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審決分類 |
審判 一部取消 商標の同一性 無効としない Y41 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y41 |
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管理番号 | 1377915 |
審判番号 | 取消2020-300837 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2020-11-20 |
確定日 | 2021-08-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4845345号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4845345号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成16年7月7日に登録出願、第41類「献体に関する情報の提供,献体の手配,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳,カメラの貸与,光学機械器具の貸与」を含む第16類、第25類、第32類及び第41類に属する商標登録原簿記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同17年1月24日に登録査定、同年3月11日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 なお、本件審判の請求の登録は、令和2年12月8日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の平成29年12月8日から令和2年12月7日までを以下「要証期間」という。 第2 請求人の主張 請求人は、「商標法第50条第1項の規定により、登録第4845345号商標の指定商品及び指定役務中、第41類『献体に関する情報の提供,献体の手配,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳,カメラの貸与,光学機械器具の貸与』(以下「請求に係る指定役務」という。)についての登録を取り消す。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品及び指定役務中、請求に係る指定役務について、継続して3年以上日本国内において本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないことから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)本件商標の使用について ア 「なでしこジャパン」という商標が、サッカー女子日本代表チームの愛称として、我が国で広く知られていることに関しては、争いがないところである。 例えば、サッカー男子日本代表であれば「森保ジャパン」等の「監督名」+「ジャパン」の愛称がつけられており、野球の日本代表であれば「侍ジャパン」の愛称がつけられている。 「なでしこジャパン」もその一つであり、サッカー女子日本代表の愛称として日本国内で著名である。 しかしながら、「なでしこジャパン」が著名な商標であることと、本件商標である二段併記で構成される「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」が、請求に係る指定役務で使用されていることとは別問題であり、少なくとも本件商標は、請求に係る指定役務に関して、使用しているとはいえない。 イ 本件商標は、二段併記であり、被請求人は、本件商標と社会通念上同一の「なでしこジャパン」又は「NADESHIKO JAPAN」の標章を使用していると主張しているとおり(請求に係る指定役務での使用でないことは後述する。)、被請求人が、本件商標である二段併記の標章(なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN)を使用していないことに関しては争いがないものと思われる。 そして、二段併記の商標の使用に関して、審査便覧(甲3)には、5頁に「(エ)その他社会通念上同一と認められる商標」として、例2に「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用」と記載されている。 本件商標において上段の「なでしこじゃぱん」に関しては、「なでしこ」と「じゃぱん」の結合商標であるが、その文字は一種の造語であり、特定の観念を生じない。 本件商標の下段の「NADESHIKO JAPAN」も同様に、「NADESHIKO」と「JAPAN」の結合商標であるが、その文字は一種の造語であり、特定の観念を生じない。 なお、サッカー女子日本代表は、FIFA女子ワールドカップでも優勝した経験があり、その標章は著名であるため、サッカー女子日本代表のイメージに影響されやすいが、「NADESHIKO JAPAN」の文字自体は一種の造語であるため特定の観念が生じるものではない。 