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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W35 審判 全部申立て 登録を維持 W35 審判 全部申立て 登録を維持 W35 審判 全部申立て 登録を維持 W35 審判 全部申立て 登録を維持 W35 審判 全部申立て 登録を維持 W35 |
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管理番号 | 1376986 |
異議申立番号 | 異議2021-900006 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-01-04 |
確定日 | 2021-08-05 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6303837号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6303837号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6303837号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和元年10月21日に登録出願、第35類「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同2年9月15日に登録査定され、同年10月14日に設定登録されたものである。 2 引用商標 (1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめて「11号引用商標」という場合がある。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 ア 登録第1619650号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の態様:別掲2のとおり 指定商品 :第30類「茶,コーヒー,ココア,氷」及び第32類「清涼飲料,果実飲料」(平成15年12日24日書換登録) 登録出願日:昭和55年4月4日 設定登録日:昭和58年9月29日 イ 登録第1678756号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の態様:別掲2のとおり 指定商品 :第30類「菓子,パン」(平成17年11日16日書換登録) 登録出願日:昭和55年4月4日 設定登録日:昭和59年4月20日 ウ 登録第3150761号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の態様:別掲2のとおり 指定商品 :第30類「コ?ヒ?及びココア,コ?ヒ?豆,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミ?トパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリ?ムのもと,シャ?ベットのもと,ア?モンドペ?スト,イ?ストパウダ?,こうじ,酵母,ベ?キングパウダ?,氷,アイスクリ?ム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリ?ム用安定剤,酒かす」 登録出願日:平成5年5月12日 設定登録日:平成8年4月30日 エ 登録第3167788号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の態様:別掲2のとおり 指定商品 :第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,加工野菜及び加工果実,卵,加工卵,乳製品,食用油脂,カレ?・シチュ?又はス?プのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」 登録出願日:平成5年5月12日 設定登録日:平成8年6月28日 (2)申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は、別掲3のとおりの構成からなり、申立人が「飲食料品及び各種小売等役務、各種商品・役務」について使用し、国内外において周知著名となっているとする商標(以下「引用商標5」といい、引用商標1ないし引用商標5をあわせて「引用商標」という。)である。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであり、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第142号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、大きな一つの円形図形と、該円形図形の下方に、その中心線から斜め約45度の方向に前記円形図形よりも一回り径の小さい二つの円形図形を左右対称に一部結合して配した、計三つの円から構成される灰色の図形を背景に、このうち最も大きな径からなる円形図形の前面に、該円形図形の内側に沿うように「TSUKIGESHO」及び「FACTORY」の黒色の欧文字を、上下に弧を描くように湾曲して配し、これら欧文字の間に、「月化粧」及び「ファクトリー」の各文字を、白色で大きさ・書体を違え、上下二段に配した構成からなる。