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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W11
管理番号 1379925 
審判番号 取消2020-300417 
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-06-15 
確定日 2021-10-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第5590380号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5590380号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5590380号商標(以下「本件商標」という。)は、「パワーシェア」の文字を標準文字として表してなり、平成25年2月25日に登録出願、第11類「暖冷房装置,冷凍機械器具,電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類(美容用又は衛生用のものを除く。),洗浄機能付き便座,浴槽類,ガスストーブ・石油ストーブその他のストーブ類(電気式のものを除く。)」を指定商品として、同年6月14日に設定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和2年7月9日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の期間を以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び令和2年9月4日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年11月4日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
1 請求の要旨
本件商標は、その指定商品(以下「本件審判請求に係る指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 弁駁書による主張の要旨
(1)使用標章について
三菱電機株式会社(以下「三菱電機社」又は「商標権者」という。)自身が商品のリリース等に際し、「パワーシェア運転」との表記をしており、「『パワーシェア』運転」と表記してないことからすれば、「パワーシェア」の文字のみが独立しているのではなく、「パワーシェア運転」全体を一語として認識していることは明らかである(甲1、甲2)。
また、市場においても同様の表記方法が採られていること(甲3)、Google検索においても本件審判請求に係る指定商品中「暖冷房装置」(以下「本件商品」という。)について「パワーシェア」の文字のみを使用している例は見当たらないこと(甲4、甲5)からみても、取引者・需要者が「パワーシェア」の文字のみを独立して認識しているとは推測できるものではない。
さらに、エアコンの動作には、冷房・暖房の別、風量、風向き、温度、湿度、タイマー、空気清浄及び自動清掃など様々な態様があり、「運転」だけではエアコンの動作を直接的・具体的に表示するとはいえず、「運転」の語が本件商品との関係で識別力を有しないとはいえない。
加えて、エアコンにおいて、「除湿運転」、「冷房運転」及び「送風運転」などを表す「運転」の文字と、「出力」や「電力」を意味する「パワー(POWER)」の文字とは、ともにエアコンの動作に関係する点で観念的な関連性が認められる。
そうすると、「パワーシェア運転」の文字を見た需要者は、「電力を分けて運転する」との意味合いを容易に認識でき、かつ、観念的な関連性が強い文字を除くことは考えにくく、「パワーシェア」の文字のみを独立して認識し得る事情は認められない。
したがって、「パワーシェア」の文字のみを独立して認識すべき特段の事情は見当たらず、識別力のある「運転」の文字を除いた「パワーシェア」の文字のみの称呼も生じ得ないから、使用標章は「パワーシェア運転」(以下「使用標章」という場合がある。)である。
(2)社会通念上の同一性について
社会通念上の同一性が認められる例としては、商標法第38条第5項かっこ書きに列挙されたものの他、登録商標に識別力のない文字を付加した態様が認められる場合があることは確かである。
しかしながら、必ずしも「運転」の語に識別力を有しないといえるものではない。
