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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W293035 審判 一部申立て 登録を維持 W293035 審判 一部申立て 登録を維持 W293035 審判 一部申立て 登録を維持 W293035 審判 一部申立て 登録を維持 W293035 審判 一部申立て 登録を維持 W293035 |
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管理番号 | 1378979 |
異議申立番号 | 異議2021-900045 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-02-01 |
確定日 | 2021-10-07 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6316341号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6316341号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6316341号商標(以下「本件商標」という。)は,「Beyond meal」の文字を標準文字で表してなり,令和元年8月15日に登録出願,第29類「肉製品,代用肉,加工水産物」,第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,オンラインによる飲食料品の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む,第5類,第9類,第29類,第30類,第32類,第35類,第39類,第42類ないし第44類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同2年10月13日に登録査定,同年11月13日に設定登録されたものである。 第2 登録異議申立人が引用する商標等 1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は,以下のとおりであり(以下,これらをまとめていうときは,「引用商標」という。),いずれも有効に存続しているものである。 (1)国際登録第1139253号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:BEYOND MEAT 国際登録出願日:2012年10月22日(優先権主張:United States of America 2012年(平成24年)4月24日) 設定登録日:平成25年7月5日 指定商品:第29類「Meat substitutes; vegetarian meat products; plant-based meat substitutes.」 (2)登録第6131994号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:ビヨンド・ミート(標準文字) 登録出願日:平成30年4月2日 設定登録日:平成31年3月22日 指定商品:第29類「代用肉,完全菜食主義者用及び菜食主義者用の肉製品,植物を主原料とする代用肉,肉製品」 (3)国際登録第1171064号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:別掲1のとおり 国際登録出願日:2013年7月17日(優先権主張:United States of America 2013年(平成25年)1月18日) 設定登録日:平成26年5月16日 指定商品:第29類「Meat substitutes; vegetarian meat products; plant-based meat substitutes.」 (4)国際登録第1389738号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 国際登録出願日:2017年11月21日(優先権主張:United States of America 2017年(平成29年)5月24日) 設定登録日:平成30年11月9日 指定商品:第29類「Meat substitutes; vegan and vegetarian meat products; plant-based meat substitutes.」 (5)国際登録第1226417号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の構成:BEYOND BEEF 国際登録出願日(事後指定):2018年3月1日 設定登録日:平成30年12月28日 指定商品:第29類「Meat substitutes; vegetarian meat products; plant-based meat substitutes.」 (6)登録第6131995号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の構成:ビヨンドビーフ(標準文字) 登録出願日:平成30年4月2日 設定登録日:平成31年3月22日 指定商品:第29類「代用牛肉,完全菜食主義者用及び菜食主義者用の牛肉を使用した肉製品,植物を主原料とする代用牛肉,牛肉を使用した肉製品」 (7)国際登録第1226413号商標(以下「引用商標7」という。) 商標の構成:BEYOND CHICKEN 国際登録出願日(事後指定):2018年3月1日 設定登録日:平成30年12月28日 指定商品:第29類「Meat substitutes; vegetarian meat products; plant-based meat substitutes.」 (8)登録第6131996号商標(以下「引用商標8」という。) 商標の構成:ビヨンドチキン(標準文字) 登録出願日:平成30年4月2日 設定登録日:平成31年3月22日 指定商品:第29類「代用鶏肉,完全菜食主義者用及び菜食主義者用の鶏肉を使用した肉製品,植物を主原料とする代用鶏肉,鶏肉を使用した肉製品」 (9)国際登録第1383210号商標(以下「引用商標9」という。) 商標の構成:BEYOND SAUSAGE 国際登録出願日:2017年11月29日(優先権主張:United States of America 2017年(平成29年)6月7日) 設定登録日:平成31年3月29日 指定商品:第29類「Sausages consisting of meat substitutes; vegan and vegetarian sausages; sausages consisting of plant-based meat substitutes.」 (10)登録第6131991号商標(以下「引用商標10」という。) 商標の構成:ビヨンドソーセージ(標準文字) 登録出願日:平成30年4月2日 設定登録日:平成31年3月22日 指定商品:第29類「代用ソーセージ,完全菜食主義者用及び菜食主義者用のソーセージ,植物を主原料とする代用ソーセージ,ソーセージ」 (11)国際登録第1322180号商標(以下「引用商標11」という。) 商標の構成:THE BEYOND BURGER 国際登録出願日:2016年8月22日(優先権主張:United States of America 2016年(平成28年)2月24日) 設定登録日:平成29年4月21日 指定商品:第29類「Meat substitutes; vegan and vegetarian meat products; plant-based meat substitutes.」 (12)登録第6131993号商標(以下「引用商標12」という。) 商標の構成:ザ・ビヨンド・バーガー(標準文字) 登録出願日:平成30年4月2日 設定登録日:平成31年3月22日 指定商品:第29類「代用肉,完全菜食主義者用及び菜食主義者用の肉製品,植物を主原料とする代用肉,肉製品」 (13)国際登録第1493881号商標(以下「引用商標13」という。) 商標の構成:BEYOND BURGER 国際登録出願日:2019年9月17日(優先権主張:United States of America 2019年(平成31年)3月19日) 設定登録日:令和3年5月28日 指定商品:第29類「Meat substitutes; vegan and vegetarian meat products; plant-based meat substitutes.」 (14)国際登録第1467517号商標(以下「引用商標14」という。) 商標の構成:GO BEYOND 国際登録出願日:2019年4月18日(優先権主張:United States of America 2018年(平成30年)10月22日) 設定登録日:令和2年10月2日 指定商品:第29類「Meat substitutes; vegan and vegetarian meat products; plant-based meat substitutes.」 2 申立人が,本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は,「BEYOND MEAT」の文字を表してなり,申立人の業務に係る代替肉を表示するものとして,国内外の食肉及び肉製品を取り扱う業界における需要者の間で広く認識されていたとするものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は,その指定商品及び指定役務中,第29類,第30類及び第35類の全指定商品・役務(以下「申立てに係る商品及び役務」という。)