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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X25
管理番号 1380042 
審判番号 取消2020-300598 
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-08-28 
確定日 2021-10-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第5169248号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5169248号商標(以下「本件商標」という。)は、「Salt and Pepper」の欧文字を標準文字で表してなり、平成19年4月17日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,帽子,防暑用ヘルメット,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成20年9月26日に設定登録、その後、同30年10月9日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、令和2年9月14日にされたものである。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間は、平成29年9月14日から令和2年9月13日までであって、当該期間を、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
請求人は、被請求人提出の審判事件答弁書に対して、何ら弁駁していない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証(枝番号を含む。)を提出した。
以下、枝番号をすべて示すときは枝番号を省略し、証拠の表記に当たっては、「乙第○号証」を「乙○」のように省略して記載する。
1 本件商標の使用について
(1)被請求人は、岡山県岡山市南区築港新町一丁目25番1号シネマタウン岡南1Fの「シネマタウン岡南店」において、令和元年(2019年)10月13日に、「Salt & Pepper」の商標を付したホップサックジャケット1点を販売した。
(2)乙1は、被請求人の商品の販売履歴を記録、保存している被請求人のデータ「電子ジャーナルリスト」から、令和2年(2020年)10月13日に抽出(出力)した帳票であって、これによると、同元年(2019年)年10月13日14時21分に、岡山県岡山市南区築港新町一丁目25番1号シネマタウン岡南1Fの「シネマタウン岡南店」で、「2551400001800」の数字で管理されているホップサックジャケット1点を含む合計6点が販売されたことが記録されている。
なお、「シネマタウン岡南店」は、被請求人の店舗として実在する(乙2)。
また、ホップサックジャケットとは、ホップサックという、かごの目状に織られた織物(乙3)により仕立てられたジャケットであり、これが、本件審判において取消対象とされた本件商標の指定商品の1つである「洋服」に該当する商品である。
(3)販売されたホップサックジャケットに付されている数字「2551400001800」は、「JANコード」と呼ばれる「どの事業者の、どの商品か」を表す世界共通の商品識別番号であり、通常、バーコードスキャナで読み取れるように、JANシンボルというバーコードシンボルと一体で商品パッケージに表示されるものである(乙4)。
(4)販売されたホップサックジャケットのJANコード「2551400001800」によって特定される商品の詳細は、被請求人が商品管理をしているデータベースの登録情報から明らかにすることができるもので、当該データベースは、東京証券取引所一部上場企業である被請求人によって、その情報セキュリティ基本規程に基づきデータの改ざん等ができないよう厳格に管理されている(乙5、乙6)。
まず、被請求人の商品管理データベースを用いて、商品の在庫状況を確認する際の画面である「品番検索」の画面で、「Salt & Pepper」のブランドで販売されているホップサックジャケットのメーカー品番である「SP35551630057」を検索する(乙7の1)。
この検索結果で表示された「在庫情報」のメーカー品番「SP35551630057」をクリックすると、このメーカー品番の「商品詳細」画面が表示される(乙7の2)。
