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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない W43
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W43
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W43
管理番号 1379953 
審判番号 無効2020-890058 
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-08-03 
確定日 2021-10-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第6230440号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6230440号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成からなり、令和元年12月12日に登録出願、第43類「飲食物の提供,日本料理を主とする飲食物の提供,うどん又はそばの提供,うなぎ料理の提供,すしの提供,てんぷら料理の提供,とんかつ料理の提供,西洋料理を主とする飲食物の提供,イタリア料理の提供,スペイン料理の提供,フランス料理の提供,ロシア料理の提供,中華料理その他の東洋料理を主とする飲食物の提供,インド料理の提供,広東料理の提供,四川料理の提供,上海料理の提供,北京料理の提供,アルコール飲料を主とする飲食物の提供,茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供,カフェテリアにおける飲食物の提供,簡易食堂における飲食物の提供,喫茶店における飲食物の提供,軽食堂における飲食物の提供,ケータリング(飲食物),食品の彫刻,セルフサービス式レストランにおける飲食物の提供,バーにおける飲食物の提供,レストランにおける飲食物の提供,和食の提供」を指定役務として、同2年2月19日に登録査定、同月27日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
1 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証(枝番号を含む。)を提出した。
2 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効にすべきものである。
(1)請求人について
請求人である株式会社XLV JAPAN(以下「XLV JAPAN社」という。)は、世界的に著名なルイ・ヴィトン一族の第5代目である、フランスのザヴィエ・ルイ・ヴィトン(XAVIER-LOUIS VUITTON:以下、「ザヴィエ氏」という。)が創ったワインのプライベートブランドである「XLV」を日本に独占輸入している正規輸入代理店である。
そして、請求人は、ザヴィエ氏から日本において「XLV」ブランドの管理を一任されている者であり(甲1)、今回の無効審判についても、ザヴィエ氏の要望によりザヴィエ氏に代わって請求人が提起している(甲1)。
(2)「XL(ロゴ)」の周知・著名性について
ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)は、日本を含め世界的に著名であることは疑いの余地はない。その世界的に著名なルイ・ヴィトン一族の第5代目であるザヴィエ氏は勿論フランスでは周知・著名な人物であり、そのザヴィエ氏が生産しているワインやシャンパンの「XLV」ブランドも、フランスでは周知・著名なものである。ザヴィエ氏については、例えば請求人により作成・配布されているワインカタログ(甲2)や請求人のホームページ(甲3)に説明されている。
ザヴィエ氏は、フランスで赤ワインや白ワイン、シャンパンを生産している。これらのボトルのラベル(エチケット)には、ブランド名「XLV」や「X」と「L」を重ね合わせたブランドロゴ(以下「XL(ロゴ)」という。)が付されている。シャンパンと名乗るには、フランスにおいて品質基準を定めた法律であるAOC(原産地証拠統制法)により厳格に定められており、AOCの規格に則って製造されたシャンパーニュ地方製のスパークリングワインだけが、シャンパンと名乗ることが認められる。シャンパンはAOCによりブランド管理されており、生産者毎に番号が振られている。ザヴィエ氏によるシャンパンの「XLV」ブランドも、AOCの規格に則してシャンパンと認められているブランドである。
なお、シャンパンと名乗れる生産者はフランスでも名誉でありステータスである。AOCによりシャンパンと認められている生産者は約840程度あるが、日本に輸入されるシャンパンは約200ブランドのみとなっている。 すなわち、シャンパンと認められるブランドの中でも厳選されたブランドのみ、日本に輸入されている状況であり、フランスにおいて、ザヴィエ氏の「XLV」ブランドは、シャンパンの中でもよりステータスの高い、著名なブランドとなっている。
ザヴィエ氏の「XLV」ブランドのワインやシャンパンには、ブランド名「XLV」と共にブランドロゴ「XL(ロゴ)」が装飾として付されている。具体的には、「XLV」ブランドのワインやシャンパンのボトルは、ラベル自体が「XL(ロゴ)」をダミエ柄で施した模様になっている(甲4)。 また、「XL(ロゴ)」のチャームをボトルにぶら下げているものもある(甲4)。さらに、「XLV」ブランドのワインやシャンパンのボトル箱に「XL(ロゴ)」を施しているものもある(甲5)。このように、ザヴィエ氏は、ブランド名とブランドロゴを常にセットで用いることで、「XLV」ブランドのブランド力向上を図っている。
このように、ザヴィエ氏のワインやシャンパンの「XLV」ブランド「XLV」及びブランドロゴ「XL(ロゴ)」は、フランスにおいて周知・著名なものである。
一方、請求人は、日本において平成28年2月頃から「XLV」ブランドのワインやシャンパンの輸入を開始し、例えば、同29年度には年間650万円以上、同30年度には年間1029万円以上、そして同31年度には年間974万円以上の販売促進費及び広告宣伝費を投じ、継続的に日本における「XLV」ブランドの知名度やブランド力の向上を図ってきている。
具体的には、請求人は日本においてブランド名「XLV」だけでなく、ブランドロゴ「XL(ロゴ)」を保護するために、ぶどう酒や洋酒等について、登録商標「XL(ロゴ)」を保有している(甲6)。
また、例えば、平成29年から同31年にかけて、株式会社ジェーシービー発行のJCBプレミアムカード会員向けの情報誌「JCB THE PREMIUM」の「ザ・クラス名食倶楽部」内で、ミシュランガイドに掲載されたレストランとのコラボレーション企画でザヴィエ氏の「XLV」ブランドのワインやシャンパンが提供されることが掲載された(甲7?甲10)。
さらに、同誌の読者プレゼント企画で「XLV」ブランドのワインが提供された(甲9)。
このように、ザヴィエ氏の「XLV」ブランドは、高級料理店において合わせられるワインやシャンパンとして採用されるブランドである。また、このような裕福層向けの情報誌に継続して採用されるのは、実際に利用した顧客からの反応も良いからであり、「XLV」ブランドは裕福層向けの高級ブランドとして周知されている状態である。
