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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W42 審判 全部申立て 登録を維持 W42 審判 全部申立て 登録を維持 W42 審判 全部申立て 登録を維持 W42 審判 全部申立て 登録を維持 W42 審判 全部申立て 登録を維持 W42 |
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管理番号 | 1379003 |
異議申立番号 | 異議2021-900112 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-03-24 |
確定日 | 2021-10-15 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6336006号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6336006号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6336006号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成からなり、平成31年3月5日に登録出願され、第42類「土木・建築物の設計,人材派遣による土木・建築物の設計,測量,建築物及び土木工事の設計,建築物及び土木工事の設計に関する助言」を指定役務として、令和2年9月18日に登録査定、同3年1月4日に設定登録されたものである。 第2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第32号証(枝番を含む。)を提出した。 1 申立ての理由の要点 本件商標は、全世代で全国的に認知されており、音楽やエンタテイメント分野のみならず、社会生活全般に関する情報を提供する商標及び社名の略称として著名である「オリコン(ORICON)」の文字を含むものであり、本件商標を使用することは公序良俗を害するおそれがあるとともに、申立人の承諾を得ずにその申立人の名称の著名な略称を含む商標に該当する。 また、土木・建築分野に係る需要者・取引者をして、本件商標と引用商標との間には出所の混同を生ずるおそれがある。さらには、本件商標は申立人の著名商標と同一又は類似の商標であって、申立人の信用にフリーライドする不正の目的をもって使用するものである。 2 具体的理由 (1)申立人の商号及び商標「オリコン(ORICON)」の著名性について ア オリコンの会社沿革 申立人には以下のような沿革(概要)があり、その商号(略称)及びハウスマークである「オリコン(ORICON)」(以下「引用商標」という。)は、申立人による長年の使用とその実績によって日本全国で認知された著名商標である。 1967年 株式会社オリジナルコンフィデンス設立 週刊誌「総合芸能市場調査」創刊(甲2) 1979年 一般向け音楽情報週刊誌「オリコン全国ヒット速報」創刊(甲3) 1997年 デイリーランキング発表開始 1999年 音楽情報サイト「ORICON STYLE」のサービス開始 2000年 オリコン株式会社新規上場(ナスダック・ジャパン) 2006年 オリコン顧客満足度ランキング発表開始 2008年 “本”ランキング発表開始 2009年 法人向けデータ提供サービス「ORICON Biz online」配信開始 2013年 芸能・エンタメニュースに特化した公式YouTubeチャンネル「ORICON NEWS」を開設 2019年 オリコン顧客満足度ランキングの調査データの学術研究分野向けの提供を関始 2020年 Webサイト「ORICON NEWS」が月間3億PVを達成 公式YouTubeチャンネル「ORICON NEWS」が登録者数100万人を突破 イ 雑誌媒体 (ア)申立人は、上記のように1967年に「総合芸能市場調査」を創刊し(甲2)、以後「コンフィデンス」「オリジナルコンフィデンス」「ORICON BiZ」「ORIGINAL CONFIDENCE」「コンフィデンス」と誌名を変更しながら、主に業界(芸能事務所やレコード会社など)向けに音楽情報・エンタテイメント情報を提供してきた。この最大販売部数は約1万部である。 (イ)一方で、一般向けには1979年8月に「オリコン全国ヒット速報」を創刊し、2016年に休刊するまで、「オリコン WEEKLY」「オリコン・ウィーク The Ichiban(ザ・1番)」「weekly oricon(WO)」「oricon style」「オリ★スタ」と誌名変更はありつつも、37年間音楽やエンタテイメントを伝える雑誌を発行してきた(甲3)。 (ウ)同雑誌は、一般人向けに毎週最新の音楽ランキング(ヒットチャート)や歌手・アイドルなどの情報を提供する当時としては画期的な雑誌であった。この最大販売部数は15万部である。 ウ 顧客満足度ランキング (ア)申立人は、2003年に患者満足度に基づいた医療ランキング本「患者が決めた!いい病院」を発刊した(甲4の1:関東版、甲4の2:近畿・東海版)。この本は、申立人が音楽・エンタテイメントで長年培ってきたデータをランキング化するノウハウや情報収集技術・ネットワークを医療分野に応用したものである。 この本が発刊された後に、他社から類似本や雑誌の特集等も登場し、ちょっとした社会現象にもなった。また、上記する2006年に申立人が発表を開始した「オリコン顧客満足度ランキング」へとつながる。なお、この医療ランキング本「患者が決めた!いい病院」は、その後2007年に2007年度版が発刊されている(甲4の3:関東版、甲4の4:近畿・東海版) (イ)オリコン顧客満足度ランキングは、当初「エステティックサロン」「人材派遣会社」「英会話スクール」「結婚情報サービス」の4つのランキングからスタートしたが(甲5)、本件商標の登録出願の時点(2019年3月)で、141のランキングが発表されており、本件商標の登録査定の時点(2020年9月)でも、約190のランキングが発表されている。すなわち、我々の社会生活に関連する様々な商品やサービスにこの顧客満足度ランキングが実施されているのである。 (ウ)申立人はランキング第1位に選出された企業の功績を称えて、「オリコン顧客満足度アワード」と称して、年に一度授賞式を開催している。この授賞式はマスコミでも報道されて、注目度の高いものとなっている(甲6)。 (エ)このように、音楽やエンタテイメント分野からスタートした「オリコン」の商号(略称)及びブランドであるが、この「オリコン顧客満足度ランキング」を発表することにより、その対象が社会生活全般に広がって、情報提供会社・ブランドとして高い知名度と信頼を確立した(甲7)。 エ 広告露出 (ア)まず、上記する2008年より発表の開始された“本”ランキングでは、第1位を獲得した本(書籍)がその広告に「オリコン第1位」であることを積極的に表示している(甲8の1?46)。本によっては、帯に「オリコン第1位」を表示することもある(甲9)。 (イ)次に、同じく「オリコン顧客満足度ランキング」でも、ランキング第1位を獲得した企業はその商品やサービスの広告に「オリコン顧客満足度ランキング(調査)第1位」であることを表示している(甲10の1?50)。その数は、申立人が確認できただけで、2016年計596件、2017年計461件、2018年計432件、2019年(3月迄)計461件となっている(甲11)。 (ウ)さらに、ランキング第1位を獲得した企業は、自社のホームページ上でもその旨を積極的に表示している。 (エ)このように、ランキング上位(特に第1位)に選出された企業は、それを積極的に広告媒体(パンフレット、新聞、チラシ、TVCM等)に表示するので、結果的に「オリコン」の社名(略称)やブランドの広告媒体への露出も多くあり、消費者・需要者が「オリコン」の名を頻繁に見聞きすることになっている。 オ マスコミ露出 (ア)まず、新聞では「オリコン」の文字の記載された記事が頻繁に見受けられる。例えば、“本”ランキングに関して、本件商標の登録出願日(2019年3月)前の2018年のオリコン年間本ランキングについての記事が多数掲載されている(甲12の1?21)。 また、2018年9月に引退した元歌手の「安室奈美恵」さんについて、オリコンでのランキング情報を多数の新聞が記事にしている(甲13の1?11)。 同様に、歌手の「米津玄師」さんについてもオリコンでのランキング情報を多数の新聞が記事にしている(甲14の1?6)。 (イ)次に、テレビ番組でも「オリコン」の文字の表示された画面が頻繁に見受けられ、本件商標の登録出願日である2019年3月5日にも、朝の情報番組では「オリコン」の最新音楽ランキング情報が報遥されており(甲15の1?7)、夜のバラエティ番組では過去の「オリコン」の音楽ランキング情報等が紹介されている(甲16の1?3)。 また、本件商標の登録査定がされた2020年9月18日にも、ウォーターサーバーのテレビショッピングやマツコデラックス氏のトーク番組、歌番組「ミュージックステーション」で「オリコン」の文字が表示されている(甲17の1?7)。 (ウ)また、本件商標の登録出願日である2019年3月5日より以前でみると、2014年9月18日に放送された夕方の情報番組で回転寿司に関する「オリコン顧客満足度ランキング」が紹介されている(甲18)。 