乙7の2の画面をみると、メーカー品番「SP35551630057」の品名が「ホップサックジャケット」であることや仕入先等の情報、更には、色とサイズの組み合わせごとに付与されたこの商品のJANコードと、そのJANコードに対応する色、サイズ、本体価格、現在庫などの情報を確認することができる。
乙7の2の画面中央付近にある「JAN」との記載は「JANコード」のことであり、その下に記載されている13桁の数字が、色とサイズの組み合わせごとに付与されたJANコードである。
これをみると、JANコード「2551400001800」は、被請求人のメーカー品番「SP35551630057」で管理されているホップサックジャケットのネイビーのLサイズであることが分かる。
(5)また、被請求人のメーカー品番「SP35551630057」で管理されているホップサックジャケットが「Salt & Pepper」のブランドで販売されていること、及び具体的に商品に付されている商標については、被請求人の商品管理データベースを用いて、被請求人の商品の基本情報を登録したマスターデータから、登録済みの商品の基本情報検索することで確認することができ(乙8の1)、その検索結果を表示した画面が、乙8の2の「基本情報登録」の画面である。
これをみると、被請求人のメーカー品番「SP35551630057」は、「■商品情報」欄に記載されているとおり、「商品正式名称」は、ホップサックジャケットであること、「■商品属性」の欄に記載されているとおり、ブランドは、「0277:Salt & Pepper」であること、「■画像」に記載されているとおり、このメーカー品番の商品に付されている商標は、「Salt & Pepper」であることが分かる(乙8の2)。
(6)「Salt & Pepper」のブランドで販売されているホップサックジャケットの実物の写真は、乙9の1から乙9の3のとおりである。
乙9の1から乙9の3の写真は、本審判請求後に、被請求人の社内で見つかった「Salt & Pepper」のブランドで販売している色がネイビー、サイズがLのホップサックジャケットの現物を撮影したものであり、令和元年(2019年)10月13日に、岡山県岡山市南区築港新町一丁目25番1号シネマタウン岡南1F所在の被請求人の店舗「シネマタウン岡南店」において販売された、ホップサックジャケットそのものの写真ではない。
しかし、「Salt & Pepper」のブランドで販売しているホップサックジャケットは、販売を開始した2013年秋以降今日まで、同じデザインで販売しているから、乙9の1から乙9の3の写真に写っているホップサックジャケットは、襟首の「Salt & Pepper」の商標の表記を含めて、令和元年(2019年)10月13日に、岡山県岡山市南区築港新町一丁目25番1号シネマタウン岡南1F所在の被請求人の店舗「シネマタウン岡南店」において販売されたホップサックジャケットと全く同じ商品である(乙6)。
乙9の1の写真の上部を拡大した写真が乙9の2であり、更に襟首の商標が鮮明に見えるよう襟首を拡大した写真が乙9の3であって、この乙9の1から乙9の3に写っている襟首の商標は、乙8の2の「■画像」に写っている商標と同一である。
(7)以上の証拠から、メーカー品番「SP35551630057」で管理され、「Salt & Pepper」のブランドで販売されているホップサックジャケットの襟首に、「Salt & Pepper」の商標が付されていること、襟首の「Salt & Pepper」の商標の表記を含めて、乙9の1から乙9の3の写真と同じ「Salt & Pepper」のブランドのホップサックジャケットのネイビーのLサイズ(JANコード「2551400001800」)が、令和元年(2019年)10月13日に、岡山県岡山市南区築港新町一丁目25番1号シネマタウン岡南1F所在の被請求人の店舗「シネマタウン岡南店」において、販売されたことは明白である。
2 使用商標と本件商標の社会通念上の同一性について
(1)本件商標は、標準文字で「Salt and Pepper」と表してなるところ、実際の商品「ホップサックジャケット」の襟首に使用されているものは、筆記体のような書体で「Salt & Pepper」と表してなり、その下に小さく異なる書体で「MENS SHOP」との記載が併記されている(以下「使用商標」という。)。
