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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35
管理番号 1378868 
審判番号 取消2020-300001 
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-12-27 
確定日 2021-09-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第5527173号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5527173号商標の指定商品及び指定役務中、第35類「全指定役務」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5527173商標(以下「本件商標」という。)は、「ASPIRE」の文字を標準文字で表してなり、平成22年(2010年)2月26日に登録出願、第35類「企業の経営及び組織に関するコンサルティング及びこれらに関する情報の提供,企業の人材能力開発及び人事管理に関するコンサルティング及びこれらに関する情報の提供,経営の診断又は経営に関する助言及びこれらに関する情報の提供,市場調査」並びに第16類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同24年(2012年)10月12日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和2年(2020年)1月22日である。
なお、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成29年(2017年)1月22日ないし令和2年(2020年)1月21日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第7号証を提出した。
なお、後記「第3 被請求人の答弁」に記載のとおり、被請求人が審判事件答弁書の証拠方法として提出した甲第1号証ないし甲第11号証については、乙第1号証ないし乙第11号証と振り替えた。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第35類「全指定役務」(以下「本件役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証ないし乙第7号証について
ア 乙第1号証ないし乙第7号証は、英語で作成された文書である。したがって、これらの文書を提出して書証の申出をするときは、取調べを求める部分についてその文書の訳文を添付しなければならない(商標法施行規則第22条第6項、特許法施行規則第61条第1項)。しかしながら、これらの書証には訳文が付されていないのであるから、取調べの対象とはならないというべきものである。乙第1号証ないし乙第7号証が取調べの対象となるとしても、下記のイないしエのような問題がある。
イ 乙第1号証の第1条には「“INTERNATIONAL FRANCHISE AGREEMENT TO OPERATE A MCKINNEY ROGERS FRANCHISE IN JAPAN“ concluded on December 6, 2012 between MR LTD, MCKINNEY ROGERS JAPAN K.K. and JIN IWAMOTO.」の記載があり、被請求人は、平成24年(2012年)12月6日付けのフランチャイズ契約書に記載の関連知的財産(Pertinent IntellectuaI Property)が、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)と、マッキニーロジャースジャパン株式会社(以下「MRJKK社」という。)及び同社の代表取締役との間で、使用許諾の対象となっている旨主張する。
しかしながら、乙第1号証には、平成24年(2012年)12月6日付けのフランチャイズ契約書と記載されているところ、乙第3号証の日付は、1枚目に、平成24年(2012年)12月6日の記載があるものの、その一方で、2枚目の最上部は、平成24年(2012年)10月の記載となっており、1枚目と2枚目の日付に整合性がなく、結局、乙第3号証が、乙第1号証に記載の平成24年(2012年)12月6日付けのフランチャイズ契約書であるとは認定できないものというべきである。
