致するということを認めるに足る証拠の提出もない。
他に、本件使用商品と「電子計算機用プログラムの提供」とが類似するというべき事情は見いだせない。
そうすると、本件使用商品と「電子計算機用プログラムの提供」とは、類似しないものと判断するのが相当である。
さらに、本件使用商品と、「電子計算機用プログラムの提供」以外の本件指定役務とが類似するというべき事情も見いだせない。
したがって、本件使用商品は、本件指定役務に類似する商品ということはできない。
(オ)請求人の主張について
請求人は、「2次元コード」は、第9類の「電子計算機用プログラム,符号記録済みバーコード用ラベル」に含まれ、「電子計算機用プログラムの提供」とその内容・用途や取引者・需要者等を共通とするのは明らかであるから、両者は極めて類似する関係にある旨主張している。
「2次元コード」は、その記載からして「コード」の一種であり、「プログラム」及び「ラベル」でないこと明らかであり、「電子計算機用プログラム,符号記録済みバーコード用ラベル」に含まれるとは一概にいえないが、この点を置くとしても、前記(エ)のとおり、本件使用商品の製造販売と「電子計算機用プログラムの提供」が同一の事業者によって行われるのが一般的であるということを認めるに足る証拠の提出はなく、また、両者の用途、販売場所と提供場所又は需要者の範囲が一致するということを認めるに足る証拠の提出もなく、さらに、本件使用商品と「電子計算機用プログラムの提供」とが類似するというべき事情も見いだせない。
そうすると、本件使用商品と「電子計算機用プログラムの提供」とは、類似しないものと判断するのが相当である。
エ 小括
以上のとおり、商標権者は、本件商標に類似する使用商標1の使用をしていると認められるものの、本件指定役務又はこれに類似する商品に使用をしているものとは認められない。
したがって、商標権者が本件指定役務又はこれに類似する商品についての本件商標に類似する使用商標1の使用をしているということはできない。
(2)本件ウェブサイト2(甲19)における使用商標2の使用について
ア 使用商標2の使用について
(ア)証拠によれば、次の事実が認められる。
a 商標権者は、2015年(平成27年)5月27日から、「LogoQ Code Marketing SoftBank C&S Edition」と称する「ロゴ・イラスト入り2次元コードを作成できるクラウド型サービス」(以下「本件使用役務」という。)の提供を開始した(甲16)。
b 商標権者は、2016年(平成28年)4月7日に、「オリジナルロゴ・イラスト入りのQRコード作成サービス / LogoQ Code Marketing SoftBank C&S Edition」と題するウェブサイト(以下「本件ウェブサイト2」という。)において、本件使用役務についての広告を行った(甲19)。
c 本件ウェブサイト2には、「オリジナルデザイン 使用商標2 作成サービス」のように、使用商標2が表示されている(甲19)。
d 本件ウェブサイト2には、「ロゴ・イラスト入りQRコード『ロゴQ』を作成できるクラウド型サービス」及び「ロゴQはユニバーサルデザインの 使用商標2 です」の記載があり、また、ロゴ又は2次元コードの画像とともに「ロゴ(デザイン)+ 本件商標 =LogoQ」との記載がある(甲19)。
(イ)判断
前記(ア)によれば、商標権者は、本件ウェブサイト2において、本件使用役務についての広告を行っており、その中で、本件使用役務によって作成される「ロゴ・イラスト入り2次元コード」を表すものとして「LogoQ」の文字からなる商標の使用をし、ロゴ・イラストを組み合わせる前の2次元コードを表すものとして使用商標2の使用をしていることが認められる。
したがって、商標権者は、「2次元コード」について使用商標2の使用をしているといえる。
(ウ)請求人の主張について
請求人は、本件使用役務について、使用商標2の使用がされている旨主張している。
しかしながら、前記(ア)a及びbによれば、商標権者は、本件使用役務については、「LogoQ Code Marketing SoftBank C&S Edition」の文字からなる商標の使用をしているというべきである。
そして、前記(ア)c及びdによれば、本件使用役務によって作成される「ロゴ・イラスト入り2次元コード」を表すものとして「LogoQ」の文字からなる商標が使用をされ、そのロゴ・イラストを組み合わせる前の2次元コードを表すものとして使用商標2が使用をされているとみるのが相当である。
そうすると、たとえ、本件使用役務についての広告を行っている本件ウェブサイト2に使用商標2が表示されているとしても、使用商標2は、本件使用役務について使用をされているものではなく、「2次元コード」について使用をされているものである。