さらに、株式会社三越伊勢丹が平成30年11月に主催した日本最大級のシャンパンの試飲販売会である「ノエル・ア・ラ・モード」にも「XLV」ブランドのワインやシャンパンを出展した(甲11、甲12)。「ノエル・ア・ラ・モード」には、誰でもどんなブランドでも出展できるわけではなく、主催者側で厳選されたブランドのみが出展できるものである。
このように、ザヴィエ氏の「XLV」ブランドは、日本最大級のシャンパンの試飲販売会でも採用されるような周知なブランドである。
また、接待飲食等営業店の求人向けサイトである「キャバペディア」において、「お酒の知識」のコーナーのタイトル写真にザヴィエ氏の「XLV」ブランドのワインやシャンパンが採用されているとともに、「XLV」ブランドの説明ページにおいてザヴィエ氏及び「XLV」ブランドについて説明されている(甲13)。
このように、飲食店の従業員向けの知識コーナーでもザヴィエ氏の「XLV」ブランドが掲載され飲食店従業員にも周知されている状態である。
そして、いわゆるSNS上でも、例えば、instagramにおいて約10万フォロワーのインスタグラマーが平成29年11月8日付で「XLV」ブランドの高級シャンパンを宣伝している(甲14)。
その他、多数のインスタグラマーがザヴィエ氏の「XLV」ブランドのワインやシャンパンを宣伝しており、インターネット上でも「XLV」ブランドのワインやシャンパンが高級飲食店における高級ブランドのものであることが周知されている。
また、ラジオ放送においても、InterFM897による令和2年3月20日放送の「LIVE GARAGE」内の豪華プレゼント企画で、ザヴィエ氏の「XLV」ブランドのシャンパンが提供されている(甲15)。
さらに、請求人は、俺の株式会社や株式会社カクヤス等、取引先名薄(甲16)に示されるような大手取引先や、中小酒卸売業者や飲食店等の全国に合計260社程度の取引先に、「XLV」ブランドのワインやシャンパンを卸している。さらに、大手酒卸業者には、間接的な小卸売店もあり、日本全国1000社以上で「XLV」ブランドのワインやシャンパンが取引されている。
加えて、請求人の企画により平成28年10月8日にザヴィエ氏が来日し、レセプションパーティーを開催した際にも、ブランド名「XLV」の広告板を壁面に配するとともに、ひな壇の背景に「XLロゴ」をダミエ柄で施し、ブランド名「XLV」及びブランドロゴ「XLロゴ」を積極的に提示することで、ブランドの知名度やブランド力の向上を図っている(甲17)。
このように、ザヴィエ氏のワインやシャンパンの「XLV」ブランドの「XLV」及びブランドロゴ「XL(ロゴ)」は、日本においても周知・著名なものである。
(3)被請求人について
被請求人であるXLV SOCIETY株式会社は、請求人であるXLV JAPAN社と平成30年1月1日付で、商標使用許諾契約を締結していた(甲18)。
当該商標使用許諾契約によれば、被請求人は、被請求人の運営する飲食店「Restaurant & Wine Bar XLV」において、飲食物の提供を行うに際し、請求人の所有する複数の登録商標(甲6)や名称を店舗の看板等に使用するために使用許諾を受けていた。
その後、被請求人の契約違反により、当該商標使用許諾契約を終了させる旨の通知書を請求人が令和元年9月10日付で内容証明郵便により被請求人に発送した(甲19)。
そして、被請求人は、上述の内容証明郵便を令和元年9月11日付で受領し(甲19)、契約終了となることを知った後のタイミングである同年12月9日付で、商標「XL(ロゴ)」を登録出願し、同2年2月27日付で商標登録を受けている(甲20)。
被請求人は、当該商標使用許諾契約が既に終了しているにもかかわらず、令和2年7月27日現在も、京都府京都市内で飲食店「Restaurant & Wine Bar XLV」(「Dining Bar XLV」 の表記もあり)を営業しており、飲食店の店舗名や看板、イベントポスター等にブランド名「XLV」やブランドロゴ「XL(ロゴ)」を、ザヴィエ氏の名前と共に使用している(甲21、甲22)。
同店のホームページには「なかなかお目にかかることのないXLV(エックスエルブイ)のワイン」を用意していることをうたうとともに、ザヴィエ氏の「XLV」ブランドのワインやシャンパンのみを紹介する「XLVワインリスト」のページが存在する(甲23)。
すなわち、被請求人は、ザヴィエ氏の名前を出し、あたかもザヴィエ氏と関連性が高く見えるように店舗名や看板等にブランド名「XLV」やブランドロゴ「XL(ロゴ)」を利用して、ザヴィエ氏の「XLV」ブランドに化体した信用や名声、顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する形でザヴィエ氏の「XLV」ブランドのワインやシャンパンの提供や店頭販売も行っている(甲24)。
(4)商標法第4条第1項第19号の該当性について
ブランド名「XLV」は、上記(2)にも記載のとおり、世界的に著名なルイ・ヴィトン一族の第5代目であるザヴィエ氏及びザヴィエ氏が生産しているワインやシャンパンのブランドとしてフランスだけでなく日本国内においても周知・著名なものである。
そして、ザヴィエ氏の「XLV」ブランドの商品は、具体的にはワイン及びシャンパンである。一方、本件商標の指定役務は、飲食物の提供等である。
また、被請求人は、現実にも飲食店の店舗名等にブランド名「XLV」を使用すると共に、飲食店においてザヴィエ氏の「XLV」ブランドのワインやシャンパンを提供し、また店頭販売もしている。
ここで、ワインやシャンパンのブランド名と店舗名とは、それぞれワインやシャンパンを購入する者とワインやシャンパンの提供を受ける者、すなわち、それぞれの需要者が共通するものである。さらに、現実に提供場所も共通している。
したがって、ワインやシャンパンのブランド名と店舗名とは、関連性が非常に高いものである。
そして、上記(3)にも記載のとおり、被請求人は、商標使用許諾契約(甲18)を終了させる旨の内容証明郵便(甲19)によりブランド名「XLV」及びブランドロゴ「XL(ロゴ)」が使用できなくなることを知るとともに、請求人が第43類の飲食物の提供について「XL(ロゴ)」の商標権を有していないことを知った上で、本件商標の登録を受けている。
すなわち、被請求人による本件商標は、ザヴィエ氏の周知・著名なブランドロゴ「XL(ロゴ)」が請求人によりぶどう酒や洋酒等に対して商標登録されていることを知りながら、請求人との商標使用許諾契約が終了した後に、これが日本において飲食物の提供に対して商標登録がなされていないことを奇貨として、ブランドロゴ「XL(ロゴ)」を請求人の承諾を得ずに商標登録出願し、登録を受けたものである。
このような事情の下になされた本件商標の出願行為は、後の代理店契約締結を強制する目的や、交渉における自己の立場を有利にする目的、さらには先取り的に出願し高額で買い取らせる目的等で出願したもといわざるを得ず、取引上の信義則に反するものであることは明らかである。
