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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y03
管理番号 1380054 
審判番号 取消2018-300004 
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-12-28 
確定日 2021-11-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第4776699号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4776699号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成15年9月25日に登録出願、第3類「せっけん類,化粧品,香料類」を指定商品として、同16年6月4日に設定登録され、その後、同26年4月15日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
そして、本件商標の指定商品中、第3類「せっけん類(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造したせっけん類を除く。)」、同「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造したせっけん類」、同「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」、同「香料類(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した香料類を除く。)」及び同「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した香料類」について、同29年12月28日に商標権の一部取消し審判(取消2018-300002、同2018-300003、同2018-300005、同2018-300006及び2018-300007)が請求され、それぞれ、その登録を取り消す旨の審決がされ、同30年10月5日に審判の確定登録がなされたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成30年1月23日である。
なお、本件審判において商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成27年1月23日ないし同30年1月22日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中「化粧品(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品を除く。)」(以下「本件請求商品」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項により取り消されるべきものである。
2 平成30年8月6日付け審判事件弁駁書における主張
(1)乙第1号証に関する被請求人の主張について
被請求人は、本件商標の商標登録原簿の写し(乙1)を提出し、本件商標に対しては平成21年及び同22年の2度にわたり、商標法第50条第1項の規定による取消審判請求を受けたが、いずれも商標権者が本件商標を指定商品「化粧品」について使用している事実が認められ、請求不成立になっている旨主張している。
しかし、それら取消審判請求と本件審判請求は、請求に係る指定商品の範囲や本件商標の使用を証明しなければならない要証期間など、事案を異にするものであるから、それら取消審判請求の審決に本件審判請求が左右されるべき理由はない。
(2)使用に係る商品に関する被請求人の主張について
被請求人は、被請求人のホームページ(抜粋)の写し(乙4?乙6)を提出し、界面活性剤やナノ粒子などの原料を用いず、日本大学工学部助教授で皮脂の研究を30年余り研究されていたS氏から継承した被請求人独自のノウハウを用いて乳化した「乳液、クリーム」等に関する商標として、本件商標を登録直後から現在に至るまで使用している旨主張し、商品パンフレット(乙9)も提出している。
しかし、以下のとおり、これら乙号証をもってしては、被請求人の使用に係る商品が本件請求商品に含まれていることは何ら証明されていない。
ア 本件審判に係る指定商品について
本件請求商品の括弧書きに係る「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」とは、三相乳化の技術を用いて製造した化粧品を指称するものであるから、本件請求商品は「三相乳化の技術を用いて製造した化粧品を除いた化粧品」である。
すなわち、三相乳化については、以下のとおり、紹介されている。