ウ 乙第5号証についても、平成24年(2012年)12月6日の時点では、本件商標は既に登録(登録日:平成24年(2012年)10月12日)されていたにもかかわらず、乙第5号証におけるASPIREの「Status」が「Pending」となっている。乙第5号証が、乙第1号証に記載の平成24年(2012年)12月6日付けのフランチャイズ契約書であれば、「Pending」ではなく、「Registered」と記載されていてしかるべきであるが、そうでないことからすれば、乙第5号証が、乙第1号証に記載の平成24年(2012年)12月6日付けのフランチャイズ契約書の一部であるとは解されない。
エ 乙第6号証の日付は、2枚目に、平成24年(2012年)12月6日の記載があるほか、3枚目の最上部にも、平成24年(2012年)12月の記載があることに照らし、乙第1号証に記載の平成24年(2012年)12月6日付けのフランチャイズ契約書と解する余地があるものの、乙第6号証の契約書第1条第1項に記載の「Schedule 2」について、証拠が提出されていない。ちなみに、乙第5号証には、「SCHEDULE 2」の記載があるが、これが乙第1号証に記載の平成24年(2012年)12月6日付けのフランチャイズ契約書の一部とは解されないことは既に述べたとおりであり、乙第6号証に記載の「Schedule 2」と解することもできない。
したがって、乙第6号証に記載の「Schedule 2」の内容が不明である以上、乙第1号証における、平成24年(2012年)12月6日付けのフランチャイズ契約書に記載の関連知的財産(Pertinent IntellectuaI Property)の内容も不明といわざるを得ない。
換言すれば、本件商標が、乙第1号証に記載の関連知的財産(Pertinent IntellectuaI Property)に含まれているか否か、ひいては使用許諾の対象となっているか否かが明らかでない。
さらにいうと、乙第1号証には、契約主体となる者の住所の記載が一切なく、当該証拠に記載の契約当事者が、本件商標権者等であるか否かという点も定かではない。
オ 以上により、乙第1号証ないし乙第7号証によっては、MRJKK社及び同社の代表取締役が、本件商標の通常使用権者であることを証明できていないというべきである。
(2)乙第8号証について
被請求人は、乙第8号証を提示し、これは、本件商標が要証期間に使用されていたことを示すなどと主張する。しかしながら、この主張自体からは、被請求人が、商標法第2条第3項各号のいずれの「使用」について主張しているのかが明らかでなく、反論が困難である。なお、被請求人は、商標法第2条第3項第3号及び同項第4号を挙げるが、仮に、当該各号の「使用」を主張するものと解した場合には、乙第8号証は、同項第3号及び同項第4号所定の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」にはその語義からして該当しないものと解される。また、乙第8号証には、MRJKK社の捺印しかなく、契約相手の捺印がないばかりか、誰と契約を締結したのかすら不明である。MRJKK社は、本件商標権者の関連会社であり、本件審判について強い利害関係を有している会社である。こうした会社の捺印しかない乙第8号証は、信用性のある証拠ということができず、このような書類の日付が、要証期間の日付であるとしても、実際に、要証期間に本件商標が使用されたということにはならないというべきである。加えて、乙第8号証の契約締結日は、「2018年5月30日」と解されるところ、「業務遂行期間:2018年5月-11月」及び「業務遂行内容および業務遂行報酬:プログラムデザイン(5月-11月)」などという記載があり、あたかも業務遂行が、契約締結前から行われているかのような体裁となっているが、通常、契約を締結してから業務が遂行されることに照らせば、こうした記載は不自然である。
(3)乙第9号証について
被請求人は、乙第9号証に基づき、MRJKK社及び同社の代表取締役が、経営、組織運営及び人材能力開発等について、一般企業等に対する助言や情報の提供、研修の実施やそのフォローアップ等のコンサルティングを行っているなどと主張する。しかし、乙第9号証は、その最下部の日付から明らかなように、令和2年(2020年)4月16日にプリントアウトされたものであり、要証期間の証拠とはいえない。本件審判請求後のウェブページであることに加え、MRJKK社という本件審判に強い利害関係を持つもののウェブページであることにも鑑みれば、乙第9号証の記載の業務が、MRJKK社等により、要証期間に実際に行われていたことを示す客観的証拠は存在しない。さらにいえば、乙第9号証には、本件商標の記載すらなく、どういった商標のもとで、乙第9号証に記載の業務が遂行されていたのかについても不明といわざるを得ない。よって、被請求人の主張には理由がない。