また、被請求人は「XLV」ブランドに係る事業に携わるグループの一員でもなく、ザヴィエ氏の了承も得ておらず、同氏の「XLV」ブランドに化体した信用や名声、顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)していることは明らかである。なお、同号にいう「他人」とは本人以外、すなわち、ザヴィエ氏以外をいうものであり、当然に被請求人とザヴィエ氏は「他人」であることに疑いの余地はない。
さらに、甲第19号証の内容証明郵便によりブランド名「XLV」及びブランドロゴ「XL(ロゴ)」が使用できなくなることを知るとともに甲第28号証の内容証明郵便により飲食店に対してザヴィエ・ルイ・ヴィトンの名前や名前を想起させる名称の使用を直ちに中止するよう通知された後に、日本において飲食物の提供に対して商標登録がなされていないことを奇貨として、ブランドロゴ「XL(ロゴ)」を商標登録出願し、登録を受けたものであり、これは商標法第4条第1項第19号にいう「不正の目的」に他ならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第15号の該当性について
ザヴィエ氏の「XLV」ブランドの商品は、具体的にはワイン及びシャンパンである。一方、本件商標の指定役務は、飲食物の提供等である。また、被請求人は、現実にも店舗名等にブランド名「XLV」やブランドロゴ「XL(ロゴ)」を使用するとともに、飲食店においてザヴィエ氏の「XLV」ブランドのワインやシャンパンを提供し、また店頭販売もしている。
このような状況において、仮に「ワインやシャンパン」と「飲食物の提供」が非類似であったとしても、上記(2)にも記載のような周知・著名なブランドロゴであるブランドロゴ「XL(ロゴ)」について、被請求人が、ブランドロゴ「XL(ロゴ)」を付した店舗においてワインやシャンパンの提供という役務を行った場合、ザヴィエ氏の知名度の高さ、ザヴィエ氏の「XLV」ブランド及びブランドロゴ「XL(ロゴ)」の知名度の高さからも、これに接する需要者は、その役務は請求人の兼業に係る役務であると誤認し、役務の出所について混同を生じ得ることは明らかである。
さらに、現実にも、被請求人があたかもザヴィエ氏の「XLV」ブランドと関連性の高い店舗であるように見せていることから、実際に、被請求人の営業する飲食店「XLV」に関する問い合わせが取引者、需要者から請求人に対して届いており、現実に出所混同が生じている。
また、被請求人は「XLV」ブランドに係る事業に携わるグループの一員でもなく、また、同号にいう「他人」とは本人以外、すなわち、ザヴィエ氏以外をいうものであり、当然に被請求人とザヴィエ氏は「他人」であることに疑いの余地はなく、「XLV」ブランドに係る事業に携わるグループの一員でもない被請求人による「XL(ロゴ)」を付した店舗におけるワインやシャンパンの提供は、需要者にとってザヴィエ氏の兼業に係る役務であると誤認し、役務の出所について混同を生じ得ることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第7号の該当性について
被請求人は、商標使用許諾契約(甲18)を終了させる旨の内容証明郵便(甲19)により「XL(ロゴ)」が使用できなくなることを知るとともに、請求人が第43類の飲食物の提供について「XL(ロゴ)」の商標権を有していないことを知った上で、本件商標を受けている。
すなわち、被請求人による本件商標は、ザヴィエ氏の周知・著名なブランドロゴが請求人によりぶどう酒や洋酒等に対して商標登録されていることを知りながら、請求人との商標使用許諾契約が終了した後に、これが日本において飲食物の提供に対して商標登録がなされていないことを奇貨として、ブランドロゴ「XL(ロゴ)」を請求人の承諾を得ずに商標登録出願し、登録を受けたものである。
このような出願の経緯に不正がある被請求人の行為に基づいて登録された本件商標は、社会公益の利益に反し又は社会の一般的道徳観念に反するもの、さらには国際商道徳に反するものであって、著しく社会的妥当性を欠き、公正な取引秩序を乱すおそれがあることは明らかである。
さらに、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」という商標法の目的(商標法第1条)にも反するというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(7)請求人適格等について
ア 請求人適格
請求人である株式会社XLV JAPANは、ザヴィエ氏との間の2018年(平成30年)12月10日付の契約書(甲25)及び同日付の商標等使用許諾証書(甲26)にも記載のとおり、ザヴィエ氏との間で日本の総代理店契約を結んでいるとともに、「XL(ロゴ)」商標に対して製品販売や会社名への使用、飲食店名への使用について、使用許諾を受けている者である。甲第1号証の書簡とともに、これらの契約は現在も有効であり、請求人は、本件商標に対して直接の影響を受ける者であり、何らの疑いもなく完全なる利害関係人である。
したがって、請求人は、請求人適格を有している。
イ グループの一員
請求人と共に「XLV」ブランドに係る事業に携わるグループの一員である現在の「XL (ロゴ)」関連の商標権者であるエックスエルブイカンパニーリミテッド(以下「XLV COMPANY社」という。)からの、2021年(令和3年)4月7日付の書簡(甲27の1、甲27の2)にも記載のとおり、XLV COMPANY社は、被請求人に対してレストランの運営や管理に使用する「XLV」や「XL(ロゴ)」を第43類で商標登録することを許可したことはなく、被請求人とは無関係であると述べていることからも、被請求人が「XLV」ブランドに係る事業に携わるグループの一員ではないことは明らかである。
したがって、被請求人は、「XLV」ブランドに係る事業に携わるグループの一員ではない。
(8)ザヴィエ氏の了承
被請求人は、ザヴィエ氏の了承を得て飲食店を出店していると主張するが、被請求人に対して出店後の2019年(令和元年)9月10日付で通知した内容証明郵便(甲28)にも記載のとおり、被請求人による無許可でのレストラン経営に対して、ザヴィエ氏からザヴィエ・ルイ・ヴィトンの名前や名前を想起させる名称の使用を直ちに中止するよう通知されており、被請求人が商標登録出願を行った令和元年12月12日時点では、ザヴィエ氏が被請求人の飲食店を了承していなかったことは明らかである。
したがって、被請求人の飲食店は、ザヴィエ氏の了承を得ていない。

第3 被請求人の主張
1 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証(枝番号を含む。)を提出した。
2 理由
(1)請求人について
ア 請求人の主張に対する反論の要旨
請求人は、請求人が世界的に著名なルイ・ヴィトン一族の第5代目であるフランスのザヴィエ氏が創ったワインのプライベートブランドである「XLV」を日本に独占輸入している正規輸入代理店である旨主張する。また、請求人がザヴィエ氏から日本において「XLV」ブランドの管理を一任されている者であり、本件審判についても、ザヴィエ氏の要望により同氏に代わって請求人が提起している旨主張して、ザヴィエ氏からの書簡なる証明書を提出している(甲1)。
加えて、請求人は、日本における「XLV」ブランドを保護するために、ぶどう酒やビール等、アルコール飲料だけでなく、肉製品や菓子、パン等の食品について、複数の登録商標「XLV\エクスエルヴィ」を保有している旨主張し、J-PlatPat検索結果のリストを提出している(甲4)。