について,商標法第4条第1項第11号,同項第15号,同項第19号及び同項第7号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきである旨申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第110号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 「BEYOND MEAT」及び「ビヨンド・ミート」の名声 (1)ビヨンド・ミート社の会社沿革及び製品 申立人(以下「ビヨンド・ミート社」という場合がある。)は,植物ベースの代替肉(甲42)の開発及び製造販売を手掛ける2009年創業の米国法人であり,「BEYOND MEAT」及びその表音「ビヨンド・ミート」を営業名及びハウスマークとして現在まで継続的に使用している(甲2?甲106)。 「BEYOND MEAT」製品は,全世界50か国,総計5万8000を超える小売店及びレストラン等で販売又は提供されており,その中には,日本でも一般によく知られている大手のファストフード及びレストランチェーンのデニーズ(Denny’s)(甲36),ダンキン・ドーナツ(Dunkin’),サブウェイ(SUBWAY)や,日本にも出店しているレストランチェーンのTGIフライデーズ(TGI FRIDAYS)(甲32,甲33)及びハンバーガーショップチェーンのカールス・ジュニア(Carl’s Jr.)(甲34,甲35),さらには,世界最大のスーパーマーケットチェーンのウォルマート(Walmart),オーガニック食品を扱う大手スーパーマーケットチェーンのホールフーズ・マーケット(WHOLE FOODS MARKET)などが含まれる(甲3)。 2016年に販売を開始した「BEYOND MEAT」ブランドのバーガー用バティ「The Beyond Burger」(ザ・ビヨンド・バーガー)[現製品名「Beyond Burger」(ビヨンド・バーガー)](甲6,甲10?甲12)は,発売後1300万個以上を売り上げる大ヒット商品となり,米国全土の約1万5000件のレストラン及び食料品店で販売された(甲13)。「BEYOND MEAT」製のバーガー用パティ「Beyond Burger」(ビヨンド・バーガー)は,牛肉で作った挽肉と同じような外観,調理法,そして味を実現させた世界で唯一の完全植物由来(遺伝子組換作物・大豆・グルテンフリー)のハンバーガー用ミートパティであり,スーパーマーケットや食料品店等の「精肉」コーナーに陳列された初めての植物性代替肉として食肉及び肉製品を取り扱う業界で認知されている(甲3,甲4)。 ビヨンド・ミート社は,マイクロソフト社創業者のビル・ゲイツ氏,映画俳優レオナルド・ディカプリオ氏,Twitter創業者のビズ・ストーン氏及び同エヴァン・ウイリアムズ氏,クライナー・パーキンス社(米国ベンチャーキャピタル),マクドナルド社の前CEOのドン・トンプソン氏,オネストティー社創業者のセス・ゴールドマン氏,米国動物愛護協会,世界最大の食品メーカーのタイソンフーズ社,米国最大のフードサービス企業のシスコ社などの数々の世界的に著名な実業家,投資家,大手食品メーカー等からの出資を受けており,日本からは大手総合商社の三井物産株式会社が出資していることでもよく知られている(甲4,甲14,甲16,甲18,甲19,甲25?甲31)。 (2)第三者によるニュース記事及びテレビ放送番組等における報道 有名経済・ビジネス誌や日刊新聞等のネットニュース記事,畜産業界紙のソーシャルメディア,日本貿易振興機構(JETRO),地上波テレビ放送番組など様々な媒体を通じて,申立人の事業内容,「BEYOND MEAT」ブランドの代替肉とは何か,「BEYOND MEAT」製バーガー用バティ「Beyond Burger」(ビヨンド・バーガー)などの個別製品などが紹介され,また,申立人がビル・ゲイツ氏,レオナルド・ディカプリオ氏など多くの著名な投資家及び実業家,大手食品メーカー,日本の大手総合商社の三井物産株式会社などからも資本提供を受けている先進的企業であること等が継続的に報道されてきた(甲16?甲31,甲37?甲41)。 (3)諸外国における商標登録及び出願状況 申立人は,引用商標に示す国内登録及び出願に加えて,「BEYOND MEAT」の文字を構成中に含む商標及びロゴマーク,並びに現地公用語によるこれらの文字を音訳した商標について,日本を含む世界38の国及び地域において総計105件の有効な商標登録及び出願を所有している(甲58?甲102)。 (4)小括 以上の事柄を総合すれば,申立人の使用に係る「BEYOND MEAT」及びその表音「ビヨンド・ミート」は,本件商標の登録出願時及び査定時には,申立人の業務に係る代替肉(申立人商品)を表示するものとして,国内外の食肉及び肉製品を取り扱う業界における需要者の間で広く認識されていたものである。 