(4)乙第10号証及び乙第11号証について
被請求人は、MRJKK社及び同社の代表取締役による研修で使用されたスライドとして、乙第10号証及び乙第11号証を提出するが、そもそも、乙第11号証の1枚目は外国語(英語)で作成された文書であり、訳文がない以上、取調べの対象にはならないというべきである。また、乙第10号証及び乙第11号証が、MRJKK社及び同社の代表取締役が研修を行うにあたって、実際に使用したものであるか否かが定かではなく、このことを裏付ける証拠は一切ない。すなわち、乙第10号証及び乙第11号証のスライドが、現にサービス提供にあたり利用されたことを裏付ける証拠は存しない。加えて、これらの証拠の作成日も不明というほかなく、このような書類の内容は容易に書き換えることができることにも照らすと、乙第10号証及び乙第11号証の内容を直ちに信用することはできないものというべきである。さらに、乙第11号証を見ると、フォローアップの時期が令和元年(2019年)10月ないし12月となっており、乙第8号証の「業務遂行期間:2018年5月-11月」と整合せず、結局、乙第8号証と乙第11号証は、その内容が整合しない。よって、MRJKK社及び同社の代表取締役が、乙第10号証及び乙第11号証を利用して、要証期間に研修を行った事実は認定できないものというべきである。
(5)被請求人の主張する役務は本件役務ではないこと
乙第8号証には、シニアリーダー育成プログラムとそれを構成するワークショップなどの記載があり、被請求人は、これに使用されるスライドである乙第10号証及び乙第11号証について、「研修のスライド」と称している。かかる研修のスライドである、乙第10号証の2葉目(5頁)には時間割の記載があり、その中で、「講義」及び「演習」などといった文言が使用されている。「研修」は、「学問や技芸などをみがきおさめること。」(甲5)、「講義」は、「書籍または学説の意味を説きあかすこと。大学などで、教授者がその学問研究の一端を講ずること。」(甲6)、「演習」は、「物事に習熟するために練習を行うこと。また、その練習。けいこ。軍隊・艦隊などが実戦の状況を想定して行う訓練。教師の指導のもとに実地に研究活動を行う授業。」(甲7)をそれぞれ意味する。これらの文言は、「学問」、「研究」、「習熟」、「練習」、「訓練」、「授業」といった教育活動と密接に関連する言葉ということができる。こうした各事情からすれば、被請求人提出の証拠に記載のサービスは、人材能力開発等について、企業の相談に乗ったり指導したりするものというより、むしろ企業の従業員に対し、リーダーとなるための実践的教育活動を提供し、その対価として、報酬を受けているものと見るのが自然である。したがって、被請求人提出の証拠に記載のサービスは、第41類の「人材育成のための教育訓練」であり、被請求人が主張するような第35類の役務、すなわち本件役務ではない。
よって、被請求人の上記主張には理由がない。
(6)本件役務「について」の本件商標の「使用」が認められないこと
乙第8号証における「ASPIRE」は、「マッキニーロジャーズに所属する知的財産:ミッションリーダーシップ ミッション分析 ASPIRE」と表示されている。この記載内容からすれば、本件商標は、単に、マッキニーロジャーズに所属する知的財産の一つとして紹介されているものにすぎず、本件商標と乙第8号証に記載のサービスとの具体的関係が不明といわざるを得ないため、乙第8号証に記載のサービスとの具体的関係において本件商標が使用されているものということはできない。また、上記のとおり、乙第8号証における「ASPIRE」の記載が、単にマッキニーロジャーズに所属する知的財産であると紹介する中で、複数列挙されたブランドの一つとして表示されているすぎないことに加え、乙第8号証には、その最上部に、一見してブランドと理解できる「McKinney Rogers(図形付き)」があることからすれば、乙第8号証に記載のサービスの識別表示は、「McKinney Rogers(図形付き)」であって、「ASPIRE」は、単にマッキニーロジャーズに所属する知的財産の一つとして、紹介されているものにすぎず、乙第8号証に記載のサービスの識別表示として使用されてはいない。