しかしながら、請求人は、現時点において、「XLV」に係るワインの正規輸入代理店の地位にない。
また、ザヴィエ氏からの書簡(甲1)も、それが2020年7月15日時点の事実に基づいた内容であって、現在の請求人の地位を反映しておらず、現時点においては妥当しない上、そもそもその記載方法、内容からも、同書簡がザヴィエ氏の意思を反映したものであるかは大いに疑問である。
加えて、請求人の掲げる登録商標も、現時点における権利者は、XLV COMPANY LIMITED(エックスエルブイカンパニーリミテッド)(以下「XLV COMPANY社」という。)なる会社であって、請求人ではない。
しかるに、「XLV」に係るワイン等を単に販売しているにすぎない請求人においては、「ワイン」の商品とは同一又は類似の関係にない「飲食物の提供」等を指定役務とする本件商標に対して、本件審判を請求する地位にあらず、利害関係人に該当しないものであるから、請求人適格を有しない。
イ 請求人が「XLV」にかかるワインの正規輸入代理店でないことについて
ザヴィエ氏は、「XLV」にかかるワインについて、世界的な規模で輸入代理店契約を締結しており、その契約の流れは、(i)フランスに所在し、ザヴィエ氏が代表を務める会社であるLa SCEA des QUATRE PLATANES(以下「QUATRE PLATANES社」という。)、(ii)香港に所在する会社であるXAVIER-LOUIS VUITTON COMPANY LIMITED(以下「XAVIER-LOUIS VUITTON社」という。)、(iii)同じく香港に所在する会社であるCUVEE VLV FRENCH WINE LIMITED(以下「CUVEE社」という。)となっている。
乙第1号証は、ザヴィエ氏が代表を務めるQUATRE PLATANES社とザヴィエ氏及びWong Sau Ying氏(以下「Wong氏」という。)が共同で所有し、Wong氏が代表を務めるXAVIER-LOUIS VUITTON社との間において、2010年1月31日に締結された販売店契約書(以下「第1契約書」という。)の抄録である。
第1契約書によると、XAVIER-LOUIS VUITTON社が、QUATRE PLATANES社等において製造された各種ワイン及びシャンパンのアジア地域における唯一独占的な販売店とされ、さらに第三者を再販売店とすることができるとされている。また、QUATRE PLATANES社に係る商標及びその他の商標について、アジア各国・地域においては、Wong氏個人の名義において商標登録を受けることを認めている。
なお、両社の間で、2011年5月20日付けで付属契約書が締結され、契約期間の10年が自動更新される等の改訂がなされおり(乙1の2)、第1契約書は現在も有効に存続している。
また、当該契約書に基づき、Wong氏は、マレーシアやシンガポール等のアジア各国において正当に商標登録を受けている(乙2)。
さらに、第1契約書及び当該付属契約書を前提として締結されたのが、前記XAVIER-LOUIS VUITTON社と、同じく香港に所在しWong氏が代表を務めるCUVEE社との間において、2011年3月付けで締結された、乙第3号証に係る販売店契約書(以下「第2契約書」という。)である。
第2契約書においては、CUVEE社が、ザヴィエ氏において供給された「XLV」ブランドの各種ワインについて、アジア地域における唯一独占的な販売店とされ、さらに第三者を再販売店とすることができるとされている。
また、その契約期間は8年であるところ、現在も自動更新されていると考えられる。
以上の輸入代理店契約の流れにより、QUATRE PLATANES社、XAVIER-LOUIS VUITTON社、CUVEE社の順に、「XLV」に関わるワインの正規の輸入代理を行う権限が付与されていることが分かる。
第2契約書を前提としたのが、CUVEE社と本件審判の請求人である株式会社XLVJAPANとの間において、2015年7月30日付けで締結された、乙第4号証に係る「販売店契約書」(以下「第3契約書」という。)である。
第3契約書においては、その前文で、上記第1契約書及び第2契約書締結の事実が説明されるとともに、日本における商標権がXLV COMPANY社によって保有されていることが確認されている。
また、請求人が、QUATRE PLATANES社において製造・販売された「XLV」商標に係るシャンパン、葡萄酒、ワイン(飲料)等について、日本における独占排他的な販売店とされ、その契約期間は5年とされている。
なお、契約期間は、請求人がCUVEE社に対して、本契約を更新する意思があることを書面によって少なくとも本契約満了前の1年前までに通知した場合に、さらに5年間更新することができるとされている。
請求人において、「XLV」を日本に独占輸入している正規輸入代理店である旨の主張は、これらの契約関係のうち第3契約書に基づいた主張であると思われるが、契約が締結されたのが2015年7月30日であって、既に契約期間である5年が経過しており、同期間満了前の1年前に請求人が書面により更新の意思を通知した事実もない。
したがって、現時点において、請求人が正規輸入代理店であるとの主張は事実に反するもので、失当である。
ウ ザヴィエ氏の書簡(甲1)の問題性
甲第1号証に係る証明書においては、確かに、「日本の商標の管理をしているのは株式会社XLV JAPAN」である旨の記載がある。しかし、CUVEE社は、2017年10月26日、請求人に対して負っていた債務の弁済を担保するために、請求人との間で、日本におけるワインに関する各商標権及びCUVEE社及びXLV COMPANY社の有するXLVに関連するライセンスを無償譲渡する旨「覚書」(以下「覚書」という。)を締結し(乙5)、各商標権に関して、請求人に対し移転登録がなされた。
しかし、2020年8月27日、覚書の連帯保証人であるXLV COMPANY社とCUVEE社との間において、連帯保証債務の弁済を行う代わりに、日本における各商標権及び全てのライセンスをXLV COMPANY社に譲渡する旨の「合意書」(以下「合意書」という。)が締結された(乙5の2)。
そして、その合意書に基づき、XLV COMPANY社からCUVEE社に対し、連帯保証債務の弁済がなされ、日本の商標権や関連するライセンスはXLV COMPANY社に譲渡されている。
したがって、証明書の内容は現在の事実と相違しており、現時点においては、請求人が日本の商標権を管理する地位にはなく、証明書の内容は妥当しない。
「XLV」のワイン等に関するアジア地域の事業について、当事者として全ての契約に関わっているのは、Wong氏であり、ザヴィエ氏と共同で所有するXAVIER-LOUIS VUITTON社においてアジアの商標は管理する旨第1契約書でも定められている。現時点における請求人の立場においては、ザヴィエ氏に代わって本件審判を請求するような地位にない。
また、証明書自体に着目した場合においても、本証明書は、その文面が英語と日本語で印字されており、その文面が請求人によって作成され、ザヴィエ氏の意思で作成されたものでないことは明らかである。さらに、ザヴィエ氏の母語であるフランス語での意味内容の記載がない上、直筆で記載されているのは、証明書の右下の「X VUITTON」の部分のみであることから、ザヴィエ氏が文面の内容を理解した上で記載したものであるかは不明である。
