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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W43
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W43
管理番号 1378043 
異議申立番号 異議2020-900205 
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-17 
確定日 2021-08-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第6256780号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6256780号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6256780号商標(以下「本件商標」という。)は、「小蒙牛」の文字を標準文字で表してなり、平成31年4月25日に登録出願、第43類「中華料理を主とする飲食物の提供,四川料理の提供」を指定役務として、令和2年4月3日に登録査定、同年6月4日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第3条1項柱書に違反し、同法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号によって取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第29号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第19号について
(1)申立人商標「蒙牛」の著名性について
申立人は、1999年に設立された、乳製品の製造・販売を行う中国の企業であり、年間生産量が922万トン、売上は、2017年に601.56億元(約9千4百億円)、2018年に700億元(約1兆1千億円)、2017年は世界の乳業企業の売上ランキングで第10位、そして、9年連続で世界の乳業企業の売上ランキングでベスト20に入っており、乳業の分野において、中国のみならず、世界でも有数の乳業メーカーである(甲2)。
また、2002年には、申立人が保有する「蒙牛」(以下「申立人商標」という。)の商標が、中国国家工商行政管理総局商標局より、馳名商標に認定されている(甲7)。
さらに、申立人商標は、2013年から2019年の間に、中国国内のブランドベスト500に入っており、2017年を除いた、いずれの年でも100位以内に選ばれている(甲8)。
加えて、申立人は、「他局面、多角度、全方位」の広告宣伝方法で、会社のイメージと商標のブランドイメージを立て、商標の知名度と質を上げるべく、市場を開拓しており、その多角的な広告宣伝の結果として、2019年の広告宣伝費は約29億元(約470億円)であり(甲11)、また、申立人の製品は、中国政府機関からその品質力が認められ、様々な賞を受賞していることからも、申立人を表す「蒙牛」は、高いブランド力を有している(甲13)。
以上より、申立人商標は、中国において、需要者の間に極めて広く認識されている商標であると判断されてしかるべきである。
(2)商標の類否について
本件商標は、「小蒙牛」を標準文字で表してなるところ、中国の需要者の間に極めて広く知られている申立人商標と、「小さい」を意味し、自他商品役務識別力が欠如しているか、又は極めて弱い「小」の文字を結合した構成からなる商標である。
また、申立人商標である「蒙牛」は、中国政府機関からも認められているとおり、申立人を表すハウスマークとして極めて著名であって、かつ、「蒙牛」は全体として一つの既成語又は既成語の一部ではないという点に照らせば、本件商標は、中国で極めて著名な申立人商標を含む構成となっており、申立人商標と極めて類似する商標である。
(3)商標権者の不正の目的について
申立人商標は、申立人を表すハウスマークとして極めて著名であり、本件商標は、申立人商標に、自他商品役務識別力が欠如しているか、又は極めて弱い「小」の文字を結合させた構成からなる商標であるため、両商標は、全体としても「蒙牛」を容易に感得できる構成となっており、両商標は極めて類似する商標であると容易に判断することができる。
また、申立人商標は、特定の意味を有さない造語である。
そのため、本件商標権者は、申立人の中国における著名な商標と極めて類似する商標について、不正の目的をもって使用するものと推認することができる。
さらに、本件商標権者は、2020年11月現在で合計22件を登録出願し、そのうちの17件(合議体注:申立人が具体的に挙げているのは9件である。)は極めて短期間に登録出願を行っているが、申立人が確認した限りでも、その半数以上は、中国や台湾をはじめとした外国において著名な商標と同一又は類似の商標、又は著名ではない場合であっても、同一の商標について登録出願を行っている。
この事実に鑑みても、本件商標権者は、外国の周知著名表示へのフリーライド等といった不正の目的を有して大量の登録出願を行っていたと推認することができる。
そして、本件商標権者は、本件商標についても、短期間に行われた大量の登録出願と同時期に登録出願を行っている。
また、申立人は、中国の企業であることから、本件商標に係る指定役務「中華料理を主とする飲食物の提供,四川料理の提供」とは極めて強い関連性を有している。
そのため、本件商標権者は、中国で極めて著名な申立人商標と極めて類似する本件商標について、偶然に想起し、登録出願をしたとは考えがたく、その著名表示へのフリーライドといった不正の目的を有していると判断されてしかるべき状況にある。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は、中国の需要者の間に極めて広く認識されている申立人商標に、自他商品役務識別力が欠如する、又は極めて弱い「小」の文字を結合させたのみである。
そして、「小蒙牛」は既成語の一部となっているといった事実はなく、また、「蒙牛」は、特定の意味を有しない造語であることから、本件商標権者は、中国における著名表示に対するフリーライドといった不正の目的をもって、本件商標を登録出願したものと推認される。
また、本件商標の登録を維持し、その使用を認める場合には、著名商標である申立人商標に対する出所表示機能が希釈化され、さらに、その信用や名声を毀損させることになる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
2 商標法第4条第1項第7号について
本件商標権者は、短期間に、大量に、他人が既に使用している造語からなる商標と同一又は極めて類似の商標を、剽窃的に登録出願しており、本件商標についても、著名な商標についてフリーライドといった不正の目的をもって登録出願を行っている状況にあってしかるべきであって、その出願経緯に社会的相当性が欠けていることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
3 商標法第3条第1項柱書について
本件商標権者は、極めて短期間に、大量の登録出願を行っているが、その大半が通常では想起されないような造語からなる商標であるにもかかわらず、当該商標と同一又は極めて類似する商標が、同一の指定商品・指定役務の範囲において、既に他人により、外国で登録出願ないし登録されている事情が存在するから、中国で極めて広く認識されている申立人商標と極めて類似する本件商標についても、その使用の意思に合理的な疑義が生じることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に違反する。