2015年には、テレビ番組でもたびたび「オリコン顧客満足度ランキング」が紹介されており(甲19の1?6)、雑誌や新闇などの紙媒体にも「オリコン」の文字が登場している(甲19の7?48)。 2016年にも、テレビ番組でもたびたび「オリコン顧客満足度ランキング」が紹介されており(甲20の1?4)、雑誌や新聞などの紙媒体にも「オリコン」の文字が登場している(甲20の5?39)。 2017年にも、テレビ番組でもたびたび「オリコン顧客満足度ランキング」が紹介されており(甲21の1?3)、雑誌や新聞などの紙媒体にも「オリコン」の文字が登場している(甲21の4?28)。 2018年にも、テレビ番組でもたびたび「オリコン顧客満足度ランキング」が紹介されており(甲22の1?4)、雑誌や新聞などの紙媒体にも「オリコン」の文字が登場している(甲22の5?45)。 (エ)さらに遡れば、申立人(創業者:K氏)は、1970年代に人気を博したTBSの情報バラエティ番組「ぎんざNOW!」のヒットチャートコーナー「<オリコン>今週のベスト10」を担当していた(甲23)。 (オ)その他にも、2020年10月に死去された筒美京平氏の報道では、新聞及びテレビでは、申立人の情報が数多く引用されて、「オリコン調べ」とクレジット表記されている(甲24の1?6)。 (カ)このように、新聞やテレビの報道などで申立人の情報(データ)が広く利用されている。例えば、朝の情報番組の中で視聴率トップ3の番組では、いずれも申立人の音楽ランキング情報を報道し(甲25の1?3)、2020年をもって活動を休止した国民的アイドル「嵐」に関する申立人の音楽ランキング情報も極めて大きく報道されている(甲26の1、2)。それは「オリコン」のブランド力・信頼性に他ならず、ひいては「オリコン」の全国的な認知度を物語っている。 カ 結語 以上のことから、「オリコン(ORICON)」は申立人の音楽・エンタテイメントのみならず、社会生活全般に関する情報提供主体・サービスとして、全国的に広く知られた著名商号(略称)及び著名商標であると確信する。 (2)アンケート調査 ア 申立人は、今回の商標登録の異議申立に先立ち、ブランド認知調査を実施した(甲27)。 調査内容(概要)は、次のとおりである。 ■調査対象:全国10?50代男女合計1,000名 ■調査期間:2021年3月1日(月)?3月3日(水)の3日間 ■調査企画:オリコン株式会社 ■実施機関:楽天インサイト株式会社 イ 調査結果(概要)は、次のとおりである。 (ア)「『オリコン(ORICON)』といえば、どのような製品やサービス・企業を思い浮かべますか。」との間い(Q1)に対しては、「音楽(歌・曲・ミュージック)」を想起するとの回答(記述)が296あり、「ランキング・チャート・ランク」を想起するとの回答が288あった。 (イ)「『ORICON HD』といえば、どのような製品やサービス・企業を思い浮かべますか。」との間い(Q2)に対しては、「音楽(歌・曲・ミュージック)」を想起するとの回答(記述)が89あり、「ランキング・チャート・ランク」を想起するとの回答が38あった。 (ウ)「『オリコン(ORICON)』といえば、どのようなことを思い浮かべますか。選択肢の中からすべてをお選びください。(いくつでも)」との間い(Q3)に対しては、「ランキング」を想起するとの回答(選択)が46.9%あり、「音楽・映像・書籍のデータベース」が45.1%あった。 (エ)「『ORICON HD』といえば、どのようなことを思い浮かべますか。選訳肢の中からすべてをお選びください。(いくつでも)』との問い(Q4)に対しては、「オリコン株式会社とその関連企業(音楽/ランキング/ニュース/顧客満足度)」を想起するとの回答(選択)が30.8%あり、「株式会社オリエンタルコンサルタンツ(総合建設コンサルタント)」が5.2%あった。 ウ 以上のブランド認知調査から以下のような実態が判明した。 (ア)「オリコン(ORICON)」の語からは、半数以上が申立人の事業である音楽やランキング・チャート・ランクを想起していること(Q1より)。 (イ)「ORICON HD」の語からは、10%以上の人が「オリコン(ORICON)」の語と同じ申立人の事業である音楽やランキング・チャート・ランクを想起していること(Q2より)。 (ウ)「オリコン(ORICON)」の語からは、男女・年代・職業・業種を問わずおよそ半数近くの人が申立人の事業であるランキングや音楽・映像・書籍のデータベースを選択している(Q3より)。 (エ)「ORICON HD」の語からは、商標権者を想起すると選択した人は約5%、申立人を想起すると選択した人は約31%であり、申立人を想起する人が圧倒的に多く、特に注目すべきは、本件商標の指定役務に関連する建築・士木業の業種で商標権者は3.1%、申立人は31.3%となっており、申立人は商標権者の約10倍である(Q4より)。