このように、本件商標と使用商標では、本件商標は「and」のアルファベットの表記であるのに対し、使用商標は「&」の記号の表記であること、本件商標は標準文字であるのに対し、使用商標は筆記体のような書体であること、及び、本件商標は「Salt and Pepper」の文字のみであるのに対し、使用商標は「Salt & Pepper」の下に「MENS SHOP」との文字の記載が併記されていること、という3点の相違点があるが、次に述べるとおり、使用商標が本件商標と社会通念上同一であることは明らかである。
(2)欧文字「and」を表す記号が「&」であることは周知の事実であって、記号「&」の称呼も欧文字「and」と同じ「アンド」であること、また、観念も同じ「及び」であることから、当該相違があっても、使用商標が本件商標と社会通念上同一であることが否定されるものではない。
(3)本件商標と使用商標とは、それらの書体が異なっており、また、上述のとおり、それらの構成中「and」と「&」の違いはあるものの、使用商標は本件商標と同じ欧文字「Salt」及び「Pepper」の文字で構成されていること、また称呼も本件商標と同じ「ソルトアンドペッパー」であること、さらに、観念も本件商標と同じ「塩とこしょう」であることから、外観上の相違があることをもって、本件商標と使用商標とが社会通念上同一であることを否定されるものではない。
(4)使用商標は、その構成中「Salt & Pepper」の表記と比べて、「MENS SHOP」の文字は明らかに小さく、また、書体も明確に異なっていることから、この2つの表記を一体とみるべきではなく、それぞれ別の商標として使用されているとみるのが妥当である。
(5)以上のことから、本件商標と使用商標には上記の相違点はあるものの、一般的に登録商標が、実際の使用においては、種々の態様において使用がなされる商取引の実情に照らして考えると、この程度の外観上の変更は、一般的に採択し得る範囲内の変更といえ、同一の称呼及び観念が生ずることを総合勘案すれば、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標といえることは明白である。
3 以上のとおり、被請求人は、要証期間内である令和元年(2019年)10月13日に、日本国内である岡山県岡山市南区築港新町一丁目25番1号シネマタウン岡南1F所在の「シネマタウン岡南店」において、「Salt & Pepper」の商標が付された「洋服」の一種である「ホップサックジャケット」1枚を譲渡、すなわち「使用」(商標法第2条第3項第2号)しているから、本件商標の登録は維持されるべきであり、本件審判請求は成り立たないとの審決がなされるべきである。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべき理由はない。

第4 当審の判断
1 認定事実
(1)被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 乙1は、被請求人が、自身の商品の販売履歴を記録・保存しているデータであると主張するものであって、上部中央に「電子ジャーナルリスト」の表題が、右上部に「抽出日:2020/10/13」、左上部に「シネマタウン岡南店」の記載があり、その下に「岡山県岡山市南区築港新町一丁目25番1号シネマタウン岡南1F」及び「086-262-3906」の記載がある。さらにその下に、「<領収証>」、「2019年10月13日(日)14:21」、「Sale 2551400001800」、「外551 ホップサックジャケット」、「9,900×1点 9,900」、「50%割引 50% -4,950」の記載のほか、「小計 6点 16,370」、「税率 10.0% 消費税等 1,633」、「合計 17,964」、「伝票番号:16390」などの記載がある。
イ 乙2は、被請求人が自己のウェブサイトを出力したものと主張するものであり、1葉目には、上部に「ライトオン シネマタウン岡南店(岡山県 岡山市)|店舗情報|Right-on Co.,Ltd.」の記載があり、また、「ライトオン シネマタウン岡南店」の見出しの下、「店舗情報」として、「所在地: 〒702-8056 岡山県 岡山市 南区 築港新町1-25-1 シネマヤウン岡南 1F」「電話番号: 086-262-3906」の記載がある(審決注:「店舗情報」に記載された「シネマヤウン岡南」は、乙2におけるその他の記載内容から「シネマタウン岡南」の誤記と思われる。)。
なお、右下には、当該ウェブサイトの打ち出し日と思われる「2020/11/08」の記載がある。
ウ 乙3は、ファッション関係の用語が掲載されているウェブサイトの出力物と思われるものであり、「ホップサックツイード」の見出しの下、「ビールの苦味原料のもととなるホップの運搬用に用いられた麻袋がこの織り方をしていたため、このようにかごの目状に織られた織物をホップサックといい、通気の良い織り上がり感のため、主に夏用のジャケット、スーツ用生地などに使われます。」の記載がある。
