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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1378964 
異議申立番号 異議2021-900010 
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-01-06 
確定日 2021-09-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第6307526号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6307526号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6307526号商標(以下「本件商標」という。)は、「PAUL HOUSE」の文字を標準文字で表してなり、令和元年10月10日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」を指定役務として、同2年9月8日に登録査定され、同年10月23日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する商標(以下「引用商標」という。)は、「PAUL」の文字からなり、同人が「パン、菓子類」の製造・販売、「飲食物の提供」に係る業務に使用する商標として、日本国内で周知著名であるとするものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第49号証を提出した。
1 具体的理由
(1)申立人について
申立人は、「パン」、クロワッサン等の「ヴィエノワズリー」、生ハムやカマンベールチーズなど厳選された素材を使用した「サンドイッチ」、エクレール・ショコラ、シュー・ア・ラ・クレーム、ミルフィーユなどのフランスの伝統的焼き菓子「ガトー」の製造・販売、これら飲食物の提供を主たる業務とする、1889年にフランス北部で創業された企業である(甲2、甲5)。
19世紀から5代にわたり、130年以上の歴史を有する「アルチザンベーカリー」(熟練したパン職人によるベーカリー)であり(甲2、甲4)、2014年の時点で全世界34か国、620店舗以上(フランス375店舗、他国250店舗)が存在し、10,500人以上の従業員を有していた(甲3)。その後の約6年間に出店国は14か国増え、現在はアメリカ大陸4か国、アフリカ8か国、ヨーロッパ18か国、中東8か国、アジア10か国の計48か国で事業を行っている世界的な企業である(甲6)。
日本でも、現在までに1都1道2府4県に計26の店舗を有しているところ、羽田空港第2旅客ターミナルビル内フードプラザ店舗を始め、多数の人が集まり、行き交う場所などを選んで出店を行ってきている。具体的には、複数路線が集まる札幌(北海道)、新宿・立川・四谷・町田・北千住・神楽坂(飯田橋)(以上、東京都)、あざみ野・川崎・桜木町(以上、神奈川県)、大宮(埼玉県)などの各駅の駅中やこれに直結、隣接した商業ビル、有名百貨店の中などである。
また、東京メトロ六本木一丁目駅改札目の前にある「六本木一丁目店」、神戸・元町商店街内にある「神戸元町店」など、お洒落なイメージのある繁華街・住宅地への出店も行っており、申立人の引用商標は、店舗数から感じられる以上に多くの取引者、需要者の目に触れる状況となっている(甲7)。
例えば、日本における最新店舗は神奈川県内「桜木町駅」に隣接する商業ビル「Collet te・Mare (コレットマーレ)」にあるが、店舗人口には大きく「PAUL」のサインが表示されている(甲8)。
これら日本における事業のため、申立人及びその関連会社である「オルデー」名義で、「PAUL」、「ポール」及び「Le Paul」など計9件を、「飲食物の提供」及び「菓子及びパン」を中心に商標登録している(甲9?甲17)。
さらに、申立人が日本で配布するパンフレット(甲18)は、申立人が提供する代表的なパン生地の1つである「パート・フラマン」を紹介する内容となっている。
申立人の日本店舗における事業形態では、店舗内において飲食物の提供を行うほか、テイクアウトも可能となっている(甲19?甲25)。
甲第26号証は、「おうちでPAULセット」と題する、申立人製造の焼き菓子・紅茶ティーバッグ・ケーキ皿・マグカップ及びプレイスマットのセットの紹介、並びに「PAUL」商品が宅配によっても利用できることを示したチラシであるところ、「おうちでPAULセット」では、焼き菓子のパッケージのほか、ティーバッグ・ケーキ皿・マグカップ及びプレイスマットのいずれにも引用商標を表示した上で販売を行っている。
日本では馴染みの薄いような菓子・パン、新商品、季節商品などをピックアップして紹介しているパンフレット(甲27?甲32)、申立人による「コーヒーと紅茶フェア」開催を紹介するパンフレット(甲33、甲34)のほか、申立人が年間を通じて作成・配布しているパンフレットの写し(甲35?甲39)は、「バレンタインデー」、「SakuraFestival」(春)、「パリ祭」(7月14日、革命記念日)、「ENJOYSummer」(夏)、「クリスマス」など、時期にあった販売促進活動を継続して行っていることを示すものである。
(2)引用商標の周知性について
本格的なフランスの「アルチザンベーカリー」が提供する商品のユニークさ、店舗の立地並びに上記のような大々的な広告・販売促進活動などを通じ、申立人の引用商標は、申立人による「パン、菓子類」の製造・販売、「飲食物の提供」に係る業務(以下「申立人商品及び役務」という。)を表すものとして日本国内では著名となっており、これらの業務以外にも「ティーバッグ・ケーキ皿・マグカップ・プレイスマット」に引用商標を使用しているほか(甲26)、引用商標を付したエコバッグも製造・販売し、人気を博している(甲40、甲41)。