また、前記「FACTORY」の欧文字の左右には、黒色で色付けされた、前記灰色の背景図形と同様の構成からなる、計三つの円を一部結合して組み合わせた図形が配されている(以下、本件商標の背景及び「FACTORY」の欧文字を挟んで独立して配された三つの円を一部結合させた図形をまとめて「本件三ツ丸図形」という。)。 (2)引用商標について 申立人が引用する商標は、申立人の登録商標である引用商標1ないし引用商標4及び申立人の創作に係る世界的に高い人気と知名度を誇るキャラクターであるミッキー・マウスの顔の正面図を簡略化して表した図形として、申立人並びにその子会社及び関連会社が国内外で飲食料品及び各種小売等役務を含む幅広い商品・役務分野において使用し、申立人を象徴する商標として世界的に著名に至っている引用商標5である。 引用商標の構成は、別掲2及び別掲3のとおりであり、これらは、いずれも大きな一つの円形図形と、該円形図形の中心線から上方斜め約45度の方向に、前記円形図形よりも一回り小さな径からなる二つの円形図形を左右対称に一部結合して配した、計三つの円から構成される図形(以下「申立人三ツ丸図形」という。)をその構成の中核とするものである。 (3)申立人の事業内容及び申立人三ツ丸図形の商標としての著名性について ア 申立人及び申立人の事業内容 申立人は、アニメーション映画その他様々なアニメーションコンテンツを制作・提供する他、各種エンターテイメント事業を手がける世界的に著名な複合企業であるウォルト・ディズニーグループ(以下「ディズニーグループ」という。)の一員として、ディズニーグループの知的財産の管理等を行う米国の法人である(以下、申立人及びディズニーグループ各社をまとめて「申立人」という場合がある。)。 日本国内では、申立人の日本法人であるウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社が、映像配信、メディア、キャラクターマーチャンダイズ事業(商品化事業)、小売事業、ゲーム事業等、多角的に事業を展開している(甲12?甲16)。特に、ディズニーキャラクターを活用した商品化事業では、後述のとおり衣食住にわたる多種多様な商品分野で事業展開を行っている他、オンラインストア(Shop Disney:甲13)及び日本全国において小売実店舗「ディズニーストア」を展開し、全国的規模で各種商品の小売事業を行っている(甲14、甲15)。 また、申立人は、株式会社オリエンタルランドと業務提携を行い(甲17)、日本国内において申立人の制作に係るアニメーション作品をテーマとしたアミューズメント施設の運営を行っている。1983年に開業した東京ディズニーランドは、我が国を代表する人気テーマパークであり、開業の翌年の1984年には、来場者が1千万人を超え、今日に至るまで、毎年年間1千万人以上の来場者を誇る(甲19)。また、2001年には、東京ディズニーシーを開業(甲18)、さらに、これらに近接したオフィシャルホテル、商業施設、これらを結ぶモノレール等で構成された東京ディズニーリゾートの運営を行っている(甲18、甲20)。東京ディズニーランドと東京ディズニーシーは世界的にも高い人気を誇るテーマパークであり、エンターテイメント事業に関する国際的な非営利団体であるテーマエンターテイメント協会が毎年発表するテーマパークの業界動向レポートによれば、2019年の年間入場者数は、東京ディズニーランドが約1,791万人、東京ディズニーシーが1,465万人と、世界のテーマパークの中で、それぞれ第3位及び第4位という入場者数の多さを誇っている(甲23)。そして、子供から大人まで、実に幅広い年齢層の需要者が利用している名実ともに日本を代表するテーマパークとなっている(甲19の2)。 イ 申立人三ツ丸図形の商標としての著名性 申立人の制作に係るアニメーション作品には、数多くのアニメーションキャラクターが登場するが、その中でも申立人の象徴というべきキャラクターが、申立人の創業者でもあるウォルト・ディズニー氏の手によって1928年に誕生したミッキー・マウスである(甲24)。ミッキー・マウスは、世界中で長く愛され続けているキャラクターであり、日本においても著名であることは、特許庁においても顕著な事実と思料する(甲7?甲11)。 また、申立人は、大きさを違えた三つの円形図形を組み合わせ、これらの円形図形によってミッキー・マウスの顔及び大きな耳という同キャラクターの頭部の特徴をシンプルに表現した、「ミツマル(三ツ丸)」の通称(甲71)でも知られる図形(申立人三ツ丸図形)を、申立人の事業を象徴するアイコン又はシンボルとして、幅広い商品及び役務分野で継続的に使用している。申立人三ツ丸図形は、時を経るとともにデザインに若干の修正が加わったり、一風変わったデザインやデフォルメを加えて使用されたりすることもあるが(甲49、甲68、甲117等)、大きな円形図形と、その中心線から斜め約45度の角度で一回り径の小さい二つの円形図形を一部結合した、計三つの円形図形で構成するデザイン手法と、三つの円形図形のバランス・構図は一貫して変わっていない。 