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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない W29
審判 全部無効 外観類似 無効としない W29
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W29
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W29
管理番号 1377966 
審判番号 無効2021-890003 
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2021-01-18 
確定日 2021-08-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第6244603号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標について
本件登録第6244603号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成30年11月21日に登録出願、第29類「フライドポテト,フレンチフライポテト,ポテトフライ,冷凍したフレンチフライポテト,冷凍ポテト」を指定商品として、令和2年3月9日に登録査定、同年4月10日に設定登録されたものである。

第2 請求人が引用する商標
1 請求人が本件商標の登録の無効の理由において、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は、次のとおり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)であり、いずれの商標権も現に有効に存続している。
(1)登録第2556501号の1商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「キリン」の片仮名を縦書きしてなるもの
登録出願日:昭和57年4月28日
設定登録日:平成5年7月30日
書換登録日:平成17年6月29日
指定商品:第29類「冷凍野菜,冷凍果実」並びに第30類及び第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(2)登録第4433606号の2商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「KIRIN」の欧文字を横書きしてなるもの
登録出願日:平成11年12月20日
設定登録日:平成12年11月17日
指定商品:第29類「加工野菜及び加工果実,冷凍野菜」を含む第29類及び第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(3)登録第4486902号の2商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:「麒麟」の文字を横書きしてなるもの
登録出願日:平成12年8月1日
設定登録日:平成13年6月29日
指定商品:第29類「加工野菜及び加工果実,冷凍野菜」を含む第29類並びに第30類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(4)登録第4498171号の2商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:「キリン」の片仮名を横書きしてなるもの
登録出願日:平成12年8月1日
設定登録日:平成13年8月10日
指定商品:第29類「加工野菜及び加工果実」を含む第29類並びに第26類、第30類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(5)登録第4505207号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:「KIRIN」の欧文字を横書きしてなるもの
登録出願日:平成12年10月20日
設定登録日:平成13年9月7日
指定商品:第29類「加工野菜及び加工果実」を含む第29類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(6)登録第5240430号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:「KIRIN」の欧文字を横書きしてなるもの
登録出願日:平成19年6月25日
設定登録日:平成21年6月19日
指定役務:第35類「加工野菜及び加工果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
(7)登録第6041308号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:麒麟(標準文字)
登録出願日:平成27年2月20日
設定登録日:平成30年5月11日
指定商品:第29類「加工野菜及び加工果実」を含む第29類並びに第30類、第32類及び第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(8)登録第6200172号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の構成:キリン(標準文字)
登録出願日:平成27年12月10日
設定登録日:令和元年11月22日
指定商品及び指定役務:第29類「加工野菜及び加工果実」を含む第29類及び第35類「飲食料品(「工業用粉類・食用粉類」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類並びに第5類、第7類、第9類、第14類、第16類、第18類、第21類、第24類、第25類、第28類、第30類、第32類、第33類及び第36類ないし第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
(9)登録第6200173号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の構成:麒麟(標準文字)
登録出願日:平成27年12月10日
設定登録日:令和元年11月22日