また、申立人の事業を紹介する本が制作され、これとセットで引用商標が付された「クーラーバッグ」等が販売されており(甲42?甲46)、引用商標が付されたバッグは、その人気のため、フリーマーケットアプリで多数取引がなされるほどにもなっている(甲47)。
(3)出所の混同のおそれ
以上のとおり、引用商標は、申立人商品及び役務を表すものとして大々的に使用され、日本国内で周知・著名となっていることに加え、「エコバッグ・保冷バッグその他のバッグ・ティーバッグ・ケーキ皿・マグカップ・プレイスマット」などの周辺商品にも使用が拡大し、人気を博している。
一方、本件商標の指定役務の分野においては、「美味しいパン」を提供する宿泊施設が人気を博し、旅行ガイド情報などのウェブサイトでは、「『ホテルバン朝食』6選」、「パンで選ぶホテル朝食5選」(甲48、甲49)といった「ホテルが提供するパン」に着目した記事が多数見受けられる状況である。
すなわち、「パン、菓子類」の製造・販売に係る業務及び「飲食物の提供」のうちでも、とりわけ「パンの提供」に係る業務と、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」に係る業務の間には密接な関連があるといえる。
このような状況において、「パン、菓子類」及び「パン、菓子類の提供」に係る申立人の著名な引用商標「PAUL」を含む、本件商標「PAUL HOUSE」が「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」に使用された場合には、需要者は当該役務が申立人と何らかの関係があるかのように誤認するおそれがあることは明白である。
2 むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の提出した証拠及び主張並びに職権調査によれば、引用商標の周知性については、次のとおりである。
ア 申立人及び引用商標について
申立人は、1889年にフランス北部で創業された、パン及び焼き菓子等の製造・販売、これら飲食物の提供を主たる業務とする企業である(甲2、甲4、甲5)。
申立人は、2014年の時点で世界34か国(甲3)、現在は48か国で事業を行っており(甲6)、我が国においても空港や百貨店などに出店し、現在までに計26の店舗を有しており、店舗の入り口などに引用商標を表示し(甲7)、飲食物の提供などを行っている(甲19?甲25)。なお、我が国における店舗の運営は、株式会社レアールパスコベーカリーズが行っている(甲7、職権調査)。
また、菓子・パン、新商品、季節商品などの紹介、「コーヒーと紅茶フェア」開催のほか、時期にあった販売促進活動など、申立人は年間を通じてパンフレットを作成・配布している(甲27?甲39)。
これらの業務以外にも「ティーバッグ・ケーキ皿・マグカップ・プレイスマット」に引用商標を使用し、引用商標を付したバッグを製造・販売し、申立人の事業を紹介する本も制作している。(甲26、甲40、甲41、甲42?甲46)。
イ 申立人の商標について
申立人及びその関連会社名義で、「PAUL」、「ポール」、「Le Paul」など計9件を、「飲食物の提供」の指定役務及び「菓子及びパン」の指定商品を中心に商標登録している(甲9?甲17)。
ウ 小活
以上のことからすると、我が国において、引用商標を使用した店舗が存在し、そこでは、パンや焼き菓子のほか、バッグなどが、販売されていることがうかがえる(甲5、甲7、甲8、甲40?甲47、職権調査)。
しかしながら、上記店舗については、我が国における出店時期が明らかにされておらず、加えて、それら店舗の運営は申立人とは異なる株式会社レアールパスコベーカリーズである(甲5、甲7、甲8、甲40?甲47及び職権調査)。
そして、我が国において、引用商標の周知性の度合いを客観的に判断するための資料、すなわち、我が国における申立人の業務に係る商品の販売時期(期間)、販売数、売上高や市場シェアなど販売実績等の事業規模を示す証拠は見いだせず、申立人提出のこれらの証拠によっては、我が国における市場占有率(販売シェア)等の量的規模を客観的な使用事実に基づいて、引用商標の使用状況を把握することができない。
また、申立人の商品の紹介パンフレット(甲26?甲39)については、その頒布先や部数は明らかでなく、引用商標が付されたバッグの紹介や通販サイト(甲40、甲43、甲45、甲47)については、当該ウェブサイトへのアクセス数等も不明であり、その取引状況を具体的に示す取引書類等の提出はないから、申立人提出の上記証拠によっては、引用商標の使用状況を把握することができず、引用商標の周知性の程度を推し量ることができない。
その他、証拠として提出された外国語の証拠資料(甲3、甲4)には、翻訳文の添付がないことから、その内容が明らかとはいえず、また、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間で、申立人商品及び役務を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足る事実は見いだせない。
(2)小括
したがって、提出された証拠によっては、引用商標が、我が国において、申立人商品及び役務を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認められないものである。
2 本件商標と引用商標の類似性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり「PAUL HOUSE」を標準文字で表してなるところ、構成する「PAUL」及び「HOUSE」の文字は、間にスペースが配置されながらも、同書、同大、等間隔で外観上まとまりよく一体的に表されており、「PAUL」及び「HOUSE」の各文字より生じる「ポールハウス」の称呼も、格別冗長というべきものでなく、無理なく一連に称呼できるものである。
