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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1379012 |
異議申立番号 | 異議2020-900352 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-12-25 |
確定日 | 2021-10-21 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6305075号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6305075号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6305075号商標(以下「本件商標」という。)は、「DIORLV」の欧文字を標準文字で表してなり、令和元年12月25日に登録出願、第25類「下着,外衣,パジャマ,子供服,水泳着,レインコート,履物及び運動用特殊靴,帽子,靴下,手袋(被服),スカーフ,ベルト,トップス,ズボン,スカート,ヨガ用シャツ,ヨガ用パンツ」を指定商品として、同2年10月9日に登録査定、同月16日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てにおいて引用する商標は、以下の12件であり、いずれも、現に有効に存続しているものである(以下、これら12件の商標をまとめて「引用商標」という。)。 1 登録第4492095号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:別掲1のとおり 登録出願日:平成12年9月18日 設定登録日:平成13年7月19日 指定商品:第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 最新更新登録日:令和3年6月23日 2 登録第667468号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:昭和38年8月26日 設定登録日:昭和40年2月15日 書換登録日:平成18年2月8日 指定商品:第6類、第14類、第18類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 最新更新登録日:平成27年2月3日 3 登録第669412号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:昭和38年8月26日 設定登録日:昭和40年3月5日 書換登録日:平成18年3月1日 指定商品:第14類、第18類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 最新更新登録日:平成27年3月3日 4 登録第838094号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 登録出願日:昭和39年3月13日 設定登録日:昭和44年11月18日 書換登録日:平成22年8月4日 指定商品:第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 最新更新登録日:令和元年10月8日 5 登録第858578号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 登録出願日:昭和39年3月13日 設定登録日:昭和45年5月30日 書換登録日:平成23年1月26日 指定商品:第9類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 最新更新登録日:令和2年5月12日 6 登録第4013844号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の構成:別掲1のとおり 登録出願日:平成6年6月10日 設定登録日:平成9年6月20日 指定商品:第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 最新更新登録日:平成29年4月18日 7 登録第688094号商標(以下「引用商標7」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 登録出願日:昭和39年3月13日 設定登録日:昭和40年10月25日 書換登録日:平成18年2月22日 指定商品:第14類、第16類、第20類、第21類、第24類及び第27類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 最新更新登録日:平成27年10月27日 8 登録第4013843号商標(以下「引用商標8」という。) 商標の構成:別掲1のとおり 登録出願日:平成6年6月10日 設定登録日:平成9年6月20日 指定商品:第14類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 最新更新登録日:平成29年4月18日 9 登録第1415962号商標(以下「引用商標9」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 登録出願日:昭和51年7月5日 設定登録日:昭和55年4月30日 書換登録日:平成23年1月19日 指定商品:第2類、第16類及び第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 最新更新登録日:令和2年4月21日 10 国際商標登録第951058号商標(以下「引用商標10」という。) 