申立人三ツ丸図形は、東京ディズニーランドの開業の頃から日本において広く使用され、認識されている。遅くとも1979年、東京ディズニーランドの開業にむけ、株式会社オリエンタルランドと申立人との間で締結された「東京ディズニーランドの建設及び運営に関する契約」締結時の調印式において、申立人三ツ丸図形が使用されている(甲21)。東京ディズニーランドは、1983年に開業し、申立人三ツ丸図形を公式マークとして正式に採用し、同園の宣伝広告、園内でのガイドブック・チケットなどに2000年頃まで使用されていた(甲18の2、甲25?甲33)。その後、申立人三ツ丸図形は、東京ディズニーシーの公式マークとしても引き継がれ(甲22)、同園が開業した2001年から現在でも使用されている(甲37?甲39)。また、申立人三ツ丸図形は東京ディズニーリゾートの公式マークとしても使用されている(甲34?甲36等)。 さらに、申立人三ツ丸図形は、東京ディズニーリゾートの公式ウェブサイト中のアイコン、公式アプリのアイコン及びアプリ起動後の画面、電子チケット(ディズニーeチケット)のロゴ、提携ホテルであることを示す標章、その他、東京ディズニーリゾート内で掲示又は頒布される刊行物や広告宣伝物(甲40?甲52、甲69他)等において共通して使用されている。また、申立人三ツ丸図形は、東京ディズニーリゾート内のホテルの外装や内装、アメニティ(甲53?甲57)、リゾート内を走行するモノレールやバス(甲58?甲63)、さらに、ディズニーリゾート内で販売又は提供される飲食物の形状等(甲64?甲66)としても使用されるなど、申立人三ツ丸図形は、来園者が東京ディズニーリゾートを利用するに際し、必ず目にし又は利用するありとあらゆる媒体において、申立人を象徴するシンボルとして共通して用いられている。 しかるところ、東京ディズニーランドには年間1千万人以上、東京ディズニーシーと合わせれば年間2千万人以上が訪れていることを所与とすれば(甲19)、東京ディズニーリゾートの公式マークとしても使用され、かつ、東京ディズニーリゾート内の施設や宣伝広告媒体等にも共通して使用されている申立人三ツ丸図形が、日本国民の相当高い割合において、申立人の業務を表す商標として広く認識されていることは明白である。 また、申立人は、国内向けの放送番組(ディズニーチャンネル、ディズニージュニア)の配信事業の出所表示として使用されるロゴにおいても申立人三ツ丸図形を取り入れたデザインを採用する他(甲16)、ウェブサイトを通じたコンテンツ配信の際にも申立人三ツ丸図形を共通して用いている(甲70)。 さらに、申立人は、日本国内において、多種多様な商品分野において、アニメーションキャラクターデザイン等(以下「ディズニープロパティ」という。)の使用許諾を行っており、当該許諾商品は、東京ディズニーランド・東京ディズニーシーの園内、日本各地のディズニーストア、ディズニー公式オンラインストア、一般百貨店・スーパーマーケットその他日本全国のあらゆる小売店において販売されている。申立人三ツ丸図形は、これら許諾商品又はその包装等に付され使用されていることはもちろん、商品の形状自体を申立人三ツ丸図形とする例も少なくない(甲104、甲106、甲108、甲110他)。申立人三ツ丸図形を使用した商品のすべてをここで挙げることは、種類・数があまりに多いため難しいが、当該商品は衣食住にわたる広範かつ多岐の分野に及んでいる(甲72?甲122)。そして、特に、飲食料品(甲64?甲66、甲99?甲122)は、申立人の商品化事業において中核をなす商品群であり、申立人三ツ丸図形を用いた商品化事業も特に多く行われている分野である。また、申立人は、飲食料品の分野で栄養成分に関する独自のガイドラインを策定し、ガイドラインに適合したライセンス商品に対し、認証マーク(ディズニー・チェック)の表示の使用を許諾しているところ、該認証マークも、申立人三ツ丸図形をモチーフとしている(甲117?甲122)。 以上述べたとおり、申立人は、日本国内においてアミューズメント施設の提供、放送番組やコンテンツ配信事業、商品化事業を通じた多種多様な商品の販売といった、多岐にわたる事業を継続的に行っており、さらに、これらの事業との関係で、申立人三ツ丸図形は、申立人の著名なキャラクターであるミッキー・マウス、さらには、申立人自体を象徴する商標として、日常的かつ長期間にわたり様々な商品及び役務の分野で使用され、日本の需要者の目に触れ、広く記憶され、著名に至っているものである。その著名性の程度は、申立人の業務に係る商品・役務の需要者が、申立人三ツ丸図形のような構図の三つの円形を組み合わせた図をみれば、直ちにミッキー・マウスを連想・想起してしまう程と評しても過言ではない(甲125)。また、東京ディズニーランド及び東京ディズニーシーの園内の様々な箇所に、申立人三ツ丸図形の形状をした「隠れミッキー(Hidden Mickey)」と呼ばれるものがデザインとして散りばめられているといわれ、それを見つけることを楽しみにして東京ディズニーリゾートを訪れる来園者も少なくない(甲67、甲125他)。 以上のとおり、申立人三ツ丸図形は、本件商標が登録出願されるよりもはるか前から、老若男女を問わず日本全国の需要者において広く認識されているものである。