乙第10号証についても、通常、研修にかかるブランドが付されるべきスライドの最初と最後のページに、一見してブランドと理解できる「McKinney Rogers(図形付き)」がある。一方、「ASPIRE」は、「行動指針」である「Aim(目的)」、「Situation(状況)」、「Plan(計画)」、「Inspire(示唆)」、「Reinforce(強化)」及び「Evaluate(評価)」の頭文字から作れた言葉であり、乙第10号証に記載の研修サービスの識別表示として使用されているというよりは、研修の中で教えるべき内容、すなわち、単に役務の内容を示すものであって、識別表示として使用されてはいないものというべきである。
したがって、被請求人の提出した証拠によっては、本件役務「について」の本件商標の「使用」は認められない。
(7)まとめ
以上のとおり、本件は、被請求人の主張を裏付ける事実が存在しないのみならず、被請求人の主張には、理由がない。したがって、被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第11号証によっては、本件商標が、要証期間に日本国内において、本件商標権者、本件商標の専用使用権者、又は本件商標の通常使用権者のいずれかにより本件役務に使用されたことが明らかになっていない。
よって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その指定商品及び指定役務中、本件役務についての登録は取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁
1 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第11号証(審決注:審判事件答弁書において証拠方法として提出した甲第1号証ないし甲第11号証を乙第1号証ないし乙第11号証と振り替えた。)を提出した。
2 通常使用権者について
本件商標権者は、「MRJKK社」及び同社の代表取締役(以下「MRJKK社」と同社の代表取締役をまとめて「ライセンシー」という。)に、本願商標の使用に関する正当な許諾をしている(乙1、乙3?乙6)。本件商標権者とライセンシーは、平成29年(2017年)12月12日付けでライセンス契約を締結した(乙1)。当該ライセンス契約の発端は、本件商標権者によるマッキニーロジャースインターナショナルリミテッド社(以下「MRLTD社」という。)の買収であり(乙2)、当該ライセンス契約書の前文には、MRLTD社からライセンシーに対して許諾されている関連知的財産(Pertinent Intellectual Property)等の使用に関する合意を締結するとある。
当該ライセンス契約書の第1条1項において、関連知的財産とは、平成24年(2012年)12月6日にMRLTD社とライセンシーとの間で締結された、日本国内におけるマッキニーロジャース運営に関する国際フランチャイズ契約(INTERNATIONAL FRANCHISE AGREEMENT T0 OPERATE A MCKINNEY ROGERS FRANCHISE IN JAPAN)(以下「フランチャイズ契約」という。)に基づき提供された知的財産等をいう、と定義されている。
当該フランチャイズ契約書(乙3)の第1条1項では、当該契約の対象地域は付則1(Schedule1)に記載のものをいい、商標とは付則2(Schedule2)のパート1及びパート2に記載のものをいい、商標ライセンスとは、付属書4(Appendix)に基づいて締結される商標ライセンスをいう、と定義されている。
付則1(乙4)では、対象地域が日本となっており、付則2のパート1(乙5)では本件商標「ASPIRE」の記載がある。付属書4(乙6)の第1条1項では、商標とは、フランチャイズ契約書の付則2(Schedule2)のパート1及びパート2に記載のものをいうと同様に定義されており、その商標には、出願中と記載されていたものが後に登録されたものも含まれると明記されている。
以上のことから、MRLTD社、MRJKK社及び同社の代表取締役の三者間で締結されていた、各種登録・未登録商標等を含む、知的財産の使用に関する包括的な契約は、本件商標権者によるMRLTD社の買収後も、当該契約内容を引き継いで、本件商標権者とライセンシーとの間で新たな契約として締結されたものである。
したがって、ライセンシーは本件商標権者からライセンスを受けた、日本国内における正当な通常使用権者であるといえる。
なお、ライセンシーが提供しているコンサルティングサービスにおける研修資料等では、MRLTD社が本件商標権者の一部門であることを明記している(乙7)。
3 商標の使用について
(1)使用時期
