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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W36
審判 全部申立て  登録を維持 W36
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審判 全部申立て  登録を維持 W36
管理番号 1378963 
異議申立番号 異議2020-900331 
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-14 
確定日 2021-09-27 
異議申立件数
事件の表示 登録第6294847号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6294847号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6294847号商標(以下「本件商標」という。)は、「保険のエース」の文字を標準文字で表してなり、令和元年5月8日に登録出願、第36類「生命保険契約の締結の媒介,損害保険の契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引き受け」を指定役務として、令和2年5月12日に登録査定、同年9月23日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
(1)異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、商標法第4条第1項第10号に該当するとし、引用する商標は、申立人が「生命保険の引受け」に使用する「エース保険」(以下「引用商標1」という。)の文字からなるものである。
(2)申立人が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、商標法第4条第1項第11号に該当するとし、引用する登録商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
ア 登録第3021549号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成4年9月9日登録出願、第36類「生命保険の引受け」を指定役務として、同7年1月31日に設定登録されたものである。
イ 登録第4505450号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成12年1月21日登録出願、第36類「災害保険契約及び責任保険契約その他の損害保険契約の締結の代理,災害保険契約及び責任保険契約その他の損害保険契約の損害の査定,災害保険契約及び責任保険契約その他の損害保険契約の引受け」を指定役務として、同13年9月14日に設定登録されたものである。
ウ 登録第5364117号商標(以下「引用商標4」という。)は、「ACE」の欧文字を標準文字で表してなり、平成22年1月22日登録出願、第36類「災害保険契約及び責任保険契約その他の損害保険契約の締結の代理,災害保険契約及び責任保険契約その他の損害保険契約の損害の査定,災害保険契約及び責任保険契約その他の損害保険契約の引受け,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,生命保険保険料率の算出,医療保険の引受,医療保険契約の締結の媒介,医療保険保険料率の算出,海上保険の引受,海上保険契約の締結の媒介,海上保険にかかる損害の査定,個人年金保険の引受,個人年金保険契約の締結の媒介,個人年金保険料率の算出,自動車保険の引受,自動車保険契約の締結の媒介,自動車保険にかかる損害の査定,傷害保険の引受,傷害保険契約の締結の媒介,傷害保険料率の算出,生命保険情報の提供,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,保険に関する助言・情報の提供,旅行傷害保険契約の締結の媒介又は取次,旅行傷害保険契約にかかる損害の査定」を指定役務として、同年10月29日に設定登録されたものである。
(3)申立人が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するとし、引用する商標は、上記引用商標1ないし引用商標4である。
以下、引用商標1ないし引用商標4をまとめて引用商標という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第66号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
ア 引用商標1の周知性
(ア)申立人について
2016年にエース・リミテッドがチャブ・コーポレーションを買収し、その新会社がチャブの社名を引き継ぎ、チャブ・リミテッドとして事業を行っているのが申立人である(甲14?甲18)。
申立人の前身であるエース・リミテッドは、1985年に創業した。
日本においてエース保険の前身であるシグナ損害火災保険株式会社が設立され、1999年シグナコーポレーションの全世界の損害保険事業部門を取得し、日本法人もエースグループの傘下に入りエース損害保険株式会社(略称:エース保険)に社名変更された。