指定商品及び指定役務:第29類「果物入り加工野菜,野菜入り加工果実,包装された加工野菜及び加工果実,容器入りの加工野菜及び加工果実」を含む第29類及び第35類「飲食料品(「工業用粉類・食用粉類」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類並びに第5類、第7類、第9類、第14類、第16類、第18類、第21類、第24類、第25類、第28類、第30類、第32類、第33類及び第36類ないし第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
(10)登録第6200174号商標(以下「引用商標10」という。)
商標の構成:きりん(標準文字)
登録出願日:平成28年11月22日
設定登録日:令和元年11月22日
指定商品及び指定役務:第29類「加工野菜及び加工果実」を含む第29類及び第35類「飲食料品(「工業用粉類・食用粉類」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類並びに第5類、第7類、第9類、第14類、第16類、第18類、第21類、第24類、第25類、第28類、第30類、第32類、第33類及び第36類ないし第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
(11)登録第6200176号の1商標(以下「引用商標11」という。 なお、請求人が引用した登録第6200176号商標は、本件審判の請求後に分割されたため、当合議体の判断により登録第6200176号の1商標に置き換えた。
商標の構成:「KIRIN」の欧文字を横書きしてなるもの
登録出願日:平成29年7月7日
設定登録日:令和元年11月22日
指定商品及び指定役務:第29類「加工野菜及び加工果実」を含む第29類及び第35類「飲食料品(「工業用粉類・食用粉類」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類並びに第5類、第7類、第9類、第14類、第16類、第18類、第21類、第24類、第25類、第28類、第30類ないし第33類及び第36類ないし第42類、第44類及び第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
2 請求人が本件商標の登録の無効の理由において、商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、次のとおり(以下「使用商標」という。)である。
商標の構成:「KIRIN」、「麒麟」又は「キリン」の各文字を横書きしたもの
使用する商品:請求人及びそのグループ会社(以下「キリングループ」という。)が取扱う「ビール、洋酒、果実酒、酎ハイ、清涼飲料」等(以下「請求人商品」という。)

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第39号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効にすべきものである。
2 無効審判請求の根拠について
本件商標は、引用商標との関係で商標法第4条第1項第11号に該当し、使用商標との関係では同項第15号に該当するものであるから、本件商標を、その指定商品に使用する場合、当該商品が、キリングループの業務に係る商品又はキリングループと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせ、また、これにより、請求人の引用商標に係る商標権が侵害され、又は請求人の営業上の利益が侵害されるおそれがある。
このため、請求人が本件商標に対して無効審判請求することについて利害関係を有し、本件審判に関し利害関係人である。
3 商標法第4条第1項第11号及び同項第15号について
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標について
(ア)分離観察の可否(本件商標の要部)
a 文字と図形の分離観察の可否
本件商標の文字部分は縦書きで2行に書され、白く縁取りされた黒い太文字で図形部分から浮き出るように表されている。そして、本件指定商品の取引者、需要者に含まれる一般消費者は、その商品の名称に着目して取引にあたるのが通常である。飲食料品を取り扱う業界において、文字と図形とを常に一体的なものとして把握しなければならないという一般的・恒常的な取引の事情も存しない。また、本件商標においては、図形部分が文字部分の背景のように看取され、文字部分が商品の名称としての強い印象を与える構成となっている。これらの事実に、文字のもつ情報伝達力を併せ考えると、本件商標の文字部分は、デフォルメされたキリン(ウシ目キリン科の哺乳類)が描かれた図形部分とは独立して認識され得るものと認められる。したがって、本件商標の文字部分と図形部分とは、商標の類否判断上、分離して観察できるものである。
b 文字部分の構成
本件商標の文字部分のうち、「キリンの」の文字は、キリンの首の外側に表されているのに対し、「なが?いポテト」の文字は、キリンの首上に表されていることから、各文字は、視覚上分離でき、それぞれ分離観察し得る。
c 文字部分の称呼
本件商標は、構成文字全体から、「キリンノナガーイポテト」の10音の冗長な称呼が生じ、また、その外観とも相まって、「キリンノ」、「ナガーイポテト」に区切って称呼されるのが自然である。
d 文字部分の結合の程度
〈1〉「キリン」の文字は「ウシ目キリン科の哺乳類」などを意味する語(甲14の1)、〈2〉「の」の文字は所有や所属等を表す格助詞(甲14の1?4)、〈3〉「なが?いポテト」の文字は「長いポテト」(甲14の5?甲14の11)を表したもの、〈4〉「キリンのなが?いポテト」の文字は全体として既成語ではないからその結合の程度は強いとはいえないことからすると、本件商標の文字部分は、「キリン」と「なが?いポテト」とを「の」で結合した商標と理解することができる。そして、「キリン」と「なが?いポテト」とは相互に観念的に関連性がなく、一連一体に称呼しなければならない理由も存しないから、各文字の結合の程度は強固といえない。
e 「なが?いポテト」部分の識別カ
本件商標の構成中、「なが?いポテト」は、「長いポテト」であることを表すにすぎず、本件指定商品との関係で、単に商品の品質(形状)を表示したものと捉えられ、自他商品の識別力を有しないか、極めて弱いものといえる(甲13)から、独立して商品の出所識別標識としての称呼、観念が生じない。
f 「キリン」部分の識別力
他方「キリンの」は、「キリン」と「の」は文字種及び大きさが異なるから視覚上区別でき、「キリン」と格助詞「の」で構成されていると容易に理解できる。そして「キリン」の文字は、本件指定商品との関係において自他商品の識別標識としての機能を発揮するものであり、また、格助詞「の」は所有者や所属を示すものであるから、本件商標の構成中、商品の出所識別標識としての機能を発揮するのは「キリン」の部分にあるといえる(甲14の1?甲14の4)。なお、格助詞「の」の前に企業のハウスマーク等の出所識別標識が用いられることは一般的・恒常的な取引実情である。そうすると、前記意味を有する「キリン」は、本件指定商品との関係で、品質等を表す「なが?いポテト」よりも識別力が強いことが明らかであり、「キリン」の文字部分が取引者、需要者に対して強く支配的な印象を与えるというべきである。