(ア)三丸機械工業のウェブサイトの写し(甲1)には、「2.三相乳化とは?」の欄に「三相乳化は、界面活性剤を使用しない乳化方法です。その代わりに、柔らかい親水性ナノ粒子の物理的作用力(ファンデルワールス引力)を利用して物質を乳化させます。」、「三相乳化を使った製品は、『球体ラメラ構造』になっています。これは、肌の保湿構造と同じです。ですから、非常に浸透性が高くなります。つまり、三相乳化を使った美容液などは、従来の乳化方法を使った製品よりより肌になじみやすいでしょう。」などと紹介されている。
(イ)産経ニュースのウェブサイトの写し(甲2)には、「東洋新薬 三相乳化技術が肌に負担をかけず有効成分を浸透させる作用を確認」の見出しの下、「三相乳化技術は従来用いられてきた界面活性剤の化学的作用による乳化ではなく、柔らかい親水性ナノ粒子の物理的作用(ファンデルワールス引力)を利用した新しい乳化技術です。」、「有効成分の浸透を促進するために、肌の油分にも水分にも馴染みやすい界面活性剤やエタノールなどを配合する方法がありますが、配合バランスが悪いと肌のバリア機能を壊してしまう可能性があります。そのため、肌のバリア機能の役割を果たす角層に負担をかけず、皮膚内部へと有効成分を浸透させることは化粧品業界の重要な課題の1つであり、これまで数多くの研究がなされてきました。今回当社は、城西大学・・・教授との共同研究で、三相乳化技術を用いた化粧品は【1】有効成分を皮膚に浸透させ、油の量でその浸透量をコントロールできる可能性があること【2】細胞間脂質モデルを壊さず良好に融合する(馴染む)ことを確認し、日本薬剤学会第30年会において発表しました。」などと紹介されている。
(ウ)2016年9月5日付け「週間粧業」(抜粋)の写し(甲3)には、「東洋新薬『三相乳化』のOEM実績が拡大今後はベース機能の強化に取り組む」の見出しの下、「『三相乳化』は、神奈川大学によって開発された技術で、界面活性剤を用いずに柔らかい親水性のナノ粒子の物理的作用力を利用した新しい乳化法だ。三相乳化を応用した化粧品では、肌への安全性に加え、一般的に両立が難しいとされてきた使用感の良さと優れた安定性を実現した化粧品が製造できるのが特長だ。」などと紹介されている。
(エ)美容経済新聞のウェブサイト(甲4)には、2015年6月16日付けで、「【9】アートネイチャー、界面活性剤を使わずに育毛剤などの乳化を実現(下)」の見出しの下、「三相乳化技術は、本来、溶け合わない水と油に対して界面活性剤を使わずに安定して乳化させることができる新乳化技術。三相乳化球状ラメラ頭皮角質層の水分・油分の構造に似た三相乳化球状と類似したラメラ構造(図)の形成に成功し、角質層まで潤いを浸透することに繋げた。これにより1種類の“ナノ粒子”で、様々な乳化が可能になるため、これまでの乳化方法のように複数の界面活性剤を組み合わせて使用する必要がない。また、“ナノ粒子”で囲まれた乳化物は、安定して水に分散するため、界面活性剤の様にお互いが簡単に結合しない。いわば、化学的な乳化ではなく柔らかい親水性ナノ粒子が油滴の周りに付着する物理的作用によって乳化させる結果、シャンプーやコンディショナーの界面活性剤の使用を抑え、髪や頭皮にやさしい処方が可能となるなど100%界面活性剤フリー処方を実現した。」などと紹介されている。
(オ)「未来環境テクノロジー」のウェブサイトの写し(甲5)には、「三相乳化技術とは」の見出しの下、「界面活性剤を必要としない、新しい乳化テクノロジー。『三相乳化法』は、従来の乳化方法に欠かせない界面活性剤の代わりに、柔らかい親水性ナノ粒子の物理的作用力(ファンデルワールス引力)を利用した新しい乳化方法です。」などと紹介されている。
(カ)「日本化粧品技術者会誌」のウェブサイトの写し(甲6)には、「三相乳化法:通常の界面活性剤によらない乳化技術」の見出しの下、「三相乳化法は水にも油相にも不溶性の有機物で、粒子径8?400nmサイズの柔らかい親水性分散液によって油脂を乳化する方法である。この方法はナノサイズの粒子が不可逆的なファンデルワールスポテンシャルエネルギーで油滴表面に凝集・付着するために、油脂種を問わずに乳化させることができることを特徴としている。」、「三相乳化は油滴表面に付着している『柔らかい親水性のナノ粒子』が醸しだす物性が通常の界面活性剤乳化物と多くの点で異なり、・・・その結果、三相乳化法で調製した化粧品類は高い保湿性が保たれ、塗布性が滑らかで使用感がサッパリするなどの特徴を賦与することが可能になることを示した。」などと三相乳化を紹介している。
(キ)「weblio辞書」のウェブサイトの写し(甲7)には、「三相乳化(神奈川大学)」として、「三相乳化(神奈川大学)(さんそうにゅうか)とは、従来、産業界などでエマルション(乳化)方法に使用されていた界面活性剤を使用せず、ファンデルワールス力を利用して乳化する技術のことである。」などと紹介されている。