2016年に親会社エース・リミテッドがチャブ・コーポレーションを買収し、これに伴いチャブ・リミテッドに名称変更され、日本法人も2016年にChubb損害保険株式会社(チャブ保険)と名称を変更した。エースは前身のAFIA、シグナを含めると90年以上にわたる実績があり、外資系損害保険会社として長い歴史があったが、チャブ・コーポレーションは、更に長い130年の歴史があり、特に北米市場では高い知名度があることから「Chubb」とした。2016年の統合で資産は約16兆円、総収入保険料は、約4兆円となり、世界最大級の損害保険会社となった。チャブ保険のネットワークで結ばれている代理店は、日本国内に北海道から沖縄まで約2400店あり、いずれも専門性に富んだプロフェッショナル集団である。2019年度チャブ保険は、前年比約8%増の記録的な成長を遂げ、4年連続で業界他社を上回る増収率を記録することができた(甲18)。
日本において、申立人は100%子会社である日本法人を通じて企業火災保険、個人火災保険、新種保険、傷害保険、自動車保険などを提供している。
エース損害保険株式会社及びチャブ損害保険株式会社年次報告(甲14?甲18)によれば、日本における正味収入保険料は、2016年度217億円、2017年度は226億円、2018年度は232億円、2019年度は251億円等となっている。
(イ)広告について
エース・リミテッドの子会社であったエース損害保険株式会社は、商品のパンフレット、2009年の社内報やポスターを制作し、日本国内で配布していた。「エース保険」の語や「エース/ACE」からなる商標が広告において使用されてきた。2004年度の広告では有名芸能人を起用し、年間3000万円から5000万円程の広告費を費やした(甲2?甲10)。
(ウ)取引の実情について
第三者のウェブサイトにおいて、エース損害保険株式会社は、「エース保険」と略称され、申立人はエース保険として需要者に認識され、長年にわたり保険業務を行ってきた(甲19?甲35)。
(エ)我が国及び世界での商標登録について
商標「ACE」は、申立人の保険業務について、多数の国で登録されている。日本においても引用商標を始めとして、「エース」の称呼が生じる語を含む商標を、申立人及び日本法人エース損害保険株式会社を権利者として多数保有しており、「エース/ACE」商標を重要な商標として保護してきた(甲36?甲66)。
以上のように、「エース保険」は、本件商標の出願前から一般的に広く使用されており、また、要部である「エース/ACE」について、我が国を始め世界中で使用され、各国で商標登録を受けて保護を図っている。
イ 本件商標と引用商標1との類否
本件商標は、「保険」「の」「エース」の語が結合して構成され、その構成中「保険」部分は、その指定役務を表すものであり、これが付加されていない「エース」と類似すると判断されるべきである。「の」は、助詞であり特段の意味を有しない。
引用商標1は、申立人の前身の日本法人の略称として使用され、周知となっている。また、「保険」部分は、指定役務の内容を示すものであり、要部は「エース」であるといえる。
本件商標と引用商標1とは要部「エース」が共通し、類似する。
また、仮に本件商標が一連一体の商標であるとしても引用商標1と「保険」「エース」の語が共通し、これが前後に入れ替わったにすぎない。また、本件商標からは、「保険会社のエース」、「保険といえばエース」という観念が生じ、引用商標1からは、「エースという保険会社」、「エースという保険」という観念が生じ、観念も共通するから、一連一体の商標であるとしても、引用商標1と外観、称呼、観念が相紛らわしく類似する。
ウ まとめ
したがって、上記ア及びイにより、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「保険のエース」と横一段書きに表示されており、その要部は「エース」である。
引用商標2は、「エース」の語を図形化したもの、引用商標3は、「ACE」を図形化したもの、引用商標4は、「ACE」よりなるから、それぞれ「エース」の称呼、観念を生ずるものであって、指定役務は保険に関する役務である。
よって、本件商標と引用商標2ないし4は、要部「エース」又は「ACE」部分の称呼や観念が共通し、引用商標2とは片仮名から構成されている点で外観も近似し、相互に相紛らわしく類似する商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
類似性の程度
本件商標と引用商標は前述のとおり類似している。
イ 周知度
前述のとおり、引用商標は、我が国及び外国において周知となっている。
ウ 引用商標が造語よりなるものであるか、構成上顕著な特徴を有するものであるか
引用商標1は、造語であり、引用商標2ないし4は、既成語であるが、保険についてその内容を表示するものではなく、自他役務識別力を発揮する語である。
エ ハウスマークであるか
引用商標は、申立人の前身「エース・リミテッド」又は日本法人「エース損害保険株式会社」の略称であり、これらのハウスマークである。
オ 役務間の関連性
本件商標と引用商標の指定役務はともに保険に関連する業務であり、同一又は類似するものである。
カ 役務等の需要者の共通性その他取引の実情
本件商標と引用商標の指定役務が同一又は類似するため、需要者が共通する。