ライセンシーは本件商標を長期間にわたり継続的に使用しているが、一例として平成30年(2018年)に締結された、企業とのコンサルティング業務遂行合意書を証拠として添付する(乙8)。当該合意書の締結日は平成30年(2018年)5月30日となっており、業務遂行期間は同年5月から11月となっている。また、MRLTD社に所属する知的財産として、本件商標「ASPIRE」も明示されている。当該証拠は、本件商標が要証期間に使用されていたことを示すものである。
(2)ライセンシーの提供役務と商標の使用態様
ライセンシーは、経営、組織運営及び人材能力開発等について、一般企業等に対する助言や情報の提供、研修の実施やそのフォローアップ等のコンサルティングを行っている(乙9)。ライセンシーが提供している役務の例として、ライセンシーによる研修のスライドを証拠として添付する(乙10、乙11)。平成30年(2018年)の業務遂行合意書に関連するシニアリーダー育成のための研修のスライドの一部抜粋(乙10)では、リーダーシップのフレームワークとして本件商標「ASPIRE」が説明されており、本件商標の概念や実践に関する研修においては、頻繁に本件商標が用いられている。当該用語が登録商標であることも明示されている(乙10)。また、ライセンシーは集合研修のみを開催しているだけではなく、研修後も定期的にフィードバックを与えるためのサポートを実施したり、企業内の定例会議における助言等のコンサルティングを実施したりしている(乙11)。これら一連の役務の提供は、取消請求に係る指定役務「企業の経営及び組織に関するコンサルティング及びこれらに関する情報の提供、企業の人材能力開発及び人事管理に関するコンサルティング及びこれらに関する情報の提供」等に該当することは明白である。そして、ライセンシーが上記研修スライドに本件商標を付す行為及び本件商標を付したスライドを用いて当該役務を提供する行為は、商標法上の使用に該当する(商標法第2条第3項第3号及び同項第4号)。
4 まとめ
以上のことから、本件商標は、正当な通常使用権を有するライセンシーによって、取消請求に係る指定役務「企業の経営及び組織に関するコンサルティング及びこれらに関する情報の提供、企業の人材能力開発及び人事管理に関するコンサルティング及びこれらに関する情報の提供」等について、要証期間に商標法第2条第3項第3号及び同項第4号に該当する使用がされていたといえる。

第4 当審における審尋及びそれに対する被請求人の対応
当審において、令和2年11月25日付けで通知した審尋により、被請求人の提出に係る証拠によっては、被請求人が、商標法第50条第2項に規定する本件商標の使用を証明したものと認めることができない旨の見解を示し、被請求人に意見を求めた。
しかしながら、被請求人は、上記審尋に対し、何ら応答していない。

第5 当審の判断
1 被請求人の主張及びその提出に係る乙各号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証ないし乙第7号証について
ア 乙第1号証ないし乙第7号証は、外国語で作成された文書と認められるところ、商標法施行規則第22条第6項で準用する特許法施行規則第61条第1項で規定する訳文が添付されていない。
イ 乙第3号証は、1葉目下に、2012年(平成24年)12月6日を表すものと推測される「(Ashfords:6 December 2012・・・」の記載、MRLTD社及びライセンシー並びに「日本国内におけるマッキニーロジャース運営に関する国際フランチャイズ契約」を表すものと推測される英語の記載があるものの、上記日付(2012年(平成24年)12月6日)は要証期間外である。また、乙第3号証の2葉目上には、2012年(平成24年)10月を表すものと推測される「dated_October 2012・・・」の記載、MRLTD社及びライセンシーを表すものと認められる英語の記載があるものの、上記の時期(2012年(平成24年)10月)は同号証の1葉目の記載から推測される2012年(平成24年)12月6日の日付とは整合しない上に、要証期間外である。
ウ 乙第3号証ないし乙第6号証の各証拠は、頁番号の連続性及び様式の統一性が認められない。
エ 乙第5号証の「PART1-TABLE OF REGISTERD TRADE MARKS」の表には「Mark」欄に「ASPIRE」の文字が記載されているものの、商標登録番号の記載もなく、「Status」欄には「Pending」と記載されており、当該「ASPIRE」の文字が、本件商標を表示するものであるか確認できない。
オ 乙第7号証は、日付の記載がなく、出典も確認できない。