商標の構成:別掲1のとおり 国際登録出願日:2007年8月24日 優先権主張:2007年3月23日 (France) 設定登録日:平成21年8月28日 指定商品:第9類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品 更新登録日:平成29年9月27日 11 登録第1996398号商標(以下「引用商標11」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 登録出願日:昭和60年7月10日 設定登録日:昭和62年11月20日 書換登録日:平成20年7月30日 指定商品:第4類、第6類、第8類、第11類、第16類、第20類、第21類、第24類、第26類、第27類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 最新更新登録日:平成29年11月28日 12 登録第4022600号商標(以下「引用商標12」という。) 商標の構成:別掲1のとおり 登録出願日:平成6年6月10日 設定登録日:平成9年7月4日 指定商品:第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 最新更新登録日:平成29年7月18日 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第58号証(枝番号を含む。ただし、甲第53号証ないし甲第56号証は欠番である。)を提出した。 以下、証拠の表記にあたっては、甲第○号証を甲○のように、省略して記載する。 1 理由の要点 (1)商標法第4条第1項第8号について 本件商標は、その商標中に申立人の著名な略称である「DIOR」の文字をそのまま含み、かつ、申立人の承諾を得ていない商標である。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第11号について 本件商標の構成中「DIOR」部分は、申立人の業務に係る商品「被服、履物、帽子」等に使用される商標として、周知・著名な引用商標「DIOR」の文字と同一であり、本件商標全体として、本件商標登録出願日前の商標登録出願に係る申立人の先行登録商標である引用商標1ないし引用商標4と類似する商標である。 また、本件商標は、引用商標1ないし引用商標4に係る指定商品と同一又は類似の指定商品について使用する商標である。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第15号について 本件商標は、申立人が「婦人服、紳士服、バッグ、シューズ、ジュエリー、眼鏡、腕時計」等のファッション関連商品に使用する商標として、我が国においてはもちろんのこと世界的に著名性を獲得している引用商標と類似する商標である。 かかる本件商標が、引用商標が使用される商品と関連性の高いその指定商品について使用された場合、これに接する需要者・取引者は、周知・著名な引用商標を連想し、その商品の出所について誤認・混同するおそれが極めて高いものである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第19号について 本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「婦人服、紳士服、バッグ、シューズ、ジュエリー、眼鏡、腕時計」等のファッション関連商品に使用される商標として世界的に周知・著名となっていた引用商標に代表される商標「DIOR」に類似するものであって、申立人が、引用商標の周知・著名性に便乗し、「DIOR」の文字を含む本件商標の独占排他的使用を得ようとする不正の目的に基づいて出願し登録されたものである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 2 具体的理由 (1)申立人及び引用商標の著名性について 申立人は、フランスの著名なファッションデザイナーである「Christian Dior(クリスチャン ディオール)」を創始者とするフランス国法人であり、1947年にクチュールメゾンを創設し、以後一貫して「女性に喜びと優雅さ、美を再発見してもらうこと」(甲14)にこだわり続けている。2017年に、著名な高級ブランドを取り扱う企業グループとして知られる「LVMH(ルイ ヴィトン モエ ヘネシー)グループ」の傘下となった後も、そのグループの幅広い販売網と宣伝により、日本を含めた世界各国において広く知られる極めて知名度の高いブランド力を維持し続けている。 デザイナー「Christian Dior(クリスチャン ディオール)」は、1935年から服飾デザインを始め、戦後間もない1946年に小さなブティックを開店、1947年には綿紡業者の援助によって第1回コレクションを発表、その作品群は「ニュールック」と呼ばれ、一躍モード界で名を知られた。その後、1954年に「Yライン」、1956年に「Aライン」などの新しいスタイルを次々に発表し、モード界に大きな影響を与えたことから、「モード界の王様」とまで言われた。Christian Diorはドレスのみならず、ファッション関連商品を幅広く手がけ、また、当初から商品を世界に輸出することで「大ディオール帝国」を築き上げた。