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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1378040 
異議申立番号 異議2021-900026 
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-01-22 
確定日 2021-08-28 
異議申立件数
事件の表示 登録第6311353号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6311353号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6311353号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,令和2年8月24日に登録出願,第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供」を指定役務として,同年10月16日に登録査定,同年11月2日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において,引用する商標は,次の(1)及び(2)のとおりである(以下,これらをまとめて「引用商標」という。)。
(1)商願2020-95427(以下「引用商標1」という。)
商標の構成 Okura(標準文字)
登録出願日 令和2年8月3日
指定役務 第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与」
(2)商願2020-95428(以下「引用商標2」という。)
商標の構成 オークラ(標準文字)
登録出願日 令和2年8月3日
指定役務 第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与」
なお,引用商標1及び引用商標2に係る出願は,現在審査に係属中である。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第8条第1項,同法第4条第1項第8号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第8条第1項について
本件商標は,「OKURA」の欧文字を顕著に表した要素の右側に二段に書した「CLUB&/HOTELS」の要素を配してなるところ,「CLUB&/HOTELS」の要素に含まれる「CLUB」,「&」「HOTELS」の各文字及び記号は,「OKURA」の欧文字の3分の1程度の大きさで表されているばかりか,「OKURA」の要素と「CLUB&/HOTELS」の要素とは異なる書体で表されており,本件商標にあっては,視覚上,「OKURA」と「CLUB&/HOTELS」とに分離され,「OKURA」の欧文字が着目されやすい。
また,「CLUB」の文字は,「社交場,会員制のバーや娯楽場」程度の意味合いを有する英単語であるが,本件商標の指定役務(以下「本件指定役務」という。)との関係では,宿泊施設やホテルグループの名称又は略称と組み合わせて,上質な客室設備やサービスの提供のための会員制度を指称する際に多用されている(甲4)。
さらに,「HOTELS」の文字は,本件指定役務との関係で「(複数の)ホテル」を意味する普通名称であることに加え,「&」の記号は,取引上,類型的に普通に採択される記号であり,これらはいずれも本件指定役務の分野で広く一般的に用いられていることは周知の事実であることをも鑑みると,本件商標中の「CLUB&/HOTELS」の要素は,本件指定役務との関係で自他役務識別機能を発揮するとはいい難い。
したがって,本件商標は,その構成上,「OKURA」の要素と「CLUB&/HOTELS」の要素の大きさ,書体に顕著な差異を有することから,両者を常に一体として把握しなければならない特段の事由は存在しないばかりか,「CLUB&/HOTELS」の要素は本件指定役務との関係で独占適応性が極めて低いことから,「OKURA」の要素のみが自他役務識別機能を発揮する要部として需要者・取引者をして認識され,当該要素に照応した「オークラ」の称呼のみをもって本件商標が実際の商取引に資されることも少なくない。
他方,引用商標1は,「Okura」の標準文字を,また,引用商標2は「オークラ」の標準文字を表してなり,引用商標からは「オークラ」の称呼が自然に生ずるものである。
してみれば,本件商標と引用商標は,「オークラ」の称呼を共通にする類似の商標である。そして,本件指定役務と引用商標の指定役務は,同一又は類似のものである。
したがって,本件商標は,引用商標との関係において,商標法第8条第1項に該当する。
(2)商標法第4条第1項第8号について
ア 申立人について
申立人たる株式会社ホテルオークラは,1958年12月11日に大成観光株式会社として創立され,1987年1月1日に商号変更がなされた,東京都港区に所在する,我が国有数のホテル関連事業を営む法人である(甲5)。
申立人の事業内容は,主にホテル資産の所有及びホテル事業会社の所有・管理,チェーンホテルに対する運営受託及び技術指導,ホテル関連事業会社の所有・管理,ホテル事業(開発及び改善)に関するコンサルティングである(甲6)。