また、申立人の日本法人がエース保険からチャブ損害保険会社に名称が変更されたのは2016年であり、いまだにエース保険の名称は保険業界において、商標に化体された信用と共に残存しているものであり、また、2020年申立人の年次報告書にあるように、マイホームエース、マイホームエースゴールドを始めとしてエースの語を含む保険商品が存在している。また「エース/ACE」の語を含む商標を多数保有している。
したがって、本件商標をその指定役務に使用すると、申立人の業務に係る役務であると誤認し、その需要者が出所について混同するおそれがある場合のみならず、申立人の前身の日本法人がエース保険であったことから経済的に又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、その需要者が出所について混同をするおそれがあり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
引用商標が申立人の役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識され、本件商標は引用商標に類似することも前述のとおりである。
そして、本件商標権者は、申立人と同じ保険業務を行う法人であり、周知著名であるエース・リミテッド、エース保険については十分に認識していたはずであり、認識しながらその類似商標を登録し、同一又は類似する役務に使用する行為は、申立人の商標に化体された信用にただ乗りするものである。また、申立人の商標に化体された信用を希釈化するおそれがあり、不正の目的をもって使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)「年次報告書『CHUBB』2016」(2016年7月 エース損害保険株式会社発行)において、「エース損害保険株式会社 概要」のページには、同社は、その略称がエース保険であること、申立人の100%子会社であること、企業火災保険・個人火災保険・傷害保険等を提供していること、また「チャブ・グループ&エース保険の主な沿革」のページには、エース保険は2016年下期にChubb損害保険株式会社へ社名を変更する予定であること、さらに「I-1 主要な経営指標等の推移(直近5事業年度)」のページには、エース保険は、その正味収入保険料の金額が平成24年度に約190億円、同25年度に約209億円、同26年度に約202億円であることの記載がある(甲14)。
(イ)「年次報告書『CHUBB』2017」(Chubb損害保険株式会社発行)において、「チャブ・グループ&チャブ保険の主な沿革」のページには、エース保険が、2016年10月にChubb損害保険株式会社(以下「チャブ保険」という。)へ社名を変更したこと、また「トピックス」のページには、「エース損害保険株式会社」及び引用商標3と同一の標章が、それぞれ「Chubb損害株式会社」及び「CHUBB」(標章)に変更されたこと、の記載がある(甲15)。
(ウ)「年次報告書『CHUBB』2020」(Chubb損害保険株式会社発行)において、「Chubb損害保険株式会社 概要」のページには、チャブ保険は申立人の100%子会社でありチャブグループの一員であること、「チャブ・グループ&チャブ保険の主な沿革」のページには、1999年にシグナ傷害火災保険株式会社がエース損害保険株式会社へ社名変更されたこと、の記載がある(甲18)。
(エ)エース保険は、1999年から2016年に作成又は発行したとおぼしき広告物に、引用商標3及び「エース保険」の文字を(甲2?甲8)、2009年発行の社内報に引用商標3を(甲9)、2011年11月頃とされる同社のウェブサイトに、引用商標3及び「エース保険」の文字を、それぞれ表示している(甲10)。
(オ)「保険市場TIMES」のウェブサイト(2012年9月27日、2014年10月27日、2016年7月26日、2013年12月31日、2011年5月11日:甲21?甲23、甲29、甲30)、「ゆめカード」のウェブサイト(2016年10月1日:甲26)及び「jfe-systems.com」のウェブサイト(取材日2009年9月:甲35)には、エース損害保険株式会社の社名変更や同社が提供する保険業務の紹介記事の中で「エース保険」の文字や引用商標3が表示されている。
(カ)その他の2021年3月4日出力のウェブサイトには、「エース保険」や引用商標3の表示は確認できるものの、掲載日は確認できない(甲20、甲24、甲25、甲27、甲28、甲31、甲32、甲33)。
イ 上記アからすれば、申立人の100%子会社であった「エース損害保険株式会社」は単にエース保険と称されて、1999年頃から、2016年10月に社名を変更するまでの約17年間に亘って、企業火災保険・個人火災保険・傷害保険等の保険業務を行い、エース保険(引用商標1)及び引用商標3を使用していたことが認められる。また、同社の年次報告書から、会社全体の正味収入保険料は確認できるとしても、この金額が、同様の保険を提供する業界(市場規模)において占める割合は不明であることに加え、引用商標1や引用商標3をはじめとする引用商標の使用との関連性を確認することはできない。
また、エース保険の広告物には、引用商標1や引用商標3の表示が見受けられるものの、当該広告物の広告実績(広告の方法、範囲及び規模等)は明らかにされていない。
さらに、各種ウエブサイトにおいて、エース保険や同社が提供する保険業務等が紹介されているとしても、その数は10件にも満たないものであるから、わずかな数でしかない。
そして、申立人が提出した証拠において、引用商標2及び引用商標4の表示も散見されるものの、その数は決して多くはない。
