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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W43
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W43
管理番号 1378837 
審判番号 不服2020-7972 
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-09 
確定日 2021-09-16 
事件の表示 商願2019-112981拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「肉と日本酒」の文字を標準文字で表してなり、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、平成30年8月8日に登録出願された商願2018-101474に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願(分割出願)として、令和元年8月23日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『肉と日本酒』の文字を標準文字で表してなるところ、飲食業界においては、『肉』及び『日本酒』は普通に取引に供されており、その中でも実際に『肉と日本酒』の文字が使用されている実情も認められることからすると、本願商標は、その指定役務に使用しても、『肉料理及び日本酒を主とする飲食物の提供』であることを理解、認識させるにすぎないものであって、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示したものというべきであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、本願商標は、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識できるに至ったものとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における審尋及び請求人の回答
本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について、職権に基づく証拠調べを実施し、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、令和3年2月15日付け審尋で、その結果を通知するとともに、下記第5と同旨の暫定的見解について通知したところ、請求人は、同年3月26日付け回答書を提出した。

第4 審尋に対する請求人の回答の概要
1 上記第3の審尋には、「指定役務を取り扱う飲食業界においては、『肉』及び『日本酒』は普通に取引に供されており、その中でも実際に『肉と日本酒』の文字が使用されている実情も認められる」として、使用例が示されたが、「肉と日本酒」という一体的表現は非常に少数であること、「肉と日本酒」が一体的に使用されている例であっても、店名は別にあり、「肉と日本酒」は店で提供するものを表示した記述的な部分であることがわかる。
2 請求人の使用態様及び使用実績
本願商標は、「肉と日本酒」自体を店名として使用することを意図するものであり、本願指定役務「飲食物の提供」については、食材や提供方法を羅列した商標は、店名としては、かえって需要者にとって珍しく、高い識別力を発揮し得るものである。請求人の店名としての使用態様として、請求人ウェブサイトのトップページを提出するが、当該ウェブサイト上のトップページ上部に本願商標「肉と日本酒」の文字が顕著に表示されており、商標としての使用の事実が確認できるし、また、請求人に係る本願商標の周知性については、多くの雑誌において有名焼き肉店として紹介されていることから、本願商標は、既に取引実情において、請求人店舗の商標として識別力を発揮しているものである。
3 請求人は、「肉と日本酒」(標準文字)を第29類の「食肉,牛肉,鶏肉,豚肉」等の商品について識別力を認められて登録されており(登録第6181597号商標)、これは、当該文字は「肉」について品質表示に該当せず品質誤認のおそれもないと判断されたものであり、すなわち、請求人店舗で提供される「肉」(持ち帰り商品)については識別力が認められるということであるから、当該文字は、店名としても識別力を発揮し得るといえる。
4 本願商標が登録された場合、本願商標が記述的に使用される場合に、各店舗で提供される食材を表示するものとして、当該商標権の効力が及ばないと考えられるから、本願商標が独占不適応ということはない。一方、請求人の使用態様のように、単独で識別力を発揮する態様で店名として他人が使用した場合には、請求人の業務と混同を生ずるおそれがあり、既に本願商標に化体した請求人の業務上の信用が保護されない事態となる。よって、本願商標は商標法上、保護価値のある商標として保護を認められるべきものである。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性
