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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て成立) X18
管理番号 1377004 
判定請求番号 判定2020-695001 
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 判定 
2020-09-04 
確定日 2021-04-21 
事件の表示 上記当事者間の国際商標登録第0952582号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 商品「珠数入れ、経本入れ、御朱印帳入れ等の袋物」に使用するイ号標章は、国際登録第952582号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第952582号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、2007年7月12日にフランス共和国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2008年(平成20年)1月3日に国際商標登録出願、第18類「Boxes of leather or imitation leather,trunks,suitcases,travelling sets(leather goods),travelling bags,luggage,garment bags for travel,hatboxes,vanity cases not fitted,toilet-cases,rucksacks,satchels,handbags,beach bags,shopping bags,sling bags,carrier bags,shoulder bags,waist bags,purses,cases,of leather or leatherboard:briefcases(leather goods),portfolio satchels,pochettes,wallets,change purses,key cases,card cases and holders(wallets),umbrellas,parasols.」を指定商品として、平成21年7月24日に設定登録され、その後、同30年2月6日に更新登録され、現に有効に存続しているものである。
第2 イ号標章
請求人が「珠数入れ、経本入れ、御朱印帳入れ等の袋物」(以下「使用商品」という。)について使用する標章は、別掲2のとおりの構成よりなるもの(以下「イ号標章」という。)である。
第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
1 判定請求の必要性
請求人に係る甲1に示す各種袋物は、株式会社滝田商店のウェブページで販売されていたが、令和2年8月1日に本件商標の商標権者から株式会社滝田商店に対し、上記の各種袋物の販売は本件商標の侵害に該当する旨の通報があり、当該通報を受けた株式会社滝田商店は、同日に、上記の各種袋物をウェブページに掲載して販売することを停止した。
請求人は、本件商標の効力の範囲について専門的知識をもって中立的立場から判断される判定を特許庁に求め、その判定の結果を株式会社滝田商店に提出し、ウェブページ掲載の停止を解除することを目的として、本件判定を求めている。
2 イ号標章について
イ号標章は、2色の四角形を交互に配した模様を備えた織物からなる各種袋物である。イ号標章に係る模様は市松模様と称される日本古来の織模様である。
袋物の種類は、オープン型、ポーチ型、ペンケース型等があり、珠数入れに適した大きさのものや、経本や御朱印帳を入れるのに適したものがある(甲1)。
3 イ号標章が商標権の効力の範囲に属さないことについて
(1)商標審査基準「八、商標法第3条第1項第6号」の「7.地模様からなる商標について」には次のとおりの記載がある。
「商標が、模様的に連続反復する図形等により構成されているため、単なる地模様として認識される場合には、本号に該当すると判断する。ただし、地模様と認識される場合であっても、その構成において特徴的な形態が見いだされる等の事情があれば、本号の判断において考慮する。」
当該審査基準に鑑みるに、本件商標は、色の濃い四角形と色の薄い四角形とが交互に配された地模様(以下「市松模様を模した地模様」という。)に加え、特徴的な形態が見いだされたため登録を受けたものであると考えられる。
そして、上記の特徴的な形態とは、本件商標権者が使用するキャンバス素材に塩化ビニールでコーティング加工された「トアル地」と呼ばれる素材(甲2)から生じる形状であると思料する。
すなわち、本件商標は、市松模様を模した地模様に加えて、上記色の濃い四角形と色の薄い四角形とで上記トアル地から生じる形状が異なるという特徴的な形態があるから自他識別力を備え得るため登録を受けたのだと思料する。
実際、本件商標に係る市松模様を模した地模様と上記トアル地から生じる形状からなる柄は「ダミエ」又は「ダミエ・キャンバス」として周知になっている。
してみると、本件商標の効力は、市松模様を模した地模様やこれに類似する地模様の範囲にあるのではなく、当該地模様に加えて、上記トアル地から生じる特徴的な形態を備える、いわゆるダミエ・キャンバスと同一又はこれに類似する範囲にあると思料する。