イ 「オークラ/Okura」の著名性について
(ア)申立人は,1962年5月20日に「ホテルオークラ東京」を開業し,1973年には別館の開業を経て,2019年に改称された「The Okura Tokyo」の運営に携わっており(甲5),さらに,関連会社である株式会社オークラ ニッコー ホテルマネジメントを介して,複数のブランドの下に多数のホテル運営にも関与している。
株式会社オークラ ニッコー ホテルマネジメントが展開するホテルには,「ホテルオークラ札幌」,「ホテルオークラ東京ベイ」,「オークラ アカデミア パークホテル」,「オークラ千葉ホテル」,「TheOkuraTokyo」,「ホテルオークラ新潟」,「オークラアクトシティホテル浜松」,「京都ホテルオークラ」,「ホテルオークラ神戸」,「ホテルオークラ福岡」,「ホテルオークラJRハウステンボス」など「オークラ/Okura」の名称を冠したものが多数含まれている(甲7,甲18)。
そして,このような「オークラ/Okura」の名称を冠したホテルは国内のみにとどまらず,「オークラ ガーデンホテル上海」,「ホテルオークラマカオ」,「オークラ プレステージ台北」,「オークラ プレステージ台中(2022年開業予定)」,「ホテルオークラマニラ(2021年開業予定)」,「ホテルオークラマニラ(ベイショア)(2023年開業予定)」,「オークラ プレステージサイゴン(2023年開業予定)」,「オークラ プレステージプノンペン(2023年開業予定)」,「オークラ プレステージバンコク」,「オークラ プレステージャンゴン(2021年開業予定)」,「ホテルオークラアムステルダム」として海外でも展開されており,これらの「オークラ/Okura」の名称を冠した国内外の一群の宿泊関連施設で,オークラグループ(以下,申立人及びその関連会社が展開する「オークラ/Okura」の名称を冠したホテルをまとめて「オークラグループ」という。)が形成されている(甲17)。
(イ)オークラグループで中核をなす「The Okura Tokyo(旧ホテルオークラ東京)」は,それまでの前近代的なホテル事業を最新の近代的なものに脱皮させ,国際的な超一流のホテルとして世界の人々をもてなすことを目指して,「ベストA.C.S.(A:Accommodation C:Cuisine S:Service=最高の設備,最高の料理,最高のサービス)」の理念の下,1962年5月20日に開業し,それ以来,国内外の多くの宿泊客に利用され,1989年の大喪の礼では13か国の国家元首・5国際機関代表の宿泊の受入れ,1990年の即位の礼でも15か国の国家元首・1国際機関代表の宿泊の受入れを行っている(甲5)。
また,同ホテルは,宿泊施設としてのみならず,1964年IMF国際会議の開催,1977年IMC総会の開催,2012年IMF・世界銀行年次総会の主要会場の提供といった国際的な会議の会場や,各種発表会の会場や婚礼場等としても広く利用されており,さらに,スタッフの熟練性や提供されるサービスの質が高く評価され,1964年東京オリンピック大会における選手村への食堂関係者の派遣,1974年第1回迎賓館運営担当,1974年沖縄海洋博覧会でのエリザベス英国女王主催の英国大使館での夜会担当,1998年長野オリンピックでの「スポンサー・ホスピタリティ・ビレッジ」の飲食サービス担当,2000年九州・沖縄サミットの「アメニティセンター」などでの飲食サービス担当,2007年北海道洞爺湖サミットでの接遇担当,2010年日本APEC首脳晩餐会での料理・サービスの技術支援等といった,ホテル施設外での様々な国際的活動も活発に行っている(甲5)。
このような「ホテルオークラ東京(現The Okura Tokyo)」の運営に携わるスタッフや施設により提供される高水準のサービスは,瞬く間に高く評価され,開業から僅か20年で延べ客数が300万人を超え,また,国内外の数多のVIPにも利用されるに至っている(甲8)。
(ウ)その結果,「ホテルオークラ東京(現The Okura Tokyo)」は,1981年には「インスティテューション・インベスター」誌の世界のベストホテル第2位に,1985年には「EUROMONEY」誌のホテルランキング第1位に,1986年には日経ビジネス誌の「日本の社長,会長が選んだザ・ホテルベスト10」第1位に,1992年ないし1994年には日経ビジネス誌の「トップが選ぶホテルランキング」第1位(3年連続)に,1995年と1996年には「EUROMONEY」誌の世界のベストホテルランキング第3位(1995年),第2位(1996年)にそれぞれ選出されるといった形で,国際的な超一流ホテルとしての名声は国内外に響き渡っている(甲5)。
そして,今日においても,オークラグループ全体としての売上は高水準で堅調に推移すると共に,「The Okura Tokyo」を筆頭とするオークラグループの各ホテルで提供されるサービスも好評を博しており,各種媒体で非常に高い評価を得ている(甲9?甲11)。