g 本件商標の要部
上記のとおり、本件商標の構成中、「キリン」の文字と他の構成文字とは、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているといえず、また、「キリン」の文字部分と他の構成との間には、本件指定商品との関係で、商品の出所識別標識としての機能の点で明らかに主従、軽重の差がある。したがって、本件商標から「キリン」の文字部分を要部として観察することは理の当然である。
(イ)本件商標の称呼及び観念
本件商標から、「キリン」の称呼が生じ、「キリン(ウシ目キリン科の哺乳類)」又は「麒麟(中国で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物)」の観念が生じる。
イ 引用商標について
引用商標1は、「キリン」の文字を縦書きしてなり、引用商標2、引用商標5、引用商標6及び引用商標11は、「KIRIN」の文字を、引用商標3、引用商標7及び引用商標9は、「麒麟」の文字を、引用商標4及び引用商標8は、「キリン」の文字を、引用商標10は、「きりん」の文字を、それぞれ横書きしてなるところ、引用商標は、その構成文字に相応して、「キリン」の称呼が生じ、「キリン(ウシ目キリン科の哺乳類)」又は「麒麟(中国で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物)」の観念が生じる(甲15?甲17)。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標は、称呼及び観念において区別できない。
他方で、本件商標と引用商標とは、外観において区別できるものの、離隔的観察(甲13)においては、本件商標の外観よりも、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「キリン」の文字を含むという点が強く印象付けられるものであり、そして「なが?いポテト」の文字部分は、商品の出所識別標識としての称呼、観念は生じないものであるから、当該文字部分の印象は極めて薄いといえ、「キリン」の文字より生ずる称呼及び観念が強く記憶されるものである。また、本件指定商品の取引者、需要者に含まれる一般消費者は、本件商標の一部の文字部分から生ずる称呼、観念を手掛かりに、商品を購入することも一般的にあり得るものといえ、それゆえ、外観上の差異点を称呼及び観念の共通点に比して重視しなければならない理由はない。さらに、引用商標は、キリングループの商品又は役務を示すものとして著名なものであることからすると、本件商標を本件指定商品に使用するときには、商品の出所について混同を生じさせるおそれが高いものである。そうすると、本件商標と引用商標とは、外観の相違よりも、称呼及び観念の共通性が、より強い印象を取引者、需要者に与えているといえるものであり、両商標を同一又は類似の商品に使用した場合には、取引者、需要者がその出所について誤認混同するおそれがあるというべきである。したがって、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念並びに取引の実情を総合的に判断した場合、互いに類似の商標であるというべきである。
エ 指定商品の類否
本件指定商品と、引用商標に係る指定商品又は指定役務中、第29類「冷凍野菜,加工野菜」及び第35類「飲食料品(「工業用粉類・食用粉類」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、同一又は類似のものである。
オ 小括
以上の次第で、本件商標は、引用商標と類似であって、引用商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
カ 関連事件
仮に、本件商標が、立体商標のように商品の包装容器のような態様で使用される場合には、その上に表される文字部分「キリンの\なが?いポテト」について、引用商標と類似することは、過去の審査例のとおりである(甲18の1、甲18の3、甲19の1?甲19の3、甲20の1?甲20の2)。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 周知著名性
(ア)請求人について(多角経営企業であること)
181期有価証券報告書(平成31年1月1日?令和元年12月31日)によれば、キリングループは、請求人並びに「麒麟麦酒株式会社」、「キリンビバレッジ株式会社」、「メルシャン株式会社」等の連結子会社152社及び持分法適用関連会社32社によって構成される多角経営企業であり(甲21)、その主な事業は、飲食料品に係る事業、ヘルスサイエンス事業である。そして、請求人の連結売上収益は、180期に約1兆9305億円(国際会計基準)であり、181期に約1兆9413億円(国際会計基準)である(甲21)。
(イ)防護標章登録について
「KIRIN」、「麒麟」又は「キリン」の文字をそれぞれ横書きしてなる標章については、第29類「冷凍野菜,加工野菜」を指定商品として防護標章登録がなされており(以下、これらをまとめて「請求人防護標章」という。)、現在も有効に存続していて(甲22?甲25)、その指定商品について著名性を有しているといえ、また、使用商標は請求人防護標章と同一の標章である以上、使用商標も、同様の著名性を有しているといえる。
(ウ)最近の知財高裁判決について
審決取消請求事件知財高裁判決では、「KIRIN」の文字商標につき、「キリングループの商品又は役務を示すものとして取引者及び需要者の間で周知著名になっていると認められる」と判断されている(甲26?甲29)。
(エ)使用商標の周知著名性の程度
使用商標は、キリングループが永年に亘り、幅広い商品及び役務について継続的に使用した結果、少なくとも、本件商標の出願時及び査定時において、キリングループの業務に係る商品を表示するものとして我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されている著名な商標である。また、使用商標と同一の請求人防護標章が現在も有効に存続していることから、使用商標は、本件指定商品について著名性を有しているといえる。
イ 商標の類似性
本件商標と使用商標は、前述の本件商標と引用商標との類否と同様、類似しているといえる。
ウ 商品間の関連性
