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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W0305 審判 一部申立て 登録を維持 W0305 審判 一部申立て 登録を維持 W0305 審判 一部申立て 登録を維持 W0305 審判 一部申立て 登録を維持 W0305 審判 一部申立て 登録を維持 W0305 |
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管理番号 | 1378052 |
異議申立番号 | 異議2021-900024 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-01-21 |
確定日 | 2021-09-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6311020号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6311020号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6311020号商標(以下「本件商標」という。)は、「ユニセラ」の文字を標準文字で表してなり、令和元年8月26日に登録出願、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,入浴剤(医療用のものを除く。),香料」、第5類「サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」、第30類「調味料」及び第33類「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,みりん,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同2年9月28日に登録査定、同年11月2日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する登録商標は、以下の2件であり、現に有効に存続しているものである(以下、これらを合わせて「引用商標」という。)。 1 登録第4963918号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおり「ユニヴェラ」の片仮名と「UNIVERA」の欧文字を二段に横書きしてなり、平成17年10月19日登録出願、第3類「メーキャップ用化粧品,香水類,オーデコロン,美白化粧品,日焼け止め用化粧品,肌荒れの修復用化粧品(医療用のものを除く。),パウダー状・クリーム状・オイル状・ローション状の日焼け後の手入れ用化粧品,しわ防止用クリーム,ヘアローション,ヘアケア用化粧品,その他の化粧品」及び第29類「ビタミン・ミネラル・植物エキスを主成分とする棒状・錠剤状・カプセル状・顆粒状・粉状・液状の加工食品」を指定商品として、同18年6月23日に設定登録されたものである。 2 登録第4972144号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおり「ユニヴェラ」の片仮名と「UNIVERA」の欧文字を二段に横書きしてなり、平成17年11月25日登録出願、第5類「食餌療法用食品及び飲料,乳児用食品,薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳」を指定商品として、同18年7月21日に設定登録されたものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、その指定商品中の第3類及び第5類の全指定商品」(以下「申立てに係る商品」という。)について、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。なお、特に断らない限り、証拠番号には枝番号を含み、表記にあたっては、「甲○」及び「甲〇の〇」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。)を提出した。 1 前提となる事実 (1)申立人について 申立人は、1976年に大韓民国(以下「韓国」という。)に設立された会社であり(甲3の1)、設立当時に韓国国内初のアロエ試験栽培に成功した後、1995年からアロエ原料、アロエを用いた健康機能食品や化粧品などの販売を行っている(甲3の1、2)。申立人は、2006年に会社名を現社名に変更し、引用商標をハウスマークとして使用すると共に、同時期に日本においても商標登録出願を行い、登録を受けている。 申立人の健康機能食品や化粧品(以下「申立人商品」という。)は、主に、販売代理店に所属する販売員、会員サイトを通じて販売されているところ、現在では、韓国に400以上の販売代理店と25,000人以上の販売員を有している(甲3の3)。 申立人のアロエは、中国の海南省、ロシアのクラスキノ、米国テキサス州のヒルトップガーデンズ、メキシコのタンピコで栽培されており(4か所合計で3,400万平方メートル)、化粧品、食品、医薬品市場などで用いられる高品質なものであることから、世界のアロエ原料市場の50%以上のシェアを占めている(甲4)。 