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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W43 審判 全部申立て 登録を維持 W43 審判 全部申立て 登録を維持 W43 審判 全部申立て 登録を維持 W43 |
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管理番号 | 1378990 |
異議申立番号 | 異議2019-900321 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-11-01 |
確定日 | 2021-10-07 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6170319号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6170319号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6170319号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成30年(2018年)8月22日に登録出願、第43類「喫茶店における飲食物の提供,簡易食堂における飲食物の提供,ホテルにおける宿泊施設の提供,軽食堂における飲食物の提供,ホテルその他の宿泊施設のあっせん,一時宿泊施設の提供のための受付及び案内(到着及び出発の管理),キャンプ場施設の提供,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),保育所における乳幼児の保育,椅子・テーブル・テーブル用リネン・ガラス食器の貸与」を指定役務として、令和元年(2019年)6月14日に登録査定され、同年8月9日に設定登録がなされたものである。 第2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、引用する商願2018-127909号(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、第43類「カフェテリアにおける飲食物の提供,レストランにおける飲食物の提供,セルフサービス式レストランにおける飲食物の提供,ホテルにおける宿泊施設の提供,ケータリング(飲食物),軽食堂における飲食物の提供,うどん及びそばの提供,和食の提供,喫茶店における飲食物の提供,バーにおける飲食物の提供」を指定役務とし、平成30年(2018年)10月12日に登録出願されたものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第32号証を提出した。 1 具体的理由 (1)本件商標について 本件商標は、「虎」の文字、山の図形及び虎の模様を想起させる図柄を内包した図形(以下「老虎山図形」という。)と、「老虎山」及び「Tiger Mountain」の二段書きの文字によって構成されており、平成30年(2018年)8月22日に登録出願し、第43類「喫茶店における飲食物の提供,簡易食堂における飲食物の提供,ホテルにおける宿泊施設の提供,軽食堂における飲食物の提供,ホテルその他の宿泊施設のあっせん,一時宿泊施設の提供のための受付及び案内(到着及び出発の管理),キャンプ場施設の提供,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),保育所における乳幼児の保育,椅子・テーブル・テーブル用リネン・ガラス食器の貸与」を指定役務として、令和元年(2019年)6月14日に登録査定、同年8月9日に設定登録されたものある(甲1)。 (2)引用商標について 引用商標は、老虎山図形と、「TIGER」、「SUGAR」及び「老虎堂」の三段書きの文字によって構成されており、平成30年(2018年)10月12日に、第43類「カフェテリアにおける飲食物の提供,レストランにおける飲食物の提供,セルフサービス式レストランにおける飲食物の提供,ホテルにおける宿泊施設の提供,ケータリング(飲食物),軽食堂における飲食物の提供,うどん及びそばの提供,和食の提供,喫茶店における飲食物の提供,バーにおける飲食物の提供」を指定役務として登録出願されたものである(甲2)。 (3)本件商標と引用商標の類否について 本件商標と引用商標は、老虎山図形を共通にしている。 また、「老虎」及び「Tiger(TIGER)」の文字についても共通にしている。 さらに、令和元年(2019年)5月17日付けで、引用商標は、本件商標と同一又は類似である旨の拒絶理由が通知されている。 以上から、本件商標と引用商標の類似性は極めて高いということができる。 (4)引用商標の周知、著名性について ア 申立人による引用商標の使用 申立人である老虎堂國際企業有限公司は、平成30年(2018年)3月21日に台湾において設立された法人である(甲4)。 申立人は、タピオカ入りドリンクを中心とした飲食物を提供する役務について引用商標を使用している(甲5?甲11、甲14?甲17)。 イ 申立人による引用商標に係る役務の各国における展開状況 申立人は、引用商標に係る役務について、平成29年(2017年)11月11日に、台湾台中市に第1号店を開いた(甲6、甲12)。 令和元年(2019年)10月時点では、台湾、中国、香港、フィリピン、シンガポール、マレーシア、韓国、マカオ、タイ、インドネシア、米国、ベトナム、カナダ及び日本において、計110の店舗を構えている(甲12、甲13)。 ウ 本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の周知、著名性 申立人は、本件商標の登録出願日以前において、引用商標に係る役務を提供する店舗を、台湾で7店舗、香港で1店舗を開店していた(甲12)。 また、申立人は、引用商標に係る役務を提供する店舗を、本件商標の登録査定日までに、上記の8店舗に加え、台湾、中国、香港、フィリピン、シンガポール、マレーシア、韓国、マカオ、タイ、インドネシア、アメリカ、ベトナム、カナダにおいて81店舗を開店していた(甲12、甲13)。 さらに、世界的に著名なミシュランガイドのウェブサイトにおいて、申立人の引用商標に係る役務について言及されている(甲17)。 また、日本語で書かれたウェブサイト上において、日本に店舗が存在していなかった本件商標の登録出願日以前に、引用商標に係る役務について言及されている(甲14?