第3 当審における取消理由の要旨
当審において、本件商標権者に対し、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に違反し、かつ、同法第4条第1項第7号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである旨の取消理由を令和3年3月8日付けで通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

第4 本件商標権者の意見
本件商標権者は、前記第3の取消理由に対し、指定した期間内に何ら意見を述べていない。

第5 当審の判断
1 申立人商標の著名性について
申立人は、1999年に設立された、乳製品の製造・販売を行う中国の企業であり、年間生産量は、922万トン、売上は、2017年に601.56億元(約9千4百億円)、2018年に700億元(約1兆1千億円)、9年連続で世界の乳業企業の売上ランキングでベスト20に入っており、2017年は、当該ランキングで第10位となっていることがうかがえる(甲2)。
また、申立人が乳製品に使用する「蒙牛」の商標は、2002年に、中国国家工商行政管理総局商標局より、馳名商標に認定されており、さらに、「蒙牛」の商標は、中国ブランドベスト500ランキングにおいて、2013年に62位、2014年に58位、2015年に78位、2016年に46位、2018年に70位、2019年に60位と上位に位置している(甲7、甲8)。
以上からすると、申立人は、世界の乳業企業として上位のランキングに位置し、申立人の業務に係る乳製品について使用する「蒙牛」の商標は、中国において、馳名商標に認定されていることから、当該「蒙牛」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「乳製品」を表示する商標として、少なくとも中国における需要者の間において広く知られているといい得るものである。
2 本件商標権者の登録出願の状況について
本件商標権者は、平成31年4月25日から令和元年5月7日までの短期間に、本件商標以外に、以下の(1)ないし(8)の8件の登録出願をしており、これらは、第三者である中国やアメリカ合衆国、台湾など外国の事業者が使用する店名、商品名等を表す商標(以下「第三者商標」という。)と同一又は類似の商標といえる(甲14、甲18?甲29)。
(1)登録第6256779号商標
商標の構成:舌尖尖(標準文字)
登録出願日:平成31年4月25日
指定役務:第43類「中華料理を主とする飲食物の提供,四川料理の提供」
(2)登録第6295711号商標
商標の構成:龍茶 LONGCHA(標準文字)
登録出願日:平成31年4月25日
指定商品及び指定役務:第30類「加工済み茶葉,紙製ティーバッグ入り茶,香味を有する茶,茶飲料,茶を使用したココア飲料,茶を使用したコーヒー飲料,茶を使用したチョコレート飲料,はちみつ,氷,アイスクリーム,砂糖,果糖,クッキー,洋菓子,キャンディー」及び、第43類「飲食物の提供,茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供,レストラン・軽食堂・喫茶店・簡易食堂及びファーストフード店における飲食物の提供,移動販売車による飲食物の提供,移動式店舗による飲食物の提供」
(3)商願2019-69845号
商標の構成:Saigon to Paris(標準文字)
登録出願日:平成31年4月26日
指定役務:第43類「コーヒーを主とする飲食物の提供,その他の飲食物の提供」
(4)商願2019-69847号
商標の構成:SECOND CUP(標準文字)
登録出願日:平成31年4月26日
指定役務:第43類「コーヒーを主とする飲食物の提供,その他の飲食物の提供」
(5)商願2019-69850号
商標の構成:麻辣誘惑(標準文字)
登録出願日:平成31年4月26日
指定役務:第43類「中華料理を主とする飲食物の提供」
(6)商願2019-70461号
商標の構成:云楠俚(標準文字)
登録出願日:令和元年5月7日
指定役務:第43類「中華料理を主とする飲食物の提供」
(7)商願2019-70462号
商標の構成:春芳号(標準文字)
登録出願日:令和元年5月7日
指定商品及び指定役務:第30類「加工済み茶葉,紙製ティーバッグ入り茶,香味を有する茶,茶飲料,ココア飲料,コーヒー飲料,チョコレート飲料,はちみつ,氷,アイスクリーム,砂糖,果糖,クッキー,洋菓子,キャンディー」及び、第43類「飲食物の提供,茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供,レストラン・軽食堂・喫茶店・簡易食堂及びファーストフード店における飲食物の提供,移動販売車による飲食物の提供,移動式店舗による飲食物の提供」