イ 使用に係る商品の本件請求商品の該当性について
本件請求商品中の「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術」とは、上記アのとおり、三相乳化の技術であるから、本件請求商品は「三相乳化の技術を用いて製造した化粧品を除いた化粧品」である。
しかし、被請求人は、乙第4号証においては、「三相乳化を見出された佐藤先生と出会いました。」とした上で、「先生の三相乳化の技術を継承した製品をつくりつづけ、今日に至っています。」と述べており、三相乳化の技術を使用して製造していることを認めている。
また、被請求人は、乙第5号証においては、「人間も自然の一部であるという、身土不二(しんどふに)【身=肌、土=大地・自然・環境、不二=ひとつのものであること】の理念のもと、天然の素材を三相乳化してアオイ化粧品は作られています。」、「三相乳化は、30年以上に亘って肌と化粧品の研究に従事されたS先生が確立された技術です。」、「製品の製造には、人の手が加えられ、佐藤先生から継承した当社独自のノウハウを用いて乳化をしております。」と述べており、三相乳化の技術を使用して製造していることを認めている。
さらに、被請求人は、乙第6号証においても、「スキンミルク」の欄において、「人間の皮脂の研究から確立した三相乳化という独自の乳化法を用い、皮脂の組成に限りなく近い成分で作り上げた乳液です。」と、また、「モイスチャークリーム」の欄においても、「乳液と同様、人間の皮脂の研究から確立した三相乳化という独自の乳化法でつくりあげた製品です。」と述べており、三相乳化の技術を使用して製造していることを認めている。
そして、乙第9号証においても、乙第4号証ないし乙第6号証と同様の記載があり、三相乳化の技術を使用して製造していることを認めている。
加えて、乙第4号証ないし乙第6号証及び乙第9号証には、その商品の肌への馴染みやすさなどの効能が謳われているが、そのような効能は、甲第1号証ないし甲第7号証にあるとおり、三相乳化の効能と同一の効能といえるものであり、乙第4号証ないし乙第6号証及び乙第9号証の「三相乳化」は甲第1号証ないし甲第7号証にある「三相乳化」の技術と同一のものであると考えざるを得ない。そして、その技術は、本件請求商品の記載中にある「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」である。
一方、被請求人は、「界面活性剤やナノ粒子などの原料を用いず、S氏から継承した出願人独自のノウハウを用いて乳化(乙5)した『乳液、クリーム』等に関する商標(乙6)として、本件商標の登録直後から本件商標の使用を開始し、現在まで一貫して同商標を使用するものである」と主張しているが、乙第5号証及び乙第9号証に記載されているのは安全性が懸念されているものを用いていないというだけであり、ナノ粒子が用いられていないことを証明するものとはなっていない。加えて、これら乙号証には、三相乳化がS氏によって確立された技術であり、被請求人がそれを継承したなどの記載もあるが、そもそも、そのS氏が確立した技術や、被請求人が同人から継承して実施している技術について、具体的内容が明らかにされていない。日経テレコンによる記事検索によって「日本大学」及びS氏、さらに、S氏及び「三相乳化」を検索キーとして検索しても、1件もヒットしなかった(甲8、甲9)。また、「J-PlatPat」によってS氏を発明者とする「乳化」に関する名称の特許も検索してみたが、やはり、発見することができなかった。さらに、これら乙号証は、被請求人のホームページの抜粋であり、被請求人が広告のために自由に記述しただけのものであり、これら記述が被請求人の使用に係る商品が「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」でないことを客観的に証明するものとはならない。
そうすると、被請求人提出の乙号証によっては、被請求人の使用に係る商品が本件請求商品に含まれていることは何ら証明されていないことになる。
(3)乙第4号証ないし乙第6号証について
乙第4号証ないし乙第6号証は、被請求人のホームページの写しであるところ右下には「2018/06/18」の表示があり、同号証が2018年6月18日にプリントアウトされたことを思わせるが、当該時期は要証期間内ではなく、当該ホームページが要証期間内にインターネット上に表示されていたことは明らかにされていない。
(4)乙第7号証及び乙第8号証について
乙第7号証には、本件商標は表示されていない。加えて、「試供品をご提供します」の記載はあるが、何の試供品であるのかは記載されていないし、極めて小さく「株式会社アオイの化粧品をオンラインでお買い求めいただけます。」の記載はあるが、本件請求商品であることを示す記載は何らなされていないし、該商品が乙第5号証、乙第6号証、乙第9号証及び乙第11号証の商品と同一ということも明らかになっていない。