よって、本証明書は、ザヴィエ氏が請求人に日本の商標権の管理権を与えたとの事実を立証するための証拠としては不十分である。
加えて、前述のとおり、日本における「XLV」に関連する各商標権については、既にXLV COMPANY社が権利者となっており(乙6)、請求人において「XLV」商標に関する法律的な地位は何もない。
以上により、現在において、請求人が「XLV」に関するワイン等を日本国内で販売しているとしても、「ワイン」等の商品とは同一又は類似の関係にない「飲食物の提供」等を指定役務とする本件商標に対してまで、無効を請求するような地位にはなく、本件審判を請求することについて、何ら利害関係を有していないことから、請求人においては、請求人適格が認められない。
したがって、本件審判の請求は却下されるべきである。
(2)被請求人について
ア 請求人の主張に対する反論要旨
請求人は、請求人と被請求人が、平成30年(2018年)1月1日付けで、被請求人の運営する飲食店「Restaurant & Wine Bar XLV」において飲食物の提供を行うに際し、請求人の所有する複数の登録商標や名称を店舗の看板等に使用するための商標使用許諾を締結しており、その後、被請求人の契約違反によって、同商標使用許諾契約を終了させるに至り、被請求人がその旨の通知書を受領した令和元年(2019年)9月11日のタイミングで本件商標を出願した旨主張し、甲第16号証(審決注:甲第18号証の誤記と思われる。)として、商標権使用許諾契約書を提出し、甲第17号証(審決注:甲第19号証の誤記と思われる。)として、通知書を提出する。
また、請求人は、同商標使用許諾契約が終了しているにもかかわらず、令和2年(2020年)7月27日現在も、京都府京都市内で「Restaurant & Wine Bar XLV」(Dining Bar XLV)との飲食店を営業しており、「XLV」に係るブランドや本件商標に係る「XL(ロゴ)」をザヴィエ氏の名前とともに使用し、あたかもザヴィエ氏と関連性が高く見えるように店舗名や看板等に「XLV」のブランドや「XL(ロゴ)」を利用して、ザヴィエ氏の「XLV」ブランドに化体した信用や名声、顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する形でザヴィエ氏の「XLV」ブランドのワインやシャンパンの提供や店頭販売も行っている旨主張する。
しかしながら、被請求人の飲食店は、もともとザヴィエ氏の要望を受け、また、アジア地域において独占的な販売権を有する会社の代表者である上記のWong氏との協議等を経て、営業を開始したものであって、請求人との商標使用許諾契約に依拠したものではない。
また、ザヴィエ氏本人も、被請求人が「XLV」ブランドに係る飲食店を出店したことは、もちろん承知をしており、「XLV」ブランドに化体した信用や名声、顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)するような状況はあり得ない。
イ 被請求人による「XLV」商標の使用が、請求人との商標使用許諾請求契約に依拠した者ではないこと
被請求人は、「XLV」ブランドに係るワイン等を提供する飲食店を営むために平成28年(2016年)1月6日に設立されたものであるところ(乙7)、同年6月1日に飲食店のオープニングレセプションを催しており(乙8)、同年6月2日にグランドオープンしている(乙8の2)。
これは、甲第16号証に係る請求人と被請求人の間で商標使用許諾契約が締結された平成30年(2018年)1月1日より以前のことである。
すなわち、被請求人に係る飲食店は、もともと、ザヴィエ氏の「XLV」や「XL(ロゴ)」のワイン等を提供する飲食店を出店したい、との希望を踏まえ、アジア地域において「XLV」のワインの独占的な販売権を有する会社の代表者である上記のWong氏との協議等を経て、ザヴィエ氏及びWong氏の了承のもとで営業を開始したものであり、請求人との商標使用許諾契約は無関係である。
また、請求人は、同商標使用許諾契約の終了を知ったタイミングで被請求人が本件商標の出願を行った旨述べているが、そもそも、同商標使用許諾契約の対象は、第33類や第32類等の商品に関する分類についての登録商標であって、飲食店に関する第43類ではない。
同商標使用許諾契約の締結によっても、例えば、第三者が「XLV」商標を第43類に出願登録する場合も考えられ、請求人以外の第三者との関係においては、被請求人が「XLV」商標を飲食店について使用することについて、何ら保証される状況にはなかったのである。
したがって、第33類や第32類等の商品を対象とする同商標使用許諾契約が終了したとしても、そのことは被請求人による本件商標の使用継続に関し、何ら影響を与えるものではない。
なお、乙第9号証に係る請求人の閉鎖事項全部証明書と上記乙第7号証に係る被請求人の履歴事項全部証明書を照合しても分かるとおり、請求人の設立時の代表者であるY氏が被請求人の監査役であったり、両社の役員が共通の者であったりと、請求人と被請求人は、もともと密接な関係を有していたものである。
また、上記第3契約書における請求人の署名者もY氏であり、請求人と被請求人は、ともに「XLV」ブランドに係る事業に携わるグループとして位置づけられるもので、特に、一時的に請求人に保有されていた日本における各商標権がWong氏に関連するXLV COMPANY社に再度移転された現状においては、「XLV」ブランドに関して主従の関係にない。
したがって、本来、被請求人と同一の立場である請求人が、被請求人に対し、本件商標の無効を請求できる適格性はない。
ウ 被請求人による「XL(ロゴ)」商標の使用が、ザヴィエ氏の意に反するものではないこと
被請求人が飲食店を出店することについてザヴィエ氏が了承をしていることは、上記乙第8号証の1及び乙第8号証の2に係る飲食店のオープン時に配布したチラシやオープニングレセプションの招待状において、「XLV」に係るブランドとともにザヴィエ氏の肖像画が大きく表示されていることからも明らかである。被請求人において、無断で「XLV」ブランドやザヴィエ氏の肖像画を使用することはあり得ない。
また、飲食店の平成28年(2016年)10月28日に催されたザヴィエ氏の来日記念パーティーは、飲食店がオープンしておよそ4ヶ月後に被請求人が主催者となって、かつ飲食店の所在地と同じ京都市内で催されており(乙10)、ザヴィエ氏の来日は正に飲食店の開店に合わせたものである。
加えて、現在においては、アジア地域における「XLV」に係る商標に関してはザヴィエ氏からWong氏に対し管理委託しており、被請求人による「XLV」にかかる商標の使用は同氏によっても了承を得ている。
しかるに、被請求人が飲食店を出店し、「XLV」ブランドを使用することについては、ザヴィエ氏の了承を得ているものであり、「XLV」ブランドに化体した信用や名声、顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)するような事態は考えられない。
請求人及び被請求人に関する事実は以上のとおりである。
請求人においては、本件審判の請求人適格を有しないものであるが、仮に、請求人適格を有するとしても、以上の事実関係を前提にすれば、本件商標は何ら無効理由を有するものではない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