(8)商願2019-70463号
商標の構成:吃茶三千
登録出願日:令和元年5月7日
指定商品及び指定役務:第30類「加工済み茶葉,紙製ティーバッグ入り茶,香味を有する茶,茶飲料,ココア飲料,コーヒー飲料,チョコレート飲料,はちみつ,氷,アイスクリーム,砂糖,果糖,クッキー,洋菓子,キャンディー」及び、第43類「飲食物の提供,茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供,レストラン・軽食堂・喫茶店・簡易食堂及びファーストフード店における飲食物の提供,移動販売車による飲食物の提供,移動式店舗による飲食物の提供」
3 商標法第3条1項柱書該当性について
本件商標権者は、前記2のとおり、平成31年4月25日から令和元年5月7日までの短期間に、「第三者商標」と同一又は類似の商標を、本件商標以外に8件、登録出願しているところ、現在に至るまで、当該商標をその指定商品及び指定役務やその他の業務に使用した事実はうかがわれない。
また、本件商標権者は、前記第3に記載の商標法第3条1項柱書に係る取消理由通知に対し、本件商標の登録査定時において、本件商標を指定役務について使用していること、又は、使用する意思があることを立証すべきところ、何ら答弁していない。
そうすると、本件商標権者は、他者の使用する商標ないし商号について、登録出願をし、登録された商標を収集しているにすぎないというべきであって、本件商標は、登録査定時において、本件商標権者が現に自己の業務に係る役務に使用をしている商標に当たらない上、本件商標権者に将来自己の業務に係る役務に使用する意思があったとも認め難い。
したがって、本件商標の登録は、「自己の業務に係る役務について使用する商標」に関して行われたものとは認められず、商標法第3条第1項柱書に違反するというべきである。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、「小蒙牛」の文字を標準文字で表してなるものである。
そして、本件商標の構成中の「蒙牛」の文字は、前記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「乳製品」を表示する商標として、少なくとも中国における需要者の間において広く知られている商標と同一であることに加え、当該文字は、辞書等に載録が認められない造語といえること、本件商標権者は前記2のとおり、「第三者商標」と同一又は類似の商標を多数出願していること、並びに、本件商標権者が我が国において商取引を行っている事実をうかがわせる証拠を何ら発見することができなかったことを併せ考慮すれば、本件商標は、本件商標権者が、偶然に本件商標を採択したというよりは、むしろ、中国において需要者に広く知られている「蒙牛」の存在をあらかじめ知った上で、我が国においても登録出願されるであろうと推測される商標を、先回りして、不正な目的をもって剽窃的に登録出願したものとみるのが自然である。
そうすると、本件商標は、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべきである。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標というべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書及び同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、その他の登録異議の申立ての理由について判断するまでもなく、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

異議決定日 2021-06-30 
出願番号 商願2019-69207(T2019-69207) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (W43)
T 1 651・ 18- Z (W43)
最終処分 取消  
前審関与審査官 蛭川 一治 
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 杉本 克治
黒磯 裕子
登録日 2020-06-04 
登録番号 商標登録第6256780号(T6256780) 
権利者 李 健
商標の称呼 ショーモーギュー、ショーモーウシ、ショーモー 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 猿山 純平 
代理人 中村 行孝 
代理人 本宮 照久 
代理人 宮嶋 学 
代理人 朝倉 悟 
代理人 高田 泰彦 
代理人 砂山 麗 
代理人 柏 延之 

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