そうすると、申立人の提出に係る証拠からは、エース保険が1999年(平成11年)頃から2016年(平成28年)までの約17年間に亘って保険業務を提供し、その際に主に引用商標1及び引用商標3を使用していたことは認められるとしても、エース保険の営業実績と引用商標との関連性を確認することはできず、また広告実績は明らかにされていないものであるから、当時エース保険が保険業務に使用していた引用商標が取引者、需要者の間に広く知られていたとみることはできない。
してみれば、2016年(平成28年)当時、取引者、需要者の間に広く知られていたとみることはできない引用商標が、社名変更に伴い使用されなくなったにもかかわらず、その後広く知られるようになったとみるのは不自然であることに加え、そのような事情も見いだせないものであるから、本件商標の登録出願時及び登録査定時においても、引用商標は取引者、需要者の間に広く知られていたとみることはできない。
また、引用商標が外国の取引者、需要者の間に広く知られていたと認めるに足る証拠はない。
したがって、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、申立人又はエース保険(以下単に「申立人」という。)の業務に係る役務(保険業務)を表示するものとして、我が国又は外国における取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「保険のエース」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成各文字は同書、同大、等間隔で外観上まとまりよく表されているものであり、その構成文字に相応して生じる「ホケンノエース」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
また、本件商標は、その構成中、「エース」の文字が、「(トランプ・さいころの)エース、最優秀選手、第一人者」等の意味合いを有することから、これに「保険の」の文字が結合された構成全体において「保険の第一人者」ほどの観念を生じるものである。
以上からすれば、本件商標は、まとまりのよい外観、よどみなく生じる称呼及び全体から観念が生じることも相まって、その構成全体をもって看取、把握されるとみるのが自然である。
そうすると、本件商標は、その構成全体から「ホケンノエース」の称呼のみを生じ、「保険の第一人者」ほどの観念を生じるというべきである。
イ 引用商標2ないし引用商標4
引用商標2は、別掲1のとおり、「エース」の片仮名を赤色のゴシック体で表すとともに、それぞれの文字の中央に細い白抜きの線を配してなり、また、引用商標3は、別掲2のとおり、黒色正方形内に「A」、「C」及び「E」の各文字をそれぞれ傾斜させながらモノグラム風に白抜きで表してなるところ、これより容易に「ACE」の欧文字を認識できるものであり、さらに、引用商標4は、「ACE」の欧文字を標準文字で表してなるものであるから、引用商標2ないし引用商標4は、それぞれの構成文字に相応して「エース」の称呼及び「第一人者」や「(トランプ等の)エース」ほどの観念を生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標2ないし引用商標4の類否
本件商標と引用商標2ないし引用商標4は、文字数及び構成態様において明らかに相違するものであるから、外観において判然と区別することができ、また、称呼において、7音と3音という音数の相違から明瞭に聴別することができ、さらに、本件商標は「保険の第一人者」ほどの観念を生じるのに対し、引用商標2ないし引用商標4は「第一人者」等の観念が生じるものであるから、観念において区別することができる。
そうすると、本件商標と引用商標2ないし引用商標4は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれはないというべきであるから、非類似の商標である。
したがって、本件商標は、引用商標2ないし本件商標4とは、非類似の商標であるから、それぞれの指定役務が同一又は類似であるとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 引用商標1の周知性
引用商標1は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務(保険業務)を表示するものとして、我が国及び外国における取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることができない。
イ 本件商標と引用商標1の類否
(ア)本件商標
本件商標は、上記(2)のとおり、その構成全体から「ホケンノエース」の称呼のみを生じ、また、「保険の第一人者」ほどの観念を生じる。
(イ)引用商標1
引用商標1は、上記2(1)のとおり、「エース保険」の文字からなるところ、その構成各文字は同書、同大、等間隔で外観上まとまりよく表されているものであり、また、その構成文字に相応して生じる「エースホケン」の称呼はよどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、引用商標1は、その構成中、「エース」の文字は、上記(2)アに記載のとおり、「(トランプ・さいころの)エース、最優秀選手、第一人者」等の意味合いを有する成語であるから独創性が高くなく、特段看る者の注意を引く態様でもないことに加え、提出された証拠から「エース」の文字のみが要部として抽出されるというべき特段の事情も見いだせないことからすれば、その構成全体をもって看取、把握されるとみるのが自然である。