さらに、乙第7号証の右下には「2018/06/29」の表示があり、2018年6月29日にプリントアウトされたことを思わせるが、当該時期は要証期間内ではなく、当該ホームページが要証期間内にインターネット上に表示されていたことを明らかにするものではない。
また、乙第8号証にも、本件商標は表示されていない。加えて、「アオイスキンミルク」や「アオイモイスチャークリーム」の記載はあるが、本件請求商品であることを示す記載は何らなされていないし、該商品が乙第5号証、乙第6号証、乙第9号証及び乙第11号証の商品と同一ということも明らかになっていない。特に、乙第8号証に掲載されている「アオイスキンミルク」や「アオイモイスチャークリーム」の写真は、乙第6号証や乙第9号証の「スキンミルク」や「モイスチャークリーム」の写真と比べると明らかに異なっており、同一の商品であるということはできない。
さらに、乙第8号証の右下には「2018/06/29」の表示があり、同号証が2018年6月29日にプリントアウトされたことを思わせるが、当該時期は要証期間内ではなく、当該ホームページが要証期間内にインターネット上に表示されていたことを明らかにするものではない。
したがって、乙第7号証及び乙第8号証によっては、被請求人が本件商標を要証期間内に本件請求商品について使用しているということはできないし、乙第5号証、乙第6号証、乙第9号証及び乙第11号証に係る商品が要証期間内に販売されていたことが証明されたということもできない。
(5)乙第9号証及び乙第10号証について
乙第10号証の納品書及び受領書の「品名」の欄には「アオイ製品カタログ」と記載されているが、乙第9号証は、「商品パンフレット」とされており、納品物の名称と納品書及び受領書の「品名」は異なっており、そのほかに、該「アオイ製品カタログ」が乙第9号証の「商品パンフレット」と同一であることを証する証拠の提出もないから、乙第10号証をもって、乙第9号証の「商品パンフレット」の印刷時期が証明されたということはできない。
加えて、被請求人は、乙第9号証の商品パンフレットを商標法第2条第3項の「商品に関する広告」に該当すると主張しているところ、商標法第2条第3項第8号によれば、「商品に関する広告」については、「展示」又は「頒布」をしてはじめて「使用」に該当するのであって、広告を「印刷」しただけでは「使用」に該当しない。そして、被請求人は、該広告を「展示」又は「頒布」したことは何ら証明していない。
(6)乙第11号証及び乙第12号証について
乙第11号証の包装箱には、「スキンミルク 乳液」の記載はあるが、界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造したものでないことをうかがわせる記載はない。
また、乙第12号証の納品書及び受領書の「商品名・商品分類」の欄には、「アオイスキンミルク化粧箱」と記載されているが、該「アオイスキンミルク化粧箱」が乙第11号証の「包装箱」と同一であることを証する証拠の提出もないから、乙第12号証をもって、乙第11号証の化粧箱の印刷時期が証明されたということはできない。
3 令和2年12月4日付け審判事件弁駁書(第2回)における主張
被請求人は、本件商標が「化粧品(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品を除く。)」について使用されていることは明らかであると主張するだけで、提出した乙号証のいずれの記載によって、使用に係る商品が、界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造したものではないといえるのかについては、その説明さえ記載されておらず、全く証明されていない。
そして、被請求人が提出した令和2年9月23日付審判事件答弁書(第2回)及び同年10月7日付審判事件上申書によっても、使用に係る商品が本件請求商品の範ちゅうに含まれるか否かについては、依然として証明されていない。
したがって、被請求人は、使用に係る商品が本件請求商品の範ちゅうに含まれること、すなわち、使用に係る商品が、界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造したものではないことを証明していないのであるから、本件商標の登録は、取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第19号証を提出した。
1 平成30年7月2日付け審判事件答弁書における主張
本件商標の権利者である被請求人(平成29年6月10日の本店移転に伴い、平成30年4月に登録名義人の表示変更登録を行った。)は、昭和59年5月2日に化粧品製造・販売を事業内容として設立(乙2、乙3)、その後日本大学工学部助教授として同大学で皮脂の研究をされていたS氏が30年余り研究の結果完成した、人間の皮脂に着目した独自の技術を取り入れて、人間の皮脂に限りなく近い天然素材を用いて皮膚になじみやすく、浸透や吸収にすぐれた化粧品を、佐藤氏及び皮膚科医と共に共同開発(乙4)し、製造・販売して現在に至るものである。