(エ)「The Okura Tokyo」を中心とするオークラグループがホテル業界に与える影響力は非常に大きなものであり,その動向は常に注目を浴び,多くの新聞・雑誌の媒体でも取り上げられているものであり,その一例である甲第11号証は,オークラグループが,「オークラ/Okura」の略称をもって広く表記されていることに加え,甲第12号証のように,帝国ホテルやニューオータニと共にいわゆる「ホテル御三家」として併記される場合においても,「ホテルオークラ東京/The Okura Tokyo」のみが「オークラ」といった略称で表現されている。
すなわち,これらの書証からは,「オークラ/Okura」は,オークラグループを指称する略称として需要者にも広く浸透していることが容易に理解できる。
ウ 小括
上述の諸点を総合的に勘案すると,その開業から現在に至るまで約59年もの間,「ベストA.C.S.」を理念としてたゆまぬ努力と高いクオリティのサービスを提供し続け,国際的な超一流のホテルとして世界の人々をもてなすことに成功した,我が国を代表する「ホテルオークラ東京/The Okura Tokyo」が,数多くあるホテルの中でも突出した評価と名声を長きにわたって得続けている著名なホテルであることは疑いのない事実であり,オークラグループの略称たる「オークラ/Okura」も,当然に需要者に認知され,その程度は非常に高く,周知を超越した著名な略称と捉えられる。
したがって,オークラグループの著名な略称「オークラ/Okura」と同視される「OKURA」の欧文字を顕著に表して包含し,かつ,その商標登録することにつき申立人の承諾を得ていない本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標について
本件商標は,「OKURA」の欧文字を顕著に表した要素の右側に二段に書した「CLUB&/HOTELS」の要素を配してなるところ,その構成中の「OKURA」が独立して看取され,「オークラ」の称呼をもって実際の商取引に資されることも少なくない。
イ 出所の混同のおそれについて
(ア)「オークラ/Okura」は,オークラグループの名称の略称として著名であり,この著名性を十分に踏まえた上で,本件商標が出所の混同を生ずるか否か検討し,商標法第4条第1項第15号該当性を判断すべきである。
(イ)商標法第4条第1項第15号の適用に当たっては,混同を生ずるおそれがある対象が当該他人の使用する商標であるかは全く問題とならず,商標法上の商標としては認められないものの,商品等との関係で周知著名な当該他人の名称や略称,又はブランドの名称等も当然にその対象に含み,かつ出願商標の採択の必要性,取引の実情等を多角的に十分に勘案した上で同号の該当性を判断するのが,規定中の文言及び立法趣旨からも妥当である。
(ウ)このような状況において,オークラグループの名称の略称たる「オークラ/Okura」は,1962年から現在に至るまで「宿泊施設の提供」を中心とする宿泊に関連する事業との関係で我が国の需要者・取引者の間に広く認識されており,その認識の程度は非常に高いと共に,各種新聞・雑誌等を介して一般公衆にも十分な認知が図られていることから,著名な標章といえる。
(エ)本件商標は,「OKURA」の欧文字を顕著に表した要素の右側に二段に書した「CLUB&/HOTELS」の要素を配してなるものであるところ,「CLUB&/HOTELS」の要素に含まれる「CLUB」,「&」及び「HOTELS」の各文字及び記号は,「OKURA」の欧文字の3分の1程度の大きさで表されているばかりか,「OKURA」の欧文字の要素と「CLUB&/HOTELS」の要素とは異なる書体で表されており,本件商標は視覚上,「OKURA」の欧文字が着目されやすい。
さらに,「CLUB&/HOTELS」は,本件指定役務との関係で極めて記述的であって自他役務識別力を発揮し難いものであることをも考慮すると,簡易迅速を尊ぶ取引の場において,本件商標にあっては,顕著に表された「OKURA」の文字が需要者の目をひくと容易に理解できる。
そうとすると,本件商標は,実際の取引において,著名な標章たる「オークラ/Okura」と称呼上一致する要素を構成中に含んでいると一見して把握され,その他に本件指定役務との関係で出所の混同のおそれがないと認めるに足る特段の事由も存在しない。
(オ)このような著名な標章に,単に「CLUB&/HOTELS」程度の独創性のない,非常に平易で記述的な英単語・記号を付して構成される商標の登録を認めれば,申立人及びその関連会社が50年以上の歳月で多大な労力と費用を掛けて著名に育て上げ,その著名性を守り続け,ホテル業界全体を牽引する代表的なホテル(グループ)として確固たる地位を築き上げ,既に我が国のホテル産業の歴史を語る上でも重要な位置付けをなすオークラグループの地位が簡単に覆されかねず,同グループのブランド保護に関連してこれまで巨額の費用を投じた申立人の経済的損失は推し量れないものであり,商標法が産業財産権保護法としての性格を有するという見地からも批判のそしりを免れない。
本件では,「オークラ/Okura」の文字が非常に強い顧客吸引力を発揮するに至り,申立人及びその関連会社の運営展開するホテルグループの一つとして,多角的な面から需要者・取引者に広く認知されているものであり,このような申立人の長年にわたる努力の結果得られた業務上の信用を保護すると共に,「オークラ/Okura」の文字を冠した名称に接した需要者において,オークラグループが提供するのと同程度のサービスが受けられるといった誤認を生じさせないことが商標法制定の趣旨といえる。