本件指定商品と請求人商品は、いずれも飲食料品に属する商品であることは明らかであるから、両商品は関連性を有する。
エ 需要者の共通性その他取引の実情
(ア)需要者の範囲及び取引方法等
本件指定商品と請求人商品とは、販売店においては、近接する場所に陳列されて販売されている実情があり、両商品の販売店舗や販売方法は類似することが多いといえる。そして、本件指定商品と請求人商品の購入者等は、いずれも、一般消費者であり、その購入者等が当該商品を購入するに際して払われる注意力は、さほど高いものではない。また、実際の取引の場において、一般の需要者は、例えば、同一又は類似の商標を付した食べ物と飲み物があったときに、出所を同じくする姉妹商品であるかのように理解したままに購入に至るおそれがある。
(イ)キリングループの関連事業
キリングループは、ポテトチップス製造会社に対する原材料の供給など、他の食品メーカーとの共同開発(甲30、甲31)、農産物の生産販売等と密接な関係を有する事業活動(甲32)、アルコール飲料に合うジャガイモを油で揚げた料理等のメニューの紹介(甲33)、ジャガイモ料理の提供やジャガイモを使用した菓子の提供(甲34、甲39)を行っており、これらの活動状況を考慮すると、本件指定商品は、キリングループの事業に少なからぬ関係を有する商品といえ、キリングループの業務に係る商品又はキリングループと経済的・組織的に何らかの関係がある者の製造販売に係る商品であると認識される可能性が高い。
オ 防護標章登録の存在などの特段の事情
使用商標と同一の標章が、本件指定商品が含まれる指定商品について防護標章登録されている事実からすると、本件指定商品について、本件商標が使用されると、キリングループの業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある。
カ 小括
以上を踏まえて総合的に判断すると、本件商標の出願時及び査定時において、本件商標はキリングループの業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)結語
以上の次第で、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に違反してなされたものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標について
ア 本件商標の図形部分
本件商標の図形部分は、縦長の略扇形状の図形であって、その中央に、デフォルメされた一頭のキリン(ウシ目キリン科の哺乳類)の前半身が配置されている。略扇形状の図形部分のうち、キリンの前半身がおよそ8割を占めており、これを除く部分も、キリンの身体部分と略同じ色、及び柄である。すなわち、本件商標の図形部分は、キリン(ウシ目キリン科の哺乳類)の外見上の特徴を強調して表現した態様であって、図形部分全体が、略、動物のキリンの姿そのものである。
イ 本件商標の文字部分
本件商標の文字部分は、縦書きで2行の構成であり、右から「キリンの」及び「なが?いポテト」の順で、白く縁取りされた黒い太文字で表記されている。文字の配置は、前述したキリンの絵柄のうち首から胸にかけて「なが?いポテト」、首の右側外に、「キリンの」である。文字サイズは、大きい方から順に「なが?いポテト」、「キリン」、「の」という構成であり、文字サイズの比率はおおよそ、9:6:4である。また、文字部分のうち、「なが?い」の表記に関して、「?」を用いることにより、「ながいポテト」、「長いポテト」、「ながーいポテト」との表記と比較して、より、「長い」の意味合いを強調すると共に、外観上も、特徴的な印象を与える。
ウ 本件商標の構成
以上述べた図形部分、及び文字部分でなる本件商標を全体観察すると、動物のキリンの顔が含まれる商標であって、キリンの頭部の形に頂部が成形され、またその顔が、文字部分より上部に、文字部分の一文字の大きさより大きく表示されている。また、「なが?いポテト」の文字は、図形のキリンの前半身に収まるようにバランスよく配置され、さらには、「なが?い」の文字は、図形のキリンの首部分にちょうど収まるように配置されている。すなわち、文字部分は図形部分の内部に、その一部として配置され、両者はバランスよく一体として商標を構成しており、かつ、文字部分(「キリン」、及び「なが?い」)と、図形部分(ウシ目キリン科の哺乳類の、首が長い、という特徴を持つキリン)が、相互に関連性をもっている。
エ 本件商標の称呼及び観念
本件商標は、キリンが描かれた縦長図形内に、やや小さく「キリンの」の文字と「なが?いポテト」の文字を2列に縦書きし、「キリン」の文字は、図形とも相まって動物のキリンを表したものと容易に理解される。また、「なが?いポテト」の文字が「長いポテト」の意味合いを暗示させるが、構成文字は図形内にまとまりよく一体に表現されている。したがって、本件商標から「キリンノナガーイポテト」の称呼が生じ、併せて、称呼は格別冗長でなく、かつ無理なく一連に称呼される。
なお、本件商標の構成において、取引者、需要者が、殊更に「のなが?いポテト」の文字部分を省略し、ありふれた「キリン」の文字部分のみに着目することは、極めて少なく、構成文字全体をもって一体不可分の一種の造語を表したと認識、かつ、把握することのほうが、自然である。
以上のことから、本件商標は、その構成文字に相応して、「キリンノナガーイポテト」の称呼を生じるものであり、特定の観念を生じるものでもない。
また、本件商標の指定商品がフライドポテトであることを考慮すると、本件商標に接する取引者及び需要者には、成人のみならず、文字の読めない幼児も含まれると考えられる。そうした幼児であっても、ウで述べた本件商標の構成から、動物のキリン、と連想することは自然である。動物のキリンは、幼児も含む取引者及び需要者全体に非常に馴染み深い動物であって、その周知性が、キリングループの周知性を上回ることは、考えるまでもない。
したがって、本件商標に取引者及び需要者が接したときに、動物のキリンの絵が描かれたポテト、と連想することが最も自然である。
(2)請求人の主張に対する反論
ア 無効理由1に関して
(ア)上記(1)アで述べたように、本件商標の構成は、例えば無地の円形や方形等の整った図形ではなく、ウシ目キリン科の哺乳類のキリンの姿そのものを表現した図形部分の内部に、文字部分を表示したものである。したがって、本件商標のうち、図形部分は文字部分の背景にすぎず、文字部分の中でも位置的に外縁側に位置し、他と比較して小さい文字サイズで表記された「キリン」が、商標全体の要部である、とする主張は明らかに行き過ぎである。