なお、三菱電機社自身も、「スマートハイブリッド運転」(登録第5566845号)、「先読み運転」(登録第6014875号)、「先回り運転」(登録第6130829号)、「人感ハイブリッド運転」(登録第6190465号)、「ねむり運転」(登録第6191822号)のそれぞれについて、「運転」の語を含む各商標権を取得しており、仮に「運転」の語に識別力を有しないとするならば、これらの商標についても「運転」の語を含まない態様で商標権を取得するのが通常と考えられ、「運転」の語は識別力を有しないとする被請求人の主張は矛盾する。
また、本件商標は、「出力」や「電力」を意味する「パワー(POWER)」と、「分配する」を意味する「シェア(SHARE)」を組み合わせたものであって、「(電)力を分ける」等の観念が生じ、運転・作動・稼働及び動作等の意味は生じない。
一方、使用標章は「(電)力を分けながら(機械類が)作動すること」等の観念が生じる点で相違する。
本件商標と使用標章では、「運転」の文字の有無によって外観及び称呼も異なる。
したがって、外観、称呼及び観念全てにおいて本件商標と相違する使用標章が、本件商標と社会通念上同一であるとは認められない。
(3)商標的使用について
乙第1号証ないし乙第3号証の「パワーシェア運転」の項目をみると、「最大4台の連携制御(リンク)による節電」を目的とする稼働方法のことを「パワーシェア運転」と定義している。
また、「■消費電力量削減イメージ」のグラフ内にも赤字で「(パワーシェア運転)」との記載が認められる。
そうすると、「パワーシェアあり」及び「パワーシェアなし」とは、「パワーシェア『運転』あり」及び「パワーシェア『運転』なし」と表示すべきところ、グラフ内という限られた文字数に対応するために「運転」を省略したと考えるのが相当である。これは、「バランスよく運転するから省エネ!」の項目内の注釈「※1」において「パワーシェア運転をした時としない時」、「暖房時はパワーシェア運転した時」及び「パワーシェア運転しない時」という記載からも理解できる。
よって、被請求人が例示したグラフにおいて、「『パワーシェア』機能の有無」というのは、「『パワーシェア運転』機能の有無」の意味であると理解すべきである。
したがって、乙第1号証ないし乙第3号証でいう使用標章は「パワーシェア運転」であり、機能を記述的に説明したものは、商標法第2条3項各号に掲げる行為には含まれず、そもそも商標の使用に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、要証期間に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者により本件審判請求に係る指定商品について使用されていたものとは認めることはできず、かつ、使用をしていないことについて正当な理由があったものとも認められない。

第3 被請求人の答弁書による主張の要点
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 本件商標の使用事実の要点
商標権者は、予告登録前3年以内に我が国において、本件商品について、本件商標を使用している。
2 本件商標の使用の事実
(1)商標の使用者
乙第1号証ないし乙第3号証の「三菱電機スリムエアコン」のカタログに共通して、背表紙に三菱電機社の商号が記載されている。
(2)使用に係る商品
乙第1号証ないし乙第3号証は、「三菱電機スリムエアコン」とのタイトルの下、「暖冷房装置」に該当するエアコンの広告として作成され、全国の販売店を通し、当該エアコンの需要者となるビル・店舗建設業者等へ広く頒布又は提供されたものである。乙第1号証ないし乙第3号証は、商標法第2条第3項第8号の「商品若しくは役務に関する広告に標章を付して展示し、もしくは頒布し、またはこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
(3)使用に係る商標
乙第1号証の30頁、乙第2号証の29頁及び乙第3号証の36頁にて、「室外ユニット」の見出しの下、「バランスよく運転するから省エネ!」との項目における「■冷房運転での比較」は、「パワーシェア」機能の有無による電力量の差異を示すグラフであり、当該グラフ中にて本件商標を使用している。
また、当該グラフの上部には、「パワーシェア運転」との記載があり、当該記載中「運転」の語については、エアコンについて使用した場合、エアコンが動いている様子を示す語にすぎず、識別力を有しない。そのため、「パワーシェア運転」の文字に接した需要者は、「パワーシェア」の文字のみを独立して認識し得る。
したがって、当該「パワーシェア運転」との記載についても、本件商標の使用と理解されるべきである。
(4)使用時期
「三菱電機スリムエアコン」のカタログ(乙1?乙3)の最終頁末尾に作成年月が記載されており、乙第1号証は2020年6月、乙第2号証は2019年3月、乙第3号証は2018年6月に発行されたものであることが認識できる。
