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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W41
管理番号 1378048 
異議申立番号 異議2020-900071 
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-09 
確定日 2021-05-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第6214710号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6214710号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6214710号商標(以下「本件商標」という。)は、「日本シャンパンタワー協会」の文字を標準文字で表してなり、平成31年3月25日に登録出願、第41類「セミナーの企画・運営又は開催,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」を指定役務として、令和元年12月25日に登録査定され、同2年1月8日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により取り消されるべきである旨申立て、その理由を、要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第47号証(枝番号を含む。)を提出した。
本件商標は、「シャンパン」の片仮名を含んだものであるところ、当該文字は発泡性ぶどう酒の著名な原産地統制名称であって、その使用が厳格に管理・統制されているものである。
そして、本件商標は、この著名な原産地統制名称に化体した高い名声及び信用にフリーライドするものであり、これを原産地からかけ離れた特定人の商標として登録し使用することは、厳格に管理統制されている上記原産地統制名称を稀釈化させるものである。
したがって、本件商標は、公正な取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあるというべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 具体的理由
(1)原産地統制名称又は原産地表示としての「シャンパン(CHAMPAGNE)」
ア 原産地統制名称又は原産地表示の統制と保護
申立人は、「シャンパーニュ地方ぶどう酒生産同業委員会」を意味する“COMITE INTER PROFESSIONNEL DU VIN DE CHAMPAGNE”(「COMITE」の「E」には、アクサン記号が付されている。(略称 C.I.V.C.))の名のもとに、フランス国シャンパーニュ地方における酒類製造業者の利益の保護を目的の一つとして設立されたフランス法人である(甲2?甲5、甲24、甲33)。
フランス国においては、原産地統制名称又は原産地表示が厳格に統制されており、その中核をなすのが、1935年に制定された原産地統制呼称法(Appelation d’Origine Controlee(「Controlee」の6文字目の「o」及び8文字目の「e」には、アクサン記号が付されている。))である(甲6?甲8、甲14、甲15、甲18、甲25の5の第215頁、甲33、甲37)。この法律は、優れた産地のぶどう酒を保護・管理することを目的とし、政府機関のINAO(Institut National des Appellation d’Origineの略称)によって運用されている(甲2、甲9、甲33の2、甲37)。同法において原産地統制名称ぶどう酒(A.O.C.)は、原産地、品質、最低アルコール含有度、最大収穫量、醸造法等の様々な基準に合うように製造されなければならず、その基準に合格してはじめてA.O.C.名称を使用することができる。しかし、鑑定試飲会の際に不適当であるとみなされたものは、名称使用権利を失うことになっており、厳格な品質維持が要求されている。原産地統制名称は、産地の名称を法律に基づいて管理し、生産者を保護することを第一の目標とし、また、名称の使用に対する厳しい規制は、消費者に対して品質を保証するものとなっている。
さらに、ヨーロッパにおいては、限られた地域で特定の材料・製法により生産される農産物等の伝統的特産物が数多く存在している。かかる伝統的特産物には、他の地域の産物との区別のため産地名が使用され、特に良質な産品については国際的に名声を得たものについて、その産地を保護する必要性が生じてきたことから、ヨーロッパ連合は、1992年に農産物の原産地表示保護のために理事会規則2081/92号を制定した。本規則で保護される原産地表示は、本規則にて定められた品目に限られ、EC委員会において審査された後「保護地理的表示(protected geographical indication)」ないしは「保護原産地呼称(protected designation of origin)」として登録された場合、規則2081/92号の保護対象となりヨーロッパ全土で保護される。なかでも「保護原産地呼称」として認定されるためには、定められた製法で生産・加工・調整されることを要するといった非常に厳格な基準が設けられている。上記のとおり、ヨーロッパでは、原産地表示保護のための独自の制度を設けることにより、原産地表示を手厚く保護している(甲10)。「Champagne(シャンパン)」は、最も厳しい基準を要求される「保護原産地呼称」として認定され、ヨーロッパにおいて保護されている(甲11)。