(イ)上記(1)ウで述べたように、本件商標は、文字部分と図形部分を一体としてバランスよく構成したものであり、分離観察できるとの請求人の主張は誤りである。動物のキリンを想起させる図柄と、「キリンのなが?いポテト」でなる文字部分とを、一体不可分に表現した本件商標と、文字のみでなる引用商標とは、全く別異の商標である。
(ウ)本件商標の要部は「キリン」の文字部分である、との前提のもとに展開された請求人の主張の矛盾点について以下指摘する。
a 請求人は、本件商標は、引用商標と同じ「キリン」の称呼が生じる上、引用商標と同じ「キリン(ウシ目キリン科の哺乳類)」又は「麒麟(中国で聖人の出る前に現れるとされる想像上の動物)」の観念が生じる、としている。なるほど、文字のみでなり、「キリン」の称呼が生じる引用商標からは、いずれも「麒麟(中国で聖人の出る前に現れるとされる想像上の動物)」の観念が生じ得る。しかし、本件商標は文字のみでなる引用商標とは異なり、前者の「キリン」を明らかに示す図形を備えているため、本件商標から、後者の「麒麟」の観念が生じることは考えにくい。したがって、請求人が述べる如く、後者の「麒麟」の観念が生じ得る引用商標は、本件商標と観念において区別できない、との主張は誤りである。
b 請求人がその一部をなすキリングループは、いうまでもなく日本国内において著名であって、著名であるがゆえに、引用商標のうち、特徴的な字体を用いた「KIRIN」(引用商標2、5、6、11)、「麒麟」(引用商標3)、及び「キリン」(引用商標4)に接した取引者又は需要者の多くは、上述の「キリン(ウシ目キリン科の哺乳類)」又は「麒麟(中国で聖人の出る前に現れるとされる想像上の動物)」を連想する以前に、キリングループを連想するのではないか。したがって、引用商標2ないし引用商標6及び引用商標11は、本件商標と、観念において区別できない、との主張は誤りである。
(エ)本件審判請求における無効理由1に関する請求人の主張は、異議2020-900163号の異議申立書における請求人の主張に、何ら新たな論拠、証拠が付加されたものではない。したがって、これら主張に対する本件異議の決定による特許庁の判断を覆すものでなく、検討の余地はない。
(オ)以上の次第で、本件商標は、引用商標とは類似とはいえず、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
イ 無効理由2に関して
(ア)請求人は、使用商標の周知著名性、商標の類似性、商品間の関連性、需要者の共通性その他取引の実情、及び防護標章登録の存在などの特段の事情を踏まえ、出願人が本件商標を本件指定商品に使用するときに、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある、と述べている。
本件商標と使用商標の類似性に関しては、上記アで述べたとおりであって、両者は、観念及び外観において類似しているとはいえない。その他、請求人の主張について以下反論する。
(イ)周知著名性
請求人は、キリングループの周知著名性を述べる際に、その連結売上収益について述べている。他方で、本件商標の指定商品であるフライドポテトその他の収益については、何ら述べられていない。一方、被請求人が本件商標を用いて販売しているフライドポテトの売上高は、2018年度で4千万円超である(乙1)。
また、請求人は、有価証券報告書(甲21)を引き合いに、キリングループが連結子会社152社、持分法適用関連会社32社により構成されるとしている。しかし、甲第21号証を参照しても、その連結子会社及び持分法適用関連会社の一部が記載されるに留まり、その全容は記載されておらず、把握できない。
さらに、この有価証券報告書の3【事業の内容】の欄には、キリングループが「国内ビール・スピリッツ事業」を始めとする飲料事業を事業内容としていることが記載されている一方で、本件商標の指定商品であるフライドポテトはおろか、食料品の製造・販売についても一切記載されていない。
本件異議の決定の12頁14行目にあるように、使用商標が、キリングループの中心的商品である、ビールや清涼飲料等を表示する標章として、取引者及び需要者の間で広く認識されていることは認める。しかし、提出された証拠書類を参照しても、本件商標の指定商品の分野における周知著名性が証明されたとはいえず、請求人の主張は受け入れられるものではない。
(ウ)需要者の共通性その他取引の実情
需要者の共通性その他取引の実情について述べる際に、請求人は、キリングループの関連事業を引き合いに出している。
甲第32号証は、農産物の生産販売等と密接な関係を有する事業活動を有することを示すものであるが、その写真からは、キリングループ主催のイベントにおいて、多岐にわたる商品が扱われている様が見てとれるものの、特段、フライドポテトないしジャガイモが扱われる様子は確認できない。また、このイベントの写真からは、参加者に子どもが多く含まれることが理解できるが、これはすなわち、本件商標及び引用商標の需要者には、キリングループと引用表示との関係を正確に認識できない子どもが一定数、含まれることを明示している。
甲第34号証ないし甲第36号証は、キリングループの展開する料飲店のメニューであり、ジャガイモ料理が提供されていることを示すものであるが、そのいずれにも使用商標は明示的には表示されておらず、需要者の誰もが、提供されたジャガイモ料理、或いはこれら料飲店が、キリングループによる事業であると認識できるとは考えられない。なお、甲第33号証ないし甲第38号証は、印刷日時の表示しかなく、それらの実施、掲載、又は使用開始の日時は確認できない。したがって、証拠としての価値は低い。キリングループの多角的な関連事業の一部にフライドポテト、及びジャガイモ料理等が含まれるのが事実であるとしても、それらが、引用表示を用いて、キリングループの事業であると取引者及び需要者に容易に理解できる形でなされ、さらに、周知性を持つものでなければ、本件商標を指定商品に用いた際に、キリングループとの関連性を誤認されることの証明にはならない。
(エ)請求人がその一部をなすキリングループはいうまでもなく日本国内において著名であって、特徴的な字体を用いた「KIRIN」、「麒麟」及び「キリン」の使用商標を付された指定商品が、取引者及び需要者に、容易にキリングループを連想させるであろうことは、上記アにて述べたとおりである。
しかし、キリングループが著名であるからこそ、特徴的な字体を用いたこれら引用商標、及び、想像上の生物「麒麟」をモチーフとしたキリングループの用いるロゴ(乙2、乙3)は、単体でも、また、相互に結び付いたイメージとしても、一般消費者に強固に定着している。したがって、それらイメージからかけ離れた字体、さらには絵柄を用いた本件商標に接した際に、キリングループの商品と出所の混同を来す、とする請求人の主張は行き過ぎである。