(5)むすび
上記(1)ないし(4)のとおり、商標権者は、乙第1号証ないし乙第3号証として示す商標権者自身の商品に関する広告において、本件商標と同一の商標を付し、これを頒布又は提供しているから、商標法第2条第3項第8号に照らせば本件商標を使用していることは明らかである。
そして、上記(4)のとおり、「三菱電機スリムエアコン」のカタログ(乙1?乙3)の使用時期は2018年6月から2020年6月の期間にかかるものである。
したがって、本件商標は、商標権者によって、本件審判請求に係る指定商品中の「暖冷房装置」について、要証期間に日本国内おいて使用されていた事実があるから、取り消されるべき理由は存在しない。
3 当審における令和2年12月23日付け審尋及び被請求人の回答
(1)当審における審尋について
審判長は、令和2年12月23日付けで、被請求人に対し、ア 「三菱電機スリムエアコン」のカタログ(乙1?乙3)の発行数や頒布先等が明らかでないこと、イ 「パワーシェア」又は「パワーシェア運転」の語は商品「冷暖房装置」の機能を紹介するものであること、等から、被請求人が提出した証拠によっては、被請求人が商標法第50条第2項に規定する本件商標の使用をしている事実を証明したものとは認めることができない旨の合議体の暫定的見解に対する回答及び請求人提出の弁駁書に対する回答を求めた。
(2)審尋に対する被請求人の回答の要旨
被請求人は、上記1の審尋に対し、令和3年1月29日付け回答書を提出し、要旨次のように述べ、証拠方法として乙第4号証ないし乙第11号証(枝番を含む。)を提出した。
ア 「三菱電機スリムエアコン」のカタログ(乙1?乙3)の発行数や頒布先等が明らかでないことについて
(ア)三菱電機社は、製品カタログ発行の際に、後の各種証明に備えて第三者からカタログの公知日証明を受けておくことがある。乙第4号証は、「三菱電機スリムエアコン」のカタログ(乙3)が2018年7月24日に公開されたことが「社団法人日本デザイン保護協会」(以下「日本デザイン保護協会」という。)によって証明されていることを示すものである。公知になったことによって不特定の者がこれを閲覧し得る状況に置かれたことになる。商品カタログという媒体の性質として、閲覧し得る状態になっただけで現実に閲覧した者はいなかったということは起こりえず、カタログの閲覧の契機を有する掲載商品の潜在顧客へ頒布されたと認識することが自然であることから、「三菱電機スリムエアコン」のカタログ(乙3)は、暖冷房装置の顧客層へ頒布されたと認識されるべきである。
(イ)乙第5号証は、三菱電機社が、カタログ制作会社である株式会社アイプラネット(三菱電機社の子会社:以下「アイプラネット社」という。)へ乙第1号証ないし第3号証のカタログを発注したことを示す請求書又は見積書であり、乙第5号証の1は、2020年6月25日付けで、「スリム総合カタログ2020年6月版」(乙1)について8万部(乙5の1)発行したことに関する、アイプラネット社から三菱電機社への請求書、乙第5号証の2は、2019年2月28日付けで、「スリムエアコン総合カタログ2019-3版」(乙2)について25万部発行するにあたり、アイプラネット社から三菱電機社へ示された、費用の見積書、乙第5号証の3は、2018年7月30日付けで、「スリム総合カタログ2018年6月版」(乙3)について6万部発行することに関する、アイプラネット社から三菱電機社への請求書である。
(ウ)乙第6号証は、乙第1号証ないし乙第3号証のカタログについての、三菱電機社が作成したカタログの配布先一覧であり、三菱電機社の発注を受けてアイプラネット社で製作された前記カタログの配布先として、エアコンを顧客へ販売する日本全国の販売会社(三菱電機社との資本関係有無は問わない)及び販売会社ごとの配布部数をリストアップしたものである。
これらの証拠書類に記載のとおり、例えば乙第2号証のカタログについては、乙第6号証の2記載の各所に当該力タログが頒布されたということとなる。
(エ)乙第7号証は、乙第1号証ないし乙第3号証のカタログが上記リスト(乙6)中の販売会社へ配送され、これを販売会社が受領したことを示す伝票類の例である。
乙第7号証の1-1は、アイプラネット社が製作した乙第1号証のカタログが、三浦印刷株式会社を介してヤマトボックスチャーター株式会社(運送会社)によって北海道の販売会社「三菱電機住環境システム(株)北海道支社」へ届けられたことが示されている。同様に、乙第7号証の1-2では名鉄運輸株式会社によって石川県の「三菱電機住環境システム(株)中部支社」へ届けられたことが、また、乙第7号証の1-3ではヤマト運輸株式会社によってその一覧に記載の各地の販売会社へ配送されることが示されている。