一方、イ号標章は、日本古来の模様である市松模様を備える織物からなる各種袋物であり、そして、素材の織物から生じる形状は、上記トアル地から生じる形状に類似するものではないから、イ号標章は、本件商標に係る特徴的な形態を備えていない。
したがって、イ号標章は、本件商標権の効力の範囲には属さない。
(2)イ号標章の市松模様は地模様であって、自他識別力のある商標として使用するものではない。
したがって、イ号標章は、本件商標権の効力の範囲には属さない。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、上記第3の請求人の主張に対し、何ら答弁していない。
第5 当審の判断
1 商標権の効力の範囲について
商標権の効力は、商標権の本来的な効力である専用権(使用権)にとどまらず、禁止的効力(禁止権)をも含むものであるから、指定商品と同一又は類似の商品についての登録商標と同一又は類似の商標及び商品の使用に及ぶものである(商標法第25条第37条)が、同時に同法第26条第1項各号のいずれかに該当する商標(他の商標の一部となっているものを含む。)には、及ばないとされており、同項第6号には、「前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標」と規定されている。
2 イ号標章について
(1)イ号標章は、別掲2において複数示されているところ、そのいずれの標章も、用いられている色彩は異なるものの、2色の四角形を交互に配した模様からなるものである。
(2)イ号標章が使用されている商品は、「珠数入れ、経本入れ、御朱印帳入れ等の袋物」である(別掲2(甲1))。
そして、使用商品に係るパンフレットにおける商品説明中に、例えば、「市松模様」、「市松柄」及び「市松生地」の語が、商品の布地の模様を表すものとして記載されており、また、「高級錦織」の語が、使用商品の素材を説明するものとして記載されている(別掲2(甲1))。
なお、使用商品に用いる素材生地として、織物を含む布地が用いられることは、一般的であるといい得る。
(3)「市松模様」及び「市松」の語について
「市松模様」については、各種辞書において、例えば、「碁盤目状の格子の目を色違いに並べた模様。江戸中期、歌舞伎俳優佐野川市松がこの模様の袴を用いたことに始まるという。」(大辞泉第2版(株式会社小学館))、及び「色の違う二種類の正方形または長方形を、互い違いに並べた模様。江戸中期、歌舞伎役者佐野川市松がこの模様の袴を用いたことから広まったという。」(大辞林第3版(株式会社三省堂))の記載があるとおり、布地などに用いられる日本古来の模様として広く一般に知られ、親しまれているものである。また、「市松模様」は、「市松」と略されることもある(前掲書)。
3 検討
(1)イ号標章は、上記2(1)のとおり、2色の四角形を交互に配した模様からなるものである。また、上記2(2)のとおり、使用商品に係るパンフレットにおける商品説明中に、「市松模様」、「市松柄」及び「市松生地」の語が、商品の布地の模様を表すものとして記載され、また、「高級錦織」の語が、使用商品の素材を説明するものとして記載されている。そして、使用商品に用いる素材として、織物などの布地が用いられることは、一般的であるといい得るものである。
(2)上記2(3)のとおり、「市松模様」の語は、「市松」と略される場合があることに加え、「碁盤目状の格子の目を色違いに並べた模様」の意味を有する語であり、当該語は、布地などに用いられる日本古来の模様として広く一般に知られ、親しまれているものである。
(3)上記(1)及び(2)よりすれば、イ号標章は、使用商品の全面に付されているものであって、上記2(3)に記載があるとおり、布地などに用いられる日本古来の模様として広く一般に知られ、親しまれている「市松模様」と同様の態様といい得るものであること、そして、使用商品に係るパンフレットにおいて、「市松模様」、「市松柄」及び「市松生地」の語が、使用商品の布地の模様を表すものとして、商品説明中に記載されていることを併せてみれば、イ号標章は、使用商品である「珠数入れ、経本入れ、御朱印帳入れ等の袋物」に使用される布地の模様である市松模様として認識されるにすぎないというのが相当である。
そうすると、イ号標章は、その使用商品との関係において、当該商品の布地全面の模様として使用された、日本古来の模様として広く一般に知られ、親しまれている市松模様にすぎないから、自他商品の識別標識として機能するような態様で使用されているものとはいえない。
(4)小括
以上からすると、イ号標章は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていないものと認められるから、商標法第26条第1項第6号に該当する。
4 まとめ
以上のとおり、イ号標章は、商標法第26条第1項第6号に該当するから、本件商標とイ号標章との比較及びその指定商品と使用商品との比較をするまでもなく、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 【別記】



判定日 2021-04-14 
審決分類 T 1 2・ 9- ZA (X18)
最終処分 成立  
前審関与審査官 有水 玲子 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 杉本 克治
庄司 美和
登録日 2008-01-03 
代理人 前川 真貴子 
代理人 安藤 順一 

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