本願商標は、「肉と日本酒」の文字を標準文字で表してなるところ、原審で示した証左及び職権による調査(別掲)によれば、指定役務を取り扱う飲食業界においては、「肉」の文字は「肉料理」を、「日本酒」は語義どおり「日本酒」を表す語として用いられており、また、例えば、「旨い日本酒×肉料理で楽しいひと時を・・・肉料理をメインとしたお料理をご用意しております。もちろんどれも日本酒に合うものばかり。」、「お肉と日本酒コース・・・コースメニュー 店主おすすめの近江牛の肴 お料理に合う日本酒」、「肉と日本酒を堪能する会 山盛り肉と日本酒100種類をとことん楽しもう!」、「肉と魚と酒が旨い店」、「厳選した日本酒が豊富な肉割烹」、「肉料理に合う、奈良の地酒(純米酒)はもちろん季節限定や珍しい日本酒、他店ではなかなか飲めないお酒を豊富に取り揃えております。」など、肉料理と日本酒とを併せて取引に供している例が複数あり(別掲(1)?(9)参照)、その中でも実際に「肉と日本酒」の文字は、取引に供される「肉料理」及び「日本酒」を表示するものとして使用されている実情が複数認められる(別掲(1)?(5)参照)。
そうすると、本願商標は、その指定役務に使用しても、「肉料理及び日本酒を主とする飲食物の提供」であることを理解、認識させるにすぎないものであるから、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示したものとして認識されるというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条第2項該当性
請求人は、本願商標に係る請求人の飲食店は非常に人気が高く、本願商標が自他役務識別力を発揮している旨を主張しているところ、この主張は本願商標が使用された結果、広く需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるものに至っている(商標法第3条第2項)旨の主張として解釈されるので、請求人の主張及び提出された証拠(証拠方法として甲6?甲11、甲13?甲18(ただし、甲6?甲11は原審における令和元年11月6日付け手続補足書の甲6?甲11を援用している。)を検討する。
上記の請求人の主張及び証拠によれば、請求人が「肉と日本酒」と称する焼き肉店を東京都台東区谷中において2017年4月に開業し、請求人のウェブサイトにおいて「肉と日本酒」の文字を表していること、請求人の焼き肉店がインターネット上のウェブサイト記事及び雑誌における記事において複数紹介されていること(ただし、当該記事は、「肉と日本酒」と称する焼き肉店に限らず、請求人が系列店と主張する「リトル肉と日本酒」(現在は閉店している模様(甲17、甲15の1))、「ステーキ肉と日本酒」、「虎ノ門『肉と日本酒』」(2020年8月、東京都港区西新橋に開店した模様(甲17、甲18)等、本願商標と異なる態様の使用を含む。)は認められる(甲6?甲11、甲13、甲14の1?甲14の3、甲15?甲18)。
しかしながら、これらの証拠のみでは、請求人が本願商標を「飲食物の提供」に使用しているとしても、その使用地域は東京都台東区谷中及び東京都港区虎ノ門周辺に限られるのであって、請求人による広告宣伝は自身のウェブサイトによるもののみであり、また、ウェブサイト記事や雑誌記事において紹介されていたとしても、本願商標と実質的に同一と認め得る「肉と日本酒」と称する焼き肉店についての紹介は10件程度である(甲6?甲11、甲14の1?甲14の3、甲17、甲18)。
以上よりすると、本願商標は、その指定役務である「飲食物の提供」に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することが至ったものとは認められない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
3 請求人の主張
(1)請求人は、本願商標は和食と合わせることが一般的である「日本酒」に「肉」の文字が結合した態様であり、その組み合わせは意外なものであること、それ故、本願商標の構成中「肉」の文字が「肉料理」を想起し、指定役務との関係で「肉料理と日本酒を主とする飲食物の提供」であると認識され得るとしても、その組み合わせの意外性をもって需要者に受け止められることによって、他者とは識別される旨、及び、上記第3の審尋において、指定役務を取り扱う飲食業界における使用例が示されたが、「肉と日本酒」という一体的表現は非常に少数であるし、「肉と日本酒」が一体的に使用されている例であっても、店名は別にあり、使用されている「肉と日本酒」の文字は、店で提供するものを表示した記述的な部分である旨主張している。