そして、申立人三ツ丸図形のような構図の3つの円形図形をみれば、誰もが申立人の著名なキャラクターであるミッキー・マウスを連想・想起するほどに、申立人三ツ丸図形の印象は需要者の記憶の中に強く定着している。 なお、申立人三ツ丸図形の申立人の商標としての周知性は過去の異議決定(甲11)等においても認められており、これを受けて、申立人三ツ丸図形から構成される商標が、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の「日本国周知・著名商標検索」に掲載されるに至っている(甲7の2)。 ウ 小括 以上述べたとおり、申立人は日本国内において多角的に事業展開を行っており、その中には、本件商標の指定役務と共通する小売等役務に係る事業も含まれている。さらに、申立人は、本件商標の指定役務の取扱商品である飲食料品についても、商品化事業を通じて継続的に事業を展開してきた。 そして、申立人三ツ丸図形は、申立人によるこれらの事業において長年にわたり継続的に使用されてきた結果、本件商標の指定役務の分野は、もちろん、幅広い商品・役務の分野で広く知られるに至っている著名商標である。 (4)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 11号引用商標 11号引用商標は、別掲2のとおり、右側の上下の角が丸く面取りされた黒色の略正方形の図形を背景とし、その前面に、白色の太線で描かれた輪状の図形と、該輪状図形の中央に、該輪状図形から独立して配された、白色で色付けされた大きさを違えた大小三つの円形を一部結合させた図形から構成されている。 イ 本件商標と11号引用商標との類似性 (ア)11号引用商標のかかる構成において、背景として描かれた黒色の略正方形図形及び白色の輪状図形は、いずれも簡素なありふれた形状からなり、特段需要者の注意を引くものではない。その一方、構成の中央に配された、大きさを違えた大小三つの円形を一部結合させた図形は、著名な申立人三ツ丸図形と構成を共通にするものであり、申立人三ツ丸図形の著名性と相俟って、11号引用商標の構成において最も需要者の注意を引く部分である。 すなわち、11号引用商標の要部は、その中央に配された大きさを違えた大小三つの円形を一部結合させた図形部である。 (イ)他方、本件商標は、前記(1)のとおり、その背景及び構成中に、大きさを違えた計三つの円形図形を一部結合して表した図形(本件三ツ丸図形)を含むところ、本件三ツ丸図形は、本件商標における「TSUKIGESHO」などの文字要素とは観念上何のつながりもなく、色彩や構成、表示位置等から外観上分離可能な態様で配されている。また、「FACTORY」の欧文字の左右に配された本件三ツ丸図形は、文字要素と空白を隔てて配されていることもあり、外観上独立して看取されるものである。加えて、本件三ツ丸図形は、大きな一つの円形図形と、該円形図形の中心線から左右45度の方向に前記円形図形よりも一回り径の小さい二つの円形図形を左右対称に配したという点において、著名な申立人三ツ丸図形と構成を共通にするところ、申立人三ツ丸図形の著名性に鑑みれば、本件商標に接した需要者が、役務の選択にあたり、その構成中、申立人三ツ丸図形と共通する本件三ツ丸図形部に殊更注目し取引にあたることは想像に難くない。 したがって、本件商標において、その背景及び前面に配された本件三ツ丸図形がその要部となる。 (ウ)本件商標と11号引用商標とを対比すると、これらの要部である計三つの円形を組み合わせた図形、すなわち、最も大きな径を有する円形図形と、該円形図形の中心線から斜め約45度の方向に一回り小さな径からなる二つの円形図形を左右対称に一部結合して表した図形は構成が共通するため、外観上極めて相紛らわしいものである。 なお、本件三ツ丸図形と、申立人の11号引用商標の要部である大きさを違えた大小三つの円形を一部結合させた図形とは、上下が逆であるという差はあるが、通常の取引にあたり、商標は常に同じ方向で需要者に看取されるものではなく、また、デザインの仕様上、商標の表示態様や向きが変更されることは珍しいことではない(甲73?甲76、甲123)。 よって、これらの図形の向きが異なることは、両者の外観上の差異を決定づけるほど強い要素とはいえず、したがって、本件商標の要部である本件三ツ丸図形と、11号引用商標の要部であり、著名な申立人三ツ丸図形と構成を共通にする大きさを違えた大小三つの円形を一部結合させた図形部とは外観上類似する。 さらに、本件三ツ丸図形が申立人三ツ丸図形と構成を共通にすること、また、申立人三ツ丸図形が、申立人の著名なキャラクターであるミッキー・マウスを簡略化して表した図形として広く知られていることに鑑みれば、本件商標からはミッキー・マウスの称呼及び観念が生じるため、本件商標と11号引用商標とは、称呼及び観念も共通する。 ウ 本件指定役務と11号引用商標の指定商品との類似性 本件商標の指定役務(以下「本件指定役務」という。)は、主に飲食料品を取り扱う小売等役務であり、11号引用商標の指定商品は飲食料品の分野の商品であり、両者は、類似商品役務審査基準においても類似と推定されているように、その用途、取引経路、需要者を共通にするため類似する。 