イ 「シャンパン」表示の著名性及び顕客吸引力
「シャンパン」(CHAMPAGNE)は、原産地統制呼称法による原産地統制名称であり、シャンパーニュ地方産の発泡性ぶどう酒にのみ使用を許される名称であって、この表示を付した商品(シャンパン)は、我が国においても高品質で稀少価値を有する商品として広く販売されており、産地を表示する標章の代表的なものの一つとして極めて著名となっている。
上記事実は、書籍、雑誌及び新聞等における記載から明らかであり(甲12?甲38)、「CHAMPAGNE(シャンパン)」が、(ア)フランス北東部の地名であり、同地で作られる発泡性ぶどう酒をも意味する語であること、(イ)生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランス国の原産地統制名称であること、(ウ)「CHAMPAGNE」を表す邦語として「シャンパン」が普通に使用されていること、(エ)シャンパンが発泡性ぶどう酒を代表するほど世界的に著名であること、(オ)日本国において数多くの辞書、事典、書籍、雑誌及び新聞等がシャンパンの説明に多くの紙面を割いていることなどが認められる。
これらを総合すると、日本国において、「CHAMPAGNE(シャンパン)」の表示は、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られ、当該表示には多大な顧客吸引力が備わっていることは明らかである。
申立人は、フランス国やINAO等と共に、「シャンパン」表示が有するこのような著名性及びそれに伴う顧客吸引力の維持のために永年努力を重ねてきた。すなわち、国内外の需要者・取引者が想起する「シャンパン」表示の信頼性や評判を損なわぬよう、シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者を厳格に管理・統制し、厳格な品質管理・品質統制をし、これらの者と関係のない他人が「シャンパン」を無断で使用あるいは登録することにより、申立人やINAO、そして、シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者らの努力により蓄積・維持されてきた「シャンパン」表示のイメージが毀損されることを防止するための活動を積極的に行ってきた。このような申立人の努力により、「シャンパン」表示は、現在まで長期にわたり著名性を保ち続け、高い名声、信用、評判が形成されているものであり、ぶどう酒の商品分野に限られることなく一般消費者に至るまで、多大な顧客吸引力が化体するに至っている。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 商標法第4条第1項第7号の趣旨について
商標法は、不正競争防止法と並ぶ競業法であって、登録商標に化体された営業者の信用の維持を図るとともに、商標の使用を通じて商品又はサービスに関する取引秩序を維持することをその目的としている。そして、商標法第4条第1項第7号は、上記目的を具現する条項の一つであり、過去の裁判例や審決によれば、その商標の構成自体がきょう激、卑わいな文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、その時代に応じた社会通念にしたがって検討した場合に、当該商標を採択し使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、あるいは他の法律によってその使用が禁止されている商標若しくは国際信義に反するような商標である場合も含まれるものとみるのが相当と解されている(甲38の1、甲39等)。
また、平成17年(行ケ)第10349号(甲40の1)は、いかなる商標が商標法第4条第1項第7号公序良俗に反するかにつき、以下のとおり、5つの具体的事情を考慮して検討すべきとの指針を示してしいる。
「『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』には、(ア)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(イ)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(ウ)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(エ)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(オ)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。」
さらに、どのような商標登録が特定の国との国際信義に反するかどうかについても、「当該商標の文字・図形等の構成、指定商品又は役務の内容、当該商標の対象とされたものがその国において有する意義や重要性、我が国とその国の関係、当該商標の登録を認めた場合にその国に及ぶ影響、当該商標登録を認めることについての我が国の公益、国際的に認められた一般原則や商慣習等を考慮して判断すべきである。」と当該判決の中で判示されている。