なお、このアロエ原料は、申立人の関連会社(「Aloecorp,Inc」)によって製造され、世界40カ国以上もの国において、主に販売代理店を通じて販売されているが(甲5)、申立人のものとして認識されており、申立人は世界的なアロエ分野1位企業として知られている(甲4)。 (2)申立人の化粧品について 申立人のアロエを原材料として作られる化粧品は、免疫力を強化させ、皮膚の再生・保湿、肌のトラブル改善にも効果があるとして好評を博し、申立人の代表的な化粧品である「スキンケア100」は、1987年の発売以来、2013年当時までで10億本以上売れたベストセラー商品である(甲6)。 申立人は、2012年11月からアシアナ航空国際線機内においてもこの商品の販売を開始しているところ、外国人が利用する国際線の機内免税店は、単に商品を売るだけでなく、国を代表するブランドを披露し、国のブランドの地位を高める舞台でもあることから、ここで販売される商品は、品質とブランド力が求められる(甲6)。 以上より、申立人の化粧品が、韓国のみならず、日本及び外国において周知・著名であることがわかる。 (3)申立人の受賞歴 申立人は、高品質な商品のみならず、商品のデザイン性、経営活動などの点においても、韓国国内及び世界的にも高く評価されており、数々の賞を受賞している。 ア 申立人商品に関する受賞 2020年「世界一流商品」 韓国では、政府が主導して世界市場で競争力を備えた韓国製品を発掘・育成して企業の競争力を高め、輸出を活性化させるために「世界一流商品」という公式認証を設けており、毎年、韓国の国家行政機関である産業通商資源部が主催し、KOTRA(大韓貿易投資振興公社)が主管して選定する。「世界一流商品」に選定されるためには、商品の世界市場におけるシェアが5位以内であり、かつ、世界市場規模、輸出規模などの所定の基準を満たすことが必要であるが、申立人のアロエは、2003年に初めて選出されて以来、18年連続で選定されている(甲7の2)。 以上より、申立人は、長期間にわたって世界的に商品を販売しており、高いシェアを占めていることから、申立人のハウスマークである引用商標は、韓国のみならず外国において周知・著名であるといえる。 イ 商品パッケージのデザインに関する受賞 (ア)iFデザイン賞 iFデザイン賞は、世界的権威のある国際デザイン公募展で、ドイツのレッドドット・デザイン賞(Red Dot Award)、米国のIDEA賞(Industrial Design Excellence Awards)と並ぶ世界3大アワードのひとつである(甲8)。 (イ)レッドドット・デザイン賞 レッドドット・デザイン賞は、上述のとおり、デザインに関する世界3大アワードの一つであり、申立人が受賞した年は世界54カ国から5,000点に及ぶ様々な作品が応募された中で、上位6%のみが受賞した。 申立人は、2017年に、化粧品「HILLTOP GARDEN」、健康機能食品「Namyang Aloe MAX-P」の商品パッケージについて、レッドドット・デザイン賞を受賞した(甲9)。 (ウ)韓国のグッドデザイン賞 韓国のグッドデザイン賞は、国家行政機関である産業通商資源部が主催し、韓国デザイン振興院(KIDP)が主管する国際認証制度であり、国際的なデザインの専門家によってデザインの審美性・機能性・経済性などの各基準に沿って公正な審査が行われ、優秀な商品・サービスに対して国が認証するものである。 申立人の健康機能食品「Namyang Aloe MAX-P」の商品パッケージが2016年のグッドデザイン賞 最優秀賞/中小企業庁長賞を受賞した(甲10)。 以上より、デザイン性に優れた商品パッケージは、権威ある賞を数多く受賞しており、申立人の名称と共に、世界中の需要者・取引者の高い注目を浴びていることがわかる。 ウ その他の受賞 (ア)2019大韓民国共感経営大賞(健康機能食品部門) 韓国では、安全な食品・医薬品・医療機器などの体系構築・運営に関する国家行政機関である食品医薬品安全処が選定する大韓民国共感経営大賞があり、申立人は、健康機能食品部門において、2019大韓民国共感経営大賞を受賞した。これは、申立人が、積極的な研究開発と品質の優れた商品の製造を行っており、健康機能食品産業の発展に寄与したことが評価されたものである(甲11)。 (イ)CCM認証「名誉の殿堂」 CCM(Consumer Centric Management)認証とは、企業が消費者中心主義という観点から経営活動を行い、継続的に改善しているかどうかについて評価し、認証する、という韓国の制度である。国の機関である韓国消費者院が評価し、公正取引委員会が認証する。2019年には、継続してこの認証を受けており、消費者志向的な経営文化の拡散と消費者権益保護の発展に寄与した企業に対して与えられる「名誉の殿堂」という認証が設けられた。 申立人は、当該制度が導入された2007年に中小企業として初めて認証を受けた後、2013年から2019年まで7年連続して認証を受けており、2019年には、初年度はたった4社のみにしか与えられなかった「名誉の殿堂」の認証を取得した。申立人は、代表取締役を含め従業員が顧客相談室業務を経験し、顧客中心の業務に改善する「顧客相談体験」を年1回実施するなど、消費者中心の経営を実践する他、環境にやさしい原材料を活用した製品を販売するなど、様々な側面から消費者中心主義に立って経営している功績が高く評価された(甲12)。 (ウ)大韓民国 愛される企業に対する政府褒賞 申立人は、2018年の第6回「大韓民国 愛される企業に対する政府褒賞」において、持続経営学会の会長賞、社会責任経営賞を受賞した。 これは、国家行政機関である産業通商資源部と中小ベンチャー企業部が主催して行われるもので、持続可能な製品の生産、消貴者に安全な製品の開発、児童の健康と安全のためのビジネスモデルを構築し、社会責任経営を遂行している申立人の功績が認められたものである(甲13)。 なお、申立人は、児童の健康と安全のためのビジネスモデルについて、様々な社会貢献事業を行っており、その一つにマッチング・グラント(Matching Grant)を通じて設立した基金で難病患者を支援する「癒しの葉の奇跡」というグローバル社会貢献事業がある。この事業では、申立人商品を購入する毎に売上金の一定額を支援金として計上し、全世界の栄養欠乏に苦しむ子供たちのために使用されている。 こうした申立人の活動が評価され、2013年には児童親和経営の優秀事例として選定された。 (エ)家族親和認証 家族親和認証とは、労働者と家族の暮らしの質を高めることを目的とした、韓国政府の女性家族部が主管する制度であり、子供の出産や子育て支援、フレックスタイム勤務制度など、家族と仕事の両立を推進する家族親和制度を模範的に運営する企業・公共機関を審査し、認証を付与するものである。 申立人は、「自然の恩恵を人類に」という企業理念の基、顧客と従業員のすべてが調和した幸せな生活を営むことを最優先に追求し、家族にやさしい企業文化づくりのために、退社時間を繰り上げる「家族愛の日」を毎月1回実施する他、従業員の定期健康診断、役職員の子女を対象にしたキャンプ、子女学資金、家族慶弔事、趣味同好会、女性従業員の育児休職などを支援している。これらを通じて、役員や従業員の満足度も全体的に高まり、育児休職後に復職する従業員の割合も高まった。申立人は、2014年に初めて当該認証を受けており、2017年に続き、2019年にも当該認証を受けた(甲14)。 (オ)大韓民国コミュニケーション大賞 申立人が発行している季刊誌「地上に植えた星」が、韓国社報協会主催の「2010大韓民国コミュニケーション大賞」を受賞した。2008年の創刊以来、計11冊発行(当時)した当該季刊誌は、体と心が健康であることを願うウェルネスに基づいた内容を盛り込んだものであり、今回の受賞では、自然と人が調和し、健康を内容としたものである点が評価されたものである。応募企業1,500社の創刊物の中から受賞したという点において、申立人が非常に注目されたことがわかる(甲15)。 エ 小括 申立人は、上述したとおり、商品の品質・商品パッケージのデザイン性・企業活動など、様々な点で権威ある賞を受賞しており、申立人の名称は広く知られるものとなっている。 以上より、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の名称・ハウスマークである引用商標は、韓国をはじめ、日本及び外国において周知・著名であるといえる。 (4)日本における申立人商品の販売について 申立人の化粧品は、日本においても販売されており(甲4)、また、申立人のアロエ原料は、1995年から、株式会社エアーグリーンを通じて日本の多くの製薬会社などに販売されている(甲16)。 以上より、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において日本の需要者・取引者の間で少なくとも周知であるといえる。 (5)小括 上記(1)ないし(4)より、(ア)引用商標は、1995年から韓国においてその使用が開始され、2006年からは申立人のハウスマークとして韓国及び世界各国において使用されていること、(イ)日本においても、1995年から申立人のアロエ原料が継続して販売されていること、(ウ)申立人のアロエ原料は、世界40カ国以上で販売され、化粧品、食品などに用いられており、世界市場の50%以上を占めていること、(エ)申立人商品は、商品の品質のみならず、商品パッケージのデザイン性や企業活動の点でも高く評価され、権威ある賞を受賞していること、などから、申立人のハウスマークである引用商標は、韓国のみならず、日本及び外国において周知・著名であることが明らかである。 2 商標法第4条第1項第11号に該当するものであること (1)本件商標と引用商標との比較 本件商標と引用商標の外観を比較すると、本件商標は、片仮名の標準文字で表された「ユニセラ」であり、引用商標とは、片仮名部分の「ユニヴェラ」において「セ」と「ヴェ」部分の相違しかなく、4文字又は5文字のうち3文字の構成文字が共通している。さらに、需要者・取引者の目につきやすい語頭部分の「ユニ」が共通している。したがって、本件商標と引用商標とは、外観において相紛らわしい印象を与えるほどに近似していることから、両者は外観において類似するといえる。 次に、両者の称呼を比較すると、本件商標は、片仮名の「ユニセラ」に相応して「ユニセラ」の称呼が生じ、引用商標は、片仮名の「ユニヴェラ」、欧文字の「UNIVERA」の文字に相応して、「ユニヴェラ」の称呼が生じる。両者は、共に4音からなるところ、称呼の類否において重要な語頭部分が「ユニ」で共通し、かつ、語尾音が「ラ」で共通する。一方で、唯一相違する「セ」と「ヴェ」に関しては、母音が共通するのみならず、聴別しにくい3音目に位置している。これらのことからすると、当該差異音が称呼全体に与える影響はごく僅かというべきであり、両者は語調・語感が近似し、全体的に近似した印象を与えるものといえる。 