これは、「ORICON HD」の語が一般的のみならず、建築・土木業の分野でも出所の混同を生じさせていることの証左である。 エ 上記するアンケート調査によって、申立人の「オリコン(ORICON)」が著名な商号(略称)・著名商標であることを裏付けられるとともに、本件商標登録との間に出所の混同が生じていることを証明された。 (3)商標法第4条第1項第7号について ア 商標権者の社名(商号)は、株式会社オリエンタルコンサルタンツホールディングスであり、その略称は業界新聞等で「オリコンサルHD」と称されている(甲28の1?35)。 イ 商標権者は、申立人の存在を当然認識していると思われるが、それを承知で、本件商標中に「ORICON HD」を選択したことは、申立人の商標「オリコン(ORICON)」(引用商標)の顧客吸引力(グッドウィル)へフリーライドし、当該顧客吸引力を不当に利用するものであることは明らかである。しかも、「オリコン(ORICON)」は辞書等に記載されている一般用語ではなく、申立人が「オリジナルコンフィデンス/Original Confidence」の略語として作り出した造語であり(甲29)、それは上記のように世間一般に広く認知されている。そのような中で、あえて「ORICON」の語を選択することに一点の曇りも無いとは到底考えられない。 ウ この点に関して、申立人は、2020年4月30日と同年7月1日に商標権者に対して書簡を送付し、申立人の意見を伝えた上で、商標権者の意向を伺うこととした(甲30の1、2)。商標権者からは「本件について改めて検討の上連絡する」旨の連絡があったが、結局商標権者からの回答はなかった。 エ その後、申立人は本願商標登録出願について登録査定がなされたことを知り、代理人を通じて再度商標権者及び出願代理人に対して書簡を送付した(甲30の3)。出願代理人からは書面にて「改めて回答する」旨の連絡があったが(甲30の4)、今回も商標権者からの回答はなく、現在に至るまで商標権者からの誠意ある対応は無くここに至っている。 オ したがって、本件商標は、その商標登録の過程に公序良俗に反するものがあり、商標法第4条第1項第7号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第8号について ア 上記のように引用商標は、申立人の名称(商号)の著名な略称であり、本件商標はその要部にこの著名な略称「オリコン(ORICON)」を含むものである。 イ また、本件商標にこの著名な略称「オリコン(ORICON)」を含むことについて、申立人の承諾を得ているものではない。 ウ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第10号について ア 申立人の「オリコン顧客満足度ランキング」では、毎年住宅系ランキングを発表している(甲31の1?6)。この住宅系ランキングには、本件商標に係る指定役務「建築物の設計」に関連する項目、「設計担当者の対応」や「デザイン」などがある(甲31の1?6)。そして、それに応じた「設計担当者の対応満足度ランキング」(甲32の1)や「デザイン満足度ランキング」(甲32の2)が発表されている。 イ また、本件商標を構成する「ORICON HD」と引用商標「オリコン(ORICON)」とは「HD」の有無の差異があるだけである。「HD」はアルファベット2文字であるので、識別力の無い付記的部分と認識されるか、或いは、近年では持株会社を意味する「Holdings」の略称として認識されるので、両商標の間には広義の混同を生じ得るおそれがあると言わざるを得ない。 ウ したがって、引用商標に係る指定役務は本件商標に係る指定役務と同一又は類似し、引用商標が上記のように著名商標であって本件商標と同一又は類似するものであるので、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (6)商標法第4条第1項第15号について ア 上記のアンケート調査にあるように(甲27)、本件商標は、引用商標の著名性ゆえに、申立人の業務に係る役務と混同を生じている(Q2及びQ4の調査結果より)。 イ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (7)商標法第4条第1項第19号について ア 商標権者の社名(商号)は、株式会社オリエンタルコンサルタンツホールディングスであり、その略称は業界新聞等で「オリコンサルHD」と称されている(甲28の1?35)。 イ 商標権者は、申立人の存在を当然認識していると思われるが、それを承知で、本件商標中に「ORICON HD」を選択したことは、申立人の商標「オリコン(ORICON)」(引用商標)の顧客吸引力(グッドウィル)へフリーライドし、当該顧客吸引力を不当に利用する不正の目的があることは明らかである。