1957年に同氏が急逝した後も、イヴ・サンローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ等が主任デザイナーとなることにより、「私は店を永続する」というChristian Diorの遺志は受け継がれ、現在も世界的ファッションハウスとして発展しつづけているものである。 申立人の取り扱いに係る商品は、婦人服、紳士服、シューズ、ベルト、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライターなど、服飾関係を主として幅広い分野に及び、これら申立人による商品は、申立人の長年の継続的な努力によって、いずれも洗練された高品質であり、世界の超一流品として極めて高い信用が形成されているものである。 このことは、申立人の売上高をみれば明らかである。すなわち、2017年度の世界全体での売上高は20億ユーロ(約2,380億円)となっており、この額は、同じ年にLVMHの傘下となったが、そのファッション部門において、Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)に次ぐ売上高となっている(甲15)。 そして、日本においても、申立人に係る婦人服、紳士服、シューズ、ベルト、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライター等の各種商品は、洗練された高品質の商品として一般需要者間に広く認識されており、申立人の長年の継続的な努力によって、世界の超一流品としての極めて高い信用が日本においても形成されている。 また、近年では、申立人のブランドや商品については、「DIOR」と申立人の略称を用いて事業を行い、宣伝活動を行っている。その努力の結果、「Christian Dior Couture」の略称としての「DIOR」及びその称呼「ディオール」もまた、「Christian Dior Couture」と同様に、申立人の製造販売する商品を意味するものとして、需要者・取引者らの間で広く知られるに至っているものである。 このことは、日本において出版された各種刊行物やウェブサイトにおいて、デザイナーの「Christian Dior」、同氏がデザインした婦人服を製造する会社「Christian Dior Couture」及び申立人が、「DIOR」(ディオール)と略称されていることからも明らかである(甲16?甲36)。 その他、申立人がLVMHの傘下に入った2017年は、申立人の創設70周年の年であり、世界各国で「DIOR」の創業70周年を迎えるイベントが行われた(甲37?甲40)。 他にも、2019年には、「DIOR(ディオール)」が百貨店の伊勢丹への出店20周年を記念して伊勢丹新宿店で、「〈ディオール〉が伊勢丹新宿店をジャック!」として全館あらゆる場所に「DIOR」が掲げられ「DIOR」に関する商品等で埋め尽くされた(甲41)。 このように著名な引用商標「DIOR」は、申立人ブランドを象徴する最も重要なハウスマークとして、設立以降現在に至るまで、ほぼすべてのあらゆる商品、すなわち、本件商標の指定商品に係る眼鏡から被服、バッグ、シューズ、時計等ファッション全般の商品に使用されている。 さらに、このような「Dior」の著名性については、引用商標6(登録第4013844号商標)について防護標章登録第1号が登録されており、特許庁の日本国周知・著名商標リストにおいても登録されている(甲6、甲42)。 加えて、婦人服等のファッション関連商品についての「Dior」の著名性については、特許庁における審査・審決例においても認定されている(甲43?甲50)。 以上のことから、本件商標の登録出願時には、既に「Christian Dior」の著名な略称であり、登録商標でもある「DIOR」の文字は、申立人が自らのブランドとして「婦人服、紳上服、シューズ、ベルト、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライター」等のファッションに関係する商品に使用する商標として、極めて広く知られるに至っていた商標であり、現在もその周知性は維持されているというべきである。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標について (ア)本件商標は「DIOR」部分が要部として、取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える。 本件商標は「DIORLV」の欧文字を標準文字で書した態様からなるが、その構成中、「LV」部分は、我が国においては、申立人が所属するLVMHグループのLouis Vuittonの略称として知られてはいるが、特にそれ以外特定の意味を持つ単語として親しまれているものではなく、むしろ、本件商標は「DIOR」と「LV」の結合からなる商標として理解されるものである。 したがって、本件商標は、著名な「DIOR」の文字がそっくりそのまま含まれていることから、たとえ「DIOR」と「LV」の間にスペースがなくとも、上述したとおり「DIOR」部分が、申立人が創業以来、70年以上にわたって、高い広告費をかけて、日本のみならず世界各国で使用し続けた結果、申立人の業務に係る婦人服、紳士服、シューズ、ベルト、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライター等の商品を標示するものとして、本件商標の登録出願時には、高い周知・著名性を獲得するに至っている事実に鑑みれば、その構成中「DIOR」部分が、取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部となるというべきである。 (イ)本件商標の外観・称呼・観念 本件商標は、「DIORLV」の欧文字を標準文字で表してなるところ、「DIOR」部分が出所表示標識として強い印象を生ずる部分であるから、「DIOR」部分より「ディオール」の称呼が生じ、かつ、申立人の引用商標に係る婦人服、紳士服、シューズ、ベルト、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライター等の商標として周知・著名な「ディオール」の観念をも生ずる。 イ 引用商標について 引用商標1は、欧文字「Dior」の構成よりなり、引用商標2及び引用商標3は、「”DIOR”」からなり、引用商標4は、欧文字「Dior」と片仮名「ディオール」の上下二段の構成よりなることから、いずれも「ディオール」の称呼を生じ、かつ、申立人の周知・著名なブランドである「ディオール」の観念が生じる。 ウ 本件商標と引用商標1ないし引用商標4との称呼・観念・外観の類否 上述したとおり、本件商標においては、「DIOR」部分が要部となり、そこから「ディオール」の称呼を生じ、申立人が婦人服、紳士服、シューズ、ベルト、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライター等に使用して周知・著名となった「ディオール」との観念が生じる。 したがって、本件商標と引用商標1ないし引用商標4は、称呼・観念において類似するものである。また、本件商標に係る第25類の全指定商品が、引用商標1ないし引用商標4の第25類の指定商品と同一又は類似する。 エ 小括 本件商標は、本件商標出願日前の商標登録出願に係る申立人の先行登録商標である引用商標1ないし引用商標4と類似する商標である。さらに、上記のとおり、本件商標は、引用商標1ないし引用商標4に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用する商標である。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の著名性及び独創性 引用商標は、申立人が「婦人服、紳士服、シューズ、ベルト、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライター」等に使用する商標として、1947年以降継続して使用され、本件商標の登録出願時である2019年1月30日(決定注:2019年12月25日の誤記と思われる。)までには、我が国の取引者・需要者の間で、著名となっている。また、引用商標の独創性の程度について、引用商標を構成する「DIOR」及び「ディオール」は、既述のとおり、申立人の創業者であるフランスの著名なファッションデザイナーの「Christian Dior(クリスチャン ディオール)」の姓に由来するものであり、これが本件商標の第25類の指定商品であるファッション関連商品の品質を表示するものでないから、造語の一種であることは明らかである。 イ 本件商標と引用商標との類似性の程度 商標法第4条第1項第15号の該当性を考慮するにあたって、「類似性の程度」を他の判断基準よりも過度に重視すべきではない。この故に平成12年7月11日最高裁判例の判示においても「類似」ではなく「類似性の程度」とされて様々な判断基準の一つと位置づけているのであって、仮に本件商標が商標法第4条第1項第11号の意味で類似しない場合であっても、直ちに同項第15号該当性が否定されるべきではない。 したがって、第4条第1項第15号は、(1)商標が同一又は類似で、商品、役務が非類似である場合のみならず、(2)商標が非類似で、商品、役務が同一又は類似である場合、(3)商標が非類似で商品、役務が非類似である場合の各類型において適用されうるものであって、仮に11号の意味で商標が非類似であるとしても、引用商標が著名である等のため広義の混同のおそれがある場合に15号に該当することがある(平成12年7月11日最高裁判例に関する「最高裁判所判例解説」法曹時報第54巻第6号187頁参照)。 以上に述べたところを踏まえて、本件商標と引用商標との間の類似性の程度を検討すると、上述のとおり、引用商標は、「DIOR」又は「ディオール」の文字に相応して「ディオール」の称呼が生じ、申立人の引用商標に係る「婦人服、紳士服、シューズ、ベルト、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライター」等についての著名なブランドである「ディオール」との観念が生じる。 他方、本件商標は、「DIORLV」の欧文字を標準文字で書した態様よりなるが、「LV」部分は申立人が所属するLVMHグループのLouis Vuittonの略称として知られてはいるが、特にそれ以外特定の意味を持つ単語として親しまれているものではなく、本件商標の第25類に係る商品が、申立人の引用商標に係る周知・著名な婦人服、紳士服、シューズ、ベルト、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライター等のファッション商品との関連性が非常に高いことに鑑みれば、本件商標に接した取引者・需要者は、著名な引用商標を連想するというべきであるから、「DIOR」部分から「ディオール」の称呼が生じ、申立人の引用商標に係る周知・著名なブランドである「ディオール」との観念が生じる。 