また、「商標審査基準」は、「特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する」商標を、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当することを明確に定めている(甲40の2)。
イ 著名な原産地名称については保護すべきであることについて
著名商標の保護については、従前より、周知、著名商標の保護の明確化の要請が高まってきたことに伴い、国内又は外国において広く認識されている商標が不正な目的で使用されることを防ぐことを目的として、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)により、商標法第4条第1項第19号の規定が不登録事由として設けられており、「商標審査便覧」においては、商標法第4条第1項第19号の趣旨に関して、「多年に亘って企業が努力を積み重ね、多大な宣伝広告費を掛けることにより、需要者間において広く知られ、高い名声、信用、評判を獲得するに至った周知、著名商標は、十分に顧客吸引力を具備し、それ自体が貴重な財産的価値を有するものといえる。これらの周知、著名商標については、第三者の使用により出所の混同のおそれまではなくとも、出所表示機能を稀釈化させたり、その周知、著名商標のもつ名声を毀損させることが可能であり、このような目的を持った不正な使用から十分保護する必要がある。」と説明されている。
一方、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字は、上述したように著名なフランスの原産地統制名称として、その使用が厳格に管理・統制されているものであって、申立人による長年にわたる品質管理・品質統制の努力の結果、高い名声、信用、評判が形成されているものであり、ぶどう酒の商品分野に限られることなく一般消費者に至るまで、世界的に著名な原産地名称として広く知られている。
原産地名称は、商品が産出された土地の地理的名称をいい、商標とは、地理的名称に限定されること及びその商品の品質、社会的評価、その他の特性が、産出地固有の気候、地味等の自然条件又は産出地の人々が有する伝来の生産技術、経験若しくは文化等の人的条件といった地理的要因に基づくこと等の点において異なるが、商品の出所表示機能、品質保証機能及び広告機能を有する点において、共通しているものと考えられる。そうすると、原産地名称のうち、著名な標章については、著名商標の有するこれら機能が商標法によって保謹されているのと同様に保護されることが望ましいというべきである(甲41の2)。
したがって、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」には、著名な原産地名称を含む表示からなる商標を同法第4条第1項第17号によって商標登録を受けることができないとされているぶどう酒又は蒸留酒以外の商品に使用した場合に、当該表示へのただ乗り(フリーライド)又は当該表示の稀釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがある等公正な取引秩序を乱すおそれがあると認められるものや国際信義に反すると認められるものも含まれると解すべきである。
ゆえに、著名な原産地名称を原産地と離れた特定個人又は企業が自己の商標として登録し使用することは、商標法第4条第1項第7号に該当するものとして認められるべきではなく、商標法の下、著名な原産地名称については保護されるべきである。
ウ 本件商標について
本件商標は、「日本シャンパンタワー協会」の文字を横書きした商標であるところ、著名な原産地統制名称に相当する「シャンパン」の片仮名をそっくりそのまま含んでいる。また、本件商標中の「日本」部分は、我が国を指称する文字として極めて親しまれているから、役務の提供地を認識させる部分として、自他役務識別標識機能を果たし得ず、「協会」の部分についても、何らかの団体であることの表示として使用されるものにすぎない。さらに、「シャンパンタワー」部分についても、そのうち「シャンパン」の語が、フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒を意味するものとして、周知、著名であり、当該表示には多大な顧客吸引力が備わっていることに照らすと、本件商標に接した取引者・需要者が有する通常の注意力としては、「シャンパン」の部分に強く印象付けられ、ここから発泡性ぶどう酒又はその著名な原産地統制名称を想起、連想して、著名な原産地統制名称である「シャンパン」を含む商標という印象をもって取引にあたると考えられる。このことは、申立人が「飲食物の提供」等を指定役務とする商標「シャンパンタワー」(登録第5362124号商標)に対して請求した商標登録無効審判の審決取消訴訟事件(甲38の1)においても認められていることである。
したがって、本件商標は、その構成上、「シャンパン」部分が強く看者の印象に残るものである。
エ 本件商標が国際信義に反することについて
上述のとおり、「CHAMPAGNE(シャンパン)」が、(ア)フランス北東部の地名であり、同地で作られる発泡性ぶどう酒をも意味する語であること、(イ)生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランス国の原産地統制名称であること、(ウ)「CHAMPAGNE」を表す日本語として「シャンパン」が普通に使用されていること、(エ)シャンパンが発泡性ぶどう酒を代表するほど世界的に著名であること、(オ)日本国において数多くの辞書、事典、書籍、雑誌及び新聞等がシャンパンの説明に多くの紙面を割いていることなどが認められる。