エ 乙4は、一般財団法人流通システム開発センターのウェブサイトの出力物と思われるものであり、「JANコード(GTIN)とは」の見出しの下、「JANコードは『どの事業者の、どの商品か』を表す、世界共通の商品識別番号です。JANコードは、商品のブランドを持つ事業者が、当財団から貸与されたGS1事業者コードを用いて、商品ごとに設定します。」、「JANコードには、標準タイプ(13桁)と短縮タイプ(8桁)の2つの種類があります。」の記載がある。
オ 乙5は、「日本取引所グループ 東京証券取引所 東証上場会社情報サービス」のウェブサイト上の情報と思われるものであり、「上場会社詳細(基本情報)」の見出しの下、「ライトオン」について、「市場区分」として「第一部」、「業種」として「小売業」、「英文商号」として「RIGHT ON Co.,Ltd.」、「上場取引所」として「東」の記載のほか、「代表者役職」として「代表取締役社長」、「代表者氏名」として個人の氏名の記載がある。
カ 乙6は、「報告書」と題する書面であって、「作成年月日」として「令和2年11月12日」、「作成者氏名」として乙5における代表者氏名と同じ個人名の署名捺印があり、当該報告書の作成者が被請求人の代表取締役社長であること、被請求人の商品管理データベースを自社の商品に関する各種情報を管理するために使用しており、被請求人が東京証券取引所の第一部に上場する企業であることから、当該データベースも登録情報等が改ざんされないように厳格に管理されていること、乙7及び乙8は当該データベースの画面上の情報であり、当該データベースにより検索した、「メーカ品番」が「SP35551630057」に該当する商品が「Salt & Pepper」のブランドのホップサックジャケットであること、並びに、乙9の写真は本件審判請求後に撮影した「Salt &Pepper」のブランドで販売しているホップサップジャケットの写真であるが、販売を開始した2013年秋以降、現在に至るまで、同じデザインで販売されていること、の説明がされている。
キ 乙7及び乙8は、被請求人が自己の商品管理データベース(以下「被請求人データベース」という。)と主張するものである。
(ア)乙7の1は、被請求人が被請求人データベースの「品番検索」の画面と主張するものであり、左上部にややデザイン化された「Rignt-on.」の文字が表示され、その段の中央に「品番検索」の見出しがあり、その下段の枠内には、「部門」「クラス」「仕入先」等の検索項目と思われる欄が表示されているところ、「メーカー品番」の項目には「SP35551630057」の表示があり、右下には「検索」の項目が表示されている。そして、その下には、「在庫情報」の見出しの下、「メーカ品番」の欄には「SP35551630057」、「自社品番」の欄には「0005512000029」、「品名」の欄には「ホップサックジャケット」の表示がある。
(イ)乙7の2は、被請求人が、乙7の1の記載情報における検索結果として表示された「商品詳細」の画面と主張するものであり、左上部にややデザイン化された「Rignt-on.」の文字が表示され、その段の中央に「商品詳細」の見出しがあり、その下段の枠内には、「メーカー品番」の欄には「SP35551630057」、「品名」の欄には「ホップサックジャケット」、「JAN」の欄の3つ目には「2551400001800」、「色」の欄には「ネイビー」、「サイズ」の欄には「L」、「本体価格」の欄には「6900」の記載がある。
(ウ)乙8の1は、被請求人が、被請求人データベースの「商品情報検索」の画面と主張するものであり、左上部に「商品情報検索」、「■検索」の見出しの下、「メーカ品番」の欄には「(第1条件) SP35551630057」の記載がある。
その下段の枠内には、「■商品情報一覧」の見出しの下、「メーカ品番」の欄には「SP35551630057」、「自社品番」の欄には「0005512000029」の表示がある。
(エ)乙8の2は、被請求人が、被請求人データベースの「基本情報登録」の画面と主張するものであり、左上部にややデザイン化された「Rignt-on.」の文字が表示され、「基本情報登録」の見出しの下、「メーカー品番」の欄には、「SP35551630057」、「商品正式名称」の欄には「ホップサックジャケット」、「ブランド」の欄には「0277:Salt & Pepper」、「■画像」の欄には、筆記体で表された「Salt & Pepper」の欧文字及びその下部にやや小さなゴシック体で横書きした「MENS SHOP」の文字を上下二段に表したものが表示されている。