そして、被請求人は、自身の製造・販売する一連の基礎化粧品の中、「界面活性剤やナノ粒子などの原料を用いず、S氏から継承した出願人(商標権者)独自のノウハウを用いて乳化(乙5)した「乳液、クリーム」等に関する商標(乙6)として、本件商標の登録直後から本件商標の使用を開始し、現在まで一貫して同商標を使用するものである。
本件商標に対しては、平成21年及び平成22年の2度にわたり、商標法第50条第1項の規定による取消審判の請求を受けたが、いずれも出願人(商標権者)が本件商標を指定商品「化粧品」について使用をしている事実が認められ、「請求不成立」となっている(乙1)。
なお、被請求人は、通信販売を主として販売されているが、一部の商品は、東京都港区所在の「クレヨンハウス」の店舗においても取り扱われている。
以下、被請求人が、本件請求商品について、本件商標が使用されている事実を具体的に立証する。
(1)被請求人の主たる商品販売方法は、通信販売である。ホームページの「製品のご注文」の項(乙7)にあるとおり、インターネットの商品紹介や問い合わせに対して試供品を配布し、フリーダイヤル、FAX、郵便及びメール等により注文を受け商品を送付している。また、自身の運営するオンラインショップの他、株式会社クレヨンハウスが運営する通販オンラインショップでも、アオイのスキンケア商品は販売されている(乙8)。
(2)乙第9号証は、「いつまでも 私らしく 美しく/AOI」と題した被請求人の「基礎化粧品」についての商品パンフレットであるが、被請求人は、これを商品の問い合わせに対し試供品を送付する際、及び注文に応じて商品を発送する際に同封している。
当該パンフレットは、一見して明らかなように「化粧品」等に関する商品パンフレットであるところ、本件商標が、「スキンミルク」「モイスチャークリーム」「ボディソフナー(ハンドクリーム)」の右横に表示され、また、「お問い合わせ先・ご注文窓口」として、被請求人の住所及び名称が記載されている。
当該パンフレットは、納品書及び受領書の写しにより明らかなように、永井印刷工業株式会社が印刷し、平成28年9月14日に被請求人に納品したものである(乙10)。
先に述べたように、被請求人は、平成29年6月10日に本店住所を移転している(乙2)ところ、当該パンフレットは、前記のとおり移転以前に印刷されたものであるため、移転先住所のシールを貼付して配布しており、乙第9号証は、実際にシールを貼付して配布している商品パンフレットそのものである。
商品の販売目的をもって配布される当該商品パンフレットは、商標法第2条第3項にいうところの「商品に関する広告」に該当することから、乙第9号証は、被請求人が、要証期間である平成28年9月に本件商標を商品「化粧品」について使用していたことを客観的に裏付けるものである。
(3)乙第11号証は、被請求人が販売する化粧品の1つである「スキンミルク(乳液)」の包装箱(化粧箱)であるところ、本件商標及び製造販売元として被請求人の名称と住所が記載されている。
当該包装箱は、納品書及び受領書の写しにより明らかなように、株式会社日昭が作成し、平成29年10月5日に被請求人に納品したものである(乙12)。
商品の包装箱に本件商標を表示することは、商標法第2条第3項にいうところの「商品の包装に標章を付する行為」に該当することから、乙第11号証は、被請求人が、要証期間である平成29年10月に本件商標を商品「化粧品」について使用していた事実を理解させるものといえる。
2 令和2年9月23日付け審判事件答弁書(第2回)及び同年10月7日付け審判事件上申書における主張
(1)「商品パンフレット」について
被請求人は、商品パンフレットについて必要に応じて追加印刷を行っているが、印刷の都度特に印刷年月日の記載をしていない。
そこで、乙第9号証の「商品パンフレット」が要証期間に印刷され、納品されたことを明らかにするために、納品書(乙10)に記載された納品物が、被請求人が主張する「商品パンフレット」(乙9)と同一であることについて、当該商品パンフレットの印刷業者である永井印刷工業株式会社の証明書(乙13)を提出する。
(2)「包装箱」について
商品の包装箱自体には、その作成日も商品製造日も記載されていない。
そこで、乙第11号証の「スキンミルク(乳液)の包装箱」の展開図が要証期間に印刷され、納品されたことを明らかにするために、納品書(乙12)に記載された納品物「アオイスキンミルク化粧箱」が、被請求人が主張する「スキンミルク(乳液)の包装箱」の展開図(乙11)と同一であることについて、当該包装箱の作成業者である株式会社日昭の証明書(乙14)を提出する。
(3)ウェブページについて
被請求人が乙第3号証ないし乙第8号証として提出したウェブページは、審判請求書を受領後に印刷したものである。