エ 小括 以上述べたとおり、本件商標は11号引用商標と類似し、11号引用商標の指定商品と類似する小売等役務について使用されるものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第10号該当性について ア 引用商標5 申立人が、本号の主張において引用する商標は、申立人が永年にわたり申立人の著名なキャラクターであるミッキー・マウスを簡略化して表した図形として、そして、申立人を象徴する商標として、国内外において申立人が展開する各種事業において共通して使用してきた結果、我が国において広く知られるに至っている申立人三ツ丸図形から構成される引用商標5である。 イ 本件商標と引用商標5の類似性 引用商標5を構成する申立人三ツ丸図形が我が国において著名に至っていることは既に述べたとおりである。さらに、申立人三ツ丸図形の著名性に鑑みれば、本件商標に接した者が、本件商標の構成中、申立人三ツ丸図形と構成を共通にする本件三ツ丸図形を要部として認識し取引にあたることは自明である。 ここで、引用商標5と本件商標の要部である本件三ツ丸図形とを比較すると、いずれも、最も大きな径を有する円形図形と、該円形図形の中心線から斜め約45度の方向に、一回り小さな径からなる二つの円形図形を左右対称に一部結合して表した点において構成が共通するため、これらは外観上極めて相紛らわしい。そして、前記(4)イで述べたとおり、図形の向き(上下)が逆になっているという点は両者の構成上の共通性を凌駕するほど顕著な外観上の差異とはいえない。また、本件商標の構成中最も顕著に表された、背景部の本件三ツ丸図形の前面には、「TSUKIGESHO」などの文字が配されてはいるものの、例えば、申立人が申立人三ツ丸図形を使用する際にも、デザインの仕様上、三ツ丸図形の前面に文字や別の絵柄を配するといった変更を加え使用する例が多く存在する(甲47?甲49、甲68)。このことに鑑みれば、本件商標に接した者は、前記文字要素を、商標のデザインバリエーションの付記的な部分として捉えるにすぎず、依然として、著名な申立人三ツ丸図形と構成を共通にするが故に強い識別力を発揮する本件三ツ丸図形部を、本件商標の要部として認識し、記憶にとどめるというべきである。 そして、引用商標5を構成する申立人三ツ丸図形が、申立人の著名なキャラクターであるミッキー・マウスを簡略化して表した図形として広く知られていること、本件商標の要部である本件三ツ丸図形が、著名な申立人三ツ丸図形と構成を共通にするものであることに鑑みれば、本件商標からはミッキー・マウスの称呼及び観念が生じ、本件商標と引用商標5とは、称呼及び観念上も類似する。 ウ 本件指定役務と引用商標5に係る商品及び役務の類似性 引用商標5は、前記のとおり申立人が国内で展開する各種事業において、申立人を象徴する商標として継続かつ共通して用いられてきたところ、申立人は、国内で飲食料品を含む各種商品に係る小売事業を展開し、該小売事業との関係において、例えば店舗の内装や看板等においても引用商標5を使用してきた(甲15の2?12、甲123、甲124)。さらに、申立人は、日本国内において、衣食住にわたるあらゆる商品分野でディズニープロパティを利用した商品化事業を展開しているところ、飲食料品は、流行や季節、時期に関わらず商品化事業の中核をなす商品群として通年展開されている商品群である。そして、これらの商品化事業においても引用商標5は多く用いられてきたのであり(甲98?甲122)、引用商標5は、申立人の業務に係る小売等役務及び飲食料品の商品分野においても著名に至っていることは自明である。 本件指定役務は、引用商標5に係る各種小売等役務及び飲食料品といった商品と、その用途、取引経路、需要者を共通にする類似役務である。 エ 小括 以上述べたとおり、本件商標は、申立人の商標として著名な引用商標5と類似し、かつ、引用商標5に係る小売等役務及び飲食料品といった商品と類似する小売等役務について使用されるものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (6)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 本号における「混同のおそれ」及びその判断基準 本号に係る最高裁判決(平成10年(行ヒ)第85号)及び商標審査基準を前提に、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することについて述べる。 イ 本件商標が本号に該当すること (ア)申立人が本号の主張において引用する商標は、申立人を象徴する商標として我が国において広く知られるに至っている申立人三ツ丸図形から構成される引用商標5である。 (イ)本件商標と引用商標5とが類似することは、前記(5)イで述べたとおりである。そして、引用商標5を構成する申立人三ツ丸図形が我が国において著名に至っていることは前記(3)イで詳述したとおりである。さらに、引用商標5は、世界的に著名なミッキー・マウスの頭部のシルエットを表わした、申立人の創作に係る独自のデザインであるから、その独創性は極めて高く、加えて、かかる図形は、申立人が国内で展開する各種事業において、申立人を象徴する商標として共通して用いられてきたいわゆるハウスマークである。なお、引用商標5の独創性が高いこと、引用商標5が申立人のハウスマークであり混同を生じる範囲が広いことは、前記異議決定(甲11)において、引用商標5と実質的に同一の申立人商標について認められていることから、特許庁においても顕著な事実であると思料する。