(カ)上述の諸点をまとめると,「オークラ/Okura」は,申立人の業務に係る「The Okura Tokyo」の略称として既に計り知れないほどの名声を獲得しており,需要者への認知度等からも,宿泊産業における著名な標章の一つであることは疑いようがない。
また,ホテル業界では,均一した質のサービスの提供を保証するホテルグループの名称として,同一の名称を含むブランド展開をするといった手法が広く使用されていることも相まって,「オークラ/Okura」は,オークラグループの略称としても,広く認識されるに至っている。
そして,「オークラ/Okura」の文字を名称中に有するオークラグループの下に展開される各ホテルは,「オークラ/Okura」の著名性にあやかってその認知度が格段に高まると考えられ,このような標章が同グループの新規ホテルに与える影響力は甚大で,その顧客吸引力は計り知れないものであり,同グループに属するホテルの提供に際して付される「オークラ/Okura」の標章に化体した業務上の信用もとてつもなく大きいものである。
ウ 小括
申立人は,1963年に「オークラクラブ」を,また,1971年には「Okura Club International」なる会員制クラブを発足させたばかりか,現在も「オークラサロン」なるサロンを運営しており,さらに,館内の意匠を紹介した冊子「オークラLegend」も発行しており(甲5,甲13?甲15),宿泊施設の提供やその関連サービスの提供に際して,略称たる「オークラ/Okura」を含む標章を多用していることは周知の事実である。
また,自らも「オークラ」の略称を用いて自己を指称していること(甲16,甲17)に鑑みると,申立人の業務に係る「The Okura Tokyo」の著名な標章及び著名なオークラグループを指称する「オークラ/Okura」の文字を包含していることが容易に理解される本件商標が付された本件指定役務が商取引に資された場合,これに接した需要者・取引者は,オークラグループを容易に想起又は連想し,当該役務はオークラグループ,あるいはこれらと経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務,あるいはオークラグループに属する新たなホテルに係る役務であるかのごとく,役務の出所について混同を生じるおそれがあるから,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の提出に係る甲各号証及び申立人の主張によれば,以下のとおりである。
(ア)申立人は,1958年12月11日に大成観光株式会社として創立された後,1987年1月1日に現社名に変更し,その主な事業内容を「ホテル資産の所有及びホテル事業会社の所有・管理,チェーンホテルに対する運営受託及び技術指導,ホテル関連事業会社の所有・管理,ホテル事業(開発及び改善)に関するコンサルティング」とする法人である(甲5,甲6)。
(イ)申立人は,1962年5月20日にホテルオークラ東京を開業し,1973年にその別館を開業して,2019年からは「The Okura Tokyo」の運営に携わっており,関連会社を介し,「ホテルオークラ札幌」,「ホテルオークラ東京ベイ」,「オークラ アカデミア パークホテル」等,多数のホテル運営にも関与している(甲5?甲7,甲17,甲18,申立人の主張)。
(ウ)「The Okura Tokyo」は,通常の宿泊客の受入れのほかに,1989年の大喪の礼や1990年の即位の礼で,各国の国家元首・国際機関代表の宿泊の受入れ,国際的な会議,各種発表会や婚礼場等の会場としても利用されている(甲5,甲8,申立人の主張)。
(エ)「ホテルオークラ東京(現The Okura Tokyo)」は,1981年に「インスティテューション・インベスター」誌の「世界のベストホテル」第2位に,1985年に「EUROMONEY」誌の「ホテルランキング」第1位に,1986年に日経ビジネス誌の「日本の社長,会長が選んだザ・ホテルベスト10」第1位に,1992年ないし1994年には日経ビジネス誌の「トップが選ぶホテルランキング」第1位(3年連続)に,1995年と1996年に「EUROMONEY」誌の「世界のベストホテルランキング」第3位(1995年)及び第2位(1996年)に選出されている(甲5,申立人の主張)。
(オ)「週刊ホテルレストラン」(2020年11月6日付け,同月20日付け,同月27日付けオータパブリケイションズ発行)における,「総売上高から見た日本のベスト300ホテル」において,申立人の運営する「The Okura Tokyo」が第6位又は第7位にランクインしている(甲9)。
(カ)申立人の第77期事業報告書(2019年4月1日?2020年3月31日)によれば,連結売上高は,第75期が764億円,第76期が774億4200万円,第77期が773億8900万円である(甲10)。
しかしながら,これらのうちに,引用商標を使用した申立人の業務に係る役務(以下「申立人使用役務」という。)に係る売上がどの程度であったかを示す証拠は見いだせず,また,我が国における申立人使用役務の市場シェアについては,これを示す客観的な証拠の提出はない。