したがって、上段と下段の商標はいずれも特定の観念を生じず、観念が同一ではないため、「なでしこじゃぱん」及び「NADESHIKO JAPAN」のいずれか一方の使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用とはいえず、本件商標の使用に該当しない。 また、本件商標の上段に記載された「なでしこじゃぱん」の文字の使用であっても本件商標と社会通念上同一の商標の使用に該当しないのであるから、被請求人が主張する平仮名から構成される「なでしこ」と片仮名から構成される「ジャパン」の結合商標である「なでしこジャパン」の文字の使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用に該当しない。 ウ 本件商標の上段の「なでしこじゃぱん」が下段の「NADESHIKO JAPAN」の読み方を表しているとも考えられるが、この場合、仮に「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」と「NADESHIKO JAPAN」が社会通念上同一の商標と考えられたとしても、「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」と「なでしこジャパン」とが、社会通念上同一の商標とはいえない。 被請求人が「NADESHIKO JAPAN」を標準文字で商標登録出願及び商標登録せずに、あえて二段表記の「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」で商標登録出願及び商標登録しているのであるから、その社会通念上同一の範囲は、通常の標準文字である「NADESHIKO JAPAN」とその範囲は異にすべきである。 したがって、本件商標と「なでしこジャパン」とは、社会通念上同一の商標とはいえない。 (2)被請求人の主張について ア 乙第1号証について 乙第1号証は、2019年フランスで開催されたFIFA女子ワールドカップにあわせて、サッカー女子日本代表の写真展が14自治体で開催された旨の報告内容である。 被請求人は、乙第1号証により、本件商標と社会通念上同一であると主張する「なでしこジャパン」の文字が、「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」(以下「使用指定役務」という場合がある。)に使用されている旨を主張している。 しかしながら、乙第1号証からもわかるように、1枚目の写真では「なでしこジャパン大和市写真展」とタイトルが表示されており、2枚目の写真では「再び、世界のなでしこへ がんばれ!なでしこジャパン」とタイトルが表示されており、3枚目の写真ではタイトルすら表示されておらず、タイトルが一貫しておらず、使用指定役務において、「なでしこジャパン」の商標が使用されているとはいえない。 また、被請求人も主張するように、「なでしこジャパン」は、サッカー女子日本代表の愛称である。 つまり「なでしこジャパン」の文字が表すものは、サッカー女子日本代表のことであり、写真展の対象である選手達を表すものであって使用指定役務を表すものでなく、乙第1号証が示す「なでしこジャパン」の使用は商標的使用に該当しない。 イ 乙第2号証について 乙第2号証は、2019年3月24日のFIFA女子ワールドカップの優勝トロフィーの特別展示後の「日本の女子サッカーの歩み?around FIFA Women’s World Cups」というタイトルのトークショーの様子である。 被請求人は、乙第2号証により、本件商標と社会通念上同一であると主張する「なでしこジャパン」の文字が、使用指定役務に使用されている旨を主張している。 しかしながら、1枚目ないし3枚目の写真を見ても「なでしこジャパン」の表示はされておらず、トークショーのタイトルも「日本の女子サッカーの歩み?around FIFA Women’s World Cups」であり、「なでしこジャパン」という商標のタイトルではなく、使用指定役務において、「なでしこジャパン」の商標が使用されているとはいえない。 また、被請求人も主張するように、「なでしこジャパン」は、サッカー女子日本代表の愛称である。 つまり、「なでしこジャパン」の文字が表すものは、サッカー女子日本代表のことであり、トークショーの対象である選手達を表すものであって使用指定役務を表すものでなく、乙第2号証が示す「なでしこジャパン」の使用は、商標的使用に該当しない。 ウ 乙第3号証について 乙第3号証は、2018年11月11日に鳥取市営サッカー場バードスタジアムで行われたサッカー日本女子代表対ノルウェー女子代表の国際親善試合のチラシである。 被請求人は、乙第3号証により、「同書証からは、親善試合の観戦の来場者に対して、フェイスペイントの教授、記念撮影が提供され、それらに際して、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標『NADESHIKO JAPAN』が、使用されていることが理解できる。」と主張している。 しかしながら、まず、本件商標は、二段併記から構成される「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」であるため、本件商標と同一の商標はどこにも使用されていない。 また、被請求人が社会通念上同一であると主張する「NADESHIKO JAPAN」は、乙第3号証に「NADESHIKO JAPAN(日本女子代表)×NORWAY(ノルウェー女子代表)」と記載されているとおり、サッカー女子日本代表を表すものであり、被請求人が主張する「フェイスペイントの教授、記念撮影の提供」を表す名称ではない。 