さらに、申立人がエンターテイメント事業に加え、映像配信、メディア、キャラクターマーチャンダイズ事業、小売事業、ゲーム事業等、多角的に事業を展開していることは既述のとおりであり、本件指定役務は、申立人が国内で展開する小売事業及び商品化事業の一環として販売する飲食料品と性質、用途又は目的において関連性を有するのみならず、その取引者及び需要者も共通にするものである。以上の点からすれば、本件商標が「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当することは明らかである。 (ウ)以上の点に加え、商標権者による本件三ツ丸図形の使用により、実際に、需要者間において、申立人の業務との間で出所の誤認混同が生じている点について付言する。 商標権者は、同人のウェブサイト(甲126)によると、大阪府を本拠地として関西地方を中心に和菓子及び洋菓子の製造販売を行っている法人であるところ、奈良に、代表取締役を共通とする関連会社(株式会社天平庵)を有し、同関連法人においても和菓子及び洋菓子の製造販売等の事業を行っている(甲127、甲128)。本件三ツ丸図形は、商標権者及びその関連会社である株式会社天平庵(以下「商標権者等」という。)が販売する菓子やその包装において使用されているところ(甲128、甲129、甲131他)、商標権者等の販売に係る商品(菓子)の需要者において、本件三ツ丸図形を「逆さミッキー」と称する等、本件三ツ丸図形を申立人のミッキー・マウスと混同する事例が実際に発生している(甲129?甲141)。 なお、これらの中には、本件三ツ丸図形が家紋(州浜)であるかの言及がなされているものもあるが、株式会社天平庵のウェブサイトにおいて説明されているとおり(甲128)、本件三ツ丸図形は商標権者が制作したものであり、日本古来の州浜の家紋とは構成が異なることを念のため言い添える(甲142)。 このように、商標権者等による本件三ツ丸図形の使用は、実際の取引において現に申立人の業務との混同が生じるに至っているのであり、かかる図形を要部とする本件商標の登録及び独占使用を申立人と無関係の商標権者に認めることは、著名な引用商標5の識別力を希釈化させ、引用商標5に化体した信用が毀損されるのみならず、申立人の引用商標5に化体した信用の下で役務の取引にあたる需要者の利益をも害するおそれがある。 ウ 小括 以上述べたとおり、本件商標は、申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (7)商標法第4条第1項第19号該当性について 本件商標を本号に係る商標審査基準に当てはめると、引用商標5が申立人の創作に係る唯一無二の出所表示として我が国を含む世界的に著名に至っている商標であること、本件商標の要部である本件三ツ丸図形が引用商標5と構成をほぼ共通にし、本件商標と引用商標5との類似性が極めて高いこと、そして、実際の取引においても、商標権者による本件三ツ丸図形の使用にあたり申立人の業務との混同が生じており、その結果、著名な引用商標5に化体した信用、名声、顧客吸引力が毀損されるおそれがあることを考慮すれば、商標権者が世界的に著名な引用商標5の存在を知らずに本件商標を採択したとは到底考えられず、本件三ツ丸図形を要部とする本件商標の使用には、申立人の著名な引用商標5に化体した顧客吸引力にフリーライドする不正の意図が窺える。 そして、仮に、本件商標登録が維持され、商標権者に本件商標の独占使用が認められるような事態となれば、引用商標5に化体した信用等が毀損され、また、引用商標5の強い出所識別力が希釈化されることにつながりかねないばかりか、需要者の混同を惹起させるものであり、本件商標の登録は、需要者の利益保護及び公正な取引秩序の維持という観点からも認められるべきではない。 以上のとおり、本件商標は、日本において著名な引用商標5と類似するものであって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、申立人は、我が国において、株式会社オリエンタルランドと業務提携し、1983年に東京ディズニーランドを、2001年に東京ディズニーシーを開業し、現在まで継続して運営していること(甲17、甲18)、これら施設、ホテル、モノレールなどで構成される東京ディズニーリゾートを運営していること(甲18?甲22)、東京ディズニーランドの入園者数は1983年の開園から2000年まで、毎年993万人ないし1,746万人、東京ディズニーシーが開園した2001年から2019年の入園者数は東京ディズニーランド及び東京ディズニーシーを合わせて、毎年2,205万人ないし3,256万であること(甲19、甲23)、引用商標1ないし引用商標4(同一視できるものを含む。)は1983年から2000年頃まで、東京ディズニーランドのポスター、チケット、ガイドブック、商品の包装などに使用されていること(甲25?甲33、職権調査)、引用商標5(同一視できるもの、輪郭で表されたものを含む。)は2000年頃から現在まで、東京ディズニーシー、東京ディズニーリゾートのポスター、ガイドマップなどに使用されていること(甲38?甲43、職権調査)などが認められる。 