(2)乙第8号証ないし乙第11号証について
ア 乙第8号証は、ライセンシーと企業との間で締結された「業務遂行合意書」であるところ、「業務名」として「シニアリーダー育成プログラム」の記載、「業務遂行内容・・・」として「シニアリーダー育成プログラム(受講者:・・・名・・・ワークショップ・・・リーダーシップ実践支援・・・個人アセスメント&フィードバック」の記載がある。また、当該合意書(乙8)には、「マッキニーロジャーズに所属する知的財産」として「ASPIRE」(語尾の右上方に小さく「TM」と表記されている。)の記載があるものの、当該「ASPIRE」の文字が、具体的にどのように使用されていたのかは確認できない。
イ 乙第9号証は、MRJKK社のウェブサイトの写しであるところ、本件商標の記載は見当たらず、同号証の「ニュース/最新情報」欄に記載された日付や印刷日(「2020/4/16」)は、要証期間外である。
ウ 乙第10号証は、被請求人の主張によれば、2018年に実施されたライセンシーによる研修のスライドとされるところ、1葉目には「シニアリーダー育成プログラム・・・」の記載、2葉目には「時間割」の表中に「ワークショップ」、「講義」、「演習」等の記載がある。なお、当該スライドが、ライセンシーが提供する役務において実際に使用された事実は確認できない。
エ 乙第11号証は、被請求人の主張によれば、コンサルティング業務に関する言及のある研修スライドであって(全3葉)、ライセンシーが、集合研修のみを開催しているだけではなく、研修後も定期的にフィードバックを与えるためのサポートを実施したり、企業内の定例会議における助言等のコンサルティングを実施した事実を証するものとされるところ、1葉目には「Tokyo WS follow-up」の記載、2葉目には「MRJKKコンサルタントの進捗サポート」の記載、3葉目には「フォローアップ記録」等の記載があるものの、作成日の記載はないことから、当該研修スライドがいつ使用されたのか確認できない。
2 上記1によれば、当審の判断は、以下のとおりである。
(1)通常使用権者について
ア 被請求人は、乙第1号証ないし乙第7号証により、本件商標の商標権者が、ライセンシーに、本願商標の使用に関する正当な許諾をしている旨を主張する。
しかしながら、上記1(1)のとおり、乙第1号証ないし乙第7号証は、外国語で作成された文書であるにもかかわらず、訳文が提出されていないことから、被請求人が取調べを求める部分について正確な内容を把握できない。
イ 被請求人は、乙第3号証ないし乙第6号証は、2012年(平成24年)12月6日にMRLTD社とライセンシーとの間で締結された、「フランチャイズ契約」に関する証拠であり、2017年(平成29年)12月12日に商標権者とライセンシーとの間で締結されたライセンス契約(乙1)には、MRLTD社からライセンシーに対して許諾されている関連知的財産等の使用に関する合意を締結する、とあり、その関連知的財産とは、上記フランチャイズ契約に基づき提供された知的財産等をいうとされていると主張する。
しかしながら、乙第3号証ないし乙第6号証の各証拠は、上記1(1)のとおり、日付の記載の整合性、頁番号の連続性及び様式の統一性が認められないため、相互の関係性が明確とはいえないことから、被請求人の上記主張が証明されたものと認めることはできない。
したがって、乙第1号証ないし乙第7号証によっては、要証期間において、ライセンシーが、本件商標の商標権者から本願商標の使用に関する正当な許諾を受けていると認めることができないものであり、ライセンシーは、本件商標の通常使用権者であったと認めることができない。
(2)ライセンシーが提供する役務について
ア 被請求人は、乙第8号証ないし乙第11号証により、ライセンシーが、本件審判の請求に係る指定役務中の「企業の経営及び組織に関するコンサルティング及びこれらに関する情報の提供,企業の人材能力開発及び人事管理に関するコンサルティング及びこれらに関する情報の提供」に該当する役務を提供しており、本件商標を用いたスライドを用いて当該役務を提供する行為は、商標法第2条第3項第3号及び同項第4号の使用に該当する旨を主張する。
しかしながら、ライセンシーと企業との間で締結された業務遂行合意書(乙8)の記載からすれば、当該合意書(甲8)の業務遂行内容は、第41類に属する「人材育成のための教育訓練,人材育成のための教育訓練に関する情報の提供及びコンサルティング」に含まれる役務と認められるものであるから、当該合意書(乙8)をもって、ライセンシーが、本件審判の請求に係る指定役務を提供したと認めることはできない。また、当該合意書(乙8)において、マッキニーロジャーズに所属する知的財産の一つに「ASPIRE」と記載されていたことが確認できたとしても、これが具体的にどのように使用されていたのかを立証するための証拠の提出はなく、この記載部分のみをもって、ライセンシーが、本件商標を使用していたと認めることができない。