特に、引用商標が、上記で述べたとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において日本の需要者・取引者によって広く認識されていることも考慮すれば、需要者が、引用商標と語調・語感が近似する本件商標から引用商標のことを想起して聴き誤まるおそれは高いといえる。 なお、本件商標と引用商標は、共に造語であるため、両者は観念上の相違があるとはいえない。 以上より、両者は少なくとも外観・称呼において相紛らわしい印象を与えるほどに近似することから、類似の商標であるといえる。 (2)本件商標と引用商標の指定商品の比較 ア 本件商標と引用商標1の指定商品の比較 本件商標の第3類「化粧品,入浴剤(医療用のものを除く。)」と、引用商標1の第3類「メーキャップ用化粧品,香水類,オーデコロン,美白化粧品,日焼け止め用化粧品,肌荒れの修復用化粧品(医療用のものを除く。),パウダー状・クリーム状・オイル状・ローション状の日焼け後の手入れ用化粧品,しわ防止用クリーム,ヘアローション,ヘアケア用化粧品,その他の化粧品」とは、指定商品が同一又は類似であり、本件商標の第5類「サプリメント」と、引用商標1の第29類「ビタミン・ミネラル・植物エキスを主成分とする棒状・錠剤状・カプセル状・顆粒状・粉状・液状の加工食品」とは、指定商品が類似である。 イ 本件商標と引用商標2の指定商品の比較 本件商標の第5類「食餌療法用飲料,食餌療法用食品」と、引用商標2の第5類「食餌療法用食品及び飲料」とは、指定商品が同一である。 (3)小括 以上より、本件商標は、引用商標と類似であり、かつ、その指定商品は同一又は類似である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 商標法第4条第1項第10号に該当するものであること 引用商標は、上記で述べたとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において日本の需要者・取引者によって広く認識されており、本件商標と同一又は類似である。加えて、引用商標の商品「化粧品、健康機能食品(サプリメント)」と、本件商標の指定商品、第3類「化粧品,入浴剤(医療用のものを除く。)」、第5類「サプリメント」は同一又は類似である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 4 商標法第4条第1項第15号に該当するものであること 引用商標は、上記で述べたとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、韓国をはじめ、日本及び外国において周知・著名である。加えて、両商標は外観・称呼において共通性が高く、引用商標の商品は「化粧品・食品・医薬品などに用いられるアロエ原料、化粧品、健康機能食品(サプリメント)」であり、本件商標の指定商品、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,入浴剤(医療用のものを除く。),香料」、第5類「サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」とは同一又は近似するものであることも考慮すると、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接する需要者・取引者は、当該商品が申立人の業務に係るもの、または申立人と何らかの関係がある者の業務に係る商品などと誤認するおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 5 商標法第4条第1項第19号に該当すること 引用商標は、上記1で述べたとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、韓国をはじめ、外国において周知・著名である。したがって、本件商標の権利者が、引用商標と類似する本件商標をその指定商品に使用した場合、引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力を毀損させるおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 6 まとめ 以上より、本件商標は、その指定商品中の申立てに係る商品について、商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号の規定に違反して登録されたものであり、その登録は取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知性について (1)申立人の提出に係る証拠及び主張によれば、以下のとおりである。 ア 申立人は、自社のウェブサイトにおいて1976年に韓国に設立された会社であり、1995年からアロエ原料、アロエを用いた健康機能食品や化粧品などの販売を行っている(甲3の1、2)と主張しているが、当該ウェブサイトにおいて、1976年ないし2019年までの会社の歴史が記載されていることは確認できるものの、1976年に設立されたこと及び1995年から引用商標を使用していることの事実は記載されていないものである。また、使用している標章は、別掲3のとおり、univeraの欧文字を緑色で表した標章(構成中の「v」の文字は黄緑色の葉と思しき図形内に白抜きで表わされている。