そして、本件商標の構成中の「PAUL」が人名を表す英語及び「HOUSE」が「家」を表す英語として辞書に掲載されていることから、全体として「ポールの家」といった漠然とした意味合いを生じるとしても、特定の観念を想起させるものとして親しまれているとまではいえないものである。
加えて、本件商標は、その構成中のいずれかの文字部分を分離抽出し、他の商標と比較検討することが許されるというべき事情は見いだせない。
また、上記1のとおり、「PAUL」の文字は、申立人商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことから、本件商標は、その構成中「PAUL」の文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということはできない。
そうすると、本件商標は、その構成文字全体が一体不可分のものであって、「ポールハウス」のみの称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(2)引用商標について
引用商標は、上記第2のとおり、「PAUL」の文字からなり、該文字に相応し「ポール」の称呼を生じ、「PAUL」の文字は、人名を表す英語として辞書に掲載されているとしても、特定の人物や観念を想起させるものとして親しまれているとまではいえず、上記1のとおり申立人商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことから、特定の観念は生じない。
(3)商標の類似性の程度
本件商標と引用商標との類否を検討すると、外観においては、本件商標の構成文字「PAUL HOUSE」と引用商標の構成文字「PAUL」の比較において、両者は「HOUSE」の文字の有無という差異を有し、これらの差異が両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、両者は容易に見分けることができる。
次に、本件商標から生じる「ポールハウス」と引用商標から生じる「ポール」の称呼を比較すると、後半部における「ハウス」の音の有無という差異を有し、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、両商標は特定の観念を生じないものであるから、両者は、観念上、比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観及び称呼が明らかに相違し、観念において比較することができないから、両者の外観、称呼、観念等によって取引者、需用者に与える印象、記憶等を総合して全体的に考察すれば、両者は同一又は類似の商品について使用するときでも、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
よって、本件商標と引用商標は、たとえ各商標が「PAUL」の文字を構成中に含むとしても、それのみで両者の類似性の程度が高いということはできず、その類似性の程度は低いというべきである。
3 本件商標の指定役務と申立人商品及び役務との関連性について
本件商標の指定役務は、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」であり、一方、申立人商品及び役務は、パン・菓子等の飲食物やそれらの提供であるところ、本件商標の指定役務においては、宿泊に伴うサービスの一環として飲食物を提供したり、宿泊施設内の売店等で飲食物を販売することを考慮すると、本件商標の指定役務と申立人商品及び役務との関係は、一般消費者に向けて流通する商品である点や、飲食を求める一般消費者に向けたサービスである点で、販売部門や流通経路に関連性があり、需要者層も一部重複する場合があるものといえる。
4 出所の混同のおそれ
上記3のとおり、本件商標の指定役務と申立人商品及び役務とは、販売部門や流通経路、また需要者層においてある程度関連性があるとしても、引用商標は、上記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることができないことに加え、上記2(3)のとおり、本件商標とは、類似性の程度は低いものであることからすると、本件商標の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想又は想起するものということはできない。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当せず、同項の規定に違反して登録されたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。


異議決定日 2021-09-17 
出願番号 商願2019-131976(T2019-131976) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W43)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤田 和美 
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 豊田 純一
小出 浩子
登録日 2020-10-23 
登録番号 商標登録第6307526号(T6307526) 
権利者 ポールハウス株式会社
商標の称呼 ポールハウス、ポール、ハウス 
代理人 一色国際特許業務法人 

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