2 商標法第4条第1項第11号について (1)外観における類似 本件商標の構成文字「Beyond meal」と,引用商標1の構成文字「BEYOND MEAT」並びに引用商標3及び引用商標4の構成中の「BEYOND/MEAT」の文字部分を比較すると,スペースを含む全11文字中,語頭からの連続する10文字「B」,「E(e)」,「Y(y)」,「O(o)」,「N(n)」,「D(d)」,「 (スペース)」,「M(m)」,「E(e)」及び「A(a)」がその配列も含めて一致し,わずかに語尾の1文字「l」と「T」が異なるにすぎない。しかも,両者の唯一の相違点である「l」と「T」の文字は,縦の直線が強調された単純な字形である点で視覚的印象が酷似する。 引用商標2は片仮名の「ビヨンド・ミート」からなる商標である。本件商標の構成文字の仮名文字による音訳「ビヨンド・ミール」と引用商標2を比較した場合,両者は全8文字中,語頭からの連続する7文字「ビ」,「ヨ」,「ン」,「ド」,「・」,「ミ」及び「ー」がその配列も含めて一致し,わずかに語尾の1文字「ル」と「卜」が異なるにすぎない。 つまり,本件商標とこれらの引用商標は,語尾の1文字を除く全構成文字がその配列も含めて一致し,外観印象が極めて近似するから,互いを見間違い,取り違えるおそれが高い外観上類似のものである。 (2)称呼における類似 本件商標からは,その構成文字に基づき「ビヨンドミール」の称呼が生じる。 これに対して,引用商標1及び引用商標2からは,その構成文字に基づき「ビヨンドミート」の称呼が生じる。また,引用商標3及び引用商標4からも,構成中の「BEYOND/MEAT」の文字部分に基づき「ビヨンドミート」の称呼が生じる。 本件商標とこれらの引用商標の称呼について比較すると,長音を含めた全7音中,語頭からの連続する6音「ビ」,「ヨ」,「ン」,「ド」,「ミ」及び「ー」がその配列も含めて一致し,わずかに語尾の1音「ル」と「卜」が相違するにすぎない。一般に,語尾の音は弱く不明瞭に発音されがちであり,正確に聞き取れないことが多い。 したがって,本件商標とこれらの引用商標は互いに聞き誤るおそれが高い称呼上類似のものである。 (3)観念における類似 本件商標の構成文字「Beyond meal」は,辞書等に掲載されている成語ではなく,造語として認識されるものであるが,「Beyond」の文字は英語で「?の向こうに,?よりも過ぎて,?を超えて」等を意味する「beyond」の語(甲108)に通じるものであり,「meal」の文字は英語で「食事,一度の食物,一食(分)」等を意味する「meal」の語(甲110)に通じるものであり,これらはいずれも比較的平易な英単語である。 したがって,「Beyond meal」の文字からは,「beyond」と「meal」の2語を結合したものとしての観念が容易に想起連想される。 これに対して,引用商標1ないし引用商標4の構成中の「BEYOND MEAT」,「ビヨンド・ミート」及び「BEYOND/MEAT」の文字は,申立人が案出した創造標章であって造語として認識されるものであるが,「BEYOND」又はその音訳「ビヨンド」の文字は上記のとおりの「beyond」の語(甲108)に通じるものであり,「MEAT」又はその音訳「ミート」は英語で「食用獣肉,食用部分,肉,内容,食事,晩さん」等を意味する「meat」の語(甲109)に通じるものであり,これらはいずれも比較的平易な英単語である。 したがって,「BEYOND MEAT」,「ビヨンド・ミート」及び「BEYOND/MEAT」の文字からは,「beyond」と「meat」の2語を結合したものとしての観念が容易に想起連想される。 本件商標とこれらの引用商標の観念について比較すると,両者はその語頭に「beyond」の観念(?の向こうに,?よりも過ぎて,?を超えて)を包含する点が共通する。 さらに,「meal」(本件商標)と「meat」(引用商標)が表す意味は厳密に同一のものとはいえないとしても,両者共に「口に入れるもの」,「食物」を直感させる語である点を共通にする。加えて,「meat」には「食事」という意味もあることが英和辞典に記載されており(甲109),「meal」と「meat」は同じ意味(食事)を表す場合があることが明らかである。 つまり,「meal」と「meat」は,観念が著しく近似する語ということができる。 したがって,「meal」と「meat」のぞれぞれの冒頭に「beyond」の語を付加してなる「Beyond meal」(本件商標)と「BEYOND MEAT」(引用商標)からは,ほぼ同一若しくは極めて似通った観念が想起連想される。 よって,本件商標とこれらの引用商標は,互いを取り違え,混同するおそれが極めて高い観念上類似のものである。 (4)以上より,本件商標は,外観,称呼,観念のすべておいて上記引用商標と誤認混同するおそれが高い類似のものであって,これらの引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品又は役務に使用するものである。当該引用商標は本件商標よりも先に登録出願されたものである。