したがって、本件商標は、申立人の引用商標と称呼・観念において類似するというべきである。 また、仮に、本件商標が引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号における類似とまではいえないとしても、なお極めて強い出所識別機能を有する「DIOR」の部分が共通し、その類似性の程度は極めて高いというべきであり、このことを前提として出所混同のおそれの存否を判断しなければならない。 ウ 本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性 本件商標は、申立人が使用し著名性を有する引用商標に係る指定商品「婦人服,紳士服,シューズ,ベルト,ジュエリー,眼鏡,腕時計,万年筆,ライター」と同一又は類似する第25類の商品「下着,外衣,パジャマ,子供服,水泳着,レインコート,履物及び運動用特殊靴,帽子,靴下,手袋(被服),スカーフ,ベルト,トップス,ズボン,スカート,ヨガ用シャツ,ヨガ用パンツ」について使用される商標であるから、商品の性質等及び商品の取引者及び需要者において互いに共通性が高いことは明白である。 さらに、下着のタグや帽子や履物のワンポイント、ベルトのバックル等に使用された場合、小さく付されることが多いこと、及び、本件商標が周知・著名な引用商標に係る「DIOR」の文字を含んだ商標であることから、実際の取引実情においても、両商標を離隔的観察した場合に、需要者等が、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。 エ 周知・著名商標をその構成中に含む商標についての異議決定・審判決例(甲57) 本件商標と引用商標についても、本件商標中の「LV」部分はLVMHグループのLouis Vuittonの略称として知られてはいるが、特にそれ以外特定の意味を持つ単語として親しまれているものではなく、本件商標の第25類に係る商品は、申立人の引用商標に係る周知・著名な婦人服、紳士服、シューズ、ベルト、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライター等のファッション関連商品との関連性は非常に高いことに鑑みれば、本件商標に接した取引者・需要者は、著名な引用商標を連想し、引用商標に係る商品であるとその出所について混同を生じるというべきである。さらに言えば、本件商標がLouis Vuittonの略称として知られている「LV」との結合からなることを考慮しても、本件商標は申立人が属するLVMHグループと何等かの関係を有するものと認識されるおそれが非常に高いというべきである。 したがって、周知・著名商標をその構成中に含む商標についての異議決定・審判決例に鑑みても、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当することが明らかである。 (4)商標法第4条第1項第19号該当性について ア 引用商標の著名性 引用商標は、申立人の業務及び申立人の業務に係るファッション商品等について使用された結果、「DIOR」のつづり及び「ディオール」の称呼のもと、全国的に高い著名性を有する商標であり、引用商標は、商標法第4条第1項第19号に規定する「他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当するものである。 イ 本件商標と引用商標の類似性 本件商標と引用商標は、上述のとおり、互いに類似する商標である。 ウ 出願人の「不正の目的」 商標法第4条第1項第19号について、東京高判平成14年10月8日(平成14年(行ケ)第97号)では、「商標法4条1項19号は、もともと只乗り(フリーライド)のみならず、稀釈化(ダイリューション)や汚染(ポリューション)の防止をも目的とする規定」であると説示していることより、同号における「不正の目的をもって使用するもの」とは、具体的には「日本国内で全国的に著名な商標と同一又は類似の商標について、出所混同のおそれまではなくとも出所表示機能を稀釈化させ、その名声を毀損させる目的をもって商標出願する場合」や、「その他日本国内又は外国で周知な商標について信義則に反する不正の目的で出願する場合」等が該当する。 引用商標は、申立人による長年にわたる努力の積み重ねの結果、取引者・需要者間において広く知られ、高い名声・信用・評判を獲得するに至っており、本件商標の登録出願時である令和元年(2019年)12月25日には、引用商標は既に申立人の業務に係る商品に使用される商標として極めて広く知られていた著名商標であり、「DIOR(ディオール)」といえば「申立人が製造販売する世界的に有名なファッションブランドの『DIOR』」との観念が一義的に生じるものである。 一方、本件商標の要部は、かかる著名な引用商標の「DIOR」と同一の称呼が生じ、指定商品は申立人の「DIOR」が著名性を獲得した「婦人服、紳士服、シューズ、ベルト、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライター」等のファッション商品と極めて密接な関連を有する商品であり、「DIOR」以外の部分である「LV」は、申立人が所属するLVMH傘下のブランドの一つであるLouis Vuittonの略称として知られている「LV」であり、世界的に著名な申立人の引用商標である「DIOR」とLouis Vuittonの略称として著名な「LV」を組み合わせる特段の理由はないことを考えると、商標権者が著名な引用商標を知らず、偶然に著名な引用商標と同一のつづり及び同一の称呼を生じる文字からなる本件商標を出願したとは考え難く、引用商標の有する高い名声・信用・評判にフリーライドする目的で出願、使用されているものと推認される。 