しかしながら、上記1のとおり、指定役務を取り扱う飲食業界においては、「肉」の文字は「肉料理」を、「日本酒」は語義どおり「日本酒」を表す語として用いられていることからすれば、各語は、役務の質を記述的に表示したものと認識させるものである。また、肉料理と日本酒とを併せて取引に供している例が複数あることからすれば、本願商標に意外性があるというべき特段の理由は見当たらない。加えて、仮に、「肉と日本酒」の使用例として挙げた数が多くなかったとしても、請求人の主張のとおり、当該文字は、取引に供される「肉料理及び日本酒」を表示するものとして使用されていることからすれば、これは、取引に供されるものを記述的に表示したにすぎないものというほかない。
そうすると、本願商標は、その指定役務に使用しても、「肉料理及び日本酒を主とする飲食物の提供」であることを理解、認識させるにすぎないものであるから、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示したものとして認識されるものである。
(2)請求人は、本願商標は、「肉と日本酒」の文字を店名として使用することを意図するものであり、本願の指定役務を取り扱う業界においては、食材や提供方法を羅列した商標は、店名としては、かえって需要者にとって珍しく、高い識別力を発揮し得るものである旨主張している。
しかしながら、本願商標は、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示したものとして認識されるというべきこと、上記1のとおりであるところ、本願商標を店名として使用することを請求人が意図していたとしても、その請求人の意図の存在によって、上記1の判断が左右されるものではない。
(3)請求人は、商品及び役務が異なる請求人の過去の登録例(本願の分割に係る原出願)を挙げて、当該登録例は、「肉」について品質表示に該当せず品質誤認のおそれもないと判断されたものであり、すなわち、請求人店舗で提供される「肉」(持ち帰り商品)については識別力が認められるということであるから、当該文字は、店名としても識別力を発揮し得るといえる旨、及び、飲食物を並べた構成である登録商標を挙げて、その組み合わせに意外性があることから、業態を暗示させるものの、その識別力を認められたものである旨主張している。
しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項各号に該当するものであるか否かの判断は、当該商標登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様と指定商品又は指定役務の取引の実情等に基づいて、個別具体的に判断されるべきであり、請求人の過去の登録例(本願の分割に係る原出願)については、その指定商品及び指定役務は本願の指定役務とは異なることから、考慮すべき取引の実情が異なるものであり、また、請求人が挙げた、「飲食物を並べた構成である登録商標」の構成をみるに、それぞれ、「炭火とワイン」、「日本酒吟醸熟成肉」、「肉と牡蠣 市場」の文字よりなるものであるところ、これらの文字は、飲食物名を含むものであったとしても、飲食物名のみを羅列したものでもなく、何より本願商標とは明らかに構成が異なるものであるから、これらの存在によって、上記判断が左右されるものではない。
(4)請求人は、本願商標が登録された場合、本願商標が記述的に使用される場合に各店舗で提供される食材を表示するものとして当該商標権の効力が及ばないと考えられるから、本願商標が独占不適応ということはない旨、他方、請求人の使用態様のように、単独で識別力を発揮する態様で店名として他人が使用した場合には、請求人の業務と混同を生ずるおそれがあり、既に本願商標に化体した請求人の業務上の信用が保護されない事態となるから、本願商標は商標法上、保護価値のある商標として保護を認められるべきものである。旨主張している。
しかしながら、商標権の効力について定めた規定(商標法第26条第1項)によって、商標権の効力が制限される場合があるからといって、登録査定の要件を定めた同法第3条第1項第3号の該当性の判断が緩和されるものではないし、本願商標は、本願の指定役務との関係において、役務の質を表したと認識されるものであるから同号に該当するものであって、登録要件を具備しないものであること、上記1のとおりである。
(5)よって、請求人の主張は、いずれも採用できない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備するものではないから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲 指定役務を取り扱う飲食業界において、「肉」及び「日本酒」が取引に供されている例