(オ)以上(ア)ないし(エ)を総合すると、本件商標が使用されたカタログ(乙1?乙3)は日本デザイン保護協会により公知が証されており、これらカタログは三菱電機社の発注を受けたアイプラネット社によって三菱電機社の発行に供するものとして製作のうえ、年間数万部印刷されており、これらは三菱電機社のエアコンを販売する日本全国の販売会社へ必要部数ずつ要証期間に頒布されていることが認識できるものであり、これらカタログが、各販売会社から、暖冷房装置としてのエアコンの需要者であるビル・店舗建設業者等へ幅広く配布されたことが極めて自然に理解できる。
また、そもそもこれらカタログはインターネット上で閲覧可能であったものである(乙8)。
本件商標が使用されたカタログの発行数や頒布先が明らかになり、これらが、インターネット版でも閲覧できていたことに照らすと、要証期間に「商品若しくは役務に関する広告に標章を付して展示し、もしくは頒布し、またはこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法による提供する行為」がなされたものである。
イ 「パワーシェア」又は「パワーシェア運転」の語は商品「冷暖房装置」の機能を紹介するものであることについて
各種電子・電機機械器具の分野において企業は、自社と他社の商品を単に区別するための商標のみならず、自社の商品の優れた特長を訴求するために、その商品について一般的に用いられている技術用語や機能表示のための語句を用いるだけでは足りず、顧客に対し自社がアピールしたい技術・機能の内容を出来るだけ理解しやすくし、かつ、印象に残るようにすべく当該技術や機能についてユニークなネーミングを使用することが極めて広く行われている。
例えば、乙第9号証の審決では、「『デュアルショット』(使用商標)がビデオカメラに搭載された機能の一つを表す名称であること、電気通信機械器具の取引分野においては、商品の機能名称を商標として登録することが一般的であること、またこの『デュアルショット』の語は一般に親しまれた既成語ではなく、直ちに特定の意味合いを想起させない造語よりなるものであり、この語が本件商品の分野で商品品質等を表示する語として普通に用いられている事実は見いだせないこと、この商品分野では新機能を搭載した商品が次々に出現し、その新機能について各社が独自のネーミングをしていることは需要者にも浸透していることを考慮すると、証拠資料中の『デュアルショット』の表示が他の機能名称と同様の表示方法であることを考慮してもなお、需要者は被請求人が独自に開発した機能に付された商標であると理解、認識するとみるのが相当」と説示されている。
そして、上記審決の電気通信機器と、電気製品ということで共通する空調機器の分野においても各社による使用例及び登録事例がある(乙10)。
これらの事情に照らし本件商標について検討すると、本件商標「パワーシェア」は一般に親しまれた既成語ではなく、直ちに特定の意味合いを想起させない造語よりなるものであり、かつ暖冷房装置の分野で商品の品質等を表示する語として普通に用いられている事実も見いだせない文字である。そして、暖冷房装置の分野において、各社から次々と発表される新機能を搭載した商品において、その新機能について各社が独自に立案したネーミングを使用していることは顕著である。
したがって、カタログ(乙1?乙3)における使用商標「パワーシェア」又は「パワーシェア制御」(当審注:「パワーシェア制御」は、「パワーシェア運転」の誤記と認める。以下、同様。)の表示についても、これに接する需要者は、本件商標を、正にこうした各社独自の機能アピールの商標であると認識するものであるから、商標権者による「パワーシェア」又は「パワーシェア制御」の文字の使用は、本件商標の指定商品中「エアコン(暖冷房装置)」に本件商標を使用した事実を証明したものである。
ウ 弁駁書における「使用標章について」及び「社会通念上同一性について」に対する反論について
使用商標のうち「パワーシェア運転」における「運転」の文字は、エアコンについて使用した場合、エアコンが動いている様子を示す語にすぎず、識別力を有しない文字であるため、「パワーシェア運転」中、自他商品の識別標識となるのは「パワーシェア」の文字であるということとなる。
請求人は「運転」の語が「本件商品との関係で識別力を有しないとは言えない」と述べているが、エアコンの各機能について風量、湿度及び空気清浄などの語を用いるのと同様、エアコンを動作させることを意味する「運転」の語も全く普通に用いられている。