ク 乙9は、被請求人が「ホップサックジャケット」と称する被請求人の商品の写真と主張するものであって、当該ホップサックジャケットの襟首部分の織りネームには、筆記体で表された「Salt & Pepper」の文字と、その下段にやや小さな文字で「MENS SHOP」の文字、及び「L」の欧文字が表示されている。
(2)上記(1)によれば、以下のとおり、認めることができる。
ア 被請求人の店舗について
被請求人は、東京証券取引所第一部上場企業で、小売業を業とする株式会社であって、その英文商号を「RIGHT ON Co.,Ltd.」とするものである(乙5)。
そして、乙2の1葉目の上部には「Right-on Co.,Ltd.」との記載があり、その構成中の「Right-on」の文字部分と、請求人の英文商号中の「RIGHT ON」とは、語頭の一字を同じ「R」とし、それ以外の欧文字において大文字と小文字の差、及びハイフンの有無を有するものの、これらは同じ会社の英文商号とみて差し支えないものであるから、乙2は被請求人のウェブサイトを出力したものとみて特段の支障はなく、これより被請求人は、岡山県岡山市南区築港新町一丁目25番1号 シネマタウン岡南1Fに「ライトオン シネマタウン岡南店」と称する店舗を有しているとみることができる(乙2)。
イ 「ホップサックジャケット」について
「ホップサックジャケット」と称される商品は、ホップサックという、かごの目状に織られた織物(乙3)を使用したジャケットであり、洋服の一種といえる。
ウ 電子ジャーナルリストについて
乙1は、被請求人が、自身の商品の販売履歴を記録・保存しているデータと主張するものであり、左上部に「シネマタウン岡南店」、「岡山県岡山市南区築港新町一丁目25番1号シネマタウン岡南1F」及び「086-262-3906」の記載があるところ、これは、乙2の「店舗情報」に記載された所在地及び電話番号と同じものである。
また、これらの記載の下欄には、「<領収証>」、「2019年10月13日(日)14:21」、「外551 ホップサックジャケット」、「小計 6点 16,370」、「税率 10.0% 消費税等 1,633」、「合計 17,964」、「伝票番号:16390」など、商品販売に関する情報と思われる記載がある。
そうすると、乙1は、被請求人の商品販売に関する情報を記載したものとみて差し支えなく、また、乙1は、被請求人が、「ライトオン シネマタウン岡南店」の店舗において、2019年10月13日(日)14時21分に、ホップサックジャケットを含む6点の商品を、伝票番号が16390、合計金額17,964円で、店頭にて販売したことを示す領収証の内容について、2020年10月13日に抽出した印刷物とみて特段の支障はない。
エ 被請求人データベースについて
乙7及び乙8は、東京証券取引所第一部上場企業である被請求人が、自身が扱う商品に関する各種情報を、改ざん等ができないように厳格に管理された、商品管理に使用するデータベースであって、そのデータベースの検索及び検索結果を表示した画面と主張するものである。
そして、乙7及び乙8の2には、それらの左上部にややデザイン化された「Rignt-on.」の文字が表示されており、これは被請求人の英文商号の略商号といい得ること、及び、乙7に表示された「メーカー品番」の「SP35551630057」と乙8に表示された「メーカ品番」の「SP35551630057」が一致していること、乙7の1に表示された「自社品番」の「0005512000029」と乙8の1に表示された「自社品番」の「0005512000029」が一致していること、及び乙6の被請求人の代表取締役が作成した報告書における「乙7及び乙8は、被請求人の商品管理データベースの画面上の情報である」旨の記載などから、乙7及び乙8は、被請求人が、管理、使用する、商品管理に使用するデータベースの検索及び検索結果の画面を表示したものとみて差し支えないものである。
また、乙7及び乙8は、上述の記載内容などから、商品の在庫状況を検索できるデータベースの検索及び検索結果の画面を表示したものであり、そして、当該データベースは、「メーカー品番」を入力して検索することにより、商品の色、サイズごとの在庫状況が表示されるとともに、当該商品に付されているJANコードや当該商品に使用されているロゴを確認することができるものであるとみて差し支えない(乙7、乙8)。
オ JANコードについて