(1)「食べログ」のウェブサイトにおいて、「肉と日本酒 いっさいがっさい」の店名の下、「旨い日本酒×肉料理で楽しいひと時を・・・2019年9月府中本町駅チカにオープンしたいっさいがっさいでは和風から洋風まで多彩な肉料理をメインとしたお料理をご用意しております。もちろんどれも日本酒に合うものばかり。」との記載がある。
https://tabelog.com/tokyo/A1326/A132602/13239151/
(2)「食べログ」のウェブサイトにおいて、「肉と日本酒いぶり 神田店」の店名の下、「『特典付き!席のみ予約』肉寿司3種盛り合わせ1皿プレゼント♪ 【期間限定】獺祭や黒龍など含む日本酒グラス(100cc)人数分サービス!」の記載、及び肉料理と日本酒の画像の掲載がある。
https://tabelog.com/tokyo/A1310/A131002/13206561/
(3)「お肉と日本酒コース 近江牛と有機野菜の呑処 ひだまり」のウェブサイトにおいて、「コース詳細」の見出しの下、「お肉と日本酒コース・・・コースメニュー 店主おすすめの近江牛の肴 お料理に合う日本酒 各5品」との記載がある。
https://hidamari.owst.jp/courses/4362689
(4)「食べログ」のウェブサイトにおいて、「鮮魚と肉と日本酒 大阪に乾杯」の店名の下、「【150分飲放題付】旬鮮魚やふぐ、牛、鶏などが味わえる『彩(いろどり)プラン』」及び「昼から飲める日本酒の店!!厳選日本酒50種以上!!」との記載がある。
https://tabelog.com/osaka/A2701/A270202/27102863/party/69309825
(5)「パスマーケット」のウェブサイトにおいて、「肉と日本酒を堪能する会 山盛り肉と日本酒100種類をとことん楽しもう!」の見出しの下、「2017/8/6(日) 12:00?2017/8/6(日) 15:30 KURAND SAKE MARKET 渋谷店」及び「イベントの3つの魅力! 1:肉のヒマラヤ特製ローストビーフが食べられる!・・・2:100種の日本酒が飲み比べし放題!・・・」との記載がある。
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01e5dtz0sx73.html
(6)「肉と魚と酒 かるねや」のウェブサイトにおいて、「肉と魚と酒が旨い店『かるねや』」の見出しの下、「『肉と魚と酒かるねや』は長野県佐久市佐久平北・佐久平駅から徒歩3分のところに炭火焼・鮮魚・日本酒が自慢の居酒屋です。」との記載がある。
https://www.carneya.link/
(7)「酒肉彩みなみ」のウェブサイトにおいて、「厳選した日本酒が豊富な肉割烹」の見出しの下、「当店は肉料理に合う、奈良の地酒(純米酒)はもちろん季節限定や珍しい日本酒、他店ではなかなか飲めないお酒を豊富に取り揃えております。」及び「お品書き 最高級の肉料理、大和肉鶏と美味しいお酒で愉しむ至高の時間。希少部位の肉料理をはじめ、地酒(純米酒)はもちろん珍しい日本酒も豊富に取り揃えています。」との記載がある。
https://www.minami0029.com/
(8)「所沢にある居酒屋『干物×肉×日本酒一歩』。女子会や宴会に人気【公式】」のウェブサイトにおいて、「卓上七輪で炭火焼き じっくり、ゆっくり愉しむ夜」の見出しの下、「埼玉県所沢市の居酒屋『干物×肉×日本酒 一歩(いっぽ)』で、今夜はゆっくり語り合いながら、愉しく七輪を囲みませんか?・・・卓上の炭火で干物や肉を焼きながら、まったりとお酒を嗜むひと時をお過ごしいただけます。」との記載がある。
https://www.himono-ippo.com/
(9)「ぐるなび」のウェブサイトにおいて、「肉×厳選日本酒 カブリオ」の店名の下、「貴重な日本酒や豊富な焼酎、梅酒も大好評♪自慢の肉料理も要チェック!」及び「お店のウリ 日本酒の種類が豊富 美味しい 肉料理 おしゃれな店内」との記載がある。
https://r.gnavi.co.jp/aw3w98v20000/

審理終結日 2021-06-14 
結審通知日 2021-06-15 
審決日 2021-07-26 
出願番号 商願2019-112981(T2019-112981) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (W43)
T 1 8・ 13- Z (W43)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 和美貳方 勝太杉本 克治 
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 馬場 秀敏
庄司 美和
商標の称呼 ニクトニホンシュ 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 

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