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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W35
管理番号 1377871 
審判番号 取消2020-300460 
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-06-25 
確定日 2021-08-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第5629928号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5629928号商標(以下「本件商標」という。)は、「わんくらす」の平仮名を標準文字で表してなり、平成25年6月7日に登録出願、第35類「商品の販売促進・役務の提供促進のための企画及び運営,商品の販売促進・役務の提供促進に関する助言及び指導,広告業,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっせん,求人情報の提供」を指定役務として、同年11月15日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和2年7月9日である。
なお、本件審判において商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成29年7月9日ないし令和2年7月8日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標は、その指定役務中、第35類「商品の販売促進・役務の提供促進のための企画及び運営,商品の販売促進・役務の提供促進に関する助言及び指導,広告業,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理」(以下「請求に係る役務」という。)について登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した(以下、証拠は「甲1」のように表記する場合がある。)。
本件商標は、請求に係る役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
なお、請求人は、被請求人提出の審判事件答弁書に対して、何ら弁駁していない。

第3 被請求人の答弁
1 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次の2のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証(枝番号を含む。)を提出した(以下、証拠は「乙1」のように表記する場合がある。)。
2 審判事件答弁書の要旨
被請求人は、要証期間に、本件商標を、請求に係る役務について使用されていたことは明らかであるから、商標法第50条第1項の規定に該当せず、本件商標の登録は取り消しされるものではない。
(1)請求に係る役務中「商品の販売促進・役務の提供促進のための企画及び運営」の提供に係る使用について
ア 被請求人は、注文戸建の建築設計・監理等の事業を営んでいるところ(乙1)、犬と暮らすライフスタイルを応援するべく、2012年10月にfacebookのSNSウェブサイト「わんくらす」を開設し、継続的に投稿している(乙2の1?乙2の4)。このサイトには、現時点で2.4万人ほどのフォロワーがいる。
このSNSサイトの冒頭には、足跡の図形とともに、「わん」及び「くらす」の各文字が上下二段に表示されている。また、その下に、活字の「わんくらす」が表示されている。
このSNSサイトには、「関連するページ」として、他社運営サイトヘのリンクが表示されている。例えば、乙第2号証の1では、「INUくらぶ」(エンターテイメントサイト)、「ねこのきもちWEB Magazine」(雑誌)、「ステイウィズドッグ」(ローカルビジネス)、「犬旅. com」(ペットサービス)、「犬の写真家 ホタパパ」(ペット用品)へのリンクが表示されている。
イ 上記アのとおり、被請求人は、自社のSNSサイト中で他社の商品・サービスヘのリンクを表示させて、興味をもった閲覧者を当該他社のサイトに誘導している。かかる行為は、他社のための販促支援であるといえるから、請求に係る役務中「商品の販売促進・役務の提供促進のための企画及び運営」に該当する。
(2)請求に係る役務中「市場調査又は分析」の提供に係る使用について
ア 被請求人は、ペット(特に犬)と住まいに関する市場分析を他社に提供している。一例として、2018年2月、2019年2月及び2020年2月に作成されたレポート「ペットとくらし」を、株式会社エフ・エムパートナーズ(以下「エフエム社」という。)ヘの納品書及び請求書とともに提出する(乙3の1?乙3の3、乙4の1?乙4の3、乙5の1?乙5の3)。
これらレポートの表紙には、上記(1)のSNSサイトと同様に、足跡の図形とともに「わん」及び「くらす」の各文字が上下二段に表示されている。また、納品書及び請求書には活字の「わんくらす」が表示されている。
イ 上記アのとおり、被請求人は、他社のために市場分析を行っているところ、かかる行為は、請求に係る役務中「市場調査又は分析」に含まれる。
(3)使用商標及び使用時期について
ア 本件商標は「わんくらす」の平仮名を標準文字で表してなるところ、これは、被請求人がSNSサイト及びレポート等で使用する活字「わんくらす」と実質的に同一である。そして、本件商標は、被請求人のSNSサイト及びレポート中で上下二段に表記された「わん」及び「くらす」とも同一と見て差し支えない。すなわち、被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を使用している。
イ 上記(1)、(2)及び(3)アの行為が、要証期間のものであることは、(2)の納品書及び請求書から明らかであり、また、SNSサイトの開設日及び投稿日から推認できるところである。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用について、被請求人の主張及びその提出に係る乙各号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)本件商標の商標権者(以下、単に「商標権者」という。)は、2018年(平成30年)2月13日付けで「2017年 ペットとくらし」と題するレポート(以下「本件レポート1」という。)を作成した(乙3の1)。
また、商標権者は、2019年(平成31年)2月12日付けで「2018年 ペットとくらし」と題するレポート(以下「本件レポート2」という。)を作成した(乙4の1)。
本件レポート1及び2には、住宅におけるペット飼育の状況や、ペット飼育に関連するニーズ・懸念点等の「ペットと住まいに関する市場調査又は分析」(以下「使用役務」という。)の結果が記載されており、また、これらの表紙及び本編の各ページには、別掲のとおりの構成からなる商標(以下「使用商標」という。)が表示されている(乙3の1、乙4の1)。