イ 上記アのとおり、東京ディズニーランド及び東京ディズニーシーの入園者数、引用商標の使用の状況などからすれば、引用商標1ないし引用商標4について2000年頃以降の使用が確認できないことを考慮してもなお、引用商標はいずれも、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。 (2)商標法第4条第1項第11号について ア 本件商標 本件商標は、別掲1のとおり、大きく描いた円とその右下及び左下にやや小さな二つの円を一部が交わるように結合させたような図形(以下「本件図形」という。)を灰色で描き、大きく描いた円内に「月化粧」及び「ファクトリー」の文字を2段に白抜きで表し、両文字の上に「TSUKIGESHO」の文字を、その下に極めて小さな本件図形を左右に配した「FACTORY」の文字を黒色で表してなる構成からなるものである。 そして、本件商標は、その構成中の文字に相応し「ツキゲショウファクトリー」又は「ツキゲショウ」の称呼を生じ、「月化粧」の文字は、辞書等に載録された語ではなく、特定の意味合いを生じないものであり一種の造語とみるのが相当であるから、「FACTORY」の文字が「工場、製作所」等の意味を有する英語であるとしても、これらの文字からは特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 イ 11号引用商標 11号引用商標(引用商標1ないし引用商標4)は、別掲2のとおり、右側の角が丸く面取りされた黒色の略正方形の図形内に、大きな円の右上及び左上にやや小さな円を接するように描いた図形と該図形を囲むように描いた輪状の図形を白抜きしてなるものである。 そして、11号引用商標は、上記(1)イのとおり、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められるものであるから、特定の称呼を生じるものとはいえないものの、「東京ディズニーランドのマーク」との観念を生じると判断するのが相当である。 ウ 本件商標と11号引用商標の類否について 本件商標と11号引用商標を比較すると、両者の上記のとおりの外観は、黒色の略正方形の図形の有無など構成態様が明らかに異なり、外観上、相紛れるおそれのないものである。 次に、称呼においては、本件商標から「ツキゲショウファクトリー」又は「ツキゲショウ」の称呼が生じるのに対し、11号引用商標は特定の称呼を生じないものであるから、称呼上、両商標は相紛れるおそれのないものである。 さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないのに対し、11号引用商標は「東京ディズニーランドのマーク」の観念を生じるものであるから、観念上、両者は相紛れるおそれのないものである。 そうすると、本件商標と11号引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 エ 申立人の主張について 申立人は、本件商標の要部は背景及び「FACTRY」の文字の左右に配された本件三ツ丸図形(本件図形)であり、11号引用商標の要部は申立人三ツ丸図形であるとして、両者の共通点を挙げ、両者は上下が逆であるとの差を考慮しても外観上類似する旨、及び本件商標は「ミッキー・マウス」の称呼及び観念を生じ、11号引用商標と称呼及び観念を共通にする旨主張している。 しかしながら、申立人が本件商標の要部という背景の本件三ツ丸図形及び「FACTRY」の文字の左右に配された本件三ツ丸図形は、看者をして前者は単にありふれた大小3つの円の一部を結合してなる背景として認識させ、後者は極めて小さく表され本件商標の構成全体に埋没し、いずれも、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものはいえず、本件商標の要部ということはできない。 また、11号引用商標は、その構成態様から全体が一体不可分のものと判断するのが相当である。 したがって、申立人のかかる主張は、その前提において理由がない。 さらに、他に本件商標と11号引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。 オ 小括 上記のとおり、本件商標と11号引用商標は非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と11号引用商標の指定商品が類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。 (3)商標法第4条第1項第10号及び同項第15号について ア 本件商標 本件商標は、上記(2)アのとおりの構成からなり、「ツキゲショウファクトリー」又は「ツキゲショウ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 イ 引用商標5 引用商標5は、別掲3のとおり、大きな円の右上及び左上にやや小さな円を接するように描いた図形を黒色で表してなるものである。 