また、この親善試合が「NADESHIKO JAPAN」というイベントでもない。 仮にそのように解釈したとしても、その場合、役務は「スポーツの興行の企画・運営又は開催」であって、使用指定役務に該当するものではない。 さらに、被請求人は、乙第3号証から「フェイスペイントの教授」と主張しているが、乙第3号証には「フェイスペイント無料サービス バックスタンド側ブースエリアにあるフェイスペインティングコーナーで、お気に入りのフェイスペイントをGETしよう!※後半キックオフまで ※お1人様1枚まで(数量限定)」と記載されており、これは顔に貼るフェイスペイント(シール状のもの)を無料で提供するものであり、フェイスペイントを教えたりするものではなく、「フェイスペイントの教授」には該当しない。 そもそも大人数の来場者が予想されるのに、1人1人に対してフェイスペイントを教授するようなことは行われないし、また、実質的にできるものでもない。 また、被請求人は、乙第3号証から「記念撮影の提供」と主張しているが、乙第3号証には「記念撮影ボード 記念撮影ボードの前で写真を撮ろう!運が良ければ、カラッペ・カララと一緒に撮影できるかも??」と記載されており、「写真撮影をする」というものではなく、「記念撮影ボード」が置いてあるだけであり、自ら(又は友人によって)撮影するというものであって、「記念撮影の提供(写真の撮影)」には該当しない。 また、被請求人も主張するように、「NADESHIKO JAPAN」は、サッカー女子日本代表の愛称である。 つまり、「NADESHIKO JAPAN」の文字が表すものは、サッカー女子日本代表のことであり、親善試合の選手達を表すものであって、乙第3号証が示す「NADESHIKO JAPAN」の使用は、商標的使用に該当しない。 エ 乙第4号証について 被請求人は、乙第4号証に基づいて、「同書証においては、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標『なでしこジャパン』『NADESHIKO JAPAN』が、本件指定役務中の様々な役務との関係で使用されていることが窺い知れるものである」と主張しているが、具体的にどの指定役務に該当するか不明である。 また、本件商標は二段併記の「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」であって、「なでしこジャパン」又は「NADESHIKO JAPAN」と同一の商標ではない。 また、上記(1)イで述べたように、「なでしこジャパン」の文字は、本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない。 また、乙第4号証に係る「朝日新聞サッカー応援イベント なでしこのちから」は、株式会社朝日新聞が提供するものであって被請求人(被請求人は後援者)が提供するものではなく、乙第4号証に係る内容は、被請求人の本件商標の使用に該当しない。 また、被請求人も主張するように、「なでしこジャパン」及び「NADESHIKO JAPAN」は、サッカー女子日本代表の愛称である。 つまり、「なでしこジャパン」及び「NADESHIKO JAPAN」の文字が表すものは、サッカー女子日本代表のことであり、サッカー女子日本代表の選手達を表すものであって、乙第4号証が示す「なでしこジャパン」及び「NADESHIKO JAPAN」の使用は、商標的使用に該当しない。 これらのことは、乙第4号証2頁に「出演 なでしこジャパン、高倉麻子監督、なでしこジャパンOG、・・・」と記載されていたり、「6月から開幕する大一番を控えたなでしこジャパンの選手たち、そして高倉監督が登壇。・・・」と記載されていることからも明らかである。 (3)まとめ 以上のとおり、乙第1号証ないし乙第4号証からは、本件商標である二段併記からなる「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」及びこれと社会通念上同一の商標が、請求に係る指定役務において使用されていないから、本件商標は、請求に係る指定役務において、取り消されるべきである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。 1 被請求人は、サッカー競技の普及及び振興を図り、国民の心身の健全な発達に寄与することを目的として設立された公益財団法人であって、本件商標「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」は、サッカー日本女子代表チームの愛称として我が国のみならず世界中で広く知られているものである。そして、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標は、下記のとおり、広範な役務との関係で実際に使用されている。 2 乙第1号証は、2019年に日本各地で開催された、同代表チームの写真展を紹介する資料であるが、同書証からは、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標「なでしこジャパン」が、使用指定役務との関係で使用されていることが容易に理解できる。 