(2)商標権者はエフエム社に対し、2018年(平成30年)2月19日に、本件レポート1を納品し、同日に、その代金を請求した(乙3の2、乙3の3)。
(3)商標権者はエフエム社に対し、2019年(平成31年)2月15日に、本件レポート2を納品し、同日に、その代金を請求した(乙4の2、乙4の3)。
2 上記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)本件商標と使用商標について
ア 本件商標は、上記第1のとおり、「わんくらす」の平仮名を標準文字で表してなるところ、当該文字は、辞書類に載録がなく、特定の意味合いを有する語として知られていると認められないものである。
そうすると、本件商標からは、その構成文字に相応して「ワンクラス」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
イ 使用商標は、別掲のとおり、右下部分をやや太めに描写した円と、その円中に、横書きした「わん」の平仮名及びその直下に横書きした「くらす」の平仮名を上下二段に配した文字部分並びに「くらす」の平仮名の右側に動物の肉球を模した図形部分を配した構成からなる図形と文字との結合商標である。
そして、使用商標の構成中、「わん/くらす」の文字部分(審決注:「/」は改行を表す。以下同じ。)は、円及び図形部分に比して、顕著に目立つ大きさにて表されていることから、その構成中、「わん/くらす」の文字部分が、視覚上、最も強く看者の注意を引くものである。
また、使用商標の円部分は、文字部分及び図形部分を強調する装飾として理解されるものであるから、それ自体に、出所識別標識としての特定の称呼及び観念が生じるものとはいえない。
さらに、使用商標の構成中、「わん/くらす」の文字部分と、動物の肉球を模した図形部分とが、いずれも重なることなく配置され、視覚的に分離して観察されることに加え、観念的な関連性も見いだすことはできないから、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいい難く、文字部分と図形部分とが、それぞれ要部として自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものとみるのが相当である。
そうすると、使用商標は、構成中の要部の一である「わん/くらす」の文字部分に相応して、「ワンクラス」の称呼を生じるものであって、特定の観念は生じない。
ウ してみると、本件商標と使用商標の要部である「わん/くらす」とは、「わんくらす」の平仮名部分を共通にし、「ワンクラス」の称呼を共通にし、観念においても相違があるものではないことから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標であると認められる。
(2)使用役務について
使用役務は、上記1(1)のとおり、「ペットと住まいに関する市場調査又は分析」であるから、本件審判の請求に係る指定役務中、第35類「市場調査又は分析」に含まれる役務である。
そして、上記1(1)のとおり、本件レポート1及び2の表紙及び本編の各ページには、使用商標が表示されており、また、本件レポート1及び2は、使用役務との関係において、役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物であるといえる。
そうすると、使用役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物である本件レポート1及び2に使用商標が付されていたといえる。
(3)使用時期について
上記1(2)及び(3)のとおり、商標権者は、平成30年2月19日及び同31年2月15日に、エフエム社に対し、本件レポート1又は2を納品した。
そして、上記1(1)のとおり、本件レポート1及び2には、使用役務である「ペットと住まいに関する市場調査又は分析」の結果が記載されており、また、上記(2)のとおり、本件レポート1及び2は、使用役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物であることからすると、本件レポート1及び2を納品することは、使用役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を用いて使用役務を提供することであるということができる。
そうすると、商標権者は、要証期間である平成30年2月19日及び同31年2月15日に、使用役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を用いて使用役務を提供したということができる。
(4)小括
以上によれば、商標権者は、要証期間である平成30年2月19日及び同31年2月15日に、本件審判の請求に係る指定役務中、「市場調査又は分析」の範ちゅうに含まれる役務「ペットとくらしに関する市場調査又は分析」の提供に当たり、その提供を受ける者(エフエム社)の利用に供する物(本件レポート1及び2)に、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付したものを用いて当該役務を提供したと認めることができる。この行為は、商標法第2条第3項第4号にいう「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に該当する。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が、その審判の請求に係る指定役務に含まれる「ペットとくらしに関する市場調査又は分析」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したというべきである。
したがって、本件商標の請求に係る指定役務についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。


別掲
別掲 使用商標


審理終結日 2021-06-10 
結審通知日 2021-06-15 
審決日 2021-07-01 
出願番号 商願2013-43910(T2013-43910) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (W35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 謙司 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 山田 啓之
山根 まり子
登録日 2013-11-15 
登録番号 商標登録第5629928号(T5629928) 
商標の称呼 ワンクラス 
代理人 特許業務法人IPRコンサルタント 

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