被請求人は、乙第3号証ないし乙第7号証に記載されているものと同じ内容の情報を、公開終了してしまった過去のウェブサイトの閲覧ツール「WAYBACK MACHINE」を利用して印刷し、要証期間である「平成28年(2016年)3月24日付け」のウェブサイトの出力画面として、乙第15号証ないし乙第19号証を提出する。
(4)なお、請求人は、被請求人が使用している商品が、本件審判請求に係る指定商品に含まれていることについて証明がないとしているが、乙第5号証及び乙第16号証として提出の被請求人のホームページの中、「アオイ化粧品について」の項において、「アオイ化粧品は、・・・・当社独自のノウハウを用いて乳化をしております。安全性が懸念されている合成界面活性剤やナノ粒子の原料なども用いていません。・・・」との記載がある。
当該表示をもって、被請求人が使用している商品が、本件請求商品に含まれていることは明らかである。

第4 当審の判断
1 被請求人提出の証拠及びその主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第2号証は商標権者(被請求人)の登記情報の写しであり、商標権者は、医薬品、工業薬品、化粧品、食品の製造・販売等を目的とし、昭和59年5月2日に設立された法人であり、平成29年(2017年)6月10日に東京都杉並区から渋谷区に移転したことが記載されている。
(2)乙第3号証ないし乙第7号証は、2018年(平成30年)6月18日又は同月29日出力の商標権者のウェブサイトの写しである。
そして、乙第5号証の3葉目には、「三相乳化」及び内部に「三」「相」「乳」「化」の白抜き文字を書した4つの黒色略四角形からなる標章の下、「人間も自然の一部であるという・・・の理念のもと、天然の素材を三相乳化してアオイ化粧品は作られています。」、「こうした乳化の特性に着目し、確立した乳化法が三相乳化という技術です。三相乳化は、30年以上に亘って肌と化粧品の研究に従事されたS先生が確立された技術です。」、「製品の製造には、人の手が加えられ、佐藤先生から継承した当社独自のノウハウを用いて乳化をしております。」と記載されている。
また、乙第6号証は、製品情報のページであって、内部に「三」「相」「乳」「化」の白抜き文字を書した4つの黒色略四角形からなる標章を表した「スキンミルク」、「モイスチャークリーム」及び「ボディソフナー」並びにその他商品が掲載され、その中の「スキンミルク」には、商品の画像とともに、内容量(120ml)、価格(¥6000)及び成分の表示、「人間の皮脂の研究から確立した三相乳化という独自の乳化法を用い、皮脂の組成に限りなく近い成分で作り上げた乳液です。・・・」と記載されている。
(3)乙第9号証は、被請求人によれば「いつまでも 私らしく 美しく/ΛOI」と題する商標権者の「商品パンフレット」であり、当該パンフレットには、乙第6号証の製品情報のページと同一の商品が掲載されている。その中の「スキンミルク」には、乙第6号証と同様に、内部に「三」「相」「乳」「化」の白抜き文字を書した4つの黒色略四角形からなる標章、商品の画像、内容量、価格、成分及び商品の説明が掲載されている。
また、当該パンフレットには、内部に「三」「相」「乳」「化」の白抜き文字を書した4つの黒色略四角形からなる標章の下、乙第5号証の3葉目の記載と同様の記述がある。
さらに、被請求人は、平成29年(2017年)6月10日に本店移転している(乙2)ところ、当該パンフレットには、移転後の住所が表示されたシールを貼付している。
(4)乙第10号証は、永井印刷工業株式会社と商標権者との間における、品名「アオイ製品カタログ」(3000部)についての2016年(平成28年)9月14日付けの納品書及び受領書である。
(5)乙第13号証は、永井印刷工業株式会社が印刷した「アオイ製品カタログ」が乙第9号証の商品パンフレットであって、2016年(平成28年)9月14日に納品したことを内容とする令和2年9月28日付けの証明書である。
(6)乙第15号証ないし乙第19号証は、インターネットアーカイブ「Wayback Machine」を用いた2016年(平成28年)3月24日時点における商標権者のウェブサイトの写しであるところ、乙第18号証は、製品情報のページであって、乙第6号証と同一の製品情報が掲載され、また、商標権者の名称及び移転前の住所が記載されている。
(7)上記(1)ないし(6)によれば、商標権者は、2016年(平成28年)9月14日に印刷業者から商標権者の製品カタログを3000部の納品を受けたところ、印刷業者の証明によれば、当該カタログとは乙第9号証の「商品パンフレット」であって、当該パンフレット(乙9)には内部に「三」「相」「乳」「化」の白抜き文字を書した4つの黒色略四角形からなる標章(以下「使用標章」という。)とともに商品「スキンミルク」(以下「使用商品」という。)が掲載されていた。