加えて、「パワーシェア運転」は、商標権者の造語に係る「パワーシェア」の文字からなる登録商標に、自他商品の識別機能の無い「運転」の語を続けたものであるところ、これは乙第10号証で提示のしたとおり、空調機器分野において各企業が顧客へ訴求したい特長について商標を立案及び採択し、これに「暖房」及び「制御」といった識別機能を欠く語を続けるという使用の方法及び態様と完全に軌を一にするものであり、このような表示に慣れ親しんでいる空調機器の需要者に対し、識別機能の無い語を除いた文字が自他商品の識別標識という認識をさせるのと同じく、「パワーシェア」の文字のみがそのように認識されることとなるため、結局「パワーシェア運転」の使用態様は本件商標と社会通念上同一の商標の使用ということとなる。
また、商標権者が、他の商標を「運転」の語を付加した態様で登録していることについては、空調機器の業界では乙第10号証で挙げた商標の商標権者である各社も、使用態様には「制御」等の文字を付加しているが、商標登録はこれらを除いた文字のみで登録していることからも判るように、その商標ごとの各企業の取り組み方の多様性の現れにすぎないものである。
さらに、乙第1号証ないし乙第3号証における「パワーシェアあり」及び「パワーシェアなし」の表示箇所では明らかに本件商標と同一である「パワーシェア」が使用されている。
エ 弁駁書における「商標的使用について」に対する反論について
請求人は、「パワーシェアあり」及び「パワーシェアなし」の表示そのものは登録商標「パワーシェア」の使用と自認していることがうかがえる。
オ まとめ
以上のとおり、商標権者が、本件商標を本件審判請求に係る指定商品中、第11類の「暖冷房装置」に、日本国内において要証期間に、少なくとも商標法第2条第3項第8号に該当する使用行為を行ったことが証された、と判断するのが相当である。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠について
本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、(ア)要証期間に、(イ)日本国内において、(ウ)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、(エ)本件審判請求に係る指定商品のいずれかについての、(オ)本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることをすべて証明する必要があるところ、被請求人が提出した証拠には、以下の事項が記載されていると認められる。
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、三菱電機社が2020年6月に作成した「三菱電機スリムエアコン 店舗・事務所用 2020-6」をタイトルとする商品カタログであり、本号証の30頁の「室外ユニット」の項目の「スリムZR」及び「スリムER」の記載の下に「パワーシェア運転」の記載があり、「最大4台の連携制御でトータルの消費電力を削減」の記載、「三菱のパワーシェア運転なら、各機器がより高効率運転できるように互いにパワーを助け合うことで、トータルの能力はそのままに冷房約15%、暖房約10%の省エネを実現します。」の記載がある。
(2)乙第2号証について
乙第2号証は、三菱電機社が2019年3月に作成した「三菱電機スリムエアコン 店舗・事務所用 2019-3」をタイトルとする商品カタログの写しであり、本号証の29頁の「室外ユニット」の項目の「スリムZR」及び「スリムER」の記載の下に「パワーシェア運転」の記載があり、「最大4台の連携制御でトータルの消費電力を削減」の記載、「三菱のパワーシェア運転なら、各機器がより高効率運転できるように互いにパワーを助け合うことで、トータルの能力はそのままに冷房約15%、暖房約10%の省エネを実現します。」の記載がある。
(3)乙第3号証について
乙第3号証は、三菱電機社が2018年6月に作成した「三菱電機スリムエアコン 店舗・事務所用 2018-6」をタイトルとする商品カタログの写しであり、本号証の36頁の「室外ユニット」の項目の「スリムZR」及び「スリムER」の記載の下に「パワーシェア運転」の記載があり、「最大4台の連携制御でトータルの消費電力を削減」の記載、「三菱のパワーシェア運転なら、各機器がより高効率運転できるように互いにパワーを助け合うことで、トータルの能力はそのままに冷房約15%、暖房約10%の省エネを実現します。」の記載がある。
(4)乙第4号証について
乙第4号証は、2018年7月24日に、日本デザイン保護協会が三菱電機社あてに発行したカタログの公知日証明書の写しであり、「1.カタログの名称」の項目に「三菱スリムエアコン 店舗・事務所用 2018-6」の記載、「5.公開日」の項目に「2018年7月24日」の記載がある。
(5)乙第5号証について
ア 乙第5号証の1は、2020年6月25日に、アイプラネット社が三菱電機社あてに発行した「請求書(控)」の写しであり、「件名」の欄に「スリム総合カタログ2020年6月版 印刷」の記載があり、本号証の表中の「数量」の欄の下に「40,000.00」の記載がある。