請求人は、被請求人による本件商標が、ザヴィエ氏の周知・著名なブランド名「XLV」や「XL(ロゴ)」が請求人によりぶどう酒や洋酒等に対して商標登録されていることを知りながら、請求人との商標使用許諾契約が終了した後に、これが日本において飲食物の提供に対して商標登録がなされていないことを奇貨として、「XL(ロゴ)」を請求人の承諾を得ずに商標登録出願し、登録を受けたものである旨主張する。
また、このような事情の下でなされた本件商標の出願行為は、後の代理店契約締結を強制する目的や、交渉における自己の立場を有利にする目的、さらには先取り的に出願し高額で買い取らせる目的等で出願したものといわざるを得ず、取引上の信義則に反するものであることが明らかであり、よって、商標法第4条第1項第19号の「不正の目的」に該当する旨主張する。
しかしながら、上述のように、被請求人が「XLV」ブランドを使用して飲食店を営むことについては、ザヴィエ氏も承知していることであり、また、請求人と被請求人とは、「XLV」ブランドに係る事業に携わるグループの一員として位置づけられるものである。
したがって、被請求人が「XLV」ブランドに化体した信用や名声、顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)するような事態は考えられず、飲食物の提供に「XL(ロゴ)」の商標登録がされていないことについて、利用すれば思わぬ利益を得られそうな機会と考え、すなわち奇貨として出願登録することはあり得ない。
実際にも、被請求人において、本件商標の登録後に、請求人やザヴィエ氏等に対して、代理店契約締結を強制する行為や、交渉における自己の立場を有利にする行為、さらには先取り的に出願し高額で買い取らせるような行為を行ったことはない。
何より、被請求人も「XLV」ブランドに係る事業に携わる、いわばグループの一員であり、本件商標がその出所として表示するのもザヴィエ氏に係る「XLV」のブランドであるから、同じ出所を表示するものとして、同号にいう「他人」には該当しない。
そもそも、請求人との商標使用許諾契約をもってしては、被請求人が「XLV」等ブランドを飲食店について使用することについて、保証の根拠となる商標権がない状況だったのであり、いわば保全的に、第43類について本件商標の登録を受けたにすぎない。
また、日本における「XLV」等の商標権やライセンスは、Wong氏の債務弁済を担保するために、一時的に請求人に譲渡されていたにすぎず、請求人においては、係る地位に乗じて、被請求人を一方的に排除することを意図して、契約を解除したものである。
甲第1号証に係る「証明書」についても、その文面が日本語を英語で記載されており、請求人において作成されたものであることは一見して明らかで、ザヴィエ氏の真意を反映させたものかどうか疑わしい。
以上より、被請求人が本件商標を登録出願したことについては、何ら「不正の目的」は認められず、したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
上述のように、被請求人も「XLV」ブランドに係る事業に携わる、いわばグループの一員であり、同号にいう「他人」には該当しないことから、役務の出所について誤認混同が問題となる事態は考えられない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第7号について
上述のとおり、本件商標の登録出願については、被請求人による出願の経緯に不正はなく、ひいては、国際商道徳に反することも、あるいは社会的妥当性を欠くこともなく、公正な取引秩序を乱すおそれも何ら認めることができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

第4 当審の判断
1 利害関係について
本件審理に関し当事者間に利害関係についての争いがあるので、この点について判断する。
商標法第46条に規定する商標登録の無効審判を請求できる者は、当該商標登録を無効とすることに関して利害関係を有する者であるところ、ある商標の登録の存在することによって、直接不利益を被る関係にある者は、それだけで同条にいう利害関係人としてのその商標の登録の無効審判を請求する利害関係を有すると解されている(東京高裁昭和35年(行ナ)第106号判決 昭和36年4月27日判決言渡)。
請求人は、本件商標の存在により、「XLV」ブランドについて出所の混同のおそれが存在し、実際に、被請求人の営業する飲食店「XLV」に関する問い合わせが取引者、需要者から請求人に対して届いているなどと主張しているのであるから、本件商標の存在によって、直接不利益を被る者といえ、また、職権における調査によれば、請求人は、「XL(ロゴ)」からなる商標を第43類に登録出願(商願2020-14852)したところ、該登録出願は、拒絶理由(商標法第4条第1項第11号)の引用商標として本件商標が引用され、審査に係属している事実が認められる。そして、請求人の上記登録出願は、本件商標の存在をもって、拒絶され得る状態にあるから、このことからも本件商標の存在によって、直接不利益を被る関係にある者といえるものであり、そうすると、請求人は本件無効審判請求をするについて利害関係を有するものというのが相当である。
したがって、本件商標の登録の無効を求めることには理由があり、その無効審判を請求する利害関係を有する者というべきである。
2 使用商標の周知性について
請求人は、上記第2の2(2)のとおり、ルイ・ヴィトン一族のザヴィエ氏が生産しているワインやシャンパン(以下「ワイン等」という。)の「XLV」ブランド及びブランドロゴ「XL(ロゴ)」は周知・著名なものであると主張するが、「XLV」ブランドの使用態様について具体的に記述はなく商標を特定していない。そこで、請求人の主張及び証拠から、請求人が周知・著名であるとする「XLV」ブランドとは、「XLV」の欧文字からなる商標(以下「使用商標」という。)、「XL(ロゴ)」とは、甲第4号証及び甲第5号証の商品に付された「X」と「L」の欧文字を重ね合わせたロゴからなる商標(以下「使用ロゴ商標」という。)として、以下取り扱うこととする。
そして、請求人の提出した証拠及び当事者の主張並びに職権調査によれば、使用商標及び使用ロゴ商標の周知性については、次のとおりである。
(1)証拠(甲2、甲7?甲10)によれば、「XLV」の文字は、ルイ・ヴィトン一族の第5代目であるザヴィエ氏運営のワイナリー、また、当該ワイナリーで生産されるワインのレーベルの一つとして、ワインカタログ(甲2)、情報誌「JCB THE PREMIUM」等において紹介されている。
しかしながら、甲第2号証については、それが請求人及びザヴィエ氏(以下「請求人ら」という。)」によるカタログであることを確認できないばかりでなく、いつ誰によって作成され、どのように頒布されたのか不明であり、甲第7号証ないし甲第10号証については、平成29年から同31年にかけて、株式会社ジェーシービー発行の「JCB THE PREMIUM」の冊子中「ザ・クラス名食倶楽部」の記事に、ザヴィエ・ルイ・ヴィトンの「XLV」ブランドのワイン等が提供されることが掲載されたことは確認できるものの、当該冊子の作成部数、頒布先は不明であり、当該掲載記事と請求人らとの関係も明らかでない。