したがって、商標権者が本件商標を不正の目的で使用するものであることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第8号該当性について 商標法第4条第1項第8号における「著名な略称」については、判例において「人の名称等の略称が8号にいう『著名な略称』に該当するか否かを判断するについても、常に、問題とされる商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものということができる。」(最高裁平成16年(行ヒ)第343号)と判示されているところ、「DIOR」は、上述のとおり、我が国の一般的な辞書や雑誌等において、申立人の略称として掲載されていることから、申立人の略称として一般的に受け入れられ、商標法第4条第1項第8号における「著名な略称」に該当することは明らかである。 そして、本件商標は、「DIORLV」の欧文字を書してなるところ、我が国で一般的に知られている申立人の著名な略称「DIOR」と同じつづり字「DIOR」が前半部分に表示されていることから、「DIOR」と「LV」の2語からなる結合商標であると理解される可能性が十分にあるというべきである。そして、本件商標の前半部分の「DIOR」は、本件商標の登録出願時(2019年12月25日)及び登録査定時(2020年10月16日(決定注:2020年10月9日の誤記と思われる。))には既に、我が国において一般的に著名となっている申立人の略称「DIOR」と同一のつづり字からなり、特に、本件商標に係る指定商品と申立人に係るファッション分野における商品は需要者や取引者の面で共通性が高いことを考慮すると、需要者が申立人を想起・連想することは明らかである。 そうすると、本件商標が「DIORLV」の文字を一体的に表示しているとしても、需要者は、前半部分の「DIOR」の文字を認識し、ひいては申立人の略称を連想するというべきであり、本件商標についても、判決・審決例における判断(甲52等)と同様に、申立人の「著名な略称を含む商標」と解されるべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号の「他人の著名な略称を含む商標」と解するのが妥当であり、かつ、申立人の承諾を受けないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。 (6)結論 本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項によって取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1 申立人及び引用商標の著名性について (1)申立人の提出に係る甲各号証、申立人の主張及び職権による調査によれば、以下のとおりである。 ア 申立人は、ファッションデザイナーである「Christian Dior(クリスチャン ディオール)」を創始者とするフランス国法人であり、1947年に創設され(甲14)、2017年に、「LVMH(ルイ ヴィトン モエ ヘネシー)グループ」の傘下となった。 イ 2017年度の世界全体での売上高は20億ユーロ(約2,380億円)となっており、LVMHのファッション部門において、Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)に次ぐ売上高である(甲15)。 ウ 2018年1月12日発行の「広辞苑(第7版)」(株式会社岩波書店)において、「ディオール[Christian Dior]の項に、「フランスの服飾デザイナー。1947年、ニュールックと呼ばれるシルエットを発表して成功。第二次大戦後のファッション界をリードした。」の記載がある(甲16)。 エ 2002年11月1日発行の「コンサイスカタカナ語辞典(第2版)」(株式会社三省堂)において、「ディオール」の項に、「フランスの服飾デザイナー.1947年夏、画商から転じて、ニュールックと称しロング-スカートのモードをもって服飾界に登場.以後、Hライン、Aライン、Yラインなど数多くのモードを発表.」の記載がある(甲17)。 オ 1989年2月10日発行の「コンサイス外国人名事典改訂版」(株式会社三省堂)において、「ディオール Dior」の項に、「フランスの服飾デザイナー。・・・1935 デザイナーに転向。・・・第2次世界大戦後の世界のモード界をリード。」の記載がある(甲18)。 カ 1992年10月15日発行の「新版 フェアチャイルド ファッション辞典」(株式会社鎌倉書房)において、「Dior,Christian」の項に、「フランスのデザイナー。・・・ディオールの名はファッション業界の内外にひろく知れわたった。48年から51年にかけて、商品ラインは香水、スカーフ、靴下類、毛皮製品、手袋、男もののネクタイ、若い女性を対象にした低価格のドレス『ミス・ディオール』Miss Diorまでひろがり、国際的な巨大企業に成長した.」の記載がある(甲19)。 キ 1991年10月22日発行の「新・田中千代服飾辞典」(同文書院)には、「クリスチャン・ディオール[Christian Dior]」の項に、「1950年からディオール店の組織は多角経営となり、1947年に初めて出された香水『ミス・ディオール』、1956年の『ディオリッシモ』はもちろんネクタイ、シャツ、スカーフ、靴から、子ども服のデザインなど拡大化がはかられている。