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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X03 |
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管理番号 | 1377918 |
審判番号 | 取消2020-300581 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2020-08-26 |
確定日 | 2021-08-20 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2057980号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第2057980号商標(以下「本件商標」という。)は、「HYBRID」の欧文字及び「ハイブリッド」の片仮名を上下二段に表してなり、昭和59年4月27日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同63年6月24日に設定登録され、その後、平成20年11月19日に指定商品を第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」とする指定商品の書換登録がされたものである。 2 請求人の主張 請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)請求の理由 本件商標は、その指定商品中、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」について、本件審判の請求の登録前3年以内(平成29年(2017年)9月11日から令和2年(2020年)9月10日まで。以下「要証期間」という。)に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実がないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。 (2)被請求人の答弁に対する弁駁 ア 本件商標権者が使用する商標について (ア)パックについて 被請求人は、パック(乙1の1、2)について本件商標を使用していると主張するが、そこに表示された商標は、「RE Hybrid Pack」又は「REハイブリッドパック」で、本件商標とは異なり、「Hybrid/ハイブリッド」の語と「RE」及び「Pack/パック」とを結合してなるもので、本件商標に他の構成要素を付加したものである。 また、パックについてのその他の使用証拠(乙4の1、2、乙6の1、2、乙7の1、乙8の1、2)において、当該商品は一貫して「REハイブリッドパック」との商品名で紹介、記載されているから、本件商標権者は意図的に商品名を統一し、取引者、需要者に対して商品名を認識、周知させる意図を持っていると理解できる。 すなわち、本件商標権者が使用する商標はあくまでも「REハイブリッドパック」であって、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標ではない。 (イ)ヘアートニックについて 被請求人は、ヘアートニック(乙2の1、2)について本件商標を使用していると主張するが、そこに示された商標は「HyBrid Tonic」又は「ハイブリッドトニック」であって、本件商標ではない。それら商標は、「HyBrid/ハイブリッド」の語と「Tonic/トニック」とを一連に書してなるもので、さらに「HyBrid」の文字中の「H」と3文字目のみ大文字で表され、造語であるかのような態様となっている。すなわち、これら証拠は、ヘアートニックについての本件商標の使用を示すものではない。 また、ヘアートニックについてのその他の使用証拠であるオーダーフォーム及び納品書(乙7?乙8)は、本件商標権者の商品を「ハイブリッドトニック」と特定しているから、本件商標権者はヘアートニックについて意図的に商品名を統一的に使用し、取引者、需要者にもそのように認識、周知させようとしていると理解できる。 したがって、本件商標権者が使用する商標は、「HyBrid Tonic」又は「ハイブリッドトニック」であって、本件商標ではない。 (ウ)乳液について 被請求人は、乳液(乙3の1、2)について本件商標を使用していると主張するが、そこに示された商標は、「HINOKI Hybrid Veil」、「ハイブリッドヴェール」又は「Hybrid Veil」であって、「Hybrid/ハイブリッド」の語と「HINOKI」又は「Veil/ヴェール」とを一連に結合してなるもので、本件商標とは異なる態様である。したがって、これら証拠は、乳液についての本件商標の使用を示すものではない。 また、乳液についてのその他の使用証拠である冊子(乙5)は、「HINOKI Hybrid Veil」、「ハイブリッドヴェール」又は「Hybrid Veil」の商標を表示しており、本件商標に「HINOKI」又は「Veil/ヴェール」を付加した態様である。さらに、乳液の商品名として「ハイブリッドヴェール」(乙8の1)、「ヒノキハイブリッドヴェール」(乙8の2)と記載しており、本件商標権者は「ハイブリッドヴェール」との商品名を統一的に使用し、取引者、需要者に周知しようとしていると理解できる。 したがって、本件商標権者が使用する商標は、「Hybrid Veil」又は「ハイブリッドヴェール」であって本件商標ではない。 イ 商標的使用でないこと 「HYBRID」の語は「(動植物の)雑種、あいのこ、混成物、混種語、雑種の、混成の」等の意味を有する英単語(甲1)であって、我が国で広く一般に理解され、化粧品業界をはじめとする様々な産業界において汎用されており(甲2?