(オ)以上の次第で、本件商標は、キリングループの業務に係る商品と混同を生ずるおそれがない商標であって、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)関連事件について
登録第6088815号商標(乙4)は、図形部分に動物のキリンを、文字部分に「きりん」の語を用いた、図形及び文字でなる結合商標であるという点で、本件商標と共通点がある。また、その指定商品又は指定役務の「飲食物の提供」については、請求人が述べるとおりキリングループの関連事業に含まれるものである。ここで、先願として引用商標8ないし引用商標11がありながら、当該登録商標が登録されている事実を鑑みると、当該登録商標と、文字部分と図形部分において共通点をもち、同様に、引用商標と重なる指定商品をもつ本件商標について、商標登録を維持するとした特許庁の判断は一貫性を備えたものである。
2 むすび
以上述べた論拠により、審理の上、本件審判は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を希求する次第である。

第5 当審の判断
1 請求人適格について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、被請求人は何ら争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
以下、これに沿って本件商標から「キリン」を要部とし抽出できるか検討する。
(1)本件商標
本件商標は、別掲のとおり、「キリン(ウシ目キリン科の哺乳類)」(甲14の1 以下、単に「キリン(哺乳類)」という場合がある。)が描かれた縦長図形内にやや小さく「キリンの」の文字とこれに比して大きく「なが?いポテト」の文字を2行に表してなるところ、図形部分は全体が黄色や茶色の色彩が施されているのに対し、文字部分は、いずれも白抜きで縁取りされた黒い文字からなるものであって、図形部分の色彩に比べて文字部分が比較的目立つことから、両者は視覚上分離して看取されるものである。
そして、文字部分である「キリンの」の文字と「なが?いポテト」の文字は、確かに文字の太さや大きさは異なるものの、いずれも白抜きで縁取りされた黒い文字であるといった視覚上の共通点がある上に、文字部分から生じる「キリンノナガーイポテト」の称呼はよどみなく一連に称呼し得るものである。
ところで、請求人が提出した証拠(甲14の5)によると、「ロングポテト」の見出しのもと、長い形状をしたフライドポテトのような商品の画像が11頁余に亘り多数表示されていることから、そのような商品が存在し、それらは、一般に「ロングポテト」と称されていることがうかがえる(甲14の5)。また、上記のような商品を紹介するウェブサイトにおいて、「なが?いポテト」の文字の使用が散見されるものの、その上段には「ロングポテト(LongPotato)」の文字も併せて表示されている(甲14の6、7)。そうすると、上記のような商品を、一般に「ロングポテト」と称することはあるとしても、「なが?いポテト」の文字は、その使用がわずか2件しかない上に、いずれも「ロングポテト(LongPotato)」の文字と共に使用されていることからすれば、上記フライドポテトのような商品を一般に称する文字であるとまではいえず、暗示させるにとどまるというべきである。
してみれば、本件商標の文字部分のうち「なが?いポテト」の文字も上記と同様に、本件商標の指定商品との関係において、商品の品質を暗示させるにとどまるというべきであるから、自他商品を識別する機能がない又は弱いということはなく、自他商品を識別する機能を十分に果たし得るものである。
一方、「キリンの」の文字は、本件商標中に「キリン(哺乳類)」の図形が描かれていることと相まって哺乳類としての「キリンの」と理解されることはあるとしても、「なが?いポテト」の文字に比べて全体が小さく表わされている上に、いずれかの文字が特段看者の注意をひくといった特徴が見あたらないことからすれば、「キリン」又は「キリンの」の各文字が取引者、需要者に対し強い印象を与えるものということはできない。
そうすると、本件商標中の文字部分のうち、「キリン」又は「キリンの」の文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは認められず、また「なが?いポテト」の文字部分は、自他商品を識別する機能を十分に果たし得るものであり、出所識別標識としての称呼、観念が生じないとは認められないものであるから、本件商標中の文字部分の一部(「キリン」)だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することは許されないというべきである。
以上よりすれば、本件商標から「キリン」の文字部分を要部として抽出することは許されないというべきであるから、本件商標中の「キリンのなが?いポテト」の文字部分は、一体不可分のものと判断するのが相当であり、その構成文字に相応して「キリンノナガーイポテト」の称呼のみを生じ、特定の観念は生じない。
(2)引用商標
引用商標1は「キリン」の文字を縦書きに、引用商標2、引用商標5、引用商標6及び引用商標11は「KIRIN」の文字を横書きに、引用商標3、引用商標7及び引用商標9は「麒麟」の文字を横書きに、引用商標4及び引用商標8は「キリン」の文字を横書きに、引用商標10は「きりん」の文字を横書きに、それぞれ表してなるものであり、いずれも各文字の構成に相応して、「キリン」の称呼を生じ、「キリン(哺乳類)」又は「麒麟(中国で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物)」(甲15?甲17 以下「麒麟(想像上の動物)」という場合がある。)の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とは、外観において、「キリン」(引用商標1、引用商標4、引用商標8)の文字を共通にするとしても、「のなが?いポテト」の文字及び図形の有無において明らかな差異を有するものであるから、両者は外観において相紛れるおそれはない。
また、称呼においては、本件商標から生じる「キリンノナガーイポテト」と、引用商標から生じる「キリン」とは、後半部における「ノナガーイポテト」の音の有無において明瞭に聴別し得るものであるから、両者は称呼において相紛れるおそれはない。
さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は「キリン(哺乳類)」又は「麒麟(想像上の動物)」の観念を生じるものであるから、両者は観念において相紛れるおそれはない。 そうすると、両商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、たとえ、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品又は指定役務とが同一又は類似のものであるとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)使用商標の周知著名性