(2)請求人であるXLV JAPAN社は、日本において平成28年2月頃から「XLV」ブランドのワイン等の輸入を開始し、例えば同29年度には年間650万円以上、同30年度には年間1029万円以上、そして同31年度には年間974万円以上の販売促進費及び広告宣伝費を投じ、継続的に日本における「XLV」ブンドの知名度やブランド力の向上を図ってきていると主張するが、その事実を裏付ける客観的な証拠の提出はない。
(3)請求人は、日本においてブランド名「XLV」を保護するために、複数の登録商標「XLV\エクスエルヴィ」及び「XL(ロゴ)」を保有していると主張するとともに、2020年7月22日印刷の特許情報プラットフォーム商標検索画面のコピーを提出している(甲6)。
しかしながら、商標登録原簿によれば、甲第6号証に記載された登録商標は、平成30年3月1日の特定承継による移転登録により、本件商標の登録出願時及び登録査定時においては、請求人が当該登録商標の権利者であったことは認められるが、その後、令和2年9月8日の特定承継による移転登録により、現在、請求人は上記商標権を有していない(職権調査)。
(4)請求人は、株式会社三越伊勢丹が平成30年11月に主催した日本最大級のシャンパンの試飲販売会である「ノエル・ア・ラ・モード」にも「XLV」ブランドのワイン等を出展したと主張し、株式会社三越伊勢丹からの書簡(甲11)及びブース写真(甲12)を提出している。
しかしながら、甲第11号証の書簡は、2018年8月に株式会社三越伊勢丹から発信された書簡であることが見てとれるものの、宛先は「お取組先様」と記されているのみで、請求人が当該宛先に含まれていたことは確認できない。また、甲第12号証の試飲販売会会場写真は、並べられたワインの容器外観に「XLV」の文字及び「使用ロゴ商標」を視認できるものの、当該写真が甲第13号証に記載の催事「ノエル・ア・ラ・モード」において撮影されたものであることが確認できず、それらワインの出展者も不明である。さらに、試飲販売会の実施状況(出展者、来場者数等)を示す証拠の提出もない。
(5)「キャバペディア」と題するウェブサイト上の、「お酒の知識」の項に、ザヴィエ・ルイ・ヴィトンの「XLV」ブランドのワインやシャンパン、ザヴィエ・ルイ・ヴィトン及び「XLV」ブランドについて掲載がある(甲13)が、それらウェブサイトと請求人の関係は不明であり、また当該ウェブサイトへのアクセス状況等は明らかでない。
(6)instagramにおいて平成29年11月8日付で「XLV」のラベルのワインの写真の掲載がある(甲14)が、それらウェブサイトと請求人の関係は不明であり、また当該閲覧状況等は明らかでない。
(7)取引先名薄(甲16)には、11社の企業名が住所と電話番号とともに記載されているが、当該名簿の作成者、作成時期が明らかでなく、また、記載されている企業と請求人との関係は不明である。また、請求人とこれら記載の者間で、「XLV」ブランドのワイン等の取引があることを示す客観的証拠はない。
(8)小括
以上のことからすると、ザヴィエ氏運営のワイナリー、また、当該ワイナリーで生産されるワイン等のレーベルの一つとして、使用商標又は使用ロゴ商標が使用され、それらのワイン等が我が国において販売されていることはうかがい知ることができる。
しかしながら、使用商標又は使用ロゴ商標が使用された当該製品に係る販売地域(日本又は外国)、販売数量、売上高、販売シェア等の量的規模を客観的な使用事実に基づいて把握することができず、また、ザヴィエ氏の「XLV」ブランドのワインやシャンパンに係る我が国におけるカタログ、冊子記事、ウェブサイトやinstagram等での紹介については、請求人との関係が明らかでなく、カタログや冊子の作成部数や頒布数及び頒布先、ウェブサイトやinstagramのアクセス数等を客観的に示す証拠がない。
さらに、請求人は平成29年度以降、我が国において広告宣伝費を投じ、「XLV」ブンドの知名度やブランド力の向上を図ってきていると主張しているが、その事実を裏付ける客観的な証拠の提出がなく、請求人による広告宣伝の方法、期間、地域及び規模等は不明であるし、シャンパンの試飲販売会については、2018年11月21日ないし同月26日に「ノエル・ア・ラ・モード」と称する催事があったことは推測できるとしても、当該催事が日本最大級のシャンパンの試飲販売会であることや、当該催事において、請求人が「XLV」ブランドのワイン等を出品し、それらがどの程度人目に触れたかを裏付ける客観的な証拠の提出がなく、試飲販売会の内容は不明である。
また、その他に、使用商標又は使用ロゴ商標に係るワイン又は飲食物の提供等が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国における需要者の間に広く知られていたと認めるに足りる事実は見いだせない。
そうすると、「XLV」の文字からなる使用商標又は「X」と「L」の欧文字を重ね合わせたロゴからなる使用ロゴ商標が、ザヴィエ氏運営のワイナリー、また、当該ワイナリーで生産されるワインのレーベルの一つであり、それが付されたワイン等が、平成28年以降我が国で紹介され、販売されていることは推認できるとしても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用商標又は使用ロゴ商標は、請求人らの業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
「XLV」の文字からなる使用商標又は「X」と「L」の欧文字を重ね合わせたロゴからなる使用ロゴ商標は、上記2のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の取扱いに係る商品若しくは役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものである。
また、本件商標は、別掲のとおり、「X」と「L」の欧文字を重ね合わせたロゴからなるものであり、使用ロゴ商標も同様の構成からなるものであるから、両商標は、同一又は類似の商標といえる。他方、本件商標と「XLV」の文字からなる使用商標とは、その構成態様に照らし両者は別異の商標であって、非類似の商標であること明らかである。
そして、本件商標の指定役務は、アルコール飲料を主とする飲食物の提供を含む、いずれも飲食料品を提供するサービスであるから、アルコール飲料の一種である請求人商品とは、飲食料品店を通じて一般消費者に向けて流通する商品である点や、飲食を求める一般消費者に向けたサービスである点において、販売部門や流通経路に関連性があり、需要者の範囲も一部重複するものといえる。
以上によれば、本件商標と使用ロゴ商標の類似性の程度が高く、本件商標の指定役務と請求人商品とが関連性を有し、需要者を共通にする場合があるとしても、使用商標及び使用ロゴ商標は、何より、需要者の間に広く認識されているものと認めることができないものであることからすれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(請求人ら)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