(エ)被請求人の主張について
被請求人は、判決例を挙げ、使用商標2は、記述的に表されたものであり、商標の使用には該当しない旨主張している。
しかしながら、被請求人の挙げる判決例(平成29年(行ケ)第10017号判決、乙4)は、本件商標が「広告」ないしこれに含まれる「広告宣伝物の企画及び制作」に使用をされているか否かについての判断であり、また、本件使用役務との関係で記述的に表されたものと判断されているものである。
したがって、当該判決例によって、前記(イ)の判断に影響を与えるものではない。
イ 本件商標と使用商標2との類否について
(ア)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、上段に「QR」の文字を図案化したものと「コード」の文字とを横一連に並べたものを表し、下段に「QRコード」の文字を表した構成からなるものである。
そして、前記(1)イ(ア)のとおり、本件商標は、その構成中の下段の「QRコード」の文字部分及びその構成全体から、「キューアールコード」の称呼を生じ、「請求人の業務に係る『2次元コード』を表示する商標」としての観念を生じるものである。
(イ)使用商標2について
使用商標2は、別掲3のとおり、左側に、「QR」の文字を図案化したものと「コード」の文字とを横一連に並べたものを表し、その右側に、スラッシュ「/」を介して、「QRコード」の文字を表した構成からなるものである(使用商標2の構成中、右上に小さく表された丸で囲まれた「R」の文字は、「登録商標」であることを付記的に表したものと認められ、出所識別標識としての機能を果たさない部分であると認められる。)。
そして、使用商標2は、その構成中、左側部分と右側部分とが、「/」を介して表されているため、両者は視覚上分離して観察されるものである。
また、前記1(2)のとおり、「QRコード」の文字からなる請求人商標は、請求人の業務に係る「2次元コード」を表示するものとして、需要者の間に広く認識され、その周知著名性の程度は相当に高いものである。
そうすると、使用商標2は、その構成中、右側の「QRコード」の文字部分が、取引者、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
してみると、使用商標2は、その構成中、「QRコード」の文字部分を抽出し、この部分だけを他の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。
したがって、使用商標2は、その構成中「QRコード」の文字部分から、「キューアールコード」の称呼を生じ、「請求人の業務に係る『2次元コード』を表示する商標」としての観念を生じるものである。
また、使用商標2の構成中、左側部分は、「QR」の文字を図案化したものと「コード」の文字とを横一連に並べたものであるから、右側部分の文字ともあいまって、左側部分についても、「QRコード」の文字を認識させ得るものといえる。
したがって、使用商標2は、「QRコード」の文字及びそれを図案化したものを左右に表したものと認識されるから、その構成全体からも、「キューアールコード」の称呼を生じ、「請求人の業務に係る『2次元コード』を表示する商標」としての観念を生じるものである。
(ウ)本件商標と使用商標2との比較
本件商標と使用商標2とを比較すると、両者はそれぞれ別掲1及び3のとおりの構成からなるものであり、本件商標の構成中の上段部分と使用商標2の構成中の左側部分とは同一の構成からなり、また、本件商標の下段部分と使用商標2の右側部分はいずれも「QRコード」の文字からなるから、使用商標2は、本件商標の上段部分と下段部分とを「/」を介して左右に並べた構成からなるといえる。
そうすると、本件商標と使用商標2とは、外観において、極めて近似した印象を与えるものである。
また、称呼及び観念においては、両者は、「キューアールコード」の称呼及び「請求人の業務に係る『2次元コード』を表示する商標」としての観念を共通にする。
そうすると、本件商標と使用商標2とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛らわしい類似の商標というべきである。
したがって、使用商標2は、本件商標に類似する商標であるといえる。
(エ)被請求人の主張について
被請求人は、使用商標2は、本件商標の上部及び下部を横に一連に表記したものであり、本件商標と実質的に同一とみるのが相当である旨主張している。
しかしながら、使用商標2は、前記(ウ)のとおり、本件商標の上段部分と下段部分とを「/」を介して左右に並べた構成からなるものであるから、本件商標と同一でないこと明らかである。