オート・クチュールでもディオールやカルダンなどが、子ども服のデザインをはじめた」の記載がある(甲20)。 ク 世界の一流ブランドを紹介する各種刊行物(甲21?甲31)や、ファッション業界のニュースを扱うウェブサイト(甲32?甲36)において、「Dior(ディオール)」又は「Christian Dior(クリスチャン ディオール)」が取り上げられている。 ケ 申立人の創設70周年の年である2017年には、「DIOR」の創業70周年を迎えるイベントが行われた(甲37?甲40)。 コ 2019年には、「DIOR(ディオール)」が百貨店の伊勢丹への出店20周年を記念して伊勢丹新宿店で、「〈ディオール〉が伊勢丹新宿店をジャック!」として「DIOR」が掲げられ「DIOR」に関する商品等で埋め尽くされた(甲41)。 (2)上記(1)よりすれば、申立人は、ファッションデザイナーである「Christian Dior(クリスチャン ディオール)」によって、1947年に創設されたフランス国の法人であり、70年以上にわたり、「婦人服、紳士服」等を始め、各種ファッション関連商品に使用され、世界の一流ブランドを紹介する各種刊行物等にも「Dior(ディオール)」が取り上げられている等の事情からして、引用商標は、申立人の業務に係る商品である「婦人服、バッグ、シューズ、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、シガーライター」等のファッション関連の商品を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、外国及び我が国の需要者の間に広く認識されていたといえるものであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものといえる。 また、同様に、申立人の略称としても、「Dior(ディオール)」は広く知られていたといい得るものである。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、「DIORLV」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同書同大等間隔でまとまりよく一体に表されているものである。 そして、当該文字は、辞書等に載録されている語ではなく、また、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないものであるから、一種の造語として認識されるものである。 また、通常、造語からなる商標については、我が国において広く親しまれている英語読み風又はローマ字読み風に称呼されることが一般的であるから、本件商標は、その構成文字に相応して「ディオールブ」の称呼を生ずるというのが相当であり、当該称呼は、冗長ではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。 そうすると、本件商標は、その構成全体をもって「ディオールブ」とのみ称呼される一体不可分の造語を表した商標と認識されるとみるべきであって、本件商標のかかる構成において、その構成中の「DIOR」の文字部分のみを分離、抽出して観察しなければならない格別の理由は存しない。 してみれば、本件商標は、その構成中の「DIOR」の文字部分のみが独立して看者に印象づけられるものではないから、その構成文字全体に相応して「ディオールブ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標1ないし引用商標4について 引用商標1は、別掲1のとおり、「Dior」の欧文字からなり、引用商標2及び引用商標3は、別掲2のとおり、「”DIOR”」からなるものであって、引用商標4は、別掲3のとおり、「Dior」の欧文字と「ディオール」の片仮名を二段に併記してなるものである。 引用商標は、上記1のとおり、「婦人服、紳士服」等を始め、各種ファッション関連商品を表示する商標として、我が国及び外国における取引者、需要者の間に広く認識されていたものである。 そうすると、引用商標は、いずれも、その構成文字に相応して、「ディオール」の称呼を生じ、「申立人に係るファッション関連商品のブランド」の観念を生じるものである (3)本件商標と引用商標1ないし引用商標4との類否について 本件商標と引用商標1ないし引用商標4との類否について検討するに、両者はそれぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成よりなるところ、「DIORLV」の欧文字よりなる本件商標と、「Dior」、「”DIOR”」並びに「Dior」及び「ディオール」の文字よりなる引用商標1ないし引用商標4とは、構成文字数、「LV」の文字の有無等により、外観において、判然と区別し得るものである。 次に、称呼についてみるに、本件商標から生じる「ディオールブ」の称呼と引用商標1ないし引用商標4から生じる「ディオール」の称呼とは、「ディオール」の音を同じくするとしても、構成音数が異なることに加え、語尾における「ブ」の音の有無という明らかな差異を有するものであるから、称呼において、明瞭に聴別し得るものである。 さらに、本件商標は、特定の観念を生じないものであるから、「申立人に係るファッション関連商品のブランド」の観念を生じる引用商標1ないし引用商標4とは、観念において相紛れるおそれはない。 