甲16)。 エ 申立人の引用商標に係る商標の各国における登録出願又は商標登録の状況 申立人は、複数の国において、引用商標に係る商標を、第43類を中心として登録出願又は商標登録をしている(甲18?甲29)。 申立人は、引用商標に係る役務を提供する店舗の開店前から、開店を予定している国において引用商標に係る商標を登録出願し、自らの商標を安全に使用できるよう権利保護に努めている(甲12、甲18)。 オ 小括 上記のアないしエから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、外国及び我が国における需要者の間で、申立人の業務に係る役務を表すものとして、広く認識されていたということができる。 (5)商標法第4条第1項第7号について ア 特徴の酷似 引用商標は申立人の創造に係る商標であり、構成上顕著な特徴を有するものであるにも関わらず、本件商標と引用商標は、独創性を有する「老虎山図形」の特徴が酷似している(甲1、甲2)。 イ 本件商標に係る商標の外国における登録出願状況 本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、日本のみならず、米国、韓国及びマカオにおいて本件商標に係る商標を登録出願している(甲30?甲32)。 マカオにおいては、申立人からマカオにおけるタイガーシュガーブランドの店舗を運営する許可を得ている「荘誠国際企業有限公司」が、本件商標権者のマカオにおける登録出願に対して訴訟を提起している(甲32)。 ウ 小括 上記(4)並びに上記のア及びイから、本件商標は、申立人に係る独創性を有する引用商標と酷似する商標であり、かつ、本件商標権者が、引用商標と酷似する商標を、自己の商標として、申立人の引用商標に係る役務と同一又は類似した指定役務について登録出願したものである。 その結果、本件商標は、本来権利を取得すべき申立人による引用商標の使用を阻害する出願となっている。 よって、本件商標は登録出願の経緯に社会的正当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号の規定に該当する。 (6)商標法第4条第1項第10号について ア 本件商標の指定役務と引用商標に係る役務との関連性及び需要者の共通性 引用商標に係る役務は、上記第2のとおりであり、本件商標の指定役務中、「喫茶店における飲食物の提供,簡易食堂における飲食物の提供,軽食堂における飲食物の提供」は、同一又は類似の役務である。 また、役務が同一又は類似しているということは、需要者の共通性があるといえる。 イ 小括 上記(3)及び(4)並びに上記のアから、本件商標は、申立人の業務に係る役務を表示する商標として、外国及び我が国における需要者の間に広く認識されている引用商標に類似し、引用商標と同一又は類似の指定役務について使用するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定に該当する。 (7)商標法第4条第1項第15号について 上記(3)から、本件商標と引用商標の類似性は極めて高いということができる。 同様に上記(4)から、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、外国及び我が国における需要者の間で、申立人の業務に係る役務を表すものとして、広く認識されていたということができる。 そうすると、本件商標を、その指定役務「喫茶店における飲食物の提供,簡易食堂における飲食物の提供,軽食堂における飲食物の提供」について使用する場合、これに接する取引者、需要者が引用商標を想起、連想し、当該役務が申立人、あるいは同人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、その役務の出所について混同するおそれがある。 また、本件商標をその指定役務「ホテルにおける宿泊施設の提供,ホテルその他の宿泊施設のあっせん,一時宿泊施設の提供のための受付及び案内(到着及び出発の管理),キャンプ場施設の提供,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),保育所における乳幼児の保育,椅子・テーブル・テーブル用リネン・ガラス食器の貸与」について使用する場合、これに接する取引者、需要者は、たとえ申立人の業務に係る役務であると認識しなくても、同人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、その役務の出所について混同するおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当する。 (8)商標法第4条第1項第19号について 下記(ア)ないし(エ)のとおり、引用商標が日本において商標登録されていないことを奇貨として、申立人の日本国内への参入を阻止する、又は引用商標の顧客吸引力を利用ないし稀釈化させる等の、本件商標権者の不正の目的を認定又は推認することができる。 (ア)上記(3)及び(5)のアのとおり、本件商標は、構成上顕著な特徴を有している引用商標と類似している。 (イ)上記(4)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、外国及び我が国における需要者の間に広く認識されていた。 (ウ)上記(5)のとおり、本件商標権者は本件商標に係る商標を米国、韓国及びマカオにおいて出願している。 (エ)申立人は、遅くとも引用商標の出願日である平成30年(2018年)10月12日には我が国に進出する具体的計画を有しており、令和元年(2019年)9月28日に原宿(東京)、同年10月5日に新宿(東京)、同年10月18日に、心斎橋アメリカ村(大阪)において、実際に店舗を開店している(甲7?甲11、甲13)。 イ 小括 上記(3)及び(4)並びに上記アから、本件商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、外国及び我が国における需要者の間に広く認織されている引用商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の規定に該当する。 