イ 乙第5号証の2は、2019年2月28日に、アイプラネット社が三菱電機社あてに発行した「見積明細書」の写しであり、「品名」の横に「スリムエアコン総合カタログ2019-3版」の記載、「部数」の横に「250,000」の記載がある。
ウ 乙第5号証の3は、2018年7月30日に、アイプラネット社が三菱電機社あてに発行した「請求書(控)」の写しであり、「件名」の欄に「スリム総合カタログ2018年6月版 印刷」の記載があり、本号証の表中の「数量」の欄の下に「30,000.00」の記載の記載がある。
(6)乙第6号証について
乙第6号証の1ないし乙第6号証の3は、被請求人が商品カタログ(乙1?乙3)の配付先リストと主張しているものであるが、当該リストの作成日は不明である。
(7)乙第7号証について
ア 乙第7号証の1-1は、2020年6月13日に、ヤマトボックスチャーター株式会社が発行した出荷伝票の写しであり、「受付日」の欄に「2020年6月13日」の記載、「配達日時」の欄に「6月15日」の記載、「品名」の欄に「スリムエアコン総合カタログ2020-6版」及び「1000部」の記載、「ご依頼人」の欄に「株式会社アイプラネット」の記載、「お届け先」の欄に「三菱電機住環境システムズ(株)北海道支社」の記載がある。
イ 乙第7号証の1-2は、2020年6月11日に、名鉄運輸株式会社が発行した出荷伝票の写しであり、「着地コード 38010」の下に「スリムエアコン総合カタログ2020-6版」及び「400部」の記載、「荷受人」の欄に「三菱電機住環境システムズ(株)中部支社」の記載、「荷送人」の欄に「株式会社アイプラネット」の記載がある。
ウ 乙第7号証の1-3は、右上にヤマト運輸株式会社の受領印の押印されたリストの写しであり、左上に「品名:スリムエアコン総合カタログ 2020-6版」の記載があり、その下に、「6/11,6/13発送 → 6/12、15着」と記載され、その下に「伝票番号」、「会社」、「住所」及び「部数」が列記されているが、当該リストの作成日は不明である。
エ 乙第7号証の2-1は、2019年3月18日にアイプラネット社が発行した納品受領書の写しであり、表示が不鮮明であるものの、左上に「三菱電機ロジスティクス株式会社殿」と記載され、中央に、「スリムエアコン総合カタログ 2019-3版」と記載され、その下に、「3/19AM 50,000部」、「3/20AM 50,000部」、「3/22AM 50,000部」、「3/25AM 50,000部」及び「3/26AM 50,000部」と記載されている。
オ 乙第7号証の2-2は、2018年6月20日にアイプラネット社が発行した納品受領書の写しであり、表示が不鮮明であるものの、左上に「三菱電機ロジスティクス株式会社殿」、中央に「スリムエアコン総合カタログ 2018-6版」と記載され、その下に、「6/27AM 50,000部」及び「6/28AM 10,000部」と記載されている。
カ 乙第7号証の3-1は、「三浦印刷株式会社」を差出人とする受領書の写しであり、右上に「2020/06/15 12:00 AM 必着」と記載され、荷受人(納品先)の欄に「東菱ビジネスサービス小松原倉庫 三菱電機住環境システムズ 空調営業課」と記載され、中央に「品名:スリムエアコン総合カタログ 2020-6」と記載され、その下に「部数 10,000」と記載されている。
キ 乙第7号証の3-2は、「三浦印刷株式会社」を差出人とする受領書の写しであり、右上に「2020/06/15 12:00 AM 必着」と記載され、荷受人(納品先)の欄に「(株)三菱電機ライフネットワークLNカタログ・販促物センター」と記載され、中央に「品名:スリムエアコン総合カタログ 2020-6」と記載され、その下に「部数 3,000」と記載されている。
ク 乙第7号証の3-3は、「三浦印刷株式会社」を差出人とする受領書の写しであり、右上に「2020/06/15 12:00 AM 必着」と記載され、荷受人(納品先)の欄に「三菱電機住環境システムズ(株)中四国支社 商冷部」と記載され、中央に「品名:スリムエアコン総合カタログ 2020-6」と記載され、その下に「部数 4,000」と記載されている。
(8)乙第8号証について
乙第8号証は、三菱電機社のウェブサイトの「[業務用]空調・換気 Webカタログ」のページの写しであり、「店舗・事務所用パッケージエアコン(Mr.Slim)」の項目の下に、乙第2号証の表紙と思しき画像が表示されている。
2 上記1からすれば、次のとおり判断できる。
(1)使用者について
本件商標の使用者は商標権者である三菱電機社と認められる。
(2)使用商品について