また、2016年(平成28年)3月頃において、商標権者のウェブページ(乙18)には当該パンフレット(乙9)と同一の商品が掲載されたことを認めることができる。
2 以上の事実を総合すると、以下のとおり判断することができる。
(1)使用商品について
商標権者による使用商品は「スキンミルク」であり、当該「スキンミルク」は、商標権者の商品パンフレット及び商標権者のウェブページに「人間の皮脂の研究から確立した三相乳化という独自の乳化法を用い、皮脂の組成に限りなく近い成分で作り上げた乳液です。」と説明されていることから、これは「三相乳化」と称する乳化法で製造された乳液であるといえる。
なお、請求人は、「三相乳化」について紹介された証左(甲1?甲7)を提出し、本件請求商品の括弧書きに係る「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」とは、「三相乳化の技術を用いて製造した化粧品」を指称するものであるから、本件請求商品は「三相乳化の技術を用いて製造した化粧品を除いた化粧品」である旨主張する。
しかしながら、請求人が提出した証左をみても「三相乳化」という技術についての説明は様々であって、明確な定義がされているとはいえないものであり、「三相乳化」についての明確な定義がない以上、「三相乳化の技術を用いて製造した化粧品」が「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」であると認めることはできない。
そうすると、本件の使用商品「スキンミルク」が「三相乳化の技術を用いて製造した化粧品(乳液)」であるということはいい得るものの、本件請求商品の括弧書きに係る「界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品」に含まれる商品とはいえないから、本件請求商品(「化粧品(界面活性剤を使用せず、その代わりに親水性ナノ粒子の物理的作用力を利用した乳化技術を用いて製造した化粧品を除く。)」)の範ちゅうに属する商品と認められる。
(2)使用者、使用時期及び使用行為について
商標権者は、2016年(平成28年)9月に使用標章とともに使用商品を含む化粧品等が掲載された商品パンフレットを3000部制作したものといえるから、使用標章の使用者は商標権者であり、当該パンフレットが制作された時期は要証期間内である。
そして、当該パンフレットには商品の画像、商品の内容量、価格、成分及び商品の説明などにより構成されているものであることから、顧客が商品を選択するために販売に係る商品が掲載されたパンフレットといえ、また、3000部という多くの部数が制作されていることもあわせ考慮すれば、当該パンフレットは、商標権者が顧客に提供するために制作し、頒布したものと推認し得るものである。
また、要証期間内である2016年(平成28年)3月頃において、商標権者のウェブページには上記パンフレットと同一の商品が掲載されたといえる。
(3)使用商標について
使用標章は、内部に「三」「相」「乳」「化」の白抜き文字を書した4つの黒色略四角形からなるものであり、本件商標と同一のものと認められる。
(4)小括
上記(1)ないし(3)からすれば、商標権者は、要証期間の2016年(平成28年)3月又は同年9月頃に、日本国内において本件審判の請求に係る指定商品中の商品「スキンミルク」を、パンフレット及びインターネット上の広告において、本件商標を付して頒布又は電磁的方法により提供したといえる。
そして、商標権者による上記行為は、「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標を使用していたことを証明したといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、本件審判の請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲(本件商標)





審理終結日 2021-03-05 
結審通知日 2021-03-11 
審決日 2021-03-29 
出願番号 商願2003-83100(T2003-83100) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y03)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 齋藤 貴博
小松 里美
登録日 2004-06-04 
登録番号 商標登録第4776699号(T4776699) 
商標の称呼 サンソーニューカ 
代理人 林 栄二 
代理人 篠田 貴子 
代理人 瀧野 文雄 
代理人 藤田 朗子 
代理人 今井 貴子 
代理人 小野寺 隆 
代理人 江成 文恵 
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