甲8)、広く一般に理解されている。一方で、様々な商品や役務に結び付きやすいが故に、その識別力は必ずしも高くなく、本件商標が他の語と共に用いられた場合、その語と結合して別異の商標と認識される。 したがって、本件商標権者がパック、ヘアーローション、乳液について使用する「RE Hybrid Pack」、「REハイブリッドパック」、「HyBrid Tonic」、「ハイブリッドトニック」、「HINOKI Hybrid Veil」、「ハイブリッドヴェール」、「Hybrid Veil」は、それぞれ一連の商標として本件商標とは別異の商標と認識される。 また、仮に「Hybrid/ハイブリッド」の語を抽出して判断したとしても、「Hybrid/ハイブリッド」の語は識別力が弱く、混合物、混成物などの意味合いで化粧品業界等で広く使用されているから、当該語の使用は製品の品質や性質を示すにすぎず、商標の自他商品等識別機能や出所表示機能を発揮する態様の使用とはいえない。したがって、このような態様での「Hybrid/ハイブリッド」の語の使用は、商標としての使用とはいえない。 ウ 以上のとおり、被請求人提出の証拠に示された商標は、「Hybrid/ハイブリッド」に別異の構成要素を付加し変更を加えたものであって、本件商標と同一でも、社会通念上同一ともいえないから、本件商標の使用は立証されていない。 3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)本件商標権者は、本件商標を、指定商品中「化粧品」について使用しており、その使用時期は要証期間に含まれている。 (2)ア 本件商標権者が本件商標を使用している「パック」は、素肌をなめらかにする「ゲル」と「マスク」からなり、「ゲル」を顔全体に塗布したあと、「マスク」を目と鼻と合わせて顔に固定して使用するもので、「Hybrid」の語が(R)(「R」の文字を丸囲いしてなる。登録商標であることを示す。以下同じ。)の記号とともに使用されている(乙1の1、2)。 イ 「ヘアートニック」は、「薬用泡状育毛トニック」であって、ポンプ式の容器に入っており、頭皮に塗布し、よくすりこみマッサージすることにより育毛効果があるもので、「Hybrid」の語が(R)の記号とともに使用されている(乙2の1、2)。 また、「乳液(Veil)」は、泡タイプの手指用ローションであり、「Hybrid」の商標が(R)の記号とともに使用されている(乙3の1、2)。 ウ 使用時期については、各商品の発売日は、「パック」は2013年(平成25年)、「トニック」は2006年(平成18年)、「乳液(Veil)」は2020年(令和2年)5月であり、その後現在まで引き続いて販売しているもので、本件商標権者又はその子会社が製造・販売している。 また、2017年(平成29年)10月30日発行の業界新聞「週刊粧業」の記事に「パック」が示されており、2020年7月6日付けの記事にも「パック」が掲載されている(乙4の1、2)。 さらに、株式会社髪書房の書籍「サロンワークのための衛生管理」(発行日2020年7月31日)には、本件商標権者の「乳液」の広告が掲載されている(乙5の1?3)。 エ 本件商標が使用されている「パック」、「ヘアートニック」、「乳液(Veil)」についての取引書類は、以下のとおりである。 (ア)乙第6号証の1は、三越伊勢丹ホールディングスの店舗である三越日本橋本店の注文伝票(2020年6月14日)の写しで、乙第6号証の2はそれに対応するヒノキ肌粧品首都圏販売株式会社の納品書類(写)であり、ともに本件商標を使用した「パック」が示されている。 (イ)乙第7号証の1は、株式会社松屋の店舗である松屋浅草店の「FAXオーダーフォーム」(2020年3月13日)の写しで、乙第7号証の2は、それに対応するヒノキ肌粧品首都圏販売会社の納品書(2020年3月16日)の写しであり、ともに本件商標を使用した「ヘアートニック」が示されている。 (ウ)乙第8号証の1及び2は、松屋浅草店からの「FAXオーダーフォーム」と、それに対応する納品書(2020年6月30日)の写しであり、ともに本件商標を使用した「パック」と「乳液(Veil)」が記載されている。 (エ)なお、ヒノキ肌粧品首都圏販売株式会社は、本件商標権者の子会社であり、三越伊勢丹との取引などを担当しており、商品の注文は三越伊勢丹から当該会社にされ、注文された商品を本件商標権者から仕入れて三越伊勢丹の指示によりワールドサプライ社に納入し、ワールドサプライ社から店頭に納入される。 また、松屋浅草店との取引においては、松屋浅草店からヒノキ肌粧品首都圏販売株式会社へ「FAXオーダーフォーム」で注文があり、当該会社は被請求人から商品を仕入れて松屋浅草店へ納入する。 4 当審の判断 (1)被請求人が提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。 ア 本件商標権者を発売元とする「REハイブリッドパック」と称する商品(以下「本件使用商品」という。)は、「薬用ゲル」と「薬用マスク」を同梱したスキンケア製品であって、その包装箱の側面には、「Hybrid」の欧文字(以下「本件使用商標」という。)、「(R)」の記号及び「Pack」の欧文字を横一列に表し、その左側には字間を設けて「RE」の文字をより大きな書体で表してなる(乙1の1、2)。 イ 業界紙「週刊粧業」において、「ヒノキ肌粧品の『REハイブリッドパック』販売コンテストで3年連続1位を達成」の見出しの記事情報(2017年(平成29年)10月30日付け)には、特定の販売店における2015年から2017年分の本件使用商品の販売実績等が紹介され、また、「2020年秋のベスト商品」、「ヒノキ新薬」の見出しの記事情報(2020年(令和2年)7月6日付け)には、本件商標権者は2020年秋以降に本件使用商品の販売を強化することが紹介されている(乙4の1、2)。 