(キ)オークラグループのウェブサイト(甲5?甲7,甲14)が公開され,新聞・雑誌においてオークラグループに関する記事が掲載された事実(甲11,甲12)が存在し,これらのウェブサイト及び記事の一部(甲5,甲6,甲7の4,甲11,甲12)において,オークラグループを指称する語として「オークラ」の文字が記載されているものの,いずれも「The Okura Tokyo」,「Hotel Okura」,「ホテルオークラ」等,ホテル名を表す他の文字と共に用いられているものであり,「OKURA」及び「オークラ」の文字のみが単独でオークラグループの略称として用いられている事例とはいえない。
イ 判断
上記アによれば,申立人が1962年に開業した「ホテルオークラ東京(現 The Okura Tokyo)」は,通常の宿泊客,国家行事における国家元首・国際機関代表等のVIPの宿泊のほか,国際会議,各種発表会や婚礼場等の会場としても利用されていることや,日本のホテルランキングの上位にランキングされていることから,「ホテルオークラ東京」及び「The Okura Tokyo)」の文字は,申立人使用役務を表示するものとして需要者の間においてある程度認識されていることがうかがえる。
そして,第77期事業報告書(甲10)によれば,申立人の2017年4月ないし2020年3月の各年度の連結売上高は確認できるものの,申立人使用役務に係る売上高がどの程度であったかは不明であるし,これらの売上高が申立人使用役務の売上高と一致するものであるとしても,その多寡について判断するための客観的な証拠はなく,さらに,我が国における申立人使用役務の市場シェアについては,これを示す客観的な証拠の提出はなく不明である。
また,広告・宣伝については,オークラグループのウェブサイト(甲5?甲7,甲14)が公開されていること,また,新聞・雑誌においてオークラグループに関する記事(甲11,甲12)が掲載されたことが確認できるものの,それらにおいて引用商標の表示は確認できない。加えて,その他に,広告・宣伝の期間,地域及び規模等の広告実績を定量的に確認できる客観的な資料は提出されておらず不明である。
さらに,申立人の運営する「ホテルオークラ東京(現The Okura Tokyo)」が過去に複数のホテルランキングにおいて上位にランクインしたことがうかがえるものの,各ランキングと引用商標との関連やホテルランキングにおいてランクインしたことによって,引用商標がどの程度需要者の目に触れることとなったのかも不明である。
そのほか,引用商標が申立人使用役務を示すものとして,需要者の間に広く認識されていることを示す客観的な証拠は見いだせない。
そうすると,我が国における客観的な使用事実に基づいて引用商標の使用状況を把握し,その周知性の程度を推し量ることはできないから,引用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人使用役務を表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
ウ オークラグループの略称としての「OKURA」及び「オークラ」の著名性について
上記ア(キ)によれば,オークラグループのウェブサイトの一部(甲6,甲7の4)や新聞・雑誌の一部(甲11,甲12)において,オークラグループを指称する語として「オークラ」の文字が記載されていることは確認できるとしても,「OKURA」及び「オークラ」の文字のみが単独で,オークラグループの略称を表示したものとして,需要者の間に広くに認識されていることを認めることはできない。
そのほか,「OKURA」及び「オークラ」の文字のみが単独で,オークラグループの略称を示すものとして,需要者の間に広く認識されていることを示す客観的な証拠は見いだせない。
そうすると,「OKURA」及び「オークラ」の文字が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,オークラグループの略称として著名となっていたと認めることはできない。
(2)商標法第8条第1項該当性について
ア 本件商標について
本件商標は,別掲のとおり,「OKURA」の欧文字(「U」の文字の右端は直線で描かれ,「KUR」の文字の上端及び「RA」の文字の下端は接続している。以下,同じ。)を左側に大きく横書きし,その右側に,小さく二段に「CLUB &」と「HOTELS」の文字及び記号を横書きしてなるところ,その構成文字及び記号は同じ色で表されており,文字の大きさが異なるとしても「OKURA」の文字部分の高さと「CLUB &」及び「HOTELS」の文字及び記号部分の高さがそろうように表されていることから,本件商標は,外観上まとまりよく一体的に表されているものといえる。
また,本件商標の構成全体より生じる「オークラクラブアンドホテルズ」の称呼は格別冗長なものではなく,よどみなく一連に称呼し得るものである。
さらに,上記(1)イのとおり,引用商標は,申立人使用役務を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものとはいえないから,本件商標の構成中「OKURA」の文字部分のみが他人の周知商標を表すものとして分離,抽出されることはなく,他に当該文字のみが取引者,需要者に対し,役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足る事情も見いだせない。