そして、引用商標5は上記(1)のとおり申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められるものであることに加え、引用商標5を構成する図形(申立人三ツ丸図形)が申立人に係るキャラクター「ミッキーマウス」を表したものとして知られているといえることから、引用商標5は、特定の称呼が生じるとはいえないものの、「ミッキーマウス(のシルエット)」の観念を生じると判断するのが相当である。 ウ 本件商標と引用商標5の類否について 本件商標と引用商標5を比較すると、両者の上記のとおりの外観は、「月化粧」及び「ファクトリー」などの文字の有無など構成態様が明らかに異なり、外観上、両商標は相紛れるおそれのないものである。 次に、称呼においては、本件商標は「ツキゲショウファクトリー」又は「ツキゲショウ」の称呼が生じるのに対し、引用商標5は特定の称呼を生じないものであるから、称呼上、両商標は相紛れるおそれのないものである。 さらに、観念においては、本件商標は特定の観念を生じないのに対し、引用商標5は「ミッキーマウス(のシルエット)」の観念を生じるものであるから、観念上、両商標は相紛れるおそれのないものである。 そうすると、本件商標と引用商標5は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 エ 申立人の主張について 申立人は、本件商標の要部は背景及び「FACTRY」の文字の左右に配された本件三ツ丸図形(本件図形)であるとして、該図形と引用商標5(申立人三ツ丸図形)との共通点を挙げ、両者は上下が逆であるとの差を考慮しても外観上極めて紛らわしい旨、及び本件商標は「ミッキー・マウス」の称呼及び観念を生じ、引用商標5と称呼及び観念上も類似する旨主張している。 しかしながら、上記(2)エのとおり本件商標は、その構成中、本件三ツ丸図形(本件図形)は要部とはいえないから、申立人のかかる主張は、その前提において理由がない。 なお、仮に本件図形と引用商標5を比較するとしても、本件商標はその構成中に文字を含み商標の上下は明らかであるから、本件図形は、一つの円の下部に2つの円が結合されたものとみるのが自然であって、看者をして特定の物や事象を連想、想起させることなく、特定の称呼及び観念を生じないものと判断するのが相当である。 したがって、本件図形と、一つの円の上部に二つの円を結合させた構成からなり、申立人が「ミッキーマウス」の称呼、観念が生じるとする申立人三ツ丸図形とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似のものであって、別異のものというべきものである。 オ 出所混同のおそれ 上記(1)のとおり引用商標5は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められるものであるが、上記アないしエのとおり本件商標と引用商標5は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標5を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 カ 小括 上記のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号のいずれにも該当するものといえない。 (4)商標法第4条第1項第19号について 上記(1)のとおり引用商標5は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められるものであるが、上記(3)のとおり、本件商標と引用商標5は相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標であり、本件商標は引用商標5を連想又は想起させるものでもない。 そうすると、本件商標は、引用商標5の名声にただ乗りする、引用商標5に化体した信用等を毀損するなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。 (5)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標1ないし引用商標4) 別掲3(引用商標5) |
異議決定日 | 2021-07-27 |
出願番号 | 商願2019-135328(T2019-135328) |
審決分類 |
T
1
651・
263-
Y
(W35)
T 1 651・ 261- Y (W35) T 1 651・ 25- Y (W35) T 1 651・ 262- Y (W35) T 1 651・ 271- Y (W35) T 1 651・ 222- Y (W35) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 澤藤 ことは |
特許庁審判長 |
小松 里美 |
特許庁審判官 |
榎本 政実 小俣 克巳 |
登録日 | 2020-10-14 |
登録番号 | 商標登録第6303837号(T6303837) |
権利者 | 株式会社青木松風庵 |
商標の称呼 | ツキゲショーファクトリーツキゲショーファクトリー、ツキゲショーファクトリー、ツキゲショー、ファクトリー |
代理人 | 井滝 裕敬 |
代理人 | 石戸 孝 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 藤倉 大作 |
代理人 | 松尾 和子 |
代理人 | 田中 伸一郎 |