JANコードは、「どの事業者の、どの商品か」を表す、世界共通の商品識別番号であり、商品のブランドを持つ事業者が、商品ごとに設定するもので、JANコードには、標準タイプ(13桁)と短縮タイプ(8桁)の2つの種類がある(乙4)。
乙7の2には、JANコードを表したと思われる「JAN」の欄に「2551400001800」という13桁の数字が表示されていることから、当該数字は、乙7の2に係る、「メーカー品番」が「SP35551630057」で、色がネイビー、サイズがLである商品「ホップサックジャケット」に付されているJANコードといえる。
乙1には、「Sale 2551400001800」、「外013 ホップサックジャケット」の表示がされているところ、当該13桁の数字は、乙7の2の「JAN」の欄に表示されている「2551400001800」の13桁の数字と一致しているから、乙1の当該13桁の数字も、「メーカー品番」が「SP35551630057」で、色がネイビー、サイズがLである商品「ホップサックジャケット」に付されているJANコードを表示したものといい得る。
カ ホップサックジャケットの襟首部分の織りネームについて
被請求人データベースから検索できる「メーカー品番」が「SP35551630057」の「ホップサックジャケット」に係るロゴの画像(乙8の2)は、別掲のとおりの乙9における写真に写されたホップサックジャケットの襟首部分の織りネームの枠内に表されたものといえ、当該ロゴは、筆記体で表された「Salt & Pepper」の欧文字及びその下部にやや小さなゴシック体で横書きした「MENS SHOP」の文字を上下二段に表してなるものである。
また、「乙9の写真は、被請求人が『Salt & Pepper』のブランドで販売しているホップサックジャケットの写真で、令和元年(2019年)10月13日に販売されたものの写真ではないが、販売を開始した2013年秋以降同じデザインで販売している」旨の主張(乙6)、及び「JANコードが、商品のブランドを持つ事業者が、商品ごとに設定するものである。」旨の記載(乙4)などから、乙9の写真における「ホップサックジャケット」は、令和元年(2019年)10月13日に、被請求人(商標権者)によって販売された商品と同じデザインの商品であると推認し得るものである。
なお、当該織りネームの右下部に表されている欧文字「L」は、当該ホップサックジャケットのサイズを表したものとみて差し支えない(乙9)。
2 判断
(1)使用者について
2019年(令和元年)10月13日に、「2551400001800」のJANコードに該当する商品「ホップサックジャケット」を販売した者は、岡山県岡山市南区築港新町一丁目25番1号に所在する「ライトオン シネマタウン岡南店」(乙1)であり、被請求人の主張及び同人のウェブサイト(乙2)の記載を併せてみれば、これは、被請求人が運営する店舗であるといえるから、当該「ホップサックジャケット」(以下「使用商品」という。)を令和元年(2019年)10月13日に販売したのは、被請求人(商標権者)ということができる。
(2)使用商品について
被請求人データベースにおいて、メーカー品番「SP35551630057」に照応するJANコードの一には「2551400001800」があり、これに該当する商品の「品名」は、「ホップサックジャケット」であり、また、サイズは「L」ということができ(乙7)、さらに、当該品番「SP35551630057」の「商品正式名称」は、「ホップサックジャケット」であって、その「ブランド」は「Salt & Pepper」ということができる(乙8)。
そして、「ホップサックジャケット」は、上記1(2)イのとおり、かごの目状に織られた織物(乙3)を使用したジャケットであって、本件審判の請求に係る指定商品中、「洋服」の範ちゅうに含まれる商品である。
(3)使用商標について
乙9の写真には、別掲のとおりの構成からなる、ジャケットの襟首部分の織りネームが表示され、これは、筆記体で表された「Salt & Pepper」の欧文字及びその下部にやや小さなゴシック体で横書きした「MENS SHOP」の文字を上下二段に表したもの(使用商標)である。