さらに、小売店から本件商標権者に宛てた「注文伝票」(発注日:2020年6月14日、納品予定日:2020年6月18日)や、「ヒノキ肌粧品首都圏販売株式会社」から小売店に宛てた「納品書」(売上年月日:2020年6月16日)には、本件使用商品の商品名が数量とともに記載されている(乙6の1、2)。 (2)上記で認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。 ア 本件商標権者は、本件使用商標を包装に付した本件使用商品の販売をしているところ、同商品は、業界紙の記事情報や取引書類によれば、それら記事や情報が示す日付(2017年10月30日?2020年7月6日)及びその前後の時期において、市場で流通、取引されていたと容易に理解できるから、本件商標権者は、要証期間に、取引先(小売店、卸売店又は関連会社)に、本件使用商品を譲渡又は引渡しをしていたと推認できる。 イ 本件使用商品の包装に付された本件使用商標である「Hybrid」の欧文字は、その左側に表された「RE」の欧文字とは、文字の大きさや構成態様(大文字と小文字を組み合わせた構成と大文字のみの構成。)が異なり、字間を設けて配置されている。また、当該「Hybrid」の欧文字の右側には、それに続く「Pack」の欧文字とを区切るように、登録商標であることを示す「(R)」の記号が配置されており、さらに、「Pack」の欧文字は、本件使用商品との関係において、単に商品の品質(種別、内容)を表示するにすぎない、自他商品の出所識別標識としての機能が極めて弱い文字部分でもある。 そうすると、本件使用商品の包装に表示された本件使用商標は、その包装の他の文字部分等からは分離、独立した出所識別標識として表示されているとの印象を与えるものである。 ウ 本件使用商標は、「合成物」の意味を有する英語「Hybrid」の欧文字(「ハイブリッド」と称呼される。)を表してなるところ、それに相当する文字を表してなる本件商標(「HYBRID」の欧文字と「ハイブリッド」の片仮名を上下二段に表してなる。)とは、社会通念上同一の商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって、同一の称呼及び観念を生ずる商標)と認められる。 エ 本件使用商品は、ゲルとマスクを同梱した「パック用化粧品」であるところ、本件商標の指定商品中「化粧品」の範ちゅうの商品と認められる。 オ 以上によれば、本件商標権者は、その指定商品中「化粧品」に属する本件指定商品の包装に、本件商標と社会通念上同一の商標である本件使用商標を付し、要証期間に、当該商品を譲渡又は引渡しをしていた(商標法第2条第3項第2号)ことが認められる。 (3)請求人の主張に対し ア 請求人は、本件商標権者の使用に係る商標は、「RE Hybrid Pack」のように他の文字と結合してなるもので、本件商標に他の構成要素を付加したものであること、その商品名も「REハイブリッドパック」と一貫して紹介されており、本件商標権者にはそのように統一する意図があること、「Hybrid」の語は、様々な取引業界において汎用(甲2?甲8)されているから、他の語と結合して別異の商標となることなどを指摘して、本件商標と社会通念上同一の商標の使用はない旨を主張する。 しかしながら、本件使用商品の包装に表示された本件使用商標は、上記(2)イのとおり、文字の大きさや構成態様、登録商標であることを示す「(R)」の記号の配置などに鑑みると、他の文字部分からは分離、独立した出所識別標識として表示されているとの印象を与えるから、本件商標と社会通念上同一の商標である本件使用商標が使用されていると認定することに特段の支障はない。 イ 請求人は、本件使用商標である「Hybrid」の文字は、識別力が弱く、混合物、混成物などの意味合いで化粧品業界において広く使用されているから、製品の品質や性質を示すにすぎず、自他商品の識別機能や出所表示機能を発揮する態様の使用とはいえない旨を主張する。 しかしながら、本件使用商標は、登録商標であることを示す「(R)」の記号を語尾に相当する位置に配置するなど、商標としての表示であることが強調されており、また、「Hybrid」の文字部分が商品の具体的な品質を表示するものとも直ちに理解できないから、本件使用商標に係る表示を本件商標に係る使用を裏付けるものと評価することに特段の支障はない。 (4)まとめ 以上のとおり、被請求人は、要証期間に、日本国内において、本件商標権者が、その請求に係る指定商品「化粧品」について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことを証明したものと認められる。 したがって、本件商標の請求商品に係る登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2021-03-23 |
結審通知日 | 2021-03-25 |
審決日 | 2021-04-12 |
出願番号 | 商願昭59-43734 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(X03)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
佐藤 松江 |
特許庁審判官 |
阿曾 裕樹 鈴木 雅也 |
登録日 | 1988-06-24 |
登録番号 | 商標登録第2057980号(T2057980) |
商標の称呼 | ハイブリッド、ブリッド |
代理人 | 稲木 次之 |
代理人 | 特許業務法人川口國際特許事務所 |