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 商標法第4条第1項第15号について 本件商標は,申立人の使用に係る「BEYOND MEAT」と外観,称呼及び観念のすべてにおいて類似するものであり,その類似性の程度は極めて高い。 本件商標の指定商品及び指定役務(以下「本件指定商品等」)は,申立人商品と同一又は類似のもの,あるいは,これらと販売場所,用途,効能,需要者を共通にする極めて関連性の高い飲食料品及びその小売等役務を多く包含している。 本件商標の構成文字「Beyond meal」は,ビヨンド・ミート社の「BEYOND BURGER」,「BEYOND SAUSAGE」,「BEYOND BEEF」等と同じ規則で構成されたものとして容易に認識理解され,同社の「BEYOND MEET」ブランドの個別製品名の一つとして誤信されるおそれが極めて高い。 本件指定商品等の最終的な需要者は一般消費者であるから,通常の需要者の注意力の程度は高いものとはいえない。 「BEYOND MEAT」の表示は,申立人が案出した創造標章であり,極めて強い自他商品識別力,出所表示機能を有する。 したがって,本件商標が本件指定商品等に使用されたときには,申立人の業務に係る代替肉を表示する出所識別標識として広く認識されている「BEYOND MEET」の出所表示力が希釈化することは明白である。 また,商標権者による本件商標の使用は,申立人の開発技術及び営業努力によって「BEYOND MEAT」に化体した名声,信用力,顧客吸引力にフリーライドする行為であり,申立人に経済的,精神的損害を与えるものといわざるを得ない。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 商標法第4条第1項第19号について 本件商標は,その登録出願時には申立人の代替肉を表示するものとして国内外の需要者の間で広く認識されていた「BEYOND MEAT」と外観,称呼,観念のすべてにおいて類似する。 商標権者が,本件商標の登録出願時において,ビヨンド・ミート社及びそのハウスマークである「BEYOND MEAT」,さらには同社の取り扱う「BEYOND MEAT」ブランドの代替肉製品,並びに「BEYOND BURGER」,「BEYOND SAUSAGE」,「BEYOND BEEF」等の語頭に「BEYOND」を冠した個別製品名について不知で,「BEYOND MEAT」ブランドを容易に想起連想させ,これと誤認混同を生じさせる「Beyond meal」の文字を偶然に採択したとは考え難い。 本件商標は,申立人の「BEYOND MEAT」ブランドの名声,信用力,顧客吸引力にフリーライドして不正な利益を得る目的をもって使用するものといわざるを得ない。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。 5 商標法第4条第1項第7号について 本件商標は,申立人及びその「BEYOND MEAT」ブランドの著名性と顧客吸引力にフリーライドする意図等,不正の目的をもって採択されたものといわざるを得ない。本件商標の登録出願の経緯には著しく社会的妥当性を欠くものがあり,公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神及び国際信義に反することが明らかである。 したがって,本件商標は,公の秩序を害するおそれがあるものというべきである。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。 第4 当審の判断 1 申立人が引用する商標「BEYOND MEAT」の周知性について (1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,次の事実が認められる。 ア 申立人は,2009年に創設された米国法人であり,植物ベースの代替肉(以下「申立人商品」という。)の製造販売等を行っている(甲3,甲14,甲15,甲17?甲24)。 イ 申立人商品には,「BEYOND BURGER」,「BEYOND SAUSAGE」,「BEYOND BEEF」などがあり,それらには商標「BEYOND MEAT」の文字(以下「使用商標」という。)が表示されている(甲3,甲5?甲9)。 ウ 申立人商品は,ヨーロッパ,カナダ,オーストラリア,メキシコなど50か国を超える国・地域で販売されている(甲4)。 エ 申立人商品は,2017年(平成29年)12月頃には全米で5000以上の食料品店で販売され(甲29),2018年(平成30年)1月頃には全米で2万4000以上の食料品店やレストランで取り扱われている(甲30)。 オ 申立人商品のバーガー用パティは,2018年(平成30年)5月頃までに全米で1300万個以上売り上げた(甲4)。 カ 申立人に対して,ビル・ゲイツ氏,レオナルド・ディカプリオ氏などの著名人,タイソン・フーズなどの大手食品メーカーなどの他,我が国の三井物産株式会社が出資している(甲4,甲16,甲22)。 