3 乙第2号証は、2019年3月24日に開催された、同チームの優勝トロフィーの特別展示会及びトークショーを紹介する資料であるが、同書証からも、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標「なでしこジャパン」が、使用指定役務との関係で使用されていることが容易に理解できる。 4 乙第3号証は、2018年11月11日に開催された、サッカー日本女子代表チームとノルウェー女子代表チームとの国際親善試合に際して配布されたスタジアムガイドである。同書証からは、親善試合の観戦の来場者に対して、フェイスペイントの教授、記念撮影が提供され、それらに際して、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標「NADESHIKO JAPAN」が、使用されていることが理解できる。 5 乙第4号証は、2019年5月25日に開催された、朝日新聞サッカー応援イベント「なでしこのちから」の紹介記事である。同書証においては、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標「なでしこジャパン」「NADESHIKO JAPAN」が、本件指定役務中の様々な役務との関係で使用されていることが窺い知れるものである。 6 以上のとおり、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人又はその許諾を受けた者によって、請求に係る指定役務について使用されているから、本件審判の請求は成り立たない。 第4 当審の判断 1 事実認定 被請求人の提出した証拠及び当事者の主張によれば、以下の事実を認めることができる。 (1)被請求人は、サッカー競技の普及及び振興を図り、国民の心身の健全な発達に寄与することを目的として設立された公益財団法人であり、「なでしこジャパン」は、サッカー日本女子代表の愛称として広く知られているものである。 (2)乙第1号証は、被請求人のウェブサイトにおける2019年6月13日の「なでしこジャパン写真展、全国各地で開催中 ?FIFA女子ワールドカップフランス2019」と題するニュース記事である。 (3)当該記事では、同写真展について、「今月7日(金)にフランスで開幕したFIFA女子ワールドカップフランス2019。同大会に出場中のなでしこジャパン(日本女子代表)は2大会ぶりの世界制覇を目指し、現在グループステージを戦っています。日本サッカーを応援する自治体連盟に加盟する14の自治体より、日本国内におけるチームや大会の盛り上げに一役買って出ていただき、現在、下記場所にて大会に登録された23選手と高倉麻子監督の写真展を開催しています。」と紹介されている。 (4)一方、当該記事中には、15の自治体の一覧表が掲載されていることから、15の自治体が正しい数と認められ、当該一覧表の最初の欄には、自治体名として「神奈川県大和市」、開催場所として「大和スポーツセンターロビー」と表示されている。 (5)当該記事中には、開催中の写真展の様子を写した写真が3枚掲載されており、そのうち、大和市から提供された最初の写真には、「なでしこジャパン大和市写真展」(以下「使用商標」という。)と表示された看板とともに、選手や監督が1人1枚づつ撮影された写真が展示されている。 2 判断 上記1で認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。 (1)使用商標 本件商標は、別掲のとおり、「なでしこじゃぱん」の平仮名と「NADESHIKO JAPAN」の欧文字を二段に表してなるものである。 そして、「なでしこジャパン」が「サッカー女子日本代表」の愛称であることは広く知られているので、当該愛称を平仮名と欧文字で表した、本件商標の上段及び下段の各文字は、ともに「サッカー女子日本代表」の観念を同一にするものといえるから、その一方の使用は、本件商標と社会通念上同一と認められる。 一方、上記1(5)のとおり、乙第1号証には、使用商標が表示されているところ、構成中後半の「大和市写真展」の文字部分は、開催場所(「大和市」)と提供される役務の普通名称(「写真展」)を表すもので、自他役務の識別機能を有しないのに対し、構成中前半の「なでしこジャパン」の文字部分は、自他役務の識別機能を有するものであり要部といえる。 そして、「ジャパン」の片仮名は「じゃぱん」の平仮名の文字の表示を変更するものであって、ともに同一の称呼(「ジャパン」)及び観念(「日本」)を生ずるから、両者は社会通念上同一と認められる。 そうすると、使用商標の構成中、要部である「なでしこジャパン」は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。 (2)使用役務 本件商標の使用に係る役務は、「写真展の開催」(乙1)であるところ、当該役務は、請求に係る指定役務中、第41類「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競嗚・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」の範ちゅうに含まれるものである。 (3)使用時期 なでしこジャパン写真展のニュース記事(乙1)の日付は「2019年(令和元年)6月13日」であり、当該記事のタイトルに「なでしこジャパン写真展、全国各地で開催中・・・」とあることから、当該写真展の開催は、要証期間内であって、上記時期に当該写真展において使用商標を表示した看板が設置(展示)されていたことが推認できる。 (4)使用者 なでしこジャパン写真展を紹介するニュース記事(乙1)の内容からして、当該写真展を開催したのは、「日本サッカーを応援する自治体連盟」に加盟する15の自治体である。そして、当該記事中、15の自治体の一覧表の最初に「神奈川県大和市」とあること、最初の写真に「なでしこジャパン大和市写真展」とあること等から、当該15の自治体の一つである神奈川県大和市が、使用商標の使用者である。 そして、乙第1号証は、当該写真展開催の様子を被請求人が自身のウェブサイトのニュース記事で紹介していること、当該写真展の目的が、サッカー女子日本代表が参加しているFIFA女子ワールドカップフランス2019の大会の盛り上げに一役買っていただいている旨の説明があること等から、15の自治体の一つである神奈川県大和市と被請求人とは緊密な関係にあること、また、大和市による本件商標の使用について被請求人が異議を述べていないこと等を総合判断すれば、被請求人は、大和市が本件商標を使用することについて黙示の許諾を与えているものと推認できる。 したがって、神奈川県大和市は、本件商標の通常使用権者と認められる。 (5)使用行為 写真展における看板での使用商標の使用(乙1)は、「広告に標章を付して展示する行為」(商標法第2条第3項第8号)が行われたものと認められる。 (6)小括 上記(1)ないし(5)で判断したとおり、本件商標の通常使用権者である神奈川県大和市は、要証期間に日本国内において、請求に係る指定役務中、第41類「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」の範ちゅうに含まれる「写真展の開催」に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標を付して展示する行為(商標法第2条第3項第8号)をしていたことが認められる。 3 請求人の主張について (1)請求人は、本件商標の上段と下段の文字はいずれも特定の観念を生じず、観念が同一ではないため、「なでしこじゃぱん」及び「NADESHIKO JAPAN」のいずれか一方の使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用とはいえず、「なでしこジャパン」の文字の使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用に該当しない旨主張している。 しかしながら、上記2(1)のとおり、本件商標の上段及び下段の各文字は、ともに「サッカー女子日本代表」の観念を同一にするものであるから、その一方の使用は、本件商標と社会通念上同一と認められ、かつ、「ジャパン」の片仮名と「じゃぱん」の平仮名も社会通念上同一と認められるものであるから、使用商標の構成中、要部である「なでしこジャパン」は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。 したがって、請求人の主張は採用することができない。 (2)また、請求人は、乙第1号証について、写真展のタイトルが一貫していないこと、また、「なでしこジャパン」の文字が表すものは、サッカー女子日本代表のことであり、写真展の対象である選手達を表すものであることから、乙第1号証での「なでしこジャパン」の使用は、商標的使用に該当しない旨主張している。 しかしながら、被請求人のニュース記事のタイトルも「なでしこジャパン写真展、全国各地で開催中・・・」とあること等からすれば、15の自治体で開催された当該写真展は「なでしこジャパン」を識別標識として使用した写真展と認めるのが相当であって、神奈川県大和市の写真展では、識別標識としての「なでしこジャパン」を看板に表示していたものと認められるから、仮に写真展のタイトルが一貫していないとしても、そのことが上記判断を左右する理由にはならない。 したがって、請求人の主張は採用することができない。 4 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件商標の通常使用権者が、要証期間に日本国内において、請求に係る指定役務について、本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていたことを証明したと認められる。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべき限りではない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(本件商標) |
審理終結日 | 2021-06-10 |
結審通知日 | 2021-06-15 |
審決日 | 2021-07-08 |
出願番号 | 商願2004-62898(T2004-62898) |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(Y41)
T 1 32・ 11- Y (Y41) |
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
板谷 玲子 森山 啓 |
登録日 | 2005-03-11 |
登録番号 | 商標登録第4845345号(T4845345) |
商標の称呼 | ナデシコジャパン、ナデシコ |
代理人 | 田中 尚文 |
代理人 | 渡部 彩 |
代理人 | 塩田 尚也 |
代理人 | 三好 豊 |
代理人 | 本田 史樹 |