2 結び 以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号の規定に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、本件商標は商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知、著名性について (1)申立人の提出に係る甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 ア 申立人は、平成30年(2018年)3月21日に台湾で設立された法人である(甲4)。 イ 申立人は、「タピオカ入りドリンクを中心とした飲食物の提供」(以下「申立人役務」という。)について、引用商標構成中の老虎山図形を看板に付して台湾の店舗の店頭に表示した。 また、ドリンクのカップ側面には、引用商標構成中の老虎山図形と、その下に「TIGER」及び「SUGAR」の欧文字を二段に書したものを表示している(甲5、甲6、甲14ないし甲17) 。 ウ 申立人は、本件商標の登録出願日より前に申立人役務を提供する店舗を、台湾で7店舗、香港で1店舗を開店し、本件商標の登録査定日までに、上記の8店舗に加え、台湾、中国、香港、フィリピン、シンガポール、マレーシア、韓国、マカオ、タイ、インドネシア、アメリカ、ベトナム、カナダにおいて81店舗を開店した(申立人の主張、甲12、甲13)。 エ 台湾発タピオカドリンク専門店「タイガーシュガー(TIGERSUGAR)」が、令和元年(2019年)9月28日に原宿(東京)に日本1号店がオープンする旨が紹介されている(申立人の主張、甲7)。 (2)上記(1)において認定した事実によれば、申立人は、台湾で設立された法人であり、申立人役務を提供する店舗の看板や店舗で提供されるドリンクのカップに引用商標構成中の老虎山図形や老虎山図形と、その下に「TIGER」及び「SUGAR」の欧文字を表示していることは認められる。 しかしながら、申立人が提出したタイガーシュガーの各国における店舗開店日一覧表(写)(甲12)及びタイガーシュガーの各国におけるウェブサイト及びSNS一覧表(写)(甲13)は、作成者、作成日等が不明であり、それらの裏付けとなる資料もなく、引用商標の使用が確認できない。 また、申立人が、本件商標の登録出願前に、台湾において、申立人役務に際し、引用商標構成中の老虎山図形や「TIGER」及び「SUGAR」の欧文字を使用していたことは推認できるものの、日本第1号店が開店した令和元年(2019年)9月28日は、本件商標の登録出願後であることからすると、申立人が本件商標の登録出願時に日本国内において引用商標を使用していたことは確認できない。 さらに、引用商標を使用した申立人役務に関する、我が国における市場占有率(シェア)や広告宣伝の規模等の事実を裏付ける具体的な証拠の提出はなく、それらの詳細は確認できない。 そうすると、申立人が提出した全証拠によっては、引用商標の客観的な事実に基づく周知、著名性を判断することができないため、引用商標の周知、著名性の程度を推し量ることができない。 したがって、引用商標が外国及び我が国において、申立人役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知、著名性を獲得していたとは認められないものである。 2 本件商標と引用商標の類否について (1)本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、黒色四角内に白抜きで、老虎山図形とその右側に「老虎山」の文字、その下に「Tiger Mountain」の文字を二段に書してなる文字部分の構成からなるものであり、構成中の文字部分に相応した「ロウコザンタイガーマウンテン」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標は、別掲2のとおり、老虎山図形と、その下に「TIGER」、「SUGAR」及び「老虎堂」の文字を三段に書してなるものであり、構成中の文字部分に相応した「タイガーシュガーロウコドウ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 (3)本件商標と引用商標の類否について 本件商標及び引用商標の構成において、老虎山図形と他の文字部分とは、視覚的に分離して看取されるというべきであり、それぞれが自他役務の識別標識としての機能を有するものといえる。 そして、本件商標及び引用商標は、いずれも老虎山図形と他の文字部分が それぞれ自他役務の識別標識の機能を果たす要部として認識されるものである。 そこで、両商標の構成中の老虎山図形を比較すると、本件商標の老虎山図形が黒地の白抜きで描かれ、引用商標構成中の老虎山図形は、白地に黒色で描かれている点において差異はあるものの、いずれも、「虎」の文字、山の図形及び虎の模様を想起させる図柄を同じ位置に配してなるものであるから、本件商標と引用商標の老虎山図形は、外観上類似するものと判断するのが相当である。 そうすると、本件商標と引用商標とは、文字部分の称呼が相違し、観念は比較できないとしても、独立して自他役務の識別標識の機能を果たす要部といえる老虎山図形を共通にする互いに類似するものと判断するのが相当である。 3 本件商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否について 本件商標の指定役務中「喫茶店における飲食物の提供,簡易食堂における飲食物の提供,ホテルにおける宿泊施設の提供,軽食堂における飲食物の提供」と引用商標の指定役務「カフェテリアにおける飲食物の提供,レストランにおける飲食物の提供,セルフサービス式レストランにおける飲食物の提供,ホテルにおける宿泊施設の提供,ケータリング(飲食物),軽食堂における飲食物の提供,うどん及びそばの提供,和食の提供,喫茶店における飲食物の提供,バーにおける飲食物の提供」とは、同一又は類似する役務である。 4 商標法第4条第1項第10号について 商標法第4条第1項第10号は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用するもの」と規定している。 そして、上記1のとおり、引用商標が、外国及び我が国において、申立人役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知、著名性を獲得していたとは認められないものである。 