また、使用商標2の当該態様を本件商標と実質的に同一とみなければならない特段の事情も見いだせない。
したがって、使用商標2は、本件商標に類似する商標というべきである。
ウ 本件指定役務と「2次元コード」との類否について
前記(1)ウ(エ)と同様の理由により、「2次元コード」は、本件指定役務に類似する商品ということはできない。
エ 小括
以上のとおり、商標権者は、本件商標に類似する使用商標2の使用をしていると認められるものの、本件指定役務又はこれに類似する商品若しくは役務に使用をしているとは認められない。
したがって、商標権者が本件指定役務又はこれに類似する商品若しくは役務についての本件商標に類似する使用商標2の使用をしているということはできない。
(3)本件ウェブサイト3-1及び3-2(甲23)における使用商標3及び4の使用について
ア 証拠によれば、次の事実が認められる。
(ア)2015年(平成27年)11月10日における商標権者のウェブサイト(以下「本件ウェブサイト3-1」という。)には、「A・Tコミュニケーションが所有する 使用商標3 の概要」のタイトルの記載がある(甲23の1?4枚目)。
(イ)本件ウェブサイト3-1におけるタイトルをクリックしてリンクする2015年(平成27年)6月24日における商標権者のウェブサイト(以下「本件ウェブサイト3-2」という。)には、「A・Tコミュニケーションズが所有するQRコードシリーズの商標類の概要」の見出しの下、「16類・・・、35類・・・、36類・・・、38類・・・、39類・・・、41類・・・、42類・・・、45類・・・の8区分野では『QRコード』(使用商標4)の名称を使用することは、当社の商標と同一又は類似の商品(役務)の使用となります。8区分野に於いて『QRコード』(使用商標4)の名称を使用したい場合は、事前に弊社までいつでもご相談下さいませ。」の記載がある(甲23の5枚目)。
イ 判断
前記アによれば、本件ウェブサイト3-1及び3-2は、商標権者が所有する商標についての説明が記載されているものと認められ、具体的な特定の商品又は役務についての出所識別標識として、使用商標3及び4が使用をされているとは認められない。
なお、本件ウェブサイト3-2は、本件審判の請求日である令和2年11月9日から5年以上前である平成27年6月24日におけるものである。
仮に、本件ウェブサイト3-2が本件審判の請求日から5年以内に存在したとしても、当該ウェブサイトに記載されている使用商標4は、結局、具体的な特定の商品又は役務についての出所識別標識として使用をされているとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、たとえ、使用商標3及び4が本件商標に類似する商標であるとしても、使用商標3及び4は、具体的な特定の商品又は役務について使用をされているとはいえない。
したがって、商標権者が本件指定役務又はこれに類似する商品若しくは役務についての本件商標に類似する使用商標3及び4の使用をしているということはできない。
3 まとめ
以上により、商標権者が本件指定役務についての本件商標に類似する商標の使用又は本件指定役務に類似する商品若しくは役務についての本件商標若しくはこれに類似する商標の使用をしているということはできない。
したがって、「故意」及び「商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」について言及するまでもなく、本件商標の登録は、商標法第51条第1項の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲1 本件商標


別掲2 使用商標1


別掲3 使用商標2


別掲4 使用商標3




審理終結日 2021-09-09 
結審通知日 2021-09-14 
審決日 2021-09-30 
出願番号 商願2004-86034(T2004-86034) 
審決分類 T 1 31・ 3- Y (Y42)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 榎本 政実 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 山田 啓之
板谷 玲子
登録日 2005-07-29 
登録番号 商標登録第4882830号(T4882830) 
商標の称呼 キュウアアルコード、コード 
代理人 外川 奈美 
代理人 青木 篤 
代理人 雨宮 康仁 
代理人 大橋 啓輔 

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