しかも、「オリコン(ORICON)」は辞書等に記載されている一般用語ではなく、申立人が「オリジナルコンフィデンス/Original Confidence」の略語として作り出した造語であり(甲29)、それは上記のように世間一般に広く認知されている。そのような中で、あえて「ORICON」の語を選択することに一点の曇りも無いとは到底考えられない。 ウ この点に関して、申立人は、2020年4月30日と同年7月1日に商標権者に対して書簡を送付し、申立人の意見を伝えた上で、商標権者の意向を伺うこととした(甲30の1、2)。商標権者からは「本件について改めて検討の上連絡する」旨の連絡があったが、結局商標権者からの回答はなかった。 エ その後、申立人は本願商標登録出願について登録査定がなされたことを知り、代理人を通じて再度商標権者及び出願代理人に対して書簡を送付した(甲30の3)。出願代理人からは書面にて「改めて回答する」旨の連絡があったが(甲30の4)、今回も商標権者からの回答はなく、現在に至るまで商標権者からの誠意ある対応は無くここに至っている。 オ 上記のように引用商標は申立人の著名商標であり、本件商標はこれと同一又は類似であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 第3 当審の判断 1 引用商標の周知著名性について (1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人は、1967年に「総合芸能市場調査」を創刊し(甲2)、以後「コンフィデンス」「オリジナルコンフィデンス」「ORICON BiZ」「ORIGINAL CONFIDENCE」「コンフィデンス」と誌名を変更しながら、主に業界(芸能事務所やレコード会社など)向けに音楽情報・エンタテイメント情報を提供してきた。この最大販売部数は約1万部であるとされるが、証拠はない。 また、一般向けには1979年8月に「オリコン全国ヒット速報」を創刊し、2016年に休刊するまで、「オリコン WEEKLY」「オリコン・ウィーク The Ichiban(ザ・1番)」「weekly oricon(WO)」「oricon style」「オリ★スタ」と誌名変更しつつ、37年間音楽やエンタテイメントを伝える雑誌を発行してきた(甲3)。同雑誌の最大販売部数は15万部であるとされるが、証拠はない。 仮に、上記各販売部数が事実であるとしても、当該部数が引用商標の周知性を基礎付けるほど多数であると認めるに足りる証左は見いだせず、比較すべき客観的な証拠の提出もないから、その数の多寡について評価することはできない。 (2)申立人は、2003年に患者満足度に基づいた医療ランキング本「患者が決めた!いい病院」を発刊し(甲4の1:関東版、甲4の2:近畿・東海版)、その後、2007年に2007年度版を発刊した(甲4の3:関東版、甲4の4:近畿・東海版)。 また、2006年にオリコン顧客満足度ランキングの発表を開始した。このオリコン顧客満足度ランキングは、当初「エステティックサロン」、「人材派遣会社」、「英会話スクール」及び「結婚情報サービス」の4つのランキングからスタートしたが(甲5)、本件商標の出願の時点(2019年3月)で、141のランキングが発表されており、本件商標の登録査定の時点(2020年9月)では、約190のランキングが発表されているとされるが、証拠はない。 また、上記各ランキングの具体的な内容、規模、範囲等は不明であり、また、引用商標に係る宣伝広告の内容、費用等も明らかではない。 (3)テレビ番組でもたびたび「オリコン顧客満足度ランキング」が紹介されており、雑誌や新闇などの紙媒体にも「オリコン」の文字が登場している(甲19の1?甲22の45)。 (4)以上によれば、「オリコン(ORICON)」は、申立人の業務に係る音楽情報の提供や顧客満足度調査(以下「申立人役務」という。)ないし申立人の略称を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、我が国の音楽情報の提供や顧客満足度調査関連の分野の取引者、需要者の間において、ある程度知られていたと推認することができるとしても、広く認識されていたものと認めることはできない。ましてや、それ以外の取引者、需要者、特に本件商標の指定役務の分野の取引者、需要者の間にまで広く認識されていたものと認めることもできない。 その他、「オリコン(ORICON)」の表示が、本件商標の登録出願前より、我が国の音楽情報の提供や顧客満足度調査関連の分野の取引者、需要者の間に、さらにそれ以外の取引者、需要者の間にまで広く認識されていたことを裏付ける証拠の提出はない。 