してみれば、本件商標と引用商標1ないし引用商標4とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない別異の商標というべきである。 その他、本件商標と引用商標1ないし引用商標4が類似するというべき事情は見いだせない。 (4)小括 以上のとおり、本件商標と引用商標1ないし引用商標4は非類似の商標であるから、本件商標の指定商品が引用商標1ないし引用商標4の指定商品と同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知著名性について 引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたといえるものである。 (2)本件商標と引用商標との類似性の程度について 引用商標5ないし引用商標12の構成態様は、引用商標1又は引用商標4と同じものであるから、本件商標と引用商標は、上記2(3)と同様に、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない別異の商標というべきである。 そうすると、両商標の類似性の程度は高いとはいえないものである。 (3)商品・役務の関連性及び需要者の共通性について 申立人が引用商標を使用している「婦人服、紳士服」等を始めとする各種ファッション関連商品は、本件商標の指定商品と同一又は類似するものといえるから、商品の関連性を有し、需要者を共通にするものである。 (4)小括 上記(1)ないし(3)を総合的に判断すれば、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたといえるものであり、本件商標の指定商品と引用商標に係る商品が関連性を有し、需要者を共通にするものであるとしても、本件商標は、何より引用商標とは、上記(2)のとおり、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない別異の商標というべきものである。 そうすると、本件商標権者が、本件商標をその指定商品について使用しても、取引者、需要者が、申立人若しくは引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第19号該当性について 本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。 本件商標と引用商標とは、上記2と同様に、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない別異の商標というべきものであって、非類似の商標である。 また、申立人は、本件商標権者が、引用商標の有する高い名声・信用・評判にフリーライドする目的で出願、使用していると推認される旨主張しているが、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、不正の利益を得る目的、他人(申立人)に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第8号該当性について 本件商標は、「DIORLV」の欧文字よりなるところ、その構成文字全体が外観上まとまりよく表されているばかりでなく、これより生ずると認められる「ディオールブ」の称呼も冗長ではなく、よどみなく一連に称呼し得るものであり、その構成全体をもって「ディオールブ」とのみ称呼される一体不可分の造語を表した商標と認識されるとみるべきであって、本件商標のかかる構成において、その構成中の「DIOR」の文字部分のみを分離、抽出して観察しなければならない格別の理由は存しない。 してみれば、「DIOR」が申立人の著名な略称であるとしても、本件商標は、その構成中の「DIOR」の文字部分のみが独立して看者に印象づけられるものではないから、その構成中に、他人の著名な略称を含む商標ということはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。 6 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 (引用商標1、引用商標6、引用商標8、引用商標10、引用商標12) ![]() 別掲2 (引用商標2、引用商標3) ![]() 別掲3 (引用商標4、引用商標5、引用商標7、引用商標9、引用商標11) ![]() |
異議決定日 | 2021-10-11 |
出願番号 | 商願2019-166644(T2019-166644) |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W25)
T 1 651・ 271- Y (W25) T 1 651・ 262- Y (W25) T 1 651・ 23- Y (W25) T 1 651・ 222- Y (W25) T 1 651・ 263- Y (W25) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 藤平 良二 |
特許庁審判長 |
中束 としえ |
特許庁審判官 |
杉本 克治 冨澤 美加 |
登録日 | 2020-10-16 |
登録番号 | 商標登録第6305075号(T6305075) |
権利者 | 李嘉松 |
商標の称呼 | ディオールブ |
代理人 | 川上 美紀 |
代理人 | 佐藤 俊司 |
代理人 | 藤田 考晴 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 池田 万美 |
代理人 | 河合 利恵 |