これらを総合すると、我が国では、本件商標の登録査定時において、「シャンパン(CHAMPAGNE)」が、著名な原産地統制名称として一般需要者の間に広く知られていたことは明らかである。
したがって、著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」は、極めて高度な商品の出所表示機能、品質保証機能及び広告機能を有する著名商標と同様に、商標法によって保護されるべきものである。
上述のとおり、本件商標は、高度な著名性を有する原産地統制名称である「シャンパン」の文字の部分が強く印象に残るものであり、本件商標を使用した役務に接した取引者・需要者の通常の注意力からすれば、本件商標は、容易かつ直感的に、当該原産地統制名称である「シャンパン」を想起させるものといえる。本件商標における「日本」や「協会」の部分は自他役務識別力を有さない部分であることから、「シャンパンタワー」の部分は一連にのみ称呼すべき部分であると考える余地もあるが、仮に「シャンパンタワー」の部分が一連一体の部分であるとしても、本件商標が周知、著名な原産地統制名称であり、当該表示には多大な顧客吸引力が備わっている「シャンパン」の文字を明確に含む以上、本件商標を「シャンパン」から離れた全く別の意味を生じる部分と考えるべき合理的な理由はなく、「シャンパン」という称呼及び観念が生じるものである(甲38の1)。この点については、商品の品質誤認(商標法第4条第1項第16号)該当性に関する判決(甲38の2)であるが、「造語であるが故に、直ちに無意味な語として一体にのみ把握しなければならないという合理的根拠はない」と明確に述べているところであって、同判決の判断に照らせば、同判決の説示は、本件商標にもそのまま当てはまり得るものである。
申立人は、INAO等とともに、フランス国内外の需要者・取引者が想起する「シャンパン」表示の信頼性や評判を損なわぬよう、シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者を厳格に管理・統制し、厳格な品質管理・品質統制をし、これらの者と無関係の他人が「シャンパン」を無断で使用ないし登録することで、申立人や、INAO、そして、シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者らの努力により蓄積・維持されてきた「シャンパン」表示のイメージが毀損されることがないように活動を続けてきた。そのような申立人らの努力により、「CHAMPAGNE(シャンパン)」は、現在まで長期にわたって著名性を保ち続け、高い名声、信用、評判を獲得してきたのであり、その結果、ぶどう酒の商品分野に限られることなく、一般消費者に至るまで、強大な顧客吸引力が化体するに至っているのである。当該名称は、フランス国による原産地統制名称法に基づき指定されたぶどう酒として厳格にその使用を規制されているものであるところ、申立人は、「シャンパン」表示のイメージが毀損される可能性がある限り、「CHAMPAGNE(シャンパン)」の語をそっくりそのまま含むものに限らず、これをもじった名称や商標等についても、「シャンパン」表示を軽蔑ないし嘲笑するがごときものとして、フランス国において、不快感などの国民感情を生じさせるおそれがあるため、当然に使用が規制されるべきものと考える。本件商標が日本国において登録を認められるような事態となれば、その判断は、こうした「シャンパン」表示に関してフランス政府が国を挙げて取り組んでいる統制ないし歴史を全く理解していないか、又は、極めて軽視ないしは無視したものであるのみならず、「シャンパン」表示に対してフランス国民が抱いている誇りや名誉といった国民感情をないがしろにするものといわざるを得ない。
なお、本件商標の商標権者である「一般社団法人日本シャンパンタワー協会」の登記情報によると、その代表理事は、申立人が商標登録無効審判を請求し無効審決が認められた「シャンパンタワー」(登録第5362124号商標)の商標権者の代表者を務めている。本件商標は、「シャンパンタワー」の登録を無効とされた同氏が、名称の一部に「シャンパン」の文字を含ませた一般社団法人に主体を変更し、「シャンパン」の文字を含む商標の再登録を企図したものであることが優に推認されるところであるが、商標を「日本シャンパンタワー協会」に変更したところで、「日本」、「シャンパン」及び「協会」を含む態様の商標は、日本国に所在するシャンパンに関する団体(協会)であることを容易に感得させるものにほかならないから、まさに日本のシャンパン協会という観念を想起させ、周知、著名な原産地統制名称を長年管理・統制してきた申立人等と関連のある団体であるかのような誤認混同を生じさせるものである。その点からも、本件商標を登録することは申立人だけでなく、フランス国及びフランス国民の感情を考え見ても許されるべきものではない。
したがって、本件商標は、上記原産地統制名称の稀釈化をきたすおそれがあり、また、フランス国民の不快感などの国民感情を生じさせるおそれもあるため、国際信義に反するといわざるを得ないものである。
オ 裁判例等