そうすると、引用商標1は、その構成全体から「エースホケン」の称呼のみを生じ、また、「エース保険」の文字は、辞書等に掲載が認められない上に、直ちに何らかの意味合いを理解させるものでもないから、特定の観念は生じない。
(ウ)本件商標と引用商標1の類否
本件商標と引用商標1は、文字数及び構成態様において明らかに相違するものであるから、外観において、判然と区別することができ、また、称呼において、音の構成が相違するものであるから明瞭に聴別することができ、さらに、本件商標は特定の観念を生じるのに対し、引用商標1は特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標1は、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において、相紛れるおそれはないというべきであるから、外観、称呼及び観念を総合して全体的に考察すれば、両商標は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
ウ 小括
以上より、上記アのとおり、引用商標1は、申立人の業務に係る役務(保険業務)を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていた商標と認めることはできず、また、上記イのとおり、本件商標と引用商標1は、非類似の商標であるから、指定役務と「生命保険の引受け」が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知性について
引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務(保険業務)を表示するものとして、我が国における取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることができない。
イ 本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標は、引用商標とは、上記(2)及び(3)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、別異の商標というべきである。
ウ 出所の混同のおそれについて
上記ア及びイのとおり、引用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に需要者の間に広く認識されているとはいえず、また、本件商標と引用商標とは別異の商標である。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないと判断するのが相当である。
その他、本件商標が引用商標と出所の混同を生ずるおそれがあるとみるべき事情は見あたらない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用するもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務(保険業務)を表示するものとして、我が国又は外国における取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることができない。
また、本件商標と引用商標とは、上記(2)及び(3)のとおり、非類似の商標であり、さらに、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実は見あたらない。
そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当せず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲1(引用商標2:色彩は原本参照)


別掲2(引用商標3)




異議決定日 2021-09-16 
出願番号 商願2019-72523(T2019-72523) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W36)
T 1 651・ 252- Y (W36)
T 1 651・ 255- Y (W36)
T 1 651・ 253- Y (W36)
T 1 651・ 271- Y (W36)
T 1 651・ 261- Y (W36)
T 1 651・ 222- Y (W36)
T 1 651・ 251- Y (W36)
T 1 651・ 263- Y (W36)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田崎 麻理恵 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 岩崎 安子
板谷 玲子
登録日 2020-09-23 
登録番号 商標登録第6294847号(T6294847) 
権利者 株式会社エースインシュアランス
商標の称呼 ホケンノエース、エース 
代理人 神蔵 初夏子 
代理人 青木 博通 
代理人 中田 和博 

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