そうすると,本件商標は,その構成全体が一体不可分のものとして捉えられるものというのが相当であるから,その構成全体の文字に相応して,「オークラクラブアンドホテルズ」の称呼のみを生じるものである。
また,本件商標の構成全体が特定の意味を認識,理解させるとは認められないから,本件商標は,特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標1は,「Okura」の欧文字を,引用商標2は,「オークラ」の片仮名をそれぞれ標準文字で表してなるところ,これらの文字は,一般的な辞書等に掲載のないものであって,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものである。
したがって,引用商標は,その構成文字に相応して,「オークラ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標を対比すると,外観においては,それぞれ上記ア及びイのとおりの構成であるから,両者は,その構成文字の書体が異なることに加え,「CLUB &」及び「HOTELS」の文字及び記号の有無という明らかな差異があることから,外観上,判然と区別し得るものである。
次に,称呼については,本件商標から生じる「オークラクラブアンドホテルズ」の称呼と,引用商標から生じる「オークラ」の称呼とは,後半部における「クラブアンドホテルズ」の音の有無という明らかな差異を有するものであるから,それぞれを称呼するときは,明瞭に聴別し得るものである。
さらに,観念については,両商標は共に特定の観念を生じないものであるから,比較することができない。
以上よりすれば,本件商標と引用商標とは,観念において比較することができないとしても,外観において判然と区別し得るものであって,称呼においても,明瞭に聴別し得るものであるから,これらが需要者に与える印象,記憶,連想等を総合してみれば,両商標は,相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
したがって,本件商標と引用商標とは,非類似の商標であるから,本件指定役務と引用商標の指定役務が同一又は類似のものであるとしても,本件商標は,商標法第8条第1項に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は,上記(1)イのとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人使用役務を表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されているものとは認めることができない。
さらに,上記(2)ウのとおり,本件商標と引用商標とは,非類似の商標であって別異の商標と判断するのが相当である。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定役務について使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく,その役務が申立人又はオークラグループと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他,本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第8号該当性について
「OKURA」及び「オークラ」の文字は,上記(1)ウのとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,オークラグループの略称として著名となっていたと認めることはできない。
そうすると,本件商標は,その構成中に「OKURA」の文字を含むとしても,本件商標を申立人の略称を含むものと認識し,把握されることはなく,本件商標は,他人の著名な略称を含む商標であるとは認められない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(5)まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第8条第1項,同法第4条第1項第8号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲

別掲(本件商標)


異議決定日 2021-08-20 
出願番号 商願2020-104435(T2020-104435) 
審決分類 T 1 651・ 4- Y (W43)
T 1 651・ 23- Y (W43)
T 1 651・ 271- Y (W43)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中尾 真由美貳方 勝太 
特許庁審判長 平澤 芳行
特許庁審判官 鈴木 雅也
須田 亮一
登録日 2020-11-02 
登録番号 商標登録第6311353号(T6311353) 
権利者 株式会社大倉
商標の称呼 オークラクラブアンドホテルズ、オークラクラブホテルズ、オークラ、オクラ、クラブアンドホテルズ、クラブホテルズ、クラブ 
代理人 田中 尚文 

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