知的財産高等裁判所は、「飲食物の提供」等を指定役務とする商標「シャンパンタワー」につき、同商標は国際信義に反するものであるから商標法第4条第1項第7号に該当すると判断した無効審決を支持する判断をした(甲38の1)。
さらに、眼鏡等を指定商品とする登録商標「envie CHAMPAGNE GRAY/アンヴィ シャンパングレイ」について申立人が無効審判を請求した件につき、知的財産高等裁判所は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標として、同商標の登録を無効とする旨の判断をしている(甲46)。
一方、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字をその構成に含む商標に関し、その指定商品・指定役務を問わず、同号に該当すると判断した審決及び異議決定は多数存在する(甲41の1?甲41の33)。
上記の審決及び異議決定は、指定商品・指定役務にかかわらず、「『Champagne』『シャンパン』の表示を発泡性ぶどう酒とは商品の性質上相容れない商品に使用する場合であっても、同表示が付された発泡性ぶどう酒に対する不快感を需要者に抱かせ、同表示の汚染(ポリューション)を生じさせるおそれがあり、さらにシャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造業者はもとより、国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。」といった判断をしている(甲41の1等)。
また、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の語について、日本国においても「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして一般需要者の間に広く知られていると認定し、「これを指定商品又は指定役務に使用するときは、著名な『CHAMPAGNE』『シャンパン』の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造業者はもとより国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである」として、これらを含む商標を「公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあるものというのが相当である」と判断している(甲41の2、甲41の17、甲41の21、甲41の23、甲41の26、甲41の30、甲41の32)。
こうした多数の先例が示す判断に照らせば、「シャンパン」の文字をその構成に含む商標は、国際信義に反するものであり、公序良俗に違反するとの登録実務が定着しているといえ、原産地統制名称として著名な「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」を想起させる以上、シャンパン表示に対するただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造業者はもとより国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあることは明らかであるから、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるとして、公の秩序を害するおそれがあるものといわなければならない。
さらに、無効審判や登録異議申立てで争われるまでもなく、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字をその構成に含む多数の商標出願が、公正な取引秩序を乱し国際信義に反することから商標法第4条第1項第7号に該当するとして、拒絶査定又は拒絶審決となっている(甲42の1?甲42の31の2)。
なお、原産地統制名称を含む商標については、「CHAMPAGNE(シャンパン)」に限らず、その稀釈化を引き起こすおそれや公正な競業秩序を乱すおそれがあるとして、商標法第4条第1項第7号に該当すると判断された先例が多数存在する(甲43の1?甲43の12)。
これらの異議決定や審決は、いずれも、当該商標に含まれる原産地名称が、フランス国が国内法令を制定し、申立人やINAO等が中心となって統制、保護を図ってきたものであること、当該原産地名称が著名性を獲得したものであることを理由に挙げており、さらに、当該商標をその指定商品等に使用するときは、著名な原産地名称の表示へのただ乗り(フリーライド)や同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、生産者及び製造業者はもとより、国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるなどと判断している。
このように、「CHAMPAGNE(シャンパン)」以外の原産地名称を含む商標に対して下された異議決定及び無効審決に照らしても、本件商標をその指定役務に使用した場合において、著名性を獲得した原産地名称である「CHAMPAGNE(シャンパン)」の表示ヘのただ乗り(フリーライド)及び同表示の稀釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあることのみならず、本来、限定された発泡性ぶどう酒にのみ付されるべき同表示が、別の商品・役務に使用されることによって、同表示の汚染(ポリューション)を生じされるおそれがあり、また、国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあることは明らかというべきである。