以下「使用標章」という場合がある。)であって、引用商標が申立人商品に使用されていることは確認することができない。 なお、「韓国に400以上の販売代理店と25,000人以上の販売員を有していること」及び「世界的にアロエ分野1位企業で全世界のアロエ原料市場の5割以上シェアしていること」は記載されている(甲3の3、甲4)。 イ 申立人のウェブサイト及び申立人の関連会社のウェブサイトによれば、申立人の製造、販売するアロエを原材料とする化粧品「スキンケア100」は、日本、オーストラリア、ブラジル、中国、コロンビア、エジプト、フランス、インド、ノルウェーで販売されていることがうかがえ、「発売以来10億本以上売れたユニベラ代表定番、スキンケア100」と記載されている(甲5、甲6)。 ウ 申立人及び申立人の化粧品が、韓国等において、「(株)ユニベラ世界一流商品及び生産企業資格維持確認」、「iF DESIGN AWARD 2017」、「2017レッドドット・デザイン賞」、「『南洋アロエマックスP』2016グッドデザイン最優秀賞/中小企業庁長賞」、「ユニベラ、2019大韓民国共感経営大賞健康機能食品部門」、「ユニベラCCM認証『名誉の殿堂』」、「ユニベラ、第6回大韓民国愛される企業、政府賞で持続経営学会会長賞社会的責任経営賞」において持続経営学会の会長賞、社会責任経営賞受賞」、「ユニベラ『2017家族に優しい認証企業』の再選定」及び「地上に植え星2010大韓民国通信大賞受賞」等各賞を受賞していることがうかがえる(甲7?甲15)。 エ 申立人は、申立人の化粧品は日本においても販売され、申立人のアロエ原料は、1995年から、株式会社エアーグリーンを通じて日本の多くの製薬会社などに販売されている旨主張しているが、当該企業の概要によれば、当該企業は、医薬品を輸出する企業であり、アロエベラ原料の化粧品の輸入販売を行っていることは記載されているが、申立人との取引及び我が国の多くの製薬会社に販売されている事実は確認できない(甲16)。 (2)上記(1)によれば、申立人は、1976年に韓国に設立されたと推認され、アロエを原料とする機能性健康食品や化粧品の販売を行う企業であり、韓国を始め日本等にも販売していることはうかがえるとしても、アロエ分野1位企業で全世界のアロエ原料市場の5割以上シェアしていることの記載内容は、申立人作成のウェブサイトの記載であって、それらの事実を裏付ける資料の提出はなく、使用標章が化粧品に使用されていることは認められるとしても、引用商標が使用された商品について、我が国及び外国における販売期間、売上高や市場シェアなどの事業規模、宣伝広告の程度などを具体的に把握し得るものは見いだせず、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の周知性の程度を推し量ることはできない。 さらに、韓国等において申立人及び申立人の化粧品が各賞を受賞していることはうかがえるものの、その詳細な内容は明らかとはいえず、かつ、それらの受賞歴が取引者、需要者の認識にどの程度の影響を与えているのかも明らかではないから、これらをもって、引用商標の我が国及び外国での知名度の高さを推し量ることはできない。 その他、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の取引者、需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。 以上を踏まえると、申立人提出の証拠によっては、引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものとは認めることができない。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は、「ユニセラ」の文字を標準文字で表したものであるから、その構成文字に相応して、「ユニセラ」の称呼を生ずるものである。 そして、当該構成文字は一般的な辞書等に掲載されていないものであって、特定の意味合いを想起させる外来語として認められないものであるから、一種の造語として認識され特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標 引用商標は、別掲1及び別掲2のとおり、「ユニヴェラ」の片仮名と「UNIVERA」の欧文字を上下二段に横書きしてなるところ、上段の片仮名が下段の欧文字の読みを特定したものと容易に理解できるものであり、また、当該文字は、いずれも、特定の意味を有する既成語とは認められず、かつ、特定の意味合いを有する語として一般に親しまれたものともいえないものである。 そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「ユニヴェラ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 (3)本件商標と引用商標との類否 本件商標と引用商標とを比較するに、両者は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成よりなるところ、外観においては、構成中の中間において字形が近似するとはいえない片仮名「セ」と「ヴェ」の差異及び欧文字の有無の差異を有するところ、4文字ないし5文字という短い文字構成における字形の相違の差異を有するものであって、視覚上、別異の印象を与えるものであるから、外観において相紛れるおそれはない。 