また、その他に本件商標が他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標であるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第19号該当性について
使用ロゴ商標は、上記2のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の取扱いに係る商品若しくは役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものである。
してみれば、本件商標は、上記3のとおり、使用ロゴ商標と同一又は類似の商標であるとしても、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標ということはできない。
また、請求人と被請求人とは、商標権使用許諾関係を締結していた関係にあり、もとより両者間に取引上の競争関係はないところ、被請求人は、請求人に対し、本件商標権を利用して請求人商品の供給を強要した事実はないほか、被請求人の方から本件商標の買取りを迫った事実もなく、請求人商標が我が国で登録されていないことに乗じて、先回りして同商標と同一又は類似する本件商標につき出願、登録を受けた上で、請求人との間で、請求人に損害を与え、被請求人において不正の利益を得る意図があったものとは認められない。
その他、請求人が提出した証拠からは、本件商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる具体的事実を見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
請求人は、被請求人による本件商標は、ザヴィエ氏の周知・著名なブランド名「XLV」が請求人によりぶどう酒や洋酒等に対して商標登録されていることを知りながら、請求人との商標使用許諾契約が終了した後に、これが日本において飲食物の提供に対して商標登録がなされていないことを奇貨として、ブランド名「XLV」を請求人の承諾を得ずに商標登録出願したものであるとして、このような出願の経緯に不正がある被請求人の行為に基づいて登録された本件商標は、社会公益の利益に反し又は社会の一般的道徳観念に反し、国際商道徳に反するものであって、著しく社会的妥当性を欠き、公正な取引秩序を乱すおそれがあること、商標法の目的(商標法第1条)にも反するものである旨主張している。
しかしながら、使用ロゴ商標は、上記2のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されている商標ではないから、請求人の主張は、その前提において採用することができない。
また、被請求人が、請求人との商標使用許諾契約が終了した後に、本件商標を請求人の承諾を得ずに商標登録出願したとしても、そのことが直ちに不正の目的に当たるということはできない。
さらに、請求人は、被請求人との商標使用許諾契約が終了した後に、その商標を自ら本件指定役務について登録出願する機会は十分にあったというべきであって、自ら登録出願しなかった責めを被請求人に求めるべき具体的な事情を見いだすこともできない。
そうすると、本件商標について、商標法の先願登録主義を上回るような、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあるということはできないし、そのような場合には、あくまでも、当事者間の私的な問題として解決すべきであるから、公の秩序又は善良の風俗を害するというような事情があるということはできない。
その他、本件商標は、その構成文字からして、非道徳的、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるようなものではなく、他の法律によってその使用が制限又は禁止されているものでもない。
してみれば、たとえ、被請求人が、ぶどう酒や洋酒等に対して請求人により「XLV」の文字を含む商標及び「X」と「L」の欧文字を重ね合わせたロゴ商標が商標登録されていることを知っていたとしても、本件商標の登録出願の経緯に、社会的相当性を欠き、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような事情があったとまでは認めることはできないから、本件商標が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」がある商標に該当するということはできない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る証拠もない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 請求人の主張について
請求人は、平成30年1月1日付の商標使用許諾契約により、被請求人は、請求人所有する複数の登録商標(甲6)や名称を被請求人の運営する飲食店舗の看板等に使用するために使用許諾を受けていたところ、被請求人の契約違反により、同商標使用許諾契約を終了させる旨の通知書を請求人が令和元年9月10日付で内容証明郵便により被請求人に発送後、被請求人は、当該内容証明郵便を令和元年9月11日付で受領し、契約終了となることを知った後のタイミングである同年12月12日付で、本件商標を登録出願し、令和2年2月27日付で商標登録を受けている旨主張している。
しかしながら、上記5のとおり、被請求人による本件商標の商標登録出願が直ちに不正の目的に当たるということはできず、その商標を請求人自ら本件商標の指定役務について登録出願する機会は十分にあったことからすれば、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあるということもできないし、そのような場合には、あくまでも、当事者間の私的な問題として解決すべきであるから、公の秩序又は善良の風俗を害するというような事情があるということはできない。
したがって、上記請求人の主張は採用できない。
7 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同項の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲 別掲 本件商標





審理終結日 2021-08-03 
結審通知日 2021-08-06 
審決日 2021-09-01 
出願番号 商願2019-155705(T2019-155705) 
審決分類 T 1 11・ 222- Y (W43)
T 1 11・ 22- Y (W43)
T 1 11・ 271- Y (W43)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 愛鈴木 斎 
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 小出 浩子
小松 里美
登録日 2020-02-27 
登録番号 商標登録第6230440号(T6230440) 
商標の称呼 エックスエル、エルエックス 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 
代理人 下岸 弘典 
代理人 生井 和平 
代理人 森 真二 
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