したがって、本件商標を登録することは、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあると判断されるのが相当であり、商標法第4条第1項第7号により取り消すべきものである。
カ 諸外国でのケースについて
著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」が、その著名標章の信用へのフリーライドから引き起こされる不利益から保護されるべきであることは、申立人らがフランス・イギリス・スイス等において提訴した事件において認められている(甲2、甲3、甲44、甲45)。
地理的名称に対する保護活動は欧州のみにとどまらず、カナダにおいても、INAOが、カナダ産のスパークリングワインについて、「CHAMPAGNE」と呼称することに異議を申し立てた。同事件では、シャンパンメーカーが、1933年のカナダ及びフランスの二国間条約に基づいて、カナダの生産者による「CHAMPAGNE」という名称の使用が保護されるべきであると主張した結果、シャンパンメーカーの訴えが認められている(甲8)。
(3)結び
以上のとおり、著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」は、フランス国の政府機関たる申立人による不断の努力によって、高い名声・信用・評判が維持されているのであって、これを容易に想起させ、原産地とかけ離れた特定人が自己の商標として登録し使用することは、公序良俗を害するものであるというべきである。すなわち、本件商標は、著名な原産地名称である「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の名声をせん用し、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」に化体している高い名声・信用・評判から不正な利益を得るために使用する目的でなされたものであるから、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」という表示へのただ乗り(フリーライド)、同表示の稀釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあり、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるため、商標法によって登録され、保護されるに値しない商標というべきである。
以上のように、本件商標は、商標法第第4条第1項第7号に該当するから、同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきものである。

第3 取消理由の通知
当審において、商標権者に対し、「『Champagne(シャンパン)』の文字がフランスにおいて有する意義や重要性、『Champagne(シャンパン)』の語及びその商品(シャンパン)に係る申立人やフランスの公的機関などの活動、我が国における周知著名性等を総合的に考慮すると、本件商標をその指定役務について使用することは、フランスのシャンパーニュ地方のぶどう酒製造業者の利益を代表する申立人ばかりでなく、法令により『Champagne(シャンパン)』の名声、信用、評判を保護してきたフランス国民の国民感情を害し、我が国とフランスとの友好関係にも好ましくない影響を及ぼしかねないものであり、国際信義に反し、両国の公益を損なうおそれが高いものといわざるを得ないから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨の取消理由を令和2年12月2日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。

第4 商標権者の意見
上記第3の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。

第5 当審の判断
1 「シャンパン(Champagne)」の語について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、「シャンパン」の語は「Champagne」を表す邦語であり、正式には「バン(ヴァン)・ド・シャンパーニュ」といい、「フランス北東部シャンパーニュ(Champagne)地方で生産されたスパークリングワイン」を意味するものであること(甲12?甲15ほか)、「世界の名酒事典」、「The一流品」、「男の一流品大図鑑」などの雑誌、書籍、新聞で昭和55年から平成28年まで多数紹介等されていること(甲20?甲33ほか)、それらの中には、「・・・シャンパンの名声を、ヨーロッパのみならず世界的なものにしたのであった。」(甲21)、「この地でつくられるスパークリングワインのシャンパンは、スパークリングワインの代名詞として使用されるほど、世界で最も有名なワインのひとつです。」(甲23)のような記載のほか、スパークリングワインの説明として「・・・シャンパンがその代表で別格扱いされるが、世界のワイン地帯にはほとんどある。」(甲25の1)などと紹介しているものがあることが認められる。