キ 申立人及び申立人商品は,少なくとも2016年(平成28年)12月から2019年(令和元年)11月までの間に我が国の新聞社などのウェブサイトに度々掲載され,そのほとんどにおいて「ビヨンド・ミート」又は「Beyond Meat」と表記されている(甲15?甲23,甲38,甲39)。 (2)上記(1)アないしキの事実からすれば,使用商標「BEYOND MEAT」は,本件商標の登録出願日(令和元年8月15日)前から,申立人の業務に係る商品(植物ベースの代替肉)を表示するものとして,米国における需要者の間に広く認識されている商標であって,その状況は本件商標の登録査定日(令和2年10月13日)はもとより,現在まで継続しているものと判断するのが相当である。 しかしながら,「BEYOND MEAT」を付した商品について,我が国における販売数,売上高,市場シェアなどの販売実績,使用地域,並びに広告宣伝の方法,期間,地域及び規模を示す具体的な証左は見いだせない。 そうすると,使用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品(植物ベースの代替肉)を表示するものとして,我が国における需要者の間に広く認識されているものとは認めることができない。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は,「Beyond meal」の文字を表してなるところ,構成中の「Beyond」の文字が「?の向こう(側)に,?を越えて,?を過ぎて」の意味を有し,「meal」の文字が「食事,食べ物」の意味を有する語であるとしても,これらを結合した上記構成においては,これに接する取引者,需要者は,その構成全体で特定の意味合いを想起させることのない一体不可分の造語として理解,認識するとみるのが相当である。 そうすると,本件商標は,その構成文字に相応して,「ビヨンドミール」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標1は,「BEYOND MEAT」の文字,引用商標2は,「ビヨンド・ミート」の文字,引用商標3は,別掲1のとおり,四角形の中にフォークの先端の図形と「BEYOND」及び「MEAT」の文字を二段に白抜きで表してなり,引用商標4は,別掲2のとおり,左横に丸い穴が空いた横長のカード上の図形内に小さく「THE FUTURE OF PROTEIN」の文字と,中央部に大きく「BEYOND」(「O」の内部にフォークの先端の図形を表してなる。)及び「MEAT」の文字を二段に横書きしてなり,引用商標5は,「BEYOND BEEF」の文字,引用商標6は,「ビヨンドビーフ」の文字,引用商標7は,「BEYOND CHICKEN」の文字,引用商標8は,「ビヨンドチキン」の文字,引用商標9は,「BEYOND SAUSAGE」の文字,引用商標10は,「ビヨンドソーセージ」の文字,引用商標11は,「THE BEYOND BURGER」の文字,引用商標12は,「ザ・ビヨンド・バーガー」の文字,引用商標13は,「BEYOND BURGER」の文字,引用商標14は,「GO BEYOND」の文字を表してなり,それらの構成は,外観上まとまりよく一体的に表されているものである。 そうすると,引用商標において,要部と認められる上記構成文字は,辞書等に掲載がなく,特定の意味合いを認識させることのない一種の造語として理解されるとみるのが相当である。 してみれば,引用商標は,それぞれの構成文字に相応して「ビヨンドミート」,「ビヨンドビーフ」,「ビヨンドチキン」,「ビヨンドソーセージ」,「ザビヨンドバーガー」,「ビヨンドバーガー」,「ゴービヨンド」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標とを比較すると,外観においては,それぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成であるから,一部に「BEYOND」のつづり字を含むとしても,構成文字に差異を有し,図形の有無等外観上明らかに異なり,それぞれの全体から受ける印象も大きく異なるものであるから,両商標は,外観上,相紛れるおそれはない。 また,本件商標から生じる「ビヨンドミール」の称呼と,引用商標から生じる「ビヨンドミート」,「ビヨンドビーフ」,「ビヨンドチキン」,「ビヨンドソーセージ」,「ザビヨンドバーガー」,「ビヨンドバーガ」,「ゴービヨンド」の称呼とは,その構成音数,構成音の差異により,明瞭に聴別し得るものである。 さらに,本件商標及び引用商標は,上記のとおり,いずれも特定の観念は生じないものであるから,両商標は,観念上,比較することができない。 してみれば,本件商標と引用商標とは,観念において比較することができないとしても,外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから,両商標が需要者に与える印象,記憶,連想等を総合してみれば,両商標は,非類似の商標というべきである。 (4)小括 以上のとおり,本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから,両商標の指定商品又は指定役務が同一又は類似のものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について 上記1(2)のとおり,使用商標「BEYOND MEAT」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品(植物ベースの代替肉)を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。また,上記2(3)のとおり,本件商標と使用商標とは非類似の商標であって別異の商標というべきである。 そうすると,本件商標は,本件商標権者が,これを申立てに係る指定商品及び役務について使用をしても,取引者,需要者が,使用商標を連想又は想起することはなく,その商品及び役務が申立人若しくは同人らと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他,本件商標が使用商標と出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第19号該当性について 上記1(2)のとおり,使用商標は,本件商標の登録出願日前から,申立人の業務に係る商品(植物ベースの代替肉)を表示するものとして,米国における需要者の間に広く認識されているものであるとしても,上記2(3)のとおり,本件商標と使用商標とは非類似の商標であって別異の商標というべきであるから,本件商標が商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くことは明らかである。 また,申立人が提出した証拠からは,本件商標権者が,使用商標の顧客吸引力や信頼にただ乗りし,不正の利益を得ることや他人に損害を与えること等,不正の目的をもって使用することを認めるに足りる証左は見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第7号該当性について 上記1(2)のとおり,使用商標「BEYOND MEAT」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品(植物ベースの代替肉)を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。また,上記4のとおり,本件商標権者が,使用商標の顧客吸引力や信頼にただ乗りし,不正の利益を得ることや他人に損害を与えること等,不正の目的をもって使用することを認めるに足りる証左は見いだせない。 また,本件商標は,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないこと明らかであり,さらに,その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くなど,公序良俗に反するものというべき証拠も見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。 6 まとめ 以上のとおり,本件商標は,申立てに係る商品及び役務について,商標法第4条第1項第7号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく,その登録は,同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 引用商標3 ![]() 別掲2 引用商標4 ![]() |
異議決定日 | 2021-09-28 |
出願番号 | 商願2019-110214(T2019-110214) |
審決分類 |
T
1
652・
262-
Y
(W293035)
T 1 652・ 22- Y (W293035) T 1 652・ 222- Y (W293035) T 1 652・ 263- Y (W293035) T 1 652・ 271- Y (W293035) T 1 652・ 261- Y (W293035) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 宮崎 愛、吉田 昌史 |
特許庁審判長 |
半田 正人 |
特許庁審判官 |
平澤 芳行 鈴木 雅也 |
登録日 | 2020-11-13 |
登録番号 | 商標登録第6316341号(T6316341) |
権利者 | 日清食品ホールディングス株式会社 |
商標の称呼 | ビヨンドミール、ビヨンド、ミール |
代理人 | 中村 仁 |
代理人 | 土生 真之 |
代理人 | 大塚 啓生 |
代理人 | 柳田 征史 |