したがって、引用商標「オリコン(ORICON)」は、本件商標の登録出願時に、我が国における音楽情報の提供や顧客満足度調査関連の分野の取引者、需要者において、さらにその範囲を超えて、申立人の業務に係る音楽情報の提供や顧客満足度調査ないし申立人の略称を表示するものとして、我が国又は外国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第8号該当性について 引用商標は、上記1のとおり、申立人が音楽情報の提供や顧客満足度調査に使用している事実により、ある程度知られていたと推認することができるとしても、申立人の提出した全証拠によってみても、引用商標が、本件商標の登録出願時において、申立人を指称する略称として、一般に受け入れられる程に広く認識されるに至っていたものとまでは認めることはできないものである。 したがって、本件商標は、その構成中に「ORICON」の文字を含むものであるが、当該文字が他人の著名な略称を含む商標と認めることはできないから、商標法第4条第1項第8号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第10号該当性について (1)本件商標と引用商標との類否について 本件商標は、別掲のとおり、土星と思しき図形とその下に「ORICON HD」の欧文字を配した構成からなるところ、外観上、図形部分と文字部分とは分離して看取されるうえに、称呼及び観念上のつながりもあるとはいえないから、それぞれが独立して、取引者、需要者に対し役務の出所識別標識としての機能を果たし得るものである。 そして、当該文字部分に着目すると、「ORICON」及び「HD」の文字の間に半角程度のスペースはあるものの、横一列にまとまりよく表されており、かかる構成においては、殊更、「HD」の文字部分を省略し、構成中の「ORICON」の文字部分のみをもって取引に当たるとはいい難く、むしろ、構成全体をもって一体不可分のものと認識し、把握されるとみるのが自然であり、他に、構成中の「ORICON」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき格別の事情を見いだせない。 してみれば、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「オリコンエッチデイ」の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。 さらに、観念については、本件商標の構成文字全体としては、辞書等に載録のないものであり、特定の意味合いを有することのない一種の造語として認識されるとみるのが相当であるから、特定の観念を生じないものである。 一方、引用商標は、「オリコン」又は「ORICON」の文字からなるものであるから、これよりは、「オリコン」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。 してみると、本件商標と引用商標とは、「ORICON」の文字を共通にするとしても、「HD」の文字の有無、図形の有無、欧文字と片仮名の相違等において明らかな相違があるから、外観上、明確に区別できるものである。 また、本件商標から生じる「オリコンエッチデイ」の称呼と引用商標から生じる「オリコン」の称呼とは、「エッチデイ」の音の有無に差異を有するものであり、両称呼を全体として称呼した場合には、その語調、語感が相違したものとなり、称呼において紛れるおそれはない。 さらに、本件商標及び引用商標は、共に特定の観念を生じないものであり、観念において比較することができない。 以上を総合すると、本件商標と引用商標は、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれはなく、類似するものではないから、その外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して考慮すれば、両商標は非類似の商標というべきである。 (2)本件商標の指定役務と申立人役務の類否について 本件商標の指定役務、第42類「土木・建築物の設計,人材派遣による土木・建築物の設計,測量,建築物及び土木工事の設計,建築物及び土木工事の設計に関する助言」と申立人役務とは、役務提供の目的において大きく異なるばかりでなく、その需要者の範囲も異なり、一般的には、同一の事業者によって提供される役務とはいえないものであるから、非類似の役務である。 (3)小括 上記のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であり、役務においても非類似のものである。