(2)また、フランスにおいて、1908年(明治41年)には法律により「Champagne」という名称が法律上指定され、1935年に制定された原産地統制呼称法(AOC)などにより、原産地統制名称として、公立行政機関である原産地名称国立研究所(INAO)が定める生産区域、ブドウ品種、生産高、最低天然アルコール純度、栽培方法、醸造方法、蒸留方法に関する諸条件を満たすぶどう酒のみが、その名称として「Champagne」(シャンパン)を使用する権利を有するとされ、その品質について厳格な管理・統制が行われていること(甲3?甲7、甲9、甲15、甲36、甲37)、申立人である「コミテ アンテルプロフェッショネル デ ヴァン ドゥ シャンパーニュ(シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会)」は、フランスのシャンパーニュ地方における酒類製造業者の利益の保護を目的の一つとして設立された法人であり、フランス国内及び国外において、シャンパーニュ地方産のワインの販売促進、「シャンパン(Champagne)」の原産地統制名称を保護する等の活動を、上記INAOなどと共に行っていること(甲2?甲5、甲8、甲38の1、甲41、甲43)が認められる。
(3)上記(1)及び(2)からすれば、「シャンパン(Champagne)」の語は、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものであり、生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒にだけ使用できるフランスの原産地統制名称であって、本件商標の登録査定時(登録査定日:令和元年12月25日)以前から、我が国において、シャンパーニュ地方産スパークリングワインの名称にとどまらず、発泡性ぶどう酒の代名詞のようなイメージを持たれるほどに取引者のみならず消費者に広く認識され、多大な顧客吸引力を有する極めて著名な表示であったというのが相当である。
そして、その周知著名性、高い名声、信用、評判は、申立人や公立行政機関である上記INAO等の原産地統制名称を保護する活動、努力などにより、獲得、維持されているといえる。
そうすると、「Champagne(シャンパン)」の語及びその商品(シャンパン)は、フランス及びフランス国民の文化的所産というべきものであって、同国及び同国民にとって重要性が極めて高いものである。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、上記第1のとおり、「日本シャンパンタワー協会」の文字からなり、第41類「セミナーの企画・運営又は開催,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」を指定役務としているところ、上記1のとおり、「シャンパン」の文字(語)が、我が国において「フランスのシャンパーニュ地方で生産されたスパークリングワイン(シャンパン)」を表すものとして周知著名なものとなっていることからすると、本件商標に接する者は、その構成中、当該周知著名となっている「シャンパン」の文字部分に着目することが少なくないというのが相当である。
そして、「Champagne(シャンパン)」の文字がフランスにおいて有する意義や重要性、「Champagne(シャンパン)」の語及びその商品(シャンパン)に係る申立人やフランスの公的機関などの活動、我が国における周知著名性等を総合的に考慮すると、本件商標をその指定役務について使用することは、フランスのシャンパーニュ地方のぶどう酒製造業者の利益を代表する申立人ばかりでなく、法令により「Champagne(シャンパン)」の名声、信用、評判を保護してきたフランス国民の国民感情を害し、我が国とフランスとの友好関係にも好ましくない影響を及ぼしかねないものであり、国際信義に反し、両国の公益を損なうおそれが高いものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項の規定に違反してされたものと認められるから、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
異議決定日 2021-03-31 
出願番号 商願2019-42107(T2019-42107) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (W41)
最終処分 取消  
前審関与審査官 藤田 和美 
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 杉本 克治
冨澤 美加
登録日 2020-01-08 
登録番号 商標登録第6214710号(T6214710) 
権利者 一般社団法人日本シャンパンタワー協会
商標の称呼 ニッポンシャンパンタワーキョーカイ、シャンパンタワーキョーカイ、シャンパンタワー 
代理人 田中 克郎 
代理人 池田 万美 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 阪田 至彦 
代理人 稲葉 良幸 
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