ア 請求人の有価証券報告書(抜粋)(2019年1月1日?2019年12月31日)によれば、キリングループは、請求人及び連結子会社152社並びに持分法適用関連会社32社によって構成される多角経営企業であり、その主な事業は、ビール及び清涼飲料等の飲料並びに乳製品及び医療用医薬品等の製造、販売である。そして、請求人の2018年12月期の売上収益は、約1兆9305億円、2019年12月期の売上収益は約1兆9413億円である(甲21)。なお、これらの売上収益のうち、本件商標の指定商品の分野における売上収益は不明である。
イ 請求人は、「KIRIN」の文字からなる登録第4433606号商標及び登録第5325099号商標、「麒麟」の文字からなる登録第4486902号商標、「キリン」の文字からなる登録第4498171号商標に係る商標権を保有しているところ、それらはいずれも、指定商品中に第32類「ビール,清涼飲料」等を含み、また、いずれの商標権も第29類「冷凍野菜」や同類「加工野菜及び加工果実」を商品に含む防護標章登録が主に平成26年(2014年)頃になされており、それらに係る権利は現在も有効に存続している(甲22?甲25)。
ウ 平成28年(2016年)に言渡しがされた判決において、「KIRIN」の標章は、キリングループの商品又は役務を示すものとして取引者及び需要者の間で周知著名になっていると認められる旨の判断がなされている(甲26?甲29)。
エ 被請求人は、使用商標が、キリングループの商品である「ビール、清涼飲料」等を表示する標章として取引者及び需要者の間で広く認識されていることは認めている。
オ 以上からすると、「KIRIN」、「麒麟」又は「キリン」の文字からなる使用商標は、本件商標が登録出願される以前から、キリングループの業務に係る商品である「ビール、清涼飲料」等を表示する標章として、我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたものであって、その周知性は本件商標の登録査定時においても継続していたと認めることができる。
また、請求人が使用商標と同じ態様の防護標章登録を保有していることは認められるとしても、本件商標の指定商品において周知性を認めるに足りる証拠は見あたらないものであるから、使用商標は、本件商標の指定商品の分野において我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたと認めることはできない。
(2)本号の判断基準
ア 商標法第4条第1項第15号における「混同を生ずるおそれ」の有無は、ア)当該商標と他人の表示との類似性の程度、イ)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、ウ)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、エ)並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、オ)当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日判決)。
以下、これに沿って本件商標と使用商標とが混同を生ずるおそれがあるかについて検討する。
(ア)本件商標と使用商標の類似性の程度
本件商標は、別掲のとおりの態様からなり、上記2のとおり、「キリンのナガーイポテト」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
一方、使用商標は、「KIRIN」、「麒麟」及び「キリン」の文字からなるものであるから、これらより「キリン」の称呼が生じ、「キリン(哺乳類)」又は「麒麟(想像上の動物)」の観念が生じる。
そこで、本件商標と使用商標とを比較すると、上記2(3)と同様に、両商標は、外観、称呼及び観念において、相紛れるおそれはないものである。
そうすると、本件商標は、使用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
(イ)使用商標の周知著名性及び独創性の程度
使用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、キリングループの業務に係る商品である「ビール、清涼飲料」等を表示する標章として、我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたと認めることはできるものの、本件商標の指定商品の分野において取引者及び需要者の間で広く認識されていたと認めることはできない。
また、使用商標は、広く親しまれた哺乳類を表す「キリン」の文字、若しくは想像上の動物を意味する語として一般の辞書等に掲載されている「麒麟」の文字、又はそれらのローマ字表記であるから、その独創性の程度は低いというべきである。
(ウ)本件商標の指定商品と使用商標に係る商品等との関連性並びに商品の取引者及び需要者の共通性等
本件商標の指定商品は、上記第1のとおり、「フライドポテト,フレンチフライポテト,ポテトフライ,冷凍したフレンチフライポテト,冷凍ポテト」であってジャガイモを原材料とする加工野菜や冷凍野菜であり、使用商標に係る主な商品は、上記(1)のとおり「ビール、清涼飲料」であって主な原材料を麦とするアルコール飲料や飲料製品である。
そして、両商品はともに飲食料品の一種であるから、需要者は一般の消費者であって一部共通にする場合があるといえるものの、両商品の原材料に共通性は見いだせない。
また、両商品がスーパー等において近接して並べられる場合があることや、キリングループが、自己の展開する店舗において、ジャガイモ料理のメニューを紹介、提供(甲33?甲39)していることなどはうかがえるとしても、例えば、キリングループがポテトチップス製造会社に原材料の供給をしているとされるのは、同グループが乳酸菌を提供しているだけにすぎず(甲30、甲31)、また、同グループのイベントにおける農産物の販売(甲32)は、兵庫県の野菜を販売したにすぎず、いずれにしても、本件商標の指定商品であるフライドポテトや冷凍ポテト等に関連した事業を行っていたわけではない。
そうすると、両商品は需要者の一部を共通にするとしても、これらのことをもって直ちに、両商品の性質、用途又は目的並びに販売部門や流通経路における関連性や取引者における共通性が高いということはできず、商品の関連性やその取引者の共通性は低いというべきである。