次に、称呼については、本件商標から生ずる「ユニセラ」の称呼と引用商標から生ずる「ユニヴェラ」の称呼とを比較すると、両者は第3音における「セ」と「ヴェ」に差異を有するものであるところ、この差異は、前者は澄んだ音として聴取される清音であるのに対し、後者は重く響く濁音であって、両者は、比較的短い音で構成されていることとも相まって、両者の称呼全体に与える影響は小さいものとはいえず、これらを一連に称呼した場合、語調、語感が相違し、称呼上相紛れることなく十分に区別し得る。 そして、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じないものであるから比較することができないが、観念において相紛れるものではない。 以上を総合すると、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。 その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。 (4)小括 以上のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第10号該当性について 引用商標は、上記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものであり、上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標である。 そうすると、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品又はこれに類似する商品について使用するものということができない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第15号該当性について 引用商標は、上記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。 そして、上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であり、全体として異なる視覚的印象や記憶を与え、看者に全く別異のものとして認識されるものといえるものであって、類似性の程度は高くないものである。 そうすると、これらの事情を考慮すれば、本件商標の指定商品と引用商標に係る一部の商品とが関連性を有し、需要者が一致するという取引の実情が共通する場合も少なからずあるとしても、本件商標をその指定商品について使用をしても、これに接する取引者、需要者が、引用商標又は申立人を連想、想起することはないというべきであり、本件商標は、その取引者、需要者をして、当該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものとは認められない。 その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第19号該当性について 本件商標と引用商標とは、上記2(3)のとおり、非類似の商標であり、また、上記1(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたとは認められないことから、引用商標が需要者の間に広く認識されていた商標であることを前提に、本件商標は不正の目的をもって使用するものであるとする申立人の主張は、その前提を欠くものである。 また、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足る具体的事実を見いだすこともできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 6 まとめ 以上のとおり、本件商標は、その指定商品中の申立てに係る商品について、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 別掲1(引用商標1) 登録4963918号 別掲2(引用商標2) 登録4972144号 別掲3(使用標章 色彩については、甲第6号証の2参照。) |
別掲 |
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異議決定日 | 2021-08-27 |
出願番号 | 商願2019-113804(T2019-113804) |
審決分類 |
T
1
652・
261-
Y
(W0305)
T 1 652・ 222- Y (W0305) T 1 652・ 263- Y (W0305) T 1 652・ 262- Y (W0305) T 1 652・ 25- Y (W0305) T 1 652・ 271- Y (W0305) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小島 玖美、池田 光治 |
特許庁審判長 |
半田 正人 |
特許庁審判官 |
佐藤 松江 平澤 芳行 |
登録日 | 2020-11-02 |
登録番号 | 商標登録第6311020号(T6311020) |
権利者 | 相生ユニビオ株式会社 |
商標の称呼 | ユニセラ |
代理人 | 加藤 大輝 |
代理人 | 特許業務法人R&C |
代理人 | 後藤 憲秋 |