そして、使用商標は、その構成中、「Salt & Pepper」及び「MENS SHOP」の各構成文字は、文字の大きさ及び書体が相違し、二段に表されていることから、視覚的にも分離して看取されるものであり、また、下段の「MENS SHOP」の欧文字は、「男性(用)の店」ほどの意味合いを有する平易な英語であって、指定商品との関係においては、自他商品の識別機能を有しないか、あるいは、有するとしても極めて弱いものというべきであるから、上段に大きく表された「Salt & Pepper」の文字部分が自他商品識別標識として機能しているものといえる。そして、「Salt & Pepper」の文字部分における「&」の記号は、二つのものを並列に表すときに用いられる英語「and」を表す記号として親しまれているものといえることから、使用商標は、当該文字部分の構成文字に相応して「ソルトアンドペッパー」の称呼を生じ、また、「Salt」が「塩」を、「Pepper」が「コショウ」を意味する英語(いずれも「ベーシックジーニアス英和辞典」株式会社大修館書店。)として親しまれていることから、「塩とコショウ」ほどの観念を生じるものである。
一方、本件商標は、上記第1のとおり、「Salt and Pepper」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して「ソルトアンドペッパー」の称呼を生じ、また、「Salt」が「塩」を、「Pepper」が「コショウ」を意味する英語として親しまれていることから、「塩とコショウ」ほどの観念を生じるものである。
してみると、本件商標と使用商標中の「Salt & Pepper」の文字部分とは、書体において相違し、かつ、本件商標の中間部「and」の欧文字表記に対して、使用商標中の当該文字部分の「&」は、「and」を表した記号という差異を有するものの、それらの構成中「Salt」及び「Pepper」の欧文字はそのつづりを共通にし、両者の構成文字それぞれから生じる「ソルトアンドペッパー」の称呼及び「塩とコショウ」の観念を同じくするものである。
したがって、本件商標と、使用商標中の「Salt & Pepper」の文字部分とは、外観における差異を有するものであるとしても、その差異は、上述のとおり、書体の差異及び「and」と「&」との差異であって、かつ、「&」の記号は、二つのものを並列に表すときに用いられる英語「and」を表す記号として親しまれているものといえることからしても、上記相違点は両商標の称呼及び観念の共通性に実質的な影響を及ぼすものとはいえないから、使用商標中の「Salt & Pepper」の文字部分は、本件商標と社会通念上同一の商標とみて差し支えないものである。
(4)使用時期について
上記(1)ないし(3)によれば、被請求人は、自身が運営する店舗「ライトオン シネマタウン岡南店」において、「2551400001800」のJANコードに該当する商品「ホップサックジャケット」に、使用商標を付して販売していたことが認められ、その日付は、要証期間内である令和元年(2019年)10月13日である。
(5)小括
以上によれば、商標権者(被請求人)は、要証期間内である令和元年(2019年)10月13日に、日本国内において、請求に係る指定商品中「洋服」の範ちゅうに含まれる商品「ホップサックジャケット」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して譲渡したものということができ、これは、商標法第2条第3項第2号にいう「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為」に該当する商標の使用といえる。
3 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が、その請求に係る指定商品中、「洋服」の範ちゅうに含まれる「ホップサックジャケット」について、本件商標の使用をしていたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

別掲(ジャケットの襟首部分の織りネーム)


審理終結日 2021-06-25 
結審通知日 2021-06-29 
審決日 2021-09-17 
出願番号 商願2007-38094(T2007-38094) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (X25)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 杉本 克治
庄司 美和
登録日 2008-09-26 
登録番号 商標登録第5169248号(T5169248) 
商標の称呼 ソルトアンドペッパー 
代理人 小松 秀彦 
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所 

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