イ 出所の混同のおそれ
上記(1)のとおり、使用商標が、キリングループの業務に係る商品である「ビール、清涼飲料」等を表示する標章として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたものと認められるものの、本件商標の指定商品における取引者及び需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできない。
そして、本件商標と使用商標の類似性の程度については、非類似の商標であって別異の商標であること、使用商標の独創性は低いこと、商品の需要者は一部共通にする場合があるとしても、商品の関連性やその取引者の共通性は低いことを踏まえて、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、商標権者がこれをその指定商品に使用しても、これに接する需要者が使用商標を想起、連想し、当該商品をキリングループあるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、本件商標の構成中、「キリンの」の文字部分のうち「の」の文字は、格助詞であってその前には企業のハウスマーク等が使用されている実情があること、「キリン」の文字とは大きさが異なること、また「なが?いポテト」の文字部分は、自他商品の識別力を有しないことなどを理由に、本件商標中「キリン」の文字部分が要部であって本件商標から分離抽出できる旨主張する。
しかしながら、「キリンの」の文字部分のうち「の」の文字が格助詞であるとしても、「キリンの」の文字部分は、他の文字部分に比べてやや小さく表わされているうえに、構成文字の大きさが異なることを一見して看取させるほどに顕著な差異を有するものではなく、さらに「なが?いポテト」の文字が、本件商標の指定商品との関係において自他商品を識別する機能を果たすことは上記2(1)のとおりであるから、請求人が主張する実情(「の」の文字の前に企業のハウスマーク等が使用されている実情があること)を考慮してもなお、本件商標の文字部分は一体のものとして認識されると判断するのが相当である。
(2)請求人は、本件商標は、請求人の著名な商標「キリン」を含むものであるから、その構成中にたとえ図形や他の文字が存在するとしても使用商標との関係で商品の出所の混同を生ずるおそれがあること、また、使用商標と同一の標章が、本件指定商品が含まれる指定商品について防護標章登録されていることから、本件商標がその指定商品に使用されるとキリングループの業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあることなどを主張している。
しかしながら、「キリン」(使用商標)の文字は、上記3(1)のとおり、「ビール、清涼飲料」等を表示する標章として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたものと認められるものの、本件商標の指定商品における取引者及び需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできない。
そして、本件商標の指定商品の需要者は一般の消費者であるところ、請求人が主張するように一般の消費者は商品を購入する際に払われる注意力はさほど高いものではないとすると、本件商標に接する需要者は、本件商標に馴染みのある「キリン(哺乳類)」の図形が描かれていることに加え、「なが?いポテト」のうち「なが?い」の文字部分が当該キリンの長い首の部分に収まるように配置されていることからすれば、本件商標からキリングループを連想するというよりは、むしろ、さほど注意力も払わずに、単に首の長い「キリン(哺乳類)」の図形やそれを含んだ文字が描かれた商標と理解するとみるのが自然である。
よって、本件商標の構成中に「キリン」の文字を含むことを、キリングループを連想するものとして高く評価することは妥当でなく、本件商標をその指定商品に使用したときに当該商品をキリングループと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
また、請求人が登録防護標章を有しているとしても、防護標章登録の要件は「他人が登録商標の使用をすることによりその商品又は役務と自己の業務に係る指定商品(指定役務)とが混同を生ずるおそれがあるときは」としているのであるから、使用商標と同一の構成からなる登録防護標章が存するからといって、これと異なる構成からなる本件商標について同列に論じることはできないのであって、登録防護標章を有していることをもって直ちに、本件商標をその指定商品に使用することが使用商標との関係で出所の混同を生ずるおそれがあるとはいうことはできない。
そして、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品に使用しても、当該商品をキリングループあるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当であることは、前述のとおりである。
(3)したがって、請求人の上記主張はいずれも採用することができない。
(4)請求人は、審理の終結の通知後、令和3年7月9日付け審判弁駁書を提出しているが、その理由及び内容を検討するも上記判断に影響を及ぼし得るものではないから、当合議体は審理の再開は必要ないものと判断した。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲 本件商標(色彩は原本参照。)


審理終結日 2021-07-01 
結審通知日 2021-07-06 
審決日 2021-07-21 
出願番号 商願2018-144130(T2018-144130) 
審決分類 T 1 11・ 263- Y (W29)
T 1 11・ 262- Y (W29)
T 1 11・ 261- Y (W29)
T 1 11・ 271- Y (W29)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太野垣 卓古橋 貴之 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 岩崎 安子
板谷 玲子
登録日 2020-04-10 
登録番号 商標登録第6244603号(T6244603) 
商標の称呼 キリンノナガーイポテト、キリンノ、ナガーイポテト、ナガーイ、キリン 
代理人 藤森 裕司 
代理人 竹中 一宣 
代理人 榊原 靖 
代理人 木村 満 
代理人 飯島 紳行 
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