三菱電機社が本件商標を使用したと主張する商品は、「業務用暖冷房装置」(以下「使用商品」という。)と認められ、使用商品は、本件取消請求に係る指定商品中の「暖冷房装置」の範ちゅうに属するものと認められる。
(3)使用商標について
乙第1号証ないし乙第3号証の商品カタログにおいて、使用商品に使用された標章は、「三菱電機株式会社」(以下「使用商標1」という。)、「スリムZR」(以下「使用商標2」という。)及び「スリムER」(以下「使用商標3」という。)(使用商標1ないし使用商標3をまとめていう場合は、「使用商標」という。)であることが確認できる。
そして、本件商標と使用商標は、いずれも、これらの外観及び構成文字が明らかに相違するため、本件商標と使用商標とは、社会通念上同一の商標ではない。
その他、被請求人が提出した全証拠を確認しても、本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標が使用されているとは認められないものである。
(4)商品カタログの頒布について
商標権者が作成した「三菱スリムエアコン 店舗・事務所用 2018-6」は、2018年7月24日に公知となったことが確認できる。
そして、2018年7月24日は、要証期間であることが認められる。
(5)小括
上記(1)ないし(4)のとおり、商標権者である三菱電機社は、その取り扱い係る商品「業務用暖冷房装置」が掲載された商品カタログを、要証期間に日本国内において、頒布したことは認められ、業務用暖冷房装置は、本件審判請求に係る指定商品中「暖冷房装置」の範ちゅうに属するものであることは認められる。
しかしながら、使用商品に使用された使用商標は、本件商標とは社会通念上同一のものとは認められないものである。
その他、被請求人が提出した全証拠を確認しても、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件審判請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標について、商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為を行ったことを認めるに足る事実を見いだせない。
3 被請求人の主張について
(1)被請求人は、店舗・事務所用エアコンの商品カタログ(乙1?乙3)において、「パワーシェア」の文字の記載があり、これが使用商標である旨を主張する。
しかしながら、商品カタログに記載されている「パワーシェア運転」の文字は、「スリムZR」及び「スリムER」の店舗・事務所用エアコンに搭載された機能を表示するにすぎないものであり、「パワーシェア運転」の文字が、商品の出所表示として使用されているとは認められないものである。
また、仮に、「パワーシェア運転」を使用商品に使用された使用商標であると認定したとしても、本件商標「パワーシェア」と「パワーシェア運転」とは、構成文字数が相違するため、これらは、社会通念上同一とは認められないものである。
(2)被請求人は、「乙第1号証ないし乙第3号証における『パワーシェアあり』及び『パワーシェアなし』の表示箇所では、明らかに本件商標と同一である「パワーシェア」が使用されている。」旨を主張する。
しかしながら、「パワーシェアあり」及び「パワーシェアなし」の文字は、商品カタログに記載されている電力量と時間との関係を表したグラフの折れ線グラフを説明している文字であり、これらの文字が、商品の出所表示として使用されているとは認められないものである。
したがって、被請求人の上記主張はいずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件審判請求に係る指定商品について、本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、本件審判請求に係る指定商品について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
審理終結日 2021-07-07 
結審通知日 2021-07-12 
審決日 2021-09-01 
出願番号 商願2013-12591(T2013-12591) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (W11)
最終処分 成立  
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 大山 健
豊田 純一
登録日 2013-06-14 
登録番号 商標登録第5590380号(T5590380) 
商標の称呼 パワーシェア 
代理人 柴田 雅仁 
代理人 加藤 恒 
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