また、上記1(4)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第15号該当性について 上記1(4)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたとは認められないものであり、また、本件商標と引用商標とは、上記3(1)のとおり,類似するところのない別異のものである。 さらに、本件商標の指定役務と申立人役務とは、役務の提供の目的・事業者等を異にするばかりでなく、その需要者をも異にするものであって、その関連性は低い。 してみれば、本件商標は、これをその指定役務について使用しても、その需要者をして、該役務が申立人又はこれと何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれのある商標ということはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第19号該当性について 本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。 そして、引用商標は、上記1(4)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、他人(申立人)の業務に係る役務を表示するものとして我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものとは認められないものであり、また、本件商標と引用商標とは,上記3(1)のとおり,類似するところのない別異のものである。 また、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 6 商標法第4条第1項第7号該当性について 商標法第4条第1項第7号でいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(1)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知的財産高等裁判所、平成17年(行ケ)第10349号)。 これを本件についてみると、本件商標は、別掲のとおりの構成からなるものであるから、上記(1)に該当しないことは明らかであり、(2)ないし(5)に該当するものとすべき事情も見あたらない。 申立人は、「商標権者は、申立人の存在を当然認識していると思われるが、それを承知で、本件商標中に「ORICON HD」を選択したことは、申立人の商標「オリコン(ORICON)」(引用商標)の顧客吸引力(グッドウィル)へフリーライドし、当該顧客吸引力を不当に利用する不正の目的があることは明らかである。」旨主張している。 しかしながら、引用商標は、上記1(4)に記載のとおり、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものということができず、申立人が提出した全証拠を勘案しても、商標権者が引用商標に化体した業務上の信用を利用して不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認め得るような具体的事情は見いだすことができない。 その他、本件商標が公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 7 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第10号、同第15号及び同第19号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 本件商標(色彩は原本参照) ![]() |
異議決定日 | 2021-10-07 |
出願番号 | 商願2019-33092(T2019-33092) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W42)
T 1 651・ 25- Y (W42) T 1 651・ 23- Y (W42) T 1 651・ 222- Y (W42) T 1 651・ 255- Y (W42) T 1 651・ 22- Y (W42) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 林田 悠子、杉本 克治 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
森山 啓 小田 昌子 |
登録日 | 2021-01-04 |
登録番号 | 商標登録第6336006号(T6336006) |
権利者 | 株式会社オリエンタルコンサルタンツホールディングス |
商標の称呼 | オリコンエッチデイ、オリコンエイチデイ、オリコン |
代理人 | 岩田 敏 |
代理人 | 渡邊 薫 |