イ 被請求人は、ライセンシーが提供する役務の例として、ライセンシーによる研修のスライドとされる乙第10号証を提出する。
しかしながら、乙第10号証が、ライセンシーが提供する役務において実際に使用された事実が明らかではない上に、当該スライドの記載内容からすれば、その役務は、「人材育成のための教育訓練,人材育成のための教育訓練に関する情報の提供及びコンサルティング」に含まれる役務(第41類に属するもの)と認められるものであるから、これをもって、ライセンシーが、本件審判の請求に係る指定役務を提供したと認めることはできない。
ウ 被請求人は、乙第11号証をもって、ライセンシーが、集合研修のみを開催しているだけではなく、研修後も定期的にフィードバックを与えるためのサポートを実施したり、企業内の定例会議における助言等のコンサルティングを実施したと主張する。
しかしながら、乙第11号証が、ライセンシーが提供する役務において実際に使用された事実が明らかではない上に、その記載内容からすれば、請求人の主張する当該業務は、第41類に属する「人材育成のための教育訓練,人材育成のための教育訓練に関する情報の提供及びコンサルティング」に含まれる役務に付随して行われるフォローアップ(追跡調査や事後の面倒を見て援助をしたりすること)の業務と認められるものであるから、乙第11号証をもって、ライセンシーが、本件審判の請求に係る指定役務の範ちゅうに属する役務を提供していると認めることはできない。
エ 被請求人は、乙第9号証をもって、ライセンシーが経営、組織運営、人材能力開発等について、一般企業等に対する助言や情報の提供、研修の実施やそのフォローアップ等のコンサルティングを行っている旨を主張する。
しかしながら、乙第9号証において、本件商標が要証期間に使用された事実は見いだせないことから、乙第9号証をもって、ライセンシーが、本件商標を本件審判の請求に係る指定役務の範ちゅうに属する役務について使用していたと認めることはできない。
オ 上記アないしエによれば、乙第8号証ないし乙第11号証によっては、ライセンシーが、本件審判の請求に係る指定役務の範ちゅうに属する役務を提供し、当該役務について、本件商標を使用していたものと認めることはできない。
(3)その他、被請求人が提出した全証拠によっては、要証期間に、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件審判の請求に係る指定役務について本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていることを証明し得る事実を見いだせない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定役務についての本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていることを証明したものということはできない。
また、被請求人は、本件審判請求に係る指定役務について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、指定商品及び指定役務中、第35類「全指定役務」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2021-04-22 
結審通知日 2021-04-27 
審決日 2021-05-10 
出願番号 商願2010-14729(T2010-14729) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X35)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 瑠美箕輪 秀人 
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 豊田 純一
渡邉 あおい
登録日 2012-10-12 
登録番号 商標登録第5527173号(T5527173) 
商標の称呼 アスピア、アスパイア 
代理人 山田 薫 
代理人 武田 太郎 
代理人 塚田 美佳子 

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