そうすると、上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とが互いに類似するものであり、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務とが同一又は類似する役務であるとしても、本件商標は、同号の適用要件を欠くものといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第15号について (1)引用商標の周知、著名性について 上記1のとおり、引用商標が、外国及び我が国において、申立人役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知、著名性を獲得していたとは認められないものである。 (2)本件商標と引用商標との類似性の程度について 上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標は、文字部分の称呼が相違し、観念は比較できないとしても、独立して自他役務の識別標識の機能を果たす要部である老虎山図形を共通にするものであるから類似性は高いものである。 (3)本件商標の指定役務と引用商標の指定役務との関連性、需要者の共通性について 本件商標の指定役務と引用商標の指定役務とは、同一又は類似する役務であり、密接な関連性を有し、また、需要者の範囲も共通にするものである。 (4)出所の混同のおそれについて 上記(1)ないし(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、類似性の程度が高く、本件商標の指定役務は、引用商標の指定役務と密接な関連性を有し、需要者の範囲を共通にするとしても、引用商標は、申立人役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に外国及び我が国において、需要者の間に広く認識されているとはいえないものである。 そうすると、本件商標は、本件商標権者が、これをその指定役務について使用しても、これに接する需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないと判断するのが相当である。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 6 商標法第4条第1項第7号について 申立人は、「引用商標は申立人の創造に係る商標であり、構成上顕著な特徴を有するものであるにも関わらず、本件商標と引用商標は、独創性を有する『老虎山図形』の特徴が酷似していること、本件商標権者は、日本のみならず、米国、韓国及びマカオにおいて本件商標に係る商標を登録出願していること、マカオにおいては、申立人からマカオにおけるタイガーシュガーブランドの店舗を運営する許可を得ている『荘誠国際企業有限公司』が、本件商標権者のマカオにおける登録出願に対して訴訟を提起していることから、本件商標は、本来権利を取得すべき申立人による引用商標の使用を阻害する出願となっており、本件商標は登録出願の経緯に社会的正当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものである。」旨を主張している。 しかしながら、申立人は、上記の主張を行うのみで、本件商標の登録出願の経緯に社会的正当性を欠くものであることを示す具体的な証拠を提出していない。 また、他に、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべき事情は見いだせず、かつ、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる証拠も発見することができない。 そうすると、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 7 商標法第4条第1項第19号該当性について 申立人は、「引用商標が日本において商標登録されていないことを奇貨として、申立人の日本国内への参入を阻止する、又は引用商標の顧客吸引力を利用ないし稀釈化させる等の本件商標権者の不正の目的を認定又は推認することができる。」旨を主張する。 しかしながら、本件商標と引用商標とは、類似性の程度が高く、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務とは密接な関連性を有し、その需要者の範囲を共通にするとしても、引用商標は、外国及び我が国において、申立人役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、需要者の間に広く認識されているとはいえないものであるから、本件商標に接する需要者が引用商標を連想又は想起させるものではない。 また、引用商標の登録出願日に、申立人が、我が国に進出する計画を有していたとしても、本件商標権者がその計画を知っていたことを証明する証拠の提出はなく、かつ、日本1号店の開店は、本件商標の登録査定後である。 さらに、本件商標が不正の利益を得る目的、申立人に損害を加える目的等の不正の目的をもって使用するものというべき事情も見いだせない。 そうすると、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が引用商標を認識した上で、かかる商標の周知、著名性に便乗し、不当に利益を得る等の目的、あるいは、申立人の日本国内への参入を阻止する目的等の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足る事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 8 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標)![]() 別掲2(引用商標) ![]() |
異議決定日 | 2021-05-07 |
出願番号 | 商願2018-105988(T2018-105988) |
審決分類 |
T
1
651・
222-
Y
(W43)
T 1 651・ 22- Y (W43) T 1 651・ 271- Y (W43) T 1 651・ 25- Y (W43) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 白鳥 幹周 |
特許庁審判長 |
齋藤 貴博 |
特許庁審判官 |
豊田 純一 小俣 克巳 |
登録日 | 2019-08-09 |
登録番号 | 商標登録第6170319号(T6170319) |
権利者 | 老虎堂(上海)餐飲管理有限公司 |
商標の称呼 | ローコサン、ローコヤマ、タイガーマウンテン |
代理人 | 服部 雅紀 |